JP4072798B2 - 防振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般産業機械、自動車等に適用されてエンジン等の振動発生部から生じる振動を減衰し、振動発生部から振動受部に伝達される振動を抑制する防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のエンジンマウントとして用いられる防振装置には、防振効果を向上させるために、制限通路により主液室と連通した副液室として差動副液室を備えたものがある。このような防振装置は、例えば、欧州特許公開第0172700号公報に記載されている。この公報に記載された防振装置は、主液室が外筒と内筒との間に掛け渡された弾性体を内壁の一部とすると共に、差動副液室が内筒を挟んで主液室の直上に配置されている。この差動副液室は、内筒の上端部付近を被覆した薄肉状の弾性体の上面部及び、弾性体の上面部と外筒の内周面との間に掛け渡された一対のダイヤフラムにより形成されている。ここで、ダイヤフラムは蛇腹状に湾曲したゴム膜により弾性体と一体的に形成されており、このダイヤフラムが内筒が外筒に対して相対移動することに連動して変位することにより差動副液室の内容積を拡縮する。
【0003】
従って、上記の防振装置によれば、弾性体が弾性変形して主液室の内容積が拡大又は収縮すると同時に、差動副液室の内容積を主液室とは逆方向に変化させて、振動伝達時における主液室と差動副液室との内圧(液圧)の差を大きくできるので、制限通路を通して主液室と差動副液室との間に大きな液柱共振を発生させて振動の減衰効果を向上できる。
【0004】
また前記公報に記載された防振装置では、外筒の内周側に角錐台状のストッパ(リバウンドストッパ)が固定されており、このリバウンドストッパは差動副液室内へ挿入されて、その先端面を弾性体により被覆された内筒へ所定の間隔を開けて対向させている。これにより、内筒へ外部から大きな力が伝達された場合でも、内筒の上方への移動がリバウンドストッパによって制限されるので、内筒の外筒に対する相対移動量が過大にならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、欧州特許公開第0172700号公報に記載された防振装置では、差動副液室を内筒を挟んで主液室の直上に配置する必要があり、このようなレイアウト上の制約によって外筒内に複数の差動副液室を設けることが困難となる。従って、この防振装置は、特定の狭い周波数域の振動に対する防振効果には優れるが、広範囲の周波数に亘る振動を効果的に減衰できない。
【0006】
また上記公報に記載された防振装置では、弾性体と一体的に形成された一対のダイヤフラム間に形成される空間を差動副液室とする構造であることから、内筒の相対移動を制限するリバウンドストッパを弾性体又は弾性体を補強する補強用部材と一体的に形成できない。すなわち、例えば弾性体をモールド成形する場合には、一般的に弾性体の軸方向両端部がそれぞれ固着される一対のフランジ部及び、この一対のフランジ部を連結する連結板からなる中間筒等の補強用部材をモールド内へインサートしておき、このモールド内へ原料ゴムを注入するが、完成品では差動副液室となる一対のダイヤフラム間の空間に対応する部分にはモールドのキャビティ凸部が位置することから、このダイヤフラム間の空間内に配置されるリバウンドストッパを弾性体又は補強用部材と一体的に形成できない。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、一対の差動副液室を有し、かつ内筒の相対移動を制限するストッパ部材を弾性体又は弾性体の補強部材と一体的に形成できる防振装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結される外筒と、振動発生部及び振動受部の他方に連結され、かつ前記外筒の内周側に配置される内筒と、前記外筒と前記内筒との間に配置されて外筒及び内筒へ連結された弾性体と、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、かつ液体が封入される主液室と、前記弾性体を挟んで前記主液室と