JP4121696B2 - 眼鏡レンズの面取加工データ作成方法、眼鏡レンズの面取加工方法、眼鏡レンズの面取加工データ作成装置及び眼鏡レンズの面取加工装置 - Google Patents

眼鏡レンズの面取加工データ作成方法、眼鏡レンズの面取加工方法、眼鏡レンズの面取加工データ作成装置及び眼鏡レンズの面取加工装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡フレームの玉型形状の周縁、座標で表現すると(ρi,θi)の点から例えば法線方向に沿って所定の面取幅を入力し、眼鏡レンズの屈折面上における面取軌跡を求め、コバ厚形状データを求め、面取砥石を用いて面取加工を行うために必要な面取加工データを作成する方法あるいは装置、面取加工方法あるいは面取加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、面取加工を行う装置としては、例えば、特開平10−225853号公報、特開平10−225854号公報、特開平10−225855号公報に開示されたレンズ研削加工装置が知られている。
【0003】
これらのレンズ研削加工装置では、図11に示すように、生地レンズML’の周縁部MLsを研削してヤゲンMLyを加工した後の眼鏡レンズMLのヤゲン肩Hf,Hrに面取りMLmf,MLmrを形成することが可能となっている。
【0004】
この際、例えば、ヤゲンMLyよりも後側屈折面MLr寄りに形成された面取りMLmrの場合、後側屈折面MLrのヤゲン肩幅Hr(ヤゲン底部の厚み)を予め定めた比率Hr1:Hr2で分割して眼鏡レンズMLの全周に亘ってその分割比率を維持したまま面取加工を施している。
【0005】
また、例えば、ヤゲンMLyよりも前側屈折面MLf寄りに形成された面取りMLmfの場合、前側屈折面MLfのヤゲン肩幅Hf(ヤゲン底部の厚み)を予め定めた比率Hf1:Hf2で分割して眼鏡レンズMLの全周に亘ってその分割比率を維持したまま面取加工を施している。
【0006】
尚、ヤゲンMLyの頂点を境としてコバ厚Wiを分割(比率Wif:Wir)し、その分割比率Wif:Wirをヤゲン肩幅Hf,Hrの比率Hf1:Hf2又は比率Hr1:Hr2に替えて分割して眼鏡レンズMLの全周に亘ってその分割比率(Wif:Wir)を維持したまま面取加工を施してても良い。
【0007】
具体的には、面取りMLmrの場合、比率Hr1:Hr2=4:6で分割して眼鏡レンズMLの全周に亘ってその分割比率を維持したまま面取加工を施している。
【0008】
なお、このような面取加工は、眼鏡レンズMLの度数等に起因して眼鏡レンズMLが厚い場合などに施される。この際、特にレンズ中心からの距離が長いことからコバ厚が大きい耳掛け側の面取り量を大きくすることによって、実際の装用時における側方からの見掛け上のコバ厚Wiの厚さを実際よりも薄く見せるように面取りMLmf,MLmrを施すのが一般的である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、面取加工が施された後の眼鏡レンズMLを眼鏡フレームに枠入れし、眼鏡装用者がその眼鏡を装用した場合に、眼鏡装用者以外の人が対面した場合、眼鏡レンズMLで実際に目につくのは側方からではなく、正面側から見た状態での面取加工された眼鏡レンズMLの前側屈折面MLfに形成された面取りMLmfの全体形状並びに後側屈折面MLrに形成された面取りMLmrの全体形状である。
【0010】
即ち、面取加工された後の眼鏡レンズMLのコバ面側は、眼鏡フレーム等で枠入れされているため、面取加工後の眼鏡レンズMLのコバ厚Wiが眼鏡フレーム等のリム厚よりも僅かに厚い程度に面取りされていれば、眼鏡装用者の好みにフィットするものである。
【0011】
そして、面取加工された眼鏡レンズMLを正面側から見た場合に、面取加工後の面取りMLmf,MLmrの軌跡(全体形状)が眼鏡フレームのリムに沿ってきれいな曲線を描いていなければ、その面取加工はうまく加工されたとは言えない。
【0012】
尚、このような面取りMLmf,MLmrは、眼鏡装用者の左右眼の度数が略同じであれば、使用される生地レンズML’の厚さも同じであり且つ左右フレーム形状が基本的には対称形状であることから問題はないものの、眼鏡装用者の左右眼の度数が異なると、使用される生地レンズML’の厚さも異なり、上述した単純な比率(Hr1:Hr2やWif:Wir)では、特に、後側屈折面MLrに形成された面取りMLmrの面取幅Hmrが左右の眼鏡レンズMLで大きく異なってしまい、眼鏡フレームが見掛け上で左右異なった形状に見えてしまうことから、このような左右で度数の異なった生地レンズML’を用いた場合においても左右で略一致(左右対称)した面取りMLmr形成することができるほうが汎用性に優れたものといえる。
