JP4137197B2 - 防振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動を発生する部材からの振動の伝達を防止する防振装置に関し、例えば車両に搭載されるエンジンからの振動の伝達を防止する場合等に適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、振動発生部となる車両のエンジンと振動受部となる車体との間にエンジンマウントとしての防振装置が配設されていて、エンジンが発生する振動をこの防振装置が吸収し、振動が車体側に伝達されるのを阻止するような構造が知られている。
【0003】
すなわち、この防振装置の一例として、内部に主液室及び副液室を設けると共に、オリフィスとなる制限通路でこれらの液室を互いに連通した構造のものがある。そして、搭載されたエンジンが作動して振動が発生した場合には、これら液室を連通する制限通路内の液体の液柱共振等で低動ばねとして振動を吸収したり振動を減衰したりして、振動の伝達を阻止するようになっている。
【0004】
一方、エンジンの幅広い作動状態に伴って振動周波数も広範囲なものとなる。従って、このような広範囲な周波数の振動それぞれにおいても防振特性を維持するべく、長さ及び内径を種々相違させた制限通路を有すると共にこれら制限通路を切り換えるアクチュエータを設置した防振装置が、近年案出されるようになった。
【0005】
さらに、主液室と副液室との間を仕切る仕切部材の主液室と対向した側にゴム製のメンブランを設けて、このメンブランの変形により高周波数の振動であるこもり音の領域での低動ばね化を図って、こもり音を低減した構造の防振装置が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、仕切部材の主液室と対向した側にメンブランを設けた場合、こもり音の領域での低動ばね化の効果は有るものの、メンブランが変形して主液室の内圧を吸収するので、主液室内の内圧損失が大きくなって低周波数域での減衰が不十分となる虞があった。
【0007】
つまり、上記の構造では、高周波数域での低動ばね化と低周波数域での減衰とが両立しない関係にあるので、こもり音の領域での低動ばね化を図ろうとすれば、車両の高速域で発生する低周波数域の振動の減衰が不十分となる欠点が生じる。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、低周波数域の振動の減衰を図ると同時に高周波数域での低動ばね化を図り得る防振装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1による防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、
振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、
これら一対の取付部材の間に配置される弾性体と、
弾性体を隔壁の一部として液体が封入され且つ弾性体の変形により内容積が変化する主液室と、
隔壁の少なくとも一部が弾性変形可能な第1ダイヤフラムにより形成された第1の副液室と、
主液室と第1の副液室との間をそれぞれ連通する複数の第1通路と、
主液室と第1の副液室との間を仕切る仕切部材と、
前記仕切部材内に配置され且つ隔壁の少なくとも一部が弾性変形可能な第2ダイヤフラムにより形成された第2の副液室と、
前記仕切部材内に形成され且つ前記主液室と前記第2の副液室との間を連通する第2通路と、
複数の第1通路の内の少なくとも何れかを開閉するバルブと、
前記バルブに連結されてバルブを作動するアクチュエータと、を有し、
気体が封入された空気室が、前記第2ダイヤフラムを挟んで前記第2の副液室と隣り合うようにして前記仕切部材に内蔵され、
前記第2ダイヤフラムを前記第1ダイヤフラムと別体として構成すると共に、前記第2ダイヤフラムの剛性を前記第1ダイヤフラムの剛性よりも高くしたことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
いずれかの取付部材に連結された振動発生部側から低周波数域の振動が伝達された場合、弾性体が変形して弾性体により振動が減衰される。さらに、この弾性体の変形により主液室の内容積が変化し、第1の副液室とこの主液室との間を連通する複数の第1通路の内のバルブによって開閉されて切り換えられた第1通路内の液体に圧力変化が生じ、これに伴って、この第1の副液室の隔壁が弾性変形する。
【0012】
つまり、振動発生部側から低周波数域の振動が伝達されると、振動の周波数に合わせてアクチュエータがバルブを作動して、複数の第1通路の内の何れかを開閉して最適な第1通路を選択する。この為、弾性体だけでなく、この第1通路内の液体によりこの低周波数域の振動が減衰され或いは動ばね定数が低下して、振動受部側に振動が伝達され難くなる。