対向すると共に副液室を形成する隔壁の少なくとも一部が前記内筒へ連結され、該内筒の前記外筒に対する相対変位に連動して内容積が拡縮される差動副液室と、前記差動副液室を前記主液室に繋げる液体通路と、を有する防振装置であって、前記外筒内には、一対の前記差動副液室が前記内筒の周方向に沿って互いに対向するように配置され、前記一対の差動副液室の間には、前記内筒の外周面と対向離間するように前記外筒側に設置され前記内筒の前記外筒に対する相対移動を制限するストッパ部材が設けられ、前記隔壁は、一対の前記差動副液室の間に構成される空気室と前記差動副液室とを仕切ると共に、一端部が前記内筒側へ接続され他端部が前記外筒側へ接続され、前記一端部から他端部にかけて、蛇腹状に湾曲した状態とされていること、を特徴とするものである。
【0009】
上記構成の防振装置によれば、外筒内に一対の差動副液室が内筒の周方向に沿って互いに対向するように配置され、かつ一対の差動副液室の間に、内筒の外周面に対向して内筒の外筒に対する相対移動を制限するストッパ部材が設けられたことにより、弾性体を挟んで主液室と対向し、かつ隔壁の少なくとも一部が内筒へ連結された差動副液室を、従来構造の防振装置では外筒内の有効に使用できなかったスペースへ配置できるので、外筒内のスペースを効率的に使用して、内筒の相対変位に連動して内容積がそれぞれ拡縮する一対の差動副液室を外筒内に容易に配置できる。
【0010】
さらに一対の差動副液室間には、内筒の軸方向へ延在する空間を確保できるので、この空間内に内筒の相対移動を制限するストッパ部材を容易に配置できる。このとき、一対の差動副液室間に形成される空間を内筒の軸方向へ貫通させておけば、弾性体をモールド成形する際に、モールド内の一対の差動副液室間に対応する部分にセットされる中子をモールド成形完了後に軸方向に沿って抜き取れるので、ストッパ部材を弾性体又は弾性体の補強部材と一体的に形成することも可能となる。
【0011】
請求項2記載の防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記弾性体の軸方向両端部がそれぞれ固着される一対のフランジ部及び、前記一対のフランジ部を連結すると共に前記ストッパ部材の少なくとも一部を形成した連結部からなる補強部材を有するものである。
【0012】
上記構成の防振装置によれば、ストッパ部材の少なくとも一部が、補強部材の一対のフランジ部材を連結した連結部により形成されることにより、ストッパ部材の一部又は全部を補強部材の連結部により形成できるので、装置の部品点数及び組立工程数を減少できる。
【0013】
ここで、外部から内筒又は外筒へ加えられる荷重に対して連結部の強度が十分高ければ、連結部のみよってストッパ部材を形成することもでき、また連結部だけでは強度が不足する場合には、他の部材、例えば弾性体の一部として形成された支持部により連結部材を補強してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。
【0015】
図1から図6には、本発明の実施形態に係る防振装置が示されている。この防振装置10は所謂ブッシュタイプの防振装置であって、本実施形態では車両のエンジンマウントとして適用されている。なお、図中符号軸心S1 は内筒金具22の軸心を示し、この軸心S1 に沿った方向を装置の軸方向とする。防振装置10は、図1に示されるように円筒状の外筒金具12を備えており、この外筒金具12の外周面上へ固定される金属製の取付フレーム(図示省略)を介して車体側へ連結される。外筒金具12の内部には中間ブロック14及び中間筒16が配置されている。
【0016】
図7に示されるように中間筒16は一対のフランジ部18、一対の連結板20及び1枚のストッパ板21からなる。一対のフランジ部18は、それぞれ円筒状に形成され、中間筒16の軸方向両端部に設けられている。ここで、図7に示されるように、一対のフランジ部18は共通の中心線(軸心)S2 を有している。一対のフランジ部18は、それぞれフランジ部18の軸方向へ延在する一対の連結板20及びストッパ板21により連結されている。一対の連結板20は、軸方向から見てフランジ部18より小さい曲率半径でフランジ部18と同心状に湾曲しており、図1に示されるように下方に向けて開いた略ハ字形となるように配置されている。またストッパ板21は、図7に示されるように一対のフランジ部18の上端部間を連結している。ストッパ板21には、軸方向中間部にフランジ部18に対して内周側へ突出するようにコ字形に屈曲された突出部21Aが形成されており、この突出部21Aの軸心S2 側に面した底面部分はフランジ部18と同心状に湾曲している。
