JP4125398B2 - 釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣竿、特に、リールによってライン(釣糸)の長さを調整するリール竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の釣竿は、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)等の強化繊維からなる筒状の竿体と、竿体の竿元側に取り付けられたリールと、竿体の外周に設けられた複数のガイドとを有している。そして、ラインはリールから各ガイドに導かれ穂先に設けられたトップガイドから導出される。
【0003】
また、釣糸を挿通する釣糸通路を竿体内部に有する中通し竿にあっては、リールからのラインは、竿体外周部に設けられた糸導入孔より竿体内部の釣糸通路に導かれ、穂先の開口部から外部に導出される。そして、釣糸通路の内周面にリング状のガイド、または螺旋状のガイドを設けて、釣糸と釣糸通路周壁面の接触面積を減少させてラインの滑動抵抗を抑えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガイドはラインの滑動を支える部材であり、第1にラインと擦れあっても損傷しにくい対摩耗性に富むことが求められる。また第2に、キャスティングや持ち運びの容易性を考慮すると、釣竿全体として軽量であることが好ましいので、ガイド自体も軽量であることが必要である。
【0005】
しかし、従来の釣竿のガイドは、スチール,チタン等の金属製やセラミック製のものが一般的であり、要求される性質を全て十分に満足しているとは言い難い。 例えば、従来のスチール製のガイドでは、ラインにかかる大きな力を受け止めるために、ガイドの線径を十分に太く成形しガイド全体に剛性を持たせて強度を維持している。このため、ガイドの重さが重くなってしまい、釣竿全体の重量化を招いている。
【0006】
本発明の課題は、全体として軽量化可能な釣竿を提供することにある。
【0007】
また、本発明の別の課題は、損傷しにくいガイドを有する釣竿を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明で用いる形状記憶合金とは、常温でマルテンサイト点(変質温度)を超えており超弾性を有する金属であって、例えば、Ni−Ti合金,Cu−Zn合金等を例示できる。
【0009】
発明1に係る釣竿は、釣糸が巻かれたリールが装着される中通し竿であって、内部に釣糸を挿通する釣糸通路と、この釣糸通路の周壁面に、所定の間隔で一体成形された凹部とが設けられた竿体と、前記釣糸通路に形成された前記凹部に配置されるリング状部材であり、前記リールからの釣糸が挿通されて導かれる複数の形状記憶合金製のガイドと、を備え、前記形状記憶合金は、常温で超弾性を有し、前記ガイドの外周に嵌め込まれ、前記ガイド挿入時に、前記周壁面を損傷させないようにするための弾性体製のリングカバーをさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
この場合には、ラインからガイドに強い力が加わると、形状記憶合金製ガイドは形状記憶合金の特徴である超弾性により幾分屈曲する。ラインとの接触の際、ガイド自体の剛性によってラインを支えるのではなく、形状記憶合金の有する超弾性を利用した復元性を利用してラインを支えるので、ラインとの接触により損傷するのが抑えられる。また、形状記憶合金はそれ自体対摩耗性に富むため、ラインとの接触による損傷を抑えられる。さらに、十分な剛性を持たせるべくガイドの線径を太くする必要がなくなりガイドを軽量化できるので、結果として竿全体の重さを軽量化でき、キャスティング性能が向上し、持ち運びも容易になる。
【0011】
なお、形状記憶合金は錆びにくいので、水に濡れたラインが接触してガイドに水分が付着しても容易に錆びることはない。
【0017】
【実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の第1実施形態を採用した釣竿1は、図1に示すように、竿体10と、竿体10の外周に配置される複数のガイド11と、竿体10の中央より竿元側の外周に配置される前グリップ12と、手元側端部に配置された竿元グリップ13とを有している。そして前グリップ12と竿元グリップ13との間には、釣糸30を巻回するリール31が装着されている。
【0018】
この竿体10は、例えば、炭素繊維の強化繊維に樹脂を含浸させたシート状プリプレグをマンドレルに巻回して成形された穂先側先端が細いテーパ状でかつ筒状のものである。前グリップ12は、穂先側先端がやや小径の先細りテーパ状の円筒部材である。前グリップ12は竿体10の周面に嵌め込まれた硬質の筒体(図示せず)と一体成形されており、弾性体のペレットを射出成形や押し出し成形することで得られる。この弾性体としては、ウレタンゴム等のゴム系弾性体やアクティマー(商標),レオストマー(商標)等のスチレンブロック共重合体系熱可塑性弾性体等を用いることができる。また、竿元グリップ13は、竿体10の竿尻に嵌め込まれ接着剤で接着された蓋付き円筒形部材である。
【0019】
ガイド11は、図2に示すように、ライン30が挿通される輪状のリング部20と、リング部20からのその径方向外方に延びリング部20を支持する柱状部21と、柱状部21の一端をほぼ90度折り曲げて形成された固定部22とを有している。そして、これらリング部20,柱状部21,固定部22は形状記憶合金であるTi−Ni合金材から一体成形されている。ガイド11は、竿体10の所定の位置の外周面上に固定部22を密着させた状態で接着され、さらに固定部22と竿体10の外周面とを覆うようにパイプ状部材23が設けられている。そして、パイプ状部材23をかしめることにより、ガイド11は竿体10に固定されている。