【0013】
一方、振動の周波数が変わり、主液室と第1の副液室との間では、振動を低減できないような高周波数域の振動がいずれかの取付部材に連結された振動発生部側から伝達された場合、前記と同様に弾性体の変形により主液室の内容積が変化する。さらに、この主液室の内容積の変化で、第2の副液室とこの主液室との間を連通する第2通路内の液体に圧力変化が生じ、これに伴って、この第2の副液室の隔壁が弾性変形する。
【0014】
この結果、振動発生部側から高周波数域の振動が伝達されると、第2の副液室に繋がる第2通路によって動ばね定数が低下して、この高周波数域の振動を吸収し、振動受部側に振動が伝達され難くなる。
【0015】
さらに、仕切部材に第2通路及び第2の副液室を内蔵することで、主液室内の内圧損失を少なくしつつ、これら第2通路及び第2の副液室により高周波数域での液柱共振を生じさせることができる。
【0016】
つまり、低周波数域での振動の減衰及び低動ばね化を図ると同時に、高周波数域での低動ばね化を図り、いずれの振動周波数においても適切に振動が吸収され、広範囲な振動を低減することが可能になる。
【0017】
例えば、振動発生部がエンジンとされ、振動受部が車両の車体とされた場合、低周波数域の振動が発生する車両の高速域での振動を減衰しつつ、低周波数域の振動と共に発生するこもり音の領域において液柱共振を生じさせて動ばね定数を低下させ、振動を低減することが可能となる。
【0018】
一方、本請求項では、仕切部材に第2通路及び第2の副液室を内蔵することで、第2通路を短く形成できると共に第2の副液室の配置の為の空間が十分にとれるようになり、しかも第2ダイヤフラムを第1ダイヤフラムと別体として構成することにより、第2の副液室の弾性変形可能な隔壁であるダイヤフラムの剛性を自由に設定できるようになり、液柱共振の共振周波数の設定自由度が拡がった。
【0019】
さらに、本請求項では、内部に気体が封入された空気室が、第2の副液室の弾性変形可能な隔壁である第2ダイヤフラムを挟んで第2の副液室と隣り合うように、仕切部材に内蔵された構成とされる。
【0020】
この為、第2通路及び第2の副液室だけでなく空気室を仕切部材に内蔵することで、空気室の容量をも自由に設定できるようになり、液柱共振の共振周波数の設定自由度がより一層拡がった。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る防振装置の一実施の形態を図1から図6に示し、これらの図に基づき本実施の形態を説明する。
【0022】
本実施の形態を表す図1に示すように、防振装置10の下部側を第1の取付部材である皿状の底板金具12が形成し、この底板金具12の下部には、図示しない車体にこの防振装置10を連結して固着する為のボルト14が植設されている。そして、この底板金具12の外側にはフランジ部12Aが設けられており、このフランジ部12Aの上部には、円筒状であって上側が拡がるように形成された外筒金具16が配置されている。
【0023】
この外筒金具16の内周面には、円筒形状をしたゴム製の弾性体18が加硫接着されており、この弾性体18の下部側を肉薄でリング状に下側に延びる薄肉ゴム層18Aが構成している。この弾性体18の上部側中央部は、第2の取付部材となる頂板金具20に加硫接着されており、この頂板金具20の中央部から図示しないエンジンの連結用として用いられるボルト22が、上側に突出している。
【0024】
弾性体18の下部であって弾性体18と空間を挟んだ位置には、円筒状の仕切部材28が薄肉ゴム層18Aを介して外筒金具16に嵌合されつつ配置されていて、これら弾性体18及び仕切部材28で区画された空間が主液室30を構成し、例えば水、オイル等の液体が封入されている。従って、これら弾性体18及び仕切部材28により液体が封入された主液室30の隔壁が構成されることになる。尚、この仕切部材28は合成樹脂、アルミニウム等の金属などで一体成形により、製造することが出来る。
【0025】
また、仕切部材28の下部は外周側に突出しており、この仕切部材28の下部が外筒金具16の下部と底板金具12のフランジ部12Aとの間に挟まれた状態とされている。そして、外筒金具16の下部が底板金具12のフランジ部12Aの外周部分にかしめられることで、これら底板金具12、外筒金具16及び仕切部材28が一体的に固着されている。
【0026】
さらに、薄肉で弾性変形可能なゴム製の第1ダイヤフラム26が、これら仕切部材28の下部と底板金具12のフランジ部12Aとの間に外周側を挟まれた状態で、仕切部材28の下面に対向しつつ配置されている。
【0027】
以上より、この第1ダイヤフラム26と仕切部材28の下面との間に形成された空間が第1の副液室32とされており、また、第1ダイヤフラム26の下側と底板金具12の底部との間の空間が第1空気室40とされて、この第1ダイヤフラム26の変形を容易にしている。
【0028】
