JP4162010B2 - 2値位相シフトキーイング(bpsk)信号のコヒーレント復調のためのシステム - Google Patents

2値位相シフトキーイング(bpsk)信号のコヒーレント復調のためのシステム Download PDF

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Description

本発明は、2値位相シフトキーイング(BPSK)信号の復調のためのシステムに関する。
本発明の一般的な適用分野は、デジタル通信、特に、無線デジタル通信である。
正弦波信号のデジタル位相シフトキーイング(PSK)は、耐ノイズ性と、必要とされる帯域幅との双方の点から見て、最も効果的な変調技術の1つである。それにもかかわらず、PSK信号の復調は、複雑な復調器システムを必要とする。従って、効率が悪いその他のデジタル変調方式、例えば、周波数シフトキーイング(FSK)または振幅シフトキーイング(ASK)は、簡単な復調のため、通常、好まれる。
最も単純なPSK信号は、2値PSK(BPSK)信号である。この場合、搬送波位相は、ビットストリームに従って、2つの可能な状態、すなわち、0°と180°との間でシフトされる。+1(0°位相状態)か、あるいは−1(180°位相状態)を搬送波に掛けることによりBPSK信号を容易に獲得できる。受信機の観点から、入ってきたBPSK信号の位相が0°状態または180°状態に対応するかを知ることは不可能である。その理由は、放出器から受信機への実際の伝播路が通常、知られていないという事実のためである。この不確定性を回避するため、送信されるべき情報を、固定位相値として符号化する代わりに、位相状態間の遷移として符号化する。従って、論理「1」を送信すべきであれば、搬送波信号の位相をシフトする一方で、論理「0」について位相を変えず、逆もまた同様とする。このように符号化された信号は、差動BPSK(DBPSK)として既知である。信号の観点から、BPSKとDBPSKとの間に違いがないことに留意すべきである。これらの間での唯一の相違は、基底帯域信号の(送信機側での)前処理または(受信機側での)後処理である。図1には、(ビットストリームから、または、処理されたビットストリームから派生された)基底帯域信号と、所望の周波数の正弦波搬送波との積として生成されたBPSKまたはDBPSK信号を示す。
BPSK信号を復調する通常の手続きは、コヒーレント復調手続きである。基本的には、復調処理は、受信した信号に、元の搬送波と同じ周波数の基準信号を掛けることから成る。
BPSK信号を、以下のように数学的に表現できる。
BPSK=±Acos(ωt+ψ) (1)
ここで、+の符号は0°位相状態に対応し、−の符号は180°位相状態に対応する。Aは、受信した信号の振幅であり、ψは、信号伝播による任意の位相である。
基準信号、すなわち、Sは、以下のように得られる(振幅は、簡単化のために1に設定されている)。
S=cos(ωt) (2)
積、すなわち、Pを、次の通りに表現できる。
P=±Acos(ωt+ψ)・cos(ωt)=±A/2cos(ψ)±A/2cos(2ωt+ψ) (3)
最終的には、Pを低域通過フィルタ処理することにより、以下の基底帯域表現が得られる。
LPF=±A/2cos(ψ) (4)
この結果は、元の変調(±)を再生する信号、すなわち、PLPFである。(4)から、伝播位相ψが0°または180°であれば、(位相の不確定性にかかわらず、)復調処理の効率は最大に達する。これに反して、ψ=±90°であれば、復調処理の効率はゼロである。この事実は、伝播位相の不確定性であるPSK信号のコヒーレント復調の第1の欠点を指摘する。第2の欠点であって、最も重要な欠点は、元の搬送波と全く同じ周波数の基準信号の入手可能性である。
双方の問題を克服する通常の方法は、搬送波回復回路を用いることによる。搬送波回復は、同期化ループを用いることにより得られる。2乗ループ及びコスタスループは、最も広く用いられている。2乗ループ及びコスタスループの特性及び動作を、図2及び図3にそれぞれ示す。
