JP3210787B2 - 導電性混繊糸 - Google Patents

導電性混繊糸

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JP3210787B2
JP3210787B2 JP24934693A JP24934693A JP3210787B2 JP 3210787 B2 JP3210787 B2 JP 3210787B2 JP 24934693 A JP24934693 A JP 24934693A JP 24934693 A JP24934693 A JP 24934693A JP 3210787 B2 JP3210787 B2 JP 3210787B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は除電性能に優れた複合繊
維、とりわけ繊維物性、着用耐久性に優れた除電性能を
有する白色導電性繊維を用いた混繊糸に関する。
【0002】
【従来の技術】除電性能に優れた繊維としての導電性繊
維については種々の提案がなされている。たとえば、カ
−ボンブラックを含有したポリマ−からなる導電性成分
と繊維形成性ポリマ−からなる保護成分とが接合された
導電性繊維が提案されている。しかしながら、カ−ボン
ブラックを用いた導電性繊維の欠点の1つは、繊維が黒
色または灰色に着色することである。そのために用途が
限定されているのが実情である。
【0003】この欠点を改良する方法として、近年、白
色または無色の導電性金属酸化物を導電性物質として含
有する導電性繊維が提案されている。たとえば、特開昭
57−6762号公報、特公昭62−29526号公報
には、導電性金属酸化物と熱可塑性ポリマ−との混合物
を導電層とし、繊維形成性ポリマ−との複合繊維を作製
する場合に、該複合原糸を作製し延伸を行なった後にさ
らにその繊維を熱処理することにより導電層を修復する
方法が提案されている。すなわち、導電性金属酸化物の
バインダ−として熱可塑性ポリマ−を使用した場合にお
いては延伸工程で導電層が切断される。そのままの状態
では電導性が失われるために導電性繊維としての役割を
果たすことはできない。導電性金属酸化物のバインダ−
として熱可塑性ポリマ−、とくに結晶性の高い熱可塑性
ポリマ−を使用した場合にはこのような熱処理は必要な
ものである。
【0004】しかしながら、上記各公報に記載された技
術において得られる導電性繊維は、延伸後の熱処理工程
が必須であるために生産効率が悪い欠点がある。また、
該導電性繊維は着用耐久性が不足している欠点をも有し
ている。導電性繊維の耐久性評価は、導電性繊維を0.
1〜10重量%織り込んだ織物を1年間程度着用し、そ
の時に制電性能が存在するかどうかということを判定し
てなされる。労働省作業安全研究所発行の静電気安全指
針における帯電量の基準値は7μク−ロン/m↑2であ
り、この値以下であることが必要である。従来の白色あ
るいは無色の導電性複合繊維においては上記の耐久性を
満足することができなかった。
【0005】たとえば、熱可塑性ポリマ−がポリエチレ
ンの場合、実用耐久性は不十分であり、とくに作業服等
の危険な作業上での使用は不適であることが本発明者等
の検討結果判明した。熱可塑性ポリマ−として結晶性熱
可塑性ポリマ−を使用した場合においては、導電性複合
繊維作製直後のフィラメントの抵抗値を9×10↑10
Ω/cm・f以下にすることができ、織物の帯電基準値
を満足することができるが、耐久性に劣るために織物の
制電性能が低下し、実際上使用することが困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、着色
が少なく他の帯電性繊維と混用でき、繊維製品に優れた
除電性能、着用耐久性を付与することができる導電性混
繊糸を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、高配向未延伸
導電性芯鞘複合繊維を側糸とし、非導電性ポリエチレン
テレフタレ−ト系マルチフィラメントを芯糸とした混繊
