JP2004204395A - 導電性混繊糸および布帛 - Google Patents
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Abstract
【課題】製糸性・加工性に優れ、しかも長期にわたって優れた除電性能を有する導電性混繊糸を提供する。
【解決手段】主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを15〜40重量%含有してなるポリマーAと、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステルを主成分とするポリマーBとを複合してなり、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、ポリマーBが繊維横断面積の70%以上95%以下を占有する導電性繊維と、比抵抗が1000×108Ω・cm以下であり沸水収縮率が導電性繊維の沸水収縮率以上である制電性繊維とを混繊してなることを特徴とする導電性混繊糸。
【選択図】なし
【解決手段】主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを15〜40重量%含有してなるポリマーAと、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステルを主成分とするポリマーBとを複合してなり、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、ポリマーBが繊維横断面積の70%以上95%以下を占有する導電性繊維と、比抵抗が1000×108Ω・cm以下であり沸水収縮率が導電性繊維の沸水収縮率以上である制電性繊維とを混繊してなることを特徴とする導電性混繊糸。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除電性能に優れた導電性混繊糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
除電性能に優れた導電性繊維については種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性エラストマーからなる導電ポリマー層と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる保護ポリマー層とが複合されてなり、且つ保護ポリマー層が繊維表面周長の60%以上を占有し、繊維全体重量の30重量%以上95重量%以下を形成する導電性繊維が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、除電性能と加工性等の両立を期して、導電性混繊糸についても開示がされている。
【0005】
例えば、高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維を側糸とし、非導電性ポリエチレンテレフタレート系マルチフィラメントを芯糸とした混繊糸であり、該側糸が該芯糸よりも0.5〜15%糸長が長く、かつ芯糸の初期ヤング率およびトータル破断強度よりともに大きい混繊糸であって、高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維がポリエチレンテレフタレート系またはポリブチレンテレフタレート系のポリマーを鞘成分、導電性金属酸化物からなる導電性物質を含有するポリアミド系熱可塑性ポリマーを芯成分とする導電性混繊糸が開示されている(特許文献2参照。)。
【0006】
また例えば、繊維形成性熱可塑性樹脂からなる保護ポリマー層、無機粒子を10〜80重量%含有する熱可塑性樹脂からなる隠蔽ポリマー層、および導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有するポリアミド系樹脂からなる導電ポリマー層で構成される導電性複合繊維を側糸とし、非導電性ポリエチレンテレフタレート系マルチフィラメントを芯糸とした混繊糸であり、該側糸が該芯糸よりも0.5〜15%糸長が長く、かつ芯糸の初期ヤング率およびトータル破断強度よりともに大きい混繊糸である導電性混繊糸が開示されている(特許文献3参照。)。
【0007】
しかしこれらのように導電成分と保護成分とを複合してなる導電性繊維は、成分剥離しやすく、紡糸延伸工程において製糸性が劣る。特に熱可塑性エラストマーは一般ポリエステルに比べて耐熱性が低いために、両者を安定して複合紡糸することが極めて困難である。また、複合仮撚加工、合撚加工、混繊加工や製織編などの高次加工工程において加工性が劣る。また、繊維長手方向に除電性能にバラツキが発生するといった問題がある。また、このような導電性繊維は、例えば作業服や防塵衣など耐久性のある高い除電性能が強く要求される分野で使用されるものであるが、このような用途での長期連続使用における過酷な曲げ、引っ張り、屈曲などの動作や洗濯が繰り返し行われると、導電成分からの導電性カーボンブラック等の脱落やクラックの発生により徐々に除電効果が低下していく。
【0008】
また、導電性混繊糸については、導電性繊維と非導電性繊維の熱収縮特性や摩擦特性などが異なるために、混繊糸の段階で、或いは製織編加工後の精錬や染色工程での熱処理時に、導電性繊維が非導電性繊維に被覆されてしまう。また、導電性繊維が導電性ポリマー層を芯成分とした芯鞘複合繊維である場合や、非導電性繊維の電気抵抗値や比抵抗値などが大きいもの(例えば一般ポリエステル繊維など)である場合には、導電性繊維あるいは導電性混繊糸の電気抵抗値や比抵抗値が大きくなり、優れた除電性能を得ることができない。
特にポリエステル繊維等の合成繊維は、羊毛や絹などの天然繊維、レーヨンやアセテート、あるいはアクリル系繊維に比較して疎水性であるため静電気が発生しやすく、導電性繊維(A)に高い除電性能を付与しても、織編物において本来導電性繊維が有する除電性能が発揮されない。
【0009】
【特許文献1】
特許第2801386号公報
【0010】
【特許文献2】
特許第3210787号公報
【0011】
【特許文献3】