図2に示すように、2乗ループは、2乗ブロック及び帯域通過フィルタ(BPF)から成り、これにより、BPSK入力信号から、元の搬送波の周波数の2倍の周波数の基準信号を、理想的には、位相変調なしで発生する。位相/周波数検出器、ループフィルタ及び電圧制御発振器(VCO)から成る位相同期ループ(PLL)は、2倍の周波数の搬送波を回復するのに用いられる。元の搬送波は、2により周波数を除算する分割器を用いて最終的に回復される。回復した搬送波に、入ってきたBPSK信号を掛けることにより復調は達成される。
コスタスループ回路は、入ってきた信号と、2つの基準直交信号(0°/90°)との積を発生する2つのミクサより成る。位相検出器として作用する3番目のミクサは、前の双方のミクサの低域通過フィルタ処理された出力の積としてエラー信号を発生する。エラー信号は、最終的にループフィルタ(すなわち、積分器)に通されて電圧制御発振器(VCO)の制御信号を発生する。VCOは、90°移相器と結合されると、基準直交信号を発生し、ループを閉じる。基準直交信号の周波数が元の搬送波の周波数に等しければ、エラー信号はゼロである。その上、VCO出力基準信号(同相信号)は、搬送波の同じ伝播位相ψを持っているか、あるいは、それとは180°異なる。すなわち、同期状態で、エラー関数がゼロであれば、コスタスループはBPSK信号の復調として作用する。実際には、基底帯域変調器信号は、(符号の不確定性にかかわらず、)第1低域通過フィルタ(図3のLPF1)の出力で検出される。
先の方式の双方により実行されたコヒーレント復調の主な利点は、入力信号の追跡である。このことは、周波数偏移、例えば、移動システムにおける放出器と受信機との間の相対運動による周波数偏移の修正を可能にする。その上、変調信号に関する前の情報(すなわち、ビット周期)が必要とされない。しかし、同期時間は一般に大きく、通信の初めにデータの損失をもたらすか、あるいは、バーストモード送信で正常に機能しない。同期化ループのもう1つの重要な欠点は、モノリシック形態で実施し難いループフィルタの必要性である。
一例として、(図3に示すような)コスタスループに基づくコヒーレント復調手続きであって、復調器の同調状態(入力信号の位相同調及び正確な復調)または疑似同調状態(誤った変調)を検出する一連の追加の構成要素により補充されたコヒーレント復調手続きを用いるものがある(特許文献1参照)。
復調を可能にする位相基準を得るのに他の手続きを提案しているものがある(特許文献2参照)。この場合、受信したフェーザのある平均を実施し、これにより、位相基準推定値を得る。信号を復調するため、受信したフェーザの各々を基準と比較し、その後、位相基準推定値を絞り込むのに用いる。この手続きは、同調時間と関連する情報の損失なしに、不連続に受信した信号を正確に復調できるという利点を有する。不都合は、復調器システムの高い複雑性であり、フェーザの平均化を実行するため、変調信号ビット周期を知る潜在的な要件である。
デジタル位相変調を用いる信号に対して、もう1つの実行可能な復調手続きも提案されている(特許文献3参照)。この方法は、隣接する位相状態間だけ変化を含むデジタル位相変調された信号に適用できる。基本的には、動作原理は、ある期間に受信した信号に、前の期間に受信した信号を掛けることから成る。時間差は遅延部品の使用により得られ、ビット時間に等しくなるように調節される。得られた信号のDC成分を発生させるため、この乗算の結果を、低域通過フィルタによりフィルタリングする。ビット周期中、位相変化がある時だけ、DC成分の値に変化がある。この場合、同期化を必要とせず、復調が直接行われる。基本的な不利点は、変調信号ビット周期を事前に知る必要があるということである。
米国特許第5347228号 米国特許第4631486号 米国特許第4989220号
記載した背景に関して、本発明は、周波数及び位相同期ループ(PLLまたはコスタスループ)の明確な使用を要求されることなく、コヒーレント復調に対応する利点(入力信号の追跡、並びに、変調信号ビット周期から独立する復調処理)を提供する。