糸であり、該側糸が該芯糸よりも0.5〜15%糸長が
長く、かつ芯糸の初期ヤング率およびト−タル強度が該
側糸の初期ヤング率およびト−タル強度よりもともに大
きい混繊糸であって、前記高配向未延伸導電性芯鞘複合
繊維が、ポリエチレンテレフタレ−ト系またはポリブチ
レンテレフタレ−ト系のポリマ−(A)を鞘成分、導電
性金属酸化物からなる導電性物質を含有するポリアミド
系熱可塑性ポリマ−(B)を芯成分とし、フィラメント
芯抵抗が1kVの直流電圧において9×10↑10Ω/
cm・fより小さく、危険伸度が5%以上、かつ100
℃の熱水中での収縮率が20%以下であることを特徴と
する導電性混繊糸に係わるものである。
【0008】除電性能とは帯電した物体の電荷を非接触
により除電することをいい、芯抵抗が10↑11Ω/c
m・f以下の導電性を有する繊維の場合、不平等電界を
形成し、コロナ放電により除電されるが、芯抵抗が10
↑11Ω/cm・fを越える場合にはコロナ放電によっ
て放電は起こらず、有効な除電性を示さない。
【0009】本発明者等は繊維は伸長する過程で芯抵抗
が1KVの直流電圧において10↑11Ω/cm・fを
越える時の伸度、すなわち除電性能を失う時の伸度(本
発明における危険伸度)と導電性芯鞘複合繊維の構成成
分、ならびに導電性芯鞘複合繊維と他の繊維との混繊状
態を検討した。その結果、実用耐久性に大きく影響する
要因として、上記危険伸度と導電性物質を含有する熱可
塑性ポリマ−、ならびに導電性芯鞘複合繊維と他の繊維
との混繊状態が挙げられることを見出だした。
【0010】本発明に係わる導電性芯鞘複合繊維(単に
導電性繊維と称する場合がある)とは導電性物質を含有
する芯成分と、鞘成分とからなる芯鞘型複合構造を有し
ている。芯鞘の複合形態は、同心芯鞘型、偏心芯鞘型、
多芯芯鞘型等が挙げられる。効果の点においては偏心芯
鞘型が好ましいが耐久性の点においては同心芯鞘型が好
ましく、用途に応じて、また要求性能に応じて使い分け
ることができる。芯成分に含有される導電性物質は白色
または無色系の金属酸化物の微粒子、あるいは該金属酸
化物が無機微粒子を核としてその表面に被覆された状態
の微粒子をいう。金属酸化物の多くのものは絶縁体に近
い半導体であって充分な導電性を示さないことが多い。
しかしながら、たとえば、充分な導電性を有するものが
得られる、このような導電性強化剤(ド−ピング剤)と
して、酸化錫に対して酸化アンチモン、酸化亜鉛に対し
てアルミニウム、カリウム等が知られている。平均粒径
0.1μの酸化錫の比抵抗は約10↑3Ω・cmである
が、酸化アンチモンと酸化錫との固容体の比抵抗は1〜
10Ω・cmであり導電性が強化されている。該固容体
中に占める酸化アンチモンの割合は0.01〜0.10
(重量比)とすることが総合的な性能からいって必要で
ある。酸化アンチモンの被覆量が少ないと、導電性が不
足し、逆に多いと目的の白色系の方向から遠ざかってし
まう。
【0011】本発明において導電性物質としては上記の
被覆された酸化亜鉛、酸化錫が導電性、白色度等に優れ
好適であるが、これら以外の金属酸化物、たとえば酸化
タングステン、酸化インジウム、酸化ジルコニウム等の
導電性金属酸化物、酸化チタン、酸化マグネシウム等の
金属微粒子、シリカ等の無機化合物微粒子の表面に前記
導電性金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
【0012】これらの導電性物質は1種類または2種類
以上混合して用いることができる。さらに白色系を損な
わない範囲内で金属酸化物以外の導電性物質、たとえば
金属、カ−ボンブラック等と併用することができる。導
電性物質としての金属酸化物微粒子の粒径は小さいもの
がよく、平均粒径が1μ以下、とくに0.5μ以下のも
のが好ましく用いられる。
【0013】また該導電性物質の芯成分への含有量は6
0〜75重量%であることが好ましい。導電性物質の含
有量が60重量%未満の場合、好ましい導電性が得られ
にくく、充分な除電性能が発揮されない。一方、導電性