特許第3210793号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、製糸性・加工性に優れ、しかも長期に渡って優れた除電性能を発揮する導電性混繊糸を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを15〜40重量%含有してなるポリマーAと、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステルを主成分とするポリマーBとを複合してなり、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、ポリマーBが繊維横断面積の70%以上95%以下を占有する導電性繊維と、比抵抗が1000×108Ω・cm以下であり沸水収縮率が導電性繊維の沸水収縮率以上である制電性繊維とを混繊してなることを特徴とする導電性混繊糸である。
【0014】
また本発明は、上記の導電性混繊糸を少なくとも一部に用いたことを特徴とする布帛である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の導電性混繊糸は、導電性繊維と制電性繊維とを混繊してなる。
【0017】
本発明における導電性繊維は、ポリマーAを導電成分とし、ポリマーBを保護成分とし、これらを複合してなる。
【0018】
本発明におけるポリマーAは、主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを含有してなる。
【0019】
本発明者らは、導電成分のベースポリマーに主な繰り返し単位がブチレンテレフタレートであるポリエステルを用いることにより、複合紡糸安定性や加工安定性を維持しつつ、長期使用においても除電性能があまり低下しないことを見出した。ポリブチレンテレフタレートは、K.Tashiro,Macromoleules,13,1378(1980)によると、外部より加えられた応力により、結晶c軸の短いα−fromと結晶c軸の長いβ−formとが可逆的に変化し、結晶c軸長が約1.4オングストローム(0.14nm)程度伸縮するとある。このポリブチレンテレフタレート固有の応力起因の結晶構造の変化は、外部からの応力を繊維構造の伸縮性に転移させるものであり、導電性繊維の導電成分に用いた場合においても、過酷な曲げ、引っ張り、屈曲に対する耐久性を有し、前述した様な導電性カーボンブラックの脱落やクラックの発生を抑制し、長期にわたり除電性能を維持するものであると推測する。
【0020】
ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量は15〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。導電性カーボンブラックの含有量が15重量%より少ない場合には十分な除電性能は発揮されない。一方、40重量%を超える場合では、ポリマー流動性が著しく低下して製糸性が極端に悪化する。カーボンブラックは完全に粒子分散をしている場合は一般に導電性が不良であって、ストラクチャーと呼ばれる連鎖構造をとると導電性が向上して導電性カーボンブラックと言われるものになる。従って、導電性カーボンブラックによって、ポリマーを導電化するにあたっては、このストラクチャーを破壊しないでカーボンブラックを分散させることが肝要となる。そして、導電性カーボンブラック含有複合体の電気伝導メカニズムとしては、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものが考えられるが、前者の方が主と考えられる。従って、カーボンブラックの連鎖が長く高密度ポリマー中に存在する方が接触確率大となり、高導電性となる。本発明者らの検討結果では、導電性カーボンブラック含有量15重量%未満では殆ど効果がなく、20重量%になると急激に導電性が向上し、30重量%を超えるとほぼ飽和する。
【0021】
ポリマーA中に含有せしめる導電性カーボンブラックとしては、10-3〜102Ω・cmの固有電気抵抗を有するものが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリマーBは、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステル(以下、各々を主成分とするポリエステルをそれぞれ、PET、PBT、PTTとも表記する。)を主成分とする。本発明における導電性繊維の繊維化の際の良好な複合安定性や製糸性、高次加工通過性を維持するために、ポリマーAと類似した熱特性や収縮特性を有する結晶性ポリエステルポリマーとするものである。また、これらにテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、フタール酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを本来ポリエステルホモポリマーの有する繊維形成性を損なわない程度に共重合させても良い。
【0023】
ポリマーAとポリマーBとの複合形態については、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出するようにすることが重要である。そうすることで、導電成分であるポリマーAの存在による除電性能の実効を得ることができる。
【0024】
複合形態としては、図1〜3に示すような、繊維表面に導電成分を配した海島型や偏心芯鞘型、さらには導電成分を鞘とした芯鞘型、サイドバイサイド型等を採用することができる。
【0025】
ポリマーAとポリマーBとの複合比率としては、ポリマーBが導電性繊維の繊維横断面積の70%以上95%以下を占有することが重要である。
保護成分であるポリマーBが繊維横断面積の95%を超えて多くなり、導電成分であるポリマーAが5%未満になると、安定した複合構造として紡糸するのが困難になる。特に導電ポリマーを糸横断面方向に分散させて複合する場合には、繊維長さ方向に導電ポリマーの連続層を得るのが困難になる。一方、導電ポリマーAが繊維横断面積の30%を超えると、複合した系の紡糸性、延伸性、さらには繊維物性が極端に低下し、実用性は全く失われてしまう。従って、導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合面積比率A:Bは5:95〜30:70であり、好ましくは10:90〜20:80である。
【0026】
本発明における制電性繊維は、比抵抗が1000×108Ω・cm以下である。当該制電性繊維を導電性繊維と混繊することで、コストを大きく上げることなく、前述のような合成繊維の静電気による除電性能低下の弊害を抑制しつつ製織編性を確保できる。