本発明の基本的な動作原理は、BPSK信号の搬送波を回復するため、超調波の注入により共振回路を同期することである。このように、外部の帰還経路を必要とせず、発振器を同期する超調波の注入により搬送波回復を達成する。結果として、ループフィルタを必要とせず、結果として生じた構造は、モノリシックな一体化に適する。
本発明は、請求項1に記載の2値位相シフトキーイング(BPSK)信号の復調のためのシステムと、請求項6に記載の方法とについて言及する。システム及び方法の好適な実施形態を従属項に規定する。
本発明の第1態様は、周波数fを有する2値位相シフトキーイング(BPSK)信号のコヒーレント復調のためのシステムに関する。復調のためのこのシステムは、
前記BPSK信号から周波数2fの搬送波信号(C)を回復する手段と、
周波数fにほぼ等しい固有共振周波数frを有する注入同期発振器ILOであって、(θe−k)/2の位相ずれ、ここで、θe=arcsin((fr−f)/(αAif))であり、α及びkは、注入同期発振器ILOにおける支配的な非線形性の種類に依存するパラメータであり、Aiは、2fの周波数の回復された搬送波信号の振幅である前記位相ずれを有する元の搬送波を回復する差動出力Op及びOn信号を発生させる注入同期発振器ILOに、周波数2fを有する前記信号を注入する手段と、
復調信号(DEMOD)を発生させるために、入ってきたBPSK信号のコピーと、差動出力Op及びOn信号とを結合する手段と
を有する。
rがfにほぼ等しくなければ、コヒーレント復調器の歩留りは、fr≒fの場合よりも低いが、この復調器も役に立つ。
本発明の動作原理は、固有共振周波数frの第2高調波に近い周波数を有する信号が注入された時の注入同期発振器ILOの周波数及び位相の双方の、または、2による分割回路の引数の同期現象である。発明者により確立され、検証されたものによれば、この引数(周波数及び位相)同期現象は、ILO回路に用いられる部品に多かれ少なかれ存在する非線形応答によるものである。
非線形性の一般的な発生源として下記の事項を指摘することができる。
a)バラクタダイオードが用いられた場合、バイアス電圧が印加されたバラクタダイオードの容量の変動。
b)バイポーラトランジスタが用いられた場合、バイポーラトランジスタのベース‐エミッタ及びベース‐コレクタ結合の容量の変動。
c)MOSFETトランジスタが用いられた場合、MOSFETトランジスタのゲート‐ソース、ゲート‐ドレイン及びゲート‐基板の容量の変動。
d)2乗またはそれよりも高い次数の法則に従って偏極電圧に従属する、MOSFETトランジスタでは、ドレイン電流、そして、バイポーラトランジスタでは、ベース‐コレクタ電流。
非線形性は、高調波を混合し、その後、新たなスペクトル成分を発生させる原因になっている。2fr(ここで、frは、ILO固有共振周波数である)に近い周波数2fを有する信号がILOに注入されると、非線形性(特に、2次の非線形性)は、周波数2f−fr≒frへの(電圧及び/または電流の)追加の成分につながる。この成分は、同じ周波数で既に存在する成分に追加されるので、ILO共振特性は変更される。ILO動作状態の変化を共振周波数の変化量Δfrとして表すことができるということが分析的にも実験的にも明らかにされている。この変化量Δfrは、
Δfr=αAifSin(θ) (5)
により与えられる。ここで、αは、支配的な非線形性の種類に依存するパラメータであり、Aiは、2fの周波数の入力信号の振幅であり、角度θを、
θ=2φ(t)−Φ+k (6)
として表すことができる。ここで、Φ及びφ(t)はそれぞれ入力及び出力信号の位相であり、tは時間である。kの値も、回路において支配的な非線形性に依存する。例えば、非線形性が、バイアス電圧と共に変化する電流によるものであれば、k=0であり、非線形性が可変容量によるものであれば、k=π/2である。
更に、ILOからのOp及びOn出力を、
p=Bcos(2πft+φ(t))、On=Op+π (7)