【0017】
中間筒16一対のフランジ部18の間には、図8に示される中間ブロック14が下方から軸心S1 側へ向かって嵌挿される。中間ブロック14の上面には平面部14Aが形成されている。中間筒16は、一対の連結板20及びストッパ板21の内周側に中間ブロック14の平面部14Aと対向して空洞部を形成し、この空洞部内には、図3に示されるように振動発生部であるエンジンへ連結される内筒金具22及び補強金具23が軸方向へ貫通している。内筒金具22は外筒金具12と平行軸的に配置されており、内筒金具22と外筒金具12との間にはゴム製の弾性体24が掛け渡されている。この弾性体24が変形することにより、内筒金具22は外筒金具12に対して相対変位が可能となる。また補強金具23には、図3に示されるように軸方向両端部にそれぞれ内筒金具22へ向かって開くように半円弧状に湾曲した半円筒部23Aが設けられ、図1に示されるように軸方向中間部に一対の半円筒部23Aを連結した連結部23Bが設けられている。この補強金具23及び中間筒16により、弾性体24の軸方向への変形が抑制されている。
【0018】
弾性体24は、図1に示されるように中間筒16の内周側から延出した薄肉部24Aが中間筒16の連結板20の外周面を覆っている。一方、中間ブロック14には、平面部14Aの幅方向両端部にそれぞれ周方向に沿って延出した延出部14B,14Cが形成されており、一対の連結板20の外周面をそれぞれ覆った弾性体24の薄肉部24Aの下端付近は延出部14B,14Cの内周面へ密着している。また弾性体24の薄肉部24Aは、図6に示されるようにフランジ部18の外周面も覆っており、図4に示されるようにフランジ部18は薄肉部24Aを介して外筒金具12の内周面へ圧接している。
【0019】
弾性体24の下面には、一対のフランジ部18に挟まれた軸方向中間部に軸心S1 に向かって略V字状に凹んだ切欠部14Eが形成されており、図1及び図4に示されるように弾性体24の切欠部14Eと中間ブロック14の平面部14Aとの間の空間は主液室26とされている。
【0020】
弾性体24の上面側には、後述する一対の差動副液室27,28の弾性変形可能な隔壁となるダイヤフラム30が弾性体24と一体的に形成されている。ダイヤフラム30は、薄膜状のゴムによりそれぞれ形成された一対の空気室形成部32及び一対の側壁部34からなる。一対の空気室形成部32は、図1に示されるように軸方向から見て、それぞれ下端部が弾性体24の上面側へ接続されると共に、上端部が外筒金具12の内周面へ密着している。ここで、一対の空気室形成部32は、下端部が弾性体24の幅方向に沿って内筒金具22を挟むような弾性体24の2位置へそれぞれ接続され、かつ上端部が弾性体24の幅方向に沿ってストッパ板21を挟むような外筒金具12の2領域へそれぞれ密着している。これにより、一対の空気室形成部32は、弾性体24の上面側と外筒金具12との間に軸方向へ貫通するチューブ状の空気室36を形成する。この空気室36は、一対の差動副液室27,28の間であって内筒金具22の上方を中空状としている。
【0021】
またダイヤフラム30の空気室形成部32及び側壁部34は、図1及び図5に示されるように蛇腹状に湾曲した状態とされて外筒金具12内へ収納されている。これにより、ダイヤフラム30は、液圧を受けた時の張力により変形抵抗が増加することが抑制される。
【0022】
弾性体24の上面側には、図1及び図4に示されるように空気室36の内部へ突出する凸状のストッパ当接部38が内筒金具22の外周面に沿って形成されている。またストッパ板21の突出部21Aは、空気室形成部32と一体的に、すなわち空気室形成部32を介して弾性体24と一体的に形成されたゴム製で、ブロック状に形成された弾性支持部39内に埋設されている。弾性支持部39は、突出部21Aの底面側では薄膜状とされた被覆部39Aとされており、この被覆部39Aにより突出部21Aの底面全体を被覆している。ここで、ストッパ板21及び弾性支持部39は、内筒金具22の上方への相対変位を制限するためのリバウンドストッパ41として構成されている。