【0027】
かかる制電性繊維は、制電剤を繊維に付与することにより得ることができる。制電剤としては、具体的にはエチレンオキシドやプロピレンオキシドの縮合生成物あるいは両者の縮合生成物などのポリアルキレンエーテル(ポリアルキレンオキシド)や、ポリアルキレンオキシド成分にアミノカルボン酸、ラクタム、ジアミン、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステルなどを反応させたポリエーテルアミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミドなどのブロック共重合ポリマーなどが挙げられ、なかでもポリエーテルエステルアミドが好ましい。
【0028】
本発明における制電性繊維の制電剤の添加量は、同繊維に対して0.2〜5重量%の範囲であることが好ましい。0.2重量%以上とすることで制電性の実効を得ることができ、5重量%以下とすることで安定した製糸性を得ることができる。
【0029】
本発明における制電性繊維の沸水収縮率は導電性繊維の沸水収縮率以上とする必要がある。制電性繊維の沸水収縮率が導電性繊維のそれを下回る場合、高次加工工程で混繊糸が熱処理される際に、導電性繊維の方が制電性繊維に対して大きく収縮して制電性繊維に被覆されていまい、織編物表面に導電性繊維が露呈しないことから布帛表面の除電性能が低下してしまう。制電性繊維の沸水収縮率は導電性繊維の沸水収縮率よりも0.5ポイント以上大きいことが好ましい。
【0030】
本発明における制電性繊維を構成するポリマーの主な繰り返し単位は、導電性繊維のポリマーBを構成するポリエステルの主な繰り返し単位と同じであることが好ましい。ここで「同じである」とは、導電性繊維のポリマーBのポリエステルがPETであれば制電性繊維を構成するポリマーもPET、同じくPBTに対しPBT、また同じくPTTに対しPTTといった程度のことを言う。このように導電性繊維と制電性繊維の熱特性や収縮特性あるいは結晶特性を類似したものとすることにより、混繊糸としての一体安定性や染色安定性、製織編性その他の高次加工工程通過性などを確保することができる。
【0031】
本発明における制電性繊維のフィラメント数は、導電性繊維のフィラメント数に対して2〜40倍とすることが好ましい。40倍以下とすることで、混繊糸において導電性繊維が制電性繊維に被覆されて除電性能が低下しやすくなるのを防ぐことができる。より好ましくは5〜15倍程度である。
【0032】
本発明の導電性混繊糸の製造方法としては、導電性繊維と制電性繊維を各々別々に紡糸・延伸したものを混繊処理や合撚する方法、各々の未延伸糸を合糸しながら同時延伸する方法、紡糸段階で混繊未延伸糸を紡糸して延伸する方法、混繊糸を直接紡糸延伸する方法など、いずれの方法を採用しても良いが、混繊糸において導電性繊維が制電性繊維に完全に被覆されないようにするために、延伸時の給糸あるいは引き取りや巻き取り時に各繊維に掛かる応力(cN/dtex)について、導電性繊維の方が制電性繊維に対して低応力とすることが好ましく、応力を制御するという面では、導電性繊維と制電性繊維を各々別々に紡糸・延伸したものを混繊処理や合撚する方法や、各々の未延伸糸を合糸しながら同時延伸する方法が好ましい。
【0033】
次に、本発明の布帛は、本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いたものである。
【0034】
本発明の導電性繊維を織物などに使用する場合、布帛に要求される除電性能によって打ち込み間隔を好適に選択すれば良く、一般的防塵衣用途では3〜8mm程度の間隔とするのが好ましい。
【0035】
本発明の布帛は、防塵衣等に好ましく採用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明する。なお、本発明の実施例中における測定方法は次の通りである。
【0037】
(1)製糸性
通常の複合紡糸機にて、1,000kgの導電性繊維の未延伸糸を巻き取った後に、通常の延伸機にてボビンに0.5kgずつの延伸糸を巻き取り、毛羽や糸切れの発生を評価基準として、1,000kgの未延伸糸に対する導電性繊維の製品収率で以下の通り判定した。
○:95%以上、△:80〜94%、×:79%以下。
【0038】
(2)沸水収縮率
JIS L 1013中の「熱水収縮率A法」に準じて測定した。熱水は一旦沸騰させた98℃のものを用いた。
【0039】
1.比抵抗
フィラメント糸を束ねて2222デシテックス(2000デニール)とし、弱アニオン系洗剤を用いて十分に精錬して油剤などを除いた後、20℃、43%RH(相対湿度)の状態で24時間放置後、その両端に導電塗料(ドータイト)を塗布して端部を固定した後、該端部を電極として印可電圧500Vにおける電流値を測定することにより、比抵抗値を求めた。
【0040】
2.摩擦帯電圧
JIS L 1094B法に準じて測定し、織物で測定する場合は、50cm四方の織物を10cm×10cmの格子状に区分けして、25箇所を測定し、25箇所の1つにでも摩擦帯電圧が200V以上となるものがある場合には不合格とした。
【0041】
4.織物品位
ツイル織物について20人の熟練者による官能評価を行った。市販の40ワット蛍光灯下で布帛表面を観察し、表面にシワやシボ立ちが無いと判断した人数で評価を行い、○および△を合格基準とした。
○:18人以上、△:14〜17人、×:13人以下。
【0042】
(実施例1)
PBTをベースポリマーとして、これに導電性カーボンブラックを添加後の総量に対して25重量%添加してポリマーAとし、PETをポリマーBとした。複合面積比率A:B=15:85として図1に示すような導電ポリマーAを繊維表面に露出させた断面形態となるよう複合し、紡速1200m/分で紡糸し、その後2.8倍で延伸、150℃で熱処理して、沸水収縮率が6.5%、比抵抗が4.3×102Ω・cmの28デシテックス5フィラメントの導電性繊維を得た。この時、製品収率は96%と良好な製糸性であった。
【0043】
次に、PETをベースポリマーとして、これにポリエーテルエステルアミドを添加後の総量に対して1.0重量%添加して、吐出冷却後、周速度1800m/分で温度90℃に加熱した引取ローラーに引き取り、一旦巻き取らずに引取ローラーと140℃に加熱した延伸ローラーとの間で2.7倍に延伸、熱セットし、4500m/分で巻き取り、沸水収縮率が7.5%、比抵抗が300×108Ω・cmの84デシテックス36フィラメントの制電性繊維を得た。
