JP4447257B2 - 眼鏡レンズの溝掘加工方法及び溝掘加工装置 - Google Patents

眼鏡レンズの溝掘加工方法及び溝掘加工装置 Download PDF

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  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉型形状のうち、小さい曲率半径をもった玉型形状の周縁位置における溝掘加工の、レンズ軸と溝掘砥石の砥石軸との制御機構および演算処理に関する。
【0002】
特に、例えばスポーツサングラス等の眼鏡装用者の顔にへばりつくような極めて湾曲したプラスチックレンズや、+8カーブ等の強カーブレンズへの溝掘加工の方法及びその装置に関する。
【0003】
【従来技術】
一般に、眼鏡レンズを眼鏡フレームに装着する方法としては次のようなものがある。
【0004】
その一つは、ツーポイントフレームのようにブリッジやテンプル用のヒンジを眼鏡レンズにネジで止める方法である。また、他の方法としては、眼鏡レンズの周縁部にヤゲン加工を施して、この眼鏡レンズのヤゲンを眼鏡フレームのレンズ枠のヤゲン溝に嵌着することにより、眼鏡レンズをレンズ枠に枠入れする方法である。
【0005】
更に他の方法としては、眼鏡レンズの周面に溝掘加工をして眼鏡レンズの周面に開口するワイヤー溝を形成し、このワイヤー溝に配設した合成樹脂製のワイヤー(ワイヤーフレーム)で眼鏡レンズを眼鏡フレームに固定する方法である。この様な溝掘加工を行う装置としては、円盤状の溝掘砥石(溝掘カッター)やエンドミルを用いたものが知られている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0006】
この溝掘加工において、生地レンズのすべての経線にわたりある曲率半径をもった溝掘加工ができるのは、生地レンズと砥石それぞれの軸線が直線上で接する場合、すなわち生地レンズが円形に加工される場合のみである。
【0007】
また、三次元的に湾曲している生地レンズを非円形の形状に加工する時、レンズと砥石の接点はある角度分だけずれた点が砥石に当たっている事になる。
【0008】
このため、実際の加工では加工形状から現在加工しているポイントに対して、どれだけずれたポイントが砥石に接触するかを計算し、その結果に基づき動径方向を制御している。
【0009】
ところで、溝掘加工は一般的に専用の溝掘り機やレンズ研削装置に組み込まれた溝掘り砥石により行われている。この専用の溝掘り機では、レンズのコバ面と溝掘り砥石がレンズの曲率半径が大きくなっても、より垂直に接触できるように溝掘り砥石が傾けて配置されている。また、レンズ研削装置では、その加工室形状や大きさから専用機ほどの傾きは溝掘砥石につけられていない。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−353649号公報
【特許文献2】
特開2001−315045号公報
【特許文献3】
特開2001−18154号公報
【特許文献4】
特開2001−18155号公報
【特許文献5】
特開平11−28650号公報
【特許文献6】
特開平11−138405号公報
【特許文献7】
特開2002−120137号公報
【特許文献8】
特開2001−212741号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、最近では、スポーツ用のデザインの眼鏡フレームが重視されているため、フレームカーブの強い眼鏡フレームが増えてきている。しかも、従来の眼鏡フレームは3〜4カーブ程度のフレームカーブが主流であったが、最近ではデザイン面・ファッション性等の点から8カーブの眼鏡フレームが登場している。
【0012】
このような強カーブの眼鏡フレームに眼鏡レンズを装着しようとすると、眼鏡レンズ自体もカーブの強い物になってくる。
【0013】
また、同様な理由からワイヤー(ワイヤーフレーム)により眼鏡フレームに取り付けられる眼鏡レンズでも、周縁部がカーブの強いものもでてきている。この眼鏡レンズには、周縁部に小さい曲率半径を持つ小曲率部を有するものがある。
【0014】
この様な眼鏡レンズに対して従来技術で述べたような溝掘砥石で溝掘加工を行なう場合、回転している眼鏡レンズの周面に溝掘砥石により形成されるワイヤー溝は所定深さまで徐々に形成される。
【0015】
しかし、眼鏡レンズのカーブが強いため、眼鏡レンズの小曲率部の前後の部分において溝掘り砥石と回転しているレンズのワイヤー溝との間にズレや干渉が生じ、その結果本来加工しようとしていた溝幅より幅の広い溝に加工されてしまっていた。
【0016】
また、前述の溝掘り専用機であると、レンズのカーブが強くなってもそのコバ面により垂直に近く溝掘り砥石が当たる為、溝幅の広がり具合は少ないがまだ広がりはある。
【0017】
本発明は、このような溝掘加工のズレ、干渉が生ずる事無く、レンズ全周にわたって予め定めた溝幅、もしくは加工者が定めた溝幅を得る事ができるレンズ切削方法及びその為の装置を提供する事を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明の眼鏡レンズの溝掘加工方法は、眼鏡レンズを保持させるレンズ回転軸と前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘加工を行わせる溝掘砥石の回転軸との軸間距離を眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )の角度θ i における動径ρ i と溝掘砥石の砥石半径Rから溝掘加工のための加工情報として求めると共に、
前記眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づき仕上加工された眼鏡レンズをレンズ回転軸により保持させ、且つ前記眼鏡レンズのコバ面に砥石半径Rの溝掘砥石を当接させて、前記溝掘加工のための加工情報に基づき前記軸間距離を調整しながら前記眼鏡レンズの溝掘加工を行って、前記眼鏡レンズの前記コバ面にワイヤー溝を形成するための眼鏡レンズの溝掘加工方法において、
前記角度θ i の変化に対する動径ρ i の変化の曲線が曲率半径の小さい部分を有し且つ前記曲線の曲率半径の小さい部分に極値を有する前記玉型形状の前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘砥石で溝掘加工を行う場合に、前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内で前記溝掘砥石の砥石半径Rを所定倍した仮想砥石半径R i を求めて、前記砥石半径Rと仮想砥石半径R i がR≦R i であるか否かを判定し、R≦R i でなければ前記溝掘砥石と回転する前記眼鏡レンズのワイヤー溝との間に溝掘加工のズレや干渉が生じるとしてR≦R i となるように仮想砥石半径R i を再度求めると共に、前記加工情報である前記軸間距離を前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない前記仮想砥石半径R i とから求めて、前記軸間距離を前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内では前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない仮想砥石半径R i から求めた前記加工情報に基づいて軸間距離を変化させて、前記眼鏡レンズのコバ面の溝掘加工を行うことを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明の眼鏡レンズの溝掘加工装置は、眼鏡フレームの玉型形状に即して仕上加工された眼鏡レンズを保持するレンズ回転軸と、レンズ回転軸に保持された眼鏡レンズのコバ面に当接させて前記コバ面にワイヤー溝を溝掘加工により形成するための溝掘砥石と、前記溝掘砥石を回転させる溝掘砥石回転軸と、レンズ回転軸と溝掘砥石回転軸との軸間距離を調整するための軸間距離調整手段と、前記レンズ回転軸と前記溝掘砥石回転軸との軸間距離を前記眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )の角度θ i における動径ρ i と前記溝掘砥石の砥石半径Rから溝掘加工のための加工情報として求める演算制御回路とを有する眼鏡レンズの溝掘加工装置において、前記演算制御回路は、前記角度θ i の変化に対する動径ρ i の変化の曲線が曲率半径の小さい部分を有し且つ前記曲線の曲率半径の小さい部分に極値を有する前記玉型形状の前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘砥石で溝掘加工を行う場合に、前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内で前記溝掘砥石の砥石半径Rを所定倍した仮想砥石半径R i を求めて、前記砥石半径Rと仮想砥石半径R i がR≦R i であるか否かを判定し、R≦R i でなければ前記溝掘砥石と回転する前記眼鏡レンズのワイヤー溝との間に溝掘加工のズレや干渉が生じるとしてR≦R i となるように仮想砥石半径R i を再度求めると共に、前記加工情報である前記軸間距離を前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない前記仮想砥石半径R i とから求めて、前記軸間距離を前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内では前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない仮想砥石半径R i から求めた前記加工情報に基づいて軸間距離を変化させて、前記眼鏡レンズのコバ面の溝掘加工を行うことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1において、1は眼鏡フレームFのレンズ枠形状やその型板或いは型板モデル等から玉型形状データであるレンズ形状情報(θ i ,ρ i )を読み取るフレーム形状測定装置(玉型形状測定装置)、2はフレーム形状測定装置1から送信等によって入力された眼鏡フレームの玉型形状データに基づいて眼鏡レンズを研削加工するレンズ研削加工装置(玉摺機)である。尚、フレーム形状測定装置1には周知のものを用いることができるので、その詳細な構成やデータ測定方法等の説明は省略する。
【0021】
<レンズ研削加工装置2>
このレンズ研削加工装置2は、図1に示すように、装置本体3の前面寄りに設けられた加工室4と、この加工室4を開閉するカバー5を有する。また、この加工室4内には図2に示したように加工用主要部品が配置されている。また、加工室4の外側には、加工用主要部品の一部を保持するキャリッジ(図示せず)と、加工用主要部品及びキャリッジの駆動系(モータ等)が配置されている。このキャリッジは、前後に延びる左右一対のアーム部とアーム部の後端部を連設する連設部から、平面視形状がコの字状に形成されている。また、キャリッジは、左右動可能に且つ連設部の後縁部を中心にアーム部が上下動可能に設けられている。
【0022】
なお、図2中、4a、4bは加工室4の側壁、4c、4cは側壁4a、4bに形成された円弧状のスリットである。そして、この側壁4a、4bの外側にキャリッジの一対のアーム部が配設されている。このようなアーム部を有するキャリッジには周知の構成を採用できるので、その詳細な説明及び図示は省略する。
【0023】
また、レンズ研削加工装置2は、その駆動系の制御操作やデータ設定操作を行う際に用いる第1及び第2の操作パネル6、7と、操作パネル6、7による操作状態等その他を表示する表示装置(表示手段)としての液晶表示器8とを備えている。
