JP3647493B2 - 漁網 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高い比重と強度、そして実用上十分な耐光性を兼ね備えた複合繊維を網糸の断面積比で50%以上使用した漁網に関するものであり、漁獲性能並びに網の生産性に優れ、かつ、環境汚染のない安全性の高いものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に漁網には、漁獲性能に大きく影響する海水中での高速沈降性や潮流に対する保形性(吹かれが少ない)の他に、耐久性に優れていること、操業性の点から抱水量が少ないことなどが求められる。
この内、特に高速沈降性と保形性が重視され、比重の大きな繊維が用いられてきた。
【0003】
かかる高比重繊維としては、比較的比重の大きな塩化ビニリデン系繊維が広く用いられてきたが、製網技術の発達にともない高速製網に安定して供し得る高強度の繊維が求められるようになった。
この要求に対して、(1)樹脂中に高比重物質を均一分散させてなる繊維(例えば特公昭51−37378号公報)、(2)低軟化点樹脂中に高比重物質を分散混合し、さらにこれに強度付与のために別の樹脂を混合した繊維(特公昭57−20407号公報)、あるいは(3)低軟化点樹脂と高比重物質の混合物を芯、強度付与を目的とする樹脂を鞘とする芯鞘繊維(特開昭58−4819号公報)、さらには、通常の繊維に高比重物質をコーティングした繊維等が提案されている。
【0004】
しかるに、かかる従来の高比重繊維はいずれも上記要求特性のうち比重のみを満足するもので物性的に不十分であり、かつ比重の付与手段にも重大な欠陥を有していたのである。
【0005】
まず、物性上の問題から述べる。
第一に強度が低い。塩化ビニリデン系繊維で2g/d程度、ナイロンやポリエステル繊維に高比重物質を担持させた繊維でも1〜2g/dの強度を有するにすぎない。
このため、漁網として使用するには多くの場合、テンションメンバーとして他の繊維を併用せざるを得ないのが実情であり、網の生産性が低下してしまう。
第二に耐光性が乏しい。漁網は、使用後浜で干すが、その際日光の照射により著しく強度が低下してしまい、漁網として使用できなくなる。塩化ビニリデン系繊維しかり、ナイロンやポリエステル繊維に高比重物質を担持させた繊維もまたしかりである。前者の場合は、ポリマー自身が光に対して不安定であり、後者の場合は、その機構は明確でないが、担持した高比重物質(一般に鉛、またはその化合物)の作用があるものとみられる。
【0006】
次に、比重の付与手段の欠陥について述べる。
それは、その手段が環境汚染を引き起こすという欠陥である。
ナイロンやポリエステル繊維に担持させる高比重物質として、一般に毒性の高い鉛またはその化合物(以下、鉛化合物と略記)が用いられている。
この鉛化合物が、繊維製造あるいは加工工程において、ガイドとの摩擦等により繊維から脱落したり、漁網として使用中に海水中に溶出して鉛公害が発生する可能性があった。さらに、使用済みの漁網を廃棄する場合においても、焼却後に鉛を含む有害成分が残るため、安易に廃棄処分できないという問題を抱えているのである。
一方、鉛化合物を含まない塩化ビニリデン系繊維もまた、焼却時に塩化水素ガスが発生するためやはり焼却処理が困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた製網性と漁獲性能を兼ね備え、かつ、環境汚染のない安全性の高い漁網を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、比重3以上の非鉛系金属またはその化合物の微粒子を50〜80重量%含有する芯ポリマー成分と、該成分を覆う保護ポリマー成分で構成される強度4.0g/d以上、かつ比重1.5以上であり、該保護ポリマー成分が[η]0.7以上のポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルであり、さらに芯成分の熱可塑性ポリマーの[融点−40℃]〜[融点+10℃]の温度条件下で繊維を2%以上収縮させる熱処理を行って得られる複合繊維が、網糸の断面積比で50%以上含まれており、かつ沈降速度が2.5cm/sec以上であることを特徴とする漁網である。