【0044】
次に、上記の導電性繊維と制電性繊維とをそれぞれ別々の供給ローラーより、導電性繊維の給糸張力が制電性繊維の給糸張力に対して、0.5cN/dtex低くなるように供給速度を調整して送り込み、両繊維を合糸した後に0.4MPaの圧空エア交絡ノズルを用いて交絡混繊させて、図1に示すような109デシテックス41フィラメントの本発明の導電性混繊糸を得た。
【0045】
経糸・緯糸ともに84デシテックス72フィラメントの通常のPETマルチフィラメントを用いて製織する際、上記混繊糸をタテヨコ方向に5mm×5mmの格子を形成するように打ち込み、本発明の布帛としてタテ207本/2.54cm、ヨコ104本/2.54cmのツイル織物を製織し、通常の染色加工を施した。この織物の表面品位は良好なものであり、摩擦帯電圧は59Vと良好な除電性能を有するものであった。この織物を1年間着用し、その間280回の洗濯を繰り返した後の摩擦帯電圧は72Vであり、除電性能の耐久性も良好なものであった。
【0046】
(実施例2〜3)
導電性繊維のポリマーBと制電性繊維のベースポリマーとを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。各々導電性繊維、制電性繊維の製糸性も問題なく、これらの混繊糸を各々用いて実施例1と同様に本発明の布帛としてツイル織物を製織した結果、表面品位、摩擦帯電圧、1年着用後の摩擦帯電圧ともに良好な結果を得た。
【0047】
(実施例4)
導電性繊維のポリマーAとポリマーBとの複合面積比率がA:B=30:70となるように吐出量比率を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。この際、導電性繊維の製品収率は80%と実際生産するには問題の無いレベルであった。また、混繊糸を用いたツイル織物については、織物品位、除電性能およびその耐久性には問題ないものであった。
【0048】
(実施例5)
導電性繊維のポリマーAとポリマーBとの複合面積比率がA:B=5:95となるように吐出量比率を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。この際、導電性繊維の製品収率は97%と製糸性良好であり、混繊糸を用いた本発明の布帛であるツイル織物については、織物品位、除電性能およびその耐久性には問題ないものであった。
【0049】
実施例1〜5の結果をまとめて、表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(比較例1)
ポリマーAのカーボンブラック含有量を10重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸等を得た。この際、導電性繊維に該当するものの比抵抗は8.1×108Ω・cmとなり、除電性能の低い導電繊維となった。また、得た混繊糸を用いた織物では摩擦帯電圧が818Vとなり、目的とする除電性能が得られなかった。
【0052】
(比較例2)
ポリマーAのカーボンブラック含有量を50重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性繊維の複合紡糸を試みたが、ポリマーAの吐出が非常に不安定であり、紡糸糸切れも頻発し、製品採取不可となった。原因を調査した結果、ポリマーAの紡糸配管内部が閉塞しており、また配管内部で導電ポリマーが滞留して紡糸パックまで到達していないことが判明した。これは、カーボンブラック含有量が過大になったために、流動性が著しく低下したことによるものと考えられる。
【0053】
(比較例3)
ポリマーAのベースポリマーをナイロン6とし、ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量を35重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸を得た。この混繊糸を用いた織物では、1年着用後の摩擦帯電圧が極端に低下しており、織物から、導電性混繊糸および導電性繊維を抜糸し詳細に観察したところ、ポリマーAの部分的な欠落が進行し、繊維長手方向の連続性が低下していることが判明した。
【0054】
(比較例4)
制電性繊維のかわりに通常のPETの84デシテックス36フィラメントの非制電性繊維を用いた以外は実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸は、摩擦帯電圧が694Vとなり、目的とするような導電性混繊糸とは言えないものであった。
【0055】
(比較例5)
制電性繊維に対応するものにおいてポリエーテルエステルアミドの含有量を0.1重量%とし、この比抵抗値1470×108Ω・cmである繊維を制電性繊維のかわりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸では、摩擦耐電圧が317Vとなり、目的とする導電性混繊糸とは言えないものであった。
【0056】
比較例1〜5の結果をまとめて、表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(比較例6)
導電性繊維の延伸熱処理条件を変更し、沸水収縮率を10.2%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸を得た。得られた混繊糸を用いた織物では、測定位置によって摩擦耐電圧が61〜344Vとムラが発生し、摩擦耐電圧が高い部分の導電性混繊糸を詳細観察したところ、混繊糸における導電性繊維が制電性繊維に被覆されていることが判明した。
【0059】
(比較例7)
導電性繊維に対応するものにおいてポリマーAをポリマーBで完全に被覆した芯鞘複合繊維としたこと以外は、実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸を用いた織物では、摩擦耐電圧は900Vとなり、目的とする除電性能が得られなかった。
【0060】