【0024】
(加工用主要部品)
上述の加工室4内に配置された加工用主要部品としては、図2に示すように、装置本体3の左右に延びると共にスリット4c、4cを貫通する左右一対のレンズ回転軸9、10がある。尚、スリット4c、4cはレンズ回転軸9、10と一体に移動する図示しないカバーで閉成されている。
【0025】
このレンズ回転軸9、10は、互いに直列に配置されて同一軸線を有すると共に、上述した一対のキャリッジのアーム部にそれぞれ回転可能に保持されている。このレンズ回転軸10は、レンズ回転軸9に対して進退調整可能に設けられている。そして、レンズ回転軸9、10間に眼鏡レンズMLを配設してレンズ回転軸10をレンズ回転軸9側に進出させることにより、眼鏡レンズMLをレンズ回転軸9、10間で保持(挟持)できる。また、これとは逆に操作することで、レンズ回転軸9、10間から眼鏡レンズMLを取り外すことができる。
【0026】
また、加工用主要部品としては、眼鏡レンズMLを研削加工するための研削砥石11と、研削砥石11を回転させる砥石軸12と、眼鏡レンズMLの周縁部に面取加工を施す面取砥石13,14を有する。
【0027】
更に、加工用主要部品としては、面取砥石13,14が取り付けられた面取軸15と、この面取軸15を回転自在に保持し且つこの回転軸15を上下に旋回させる旋回アーム16と、面取砥石14に隣接して面取軸15に設けられた溝掘カッター(溝掘砥石)17と、面取砥石13、14及び溝掘カッター17の下方を覆う円弧状カバー18がある。尚、回転軸15は、旋回アーム16内に配設された回転力伝達機構(図示せず)を介して面取軸駆動モータ(図示せず)に連動している。
【0028】
また、レンズ回転軸9、10としては、円弧状カバー18の内側に設けられて研削砥石12や面取砥石13、14あるいは溝掘カッター17の砥石面に研削水を掛けるためのホース(図示せず)と、眼鏡レンズMLのコバ厚W i を測定するコバ厚測定部材19がある。
【0029】
カバー5は、無色透明又は有色透明(例えば、紺等の半透明)の一枚のガラス製若しくは樹脂製のパネルから構成され、装置本体3の前後にスライドする。
【0030】
尚、加工室4には、眼鏡レンズMLの後方に位置すると共に丸みを帯びた傾斜面4dが形成されており、研削屑を流し易い構造になっている。
【0031】
(加工用主要部品の駆動系)
加工用主要部品の駆動系としては、上述のキャリッジ(図示せず)と、このキャリッジをパルスモータ等の駆動モータを用いて上下回転させる上下動手段(図示せず)と、キャリッジを左右動させるパルスモータ等の駆動モータ(図示せず)と、レンズ回転軸9、10を回転駆動させるパルスモータ等の駆動モータ(図示せず)と、キャリッジの上下回動に伴いレンズ回転軸9、10間に保持された眼鏡レンズMLを研削加工する際に研削砥石11を回転させる駆動モータ(図示せず)等を有する。
【0032】
このような駆動系のキャリッジを駆動させるための駆動モータや構造には周知の構成が採用できるので、その詳細な説明は省略する。また、研削砥石11は、粗研削砥石、ヤゲン砥石、仕上砥石等を有する。
【0033】
そして、上述した駆動系は、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて、レンズ回転軸9、10を角度θ i (i=0,1,2,3,…,n)毎に図示しない駆動モータで回動させると共に、キャリッジ(図示しない)を図示しない駆動モータで上下回動させることにより、眼鏡レンズMLの周縁を回転する研削砥石11の粗研削砥石11aで研削加工するようになっている。この際、駆動系は、レンズ回転軸9、10と砥石回転軸12との軸間距離が角度θ i 毎に砥石半径+動径ρ i となるように、キャリッジの前端部を角度θ i 毎に上下回動させてレンズ回転軸9、10及び眼鏡レンズMLを上下動させるようになっている。これにより、眼鏡レンズMLが研削砥石11でレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に粗研削加工されるようになっている。
【0034】
また、駆動系は、上述と同様に各駆動モータをレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて作動制御して、レンズ形状(玉型形状)LL、LRに粗研削された眼鏡レンズMLの周縁のコバ端部に研削砥石11のヤゲン砥石11bによりヤゲン加工できるようになっている。この際、駆動系は、予め設定されたヤゲン位置データに基づいてキャリッジを左右に駆動する駆動モータを制御することにより、玉型形状に粗加工された眼鏡レンズMLのコバ端にヤゲン加工を施すようになっている。尚、このような眼鏡レンズMLの研削加工は周知の構造を採用できるので、詳細な説明は省略する。
【0035】
(コバ厚測定部)
このコバ厚測定部(コバ厚測定手段)KSはコバ厚測定部材19を有する。このコバ厚測定部材19は、互いに離間状態で対向する一対のフィーラ19a、19bを備える。このフィーラ19a、19bは作用右方向に延びる測定軸19cに一体に設けられている。この測定軸19cは、加工室4の側壁4bを左右に貫通していると共に、左右に移動可能となっている。また、測定軸19cは、フィーラ19a、19bが加工室4の後縁部の略中央に位置するように、図示しないスプリングで保持されている。従って、フィーラ19a、19b及び測定軸19cは、左右方向への移動力を解除すると、加工室4の後縁部の略中央に戻されるようになっている。
【0036】
しかも、測定室4の外側には、測定軸19cに連動してフィーラ19a、19bの左右方向への移動位置(又は移動量)を検出して測定する測定部(図示せず)が設けられている。より具体的には、フィーラ19a、19b及び測定軸19cの左右方向への移動位置又は移動量は測定部(図示せず)に内蔵された図示しない読取センサ(位置検出手段又は移動量検出手段)により読取られるようになっている。
【0037】
また、測定軸19cは図示しないパルスモータ等の駆動手段で軸線回りに回動可能に設けられている。この駆動手段は、測定軸19cを回動させてフィーラ19a、19bを約90度跳ね上げた位置(待機状態)と前側に水平に倒れた使用位置(使用状態)とに回動するようになっている。この回動は、後述する制御回路により行われる。
【0038】
尚、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づく眼鏡レンズMLのコバ厚W i の測定時には、レンズ回転軸9、10に眼鏡レンズMLを保持させると共に、フィーラ19a、19bを前側に水平に倒した状態にする。
【0039】
この状態で、レンズ回転軸9、10を駆動モータによりキャリッジと一体に上下動及び左右動させることにより、フィーラ19aの先端を眼鏡レンズMLの前側屈折面に当接させ、又はフィーラ19bの先端を後側屈折面に当接させることができるようになっている。
【0040】
更に、フィーラ19aの先端を眼鏡レンズMLの前側屈折面に当接させた状態で、レンズ回転軸9、10をレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて角度θ i 毎に回動させると共に、レンズ回転軸9、10と研削砥石11(又は砥石回転軸12)との軸間距離が角度θ i 毎にX i (研削砥石11の半径+動径ρ i )となるように、キャリッジを上下動させることにより、フィーラ19aの先端を眼鏡レンズMLの前側屈折面の動径ρ i の位置に接触移動させることができるようになっている。同様に、フィーラ19bの先端を眼鏡レンズMLの後側屈折面に当接させた状態で、レンズ回転軸9、10をレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて角度θ i 毎に回動させると共に、レンズ回転軸9、10と研削砥石11(又は砥石回転軸12)との軸間距離が角度θ i 毎にX i (研削砥石11の半径+動径ρ i )となるように、キャリッジを上下動させることにより、フィーラ19bの先端を眼鏡レンズMLの前側屈折面の動径ρ i の位置に接触移動させることができるようになっている。このようにフィーラ19a、19bが眼鏡レンズMLに接触した状態でレンズ回転軸9、10をレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて回動させると、フィーラ19a、19bが眼鏡レンズMLの屈折面の湾曲に従って左右方向に移動させられる。
【0041】
従って、眼鏡レンズMLのコバ厚W i を求めるには、フィーラ19aを用いてレンズ形状情報(θ i ,ρ i )における眼鏡レンズMLの前側屈折面の左右方向(光軸方向=レンズ回転軸9、10の軸線の延びる方向)の移動量(フィーラ19aの左右方向への移動量)を測定部の読取センサ(図示せず)で求める。次に、フィーラ19bを用いてレンズ形状情報(θ i ,ρ i )における眼鏡レンズMLの前側屈折面の左右方向(光軸方向=レンズ回転軸9、10の軸線の延びる方向)の移動量(フィーラ19bの左右方向への移動量)を測定部の読取センサ(図示せず)で求める。
【0042】
ここで、フィーラ19a、19bが初期位置にある場合の、フィーラ19a、19b間の中央位置からフィーラ19aの先端までの距離をxaとし、フィーラ19a、19b間の中央位置からフィーラ19bの先端までの距離を−xaとし、フィーラ19aの初期位置からの左方向及び右方向への移動量をそれぞれfa及び−faとし、フィーラ19bの初期位置からの左方向及び右方向への移動量をfb及び−fbとする。この条件において、フィーラ19a、19b間の中央位置からフィーラ19aの先端の左右方向への移動位置Faはxa+fa又はxa−faとなり、フィーラ19a、19b間の中央位置からフィーラ19bの先端の左右方向への移動位置Fbは−xa+fb又は−xa−fbとなる。
【0043】
従って、このような移動位置Faからxaを差し引くことによりフィーラ19aの移動量faがフィーラ19a、19b間の中央位置からの左右方向への移動位置Fa’として求められ、移動位置Fbからxaを差し引くことによりフィーラ19bの移動量fbがフィーラ19a、19b間の中央位置からの左右方向への移動位置Fb’として求められる。そして、この求めた移動位置Fa’、Fb’の差を求めることにより、眼鏡レンズMLのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )にコバ厚W i を求めることができる。
【0044】
(操作パネル6)
操作パネル6は、図3(A)に示すように、眼鏡レンズをレンズ回転軸9、10によりクランプするための『クランプ』スイッチ6aと、眼鏡レンズの右眼用・左眼用の加工の指定や表示の切換え等を行う『左』スイッチ6b、『右』スイッチ6cと、砥石を左右方向に移動させる『砥石移動』スイッチ6d、6eと、眼鏡レンズの仕上加工が不十分である場合や試し摺りする場合の再仕上又は試し摺り加工するための『再仕上/試』スイッチ6fと、レンズ回転モード用の『レンズ回転』スイッチ6gと、ストップモード用の『ストップ』スイッチ6hとを備えている。
【0045】
(操作パネル7)
操作パネル7は、図3(B)に示すように、液晶表示器8の表示状態を切り換える『画面』スイッチ7aと、液晶表示器8に表示された加工に関する設定等を記憶する『メモリー』スイッチ7bと、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )を取り込むための『データ要求』スイッチ7cと、数値補正等に使用されるシーソー式の『−+』スイッチ7d(『−』スイッチと『+』スイッチとを別々に設けても良い)と、カーソル式ポインタ移動用の『▽』スイッチ7eとを液晶表示器8の側方に配置している。また、ファンクションキーF1〜F6が液晶表示器8の下方に配列されている。