として表すことができる。ここで、Bは出力信号の振幅であり、φ(t)は、
[数1]
Figure 0004162010
を立証する。
(5)及び(6)を(8)と組み合わせれば、注入した入力信号に対するILOの動的応答を決定する微分方程式が得られる。dφ/dt=0であれば、安定した状態(ロックイン状態)を得る。あるいは、出力信号の周波数が入力信号の周波数のちょうど半分であって、従って、Δfr=f−frであれば、別の言い方で同じことを言っている。
(5)において、この条件を置換することにより、角度θについて、平衡の2つの可能な値が得られる。これら値を
θe=arcsin((fr−f)/(αAif))及びθm=π−θe (9)
として表すことができる。
このことは、第1の可能性、すなわち、θeが、安定した平衡状態に対応し、第2の可能性、すなわち、θmが準安定の平衡状態であることを示している。入力信号が、ILOの固有共振周波数の2倍に近い周波数を有するならば、安定した平衡角度θeは短くなる。
(6)から、同期条件が出力位相φに対して一意的でなく、ILO回路により実行される2による引数分割の数学的な結果でしかないπラジアンの不確定性が存在することを推測できる。
入ってきたBPSK信号のコピーと、差動出力Op及びOn信号とを結合する手段は、
入ってきたBPSK信号のコピーであって、同じ周波数と、非常に類似する振幅及び位相とを有する信号i1,i3を注入同期発振器ILOの差動出力Op及びOn信号に掛け合わせ、出力IF1及びIF2信号をそれぞれ発生させる手段Mix1,Mix2と、
基底帯域信号BBp,BBnをそれぞれ発生させるため、前記出力IF1及びIF2信号を低域通過フィルタ処理する手段LPF1,LPF2と、
基底帯域信号を差し引いて復調信号DEMODを発生させる手段と
を有することができる。
好ましくは、周波数2fの搬送波信号Cを回復する手段が2乗回路を含む。
好ましくは、復調のためのシステムが、2乗回路ブロックと注入同期発振器(ILO)との間に接続された帯域通過フィルタブロックを有する。
BPSK=±Acos(2πft+ψ) (10)と表すことができる周波数fの一般的なBPSK信号を2乗し、帯域通過フィルタ処理して、周波数2fの搬送波Cを得る。搬送波Cは、
C=(A2/2)cos(4πft+2ψ) (11)
により与えられる。
式(6)を考慮し、Φを2ψにより置き換えすれば、ILOの出力Opの位相φeと入力BPSK信号の位相ψとの間にロックイン状態の下記の関係を得ることができる。
φe=ψ+(θe−k)/2+nπ ; n=0,1,2... (12)
すなわち、ILOの出力Op(同様に、On)は、(θe−k)/2の位相ずれとπの位相の不確定性とを伴って元の搬送波を回復する。
(12)の位相の関係によれば、Mix1及びMix2の出力IF1,IF2で、
IF1=±ABcos(2πft+ψ)・cos(2πft+φe) (13)
IF2=±ABcos(2πft+ψ)・cos(2πft+φe+π) (14)
を得ることができ、低域通過フィルタ処理後、
BBp=±AB/2cos[(θe−k)/2+nπ] (15)
BBn=±AB/2cos[(θe−k)/2+(n+1)π] (16)
を得ることができる。
BBpまたはBBnのどちらかが2値信号(互いに対して相補的なもの)であって、その符号変化が入力BPSK信号の位相変化を既に再現していることに留意すべきである。しかし、不整合または非対称のため、これら信号が、次の段の正常動作に影響を与える(すなわち、基底帯域増幅器または信号再生器を飽和させる)おそれのある共通モードオフセットにより影響を受けるおそれがある。この問題を回避するため、双方の信号を差し引いて、最後の復調された出力DEMODを発生させる。この出力DEMODを、
DEMOD=±ABcos[(θe−k)/2+nπ] (17)
として表すことができる。
復調処理の最大効率は、θe=kの場合に対応する。これら条件の下、DEMOD=±AB・(±1)である。
支配的な非線形性に応じて、2つの異なった場合、すなわち、a)及びb)に区別できる。