比較例6,7の結果をまとめて、表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、製糸性・加工性に優れ、しかも長期にわたって優れた除電性能を有する導電性混繊糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【図2】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【図3】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【符号の説明】
A:ポリマーA
B:ポリマーB
1:導電性繊維
2:制電性繊維
【発明の属する技術分野】
本発明は、除電性能に優れた導電性混繊糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
除電性能に優れた導電性繊維については種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性エラストマーからなる導電ポリマー層と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなる保護ポリマー層とが複合されてなり、且つ保護ポリマー層が繊維表面周長の60%以上を占有し、繊維全体重量の30重量%以上95重量%以下を形成する導電性繊維が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、除電性能と加工性等の両立を期して、導電性混繊糸についても開示がされている。
【0005】
例えば、高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維を側糸とし、非導電性ポリエチレンテレフタレート系マルチフィラメントを芯糸とした混繊糸であり、該側糸が該芯糸よりも0.5〜15%糸長が長く、かつ芯糸の初期ヤング率およびトータル破断強度よりともに大きい混繊糸であって、高配向未延伸導電性芯鞘複合繊維がポリエチレンテレフタレート系またはポリブチレンテレフタレート系のポリマーを鞘成分、導電性金属酸化物からなる導電性物質を含有するポリアミド系熱可塑性ポリマーを芯成分とする導電性混繊糸が開示されている(特許文献2参照。)。
【0006】
また例えば、繊維形成性熱可塑性樹脂からなる保護ポリマー層、無機粒子を10〜80重量%含有する熱可塑性樹脂からなる隠蔽ポリマー層、および導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有するポリアミド系樹脂からなる導電ポリマー層で構成される導電性複合繊維を側糸とし、非導電性ポリエチレンテレフタレート系マルチフィラメントを芯糸とした混繊糸であり、該側糸が該芯糸よりも0.5〜15%糸長が長く、かつ芯糸の初期ヤング率およびトータル破断強度よりともに大きい混繊糸である導電性混繊糸が開示されている(特許文献3参照。)。
【0007】
しかしこれらのように導電成分と保護成分とを複合してなる導電性繊維は、成分剥離しやすく、紡糸延伸工程において製糸性が劣る。特に熱可塑性エラストマーは一般ポリエステルに比べて耐熱性が低いために、両者を安定して複合紡糸することが極めて困難である。また、複合仮撚加工、合撚加工、混繊加工や製織編などの高次加工工程において加工性が劣る。また、繊維長手方向に除電性能にバラツキが発生するといった問題がある。また、このような導電性繊維は、例えば作業服や防塵衣など耐久性のある高い除電性能が強く要求される分野で使用されるものであるが、このような用途での長期連続使用における過酷な曲げ、引っ張り、屈曲などの動作や洗濯が繰り返し行われると、導電成分からの導電性カーボンブラック等の脱落やクラックの発生により徐々に除電効果が低下していく。
【0008】
また、導電性混繊糸については、導電性繊維と非導電性繊維の熱収縮特性や摩擦特性などが異なるために、混繊糸の段階で、或いは製織編加工後の精錬や染色工程での熱処理時に、導電性繊維が非導電性繊維に被覆されてしまう。また、導電性繊維が導電性ポリマー層を芯成分とした芯鞘複合繊維である場合や、非導電性繊維の電気抵抗値や比抵抗値などが大きいもの(例えば一般ポリエステル繊維など)である場合には、導電性繊維あるいは導電性混繊糸の電気抵抗値や比抵抗値が大きくなり、優れた除電性能を得ることができない。
特にポリエステル繊維等の合成繊維は、羊毛や絹などの天然繊維、レーヨンやアセテート、あるいはアクリル系繊維に比較して疎水性であるため静電気が発生しやすく、導電性繊維(A)に高い除電性能を付与しても、織編物において本来導電性繊維が有する除電性能が発揮されない。
【0009】
【特許文献1】
特許第2801386号公報
【0010】
【特許文献2】
特許第3210787号公報
【0011】
【特許文献3】
特許第3210793号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、製糸性・加工性に優れ、しかも長期に渡って優れた除電性能を発揮する導電性混繊糸を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを15〜40重量%含有してなるポリマーAと、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステルを主成分とするポリマーBとを複合してなり、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、ポリマーBが繊維横断面積の70%以上95%以下を占有する導電性繊維と、比抵抗が1000×108Ω・cm以下であり沸水収縮率が導電性繊維の沸水収縮率以上である制電性繊維とを混繊してなることを特徴とする導電性混繊糸である。
【0014】
また本発明は、上記の導電性混繊糸を少なくとも一部に用いたことを特徴とする布帛である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の導電性混繊糸は、導電性繊維と制電性繊維とを混繊してなる。
【0017】
本発明における導電性繊維は、ポリマーAを導電成分とし、ポリマーBを保護成分とし、これらを複合してなる。
【0018】
本発明におけるポリマーAは、主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを含有してなる。
【0019】