【0023】
上記ようにストッパ板21の突出部21Aがブロック状の弾性支持部39内に埋設されることにより、ストッパ板21が補強されて繰返応力によるストッパ板21の塑性的な変形を抑制できる。また弾性支持部39により被覆された突出部21Aの底面は、所定の間隔を空けて弾性体24のストッパ当接部38の頂面と対向する。これにより、内筒金具22及び弾性体24の上方への変位が制限されて外部から過大な力が入力した際にも、内筒金具22の外筒金具12に対する相対移動量が過大になることがない。このとき、突出部21Aの底面が弾性支持部39の被覆部39Aにより被覆されていることから、金属製のストッパ板21がストッパ当接部38へ直接当接せず、ストッパ当接部38の損傷が長期的に防止される。また弾性支持部39の外周面は外筒金具12の内周面と対応する凸状曲面とされており、外筒金具12の内周面に密着している。
【0024】
ダイヤフラム30の一対の側壁部34は、図3及び図5に示されるように、下端部が弾性体24の上面における空気室36の外側部分へ弾性体24の幅方向に沿ってそれぞれ接続されると共に、空気室形成部32の軸方向両端部をそれぞれ閉止している。これにより、図6に示されるように弾性体24の上面側であって一対のフランジ部18の間には、外周側が開口し、かつ内周側が弾性体24により閉止された一対の中空部40,42が形成される。この一対の中空部40,42は、弾性体24の幅方向に沿って空気室36を挟むように配置されており、それぞれ外周側の開口が外筒金具12の内周面によって塞がれることにより、図1に示されるように内部に液体が封入される第1差動副液室27及び第2差動副液室28とされる。
【0025】
差動副液室27,28は、軸心S1 に対する径方向(本実施形態では上下方向)に沿って内筒金具22の軸心S1 を挟んで主液室26と対向するように配置され、さらに隔壁の一部となるダイヤフラム30が弾性体24を介して内筒金具22へ連結されると共に、弾性体24によっても副液室26,28を形成する内壁の底部が形成されている。
【0026】
弾性体24の薄肉部24Aにより被覆された中間筒16の一対の連結板20は、図1に示されるように一対のフランジ部18の間に周方向に沿って延在する溝部44,46をそれぞれ形成している。これらの溝部44,46は、外周側の開口が外筒金具22の内周面により塞がれており、溝部44,46の一端はそれぞれ差動副液室27,28へ連結されている。
【0027】
一方、中間ブロック14の外周面には、図8に示されるように3本の溝部48,50,52が形成されており、これらの溝部48,50,52は外周側が外筒金具12の内周面により閉止されている。これらのうち軸方向における幅が互いに異なる2本の溝部48,50一端は、それぞれ中間ブロック14の延出部14Cの先端面に開口し、中間筒16の溝部44へ接続されている。また残りの溝部52の一端は中間ブロック14の延出部14Bの先端面に開口し、中間筒16の溝部46へ接続されている。
【0028】
ここで、溝部48は、図8に示されるように他端が中間ブロック14の平面部14Aから中間ブロック14の外周面底部へ貫通した貫通穴54へ接続され、この貫通穴54との接続端を起点として周方向に沿って延出部14B側へ伸び、延出部14Bの手前でU字状に折り返して延出部14Cの先端面に開口している。中間ブロック14の溝部48及び貫通穴54並びに中間筒16の溝部44はシェイク振動吸収用のシェイクオリフィス56を構成しており、このシェイクオリフィス56により主液室26と第1差動副液室27とは常に連通されている。
【0029】
図1に示されるように、中間ブロック14の平面部14A側には円穴70が形成されており、この円穴70の底部には円穴70よりも小径とされると共に、中間ブロック14の外周面底部へ貫通した円形貫通穴71が円穴70と同軸的に形成されている。中間ブロック14の外周面には、円形凹状の座ぐり部72が円形貫通穴71と同軸的に形成されており、座ぐり部72の外側には環状の溝部74が設けられている。この溝部74内にはシール用のOリング76が嵌め込まれている。また外筒金具12には座ぐり部72と同一内径とされた円形開口12Aが同軸的に形成されている。