【0013】
そこで、本発明は、従来から知られているコバ面側を主とした一連の面取加工を全般的に見直し、眼鏡レンズの前側屈折面あるいは後側屈折面からみた面取加工、眼鏡装用者の好みにフィットする面取軌跡の追求、屈折面上における面取軌跡に沿ったコバ厚形状データ収集、それらのデータを基にした面取加工の実現を目指した眼鏡レンズの面取加工データ作成方法、面取加工方法、面取加工データ作成装置及び面取加工装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法は、眼鏡フレームの玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力し、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を得ることを特徴とする
請求項2に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法は、眼鏡フレームの玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力し、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上における面取軌跡を求め、該面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めることを特徴とする
請求項3に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法は、眼鏡フレームの玉型形状の周縁点から法線方向に面取幅を入力し、各々の周縁点における面取の面取端位置を基準として面取軌跡を求めることを特徴とする
請求項4に記載の眼鏡レンズの面取加工方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法を用いて面取軌跡を求め、その求められた面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めて面取加工を行うことを特徴とする
請求項5に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置は、眼鏡フレームの玉型形状データを入力するための玉型形状データ入力手段と、入力された玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力するための面取幅入力手段と、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を求めるための演算手段とを有することを特徴とする
請求項6に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置は、眼鏡フレームの玉型形状データを入力するための玉型形状データ入力手段と、入力された玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力するための面取幅入力手段と、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を求めるための演算手段と、前記面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを入力するためのコバ厚形状データ入力手段とを有することを特徴とする
請求項7に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置は、前記面取幅入力手段は、眼鏡フレームの玉型形状の周縁点から法線方向に面取幅を入力し、前記演算手段は、各々の周縁点における面取の面取端位置を基準として面取軌跡を求めることを特徴とする
請求項8に記載の眼鏡レンズの面取加工装置は、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置を用いて面取軌跡を求め、その求められた面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めて面取加工をするための面取砥石を有することを特徴とする