【0046】
このファンクションキーF1〜F6は、眼鏡レンズの加工に関する設定時に使用されるほか、加工工程で液晶表示器8に表示されたメッセージに対する応答・選択用として用いられる。
【0047】
(液晶表示器8)
液晶表示器8の上部には、『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3、『メニュー』タブTB4が表示されている。そして、この『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3、『メニュー』タブTB4を選択することにより、液晶表示器8の表示が切り替えられるようになっている。
【0048】
また、液晶表示器8の下縁部には、ファンクションキーF1〜F6に対応したファンクション表示器H1〜H6が設けられている。このファンクション表示部H1〜H6は、必要に応じたものが適宜表示される。更に、ファンクション表示部H1〜H6が非表示状態の時には、ファンクションキーF1〜F6の機能に対応したものとは異なった図柄や数値、或いは、状態等を液晶表示器8の下縁部に表示することができる。
【0049】
『レイアウト』タブTB1、『加工中』タブTB2、『加工済』タブTB3を選択した状態の時には、アイコン表示エリアE1、メッセージ表示エリアE2、数値表示エリアE3、状態表示エリアE4に区画した状態で表示される。また、『メニュー』タブTB4を選択した状態の時には、全体的に一つのメニュー表示エリアとして表示しても良いし、独自の区画表示エリアとしても良い。
【0050】
アイコン表示エリアE1に表示されるアイコンは、玉型形状データであるレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて眼鏡レンズのコバ厚形状を測定している状態、眼鏡レンズのコバ端面に形成されるヤゲン形状をシミュレーションしている状態、コバ端面を粗加工する状態、コバ端面を仕上加工する状態、コバ端面を鏡面加工する状態、コバ端面を溝掘加工する状態、コバ端面を溝掘り・面取加工する状態、コバ端面を溝掘り・面取・鏡面加工する状態、コバ端面をヤゲン加工する状態、コバ端面をヤゲン・面取加工する状態、コバ端面をヤゲン・面取・鏡面加工する状態、眼鏡レンズの研削加工の終了、といったように各作業に対応して並設されている。
【0051】
また、各アイコンの上方には、その一連の作業の進行状況をオペレータが識別できるように、1対1で対応すると共に一連の作業の進行状況に応じて点灯表示していく複数カーソルインジケータが、右眼レンズ進行状況表示用と左眼レンズ進行状況表示用とで上下2段にして『加工中』タブTB2に設けられている。
【0052】
メッセージ表示エリアE2には、各種エラーメッセージや警告メッセージなどが状態に応じて表示される。尚、装置内部品等の破損や被加工レンズの破損等の虞がある場合の警告メッセージなどの場合には、オペレータが認識し易いようにメッセージ表示エリアE2以外のエリアにはみ出して表示上で重畳させることも可能である。
【0053】
数値表示エリアE3には、レイアウトデータの入力時に、眼鏡フレームの左右レンズ枠の幾何学中心間距離(FPD値)、眼鏡装用者眼の瞳孔間距離(PD値)、FPD値とPD値との差である寄せ量の鉛直方向成分UP値(又はHlp値)、加工サイズ調整の各項目等が表示される。また、初期設定時には、上述したFPD、PD、UP、サイズの他に加工レンズの吸着中心が表示される。さらに、モニターデータ入力時には、眼鏡レンズの二次加工的な面取加工に関わる寸法関係の数値が表示される。
【0054】
状態表示エリアE4には、右眼用及び左眼用の眼鏡レンズのレイアウト画像や眼鏡レンズの最大、最小、最大及び最小以外の中間(任意)コバ周縁に形成されるヤゲン形状、コバ周縁を側面から見たレンズ側面形状等や、現実の加工状態に即した模式図等が表示される。
【0055】
(ファンクションキー)
このファンクションキーF1〜F6は、眼鏡レンズの加工に関する設定時に使用されるのか、加工工程で液晶表示器8に表示されたメッセージに対する応答・選択用として用いられる。
【0056】
各ファンクションキーF1〜F6は、加工に関する設定時(レイアウト画面)においては次の様に用いられる。即ち、ファンクションキーF1はレンズタイプ入力用、ファンクションキーF2はレンズ素材入力用、ファンクションキーF3はフレーム種類入力用、ファンクションキーF4は面取加工種類入力用、ファンクションキーF5は鏡面加工入力用、ファンクションキーF6は加工コース入力用として用いられる。
【0057】
ファンクションキーF1で入力されるレンズタイプとしては、『単焦点』、『眼科処方』、『累進』、『バイフォーカル』、『キャタラクト』、『ツボクリ』、『8カーブ』等がある。尚、『キャタラクト』とは、眼鏡業界では一般にプラスレンズで屈折度数が大きいものをいい、『ツボクリ』とは、マイナスレンズで屈折度数が大きいものをいい、『8カーブ』とは、レンズ屈折面カーブが8カーブで出来ているものをいう。
【0058】
ファンクションキーF2で入力される被加工レンズの素材としては、プラスチック(以下、『プラ』と略する。)、『ハイインデックス』、『ガラス』、ポリカーボネイト(以下、『ポリカ』と略する。)、『アクリル』等がある。
【0059】
ファンクションキーF3で入力される眼鏡フレームFの種類としては、『メタル』、『セル』、『オプチル』、『平』、『溝掘り(細)』、『溝掘り(中)』、『溝掘り(太)』等がある。
【0060】
ファンクションキーF4で入力される面取り加工種類としては、図7に示した『無し』、『小(前後)』、『中(前後)』、『大(前後)』、『特殊(前後)』、『小(後)』、『中(後)』、『大(後)』、『特殊(後)』等がある。
【0061】
なお、この面取位置を示すポップアップは、『無し』、『小(前後)』、『特殊耳(前後)』、『特殊鼻(前後)』、『特殊(前後)』、『小(前後)』、『特殊耳(前後)』、『特殊鼻(前後)』、『特殊(後)』等でもよい。
【0062】
ファンクションキーF5で入力される鏡面加工としては、『なし』、『あり』、『面取部鏡面』等がある。
【0063】
ファンクションキーF6で入力される加工コースとしては、『オート』、『試し』、『モニター』、『枠替え』或いは『内トレース』等がある。
【0064】
尚、上述したファンクションキーF1〜F6のモードや種別或いは順序は特に限定されるものではない。また、後述する各タブTB1〜TB4の選択として、『レイアウト』、『加工中』、『加工済』、『メニュー』等を選択するためのファンクションキーを設けるなど、キー数に限定されるものではない。
【0065】
そして、このようなファンクションキーF1ないしF6に対応するファンクション表示部H1〜H6の上には、レンズタイプ、レンズ、フレーム、面取、鏡面及びコース等がそれぞれ表示される。しかもファンクション表示部H1〜H6には、レンズタイプ、レンズ、フレーム、面取、鏡面及びコース等に対応する内容、即ちファンクションキーF1〜F6により選択するための上述した種類や加工内容等が表示される。
【0066】
尚、以下、レイアウト時の液晶表示器8の表示状態としての、システム起動直後・データ要求直後・レイアウト設定終了・各コース選択等、或いは、加工時の液晶表示器8の表示状態としての、コバ厚確認・右眼レンズ加工中及び終了・左眼レンズ加工中等、更に、加工済み後の液晶表示器8の表示状態としての確認・データ保存、研削加工中におけるエラー・アイコンとカーソル・溝掘加工及び面取加工・試し摺り・加工追加再仕上げ等の表示や操作等は、特願2000−287040号又は特願2000−290864号と同様のものとすることができる。
[制御回路]
レンズ研削加工装置2は、図4に示すように、演算制御回路40を有する。CPUを有する演算制御回路40には、操作パネル6、記憶手段としてのROM41、記憶手段としてのデータメモリ42、RAM43が接続されていると共に、補正値メモリ44が接続されている。また、演算制御回路40には、表示用ドライバ45を介して液晶表示器8が接続され、パルスモータドライバ46を介して駆動系の各種駆動モータ(パルスモータ)47a…47nが接続されていると共に、通信ポート48を介して図1のフレーム形状測定装置1が接続されている。
【0067】
尚、例えば、上述したキャリッジを上下動させるパルスモータ等の駆動モータ47a、キャリッジを左右動させるパルスモータ等の駆動モータを47b、レンズ回転軸9、10を回転駆動させるパルスモータ等の駆動モータを47c、研削砥石11を回転させる駆動モータを47dとし、旋回アーム16を上下回動させるパルスモータ等の駆動モータを47e、研削砥石11を回転させる駆動モータを47fとし、面取軸15を回転させる面取軸駆動モータを47gとする。
【0068】
この場合、駆動モータ47aを正転又は逆転させることにより図示しないキャリッジを上下動させることができ、駆動モータ47bを正転又は逆転させることにより、キャリッジを左右動させることができる。また、駆動モータ47cを正転又は逆転させることにより、レンズ回転軸9、10を正転又は逆転させることができる。更に、駆動モータ47dを作動制御することにより研削砥石11を回転駆動できる。また、駆動モータ47eを正転又は逆転させることにより、旋回アーム16を上方又は下方に旋回駆動させることができる。更に、駆動モータ47fを作動制御することにより、面取軸(回転軸)15を回転駆動させることができる。更に、面取軸駆動モータ47gを作動制御することにより、面取軸15を回転させて、面取砥石13,14及び溝掘カッター(溝掘砥石)17を回転させることができる。このような駆動系の各駆動モータ47a〜47gの駆動制御は演算制御回路40により行われる。
【0069】
演算制御回路40は、加工制御開始後に、フレーム形状測定装置1からのデータ読み込みや、データメモリ42の記憶領域m1〜m8に記憶されたデータの読み込みがある場合には、図5に示すように、時分割による加工制御とデータの読み込みやレイアウト設定の制御を行う。
【0070】
即ち、時間t1,t2間の期間をT1、時間t2,t3間の期間をT2、時間t3,t4間の期間をT3、・・・、時間tn−1,tn間の期間をTn−1とすると、期間T1,T3・・・Tn−1の間で加工制御が行われ、データの読み込みやレイアウト設定の制御を期間T2,T4・・・Tnの間に行う。従って、被加工レンズの研削加工中に、次の複数の玉型形状データの読み込み記憶や、データの読み出しとレイアウト設定(調整)等を行うことができ、データ処理の作業効率を格段に向上させることができる。
【0071】
ROM41にはレンズ研削加工装置2の動作制御のための種々のプログラム等が記憶されている。データメモリ42には複数のデータ記憶領域が設けられている。
【0072】
RAM43は、加工中のデータを記憶する加工データ記憶領域43a、新たなデータを記憶する新データ記憶領域43b、フレームデータや加工済みデータ等を記憶するデータ記憶領域43cが設けられている。
【0073】
尚、データメモリ42には、読み書き可能なFEEPROM(フラッシュEEROM)を用いることもできるし、メインの電源がオフされても内容が消えないようにしたバックアップ電源使用のRAMを用いることもできる。
[作用]
次に、この様な構成の演算制御回路40を有するレンズ研削加工装置の作用を説明する。
【0074】
スタート待機状態からメイン電源がオンされると、演算制御回路40はフレーム形状測定装置1からのデータ読み込みがあるか否かを判断する。
【0075】