【0030】
中間ブロック14の円穴70及び円形貫通穴71にはロータリバルブ78が回転可能に挿入されている。このロータリバルブ78の上部には、上面が開口した大径の円筒部80が設けられ、この円筒部80と反対側には小径の軸部82が円筒部80と同軸的に設けられている。また中間ブロック14には、図8に示されるように上面側の幅方向中間部を凹状とする嵌挿部83が形成されており、この嵌挿部83には略コ字形に屈曲された蓋板84が嵌挿される。この蓋板84には円穴70に面して円穴70より小径とされた円形開口84Aが形成され、蓋板84は、円形開口84Aを通してロータリバルブ78の円筒部80内と主液室27とを連通させると共に、ロータリバルブ78の円穴70からの脱落を防止している。また、ロータリバルブ78の軸部82の外周面には一対の環状溝が形成されており、この一対の環状溝には、一対のOリング86がそれぞれ嵌め込まれている。このOリング86によって円形貫通穴71からの液漏れが防止されている。
【0031】
図1に示されるように中間ブロック14の内部には、円穴70の内周面から半径方向に沿って一対の通路88,90が互いに反対方向に延出するように形成されている。一方の通路88は円穴70の内周面から中間ブロック132の延出部14C側に向かって延出し、中間ブロック14の外周面に形成された溝部50へ連結されている。従って、通路88は、中間ブロック14の溝部50及び中間筒16の溝部44を介して第1差動副液室27へ連通しており、通路88と溝部44,50はアイドル振動吸収用の制限通路であるアイドルオリフィス58を構成している。
【0032】
また他方の通路90は円穴70の内周面から延出部14B側に向かって延出し、中間ブロック14の外周面に設けられた溝部52へ連結されている。従って、通路90は、中間ブロック14の溝部52及び中間筒16の溝部46を介して第2差動副液室28へ連通しており、通路90と溝部46,52はこもり音吸収用の制限通路であるこもり用オリフィス60を構成している。そして、主液室26及び一対の差動副液室27,28にはそれぞれエチレングリコール等の液体が充填封入されている。
【0033】
ロータリバルブ78の円筒部80には、その外周面に貫通穴106が形成されており、この貫通穴106は円筒部80の内外を連通させている。これにより、図1に示されるように、ロータリバルブ78が貫通穴106を通路88へ対向させる位置へ回転すると、主液室26と第1差動副液室27との間がアイドルオリフィス78により連通し、また図2に示されるように、ロータリバルブ78が貫通穴106を通路90へ対向させる位置へ回転すると、主液室26と第2差動副液室との間がこもり用オリフィス60により連通する。
【0034】
一方、外筒金具12の外周面には、図1に示されるようにロータリバルブ78を作動させるためのモータ及びトルク伝達機構等を内蔵したモータユニット108が取り付けられている。モータユニット108は外郭部を構成するケーシング110を備えており、このケーシング110の上部には外筒金具12の外周面に沿って円弧状に湾曲した取付フランジ112が配置されており、この取付フランジ112の上面中央部からはバルブ差動軸114が突出している。バルブ差動軸114の先端部には、軸方向に沿って板状とされた結合部114Aが形成されている。 モータユニット108は、取付フランジ112を挿通したビス(図示省略)が外筒金具12に形成された雌ねじ穴(図示省略)へねじ込まれることにより、外筒金具12へ固定される。このとき、バルブ差動軸114は、外筒金具12の円形開口12A及び座ぐり部72を通して中間ブロック12内へ挿入され、結合部114Aが軸部82の下面に形成された径方向に沿った溝内へ嵌挿される。これにより、バルブ差動軸114がロータリバルブ78に連結される。
【0035】