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[構成]
図1において、1は眼鏡フレームFのレンズ枠形状やその型板或いは玉型モデル等から玉型形状データであるレンズ形状情報(θi,ρi)を読み取るフレーム形状測定装置(玉型形状データ測定装置)、2はフレーム形状測定装置から送信等によって入力された眼鏡フレームの玉型形状データに基づいて眼鏡レンズを研削加工するレンズ研削加工装置(玉摺機)である。尚、フレーム形状測定装置1には周知のものを用いることができるので、その詳細な構成やデータ測定方法等の説明は省略する。
【0028】
<レンズ研削加工装置2>
レンズ研削加工装置2は、図2,図3に示すように、装置本体3の前面寄りに設けられた加工室4を開閉するカバー5を有する。また、レンズ研削加工装置2は、加工室4内に加工主要部が配置され、加工室4の外側の装置本体3内にその加工主要部の駆動系(モータ等)が配置されている。レンズ研削加工装置2は、その駆動系の制御操作やデータ設定操作を行う際に用いる第1及び第2の操作パネル6,7と、操作パネル6,7による操作状態等その他を表示する液晶表示器8とを備えている。
【0029】
加工室4内に配置された加工主要部としては、図4に示すように、装置本体3の左右に延びると共に眼鏡レンズMLを保持(挟持)して回転させる左右一対のレンズ軸9,10と、眼鏡レンズMLを研削加工するための研削砥石11と、研削砥石11を回転させる砥石軸12と、眼鏡レンズMLの周縁部に面取加工を施す面取砥石13,14と、面取砥石13,14を回転させる面取軸15と、面取軸15を駆動させると共に旋回させる旋回アーム16と、面取砥石14に隣接して面取軸15に設けられた溝掘カッター17と、面取砥石13,14及び溝掘カッター17の下方を覆う円弧状カバー18と、円弧状カバー18の内側に設けられて研削砥石12や面取砥石13,14の砥石面に研削水を掛けるためのホース(図示せず)と、眼鏡レンズMLのコバ圧Wiを測定するコバ圧測定部材19とが設けられている。
【0030】
カバー5は、無色透明又は有色透明(例えば、紺等の半透明)の一枚のガラス製若しくは樹脂製のパネルから構成され、装置本体3の前後にスライドする。
【0031】
加工室4は、眼鏡レンズMLの後壁に丸みを帯びた傾斜面が形成されており、研削屑を流し易い構造になっている。
【0032】
(加工主要部の駆動系)
加工主要部の駆動系としては、一対のレンズ軸9,10を研削砥石11に対して接近・離反させるために後端部を中心に上下回動可能で且つ左右に移動可能なキャリッジと、そのキャリッジをパルスモータ等の駆動モータを用いて上下回動させる上下動手段と、キャリッジを左右動させるパルスモータ等の駆動モータと、レンズ軸9,10を回転駆動させるパルスモータ等の駆動モータと、キャリッジの上下回動に伴いレンズ軸9,10間に保持された眼鏡レンズMLを研削加工する際に研削砥石11を回転させる駆動モータ等を有する。
【0033】
研削砥石11は、粗研削砥石、ヤゲン砥石、仕上砥石等を有する。上述した駆動系は、レンズ軸9,10間に眼鏡レンズML(被加工レンズ)を保持させて、このレンズ軸9,10の回動とキャリッジの上下回動をレンズ形状情報(θi,ρi)に基づいて制御しつつ眼鏡レンズMLの周縁を回転する粗研削砥石でレンズ形状(玉型形状)に粗研削加工する。また、レンズ軸9,10の回動とキャリッジの上下回動を玉型形状情報であるレンズ形状情報(θi,ρi)に基づいて制御しつつ設定されたヤゲン位置に基づいてキャリッジを左右に駆動する駆動モータを制御することにより、玉型形状に粗加工された眼鏡レンズMLのコバ端にヤゲン加工を施す。尚、このような眼鏡レンズMLの研削加工は周知の構造を採用できるので、詳細な説明は省略する。
【0034】
(コバ厚測定部材19)
コバ厚測定部材19は、互いに離間状態で対向する一対のフィーラ19a,19bを備え、加工室4内で移動可能となっている。待機時は、フィーラ19a,19bを立て上げており、測定時には、待機状態(フィーラ19a,19b立て上げ状態)からフィーラ19a,19bを水平に保つように旋回移動される。そして、レンズ軸9,10に眼鏡レンズMLを保持させておいて、レンズ軸9,10をキャリッジ上下動及び左右動して一対のフィーラ19a,19bの各先端を眼鏡レンズMLの前側屈折面と後側屈折面の何れか一方ずつ当接させると共に、レンズ軸9,10の駆動モータをレンズ形状情報(玉型形状データ)(θi,ρi)に基づいて角度θi毎に回転制御し、且つレンズ形状情報(玉型形状データ)(θi,ρi)に基づいてキャリッジ上下駆動用モータ(図示せず)を作動制御することにより、フィーラ19a,19bの眼鏡レンズMLへの当接位置を眼鏡レンズMLの動径ρiの位置に移動させて、フィーラ19の位置を位置測定手段で求めてレンズ形状情報(玉型形状データ)(θi,ρi)におけるコバ厚Wiとするようにしている。