a)非線形電流(k=0)。
この場合、θe=0の時に復調処理の最大効率が得られる。(9)から、このことは、f=frに対応する。これも、同期処理の最大感度に対する条件である(すなわち、ILOを位相同期するのに最小の注入電力が必要とされている)。
b)非線形静電容量(k=π/2)。
ここでは、最大効率は、θe=π/2の時に得られる。しかし、(9)によれば、このことは、同期限界にある周波数f,frに対応する。すなわち、(fr−f)/(αAif)=1である。例えば、部品特性における雑音またはドリフトによる固有共振周波数frの初めの値からの偏差は、同期をゼロにする。最大復調効率の代わりに、最大同期感度(すなわち、θe=0)を期待する場合、
[数2] DEMOD=±AB・(√2/2)、
すなわち、最大効率の70%である。従って、最大復調効率と最大同期感度との間にトレードオフを確立すべきであり、あるいは、最適な同期及び最適な復調に対して位相偏差を補償するために遅延パスを含める。図4におけるi2からCまでの連鎖内のどこかに、または、i1及びi3の経路に同時に、遅延ブロックを位置付けることができる。最初の場合では、遅延パスはπ/2(2乗段の前に接続された場合ではこの値の半分)の位相ずれを発生させ、次の場合では、−π/2の位相ずれを発生させる必要がある。
本発明の第2態様は、周波数fのBPSK信号のコヒーレント復調のための方法であって、2fの周波数を有する信号の注入による発振器の同期化に基づく方法に関する。
2fの周波数を有する信号を注入した時に、且つ、fにほぼ等しい発振器の固有共振周波数frである場合に発振器を同期化する。
周波数fのBPSK信号のコヒーレント復調のための方法は、
周波数2fの搬送波信号(C)を前記BPSK信号から回復する工程と、
θe=arcsin((fr−f)/(αAif))であり、α及びkは、注入同期発振器(ILO)における支配的な非線形性の種類に依存するパラメータであり、Aiは、2fの周波数の回復された搬送波信号の振幅である(θe−k)/2の位相ずれを持つ元の搬送波を回復するため、注入同期発振器(ILO)に、周波数2fを有する前記信号を注入する工程と、
復調信号(DEMOD)を発生させるために、入ってきたBPSK信号と、差動出力(Op,On)信号とを結合する工程と
を有する。
本発明の基本的な動作原理が、超調波の注入により共振回路を同期してBPSK信号の搬送波を回復することであり、このように、外部の帰還経路を必要とせず、発振器を同期する超調波の注入により搬送波回復を達成するので、結果として、ループフィルタを必要とせず、結果として生じた構造は、モノリシックな一体化に適する。
本発明は、2値デジタル位相シフトキーイング(BPSK)信号の復調のためのシステムについて言及する。図4には、復調器システムの実行可能な一例を示す。この復調器システムは、以下の区分に分割できる。
(a)出力分割器PDIV。この出力分割器PDIVの入力は周波数fのBPSK位相変調信号であり、ここで、fは、搬送波信号の周波数である。この出力分割器は、入力信号と同じ周波数fを有する出力信号i1,i2,i3を発生させる。その上、i1及びi3は、等しい振幅を有し、同じ位相状態にある。この位相状態を入力信号と同一にすることができ、あるいは、位相状態は、双方とも同一である特定の位相不均衡または遅延を有することができる。信号i2の振幅及び位相状態を信号i1,i3の場合と同じにすることができ、あるいは、この振幅及び位相状態は、特定の振幅及び/または位相不均衡を有することができる。この出力分割器を受動または能動のどちらかにすることができる。
(b)2乗回路ブロック。この2乗回路ブロックは、入力から出力への伝達関数に2次項を有する能動または受動回路を用いて実施できる。これら回路の具体例は、全波ダイオード整流器、または、アナログ乗算器として動作するミクサである。
(c)帯域通過フィルタ(BPF)。この帯域通過フィルタは、必要に応じて、周波数2fの適切な成分を2乗回路ブロックの出力から選択する。