即ち、演算制御回路40は、操作パネル7の『データ要求』スイッチ7cが押されたか否かが判断される。そして、『データ要求』スイッチ7cが押されてデータ要求があれば、フレーム形状測定装置1からのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )のデータをRAM43のデータ読み込み領域43bに読み込む。この読み込まれたデータは、データメモリ42の記憶領域m1〜m8のいずれかに記憶(記録)されるようにしてもよい。
【0076】
このレンズ形状情報(θ i ,ρ i )のデータが読み込まれると、演算制御回路40は図6に示したレイアウト設定の為の表示内容を液晶表示器8に表示させる。
【0077】
以下に、通常の面取加工におけるレイアウト設定、面取加工シミュレーション、面取加工の実行の各作業工程を説明する。
(1)液晶表示器8のレイアウト表示
レイアウト設定時には、図6に示したような通常の面取加工の内容が液晶表示器8に演算制御回路40により表示される。即ち、液晶表示器8の表示エリアE2には、「レンズ:プラ」、「コース:オート」が表示されると共に、ヤゲン及び面取加工のための表示20がされる。また、表示エリアE3には、フレーム幾何学中心間距離FPD、眼鏡装用者の瞳孔間距離PD、寄せ量UP、サイズ「SIZE」及びその数値が表示される。図6では、規定値(標準値)としてFPDが72.5、PDが64.0、UPが+2.0、SIZEが+0.00となっている。また、表示エリアE3には、「SIZE」の下方に位置させて「吸着位置:光学中心」の表示がされている。
【0078】
更に、表示エリアE4の左側には右のレンズ形状LR及びレンズ吸着盤Rsが重ねて表示され、表示エリアE4の右側には左のレンズ形状LL及びレンズ吸着盤Lsが重ねて表示される。この際、レンズ形状LRの光学中心ORとレンズ吸着盤Rsの中心が一致させられ、レンズ形状LLの光学中心OLとレンズ吸着盤Lsの中心が一致させられる。
【0079】
また、ファンクション表示部H1〜H6の上には、レンズタイプ、レンズ、フレーム、面取、鏡面及びコース等がそれぞれ表示される。更に、ファンクション表示部H1には例えば「単焦点」が表示され、ファンクション表示部H2には例えば「プラ」が表示され、ファンクション表示部H3には例えば「メタル」が表示され、ファンクション表示部H4には例えば「小(前後)」が表示され、ファンクション表示部H5には例えば「あり」が表示され、ファンクション表示部H6には例えば「オート」が表示される。
【0080】
そして、ファンクション表示部H4に対応するファンクションキーF4を押すと、図7,図8,図10に示したようなポップアップメニュー21が表示される。このポップアップメニュー21には、「無し、小(前後)、中(前後)、大(前後)、特殊(前後)、小(後)、中(後)、大(後)、特殊(前後)」等の面取位置の選択内容が表示される。この表示状態では、「無し、小(前後)、中(前後)、大(前後)、特殊(前後)、小(後)、中(後)、大(後)、特殊(後)」等の面取位置のいずれかの色が反転表示されている。この反転表示された内容が面取位置であり、ファンクション表示部H4に表示される。図7では、「小(前後)」が面取位置として表示されている。
【0081】
この面取位置のための反転表示は、ファンクションキーF4を押す毎に「無し」、「小(前後)」、「中(前後)」、「大(前後)」、「特殊(前後)」、「小(後)」、「中(後)」、「大(後)」、「特殊(後)」等に対して順に実行される。
【0082】
このファンクションキーF4で「特殊(前後)」を選択すると、図8に示すように、ファンクション表示部H4に「特殊(前後)」と反転表示され、特殊面取のコースに移行する。なお、「特殊(後)」を選択した場合にも特殊面取のコースに移行する。また、玉型形状LR、LLに面取加工後の面取軌跡31R、31Lが表示される。この場合、眼鏡レンズのコバ端の耳側、鼻側の面取りは例えば、2.0mmの面取り幅、80%の面取り範囲等の標準値で面取軌跡が表示される。
【0083】
尚、「小(前後)」、「中(前後)」、「大(前後)」は、通常の面取加工での面取幅の大きさ(小、中、大)と、眼鏡レンズMLのコバ端の面取りする箇所(前側、後側)を意味する。「小(後)」、「中(後)」、「大(後)」も同様で、通常の面取加工での面取幅の大きさ(小、中、大)と、眼鏡レンズMLのコバ端の面取りする箇所(後側)を意味する。そして、「特殊(前後)」では、眼鏡レンズMLの前側及び後側屈折面のコバ端における面取加工のうち、眼鏡フレームの耳掛け(テンプル)側に位置する眼鏡レンズ位置(以下、耳側と略記する。)あるいは鼻当て(パッド)側に位置する眼鏡レンズ位置(以下、鼻側と略記する。)における面取加工を意味する。また、「特殊(後)」では、眼鏡レンズMLの前側屈折面のコバ端における面取は無し、後側屈折面のコバ端における面取加工のうち、耳側あるいは鼻側における面取加工を意味する。
(2)シミュレーション画面での面取操作
図9のように特殊面取のための表示が実行された後、シミュレーション画面での左眼用の眼鏡レンズの面取操作を行う場合には、ファンクションキーF6の操作で『オート』、『試し』、『モニター』、『枠替え』或いは『内トレース』等の中から『モニター』を選択し、次に『左』スイッチ6bを押して、加工をスタートさせる。ヤゲン加工の場合にはヤゲン山部の裾部(あるいはヤゲン肩部)、溝掘加工の場合には玉型形状の周縁で未加工の眼鏡レンズのコバ厚形状(レンズ形状)を測定した後、図11に示したようなシミュレーション画面を液晶表示器8に表示させる。
【0084】
シミュレーション操作しない場合には『オート』を選択することで、B.ヤゲン加工(又は平加工)の面取加工の動作に移行する。但し、加工中の表示は、シミュレーション画面となる。
【0085】
この図11では、液晶表示器8の表示エリアE2に左眼用の眼鏡レンズの「面幅」、「耳側幅」、「耳側範囲」、「鼻側幅」、「鼻側範囲」が表示される。そして、例えば「面幅」として0.5(mm)、「耳側幅」として5.0(mm)、「耳側範囲」として30(%)、「鼻側幅」として0.5(mm)、「鼻側範囲」として10(%)等が表示される。また、表示エリアE3(データ入力部)の下部には「フレームカーブ」及び「ヤゲンカーブ」が表示される。
【0086】
更に、表示エリアE4の左側には、左眼マークL、左眼用のレンズ形状LL、レンズ形状LLの光学中心OL、レンズ形状LLの幾何学中心BO、上レンズ幅LLu、下レンズ幅LLd、右レンズ幅LLr、左レンズ幅LLl、任意の位置を示すマーク(視標)としても用いられる特殊面取位置マークStc、コバ厚及び面取幅の最も薄い位置を示す面取位置マークSfcが表示される。
【0087】
また、表示エリアE4の右側の上部には、レンズ形状LLの面取位置マークSfcにおける断面形状32が最初に表示されると共に、例えばヤゲン頂点「Top:1.0[0.9]」及び「Edg:40.[4.0]」が最初に表示される。これと同時に、表示エリアE4の右側の下部には、レンズ形状LLの耳側水平方向での特殊面取位置マークStcにおけるコバ断面形状33が最初に表示されると共に、例えばヤゲン頂点「Top:1.3[1.2]」及び「Edg:6.8[6.3]」及び「残り幅:2.2[2.3]」等が最初に表示される。
【0088】
また、液晶表示器8の下縁部には、ファンクション表示部H1に対応して「位置」が表示され、ファンクション表示部H2に対応して「回転」が表示され、ファンクション表示部H4に対応して「面取」が表示され、ファンクション表示部H5に対応して「鏡面」が表示され、ファンクション表示部H6に対応して「戻す」が表示される。尚、Yはレンズ形状LLのヤゲン山を示す。
【0089】
更に、レンズ形状LLの光学中心OLを中心として特殊面取位置マークStcまで延びる指針34がレンズ形状LLに重ねて表示される。この指針34及び特殊面取位置マークStcは、ファンクションキーF2を押すと、ファンクション表示部H2に示した矢印35のようにレンズ形状LL上を時計回り方向(「−」方向)に移動するようになっている。また、指針34及び特殊面取位置マークStcは、ファンクションキーF3を押すと、ファンクション表示部H3に示した矢印36のようにレンズ形状LL上を反時計回り方向(「+」方向)に移動するようになっている。そして、この指針34及び特殊面取位置マークStcの移動に伴い、移動位置における面取部37の状態が右側下部に表示される。例えば、この移動で指針34及び特殊面取位置マークStcが面取位置マークSfc側に移動すると破線で示したように面取部37の状態が変化する。
【0090】
また、通常のシミュレーション画面では、表示エリアE3(データ入力部)の下部に「サイズ」が表示される。
【0091】
面取り幅の設定値変更は、特殊面取り部分以外の面取り幅を変更するものとする。また、耳側の幅及び特殊面取りの範囲と鼻側の幅及び特殊面取りの範囲それぞれが設定できる。
【0092】
すなわち、特殊面取加工において、耳側の特殊面取りの初期設定値は、例えば、耳側の面幅が0.5mm、耳側幅が5.0mm、耳側範囲が30%である。また、鼻側の特殊面取りの初期設定値は、例えば、鼻側幅が0.5mm、鼻側範囲が10%である。また、耳側あるいは鼻側の面取り幅の変更できる範囲は例えば、0.1mm〜5.0mm、面取範囲の変更できる範囲は例えば、10%〜90%である。面幅の変更できる範囲は例えば、0.1mm〜5.0mmである。尚、ここで指定する範囲は例示であって、これに限定されるものではない。
【0093】
ここで、面取りする範囲について補足する。
【0094】
図12に示すように、いま玉型形状Lに対して、略幾何学中心Oを中心として玉型形状Lの動径ρのうち、横方向の動径(極座標の基準)をOP1、大きさをρbasisとするとき、最小動径を(OP3、大きさρmin1)と(OP4、大きさρmin2)の小さいほうを大きさρminで表現し、略幾何学中心Oを中心に大きさρminを半径とする円を描くこととする。ここで、面取りする範囲が90%とは、横方向の動径(極座標の基準)において、(ρbasis−ρmin)の大きさR1P1を100等分し、10目盛の部分を通る略幾何学中心Oを中心とする同心円状の円弧を描き、この円弧が玉型形状の輪郭線と交わる交点M1、M2とするとき、交点M1、M2で区切られた玉型形状周縁部の範囲を示す。
【0095】
このように、面取りする範囲を10〜90%と変化させると、液晶表示器8のプレビュー画面24gの面取り見栄えも同時に変化するので、眼鏡装用者にプレビュー画面24gを見せながら、面取り範囲や面取り幅を変えることができる。
【0096】
最初の面取線は、「サイズの初期値」で設定されている幅を元にして表示される。但し、レイアウト画面上で数値が変更されていれば、そこで入力された数値で面取線が表示されレイアウト画面が変更される。眼鏡加工の作業者は視覚的に面取加工シミュレーションを確認することができる。
【0097】
また、コバ断面表示部の「コバ厚」値表示の下に、特殊面取り後の「コバ残り幅」を表示し、ユーザーが左右レンズの面取り後におけるコバ厚を、同じにしたい時に確認できるようにする。
【0098】
また、片眼が「特殊」面取り加工を終了している時、反対眼の削る量は初期設定での面幅・範囲ではなく、削り幅(「コバ残り幅」)が同じ量になるように計算され、加工される。
【0099】
更に、シミュレーション画面上で変更された、面幅、鼻側及び耳側の面幅・範囲等のデータは、反対眼加工時(右眼用の眼鏡レンズ(レンズ形状LR)の加工時)にも適用する。尚、シミュレーション画面中で、特殊面取りの設定/解除は可能とする。
(3)次に、ヤゲン加工や溝掘加工のための面取表示、ヤゲン加工や溝掘加工等について説明する。
A.溝掘加工やヤゲン加工のための面取表示
(ヤゲン加工の場合)
上述したように、(1)の液晶表示器8のレイアウト表示設定に伴い、ヤゲン加工のシミュレーション画面を図11の如く表示させる。