本発明者らは、導電成分のベースポリマーに主な繰り返し単位がブチレンテレフタレートであるポリエステルを用いることにより、複合紡糸安定性や加工安定性を維持しつつ、長期使用においても除電性能があまり低下しないことを見出した。ポリブチレンテレフタレートは、K.Tashiro,Macromoleules,13,1378(1980)によると、外部より加えられた応力により、結晶c軸の短いα−fromと結晶c軸の長いβ−formとが可逆的に変化し、結晶c軸長が約1.4オングストローム(0.14nm)程度伸縮するとある。このポリブチレンテレフタレート固有の応力起因の結晶構造の変化は、外部からの応力を繊維構造の伸縮性に転移させるものであり、導電性繊維の導電成分に用いた場合においても、過酷な曲げ、引っ張り、屈曲に対する耐久性を有し、前述した様な導電性カーボンブラックの脱落やクラックの発生を抑制し、長期にわたり除電性能を維持するものであると推測する。
【0020】
ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量は15〜40重量%であり、好ましくは20〜30重量%である。導電性カーボンブラックの含有量が15重量%より少ない場合には十分な除電性能は発揮されない。一方、40重量%を超える場合では、ポリマー流動性が著しく低下して製糸性が極端に悪化する。カーボンブラックは完全に粒子分散をしている場合は一般に導電性が不良であって、ストラクチャーと呼ばれる連鎖構造をとると導電性が向上して導電性カーボンブラックと言われるものになる。従って、導電性カーボンブラックによって、ポリマーを導電化するにあたっては、このストラクチャーを破壊しないでカーボンブラックを分散させることが肝要となる。そして、導電性カーボンブラック含有複合体の電気伝導メカニズムとしては、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものが考えられるが、前者の方が主と考えられる。従って、カーボンブラックの連鎖が長く高密度ポリマー中に存在する方が接触確率大となり、高導電性となる。本発明者らの検討結果では、導電性カーボンブラック含有量15重量%未満では殆ど効果がなく、20重量%になると急激に導電性が向上し、30重量%を超えるとほぼ飽和する。
【0021】
ポリマーA中に含有せしめる導電性カーボンブラックとしては、10-3〜102Ω・cmの固有電気抵抗を有するものが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリマーBは、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステル(以下、各々を主成分とするポリエステルをそれぞれ、PET、PBT、PTTとも表記する。)を主成分とする。本発明における導電性繊維の繊維化の際の良好な複合安定性や製糸性、高次加工通過性を維持するために、ポリマーAと類似した熱特性や収縮特性を有する結晶性ポリエステルポリマーとするものである。また、これらにテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、フタール酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを本来ポリエステルホモポリマーの有する繊維形成性を損なわない程度に共重合させても良い。
【0023】
ポリマーAとポリマーBとの複合形態については、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出するようにすることが重要である。そうすることで、導電成分であるポリマーAの存在による除電性能の実効を得ることができる。
【0024】
複合形態としては、図1〜3に示すような、繊維表面に導電成分を配した海島型や偏心芯鞘型、さらには導電成分を鞘とした芯鞘型、サイドバイサイド型等を採用することができる。
【0025】
ポリマーAとポリマーBとの複合比率としては、ポリマーBが導電性繊維の繊維横断面積の70%以上95%以下を占有することが重要である。
保護成分であるポリマーBが繊維横断面積の95%を超えて多くなり、導電成分であるポリマーAが5%未満になると、安定した複合構造として紡糸するのが困難になる。特に導電ポリマーを糸横断面方向に分散させて複合する場合には、繊維長さ方向に導電ポリマーの連続層を得るのが困難になる。一方、導電ポリマーAが繊維横断面積の30%を超えると、複合した系の紡糸性、延伸性、さらには繊維物性が極端に低下し、実用性は全く失われてしまう。従って、導電ポリマーAと保護ポリマーBとの複合面積比率A:Bは5:95〜30:70であり、好ましくは10:90〜20:80である。
【0026】
本発明における制電性繊維は、比抵抗が1000×108Ω・cm以下である。当該制電性繊維を導電性繊維と混繊することで、コストを大きく上げることなく、前述のような合成繊維の静電気による除電性能低下の弊害を抑制しつつ製織編性を確保できる。
【0027】
かかる制電性繊維は、制電剤を繊維に付与することにより得ることができる。制電剤としては、具体的にはエチレンオキシドやプロピレンオキシドの縮合生成物あるいは両者の縮合生成物などのポリアルキレンエーテル(ポリアルキレンオキシド)や、ポリアルキレンオキシド成分にアミノカルボン酸、ラクタム、ジアミン、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステルなどを反応させたポリエーテルアミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミドなどのブロック共重合ポリマーなどが挙げられ、なかでもポリエーテルエステルアミドが好ましい。
【0028】
本発明における制電性繊維の制電剤の添加量は、同繊維に対して0.2〜5重量%の範囲であることが好ましい。0.2重量%以上とすることで制電性の実効を得ることができ、5重量%以下とすることで安定した製糸性を得ることができる。
【0029】
本発明における制電性繊維の沸水収縮率は導電性繊維の沸水収縮率以上とする必要がある。制電性繊維の沸水収縮率が導電性繊維のそれを下回る場合、高次加工工程で混繊糸が熱処理される際に、導電性繊維の方が制電性繊維に対して大きく収縮して制電性繊維に被覆されていまい、織編物表面に導電性繊維が露呈しないことから布帛表面の除電性能が低下してしまう。制電性繊維の沸水収縮率は導電性繊維の沸水収縮率よりも0.5ポイント以上大きいことが好ましい。
【0030】