【0035】
なお、フィーラ19a,19bは、支持軸19cに固着されている。フィーラ19a,19bは測定部(図示せず)内部に、支持軸19c方向に進退動可能に軸支され、この移動量は測定部(図示せず)に内蔵された読み取りセンサー(図示せず)により、読み取られる。
【0036】
(操作パネル6)
操作パネル6は、図5(A)に示すように、眼鏡レンズをレンズ軸9,10によりクランプするための『クランプ』スイッチ6aと、眼鏡レンズの右眼用・左眼用の加工の指定や表示の切換え等を行う『左』スイッチ6b,『右』スイッチ6cと、砥石を左右方向に移動させる『砥石移動』スイッチ6d,6eと、眼鏡レンズの仕上加工が不十分である場合や試し摺りする場合の再仕上又は試し摺り加工するための『再仕上/試』スイッチ6fと、レンズ回転モード用の『レンズ回転』スイッチ6gと、ストップモード用の『ストップ』スイッチ6hとを備えている。
【0037】
(操作パネル7)
操作パネル7は、図5(B)に示すように、液晶表示器8の表示状態を切り換える『画面』スイッチ7aと、液晶表示器8に表示された加工に関する設定等を記憶する『メモリー』スイッチ7bと、レンズ形状情報(θi,ρi)を取り込むための『データ要求』スイッチ7cと、数値補正等に使用されるシーソー式の『−+』スイッチ7d(『−』スイッチと『+』スイッチとを別々に設けても良い)と、カーソル式ポインタ移動用の『▽』スイッチ7eとを液晶表示器8の側方に配置している。また、ファンクションキーF1〜F6が液晶表示器8の下方に配列されている。
【0038】
このファンクションキーF1〜F6は、眼鏡レンズの加工に関する設定時に使用されるほか、加工工程で液晶表示器8に表示されたメッセージに対する応答・選択用として用いられる。
【0039】
(液晶表示器8)
液晶表示器8は、『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3、『メニュー』タブTB4によって切り替えられ、ファンクションキーF1〜F6に対応したファンクション表示部H1〜H6を有する。
【0040】
ファンクション表示部H1〜H6は、必要に応じたものが適宜表示され、非表示状態の時にはファンクションキーF1〜F6の機能に対応したものとは異なった図柄や数値、或いは、状態等を表示することができる。
【0041】
『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3を選択した状態の時には、アイコン表示エリアE1、メッセージ表示エリアE2、数値表示エリアE3、状態表示エリアE4に区画した状態で表示される。また、『メニュー』タブTB4を選択した状態の時には、全体的に一つのメニュー表示エリアとして表示しても良いし、独自の区画表示エリアとしても良い。
【0042】
アイコン表示エリアE1に表示されるアイコンは、玉型形状データであるレンズ形状情報(θi,ρi)に基づいて眼鏡レンズのコバ厚形状を測定している状態、眼鏡レンズのコバ端面に形成されるヤゲン形状をシミュレーションしている状態、コバ端面を粗加工する状態、コバ端面を仕上加工する状態、コバ端面を鏡面加工する状態、コバ端面をヤゲン溝掘り加工する状態、コバ端面をヤゲン溝掘り・面取加工する状態、コバ端面をヤゲン溝掘り・面取・鏡面加工する状態、コバ端面をヤゲン加工する状態、コバ端面をヤゲン・面取加工する状態、コバ端面をヤゲン・面取・鏡面加工する状態、眼鏡レンズの研削加工の終了、といったように各作業に対応して並設されている。
【0043】
また、各アイコンの上方には、その一連の進行状況をオペレータが識別できるように、1対1で対応すると共に一連の進行状況に応じて点灯表示していく複数カーソルインジケータが、右眼レンズ進行状況表示用と左眼レンズ進行状況表示用とで上下2段にして『加工中』タブTB2に設けられている。
【0044】