(溝掘加工の場合)
ヤゲン加工の場合と同様の手段により溝掘加工のシミュレーション画面を図13の如く表示させることができる。
【0100】
この場合も、表示エリアE4の左側には、ヤゲン加工のシミュレーション画面の場合と同様に、左眼マークL、左眼用のレンズ形状LL、レンズ形状LLの光学中心OL、レンズ形状LLの幾何学中心BO、上レンズ幅LLu、下レンズ幅LLd、左レンズ幅LLl、任意の位置を示すマーク(視標)としても用いられる特殊面取位置マークStc、コバ厚及び面取幅の最も薄い位置を示す面取位置マークSfcが表示される。尚、表示エリアE2の表示もヤゲン加工のシミュレーション画面の場合と同様に表示される。
【0101】
また、表示エリアE4の右側の上部には、レンズ形状LLの面取位置マークSfcにおける断面形状32が最初に表示されると共に、例えばワイヤー溝38が前側から1.3mmの位置であることを示す「Front:1.3」及び「Edg:4.0」が表示される。
【0102】
これと同時に、表示エリアE4の右側の下部には、レンズ形状LLの耳側水平方向での特殊面取位置マークStcにおけるコバ断面形状33(図11,図13,図14参照)が最初に表示されると共に、例えば「Edg:6.9」、「残り幅:2.9」等が最初に表示される。
【0103】
ここで、前側裾部(前側コバ部)の幅、後側裾部(後側コバ部)の幅およびコバ面の面取幅の最適化に関する方法について詳述する。
【0104】
眼鏡レンズの後側コバ面の幅を眼鏡レンズの周縁全周に対して可変に設定する方法に関し、全周の中で最大幅となる部分の幅を設定する方法を第1設定方法とし、ヤゲン加工または溝掘加工したコバ面のヤゲン山部または溝部を中心とした後側裾部(後側コバ部)の幅を前側裾部(前側コバ部)の幅より一定比率の割合で大きい幅に設定する方法を第2設定方法とすると、第2設定方法の設定による面取幅が第1設定方法の設定幅より大きい場合には、第1設定方法が優先され第1設定方法の設定幅に従い、第2設定方法の設定による面取幅が第1設定方法の設定幅より小さい場合には、第2設定方法が優先され第2設定方法の設定幅に従うこととし、面取幅を第1設定方法による設定幅とする。
【0105】
例えば、第1設定方法の設定幅を2.0mm、ヤゲン山部または溝部の山部または溝部の設定位置がコバ面全体幅の前側から30%の位置、後側裾部(後側コバ部)の幅の、前側裾部(前側コバ部)の幅に対する比率を1:1とすると、コバ幅が3.0mmから8.0mmまで変化する間でのヤゲン山部(溝部)の位置と後側裾部(後側コバ部)の幅の変化を図15に示す。
【0106】
この図15に示すように、眼鏡レンズのコバ面において、前側裾部(前側コバ部)の幅、後側裾部(後側コバ部)の幅およびコバ面の面取幅のそれぞれが釣り合いのとれた最適な大きさになるようにコバ面の面取幅の設定を行うことで、眼鏡装用者が望むような眼鏡レンズの周縁の全周においてコバ面の厚みが目立たず見栄えよく、かつナイロール(登録商標)等のワイヤーフレームを支持する強度が十分である眼鏡レンズの面取加工を実現することができる。
【0107】
すなわち、図13の液晶表示器8の表示エリアE2にて設定した「面幅」、「耳側幅」、「耳側範囲」、「鼻側幅」、「鼻側範囲」等の設定方法は、第1設定方法に準拠しており、表示エリアE4の右側の上部に表示された、例えば「Front:1.3」、「Edg:6.9」、「残り幅:2.9」等の表示は第2設定方法に準拠しており、それぞれの設定方法を有効に生かすために第1設定方法および第2設定方法の折衷的な設定方法がなされている。
B.ヤゲン加工(又は平加工)
ヤゲン加工(又は平加工)を実行させる場合には、再度『左』スイッチ6bを押してスタートさせる。
【0108】
演算制御回路40は、駆動モータ47dを作動制御することにより研削砥石11を回転駆動させる一方、レンズ回転軸9、10と砥石回転軸12との軸間距離が角度θ i 毎に(砥石半径+動径ρ i )となるように、駆動モータ47aをレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて正転又は逆転させることにより、図示しないキャリッジを上下動させて、キャリッジの前端部を角度θ i 毎に上下動させて、キャリッジの前端部を角度θ i 毎に上下回動させてレンズ回転軸9、10及び眼鏡レンズMLを上下動させる。これにより、眼鏡レンズMLが研削砥石11でレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に粗研削加工される。
【0109】
その後、レイアウト時にファンクションキーF4の操作で『面取』を『なし』以外に設定した場合、面取軌跡におけるレンズ形状測定を実行する。
【0110】
また、演算制御回路40は、上述と同様に各駆動モータ47a、47dをレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて作動制御して、レンズ形状(玉型形状)LL、LRに粗研削された眼鏡レンズMLの周縁のコバ端部に研削砥石11のヤゲン砥石11bによりヤゲン山部Yを研削加工する。(平加工の場合には、砥石平面部にて研削加工される。)
この際、演算制御回路40は、予め設定されたヤゲン位置データに基づいてキャリッジを左右に駆動する駆動モータ47bを制御することにより、玉型形状に粗加工された眼鏡レンズMLのコバ端にヤゲン加工を施す。平面加工ではヤゲン位置データとしてレンズ前面のコバ位置データを用いる。このヤゲン位置データ(又は前面コバ位置データ)は、眼鏡レンズMLのコバ厚を測定する際に得られる眼鏡レンズMLの前側屈折面fa又は後側屈折面fbのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に対応する位置の測定軸19c(図2)の軸線方向への屈折面位置データから求められる(図14参照)。例えば、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づく前側屈折面fa又は後側屈折面fbの屈折面位置データから所定位置コバ厚方向に位置する部分の位置データがヤゲン位置データとなる。このようなヤゲン加工位置データは、周知の方法で求めることができる。
C.溝掘加工
(i)溝掘加工1
レイアウト時にファンクションキーF3の操作で『溝掘(細)』、『溝掘(中)』、『溝掘(太)』のいずれかが選択されている場合に、溝掘加工が実行される。
【0111】
演算制御回路40は、駆動モータ47fを作動制御して面取砥石13、14、溝掘カッター17等と一体の面取軸(溝掘軸)15を回転駆動させる一方、(2)または(4)の特殊面取の設定条件に基づいて駆動モータ47eを作動制御して旋回アーム16を上下に回動制御して、レンズ形状(玉型形状)LL、LRに粗研削された眼鏡レンズMLのコバ端部に溝掘カッター17により端面に開放するワイヤー溝38を研削加工する。
【0112】
この場合、ワイヤー溝38は、図14に示したように眼鏡レンズMLの前側屈折面faから眼鏡レンズMLのコバ厚方向に所定幅の前側コバ部Fが得られる位置に形成される。この所定幅の前側コバ部Fとしては例えば1.3mmとしている。また、所定幅の前側コバ部Fを確保する理由は、溝掘カッター17で眼鏡レンズMLのコバ端部にワイヤー溝38を研削加工する際に、眼鏡レンズMLのワイヤー溝38より前側の部分が欠けたりするのを防止できる必要最小限の強度とするためである。更に、所定幅の前側コバ部Fを確保する他の理由は、ナイロール(登録商標)等のワイヤーフレームをワイヤー溝38に配設して、眼鏡レンズをワイヤーフレームで支持させた状態で、前側コバ部Fの部分に外力が作用したとき、前側コバ部Fの部分が欠けたりするのを防止するためである。
【0113】
尚、前側コバ部Fとしては例えば1.3mmとして必要最小限の強度を確保しているが、必ずしもこの数値に限定されるものではない。この前側コバ部Fは、1.3mmより大きくても良い。また、眼鏡レンズの材質等により前側コバ部Fの幅は変わることはもちろんである。
(ii)溝掘加工2
[a]上述したようにワイヤー(ワイヤーフレーム)により眼鏡フレームに取り付けられる眼鏡レンズとしては図21に示したように周縁部がカーブの強いものもでてきている。この眼鏡レンズMLには、図22に示したように周縁部に動径ρaの部分に小さい曲率半径を持つ小曲率部P5を有するものがある。
【0114】
この様な眼鏡レンズMLに対して従来の溝掘カッター(溝掘砥石)17で溝掘加工を行なう場合、回転している眼鏡レンズMLの周面に溝掘カッター(溝掘砥石)17により形成されるワイヤー溝38は所定深さまで徐々に形成される。
【0115】
しかし、眼鏡レンズMLのカーブが強いため、従来の溝掘カッター(溝掘砥石)17で溝掘加工を行なう場合、眼鏡レンズMLの小曲率の溝掘加工点P5の前後の部分において溝掘カッター(溝掘砥石)17と回転している眼鏡レンズMLのワイヤー溝38との間にズレが生じる。その結果、従来は、眼鏡レンズMLの小曲率の溝掘加工点P5の前後の部分に図22に示したように本来加工しようとしていた溝幅waより幅の広い溝幅wbに加工されてしまう。
【0116】
この様なズレによる幅の広い溝幅wbが生じないように玉型形状に基づいて眼鏡レンズ(被加工レンズ)MLの周面に溝掘加工をするのが望ましい。
【0117】
そこで、この要望に沿うために、動径ρbの部分において溝掘カッター(溝掘砥石)17の回転軸(面取軸15)とレンズ軸(レンズ回転軸9,10)の軸間距離データを求める際に、溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Raを図23に破線で示した様に実線で示した実際の砥石半径より仮想的に大きく取り、加工動径情報とレンズ回転方向の情報、レンズ軸方向の移動量を求め、その情報により眼鏡レンズ(被加工レンズ)MLを移動させ、溝掘加工を行なうと良い。
[b]溝掘加工の原理
以下、[a]の様な点を考慮した本実施例における溝掘加工の原理について詳述する。
【0118】
まず、図2に示したようにレンズ回転軸9,10間に未加工で円形の眼鏡レンズMLを保持(挟持)させる。この状態で、研削加工を開始させると演算制御回路40は、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて駆動モータ47cを作動制御させて、レンズ回転軸9,10を回転制御させ、眼鏡レンズMLを図22,23の矢印50の如く反時計回り方向に回転させると共に、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づいて駆動モータ47aを作動制御してキャリッジ(図示せず)を昇降制御させ、研削砥石11により眼鏡レンズMLを玉型形状に研削加工させる。この制御により演算制御回路40は、例えば眼鏡レンズMLを図22,23に示したようなカニ目レンズ(half lens)の玉型形状に研削加工する。
【0119】
この図22,23の眼鏡レンズMLは、カニ目レンズ(half lens)であるので、眼鏡フレームに取り付けたときに左右方向に長く上下方向の幅が狭い形状になっている。このため、この眼鏡レンズMLの動径ρ i を溝掘加工点P1から矢印51で示したように時計回りに360°回転させたとき、この動径ρ i は図24に示した如く変化する。そして、動径ρ i は、溝掘加工点P1,P5の2カ所において極大となり、溝掘加工点P2,P6の2カ所において極小となる。
【0120】
ここで、レンズ回転軸9,10の中心(レンズ回転中心)をOとし、面取軸(砥石軸)15の中心(砥石回転中心)をO1とし、図2のレンズ回転軸9,10の中心Oとを結ぶ直線を52とすると、この直線52の上に溝掘加工点P3が配置される。
【0121】