物質の含有量が75重量%を越える場合、導電性のより
一層の向上は認められず、芯成分の流動性が著しく低下
して、紡糸性が極端に悪化し、とりわけフィルタ−詰ま
り等のパック寿命が短くなり、工程安定性に劣るので好
ましくない。
【0014】上記導電性繊維の芯成分を構成するポリマ
−は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、メタ
キシリレンジアミンナイロン等、またはこれらを主成分
とするの熱可塑性ポリアミド系ポリマ−である。しかも
紡糸の際のポリアミド系ポリマ−の水分率が100〜1
200ppmの範囲内にあることが好ましい。紡糸時に
おけるポリアミド中の水分率がこの範囲をはずれると、
導電性繊維の危険伸度が5%以上とならず、またコロナ
放電による除電が行なわれにくくなる。また、紡糸時に
おけるポリアミドの水分率が100ppm未満と極端に
少なくなると、樹脂自体が脆くなり導電構造が不安定に
なり易くなる。一方、紡糸時のポリアミドの水分率が1
200ppmを越えると、発泡、ボイド等が生じ易く、
導電層中に微細な欠陥が発生し易くなる。
【0015】該ポリアミド系ポリマ−は適当な極性基を
有するために導電物質である金属酸化物と相溶性、接着
性が良好であり、高濃度で導電性物質を配合しても流動
性があまり低下せず、高い導電性と良好な流動性を兼ね
備えたポリマ−である。さらに導電性物質である金属酸
化物とポリアミド系ポリマ−は強固な接着性を有するこ
とから機械的物性も極めて良好であり、長期間の実着用
でも導電層が切断されることがなく、除電性能を失うこ
とがない。
【0016】さらに本発明に係わる導電性繊維におい
て、上述したように芯成分は導電性物質である導電性金
属酸化物を含有する熱可塑性ポリアミド系ポリマ−であ
り、鞘成分としてはポリエチレンテレフタレ−ト系ポリ
マ−(PET系ポリマ−)またはポリブチレンテレフタ
レ−ト系ポリマ−(PBT系ポリマ−)が用いられる。
PET系ポリマ−またはPBT系ポリマ−は引張りに対
して伸長しにくく、さらに他のポリマ−、たとえばポリ
アミド等に比較して紡糸後自発伸長しにくいという特徴
を有している。自発伸長するポリマ−である場合には、
時間の経過と供に芯成分が徐々に伸長されることにな
り、芯成分中の導電層が破断して導電性能が失われるこ
とになる。さらに、PET系ポリマ−またはPBT系ポ
リマ−を用いると、著しい加工耐久性、実着用耐久性も
得られる。
【0017】PET系ポリマ−あるいはPBT系ポリマ
−とは、それぞれエチレンテレフタレ−ト単位、あるい
はブチレンテレフタレ−ト単位を主たる繰り返し単位と
するポリマ−のことであり、それ以外のジカルボン酸成
分、ジオ−ル成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重
合されていてもよい。しかしながら、共重合割合が増す
にしたがって導電性繊維の引張り抵抗性が低下すること
になるので、共重合割合は低くすることが好ましい。望
ましくは繰り返し単位の85モル%以上がエチレンテレ
フタレ−ト単位あるいはブチレンテレフタレ−ト単位で
あるポリエステルが好ましい。そして、その固有粘度
〔η〕は0.55以上であることが好ましい。
【0018】本発明に係わる導電性繊維において、芯成
分と鞘成分の複合比率は前者/後者=8/92〜22/
78(重量比)、とくに10/90〜20/80(重量
比)であることが好ましい。鞘成分が92重量%を越え
ると、安定した芯鞘構造の複合繊維を紡糸することが困
難となり、一方、鞘成分が78重量%未満になると、鞘
成分であるPET系ポリマ−またはPBT系ポリマ−が
充分な繊維形成能をもっていたとしても複合した糸の紡
糸性が低下し、繊維物性も極端に低下し、実用性は失わ
れてしまう。
【0019】上記導電性繊維は、〔η〕=0.55以上
のPET系ポリマ−またはPBT系ポリマ−、ならびに
水分率が100〜1200ppmになるように乾燥さ
れ、導電性物質を含有するポリアミド系ポリマ−を、そ
れぞれ別々のエクストル−ダ−で溶融し、複合紡糸装置