かかる複合繊維は、漁網として用いるに十分な強度と比重を兼備し、従来の高比重繊維のようにテンションメンバーを併用する必要がない。または、併用したとしてもその使用量を従来の高比重繊維に比し大幅に低減し得るため製網性に優れており、加えて比重を高めるための微粒子を含む芯を保護ポリマー成分で覆っているために通常の繊維と同等の優れた耐光性を有している。さらに、比重を付与する手段として、鉛化合物を使用しないため繊維製造、製網、実地使用、廃棄というサイクルすべてにおいて、環境汚染の問題がない。
【0009】
上に述べた本発明の漁網の特性は、特殊な網糸(本発明で規定する高比重繊維)から期待されるものであるが、特記すべきは、従来の漁網に比し漁獲性能が高いこと、そして水切れが良好で操業性がよいことであり、これは事前に本発明者等が予想し得なかったことである。その理由については、今後の解析を待たねば明確でないが、以下のように推察される。
テンションメンバーを多量に交撚した従来の漁網では、通常、撚りがフジヨリといわれる不均一な状態となっており、これがために強力利用率が低く網糸をさらに太くせざるを得ず、結果として、網自身の比重は高くても潮流の抵抗を受けやすくなる。加えて、抱水量も大きくなり水切れ性が低下する。これに対し、テンションメンバーを用いないか、またはその使用量を網糸の断面積の50%未満に低減(本発明で規定する高比重繊維は断面積比で50%以上)した本発明の漁網は、従来の漁網と比較して網地の糸径が、大略10〜50%も細くなり、潮流に対する抵抗が軽減され、同一比重であっても沈降速度が大きく、また保形性が良好、換言すれば、いわゆる吹かれが少なくなる。加えて抱水量が小さく水切れ性が向上するのである。
即ち、沈降速度や吹かれといった漁網の特性は、単に網糸の比重だけで規定されるのではなく、網糸の撚糸の均一性、コンパクト性も勘案しなければならないのである。
【0010】
本発明の漁網に供する繊維は、3.5g/d以上の強度と1.5以上の比重を兼備するものでなければならない。
強度が3.5g/d未満では、高速製網において繊維損傷を受けやすく、また、テンションメンバーを多用する必要があり、比重が1.5未満では海水中での沈降速度、保形性が満足されない。したがって、強度4g/d、比重1.55以上の繊維を用いることが好ましい。
【0011】
かかる繊維は、比重が3以上の非鉛系金属またはその化合物からなる微粒子を50〜80重量%含有するポリマーを芯、これを保護するポリマーからなる複合繊維でなければならない。
【0012】
比重が3未満の微粒子では、目標比重を得るために該微粒子の含有量を高め、しかも芯成分の複合比率を大きくしなければならず、紡糸調子が不良で、繊維の強度が低いものしか得られない。また、芯成分における微粒子の含有量が50重量%未満では、上と同様に、芯成分の複合比率を高める必要があり、同様の弊害が生じる。逆に80重量%以上では、溶融時の流動性が著しく低下し、糸切れが多発し好ましくない。
【0013】
本発明における非鉛系金属とは、鉛や錫など環境問題を極めて起こしやすい金属以外の金属を意味しており、具体的にはチタン、鉄、銅、亜鉛、銀、バリウム、ジルコニウム、マンガン、アンチモン、タングステンなどの金属やその酸化物である。
【0014】
これらの微粒子を芯成分のポリマーに多量に含有させ円滑に溶融紡糸するには、特に粒子表面の活性に起因する微粒子の熱凝集と、ポリマーの熱分解に対する配慮が必要である。
かかる現象が生じた場合、紡糸調子を損なうにとどまらず、配管詰まりに至るためである。
このような事態を避けるためには、微粒子の種類、形状と、ポリマーとの組み合わせにおいて適性な選択を行うことが不可欠である。
【0015】
本発明者等の検討結果によれば、微粒子の形状に関しては1次粒子径が0.05〜5μであることが好ましい。0.05μより小さい場合は、粒子の表面活性が大きく熱凝集を起こしやすくなる。また、5μより大きい場合は紡糸、延伸時に糸切れが発生しやすくなる。
更に、表面活性を抑制するという観点から、粒子は球状のものが好ましく、加えて有機または無機系化合物で粒子表面をコーティングすることも場合によっては有効である。
一方、微粒子の種類とポリマーとの組み合わせについては以下の様である。
ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、各種エラストマーなどのポリマーに、上記非鉛系金属の微粒子を担持させることは可能であるが、これを工業的に安定に溶融紡糸するに最適なのは、ポリアミドと二酸化チタンの組み合わせである。
【0016】
一般に漁網は、魚に警戒感を与えないよう黒色顔料を練り込んだり、製網後染色して使用されるが、コストの点から出来る限り顔料の使用量を軽減し、あるいは染色工程を省略することが望ましい。上記ポリアミドと白色の二酸化チタンの組み合わせでは、かかる要望を十分に満す事ができない。