図1に示すように、仕切部材28の外周面には、溝部34が仕切部材28の周方向に沿って形成されており、この溝部34と薄肉ゴム層18Aの内周面とで形成された通路であるシェイクオリフィス64の一端側は上方に伸びて主液室30に連結されている。さらに、このシェイクオリフィス64の他端側は内方に伸びて第1の副液室32に連結されている。そして、このシェイクオリフィス64が、シェイク振動吸収用の制限通路とされる。
【0029】
一方、図1から図3に示すように、仕切部材28には、仕切部材28の径方向に沿って延びる大径の通路である円穴36が形成されており、この円穴36の一端は上方に開放されて主液室30と繋がっている。この円穴36の他端には、円穴36よりも大径とされるざぐり部38が形成されており、このざぐり部38内にスリーブ42が嵌合されている。
【0030】
このスリーブ42内には、バルブであるロータ46が回転可能に挿入されている。このロータ46の図1において右側の部分は大径の円筒部46Aとされており、図1において左側の部分は回転軸としての細軸部46Bとされている。さらに、この細軸部46Bの外周には図示しないOリングが嵌め込まれており、このOリングによって液体がスリーブ42との隙間を介して仕切部材28外へ漏れ出ないようにされている。
【0031】
また、図3に示すように、ロータ46の円筒部46A上の周方向に相互に180°異なる部分には、それぞれ円筒部46Aの内外を連通する一対の貫通孔48が形成されている。
【0032】
一方、円筒部46Aの下側に対応したスリーブ42及び仕切部材28の部分には、連通穴50が形成されており、ロータ46が回転して貫通孔48がこの連通穴50と対向すると、円穴36と第1の副液室32との間が連通される。
【0033】
つまり、円穴36及び連通穴50により、主液室30と第1の副液室32とを連通してアイドル振動吸収用の制限通路とされるアイドルオリフィス60が構成されることになる。
【0034】
他方、図2及び図3に示すように、円筒部46Aの横側に対応したスリーブ42及び仕切部材28の部分には、円筒部46Aから斜め下方向に向かって小径のこもり用穴部52が形成されている。このこもり用穴部52の開口端に対応する仕切部材28内の部分には、円板状の空間とされる第2の副液室56が形成されており、こもり用穴部52の端部が第2の副液室56に開口されている。従って、ロータ46が回転して貫通孔48がこのこもり用穴部52と対向すると、円穴36と第2の副液室56との間が連通される。
【0035】
つまり、円穴36及びこもり用穴部52により、主液室30と第2の副液室56とを連通してこもり音吸収用の制限通路とされるこもり用オリフィス62が構成されることになる。
【0036】
この第2の副液室56の上部の仕切部材28内には、ゴム製で肉薄の第2ダイヤフラム54が配置されていて、この第2ダイヤフラム54が第2の副液室56の弾性変形可能な隔壁とされている。
【0037】
また、第2ダイヤフラム54と空間を介した仕切部材28の上部には、蓋材66が配置されており、この蓋材66により第2ダイヤフラム54との間の空間内を封止して内部に空気等の気体が封入されている。
【0038】
すなわち、この第2ダイヤフラム54と蓋材66の下面側との間の空間が、仕切部材28に内蔵されて内部に気体が封入された第2空気室58とされ、この第2空気室58が第2の副液室56の弾性変形可能な隔壁である第2ダイヤフラム54を挟んで第2の副液室56と隣り合うように配置されて、第2ダイヤフラム54の変形を可能としている。
【0039】
つまり、第2ダイヤフラム54が第2の副液室56の隔壁の一部を構成することになり、図3に示すように、この第2ダイヤフラム54の面積は第1の副液室32の隔壁の一部を構成する第1ダイヤフラム26の面積より小さくされているので、第2ダイヤフラム54は第1ダイヤフラム26より剛性が高いことになる。
【0040】
以上のような構造より、ロータ46が回転されて、図1から図3に示すように、円筒部46Aの貫通孔48がアイドルオリフィス60を開放すると、アイドルオリフィス60を介して主液室30と第1の副液室32とが連通される。また、この位置からロータ46が90°回転されて、図4から図6に示すように、円筒部46Aの貫通孔48がこもり用オリフィス62を開放すると、こもり用オリフィス62を介して主液室30と第2の副液室56とが連通される。この為、これらのオリフィス60、62をロータ46が開閉して通路を切り換えることとなる。
【0041】
一方、外筒金具16の側面であってスリーブ42に対応する外筒金具16及び薄肉ゴム層18Aの部分には、貫通穴68が形成されている。この貫通穴68に対応する外筒金具16の外周側には、アクチュエータとしてのモータ70が配設されており、図示しない取付け用のねじでねじ止めることにより外筒金具16の外周側にモータ70が固定されることになる。そして、このモータ70の回転軸70Aは、ロータ46の細軸部46Bの先端側に連結されている。