を用いて高速紡糸を行なうことによって得られる。
【0020】このようにして得られた紡糸後の糸条は1
00℃における熱水収縮率(WSr)が20%以下にな
るように、紡糸速度3500〜5000m/分で高配向
溶融紡糸される。通常、該導電性繊維は布帛中に少量混
在させて使用される。その際、該導電性繊維のWSrが
他の繊維のWSrに比較して極端に大きいと、布帛に外
力が加わった場合に該導電性繊維の切断等のトラブルが
発生し易く、とくに実着用時にこの影響が大きい。ま
た、本発明に係わる導電性繊維の危険伸度は5%以上で
あり、芯抵抗が1kVの直流電圧において9×10↑1
0Ω/cm・fより小さい値を示し、除電性能に優れて
いるのである。
【0021】本発明で重要なことは、上述した高配向未
延伸導電性繊維が側糸となって混繊糸を形成しているこ
とにある。混繊糸を構成する他の成分である芯糸として
は、非導電性のPET系マルチフィラメントが用いられ
る。該PET系マルチフィラメントは、引張りに対する
伸長抵抗が大きく、さらに加工耐久性および実着用耐久
性に優れているので、側糸である導電性繊維に過度の引
張り応力がかかり、導電層が破断することを防ぐことが
できる。
【0022】そして、芯糸である非導電性PET系マル
チフィラメントが、側糸である導電性繊維より糸長が短
いことが本発明において必須である。その程度は芯糸の
糸長を100%としたとき、側糸の糸長が100.5〜
115%となる範囲である。側糸の糸長が100.5%
未満の場合、側糸に張力がかかることを防ぐことができ
ず、実着用時に徐々に導電性能が損なわれることとな
り、一方、側糸の糸長が115%を越えると、実着用時
に布帛表面に導電性繊維が突出し、該導電性繊維が摩耗
して導電性能が低下することとなる。このように導電性
繊維の糸長を非導電性PET系マルチフィラメントより
長くすることにより、混繊糸に張力がかかった際に、導
電性繊維に過度の張力がかかり、その結果、導電層が破
断する事態が生ずることを防いでいる。
【0023】また、芯糸である非導電性PET系マルチ
フィラメントの初期ヤング率とト−タル破断強度は、そ
れぞれ側糸である導電性繊維の初期ヤング率とト−タル
破断強度より高いことが必要である。これらのうちのい
ずれか一方、または両方が導電性繊維のほうが高い場合
には上述した条件と同様に、導電性繊維に張力がかかり
導電層が破断することになる。このような初期ヤング率
およびト−タル破断強度を満足する非導電性PET系マ
ルチフィラメントとしては、ポリエチレンテレフタレ−
トまたはエチレンテレフタレ−ト単位を主たる繰り返し
単位とする共重合ポリエステルからなる延伸繊維、ある
いは溶融ポリエステルをノズルから押し出し、500〜
4500m/分の速度で巻き取り、ついで1.2〜5倍
の延伸倍率で延伸した繊維が好適に用いられる。
【0024】本発明でいうト−タル破断強度とは、混繊
糸を芯糸と側糸に分けて、芯糸は芯糸で、側糸は側糸
で、それぞれの糸条全体の破断強度を求め、その値を糸
条を構成しているフィラメントの総繊度で除した値であ
る。
【0025】導電性繊維と非導電性PET系マルチフィ
ラメントとの合糸比率、それぞれの繊度、繊維を構成す
る単繊維の本数などはとくに限定されず、使用目的に応
じて任意に選択することができる。導電性繊維糸条の繊
度は50デニ−ル以下、とくに30デニ−ル以下が好適
である。構成フィラメント数は1〜5本、とくに1〜2
本程度、すなわち、導電性繊維の単繊度は2〜25デニ
−ルが好適である。非導電性PET系マルチフィラメン
トの繊度は10〜100デニ−ル、とくに20〜50デ
ニ−ルが好適であり、構成フィラメント数は5本以上、
とくに10本以上、すなわち非導電性PET系マルチフ
ィラメントを構成するフィラメントの単繊度は20デニ
−ル以下が好適である。また、両者が合糸された混繊糸
中における導電性繊維(糸条)の混合率は16〜66重
量%であることが好適である。
【0026】本発明の混繊糸は通常の方法によって行な
うことができる。たとえば、芯糸となる非導電性PET