メッセージ表示エリアE2には、各種エラーメッセージや警告メッセージなどが状態に応じて表示される。尚、装置内部品等の破損や被加工レンズの破損等の虞がある場合の警告メッセージなどの場合には、オペレータが認識し易いようにメッセージ表示エリアE2以外のエリアにはみ出して表示上で重畳させることも可能である。
【0045】
数値表示エリアE3には、レイアウトデータの入力時には、眼鏡フレームの左右レンズ枠の幾何学中心間距離(FPD値)、眼鏡装用者眼の瞳孔間距離(PD値)、FPD値とPD値との差である寄せ量の鉛直方向成分UP値(又はHlp値)、加工サイズ調整の各項目等が表示される。また、初期設定時には、上述したFPD,PD,UP,サイズの他に加工レンズの吸着中心が表示される。さらに、モニターデータ入力時には、眼鏡レンズの二次加工的な面取り加工や鏡面加工に関わる寸法関係の数値が表示される。
【0046】
状態表示エリアE4には、右眼用及び左眼用の眼鏡レンズのレイアウト画像や眼鏡レンズの最大、最小、最大及び最小以外の中間(任意)コバ周縁に形成されるヤゲン形状、コバ周縁を側面から見たレンズ側面形状等や、現実の加工状態に即した模式図等が表示される。
【0047】
尚、以下、レイアウト時の液晶表示器8の表示状態としての、システム起動直後・データ要求直後・レイアウト設定終了・各コース選択等、或いは、加工時の液晶表示器8の表示状態としての、コバ厚確認・右眼レンズ加工中及び終了・左眼レンズ加工中等、更に、加工済み後の液晶表示器8の表示状態としての確認・データ保存、研削加工中におけるエラー・アイコンとカーソル・溝掘り加工及び面取加工・試し摺り・加工追加再仕上げ等の表示や操作等は、特願2000−287040号又は特願2000−290864号と同様のものとすることができる。
【0048】
[制御回路]
レンズ研削加工装置2は、図6に示すように、制御回路40を有する。
【0049】
CPUを有する演算制御回路40には、操作パネル6,記憶手段としてのROM41、記憶手段としてのデータメモリ42、RAM43が接続されていると共に、補正値メモリ44が接続されている。また、演算制御回路40には、表示用ドライバ45を介して液晶表示器8が接続され、パルスモータドライブ46を介して駆動系の各種駆動モータ(パルスモータ)47a…47nが接続されていると共に、通信ポート48を介して図1のフレーム形状測定装置1が接続されている。
【0050】
演算制御回路40は、加工制御開始後に、フレーム形状測定装置1からのデータ読み込みや、データメモリ42の記憶領域m1〜m8に記憶されたデータの読み込みがある場合には、図7に示すように、時分割による加工制御とデータの読み込みやレイアウト設定の制御を行う。
【0051】
即ち、時間t1,t2間の期間をT1、時間t2,t3間の期間をT2、時間t3,t4間の期間をT3、・・・、時間tn−1,tn間の期間をTnとすると、期間T1,T3…Tnの間で囲う制御が行われ、データの読み込みやレイアウト設定の制御を期間T2,T4…Tn−1の間に行う。従って、被加工レンズの研削加工中に、次の複数の玉型形状データの読み込み記憶や、データの読み出しとレイアウト設定(調整)等を行うことができ、データ処理の作業効率を格段に向上させることができる。
【0052】
ROM41にはレンズ研削加工装置2の動作制御のための種々のプログラム等が記憶されている。データメモリ42には複数のデータ記憶領域が設けられている。
【0053】
RAM43は、加工中のデータを記憶する加工データ記憶領域42a、新たなデータを記憶する新データ記憶領域43b、フレームデータや加工済みデータ等を記憶するデータ記憶領域43cが設けられている。
【0054】
尚、データメモリ42には、読み書き可能なFEEPROM(フラッシュEEPROM)を用いることもできるし、メインの電源がオフされても内容が消えないようにしたバックアップ電源使用のRAMを用いることもできる。
【0055】
次に、この様な構成の演算制御回路40を有するレンズ研削加工装置の作用を説明する。
【0056】
スタート待機状態からメイン電源がオンされると、演算制御回路40はフレーム形状測定装置1からデータ読み込みがあるか否かを判断する。
【0057】
即ち、演算制御回路40は、操作パネル6の『データ要求』スイッチ7cが押されたか否かが判断される。そして、『データ要求』スイッチ7cが押されてデータ要求があれば、フレーム形状測定装置1からレンズ形状情報(θi,ρi)のデータをRAM43のデータ読み込み領域43bに読み込む。この読み込まれたデータは、データメモリ42の記憶領域m1〜m8のいずれかに記憶(記録)される。