またモータユニット108の内部には、ロータリバルブ78の回転方向における位置(位相)を検出し、モータを回転停止させるためのモータスイッチ(図示省略)が配置されている。モータユニット108は、回転開始後にはモータスイッチによる検出動作に同期させてロータリバルブ78を図1に示される主液室26と第1差動副液室27とをアイドルオリフィス58により互いに連通させる位置(以下、第1の位置という)及び図2に示される主液室26と第2差動副液室28とをこもり用オリフィス60により互いに連通させる位置(以下、第2の位置という)の何れかの位置へ回転停止させる。
【0036】
モータユニット108は、図1に示されるようにコントローラ120に連結されており、コントローラ120からの切替信号を受けてバルブ差動軸114を一方向へ回転開始する。コントローラ120は、少なくとも車速センサ122及びエンジン回転数検出センサ124からの検出信号を受け、車速及びエンジン回転数をそれぞれ検出し、一定周期で現在の車両の振動状態がアイドル振動の比率が高くなるアイドル振動状態か、シェイク振動の比率が高くなるシェイク振動状態かを判断し、車両の振動状態がアイドル振動からシェイク振動状態に変化するか、又はシェイク振動状態からアイドル振動状態に変化した時に切替信号をモータユニット108へ出力する。
【0037】
次に、本実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。
【0038】
本実施形態の防振装置10では、エンジン(図示省略)が搭載された状態で、内筒金具22を介してエンジンからの荷重を受ける弾性体24が変形して内筒金具22が外筒金具12と同軸的になる。そして内筒金具22に連結されたエンジンが作動すると、エンジンからの振動が内筒金具22を介して弾性体24に伝達される。このとき、弾性体24は吸振主体として作用し、弾性体24の内部摩擦により振動エネルギーが吸収される。
【0039】
さらに本実施形態の防振装置10は、アイドルオリフィス58及びこもり用オリフィス60の何れか一方のみを選択的に開放するロータリバルブ78を備え、このロータリバルブ78により開閉される一対の差動副液室27,28が、それぞれ内筒金具22の軸心S1 に対する径方向に沿って軸心S1 を挟んで主液室26と対向するように配置され、かつ第1差動副液室27の隔壁の一部となるダイヤフラム30が弾性体24を介して内筒金具22へ連結されると共に、弾性体24によって差動副液室27,28の内壁底部が形成されていることにより、以下のように作用を奏する。
【0040】
車両が例えば、アイドリング状態から加速していき70〜80km/h以上の高速で走行するとシェイク振動状態となる。このとき、コントローラ110は車速センサ122及びエンジン回転数検出センサ124からの信号により車両の振動状態がシェイク振動状態になったことを判断すると、モータユニット108によりロータリバルブ78を図1に示される第1の位置から図2に示される第2の位置へ回転させる。これにより、アイドルオリフィス58が閉止され、こもり用オリフィス60が開放される。従って、主液室26は、常時開放されているシェイクオリフィス56により第1差動副液室27と連通されると共に、ロータリバルブ78により開放されたこもり用オリフィス60により差動副液室28と連通される。そして、コントローラ110は、一定周期で車両の振動状態を判断し、シェイク振動状態が継続している場合にはロータリバルブ78を第2の位置に停止させておく。
【0041】
この結果、エンジンからの振動により内筒金具22が外筒金具12に対して相対移動する際に、弾性体24が弾性変形して主液室26の内容積が拡大又は収縮すると同時に、内筒金具22に連結されたダイヤフラム30の変位及び第1差動副液室27の内壁の一部を形成した弾性体24の変形により第1差動副液室27の内容積が主液室26とは逆方向に変化する。このように第1差動副液室27の内容積を内筒金具22の移動に連動して変化させることにより、主液室26と第1差動副液室27との内圧(液圧)の差を大きくできるので、主液室26と第1差動副液室27との間にシェイクオリフィス56を通して大きな液柱共振を発生できる。従って、シェイクオリフィス56における液体の粘性抵抗及び圧力変化によってシェイク振動の振動エネルギーを、特に効果的に吸収できるので、シェイク振動に対する防振効果を向上できる。