(d)注入同期発振器(ILO)。このILOは、2による除算アナログ引数分割器として作用し、(注入信号がない場合には)固有共振周波数はfrである。このILOは、周波数fの差動出力信号Op,Onを発生させる。差動出力位相は、式(6)に従って周波数2fの信号Cにより固定される。
(e)2つのミクサMix1,Mix2。これらミクサMix1,Mix2は受動または能動であって、BPSK入力信号を基底帯域信号BBp,BBnへダウンコンバートするため、低域通過フィルタLPF1,LPF2と結合されている。
(f)減算器。この減算器は受動または能動のどちらかであって、基底帯域信号BBp,BBnからDEMOD出力を発生させる。
図5には、測定したBPSK入力信号と、2乗回路ブロックの出力信号S2との間の時間的な関係を示す。この場合、商用周波数ダブラー回路が、S2信号を発生させるために用いられている。
図4の注入同期発振器(ILO)を幾つかの方法で実施できる。図6は、優先的であるが、これに限らないILO回路の実施形態を含む。既に記述したように、周波数分割処理に基づく原理は、基本周波数の第2高調波に近い周波数を有する信号が注入された時の共振回路の周波数及び位相同期現象である。この回路は、以下の区分から成る。
(a)バイアスT回路BT。このバイアスT回路BTの目的は、2fの周波数の注入信号iを、共振回路動作に必要とされる連続的なDCバイアスと結合させることにある。
(b)インバータ変圧器T1。このインバータ変圧器T1は、一端でバイアスネットワーク出力に接続され、他端でバラクタダイオードV1,V2に接続された1次及び2次巻線を有する。
(c)記述したバラクタダイオードV1,V2。これらバラクタダイオードV1,V2の陽極は、制御電圧Vcへ接続されている。
(d)2つの交差して結合されたトランジスタQ1,Q2。
(e)差動出力Op,On。
(f)電流源S1。この電流源S1は、正確なトランジスタの分極化を保証する。
この種類の分割器回路の特性である周波数/位相同期処理が、2乗またはコスタスループと関連する処理よりも高速であり、その理由は、周波数/位相同期処理が事実上の部品に内在し、全体として同期回路に内在しないためであることに注意しなくてはいけない。
変圧器及び2つのバラクタダイオードは共振タンク回路を形成し、この共振タンク回路の共振周波数は、制御電圧Vcの値により固定されている。これらバラクタダイオードを、固定された値のキャパシタにより置き換えることができ、この場合、共振周波数を制御する可能性は失われる。交差して結合されたトランジスタ対(これらは、図6においてMOSFETであるが、これらをバイポーラとすることができる)の目的は、共振タンク回路損失を補償するのに充分な利得を得るためと、一定振幅の振動を共振周波数frで発生させるためである。注入信号が充分な出力を持っていれば、タンクの共振特性は変化する。このことは、バラクタダイオード応答の非線形動作、及び/または、増幅器段のトランジスタによるものである。新たな共振周波数は、注入信号の周波数の半分に同調され、位相は、180°の差を有する2つの可能な値のどちらかに調節される。
図7には、注入前(free‐running)と、506MHzの周波数の入力信号を注入した後のロックイン状態(Locked)とのILOの出力の一方(OpまたはOn)の測定したスペクトルを示す。255.5MHzの固有周波数が同期により−2.5MHzだけシフトされていることに留意すべきである。
図8には、2fのILOの入力波形Cと、fのILO出力の一方(OpまたはOn)との測定した時間領域波形を示す。fの基本振動と2fの第2高調波との間のロックイン状態の位相関係に留意すべきである。
図9には、周波数fのBPSK信号と、周波数fのILOの差動出力Op(太線)及びOn(破線)との測定した時間領域波形を示す。BPSK信号が180°位相変化前ではOp出力と同相であって、その後、On出力と同相となることに留意すべきである。
図10には、復調出力DEMODと一緒にBPSK入力信号を示す。図示の例では、DEMOD信号の立下り時間は、約15〜20nsであり、このことは、約50〜60Mbits/sの最大復調レートを意味する。