【0020】
このように構成された釣竿1では、リール31から引き出されたライン30は、竿元側のガイド11から、各ガイド11のリング部20を挿通するように穂先側に順次導かれている。ライン30の穂先側先端に設けられているジグ(仕掛け)(図示せず)に魚がかかりライン30に大きく力が加えられた場合、ライン30を支持してその力を直接受ける部材はガイド11である。このガイド11は、ライン30から力を受けると、形状記憶合金の特徴である超弾力性によってライン30から受ける力に応じて幾分屈曲する。例えば、ライン30から竿体10方向に力がかかった場合には、図3(a)に示すように、ガイド11は竿体10方向に幾分屈曲する。そして、ライン30からの受ける力が弱まり、または力を受けなくなった場合、さらにライン30から竿体10と逆方向に力がかかった場合には、ガイド11は形状記憶合金の超弾力性によって、図3(b)に示すように元の形状に戻る。
【0021】
以上のように、本発明の第1実施形態を採用した釣竿1では、超弾力性を有する形状記憶合金を用いたガイド11を有しているので、ライン30との接触によってガイド11が損傷するのを抑えることができる。また、形状記憶合金は対摩耗性に優れているので、摩耗によってガイド11が損傷するのを抑えられる。さらに、超弾力性を有する形状記憶合金製ガイドがラインから受ける力に応じて屈曲するので、剛性を持たせるべくガイド11の線径を太くする必要がないので、ガイド11を軽量化でき、竿全体を軽量化できる。
【0022】
なお、形状記憶合金は錆びにくい性質を有しているので、ガイド11がさびついてしまうことも抑えられる。
【0023】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の第2実施形態を採用した中通し竿2は、図4に示すように、竿体40と、竿体40の中央より竿元側の外周に配置される前グリップ42と、手元側端部に配置された竿元グリップ43とを有している。そして前グリップ42と竿元グリップ43との間には、釣糸30を巻回するリール31が装着されている。
【0024】
この竿体40は、第1実施形態と同様に、穂先側先端が細いテーパ状でかつ筒状の部材であり、竿元側にライン30の導入孔44を有し、穂先側先端に管状の釣糸案内部45を有している。また、図5に示すように、竿体40は内部に釣糸通路46を有しており、螺旋状のガイド47が釣糸通路46の内周面に沿って配置されている。このガイド47はTi−Ni合金からなる形状記憶合金製部材である。
【0025】
この中通し竿2では、リール31から引き出された釣糸30は、導入孔44から竿体40の内の釣糸通路46に導入され、釣糸案内部45から外部に引き出される。なお、その他の構成は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。続いて、第2実施形態に係る中通し竿2の製造方法を説明する。
【0026】
まず、竿体40を周知の方法で製造する。周知の方法として具体的には以下のような製造方法が例示できる。マンドレルの外周にワックス等の離型材を塗布し、この外周面にポリプロピレン樹脂製の離型テープを巻回する。そして、さらに離型テープの外周面に複数のプリプレグ層を巻回する。これら複数のプリプレグ層は炭素繊維などの強化繊維を樹脂に含浸させたシート状のプリプレグを細いテープ状にしたプリプレグテープである。複数のプリプレグ層を配置した後、さらにその外周面にポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンから成る保護用テープを巻回して竿素材を得る。この竿素材を焼成し、マンドレルを抜き取って、保護用テープ,離型テープを順次剥離して釣糸通路46を有する竿体40を製造する。
【0027】
一方、螺旋状にTi−Ni合金を成形したガイド47を別途製造する。このガイド47の外径は釣糸通路46の内径に一致している。そしてガイド47の両端から軸方向に引張力をかけて直線状の部材に変形させる。Ti−Ni合金製ガイド47は、変形した状態でマルテンサイト点より低い温度環境におかれると、弾性にひずみが引き延ばされた状態で拘束されてしまい、永久弾性ひずみとして残る。即ち、図6(a)に示すように、直線状の形状のままで固定されてしまう。
【0028】
直線状部材となったガイド47は容易に釣糸通路46に挿入することができる。そして、挿入後にマルテンサイト点より温度を上昇させると、図6(b)に示すように、永久弾性ひずみが解放されてガイド47は元の螺旋状の形状に復元し、釣糸通路46の内周面に合致し固定される。以上のように構成された中通し竿2では、第1実施形態と同様の作用,効果を得ることができる。さらに、螺旋状のガイド47を直線状の形状に変形させて固化し、釣糸通路46に挿入して固定することができるので、容易にガイド47を釣糸通路46に配置することができる。さらに、ガイド47を一部品として保管する場合、広いスペースを必要とせず容易に保管できる。
【0029】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明の第3実施形態を採用した中通し竿3は、螺旋状のガイド47に変えてリング状ガイド57が設けられている点において第2実施形態と相違するので、この相違点についてのみ説明する。