そこで黒色の微粒子を用いることを検討した結果、ポリアミドに球状の磁鉄鉱微粒子を担持させた場合が最も安定した紡糸が可能であり、さらにこれに特定量の二酸化チタンを併用するとより安定性が向上し、黒色系では初めて工業的に安定に紡糸し得ることを見出だしたのである。このことによって、上記繁雑な染色工程を省略し、黒色顔料を不使用またはその使用量を軽減することが可能となったのである。
かかる二酸化チタンの安定化効果は、磁鉄鉱に限定されるものではなく、硫酸バリウムや酸化亜鉛などその他の微粒子との併用において認められるが、色相を考慮すると磁鉄鉱が最も好ましいといえる。
【0017】
磁鉄鉱の粒子形状は、球形のほか、六面体、八面体、多面体などがあるが、最も表面積の小さい球形が分散が良好で好ましい。また、表面をシリカやフェライトでコーティング処理したものがより安定である。
一方、磁鉄鉱と二酸化チタンの混合比率は、磁鉄鉱/二酸化チタン=2/8〜7/3が特に好ましく、具体的には、例えば芯ポリマー(ポリアミド)中の微粒子の含有量が70%の場合、磁鉄鉱30%、二酸化チタン40%が工程安定性、物性、色調の好適例である。
【0018】
ポリアミドとして好適なのはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン4、ナイロン46など、またはこれらを一部変性あるいは混合したものであるが、特にナイロン6、さらに詳しくは分子量6000〜22000、とりわけ11000〜15000のものが好ましい。
また、劣化防止剤として該ポリマーに対して0.01〜2重量%のヨウ化銅などの銅塩を添加することも有効である。
【0019】
次に、保護ポリマー成分について説明する。
保護ポリマーは、繊維としての実用性能上ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルが好ましい。また、これらと共重合可能なイソフタル酸などの酸、あるいはプロピレングリコールや1,4ブタンジオールなどのグリコール類で変性したもの、さらにはこれらを混合したものも用いることができるが、変性量は20モル%以下、好ましくは10モル%以下としなければ十分な強度、耐久性が得られない。
また、これらのポリマーに各種安定剤や色相にあわせて所望の着色顔料を添加することも差支えない。
【0020】
かかる保護ポリマーの〔η〕は、0.7以上でなければ目標とする強度、比重が得られない。これが0.7未満では、強度を得るために芯ポリマー成分と、保護ポリマー成分の比率を保護ポリマー成分リッチとする必要があり、必然的に比重が犠牲になる。これを避けるには芯成分の微粒子含有量を高めねばならないが、この場合工程調子を著しく損なうことは、先に述べたとおりである。
【0021】
かかる両成分からなる繊維の複合形状は、繊維表面周長の60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%を保護ポリマー成分が占めていることが望ましい。その実施態様は、この要素を満す限り限定されるものではないが、代表例を図1(1)〜(8)に示す。尚、図中の斜線部分が芯ポリマー成分である。
【0022】
保護ポリマー成分と芯ポリマー成分との複合比率は、用いる材料の比重や分子量を勘案し適宜調整すればよいが、本発明者らの検討結果、物性及び工程安定性を満足するには重量比で大略、3:7〜8:2、より好ましくは5:5〜8:2である。
【0023】
以上の芯ポリマー成分と保護ポリマー成分を複合紡糸する方法は、特に限定するものでなく常法により、両成分を別の溶融系で加熱溶融し、紡糸口金直前で目的とする複合形状に合流させて紡糸し、一旦巻き取った後、あるいは巻き取ることなく延伸、熱処理することで得られる。
【0024】
具体的には、捲取速度は300〜4000m/分、特に600〜2000m/分とすることが好ましい。
300m/分未満では、未延伸糸の配向度が低く、所望の繊維強度を得るために延伸倍率を高める必要があり、結果として繊維中に延伸によるボイドが生じ、比重が低下する場合がある。逆に、4000m/分を越えると、微粒子を多量に含有するがゆえに溶融粘度が高い芯ポリマー成分は、高速変形に追随しきれず紡糸調子を損なう場合があり、好ましくない。
【0025】
延伸は一段でも多段でもよいが、ボイドの発生による比重低下を抑制するには、高温のスチームジェットを用いて延伸する事が好ましい。しかし、かかる延伸方法によっても多少のボイドの発生は不可避であり、これを修復し、比重を高めるには、次いで熱処理を行う必要がある。