系マルチフィラメントと、側糸になる導電性繊維とを別
々の供給ロ−ラに送り込み両者を合糸した後、空気絡合
ノズルまたは乱流ノズルにより合糸糸条に流体処理を施
して両糸条を交絡混繊し、そして得られた混繊糸を巻き
取る方法が用いられる。その際の側糸である導電性繊維
の供給ロ−ラの表面速度を、芯糸の供給ロ−ラの表面速
度より高くすることにより、前記糸長差を達成すること
が可能となり、またかかる速度差により、導電性繊維が
側糸に非導電性PET系マルチフィラメントが芯糸にな
る。
【0027】芯糸と側糸は、前述したように空気等を吹
き付けることにより交絡していることが、側糸である導
電性繊維単独に張力がかかる上で好ましく、その際の交
絡数は0.5〜5個/インチの範囲が好適である。交絡
数は、混繊糸を水面に浮かべ糸条の拡がりを観察し、糸
条が拡がらない箇所を数えることにより容易に導き出さ
れる。なお、得られた混繊糸を必要に応じて熱処理して
もよく、熱処理条件としては120〜210℃の範囲の
温度で定長以下での弛緩熱処理が好適である。
【0028】本発明の混繊糸は、他の帯電性の繊維、た
とえば絹、羊毛、セルロ−スアセテ−ト、ポリアミド、
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル系、ポリア
クリロニトリル系等の各種天然、合成繊維と混用して織
物、編物、ロ−プ、紐、カ−ペット等の繊維製品を製造
することができる。通常、除電性能付与目的であれば、
繊維製品中の導電性繊維の混用率は0.1〜5重量%で
充分であるが、優れた除電性能を付与するためには1〜
50重量%とすることもできる。たとえば、本発明の混
繊糸を作業着等に用いられる布帛に、一定間隔、通常は
3mm〜5cm位の間隔で挿入することにより、実着用
時の屈折、もみ、引張り等の繰り返しによっても優れた
導電性能が極めて損なわれにくいという長所を有してい
る。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例により何等限定されるもの
ではない。なお、実施例中における各物性値は下記の方
法により測定、算出した。 (1)PETまたはPBTの固有粘度〔η〕(dl/g) フェノ−ル/テトラクロロエタン(等重量)混合溶媒を
用いて、30℃で測定した。 (2)ナイロン6の相対粘度 1g/100mlの96%硫酸ナトリウム溶液を用いて、
30℃で測定した。 (3)危険伸度 特開平2−53915号公報に記載の測定装置を用い、
同様の方法にて測定した。 (4)芯抵抗(Ω/cm・f) 導電性繊維を10cm長さに切断し、切断断面に導電塗
料(ド−タイト)を塗布して繊維端部を固定した後、該
端部を電極として印加電圧1kVにおける電気抵抗を測
定して算出した。 (5)帯電電荷量(μ・ク−ロン/m↑2) 労働省産業安全研究所発行の静電気安全指針のRIIS
TR78−1によって行なった(22℃、30%RHの
部屋に24時間放置後測定)。 (6)繊維の強度(g/デニ−ル)および初期ヤング率
(g/デニ−ル) 島津製作所製、島津オ−トグラフ2000Aを用いて測
定した。 (7)糸長差 混繊糸の撚りを除いて約1m採取する。両端に結び目を
つくりその長さ(L↓1)を測定する。次に針で鞘糸を
伸ばさないように注意しながら芯糸と鞘糸を分ける。結
び目から結び目まで全て分けたところで鞘糸側の長さ
(L↓2)を測定する。糸長差L↓0は下記式により算
出した。 L↓0=〔(L↓2−L↓1)/L↓1〕×100
【0030】実施例1 表面を15重量%の酸化第二錫(酸化アンチモンを2重
量%含む)でコ−ティングした酸化チタン粒子(平均粒
径0.2μm以下、W1と称する)60部をナイロン6
のチップ40部と270℃で溶融混合して、体積固有抵
抗9×10↑2Ω・cmの導電層ポリマ−を得た。そし
てこのチップを80℃で真空乾燥し、チップの水分率を
400ppmに調節した。ついでこのチップと、〔η〕
=0.63のPETチップとを別々のエクストル−ダで
溶融し、複合紡糸装置を用いてポリアミドチップが芯
部、PETチップが鞘部になるように芯鞘複合繊維(芯