図11には、500nsごとに180°位相を変化させるBPSK入力信号対応のDEMOD出力を示す。
BPSK信号の発生を図式的に表す図である。 2乗ループを示す線図である。 コスタスループを示す線図である。 本発明による好適なBPSK復調器を示す図である。 周波数fのBPSK信号と、周波数2fのS2信号との測定した時間領域波形である。 非線形バラクタダイオードを用いる注入同期発振器(ILO)の優先的な実施形態を示す線図である。 2fの入力信号Cの注入前(free‐running)とロックイン状態(Locked)とのILOの出力の一方(OpまたはOn)の測定したスペクトルである。 2fのILOの入力波形Cと、fのILO出力の一方(OpまたはOn)との測定した時間領域波形である。 周波数fのBPSK信号と、周波数fのILOの差動出力Op(太線)及びOn(破線)との測定した時間領域波形である。 復調出力DEMODと一緒にBPSK入力信号を示すグラフである。 500nsごとに180°位相を変化させるBPSK入力信号対応のDEMOD出力を示すグラフである。
符号の説明
PDIV 出力分割器
1,i2,i3 出力信号
2 2乗回路ブロックの出力信号
C 搬送波信号
p,On 差動出力信号
BPF 帯域通過フィルタ
ILO 注入同期発振器
Mix1,Mix2 ミクサ
IF1,IF2 ミクサの出力
LPF1,LPF2 低域通過フィルタ
BBp,BBn 基底帯域信号
DEMOD 復調信号

Claims (5)

  1. 周波数fの2値位相シフトキーイング(BPSK)信号のコヒーレント復調のためのシステムであって、
    前記BPSK信号から周波数2fの搬送波信号(C)を回復する手段と、
    周波数fにほぼ等しい固有共振周波数frを有する注入同期発振器(ILO)であって、(θe−k)/2の位相ずれ、ここで、θe=arcsin((fr−f)/(αAif))であり、α及びkは、前記注入同期発振器(ILO)における支配的な非線形性の種類に依存するパラメータであり、Aiは、2fの周波数の回復された搬送波信号の振幅である前記位相ずれを持つ元の搬送波を回復する差動出力(Op,On)信号を発生させる注入同期発振器(ILO)に、周波数2fを有する前記信号を注入する手段と、
    復調信号(DEMOD)を発生させるために、入ってきたBPSK信号のコピーと前記差動出力(Op,On)信号とを結合する手段と、
    を有するシステム。
  2. 請求項1に記載の復調のためのシステムにおいて、前記入ってきたBPSK信号のコピーと、前記差動出力(Op,On)信号とを結合する前記手段が、
    前記入ってきたBPSK信号のコピーであって、同じ周波数と、非常に類似する振幅及び位相とを有する信号(i1,i3)を前記注入同期発振器(ILO)の差動出力信号(Op,On)に掛け合わせる手段(Mix1,Mix2)であって、出力(IF1,IF2)信号をそれぞれ発生させる手段と、
    基底帯域信号(BBp,BBn)をそれぞれ発生させるため、前記出力(IF1,IF2)信号を低域通過フィルタ処理する手段(LPF1,LPF2)と、
    前記基底帯域信号を差し引いて復調信号(DEMOD)を発生させる手段と、
    を有するシステム。
  3. 請求項1または2に記載の復調のためのシステムにおいて、周波数2fの搬送波信号(C)を回復する手段が2乗回路を含むシステム。
  4. 請求項3に記載の復調のためのシステムであって、前記2乗回路のブロックと前記注入同期発振器(ILO)との間に接続された帯域通過フィルタブロックを更に有するシステム。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の復調のためのシステムにおいて、前記掛け合わせる手段(Mix1,Mix2)が等しくなっているシステム。
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