【0030】
図7及び図8に示すように、第3実施形態を採用した中通し竿3は、釣糸通路56を竿体50の内部に有している。そして、釣糸通路56の周壁面には所定の間隔で竿体50と一体成形された凹部50aが設けられており、凹部50aとそれ以外の周壁面との段差を利用して、凹部50aには複数のリング状のガイド57が固定されている。このガイド57は、Ti−Ni合金からなる形状記憶合金製部材である。また、ガイド57の外周には、例えば、ポリウレタンゴム等の弾性体製リングカバー58が設けられている。
【0031】
続いて、第3実施形態に係る中通し竿3の製造方法を説明する。まず、竿体50を周知の方法で製造する。従来の方法として具体的には以下のような製造方法が例示できる。マンドレルの外周にワックス等の離型材を塗布し、この外周面にポリプロピレン樹脂製の離型テープを巻回する。その外周面の所定の箇所に凹部50aを形成する凹部形成テープを巻回し、この凹部形成テープと凹部形成テープとの間に第1プリプレグ層を巻回する。これによりマンドレル表面が凹部形成テープと第1プリプレグ層とによって同一周面となるようにする。そして、さらに凹部形成テープと第1プリプレグ層との外周面に複数の他のプリプレグ層を巻回し、その外周に保護用テープを巻回して竿素材を得る。このようにして得た竿素材を焼成した後、マンドレルを抜き取って、保護用テープ,凹部形成テープ,離型テープを順次剥離して周壁面に凹部50aを有する釣糸通路56を備えた竿体50を製造する。その後、釣糸通路56の所定の内径に合致するように形成したリング状のガイド57にリングカバー58をはめ込み、このガイド57を釣糸通路56内に挿入して所定の凹部50aに固定する。この際、リングカバー58の弾力性により釣糸通路56の周壁面を損傷することはない。
【0032】
以上のように構成された中通し竿3では、第1実施形態と同様の作用,効果を得ることができる。
【0033】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の第1実施形態を採用したフライロッド4は、図9に示すように、竿体60と、竿体60の外周に配置される複数のスネークガイド61と、竿体60の竿元側の外周に配置されるグリップ62とを有している。そしてグリップ62の竿先側には、釣糸30を巻回するリール31が装着されている。
【0034】
グリップ62は、穂先側先端がやや小径の先細りテーパ状の円筒部材である。グリップ62は竿体60の周面に嵌め込まれた硬質の筒体(図示せず)と一体成形されており、例えば、メイプル材,コルク材等の木材を成形加工したものである。スネークガイド61は、図10に示すように、Ti−Ni合金の線材を螺旋状に1回転させたものである。そしてスネークガイド61はその端部61aを竿体60の所定の位置の外周面上に密着させた状態で接着されており、さらに竿体60と端部61aを外周からパイプ状の固定部材70で覆われて固定されている。
【0035】
なお、その他の構成は、第1実施形態と同様であり説明を省略する。以上のように構成されたフライロッド4は、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、特に軽いガイドが必要とされるフライロッド4では十分に竿全体の重さを軽くすることができる。
【0036】
[その他の実施形態]
(a)形状記憶合金としては、Cu−Sn,Cu−Zn,Ni−Al等の合金を用いることもできる。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る釣竿によれば、形状記憶合金製のガイドを有しているので、全体として軽量化可能な釣竿を提供できる。また、ガイドの損傷を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を採用した釣竿の全体図。
【図2】図1のリングの拡大図。
【図3】ラインに力が加わった場合のリングの状態(a)と、力が加わっていない場合のリングの状態(b)を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態を採用した中通し竿の全体図。
【図5】図4の竿体の断面図。
【図6】マルテンサイト点より低い温度環境でリングを挿入した状態(a)と、マルテンサイト点より高い温度環境でリングの形状を復元した状態(b)を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態を採用した中通し竿の竿体の断面図。
【図8】図7のVIII−VIII断面図。
【図9】本発明の第4実施形態を採用したフライロッドの全体図。
【図10】図9のスネークガイドの拡大図。
【符号の説明】
10,40,50,60 竿体
20,57 ガイド
30 ライン
31 リール
47 螺旋状ガイド
61 スネークガイド
Claims (1)
- 釣糸が巻かれたリールが装着される中通し竿であって、
内部に釣糸を挿通する釣糸通路と、この釣糸通路の周壁面に、所定の間隔で一体成形された凹部とが設けられた竿体と、
前記釣糸通路に形成された前記凹部に配置されるリング状部材であり、前記リールからの釣糸が挿通されて導かれる複数の形状記憶合金製のガイドとを備え、
前記形状記憶合金は、常温で超弾性を有し、
前記ガイドの外周に嵌め込まれ、前記ガイド挿入時に、前記周壁面を損傷させないようにするための弾性体製のリングカバーをさらに備えている、
ことを特徴とする釣竿。
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