【0058】
また、『右』スイッチ6c又は『左』スイッチ6bが押されて加工開始命令があった場合には、パルスモータドライバ46を介して駆動モータ47a〜47nを作動制御して、加工制御を開始すると同時に演算制御回路40がコバ厚測定、ヤゲン設定、粗加工(ヤゲン加工を含む)、仕上加工を順次行なう。
【0059】
[面取形状算出]
また、演算制御回路40は、フレーム形状測定装置1からレンズ研削加工装置2に入力されたレンズ形状情報(ρi,θi)に基づいて、面取加工後の眼鏡レンズMLを前側屈折面側から見た面取軌跡(面取形状)を算出する。
【0060】
先ず、演算制御回路40は、レンズ形状情報(ρi,θi)の各動径点(玉型形状の周縁点)において、各動径点(玉型形状の周縁点)から、それぞれのポイントの法線方向に所定の面取幅Hmf(Hmr)を入力していく。
【0061】
この際、玉型形状に対して水平な動径線(ρs,180°)(耳側に当たる)(ここで、動径角度180°とは、極座標形式(ρ,θ)における動径角度であり、原点からみて右側の経線が半時計回りに180°回転した動径線を表わす)における面取加工を基準面取(動径点(第1周縁))とする。なお、本発明は、これに限定されず、水平な動径線以外の任意の動経線における面取加工を基準面取としてもよい。
【0062】
動径点(玉型形状の周縁点)からの法線は水平な動径線そのものであるので、水平な動径線に沿って所定の面取幅Hmf(Hmr)を入力する(図8(A)に説明のため、所定の面取幅Hmf(Hmr)を半径とする小円a〜eで示す)。例えば、図8(B)に示すように、基準面取幅Hmf(Hmr)を2.5mmとする。図8(A),(B)のP1で示す位置が所定の面取幅Hmf(Hmr)を入力した後の面取端位置を表わす。なお、この面取幅Hmf(Hmr)はこれに限定されず、作業者が任意に基準面取の面取幅Hmf(Hmr)を設定することができる。
【0063】
その他の動径点については、動径の変化に伴い、面取り幅を変化させる範囲と、動径の変化に因らず一定とする範囲を設定する。具体的には、既に指定した水平方向の動径は、フレーム全体の中では、一般的に、大きな動径となる方向である。これ以上の動径となる部分については、面取り幅を水平方向と同じとする(動径に因らず、一定となる範囲)。また、動径の小さくなる部分の一定の範囲、例えば、動径の最小値に対して、最大変化量(最大値―最小値)の30%の大きさまでの範囲についての面取り幅を指定する。
【0064】
結果として、水平方向の動径より大きな動径となる範囲が、20%あったとすると、残りが、動径が、水平方向の動径値(図8(B)P1)と、最小値から30%の動径値(図8(B)P2(第2周縁))との範囲に有り、この動径に対する面取り幅を図8(B)で示されるようにその動径値の関数として与える事で、各動径点における法線方向の面取り幅を決定する。
【0065】
液晶表示器8には、図9に示すように、状態表示エリアE4の左半分に、眼鏡レンズ形状RR(又は眼鏡フレーム形状)、面取り軌跡形状RRm、幾何学中心マークFRc、光学中心マークRo、上レンズ幅RRu,下レンズ幅RRd,右レンズ幅RRr,左レンズ幅RRl、コバ厚最小位置マークMtn、コバ厚最大位置マークMtc、コバ厚確認任意位置マークMcfが表示される。また、状態表示エリアE4の右半分には、コバ厚最小位置マークMtnに対応した位置での面取り形状を有するヤゲン形状Ytnとその位置及びコバ厚の数値、コバ厚最大位置マークMtcに対応した位置での面取り形状を有するヤゲン形状Ytcとその位置及びコバ厚の数値、コバ厚確認任意位置マークMcfに対応した位置での面取り形状を有するヤゲン形状Ycfとその位置及びコバ厚の数値が表示される。
【0066】
なお、眼鏡レンズ形状RR(又は眼鏡フレーム形状)と面取り軌跡形状RRmとは、その表示状態を図示のごとくこのなった線(実線と破線)で表示すると共に、カラー色によってクオリティーのある画像表示を行う。また、眼鏡レンズ形状RR(又は眼鏡フレーム形状)と面取り軌跡形状RRmとは三次元立体表示をすることもでる。さらに、その三次元立体表示状態で支点位置を変えるように回転表示(任意若しくは設定)することも可能である。
【0067】
以上説明した範囲の設定、動径に基づき、面取り幅を変化する部分、逆に変化させない部分については、実施例で記載される物に特定されるわけではない。
【0068】