【0042】
以上より、ロータ46が、図1から図3に示すようにアイドルオリフィス60を介して主液室30と第1の副液室32との間を連通する配置と、図4から図6に示すようにこもり用オリフィス62を介して主液室30と第2の副液室56との間を連通する配置とを選択的に採るように、モータ70によって回転される。このモータ70は制御手段であるコントローラ72に連結されており、コントローラ72よってその回転が制御されるようになっている。コントローラ72は車両電源によって作動し、少なくとも車速センサ74及びエンジン回転数検出センサ76からの検出信号を受け、車速及びエンジン回転数を検出し、アイドル振動発生時かシェイク振動発生時かを判断できるようになっている。
【0043】
次に本実施の形態の作用を説明する。
頂板金具20に搭載されるエンジンが作動すると、エンジンの振動が頂板金具20を介して弾性体18に伝達される。弾性体18は吸振主体として作用し、弾性体18の内部摩擦に基づく制振機能によって振動を吸収することができる。
【0044】
さらに弾性体18及び第1ダイヤフラム26の変形に伴って内容積が変化する主液室30及び第1の副液室32の中の液体がオリフィス60、64を介して相互に流動するだけでなく、第2ダイヤフラム54の変形に伴って液体が第2の副液室56と主液室30との間のこもり用オリフィス62内を流動し、これらオリフィス空間に生ずる液体流動の粘性抵抗及び液柱共振等に基づく減衰作用で防振効果を向上することができる。
【0045】
そして、常時開放されているシェイクオリフィス64の他に、こもり用オリフィス62及びアイドルオリフィス60を設けると共に、これらこもり用オリフィス62とアイドルオリフィス60との間で通路を切り換えるロータ46を設けた結果として、以下のように作用する。
【0046】
車両が例えば70〜80km/h以上の高速で走行するとシェイク振動(15Hz未満)が生じる。前記コントローラ72は車速センサ74、エンジン回転数検出センサ76によりシェイク振動発生時か否かを判断する。コントローラ72がシェイク振動発生時であると判断すると、コントローラ72はモータ70を作動させてロータ46を回転し、図4から図6に示すように、貫通孔48をこもり用オリフィス62と対応させ、アイドルオリフィス60とは対応しない配置にする。
【0047】
これによってアイドルオリフィス60は閉止され、常時開放されているシェイクオリフィス64が主液室30と第1の副液室32とを連通すると共に、こもり用オリフィス62が主液室30と第2の副液室56とを連通する。
【0048】
この結果、主液室30内に生じるエンジン振動に基づく圧力変化がシェイクオリフィス64及びこもり用オリフィス62内の液体に伝達されると共にこの液体の抵抗等を受けシェイク振動が吸収される。
【0049】
さらに、シェイク振動と共に生じることがある高周波で小振幅の振動であるこもり音(50〜100Hz)に対しては、仕切部材28に内蔵されたこもり用オリフィス62内で液柱共振して動ばね定数が低下し、こもり音が吸収される。
【0050】
また、エンジンがアイドリング運転の場合や車速が5km/h以下の場合にはアイドル振動(20〜40Hz)が生じる。コントローラ72は車速センサ74、エンジン回転数検出センサ76によりアイドル振動発生時か否かを判断する。コントローラ72がアイドル振動発生時であると判断すると、コントローラ72はモータ70を回転させて、図1から図3に示すように、ロータ46の貫通孔48をアイドルオリフィス60と対応させ、こもり用オリフィス62とは対応しない配置にする。
【0051】
これによってこもり用オリフィス62は閉止され、液体は通過抵抗の小さなアイドルオリフィス60を介して主液室30と第1の副液室32と行き来することになり、アイドルオリフィス60内で液柱共振して動ばね定数が低下して、振動が吸収される。
【0052】
尚この際、シェイクオリフィス64は通過抵抗が大きいことから、シェイクオリフィス64は必然的に目詰まりを生じて閉鎖されることとなる。
【0053】
さらに、従来のメンブランを仕切部材の主液室と対向した側に設けたものと異なり、本実施の形態では、仕切部材28にこもり用オリフィス62及び第2の副液室56を内蔵することで、主液室30内の内圧損失を少なくしつつ、これらこもり用オリフィス62及び第2の副液室56により高周波数域での液柱共振を生じさせることができる。
【0054】
つまり、本実施の形態の防振装置10によれば、低周波数域の内のシェイク振動での振動の減衰及びアイドル振動での低動ばね化を図ると同時に、こもり音等の高周波数域での低動ばね化を図り、いずれの振動周波数においても適切に振動が吸収され、広範囲な振動を低減することが可能になる。
【0055】
