JP4142309B2 - 加工澱粉及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライ、から揚げ、天ぷらなどの揚げ物製造時に用いる衣材として好適で、特に動物性食品の種物と衣の結着性に優れた加工澱粉及びその製造方法、更には該加工澱粉を用いた揚げ物用衣材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、揚げ物用衣材としては、グルテンの少ない小麦粉を主体とし、食感を改善する目的で、各種の蛋白質類、澱粉質類、乳化剤、卵及び重曹等を添加し、また必要に応じて適当量の水を加えた組成物が用いられていた。
しかし小麦粉を主体とした従来の衣材では、揚げた後に種と衣との結着性が悪いために剥がれ易く、見た目が悪くなり、商品価値を著しく損なう等の問題が生じていた。
これらの点を解決するために従来より種々の改良方法が提案されている。例えば、40重量%濃度のスラリー粘度が200cps以上である油脂加工澱粉を用いる方法(特公平5−21542号)、歩留まりを向上させるために油脂加工澱粉とα化澱粉、α化穀粉を添加した方法(特開昭62−143663号)や、油脂加工澱粉のα化品を用いた方法(特開昭62−195259号)、粳種澱粉と糯種澱粉との混合物又は糯種澱粉に食用油脂を添加する(特開昭62−14756号)等が知られている。しかし、これらの油脂加工澱粉を衣材として用いた場合、種と衣の結着性に関してある程度の改善効果はあるものの、種の種類によっては衣が種から剥離するなど問題点が残る。
【0003】
こうした点を改善するために、水分が18〜24重量%となるように加水しpHが6.0〜7.5に調整された生大豆粉と澱粉の混合物を120〜140℃で2時間以上加熱したのち調湿し水分含有量を12〜18重量%とする方法が提案されている(特開平4−51854号)。しかし、この方法により得られた加工澱粉を、衣材として用いた場合でも、種の種類によっては衣が種から剥離するなど問題点がある。また、加熱時間が2時間以上と長く、生産性が悪いという問題点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、衣材における上記の問題点を解決し、衣材として揚げ物調理に使用した場合、衣材と動物性食品の種物の結着性が良好で、しかもこれまで、衣が剥がれ易いとされていた魚介類やソーセージといった種物に対しても良好な結着性を示す加工殿粉及びその製造法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、 澱粉に食用油脂と食用蛋白を所定の割合で加水することなく混合した組成物を加熱し、該組成物の温度が110℃に到達してから、さらに110〜150℃で20分以上2時間未満処理することにより、従来品と比べて短時間で、種物と衣の結着性が極めて優れた加工澱粉を製造することができることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、澱粉100重量部に対して、食用油脂0.05〜10重量部及び食用蛋白0.5〜10重量部を加水することなく混合してなる組成物を加熱し、該組成物の温度が110℃に到達してから、さらに110〜150℃で20分以上2時間未満処理をした後、調湿して水分含量を8〜18重量%とすることを特徴とした加工澱粉の製造法である。 また、本発明は、当該方法で製造した加工澱粉及びその加工澱粉を用いてなる揚げ物用衣材である。
【0006】
本発明では、まず処理すべき澱粉100重量部に食用油脂を0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部添加し、均一になるよう混合する。添加する食用油脂の量が、澱粉100重量部に対して10重量部を超えると、粉体の流動性がきわめて悪く均一な処理が困難となるのみならず加熱処理時に油分が分離し処理品は固結してしまう。また食用油脂の量が0.05重量部未満では、油脂加工澱粉本来の効果を得ることができない。
次に食用蛋白を、0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部加える。添加する食用蛋白の量が、澱粉100重量部に対して0.5重量部未満では、衣液調製時のダマが多く、10重量部を越えると、結着不良等の問題が生じ、いずれも好ましくない。
【0007】
その後、上記の条件で混合した組成物を加熱し、少なくとも該組成物の温度が110℃に到達してから、さらに110〜150℃で20分以上2時間未満加熱する。温度が110℃未満または、加熱時間が20分未満では、加工が不充分で油脂加工澱粉本来の効果を得ることができず、結着性も不充分である。温度が150℃以上または、加熱時間が2時間以上では、澱粉に着色や焦げが生じ、さらに結着性も不充分となる。
加熱には各種の加熱・乾燥装置を用いることができる。例えば、棚式熱風循環式乾燥機、パドルドライヤー、流動層乾燥機、振動乾燥機、ロータリーキルン式の加熱・乾燥機などが挙げられる。
棚式乾燥機では110℃以上、好ましくは130℃で加熱する。棚式乾燥機の場合、乾燥すべき組成物を静置するため均一に加熱することが難しく、層内部は外部に比べ温度上昇が遅い。このため、該組成物はあまり層を厚くできず、2cm位が限度である。時間は130℃で約1時間を要し、110℃では1時間50分必要となる。パドルドライヤーの場合は、該組成物の速やかな温度上昇が可能であり、かつ該組成物を強制的に混合することにより均一な加熱が可能であるため、比較的短時間の加熱・乾燥で良いが、その場合でも、該組成物の温度が110℃に到達した後、少なくとも20分以上加熱を続けることが重要である。
【0008】
本発明における加工澱粉に使用する原料澱粉としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉およびこれらにアセチル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、湿熱処理等の処理を単一で或いは組み合わせて施した食品用加工澱粉があり、これらを単独で又は併用して使用できる。