この様な眼鏡レンズMLの周面にワイヤー溝38を溝掘カッター(溝掘砥石)17で研削加工する場合、眼鏡レンズMLのコバ面Faには溝掘加工点P3の部分においてコバ厚(コバ幅)方向の所定位置(図21,図22の眼鏡レンズMLの前側コバ端feからの寄せ)に所定の溝幅wa及び溝深さhで溝掘加工されるのが望ましい。
【0122】
例えば、眼鏡レンズMLの溝掘加工点P6の部分は略平坦であるので、図25(a)の様に眼鏡レンズMLの溝掘加工点P6の部分を溝掘カッター17で溝掘加工してワイヤー溝38を形成した場合、このワイヤー溝38の幅は図25(b)の如くWaとなり、深さがHとなる。このワイヤー溝38に例えば直径0.5mmのワイヤーWFを係合させる場合に溝掘加工点P6の部分では、溝幅W1が0.5mm〜0.6mm、深さHが0.4mm程度に形成される。
【0123】
ところが、図21に示すように、仕上加工後の眼鏡レンズMLの周縁(玉型形状)のうち、曲率半径が小さい小曲率の溝掘加工点P5の前後の周縁においては、溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石軸(面取軸15)とレンズ回転軸9,10とを結ぶ直線52の上に溝掘加工点P3が配置されず、理論上の溝掘加工点P3と実際の溝掘加工点P4とがずれる。
【0124】
しかも、上述したようにコバ面Faには、所定位置からずれてワイヤー溝38が形成されてしまったり、ワイヤー溝38の溝幅が図22,図25(c)に示した様に広がってしまったり、ワイヤー溝38の軌跡が蛇行したりしてしまう。
【0125】
この原因としては、眼鏡レンズMLの屈折面のカーブ値が大きい場合、曲率半径が小さい小曲率の溝掘加工点P5の前後の周縁において溝掘カッター17が眼鏡レンズMLのコバ面に対して垂直に掘り進んでいかず、図25(d)に矢印53で示したように溝掘カッター17が眼鏡レンズMLのコバ厚方向に斜めに進んでしまう(移動してしまう)ためである。従って、この部分では、ワイヤー溝38の溝幅が図25(c)の如くWbと広がってしまったり、ワイヤー溝38が蛇行したりする。
【0126】
このワイヤー溝38に例えば直径0.5mmのワイヤーWFを係合させる場合の加工では、溝掘加工点P5の前後の周縁では溝幅Wbが0.8mm〜0.9mmと広がる。このため、0.5mmのワイヤーWFをワイヤー溝38に図25(b)の如く係合させた場合、ワイヤーWFが溝幅方向に移動しうる様にワイヤー溝38に係合する。従って、この状態ではワイヤーWFをワイヤー溝38に安定した状態で係合させることができない。
【0127】
そこで、この様な現象が生ずるのを避けるために、図24に示すような玉型形状の示す曲線の極値近傍、例えば角度θ=πの溝掘加工点P5前後の部分、即ち動径角度(π±π/6)の範囲のうち極値の動径角度πを除いた範囲において、眼鏡レンズMLの回転軸の中心Oと溝掘カッター(溝掘砥石)17の回転軸の中心O1との軸間距離を次の様にして求めると良い。
【0128】
即ち、溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Raが仮想的にX倍の大きさの仮想砥石半径R i を有するものと仮定したときの軸間距離Liに離隔して溝掘加工を行う(図24参照)。
【0129】
ここで、溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Raは一般に14mm程度であるが、本実施例の場合には溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Raを10.15mm程度の小径としている。また、本実施例では、溝掘カッター(溝掘砥石)17の仮想砥石半径R i を11.8mm(Ri=X・Ra=11.8mm)とした。従って、X=11.8/10.15=1.163となる。
【0130】
そして、レンズ形状情報(θ i ,ρ i )と仮想砥石半径R i =X・Raとから加工情報(iΔθ,ρi,Li)の軸間距離ρb=Liを求める(図23,図26参照)。この軸間距離Liは、
【0131】
【数1】
Figure 0004447257
から求められる。この場合、回転角θ i (ここで、i=0,1,2…nである)の全て(0〜360°)について軸間距離Liを求め、この求めた軸間距離Liを用いて溝掘カッター17により眼鏡レンズMLの周面に溝掘加工を行う。
【0132】
即ち、演算制御回路40は、駆動モータ47fを作動制御して面取砥石13、14、溝掘カッター17等と一体の面取軸(溝掘軸)15を回転駆動させる一方、駆動モータ47eを作動制御して旋回アーム16を上下に回動制御して、溝掘カッター(溝掘砥石)17とレンズ回転軸9,10とを軸間距離Liに離隔した状態で、レンズ形状(玉型形状)に粗研削された眼鏡レンズMLのコバ端部に溝掘カッター17により端面に開放するワイヤー溝38を研削加工する。
【0133】
なお、これらの数値に限定されず、仮想砥石半径R i =R+αとした場合、α=1.5mm〜2.0mmの範囲内であれば同様の効果を奏する。
【0134】
これによって、溝掘加工のズレ、干渉が生ずる事無く、レンズ全周にわたって予め定めた溝幅、もしくは加工者が定めた溝幅を得る事ができる。また、例えばスポーツサングラス等の眼鏡装用者の顔にへばりつくような極めて湾曲したプラスチックレンズや、+8カーブ等の強カーブレンズへの溝掘加工においても、溝位置のずれ、干渉を防ぎ、適切な溝幅等で加工することができる。
[c]溝掘加工の具体例
演算制御回路40は、フレーム形状測定装置1で測定されたレンズ周縁加工のための極座標形式のメガネレンズ形状データ(ρnnΔθ)と溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径R(上述した半径Raと同じ)とから、溝掘カッター(溝掘砥石)17の回転中心と加工後の眼鏡レンズMLの回転中心との軸間距離を求める。
【0135】
なお、軸間距離の極値(極大値、極小値)近傍の±π/6の範囲内で軸間距離の調整をしてもよいし、角度範囲を限定せずに、軸間距離を調整してもよい。また、軸間距離の調整を行う角度範囲は上記範囲に限定されず、極値(極大値、極小値)近傍の±π/3、±π/4、±π/5等の範囲であってもよい。
【0136】
また、上述したように、溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Rは一般に14mm程度であるが、本実施例の場合には溝掘カッター(溝掘砥石)17の砥石半径Rを10.15mm程度の小径としている。また、本実施例では、溝掘カッター(溝掘砥石)17の仮想砥石半径R i を11.8mmとした。
【0137】
なお、これらの数値に限定されず、仮想砥石半径R i =R+αとした場合、α=1.5mm〜2.0mmの範囲内であれば同様の効果を奏する。
【0138】
この様な条件で溝掘カッター(溝掘砥石)17の回転中心と加工後の眼鏡レンズMLの回転中心との軸間距離は、図32に示したようなフローチャートに従って以下の様にして求められる。
ステップ1
まず、このステップ1では、フレーム形状測定手段としてのフレーム形状測定部(フレーム形状測定装置)1によりフレームのレンズ枠またはそれから倣い加工された型板、或はリムレスフレームのレンズモデル(玉型)のメガネレンズ形状すなわち動径情報(ρnnΔθ)(n=1,2,3,…,i,…N)を求め、この情報をメモリ43bに記憶し、ステップ2に移行する。
ステップ2
このステップ2では、メモリ43bからの動径情報(ρnnΔθ)をもとに、その情報の中で最大の動径長ρ0をもつ動径情報(ρ00Δθ)を求めて、ステップ3に移行する。
ステップ3
このステップ3では、最大動径情報(ρ00Δθ)の動径を加工するときのレンズ回転軸16,17の軸O2と、溝掘カッター17の回転軸O1との軸間距離をL0(図26参照)として、ステップ4に移行する。
【0139】
ここで、L0は既知の砥石半径Rと動径長ρ0とからL0=ρ0+Rとして求められる。さらに、加工情報(L0,ρ00Δθ)をメモリ43aへ入力し記憶させる。
ステップ4
このステップ4では、次にレンズLEを単位回転角Δθ回転したとき、最大動径長ρ0の動径が溝掘カッター17と接する加工点F0における軸間距離L1=L1(ここで、i=1,2,3…I)を求め、ステップ5に移行する。
ここで軸間距離L1=L1は、
【0140】
【数2】
Figure 0004447257
として求められる。
【0141】
この場合、溝掘カッター17の砥石半径R仮想砥石半径R i =R1として、加工点F0における軸間距離L1=L1を求める。
ステップ5
このステップ5では、最大動径ρ0が加工点F0に位置する状態で、メモリ43bの動径情報(ρnnΔθ)に基づいて、最大動径から、予め定めた1番目の動径情報(ρ11Δθ)の仮想加工点Fi=F1を求め、さらに、その加工点を加工するための仮想砥石半径R i =R1(図27参照)を求めて、ステップ6に移行する。
ステップ6
このステップ6では、実際の溝掘カッター17の砥石半径Rと、上記ステップ5により求められた仮想砥石半径R i =R1とを比較し、ズレ角dθn(n=0,1,2,3,…i,…I)=dθ1が発生するか否かを判断する。そして、R≦Ri=R1であれば、加工点F0において最大動径(ρ00Δθ)に基づくレンズ研削をしても、他の動径の仮想加工点Fi=F1と溝掘カッター17との接触はないので、ズレ角dθn=dθ1は生じることはなく、「砥石の干渉」は発生しないと判定され、このときの加工情報(L1,ρ11Δθ)をステップ10に移行してメモリ43aへ入力して記憶させる。
【0142】
また、このステップ6で、R>Riであると判断された場合には、ズレ角dθn=dθ1が発生するのでステップ7へ移行する。
ステップ7
ステップ6でR>Riと判定されたときは、図28に示すように、仮想加工点F i で「砥石の干渉」によるズレ角dθn=dθ1が発生する。
【0143】
この場合は、仮想(干渉)加工点Fiを砥石半径Rの砥石で加工するための軸間距離L1(Fi)は、
【0144】
【数3】
Figure 0004447257
から求められるので、この式にi=1を代入して、仮想加工点Fi=F1における軸間距離L1(Fi)=L1(F1)を、
【0145】
【数4】
Figure 0004447257
から求め(図29参照)、ステップ8に移行する。
ステップ8
このステップ8では、ステップ7で求められた軸間距離L1(Fi)=L1(F1)で加工される加工点Fi=F1を基準として、ステップ5と同様に予め定めた1番目までの動径について仮想加工点を求め、その仮想砥石半径R i (Fi)=R1(F1)を求め、ステップ9に移行する。
ステップ9
このステップ9では、ステップ6と同様に、軸間距離L1(Fi)=L1(F1)の場合の砥石半径Rと、ステップ8の仮想砥石半径Ri(Fi)=R1(F1)とを比較し、R≦Ri(Fi)=R1(F1)であるか否かを判断する。
【0146】
このステップ9において、R≦Ri(Fi)=R1(F1)であれば、ズレ角dθn=dθ1が生じないのでステップ10へ移行する。
【0147】
また、このステップ9において、R>Ri(Fi)=R1(F1)であれば、ズレ角dθn=dθ1が生じるので、新たな干渉点“ζ”における軸間距離を求めるべくステップ7に移行してループし、R≦Ri(Fi)=R1(F1)となる軸間距離L1(Fi)=L1(F1)及び仮想砥石半径R i (Fi)=R1(F1)を求める。
ステップ10
ステップ9においてR≦Ri(Fi)=R1(F1)となったとき、本ステップに移行して、加工情報 (L1(Fi)=L1(F1),ρ1=ρ11Δθ=1Δθ)をメモリ43aへ入力し、これをメモり43aに記憶させ、ステップ11に移行する。
ステップ11
このステップ11では、L0をLi+1とし、又はL0をLi+1(Fi+1)としてステップ12に移行する。