本発明における制電性繊維を構成するポリマーの主な繰り返し単位は、導電性繊維のポリマーBを構成するポリエステルの主な繰り返し単位と同じであることが好ましい。ここで「同じである」とは、導電性繊維のポリマーBのポリエステルがPETであれば制電性繊維を構成するポリマーもPET、同じくPBTに対しPBT、また同じくPTTに対しPTTといった程度のことを言う。このように導電性繊維と制電性繊維の熱特性や収縮特性あるいは結晶特性を類似したものとすることにより、混繊糸としての一体安定性や染色安定性、製織編性その他の高次加工工程通過性などを確保することができる。
【0031】
本発明における制電性繊維のフィラメント数は、導電性繊維のフィラメント数に対して2〜40倍とすることが好ましい。40倍以下とすることで、混繊糸において導電性繊維が制電性繊維に被覆されて除電性能が低下しやすくなるのを防ぐことができる。より好ましくは5〜15倍程度である。
【0032】
本発明の導電性混繊糸の製造方法としては、導電性繊維と制電性繊維を各々別々に紡糸・延伸したものを混繊処理や合撚する方法、各々の未延伸糸を合糸しながら同時延伸する方法、紡糸段階で混繊未延伸糸を紡糸して延伸する方法、混繊糸を直接紡糸延伸する方法など、いずれの方法を採用しても良いが、混繊糸において導電性繊維が制電性繊維に完全に被覆されないようにするために、延伸時の給糸あるいは引き取りや巻き取り時に各繊維に掛かる応力(cN/dtex)について、導電性繊維の方が制電性繊維に対して低応力とすることが好ましく、応力を制御するという面では、導電性繊維と制電性繊維を各々別々に紡糸・延伸したものを混繊処理や合撚する方法や、各々の未延伸糸を合糸しながら同時延伸する方法が好ましい。
【0033】
次に、本発明の布帛は、本発明の導電性繊維を少なくとも一部に用いたものである。
【0034】
本発明の導電性繊維を織物などに使用する場合、布帛に要求される除電性能によって打ち込み間隔を好適に選択すれば良く、一般的防塵衣用途では3〜8mm程度の間隔とするのが好ましい。
【0035】
本発明の布帛は、防塵衣等に好ましく採用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明する。なお、本発明の実施例中における測定方法は次の通りである。
【0037】
(1)製糸性
通常の複合紡糸機にて、1,000kgの導電性繊維の未延伸糸を巻き取った後に、通常の延伸機にてボビンに0.5kgずつの延伸糸を巻き取り、毛羽や糸切れの発生を評価基準として、1,000kgの未延伸糸に対する導電性繊維の製品収率で以下の通り判定した。
○:95%以上、△:80〜94%、×:79%以下。
【0038】
(2)沸水収縮率
JIS L 1013中の「熱水収縮率A法」に準じて測定した。熱水は一旦沸騰させた98℃のものを用いた。
【0039】
1.比抵抗
フィラメント糸を束ねて2222デシテックス(2000デニール)とし、弱アニオン系洗剤を用いて十分に精錬して油剤などを除いた後、20℃、43%RH(相対湿度)の状態で24時間放置後、その両端に導電塗料(ドータイト)を塗布して端部を固定した後、該端部を電極として印可電圧500Vにおける電流値を測定することにより、比抵抗値を求めた。
【0040】
2.摩擦帯電圧
JIS L 1094B法に準じて測定し、織物で測定する場合は、50cm四方の織物を10cm×10cmの格子状に区分けして、25箇所を測定し、25箇所の1つにでも摩擦帯電圧が200V以上となるものがある場合には不合格とした。
【0041】
4.織物品位
ツイル織物について20人の熟練者による官能評価を行った。市販の40ワット蛍光灯下で布帛表面を観察し、表面にシワやシボ立ちが無いと判断した人数で評価を行い、○および△を合格基準とした。
○:18人以上、△:14〜17人、×:13人以下。
【0042】
(実施例1)
PBTをベースポリマーとして、これに導電性カーボンブラックを添加後の総量に対して25重量%添加してポリマーAとし、PETをポリマーBとした。複合面積比率A:B=15:85として図1に示すような導電ポリマーAを繊維表面に露出させた断面形態となるよう複合し、紡速1200m/分で紡糸し、その後2.8倍で延伸、150℃で熱処理して、沸水収縮率が6.5%、比抵抗が4.3×102Ω・cmの28デシテックス5フィラメントの導電性繊維を得た。この時、製品収率は96%と良好な製糸性であった。
【0043】
次に、PETをベースポリマーとして、これにポリエーテルエステルアミドを添加後の総量に対して1.0重量%添加して、吐出冷却後、周速度1800m/分で温度90℃に加熱した引取ローラーに引き取り、一旦巻き取らずに引取ローラーと140℃に加熱した延伸ローラーとの間で2.7倍に延伸、熱セットし、4500m/分で巻き取り、沸水収縮率が7.5%、比抵抗が300×108Ω・cmの84デシテックス36フィラメントの制電性繊維を得た。
【0044】
次に、上記の導電性繊維と制電性繊維とをそれぞれ別々の供給ローラーより、導電性繊維の給糸張力が制電性繊維の給糸張力に対して、0.5cN/dtex低くなるように供給速度を調整して送り込み、両繊維を合糸した後に0.4MPaの圧空エア交絡ノズルを用いて交絡混繊させて、図1に示すような109デシテックス41フィラメントの本発明の導電性混繊糸を得た。
【0045】
経糸・緯糸ともに84デシテックス72フィラメントの通常のPETマルチフィラメントを用いて製織する際、上記混繊糸をタテヨコ方向に5mm×5mmの格子を形成するように打ち込み、本発明の布帛としてタテ207本/2.54cm、ヨコ104本/2.54cmのツイル織物を製織し、通常の染色加工を施した。この織物の表面品位は良好なものであり、摩擦帯電圧は59Vと良好な除電性能を有するものであった。この織物を1年間着用し、その間280回の洗濯を繰り返した後の摩擦帯電圧は72Vであり、除電性能の耐久性も良好なものであった。
【0046】
(実施例2〜3)
導電性繊維のポリマーBと制電性繊維のベースポリマーとを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。各々導電性繊維、制電性繊維の製糸性も問題なく、これらの混繊糸を各々用いて実施例1と同様に本発明の布帛としてツイル織物を製織した結果、表面品位、摩擦帯電圧、1年着用後の摩擦帯電圧ともに良好な結果を得た。
【0047】
(実施例4)