鞘重量比=13:87)を295℃で4孔の吐出孔より
紡出し、紡糸速度4500m/分で2分割して巻取り、
25デニ−ル/2フィラメントの導電性芯鞘複合繊維を
得た。得られた導電性芯鞘複合繊維の芯抵抗は5×10
↑10Ω/cm・f、危険伸度は15%、ト−タル強度
は3.2g/デニ−ル、初期ヤング率は74g/デニ−
ルであった。
【0031】この高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維25
デニ−ル/2フィラメントを側糸に用いて混繊糸を作製
した。すなわち、紡糸速度1200m/分で紡糸して巻
取り、78℃のホットロ−ラ、150℃のホットプレ−
トを用いて、3.5倍に延伸した、ト−タル強度5.0
g/デニ−ル、初期ヤング率110g/デニ−ルのPE
Tマルチフィラメント糸30デニ−ル/24フィラメン
トを用意した。このPETマルチフィラメントと上記導
電性繊維とをそれぞれ別々の供給ロ−ラより、導電性繊
維を55.5m/分の速度で、PETマルチフィラメン
トを54.0m/分の速度で送り込み、両糸条を合糸し
た後、4.0kg/cm↑2の空気絡合ノズルを用いて
両糸条を交絡混繊させ、速度54.0m/分の引取りロ
−ラで引取り、巻き取った。得られた混繊糸の交絡数が
1.5個/インチであり、芯糸と側糸の糸長差は2.5
%であった。
【0032】この混繊糸を光学顕微鏡により観察したと
ころ、PETマルチフィラメントが混繊糸のほぼ中心部
に位置し、その周囲を導電性繊維が不完全ではあるが一
応まつわりついているのが確認された。
【0033】この混繊糸を、PET/綿=65/35、
綿番手20s/↓2の経糸に80本に1本の割合で打ち
込んで、経糸80本/インチ、緯糸50本/インチの1
/2ツイル織物とした。続いて通常のポリエステル混綿
織物の条件で染色仕上げを行なった。この織物を1年間
着用し、その間約250回洗濯を繰り返した後の帯電電
荷量は4.8μ・ク−ロン/m↑2、芯抵抗は6×10
↑10Ω/cm・fであった。
【0034】上記の導電性繊維をPET/綿=65/3
5の混紡糸でカバ−リングし、PET/綿=65/3
5、綿番手20s/↓2の経糸に80本に1本の割合で
打ち込んで、経糸80本/インチ、緯糸50本/インチ
の1/2ツイル織物とした。続いて通常のポリエステル
混綿織物の条件で染色仕上げを行なった。この織物を1
年間着用し、その間約250回洗濯を繰り返した後の帯
電電荷量は5.2μ・ク−ロン/m↑2、芯抵抗は7×
10↑10Ω/cm・fであった。導電性繊維とPET
との混繊糸にして使用することにより、より一層耐久性
能が増していることがわかる。
【0035】実施例2 実施例1で使用したW1含有ポリアミドが芯部、PBT
(ノバドウ−ル5008、三菱化成製)が鞘部になるよ
うに、265℃で4孔の吐出孔より紡出し、紡糸速度3
750m/分で2分割して巻取り、25デニ−ル/2フ
ィラメントの導電性芯鞘複合繊維を得た。得られた導電
性芯鞘複合繊維の芯抵抗は5×10↑9Ω/cm・f、
危険伸度は12%、ト−タル強度は2.8g/デニ−
ル、初期ヤング率は45g/デニ−ルであった。この導
電性繊維を側糸に用いて、実施例1と同様にして混繊糸
とし、さらにこの混繊糸を用いて実施例1と同様にし
て、2/1ツイル織物に打ち込み、1年間実着用し、そ
の間に250回の繰り返し洗濯を行なった後の帯電電荷
量は4.2μ・ク−ロン/m↑2、芯抵抗は7×10↑
9Ω/cm・fであった。
【0036】上記の導電性繊維をPET/綿=65/3
5の混紡糸でカバ−リングし、PET/綿=65/3
5、綿番手20s/↓2の経糸に80本に1本の割合で
打ち込んで、経糸80本/インチ、緯糸50本/インチ
の1/2ツイル織物とした。続いて通常のポリエステル
混綿織物の条件で染色仕上げを行なった。この織物を1
年間着用し、その間約250回洗濯を繰り返した後の帯
電電荷量は4.5μ・ク−ロン/m↑2、芯抵抗は1×
10↑10Ω/cm・fであった。導電性繊維とPET
との混繊糸にして使用することにより、より一層耐久性