【0042】
さらに、シェイク振動と同時に発生することがある高周波で小振幅の振動である低速こもり音(80Hz程度)に対しても、第1差動副液室27と同様に第2差動副液室28の内容積が主液室26とは逆方向に変化し、主液室26と第2差動副液室28との内圧(液圧)の差を大きくできるので、こもり用オリフィス60を通して主液室26と第2差動副液室28との間に大きな液柱共振を発生できる。従って、こもり用オリフィス60における液体の粘性抵抗及び圧力変化によってこもり音の振動エネルギーを特に効果的に吸収できるので、こもり音振動に対する防振(防音)効果を向上できる。
【0043】
また、例えば70〜80km/h以上の高速で走行していた車両が減速して5km/h以下の低速で走行したり、停止してアイドリング状態となると、車両の振動状態がシェイク振動状態からアイドル振動状態となる。コントローラ110は車速センサ122及びエンジン回転数検出センサ124からの信号により車両の振動状態がシェイク振動状態からアイドル振動状態になったことを判断すると、モータユニット108によりロータリバルブ78を図2に示される第2の位置から図1に示される第1の位置へ回転させる。これにより、こもり用オリフィス60が閉止され、アイドルオリフィス58が開放される。従って、主液室26は、常時開放されているシェイクオリフィス56及びロータリバルブ78により開放されたアイドルオリフィス58により第1差動副液室27と連通される。そして、コントローラ110は、一定周期で車両の振動状態を判断し、アイドル振動状態が継続している場合にはロータリバルブ78を第1の位置に停止させておく。
【0044】
この結果、エンジンからの振動により内筒金具22が外筒金具12に対して相対移動する際に、弾性体24が弾性変形して主液室26の内容積が拡大又は収縮すると同時に、内筒金具22に連結されたダイヤフラム30の変位及び第1差動副液室27の内壁の一部を形成した弾性体24の変形により第1差動副液室27の内容積が主液室26とは逆方向に変化する。このように第1差動副液室27の内容積を内筒金具22の変位に連動して変化させることにより、主液室26と第1差動副液室27との内圧(液圧)の差を大きくできるので、主液室26と第1差動副液室27との間にシェイクオリフィス56及びアイドルオリフィス58をそれぞれ通して大きな液柱共振を発生できる。これにより、シェイクオリフィス56及びアイドルオリフィス58における液体の粘性抵抗及び圧力変化によってシェイク振動及びアイドル振動の振動エネルギーを、特に効果的に吸収できるので、シェイク振動及びアイドル振動に対する防振効果を向上できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の防振装置10によれば、装置寸法を拡大することなく、車両における代表的な振動(ノイズ)であるシェイク振動、アイドル振動及びこもり音に対する防振効果を向上できる。
【0046】
また本実施形態の防振装置10によれば、外筒金具12内に一対の差動副液室27,28が内筒の周方向に沿って互いに対向するように配置され、かつ一対の差動副液室27,28の間に、内筒金具22の外周面に対向して内筒金具22の外筒金具12に対する相対移動を制限するリバウンドストッパ41が設けられたことにより、上下方向に沿って弾性体24を挟んで主液室26と対向し、かつダイヤフラム30の下端が内筒へ連結された差動副液室27,28を、従来構造の防振装置では有効に使用できなかった外筒金具内のスペースへ配置できるので、外筒金具22内のスペースを効率的に使用して、一対の差動副液室27,28を配置できる。弾性体24をモールド成形する際に、モールド(図示省略)内の一対の差動副液室27,28間に対応する部分にセットされる中子をモールド成形完了後に軸方向に沿って抜き取れるので、リバウンドストッパ41を弾性体24及補強部材である中間筒16と一体的に形成できる。
【0047】
なお、本実施形態の防振装置10では、リバウンドストッパ41が中間筒16のストッパ板21及び、これを補強する弾性支持部39により構成されているが、外力に対抗できる強度を確保できるならば、ストッパ板21及び弾性支持部39の一方のみよってリバウンドストッパを構成してもよい。