該熱処理は、芯成分の熱可塑性ポリマーの[融点(Tm)−40]〜[(Tm)+10]℃で2%以上熱収縮をさせながら行うと極めて有効である。これは芯成分の熱可塑性ポリマーの融点に近い温度に加熱し収縮させることにより、延伸で微粒子周辺で発生したポリマー中のボイドがある程度、閉塞し修復されるものと推察される。
その温度が(Tm−40)℃未満では効果が不十分であり、(Tm+10)℃以上では断糸が多発し好ましくない。
例えば、芯のポリマーがナイロン6の場合、180〜230℃とすることが望ましい。
【0026】
本発明の漁網は、沈降速度2.5cm/sec以上の特性を有するものである。本発明で規定する沈降速度は、網の海水中での網の沈降及び吹かれ状態を決定づける因子である比重と、水に対する抵抗の双方を同時に評価し得るものである。
その評価方法は、実施例の項に詳述するが、沈降速度が2.5cm/secより小さい場合は、海水に網を投入した場合、沈降しにくく、また吹かれが大きいために漁獲性能が著しく損なわれる。従って、好ましくは3.0cm/sec以上、更に好ましくは3.5cm/sec以上である。
【0027】
かかる漁網は、特殊な編み立てを行う必要はなく、公知のプロセスで得ることができる。
具体的には、結節網であれば蛙又、二重蛙又、特殊結節あるいは本目網等、無結節網であれば貫通式、千鳥式、亀甲式、さらにはラッシェル網等のいかなる編網方法をも採用することができる。
また、必要に応じて他の繊維と混繊、合糸、合撚、交織、交編等を行うこともできる。
【0028】
しかし、沈降速度を2.5cm/sec以上とするには上記高比重の複合繊維が、網糸の断面積比で50%以上占めるように編網しなければならない。
50%未満では、網糸の強力利用率が大きく低下し、網糸を太くする必要があり、沈降速度が低下し、漁獲性能の低下を招く。また、水切れ性も低下するため操業性が悪化してしまう。
【0029】
本発明の漁網は、吹かれが少なくまた水切れも良いためサケ、マス刺網などの刺網類、トロール網として用いられる曳網類、カツオ、マグロ、サバなどの旋網類、サケの定置網に代表される建網類、あるいは敷網類などいずれの用途にも適しているが、特に、比重と強度を必要とする旋網類、建網類、敷網類として好ましく用いられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を以て本発明をさらに詳細に説明するが、これらに何等限定されるものではない。また、例中〔η〕、ナイロンの数平均分子量、比重、強伸度、網の沈降速度は以下の方法で測定した。
・ポリエステルの〔η〕:フェノール/四塩化エタン=1/1の混合溶剤で30℃で測定。
・ナイロンの数平均分子量:ウォーターズ社製HLC−510によるGPCクロマトグラムにより測定。
・比重:四塩化炭素とノルマルヘキサンで密度勾配を作成し、20℃で測定。
・繊維の引っ張り強伸度:島津製作所製引張り試験機(オートグラフIM−100)で20℃、65RH%でJIS L−1013に準拠して測定。
・網の引っ張り強力:同上の設備、雰囲気でJIS L−1043に準拠し、1節1本で測定
・網の沈降速度:
試料作成;網の1節の中心から各1cmの長さに4本の脚を切り、試料とする。
比重液作成;n−ヘプタン/四塩化炭素=44/89の体積比で混合、20℃で比重1.3の比重液を作成。
沈降速度測定;試料を比重液に30分以上浸漬して、脱気する。
比重液を内径3cm以上、深さ15cm以上の円筒状のガラス管に液深が15cm以上となるように入れ20℃に保つ。その液面に、脱気試料を水平にして静かに置き沈降させ、液面より5cmの深さと15cmの深さ、即ち10cmの沈降距離を試料が通過する時間を測定する。
この操作を5回繰り返しその平均時間(t)を求め、10/t(cm/sec)として、沈降速度を定義する。
【0031】
実施例1
芯ポリマーとして宇部興産社製のナイロン6粉末(商品名P1011F、数平均分子量11000)30部、高比重微粒子として戸田工業社製の平均粒子径0.2μmの球状磁鉄鉱(商品名EPT−305ZFC;表面フェライトコート、比重5.0)30部と、チタン工業社製の平均粒子径0.35μmの二酸化チタン(比重4.2)を混合し、二軸押出し機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、これをカットしてペレットを作成した。
一方、保護ポリマー成分は常法により溶融重合した〔η〕1.0のポリエチレンテレフタレートのペレットを使用した。