具体的には、本実施の形態のように、振動発生部がエンジンとされ、振動受部が車両の車体とされた場合、シェイク振動等の低周波数域の振動が発生する車両の高速域での振動を減衰しつつ、低周波数域の振動と共に発生するこもり音の領域において液柱共振を生じさせて動ばね定数を低下させ、振動を低減することが可能となる。
【0056】
一方、本実施の形態では、仕切部材28にこもり用オリフィス62及び第2の副液室56を内蔵することで、こもり用オリフィス62を短く形成できると共に第2の副液室56の配置の為の空間が十分にとれるようになった結果として、第2の副液室56の弾性変形可能な隔壁である第2ダイヤフラム54の剛性を自由に設定できるようになり、液柱共振の共振周波数の設定自由度が拡がった。
【0057】
他方、本実施の形態では、内部に空気等の気体が封入された第2空気室58も、第2の副液室56の弾性変形可能な第2ダイヤフラム54を挟んで第2の副液室56と隣り合うように、仕切部材28に内蔵されている。この為、第2空気室58の容量をも自由に設定できるようになり、液柱共振の共振周波数の設定自由度がより一層拡がった。
【0058】
尚、実施の形態において、こもり用オリフィス62をロータ46で開閉する構造としたが、常時開放されているようなこもり用オリフィスを第2通路として用いても良い。
【0059】
また、実施の形態において、車両に搭載されるエンジンの防振を目的としたが、本発明の防振装置は他の用途にも用いられることはいうまでもなく、また、形状等も実施の形態のものに限定されるものではない。
【0060】
さらに、一実施の形態において、シェイク振動に伴ってこもり音が発生する場合を通じて説明をしたが、シェイク振動とは別に、こもり音が単独で発生する場合にも適用できることはいうまでもない。
【0061】
他方、一実施の形態において、ロータをモータによって回転させる構成としたが、本発明はこれに限らず、ロータを回転させるアクチュエータはモータ以外のものであってもよく、バルブもロータ以外の弁等を用いることとしてもよい。
【0062】
また、上記実施例において車体に第1の取付部材である底板金具12側が取り付けられ、エンジンに第2の取付部材である頂板金具20側が取り付けられる構成としたが、この逆の構成としてもよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明の防振装置は、以上のように説明した構成とした結果、低周波数域の振動の減衰を図ると同時に高周波数域での低動ばね化を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防振装置の一実施の形態の断面図であって、アイドル振動時を示す図である。
【図2】図1の2−2矢視線断面図である。
【図3】図2の3−3矢視線断面図である。
【図4】本発明に係る防振装置の一実施の形態の断面図であって、シェイク振動時を示す図である。
【図5】図4の5−5矢視線断面図である。
【図6】図5の6−6矢視線断面図である。
【符号の説明】
10 防振装置
12 底板金具(第1の取付部材)
18 弾性体
20 頂板金具(第2の取付部材)
28 仕切部材
30 主液室
32 第1の副液室
46 ロータ
56 第2の副液室
58 第2空気室
60 アイドルオリフィス(第1通路)
62 こもり用オリフィス(第2通路)
64 シェイクオリフィス(第1通路)
70 モータ

Claims (1)

  1. 振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、
    振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、
    これら一対の取付部材の間に配置される弾性体と、
    弾性体を隔壁の一部として液体が封入され且つ弾性体の変形により内容積が変化する主液室と、
    隔壁の少なくとも一部が弾性変形可能な第1ダイヤフラムにより形成された第1の副液室と、
    主液室と第1の副液室との間をそれぞれ連通する複数の第1通路と、
    主液室と第1の副液室との間を仕切る仕切部材と、
    前記仕切部材内に配置され且つ隔壁の少なくとも一部が弾性変形可能な第2ダイヤフラムにより形成された第2の副液室と、
    前記仕切部材内に形成され且つ前記主液室と前記第2の副液室との間を連通する第2通路と、
    複数の第1通路の内の少なくとも何れかを開閉するバルブと、
    前記バルブに連結されてバルブを作動するアクチュエータと、を有し、
    気体が封入された空気室が、前記第2ダイヤフラムを挟んで前記第2の副液室と隣り合うようにして前記仕切部材に内蔵され、
    前記第2ダイヤフラムを前記第1ダイヤフラムと別体として構成すると共に、前記第2ダイヤフラムの剛性を前記第1ダイヤフラムの剛性よりも高くしたことを特徴とする防振装置。
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