ステップ12
このステップ12では、i=Iか否かを判断し、i≠Iであればステップ4に戻ってループし、Li+1又はLi+1(Fi+1)における仮想砥石半径R i +1を同様にして求める。また、このステップ12においてi=Iであれば終了する。
【0148】
この様にステップ4〜12を繰り返すことにより、メモリ43bの動径情報(ρnnΔθ)に基づいて最大動径(ρ00Δθ)の次の動径から予め定めたI番目までの動径情報(ρIIΔθ)、即ち動径情報(ρ11Δθ)、(ρ22Δθ)、…(ρiiΔθ)、…(ρIIΔθ)の仮想加工点F1、F2、…Fi、…FIを求めることができると共に、それぞれの加工点を加工するための仮想砥石半径1、R2、…Ri、…RIを求めることができる。
【0149】
そして、上述のようなステップ4〜12を繰り返すことにより、「砥石の干渉」によるズレ角dθn(n=0,1,2,3,…i,…I)が発生するか否かをnΔθ=360°すなわち最動径の前後又は全動径情報において調べることができる。そして、「砥石の干渉」によるズレ角dθnが発生すると判断された場合には、「砥石の干渉」によるズレ角dθnこれを発生させない加工情報(Ln,ρnnΔθ)が得られたか否かを判定する。この様にして求められた加工情報(Ln,ρnnΔθ)はステップ10においてメモリ43aに記憶される。
【0150】
尚、演算制御回路40は、この様にして加工情報(Ln,ρnnΔθ)を求める際に、ズレ角dθnを求め、求めたズレ角dθnをメモリ43aに加工情報(Ln,dθn,ρnnΔθ)として記憶させる。
【0151】
そして、演算制御回路40は、この求めた加工情報(Ln,ρnnΔθ)を用いて溝掘カッター17により眼鏡レンズMLの周面に溝掘加工を行う。
【0152】
即ち、演算制御回路40は、駆動モータ47fを作動制御して面取砥石13、14、溝掘カッター17等と一体の面取軸(溝掘軸)15を回転駆動させる一方、駆動モータ47eを作動制御して旋回アーム16を上下に回動制御して、溝掘カッター(溝掘砥石)17とレンズ回転軸9,10とを加工情報(Ln,ρnnΔθ)の軸間距離Lnに離隔した状態で、レンズ形状(玉型形状)に粗研削された眼鏡レンズMLのコバ端部に溝掘カッター17により端面に開放するワイヤー溝38を研削加工する。
[その他]
尚、通常のρL(動径ρ−軸間距離L)変換方では、図30,図31に示したように角度θinΔθに対する動径ρnのときの溝掘砥石6と被加工レンズLEとの軸間距離Lnを演算により求めているが、ズレ角dθnがある場合に溝掘砥石6と被加工レンズLEとの接触位置が角度θinΔθからズレ角dθnだけずれて、接触位置の動径がρjになる。この場合、角度nΔθにおける演算上の軸間距離Lnは、実際の軸間距離Li′に対してΔL分だけ誤差が生ずる。この際の動径をρnとすると、角度nΔθにおいてズレ角dθnがある場合、
被加工レンズLEを溝掘砥石6で加工すべき実際の軸間距離Ln′は、
n′=Ln+ΔL
として求められる。
D.面取加工
レイアウト時、ファンクションキーF4の操作で『面取』を『なし』以外に設定した場合に、面取加工が実施される。演算制御回路40は、駆動モータ47fを作動制御して面取砥石13、14、溝掘カッター17等と一体の面取軸(溝掘軸)15を回転駆動させる一方、(2)または(4)の特殊面取の設定条件に基づいて駆動モータ47eを作動制御して旋回アーム16を上下に回動制御して、面取砥石13、14により眼鏡レンズMLに面取加工を施すことができる。この面取加工は、眼鏡レンズMLの前側屈折面fr及び眼鏡レンズMLとコバ端面との角部に施される。このとき、C.溝掘加工が実施された場合に駆動モータ47eによる旋回アーム16の回動制御などが必要ないため、実施せずに直接面取砥石13,14による面取加工が実施される。
(ワイヤー溝38が施されている場合)
例えば溝掘加工された眼鏡レンズMLのコバ面において、ワイヤー溝38を中心として後側コバ部Bは、前側コバ部Fよりも幅を広く設定する。その場合、図13に示すように、前側コバ部Fを1.3mmとすると、その1.2倍の大きさの幅1.6mmを後側コバ部Bにもたせるように、面取加工において面取残り幅Mwを2.9mmに設定する。
【0153】
これによって、前側コバ部Fよりも後側コバ部Bの幅を大きくとることができ、しかも眼鏡フレームMLのレンズ形状(玉型形状)の周縁の全周に亘って面取加工することができるので、眼鏡レンズMLの周縁の全周においてコバ面の厚みが目立つことがない面取加工を実現することができる。
(ヤゲン山部Yが施されている場合)
ワイヤー溝38の代わりにヤゲン山部Yが形成されるヤゲン加工においても、ヤゲン山部Yを中心として前側コバ部F(前側裾部)よりも後側コバ部(後側裾部)Bの幅が大きく設定することで面取幅の大きさが演算によって求められ、求められた面取幅に応じて面取加工することで、所望の前側裾部及び後側裾部を形成することができる。
【0154】
この場合においても、前側裾部(前側コバ部)の幅、後側裾部(後側コバ部)の幅およびコバ面の面取幅の最適化に関する方法は前述したとおりに設定を行う。
【0155】
以上説明したように、通常の面取加工におけるレイアウト設定、シミュレーション、加工実行の作業工程を説明した。
【0156】
しかしながら、特に、眼鏡加工作業者が従来手作業で行っていた技能的な面取加工技術のノウハウを、初期設定を変更することにより実現し、微細に面取加工を行いたいという要求が生じることもある。
【0157】
このような場合に、通常の面取加工における作業工程とは別に、特殊面取の初期表示や初期設定を変更する必要がある。
(4)特殊面取の「特殊」の初期表示及び設定
『メニュー』タブTB4(あるいは『画面』スイッチ7a)を押すことで、図16に示すように、「項目を選択してください。」のメッセージ22’、及び、選択メニュー22、23が液晶表示器8に表示される。この際、選択メニュー22には「設定1」、「設定2」、「調整」、「メンテナンス」等の設定項目が表示される。そして、「設定1」をF1で選択すると、選択メニュー23には、「スイッチの初期表示」、「スイッチの順番変更」、「レイアウト初期値」、「表示画面」、「レイアウト入力の設定」、「サイズの初期値」、「特殊面取りの初期値」等の選択項目が表示される。
【0158】
この選択メニュー23から「特殊面取の初期値」をF3で選択すると、図17に示すように、「設定 特殊面取りの初期値」、「項目を選択して下さい。」のメッセージ24’、及び、選択メニュー24が液晶表示器8に表示される。この際、選択メニュー24には、「面取り幅(前面、他)」、「面取り幅(耳側)」、「面取り範囲(耳側)」、「面取り幅(鼻側)」、「面取り範囲(鼻側)」等の選択項目が表示される。例えば、選択メニュー24で「面取り幅(前側、他)」を選択すると、図18に示すように、「設定 特殊面取りの初期値」、「項目を選択して、+/−で数値を入力して下さい。」、「設定範囲は、0.1〜5.0mmです。」のメッセージ24a’、及び、選択メニュー24a、24bが液晶表示器8に表示される。この際、選択メニュー24aには、「面取り(前面)mm」、「面取り(他)mm」等の選択項目が表示される。また、選択メニュー24bには、(mm)単位の設定範囲として「1.0」、「0.3」等の選択項目が表示される。なお、この設定範囲に限定されず、任意のmm単位の大きさを設定範囲の項目として加えることができる。
【0159】
また、例えば、図17の特殊面取り初期値設定画面において、「面取り幅(耳側)」を選択すると、図19に示すように、「設定 特殊面取りの初期値」、「項目を選択して、+/−で数値を入力して下さい。」、「設定範囲は、面取り幅(0.1〜5.0mm)・範囲(10〜90%)です。」のメッセージ24c’、及び、選択メニュー24c、24dが液晶表示器8に表示される。この際、選択メニュー24cには、「プラ」、「高プラ」、「ポリカ」、「アクリル」等の眼鏡レンズの材質を選ぶ選択項目が表示される。また、選択メニュー24dには、(mm)単位の設定範囲として「2.0」、「2.0」、「2.0」、「2.0」等の選択項目が表示され、眼鏡レンズの耳側のコバ端の面取り幅を例えば2.0mmと設定することができる。ここで、「プラ」とは、プラスチックレンズ、「高プラ」とは、高屈折のプラスチックレンズ、「ポリカ」とは、ポリカーボネイト、「アクリル」とは、アクリル樹脂を意味する。
【0160】
また、例えば、図17の特殊面取り初期値設定画面において、「面取り範囲(耳側)」を選択すると、図20に示すように、「設定 特殊面取りの初期値」、「項目を選択して、+/−で数値を入力して下さい。」、「設定範囲は、面取り幅(0.1〜5.0mm)・範囲(10〜90%)です。」のメッセージ24c’、及び、選択メニュー24e、24fおよび面取加工後の左右両眼の眼鏡レンズを正面から見たように横に並べ装用した場合の面取り見栄え(特に耳側のコバ端の面取り)をチェックできるプレビュー画面24gが液晶表示器8に表示される。この際、選択メニュー24eには、「プラ」、「高プラ」、「ポリカ」、「アクリル」等の眼鏡レンズの材質を選ぶ選択項目が表示される。また、選択メニュー24fには、眼鏡レンズの耳側のコバ端の面取りする範囲が(%)単位の設定範囲として「80」、「80」、「80」、「80」等の選択項目が表示される。
【0161】
そして、ファンクションキーF5を押して「実行」を選択すると、上述した設定が終了して、図9に示したレイアウト設定の画面になる。
【0162】
上述した特殊面取の「特殊」の初期設定においては、『メニュー』タブTB4(あるいは『画面』スイッチ7a)を押すことで設定することができたが、図10に示すように、レイアウト画面において、ファンクション表示部H4に対応するファンクションキーF4を押し、図10に示したようなポップアップメニュー21’から選択することで、特殊面取の設定を行うようにしてもよい。この場合、このポップアップメニュー21’には、「無し、小(前後)、特殊 耳(前後)、特殊 鼻(前後)、特殊(前後)、小(後)、特殊 耳(後)、特殊 鼻(後)、特殊(後)」等の面取位置の選択内容が表示される。この表示状態では、「無し、小(前後)、特殊 耳(前後)、特殊 鼻(前後)、特殊(前後)、小(後)、特殊 耳(後)、特殊 鼻(後)、特殊(後)」等の面取位置のいずれかの色が反転表示されている。この反転表示された内容が面取位置であり、ファンクション表示部H4に表示される。図10では、「小(前後)」が面取位置として表示されている。
【0163】
上述したように、特殊面取の「特殊」の初期設定の変更に伴い、面取加工の通常の作業である、レイアウト設定→面取加工シミュレーション→面取加工の工程途中で設定値を変更する必要がなく、眼鏡加工作業者が従来手作業で行っていた技能的な面取加工技術のノウハウを実現することができ、眼鏡レンズの微細な面取加工を行うことができる。
【0164】
以上説明したように、この発明の実施の形態の眼鏡レンズの溝掘加工方法では、眼鏡フレームの玉型形状に即して仕上加工された眼鏡レンズMLをレンズ回転軸9,10により保持し、眼鏡レンズMLのコバ面に溝掘砥石(溝掘カッター17)を当接させて、レンズ回転軸9,10と溝掘砥石(溝掘カッター17)の回転軸(面取軸15)との軸間距離を調整しながら、眼鏡レンズMLの溝掘加工を行う。そして、この眼鏡レンズの溝掘加工方法において、玉型形状の描く曲線のうちで極値をもつ動径角度の近傍において、溝掘砥石(溝掘カッター17)の砥石半径Rを所定倍(X倍)した仮想砥石半径R i と仮想し、レンズ回転軸9,10と溝掘砥石(溝掘カッター17)の回転軸(面取軸15)との軸間距離を変化させて、眼鏡レンズMLのコバ面の溝掘加工を行う様にしている。
【0165】