導電性繊維のポリマーAとポリマーBとの複合面積比率がA:B=30:70となるように吐出量比率を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。この際、導電性繊維の製品収率は80%と実際生産するには問題の無いレベルであった。また、混繊糸を用いたツイル織物については、織物品位、除電性能およびその耐久性には問題ないものであった。
【0048】
(実施例5)
導電性繊維のポリマーAとポリマーBとの複合面積比率がA:B=5:95となるように吐出量比率を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で本発明の導電性混繊糸を得た。この際、導電性繊維の製品収率は97%と製糸性良好であり、混繊糸を用いた本発明の布帛であるツイル織物については、織物品位、除電性能およびその耐久性には問題ないものであった。
【0049】
実施例1〜5の結果をまとめて、表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(比較例1)
ポリマーAのカーボンブラック含有量を10重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸等を得た。この際、導電性繊維に該当するものの比抵抗は8.1×108Ω・cmとなり、除電性能の低い導電繊維となった。また、得た混繊糸を用いた織物では摩擦帯電圧が818Vとなり、目的とする除電性能が得られなかった。
【0052】
(比較例2)
ポリマーAのカーボンブラック含有量を50重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性繊維の複合紡糸を試みたが、ポリマーAの吐出が非常に不安定であり、紡糸糸切れも頻発し、製品採取不可となった。原因を調査した結果、ポリマーAの紡糸配管内部が閉塞しており、また配管内部で導電ポリマーが滞留して紡糸パックまで到達していないことが判明した。これは、カーボンブラック含有量が過大になったために、流動性が著しく低下したことによるものと考えられる。
【0053】
(比較例3)
ポリマーAのベースポリマーをナイロン6とし、ポリマーAにおける導電性カーボンブラックの含有量を35重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸を得た。この混繊糸を用いた織物では、1年着用後の摩擦帯電圧が極端に低下しており、織物から、導電性混繊糸および導電性繊維を抜糸し詳細に観察したところ、ポリマーAの部分的な欠落が進行し、繊維長手方向の連続性が低下していることが判明した。
【0054】
(比較例4)
制電性繊維のかわりに通常のPETの84デシテックス36フィラメントの非制電性繊維を用いた以外は実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸は、摩擦帯電圧が694Vとなり、目的とするような導電性混繊糸とは言えないものであった。
【0055】
(比較例5)
制電性繊維に対応するものにおいてポリエーテルエステルアミドの含有量を0.1重量%とし、この比抵抗値1470×108Ω・cmである繊維を制電性繊維のかわりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸では、摩擦耐電圧が317Vとなり、目的とする導電性混繊糸とは言えないものであった。
【0056】
比較例1〜5の結果をまとめて、表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(比較例6)
導電性繊維の延伸熱処理条件を変更し、沸水収縮率を10.2%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で混繊糸を得た。得られた混繊糸を用いた織物では、測定位置によって摩擦耐電圧が61〜344Vとムラが発生し、摩擦耐電圧が高い部分の導電性混繊糸を詳細観察したところ、混繊糸における導電性繊維が制電性繊維に被覆されていることが判明した。
【0059】
(比較例7)
導電性繊維に対応するものにおいてポリマーAをポリマーBで完全に被覆した芯鞘複合繊維としたこと以外は、実施例1と同様にして混繊糸を得た。得られた混繊糸を用いた織物では、摩擦耐電圧は900Vとなり、目的とする除電性能が得られなかった。
【0060】
比較例6,7の結果をまとめて、表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、製糸性・加工性に優れ、しかも長期にわたって優れた除電性能を有する導電性混繊糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【図2】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【図3】本発明導電性混繊糸の混繊糸横断面の一具体例である。
【符号の説明】
A:ポリマーA
B:ポリマーB
1:導電性繊維
2:制電性繊維
Claims (4)
- 主な繰り返し単位をブチレンテレフタレートとするポリエステルが導電性カーボンブラックを15〜40重量%含有してなるポリマーAと、主な繰り返し単位を(a)エチレンテレフタレート、(b)ブチレンテレフタレートおよび(c)トリメチレンテレフタレートのうちのいずれかとするポリエステルを主成分とするポリマーBとを複合してなり、ポリマーAの少なくとも一部が繊維表面に露出し、ポリマーBが繊維横断面積の70%以上95%以下を占有する導電性繊維と、比抵抗が1000×108Ω・cm以下であり沸水収縮率が導電性繊維の沸水収縮率以上である制電性繊維とを混繊してなることを特徴とする導電性混繊糸。
- 制電性繊維を構成するポリマーの主な繰り返し単位が導電性繊維のポリマーBを構成するポリエステルの主な繰り返し単位と同じであることを特徴とする請求項1記載の導電性混繊糸。
- 制電性繊維のフィラメント数が導電性繊維のフィラメント数の2〜40倍であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性混繊糸。
- 請求項1〜3のいずれか記載の導電性混繊糸を少なくとも一部に用いたことを特徴とする布帛。
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