つまり、全ての動径に対してその面取り幅を一定値と、動径により関数指定する範囲とに分割指定して、全ての動径に対してその面取り幅を決定、面取り軌跡を決定する。
【0069】
この面取り幅を特定の範囲について規定する考え方として、上記実施例で説明した動径の変化に対してその動径の法線方向への面取り幅を規定する以外に、動径情報をXY座標系に変換し、その双方に、異なる関数を与える例えば、水平方向(X)には、その大きさにより線形に変化するコバ幅を与え、垂直方向(Y)には、その大きさに因らず一定値を与え、えられたXY座標値から極座標系に変換する。
【0070】
また、得られた面取り軌跡情報は、基となる玉型形状データ(フレーム形状)とその基準位置を一致させて表示する事で、水平方向の面取り幅を指定する時の目安となる。
【0071】
得られた面取り軌跡データに基づき、レンズ屈折面を形状測定し、得られた測定データに基づき面取り加工時の軸方向制御データを得る。
別案として、ヤゲン加工などのために予め得られているレンズ屈折面形状データから、面取り軌跡上の軸方向データを演算する事も可能である。
【0072】
得られた面取り軌跡に基づき、定められたρデータと、面取り砥石の加工基準位置データとにより、ρL変換計算によりその軸間距離制御データを得る。
【0073】
総括して本発明について述べる。
【0074】
従来は、面取コバ面側における、面取砥石におり作成される切断点軌跡を求めていた。これは、コバ面形状データは、従来のヤゲン加工、平加工等で作成される加工データをそのままで利用(もしくは、砥石径データを入れ替えるだけで作成)という考えで、面取加工のためのデータは、レンズ光軸方向の制御についてのみ新たに構築するという考え方であった。
従来の考え方では、面取幅が可変となった場合に、コバ面側から求めるため、屈折面側からみた形状を特定することができなかった。
【0075】
これに対し、本発明は、すべての基準をコバ面からみるのではなく、屈折面からみるのであり、屈折面側で面取砥石により作成される切断点を基準とし、この軌跡をまず特定することが大きな特徴となっている。
加工制御の面においても、屈折面側の面取砥石切断点軌跡(ρ,θ)のデータを基準とし、これに基づき、砥石軸とレンズ軸との軸間距離制御データを求めることとする。
【0076】
図10に示すような制御基準点となり、砥石上(装置ではY軸方向)では変化しない。従来の考えでは、図10のような位置となり、実際には、Y方向の制御により、面取加工しているため、X方向への切込みが判断できず、砥石研削面が十分にあるかの判定もできなかった。
【0077】
また、フレーム形状が小さい場合には、レンズ軸と砥石との加工干渉についても十分に把握できなかった。
【0078】
以上のことから、本件発明は、制御面で従来のコバ面側を基準とせず、屈折面側切断点を基準位置に加工制御することにより、屈折面側の面取砥石切断点軌跡(ρ,θ)のデータを基準とし、砥石軸・レンズ軸の軸間距離制御データを求めることができ、従来把握できなかった眼鏡レンズ光軸と直交する方向(Y方向)での切込み量、面取砥石の十分な砥石研削面の有無等の判断を容易に行うことができ、レンズ軸と砥石との加工干渉に付いての十分な把握等についても行うことができる。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法、面取加工方法、面取加工データ作成装置及び面取加工装置にあっては、コバ面側を主とした一連の面取加工を全般的に見直し、眼鏡レンズの前側屈折面あるいは後側屈折面からみた面取加工、眼鏡装用者の好みにフィットする面取軌跡の追求、屈折面上における面取軌跡に沿ったコバ厚形状データ収集、それらのデータを基にした面取加工を実現することができ、面取幅の変化などに因らず、一定の手法での制御が可能となる上、面取幅の指定も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るレイアウト表示装置を備えるレンズ研削加工装置とフレーム形状測定装置との関係を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、(A)はカバー閉成状態の斜視図、(B)はカバー開放状態の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、(A)はカバー閉成状態の平面図、(B)はカバー開放状態の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、加工室内の加工主要部の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、(A)は第1の操作パネルの拡大説明図、(B)は液晶表示器の正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置の制御回路の説明図である。