【0009】
本発明に用いる食用油脂としては、大豆油、とうもろこし油、菜種油、パーム油、サフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックとうもろこし油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、綿実油、やし油、米糠油、ごま油、落花生油、オリーブ油、つばき油、茶油、からし油、カポック油、かや油、くるみ油、けし油などの植物油脂や、牛脂、魚油、鯨油、豚油、羊油などの動物油脂、さらにこれらの油脂に分別、水素添加、エステル交換の処理を施したものが使用できる。
このうち、ヨウ素価が125以下である油脂は酸化臭が少なく、加工に適している。
さらには、モノグリセリド、ジグリセリド等の油脂類縁物質、油脂の構成成分である脂肪酸およびその誘導体も使用できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0010】
本発明における食用蛋白としては、食品に用いられる蛋白質であればいずれでもよく、植物蛋白質、動物蛋白質等を高含有する天然蛋白質素材、天然蛋白質素材に由来する粗精製蛋白質、精製蛋白質等いずれも用いられる。植物蛋白質としては、小麦蛋白質、大豆蛋白質、トウモロコシ蛋白質等の種子蛋白質等があげられる。動物蛋白質としては、卵白蛋白質、卵黄蛋白質等の卵蛋白質、ホエー蛋白質、カゼイン等の乳蛋白質、血漿蛋白質、血球蛋白質等の血液蛋白質、食肉蛋白質、魚肉蛋白質等の筋肉蛋白質等があげられる。
なお、本発明においては、蛋白質としては単純蛋白質、複合蛋白質、誘導蛋白質のいずれも用いられる。また、該蛋白質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属等と塩を形成してもよい。 単純蛋白質としては、アルブミン、グロブリン、グルテリン、プロラミン、ヒストン、プロタミン等があげられる。複合蛋白質としては、カゼイン等のリン蛋白質、ヘモグロビン等のヘム蛋白質、血漿リポ蛋白質等のリポ蛋白質、コラーゲン、フィブリノーゲン等の糖蛋白質等があげられる。 誘導蛋白質とは、天然蛋白質に、化学処理、酵素処理、物理処理等により、加水分解、アシル化、アルキル化、エステル化、リン酸化、グリコシル化、水酸化、メチル化、酸化、還元等の処理が施された蛋白質であり、例えばゼラチン、プラクアルブミン、メタプロテイン、プロテオース、ペプトン等があげられる。
【0011】
本発明における食用油脂と食用蛋白で加工した澱粉は、澱粉に均一に混合された油脂が高温で一定時間以上加熱され、部分的に酸化されることで、澱粉粒子との結合力が高まり、また、食用蛋白が熱変成し、その結果、澱粉分子に油脂及び蛋白が強固に付着した状態にあると考えられる。
即ち、油脂及び蛋白を高温で一定時間以上加熱し澱粉表面に吸着させることで、澱粉表面の濡れ性等が変化する。これによりバッター液にした場合、種物への浸透性が増す。フライ時にはバッター液および種中の水分が澱粉表面に接触しにくく保水力が弱まり、水分はフライ中に効率よく蒸気となって出て行く。その結果、余分な水分が衣、種、またはその接触面に残らないために、種と衣がよく結着する。
本発明の加工澱粉は、加水して衣材として用いて揚げ物を調理した際に、種と称される被揚げ物と衣との結着が良好であり、これまで結着しづらいとされていた、魚介類やハム・ソーセージ等の畜肉加工食品でも極めて結着性に優れている揚げ物を製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限られるものではない。
実施例:澱粉に対して所定量の食用油脂、食用蛋白を添加し、高速攪拌混合機で3分混合した後、流動層乾燥機で所定時間、所定温度で加熱処理した。その後、室温まで冷却し、13%に調湿を行い本発明の加工澱粉を製造した。
なお、使用した食用蛋白は、各々、大豆蛋白(日華油脂製ニッカミート 202)、小麦蛋白(片山化学工業製:グルビタール 21000)、乳蛋白(森永乳業製:ミラクルテール)、卵白(松田産業製:乾燥卵白HG)である。
比較例:澱粉に対して所定量の食用油脂、食用蛋白を添加し、表1に示す条件で比較例の加工澱粉を製造した。
【0013】
【表1】
Figure 0004142309
【0014】
実施例1〜6および比較例1〜4で得られた加工澱粉を用いて、各々10種の衣液を作成した。各々の加工澱粉の粉末100重量部に対し、冷水を150重量部加え衣液を作成した。種物は豚ロース、イカ、ボロニアソーセージとし、それぞれの種に衣液を付け、さらにパン粉付けを行い一昼夜−20℃で保存した。その後170℃に加熱したサラダ油中にて5分間揚げた。これにより得られたフライは油中から取り出した後、より衣と種物が剥離し易い条件、即ち1分以内に4等分し、その切り口の衣と種物の結着状態を評価した。充分結着し剥離部分が全く無いものを1点、半分結着しているものを0.5点、完全に剥離しているものを0点とした(満点は4点とする)。上記のフライ試験を3回繰り返して行い合計点を表2に示す(満点は12点とする)。
【0015】
【表2】
Figure 0004142309
【0016】
上記の結果より、本発明の製造方法により製造された油脂加工澱粉を揚げ物の衣材として使用すると、これまで衣が結着するのが困難とされていた魚介類やハム・ソーセージなどの種物を使用した場合でも、種と衣の結着性に優れた揚げ物ができることが判る。
【0017】
【発明の効果】
本発明の油脂加工澱粉を衣材として天ぷら、フライ等の揚げ物調理に使用した場合、種物と衣の結着性が飛躍的に向上する。

Claims (1)

  1. 澱粉100重量部に対して、食用油脂0.05〜10重量部及び食用蛋白0.5〜10重量部を加水することなく混合してなる組成物を加熱し、該組成物の温度が110℃に到達してから、さらに110〜150℃で20分以上2時間未満処理をした後、調湿して水分含量を8〜18重量%とすることを特徴とした加工澱粉の製造法。
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