【0032】
双方のペレットを別の押出し機で溶融押出しし、図1(1)の複合形状で、芯鞘重量比芯/鞘=1/2となるようノズル部で合流し、300℃で口径0.8mmφ、96ホールのノズルを通じて吐出させた。吐出糸条は、ノズル直下に設けた20cm長、400℃の加熱体域を通過させたのち、25℃、7Nm3 /分の冷却風で冷却し、オイリングローラーで紡糸油剤を付与し、600m/分で引き取った。
【0033】
引き続き、該糸条を巻き取ることなく以下の要領で延伸、熱処理して巻き取った。
延伸:110℃の熱ロールで加熱後、400℃に加熱蒸気を噴射しつつ4.6倍に一段延伸。
熱処理:220℃の熱ロールと弛緩ロールとの間で3%熱収縮処理。
かくして、1500デニール、強度4.8g/d、伸度18%、比重1.62の繊維を得た。
【0034】
該繊維を2本合糸しつつ、Z方向に120t/mで下撚し、ついでこれを4本合糸してS方向に100t/mで上撚し、鉄砲巻きを作成した。
これを、製網機で1500d/16、目合75mm、100掛の規格で無結節網を製網し、150℃で2分熱セットした。
かくして得られた網は、比重1.60、引っ張り強力95.2Kg、沈降速度4.1cm/secで、強力、沈降速度共に優れたものであった。
【0035】
実施例2、3、比較例1、2
実施例1で用いた高比重繊維と、比重1.38、強度8.8g/d、1500d/96fのポリエステル繊維とをラッシェル型製網機にて、以下の様に経編みした。
網規格;7500Dr、11節100掛
耳糸、力糸はフロントと同本数にて、フロント、バック共に1500×1。
打ち込みは22コース。網構成と、物性を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から、強度の高いポリエステル繊維を併用しても、撚糸状態が不均一であるため、強力利用率が低く網の引っ張り強力は向上せず、特に複合繊維の断面積比率が低い比較例1において顕著である。
また、網の比重が低いと沈降速度は低下する。従って比較例の沈降速度が低いのは当然であり、高比重の複合繊維の断面積比率が50%以上という本発明の規定は、一見、網の比重を規定しているかのように見える。
しかし、沈降速度には比重だけでなく、網の液に対する抵抗も影響するのであって、断面積比率の規定が、単に比重の代用特性ではないことを明確にするために、高比重繊維の比重を変更した実施例を以下に示す。
【0038】
実施例4
実施例1の高比重繊維の製造において、芯鞘重量比を芯/鞘=1/3とする以外は全く同様の方法にて、1500デニール、強度5.8g/d、伸度22%、比重1.51の繊維を得た。
該繊維を実施例2と同様に製網した網は、比重1.50、引っ張り強力26.2Kg、沈降速度3.0cm/secであった。
この結果と実施例3を比較した場合、網の比重が同一であっても高比重繊維単独で構成され、撚糸状態がより均一な実施例3の方が、沈降速度が大きくなっている。
また、実施例1と実施例2では、網の比重がほぼ同一ながら沈降速度が異なるが、これも無結節とラッシェル(経編み)という網形態の違いに起因する、液に対する抵抗の差である。
このことから、沈降速度が単に比重で規定されないことがわかる。
【0039】
【発明の効果】
特定の高比重繊維を用いる本発明の漁網は、従来に比し網の生産性が高く、環境汚染もない。更に、漁獲性能、操業性、耐光性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用される複合繊維断面における芯ポリマー成分と保護ポリマー成分との代表的な複合形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1:芯ポリマー成分
2:保護ポリマー成分
Claims (1)
- 比重3以上の非鉛系金属またはその化合物の微粒子を50〜80重量%含有する芯ポリマー成分と、該成分を覆う保護ポリマー成分で構成される強度4.0g/d以上、かつ比重1.5以上であり、該保護ポリマー成分が[η]0.7以上のポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルであり、さらに芯成分の熱可塑性ポリマーの[融点−40℃]〜[融点+10℃]の温度条件下で繊維を2%以上収縮させる熱処理を行って得られる複合繊維が、網糸の断面積比で50%以上含まれており、かつ沈降速度が2.5cm/sec以上であることを特徴とする漁網。
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