能が増していることがわかる。
【0037】比較例1 実施例1において、混繊糸とする際の導電性繊維とPE
Tマルチフィラメントとの供給速度を、ともに54m/
分とする以外は実施例1とまったく同じ条件で混繊糸を
作製した。この混繊糸を光学顕微鏡で観察したところ、
両糸条が単にならんで一体化されているだけであり、芯
糸、側糸の区別がなく、糸長差も0であった。この混繊
糸を用い、実施例1と同様にして2/1ツイル織物に打
ち込み、1年間実着用し、その間に250回の繰り返し
洗濯を行なった後の帯電電荷量は5.8μ・ク−ロン/
m↑2、芯抵抗は9×10↑10Ω/cm・fであっ
た。混繊糸におけるPETマルチフィラメントが強力支
持の働きを充分にしていないために、導電性繊維の導電
層が切断し、除電性能が低下しているものと思われる。
【0038】比較例2 実施例1において、混繊糸とする際のPETマルチフィ
ラメントに代えて、紡糸速度1000m/分で引取り、
巻き取ることなく続いて延伸倍率2.5倍で延伸した、
ト−タル強度3.9g/デニ−ル、初期ヤング率41g
/デニ−ルのナイロン−6マルチフィラメント30デニ
−ル/24フィラメントを用いて混繊糸を作製し、この
混繊糸を用いて実施例1と同様の2/1ツイル織物を作
製した。この織物を1年間実着用し、その間に250回
の繰り返し洗濯を行なった後の帯電電荷量は5.9μ・
ク−ロン/m↑2、芯抵抗は1×10↑11Ω/cm・
fであった。混繊糸を構成している芯糸がナイロン−6
の場合、糸長差が本発明の範囲内であってもナイロン−
6では強力支持の働きが不十分であり、側糸である導電
性繊維の導電層が切断し、除電性能が低下しているもの
と思われる。
【0039】
【発明の効果】本発明の混繊糸は優れた除電性能、とく
に長期間の使用や、洗濯の繰り返し等を経てもその除電
性能が低下しないので、作業服、防塵服、学生服等耐久
性および除電性能が要求される分野において極めて有用
性が高い。さらに種々の用途、たとえば外套、フォ−マ
ル、ユニフォ−ム、カ−ペット、テ−ブルマット、イン
テリア、カ−テン、複写機等に用いられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D01F 6/90 301 D01F 6/90 301 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 3/04 D01F 8/12 D01F 8/14 D02G 3/36 D01F 1/09 D01F 6/90 301

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維を側糸と
    し、非導電性ポリエチレンテレフタレ−ト系マルチフィ
    ラメントを芯糸とした混繊糸であり、該側糸が該芯糸よ
    りも0.5〜15%糸長が長く、かつ芯糸の初期ヤング
    率およびト−タル強度が該側糸の初期ヤング率およびト
    −タル強度よりもともに大きい混繊糸であって、 前記高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維が、ポリエチレン
    テレフタレ−ト系またはポリブチレンテレフタレ−ト系
    のポリマ−(A)を鞘成分、導電性金属酸化物からなる
    導電性物質を含有するポリアミド系熱可塑性ポリマ−
    (B)を芯成分とし、フィラメント芯抵抗が1kVの直
    流電圧において9×10↑10Ω/cm・fより小さ
    く、危険伸度が5%以上、かつ100℃の熱水中での収
    縮率が20%以下であることを特徴とする導電性混繊
    糸。
  2. 【請求項2】芯糸の総繊度が20〜100デニ−ルであ
    ることを特徴とする請求項1記載の導電性混繊糸。
  3. 【請求項3】芯糸に対する側糸の総繊度比が0.2〜2
    であることを特徴とする請求項1記載の導電性混繊糸。
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