【図7】制御回路の制御を説明するためのタイムチャートである。
【図8】(A)は本発明の眼鏡レンズの面取加工方法を説明するための説明図、(B)はXYデータに展開した場合のグラフ図である。
【図9】コバ厚測定後の面取り軌跡画面表示状態の液晶表示器の正面図である。
【図10】本発明と従来技術との制御基準点の相違を説明するための説明図である。
【図11】従来の眼鏡レンズの面取加工方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
2…レンズ研削加工装置
MLm…面取り
Hmf…面取幅(前側屈折面MLf側)
Hmr…面取幅(後側屈折面MLr側)

Claims (8)

  1. 眼鏡フレームの玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力し、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を得ることを特徴とする眼鏡レンズの面取加工データ作成方法。
  2. 眼鏡フレームの玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力し、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上における面取軌跡を求め、該面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めることを特徴とする眼鏡レンズの面取加工データ作成方法。
  3. 眼鏡フレームの玉型形状の周縁点から法線方向に面取幅を入力し、各々の周縁点における面取の面取端位置を基準として面取軌跡を求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成方法を用いて面取軌跡を求め、その求められた面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めて面取加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズの面取加工方法。
  5. 眼鏡フレームの玉型形状データを入力するための玉型形状データ入力手段と、入力された玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力するための面取幅入力手段と、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を求めるための演算手段とを有することを特徴とする眼鏡レンズの面取加工データ作成装置。
  6. 眼鏡フレームの玉型形状データを入力するための玉型形状データ入力手段と、入力された玉型形状のある径線方向の第1周縁から基準面取の面取幅を入力し、別の径線方向における玉型形状の第2周縁から最小面取の面取幅を入力するための面取幅入力手段と、前記基準面取の面取端位置と前記最小面取の面取端位置とを基準とし、眼鏡レンズの屈折面上の面取軌跡を求めるための演算手段と、前記面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを入力するためのコバ厚形状データ入力手段とを有することを特徴とする眼鏡レンズの面取加工データ作成装置。
  7. 前記面取幅入力手段は、眼鏡フレームの玉型形状の周縁点から法線方向に面取幅を入力し、前記演算手段は、各々の周縁点における面取の面取端位置を基準として面取軌跡を求めることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置。
  8. 請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの面取加工データ作成装置を用いて面取軌跡を求め、その求められた面取軌跡に沿って眼鏡レンズのコバ厚形状データを求めて面取加工をするための面取砥石を有することを特徴とする眼鏡レンズの面取加工装置。
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