【0048】
また本実施形態の防振装置10では、差動副液室27をシェイク振動及びアイドル振動吸収用副液室とし、差動副液室28をこもり音吸収用副液室としたが、外筒12内へオリフィスにより主液室26へ繋がれた差動副液室又は通常の副液室を追加して設け、この追加した副液室によりシェイク振動、アイドル振動及びこもり音の何れかを吸収し、3個の副液室によりそれぞれ異なる種類の振動を吸収させるようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上のように説明したように本発明の防振装置によれば、外筒内に一対の差動副液室を容易に設けることができ、かつ内筒の相対移動を制限するストッパ部材を弾性体又は弾性体の補強部材と一体的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る防振装置のアイドルオリフィスが開放された状態を示す軸方向断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る防振装置のこもり用オリフィスが開放された状態を示す軸方向断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る防振装置を軸方向から見た正面図である。
【図4】図3に示されるIV-IV 線に沿った本発明の実施形態に係る防振装置の断面図である。
【図5】図3に示されるV-V 線に沿った本発明の実施形態に係る防振装置の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る防振装置(中間ブロックを除く)を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る防振装置の中間筒を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る防振装置の中間ブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
10 外筒金具(外筒)
22 内筒金具(内筒)
24 弾性体
27 第1差動副液室
26 主液室
28 第2差動副液室
30 ダイヤフラム(隔壁)
41 リバウンドストッパ(ストッパ部材)
56 シェイクオリフィス(液体通路)
58 アイドルオリフィス(液体通路)
60 こもり用オリフィス(液体通路)

Claims (2)

  1. 振動発生部及び振動受部の一方に連結される外筒と、
    振動発生部及び振動受部の他方に連結され、かつ前記外筒の内周側に配置される内筒と、
    前記外筒と前記内筒との間に配置されて外筒及び内筒へ連結された弾性体と、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、かつ液体が封入される主液室と、
    前記弾性体を挟んで前記主液室と対向すると共に副液室を形成する隔壁の少なくとも一部が前記内筒へ連結され、該内筒の前記外筒に対する相対変位に連動して内容積が拡縮される差動副液室と、
    前記差動副液室を前記主液室に繋げる液体通路と、を有する防振装置であって、
    前記外筒内には、一対の前記差動副液室が前記内筒の周方向に沿って互いに対向するように配置され、
    前記一対の差動副液室の間には、前記内筒の外周面と対向離間するように前記外筒側へ設置され前記内筒の前記外筒に対する相対移動を制限するストッパ部材が設けられ、
    前記隔壁は、一対の前記差動副液室の間に構成される空気室と前記差動副液室とを仕切ると共に、一端部が前記内筒側へ接続され他端部が前記外筒側へ接続され、前記一端部から他端部にかけて、蛇腹状に湾曲した状態とされていること、を特徴とする防振装置。
  2. 前記弾性体の軸方向両端部がそれぞれ固着される一対のフランジ部及び、前記一対のフランジ部を連結すると共に前記ストッパ部材の少なくとも一部を形成した連結部からなる補強部材を有することを特徴とする請求項1記載の防振装置。
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