JP4102512B2 - 自動車用ランプハウジング - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物用いた動車用ランプハウジングに関し、耐候性に優れ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂との振動溶着が良好に行えるものである。
【0002】
【従来の技術】
テールランプ、ストップランプ等の自動車用ランプは、PMMA樹脂、PC樹脂等の透明樹脂からなるレンズと、それを支持するハウジングとから概略構成されている。
ハウジングには、従来鉄やアルミニウム等の金属が使用されてきたが、軽量で生産性が高い等の理由から、ポリプロピレン、ABS樹脂等の樹脂製のものに代替されている。自動車用ランプハウジングは、屋外で日光にさらされることが多いので、最近では、ABS樹脂よりも耐候性に優れたASA樹脂、AES樹脂が単独で、あるいはABS樹脂と併せて用いられることが多い。
このような樹脂製ハウジングは、透明樹脂からなるレンズとホットメルト接着剤で接合、一体化されていたが、より生産性を高めるため、最近では振動溶着法で接合されることが多い。
振動溶着法は、摩擦熱を利用した溶着方法であり、図1に示すように、レンズ11の周縁端部11aをハウジング12の周縁端部12aに押し当てて、振れ幅0.5〜2.0mm、振動数2〜300Hzの振動を与え、レンズ11とハウジング12の間に摩擦熱を発生させ、レンズ11とハウジング12を溶融、接合し、一体化する方法である。
振動溶着法では、レンズ11の周縁端部11aとハウジング12の周縁端部12aが良好に溶融、接合し、接合して生じる部分、いわゆる溶けしろが、レンズ天面側から見て、レンズリブ部11bからはみ出しの少ない、いわゆる外観の優れた形状に形成されることが重要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハウジング12として、耐候性に優れたASA樹脂、AES樹脂を単独であるいはABS樹脂とともに使用した場合、PMMA樹脂、PC樹脂等からなるレンズ11との振動溶着性が十分ではなく、溶けしろが、レンズリブ部11bから極端にはみ出た形状に形成され、自動車用ランプ10として外観上十分でない場合があった。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、耐候性、耐衝撃性に優れ、かつ、振動溶着によるPMMA樹脂、PC樹脂等との溶着が良好で、振動溶着で生じる溶けしろの外観に優れた、振動溶着性の良い熱可塑性樹脂組成物用いた自動車ランプハウジング提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、アクリル酸アルキルエステル単量体単位と1,3−ブタジエン単量体単位とを含有する単量体混合物を重合して得られるゴム状共重合体(I)100重量部に対して、メタクリル酸メチル量体単位50〜100重量%と、アクリル酸エチル単量体単位0〜50重量%とからなる単量体混合物(II)10〜1000重量部を重合して得られたゴム状グラフト共重合体を有するグラフト共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された自動車用ランプハウジングであって、レンズと振動溶着法によって一体化された自動車用ランプハウジングによって解決される。
上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)10〜100重量%と、ビニル重合体(B)0〜90重量%からなり、ビニル重合体(B)が芳香族ビニル単量体単位を含有する芳香族ビニル重合体を有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)が10〜80重量%であり、さらにポリカーボネート樹脂(C)を20〜90重量%含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)が10〜80重量%であり、さらにポリカーボネート樹脂(C)10〜80重量%と、ポリエステル樹脂(D)10〜80重量%を含み、ポリエステル樹脂(D)が下記の芳香族ポリエステル樹脂を有することが好ましい。
芳香族ポリエステル樹脂
炭素数8〜22個の芳香族ジカルボン酸単量体単位と、炭素数2〜22個のアルキレングリコールまたはシクロアルキレングリコール単量体単位とからなるアルキレンテレフタレート繰り返し単位を50重量%以上含有する芳香族ポリエステル樹脂。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明で使用されるグラフト共重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、1,3−ブタジエン単量体単位とを含有する単量体混合物を重合して得られるゴム状共重合体(I)100重量部に対して、メタクリル酸メチル量体単位50〜100重量%と、アクリル酸エチル単量体単位0〜50重量%とからなる単量体混合物(II)10〜1000重量部をグラフト重合して得られたゴム状グラフト共重合体を有するものである。
【0008】
ゴム状共重合体(I)を構成するアクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に制限はないが、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルであり、特に好ましくは、ガラス転移点が低く、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物がより耐候性に優れることから、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルである。