この様な眼鏡レンズの溝掘加工方法によれば、玉型形状の示す曲線の極値近傍で、眼鏡レンズの回転軸(レンズ回転軸9,10)の中心Oと溝掘砥石(溝掘カッター17)の回転軸(面取軸15)の中心O1との軸間距離を、溝掘砥石(溝掘カッター17)の砥石半径Rが仮想的に所定倍(X倍)、例えば1.163倍の大きさの仮想砥石半径R i を有するものと仮定したときの軸間距離に離隔して溝掘加工を行うことによって、溝掘加工のズレ、干渉が生ずる事無く、レンズ全周にわたって予め定めた溝幅、もしくは加工者が定めた溝幅を得る事ができる。また、例えばスポーツサングラス等の眼鏡装用者の顔にへばりつくような極めて湾曲したプラスチックレンズや、+8カーブ等の強カーブレンズへの溝掘加工においても、溝位置のずれ、干渉を防ぎ、適切な溝幅等で加工することができる。
【0166】
また、この発明の実施の形態の眼鏡レンズの溝掘加工装置は、眼鏡フレームの玉型形状に即して仕上加工された眼鏡レンズMLを保持するレンズ回転軸9,10と、レンズ回転軸9,10に保持された眼鏡レンズMLのコバ面に当接させて溝掘加工を行うための溝掘砥石(溝掘カッター17)と、溝掘砥石(溝掘カッター17)を回転させる溝掘砥石回転軸(面取軸15)と、レンズ回転軸9,10と溝掘砥石回転軸(面取軸15)との軸間距離を調整するための軸間距離調整手段(駆動モータ47g)とを有する。しかも、この眼鏡レンズの溝掘加工装置は、玉型形状の描く曲線のうちで極値をもつ動径角度の近傍において、溝掘砥石(溝掘カッター17)の砥石半径Rを所定倍(X倍)した仮想砥石半径R i と仮想し、レンズ回転軸9,10と溝掘砥石(溝掘カッター17)の回転軸(面取軸15)との軸間距離を変化させて、眼鏡レンズMLのコバ面の溝掘加工を行うように軸間距離調整手段(駆動モータ47g)を制御する演算制御手段(演算制御回路40)を有する。
【0167】
この様な眼鏡レンズの溝掘加工装置によれば、玉型形状の示す曲線の極値近傍で、眼鏡レンズの回転軸(レンズ回転軸9,10)の中心Oと溝掘砥石(溝掘カッター17)の回転軸(面取軸15)の中心O1との軸間距離を、溝掘砥石(溝掘カッター17)の砥石半径Rが仮想的に所定倍(X倍)、例えば1.163倍の大きさの仮想砥石半径R i を有するものと仮定したときの軸間距離に離隔して溝掘加工を行うことによって、溝掘加工のズレ、干渉が生ずる事無く、レンズ全周にわたって予め定めた溝幅、もしくは加工者が定めた溝幅を得る事ができる。また、例えばスポーツサングラス等の眼鏡装用者の顔にへばりつくような極めて湾曲したプラスチックレンズや、+8カーブ等の強カーブレンズへの溝掘加工においても、溝位置のずれ、干渉を防ぎ、適切な溝幅等で加工することができる。
【0168】
【発明の効果】
以上により、本発明は、玉型形状の示す曲線の極値近傍で、眼鏡レンズの回転軸の中心と溝掘砥石の回転軸の中心との軸間距離を、溝掘砥石の半径が仮想的に例えば略2倍の大きさの半径を有するものと仮定したときの軸間距離に離隔して溝掘加工を行うことによって、溝掘加工のズレ、干渉が生ずる事無く、レンズ全周にわたって予め定めた溝幅、もしくは加工者が定めた溝幅を得る事ができる。
【0169】
また、例えばスポーツサングラス等の眼鏡装用者の顔にへばりつくような極めて湾曲したプラスチックレンズや、+8カーブ等の強カーブレンズへの溝掘加工においても、溝位置のずれ、干渉を防ぎ、適切な溝幅等で加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るレイアウト表示装置を備えるレンズ研削加工装置とフレーム形状測定装置との関係を示す説明図である。
【図2】 本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、加工室内の加工主要部の斜視図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置を示し、(A)は第1の操作パネルの拡大説明図、(B)は液晶表示器の正面図である。
【図4】 本発明の実施の形態に係るレンズ研削加工装置の制御回路の説明図である。
【図5】 制御回路の制御を説明するためのタイムチャートである。
【図6】 図3の液晶表示器の通常の面取り加工の表示例を示す説明図である。
【図7】 図6の液晶表示器に表示されたポップアップメニューを示す説明図である。
【図8】 図7に示すポップアップメニューにおいて「特殊(前後)」を選択した状態を示す図である。
【図9】 画面上に特殊面取りのための表示の一例が示された状態を説明するための図である。
【図10】 図8に示すポップアップメニューの他の表示例を示す説明図である。
【図11】 シミュレーション画面が液晶表示器に表示された状態を示す説明図である。
【図12】 面取り範囲の一例を説明するための補足説明図である。
【図13】 溝掘りシミュレーション画面を表示した状態を示す図である。
【図14】 コバ断面形状の説明図である。
【図15】 ヤゲン山部の位置と後側裾部の幅の変化とを示す図である。
【図16】 項目選択画面が表示された状態を示す説明図である。
【図17】 選択メニュー画面において特殊面取りの初期値を選択したときに表示される画面を示す図である。
【図18】 図16に示す画面で「面取り幅(前面、他)」を選択したときに表示される画面を示す図である。
【図19】 図16に示す画面で「面取り幅(耳側)」を選択したときに表示される画面を示す図である。
【図20】 図16に示す画面で「面取り範囲(耳側)」を選択したときに表示される画面を示す図である。
【図21】 図2の溝掘カッターとカーブ値の大きい眼鏡レンズとの関係を示す断面図である。
【図22】 図21の溝掘カッターと眼鏡レンズとの関係を前側屈折面側から見た説明図である。
【図23】 図22の溝掘カッターの半径を所定倍したときの説明図である。
【図24】 図22,図23の眼鏡レンズの動径変化を示す動径変化曲線図である。
【図25】 (a)は溝掘カッターによる眼鏡レンズの溝掘加工点を示す説明図、(b)は(a)のA1−A1線に沿う断面図、(c)は(a)のA2−A2線に沿う断面図、(d)は(c)のワイヤー溝が加工される場合の説明図である。
【図26】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図27】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図28】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図29】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図30】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図31】 溝掘カッターと眼鏡レンズとの軸間距離を求めるための説明図である。
【図32】 演算制御回路による溝掘制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
ML…眼鏡レンズ
9,10…レンズ回転軸
17…溝掘カッター(溝掘砥石)
15…面取軸(溝掘砥石回転軸)
47g…駆動モータ(軸間距離調整手段)
40…演算制御回路(演算制御手段)

Claims (2)

  1. 眼鏡レンズを保持させるレンズ回転軸と前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘加工を行わせる溝掘砥石の回転軸との軸間距離を眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )の角度θ i における動径ρ i と溝掘砥石の砥石半径Rから溝掘加工のための加工情報として求めると共に、
    前記眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )に基づき仕上加工された眼鏡レンズをレンズ回転軸により保持させ、且つ前記眼鏡レンズのコバ面に砥石半径Rの溝掘砥石を当接させて、前記溝掘加工のための加工情報に基づき前記軸間距離を調整しながら前記眼鏡レンズの溝掘加工を行って、前記眼鏡レンズの前記コバ面にワイヤー溝を形成するための眼鏡レンズの溝掘加工方法において、
    前記角度θ i の変化に対する動径ρ i の変化の曲線が曲率半径の小さい部分を有し且つ前記曲線の曲率半径の小さい部分に極値を有する前記玉型形状の前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘砥石で溝掘加工を行う場合に、前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内で前記溝掘砥石の砥石半径Rを所定倍した仮想砥石半径R i を求めて、前記砥石半径Rと仮想砥石半径R i がR≦R i であるか否かを判定し、R≦R i でなければ前記溝掘砥石と回転する前記眼鏡レンズのワイヤー溝との間に溝掘加工のズレや干渉が生じるとしてR≦R i となるように仮想砥石半径R i を再度求めると共に、前記加工情報である前記軸間距離を前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない前記仮想砥石半径R i とから求めて、前記軸間距離を前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内では前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない仮想砥石半径R i から求めた前記加工情報に基づいて軸間距離を変化させて、前記眼鏡レンズのコバ面の溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズの溝掘加工方法。
  2. 眼鏡フレームの玉型形状に即して仕上加工された眼鏡レンズを保持するレンズ回転軸と、
    レンズ回転軸に保持された眼鏡レンズのコバ面に当接させて前記コバ面にワイヤー溝を溝掘加工により形成するための溝掘砥石と、
    前記溝掘砥石を回転させる溝掘砥石回転軸と、
    レンズ回転軸と溝掘砥石回転軸との軸間距離を調整するための軸間距離調整手段と
    前記レンズ回転軸と前記溝掘砥石回転軸との軸間距離を前記眼鏡フレームのレンズ形状情報(θ i ,ρ i )の角度θ i における動径ρ i と前記溝掘砥石の砥石半径Rから溝掘加工のための加工情報として求める演算制御回路とを有する眼鏡レンズの溝掘加工装置において、
    前記演算制御回路は、前記角度θ i の変化に対する動径ρ i の変化の曲線が曲率半径の小さい部分を有し且つ前記曲線の曲率半径の小さい部分に極値を有する前記玉型形状の前記眼鏡レンズのコバ面に溝掘砥石で溝掘加工を行う場合に、前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内で前記溝掘砥石の砥石半径Rを所定倍した仮想砥石半径R i を求めて、前記砥石半径Rと仮想砥石半径R i がR≦R i であるか否かを判定し、R≦R i でなければ前記溝掘砥石と回転する前記眼鏡レンズのワイヤー溝との間に溝掘加工のズレや干渉が生じるとしてR≦R i となるように仮想砥石半径R i を再度求めると共に、前記加工情報である前記軸間距離を前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない前記仮想砥石半径R i とから求めて、前記軸間距離を前記極値が含まれる前後の所定の角度の範囲内では前記動径ρ i と前記加工干渉の生じない仮想砥石半径R i から求めた前記加工情報に基づいて軸間距離を変化させて、前記眼鏡レンズのコバ面の溝掘加工を行うことを特徴とする眼鏡レンズの溝掘加工装置。
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