ゴム状共重合体(I)を構成する1,3−ブタジエンは、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物とPC樹脂等との振動溶着を良好にするものである。
ゴム状共重合体(I)は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、1,3−ブタジエン単量体単位とを含有する単量体混合物を重合して得られるが、この単量体混合物には、アクリル酸アルキルエステルおよび1,3−ブタジエンと共重合可能なビニル単量体を導入してもよい。
このようなビニル単量体としては、単官能性または多官能性のどちらの単量体でもよく、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル類に代表される単官能性単量体、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体等があげられる。
【0009】
単量体混合物中のアクリル酸アルキルエステル単量体単位の割合は特に制限はないが、好ましくは40〜99重量%である。アクリル酸アルキルエステル単量体単位の割合が40重量%未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性が不十分となる場合があり、99重量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物とPC樹脂等とを振動溶着させた際の、溶けしろ外観が悪くなる場合がある。
1,3−ブタジエン単量体単位の割合は特に制限はないが、好ましくは1〜60重量%である。1,3−ブタジエン単量体単位の割合が1重量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物とPMMA樹脂等とを振動溶着させた際の溶けしろ外観が悪くなる場合があり、60重量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の耐候性が不十分となる場合がある。
アクリル酸アルキルエステルおよび1,3−ブタジエンと共重合可能なビニル単量体を導入する割合は特に制限はないが、好ましくは0〜10重量%である。10重量%を超えると、PMMA樹脂等と振動溶着させた際の溶けしろ外観、耐衝撃性または耐候性のうちの少なくとも一つが不十分となる場合がある。
このような単量体混合物を重合して得られたゴム状共重合体(I)は、比較的ガラス転位点の低いアクリル酸アルキルエステル単量体単位と、1,3−ブタジエン単量体単位を主成分とするので、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物は、ゴム特性、耐候性が優れ、かつ、PC樹脂等と振動溶着して生じる溶けしろが、滑らかで均一な形状となる。
【0010】
アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、1,3−ブタジエン単量体単位とを含有する単量体混合物を重合する重合方法には特に制限はないが、乳化重合法で重合されることが好ましく、公知の乳化剤、重合開始剤、メルカプタン等の連鎖移動剤を添加することもできる。
ゴム状共重合体(I)は、平均粒径が0.03〜0.20μm、特に0.05〜0.15μmの粒子で得られることが好ましく、このような粒径の粒子が得られるような条件で重合を行うことが好ましい。平均粒径がこの範囲外となる条件下では、重合時の重合速度や重合温度の制御が困難になり重合系が不安定になる、後述する肥大化時に希望する粒子径とならない等の問題が起こる場合がある。
【0011】
得られたゴム状共重合体(I)粒子は、後述する単量体混合物(II)と重合し、ゴム状グラフト共重合体となる。この際、ゴム状共重合体(I)粒子を、そのまま使用してもよいが、肥大化剤で、平均粒径0.12〜0.4μmまで肥大化した後、単量体混合物(II)と重合すると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物が耐衝撃性に優れることから好ましい。
【0012】
ここで使用される肥大化剤としては、以下に説明する酸基含有共重合体および/または酸素酸塩が好ましい。
酸基含有共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸、ソルビン酸およびp−スチレンスルホン酸から選ばれた1種以上の不飽和酸単量体単位3〜40重量%、アルキル基の炭素数が1〜12の1種以上のアクリル酸アルキルエステル単量体単位97〜35重量%、これらと共重合体可能な単量体単位0〜40重量%からなる単量体混合物を乳化重合して得られた共重合体であり、共重合体が分散したラテックスの状態で使用される。
不飽和酸およびアルキル基の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキルエステルと共重合体可能な単量体としては、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、アクリロニトリル等の単量体等が挙げられる。
不飽和酸単量体が3重量%未満では、肥大化能力が小さく、一方、40重量%を超えると肥大化能力が強すぎて、1μmを超える過大な粒子を生成させる場合がある。
【0013】
酸基含有共重合体中の不飽和酸単量体単位の最適含有量は、アルキル基の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキルエステル単量体単位の親水性の度合によって異なる。親水性が高いアクリル酸アルキルエステルを使用する場合には、不飽和酸単量体の量が少ない領域で肥大化の効果が大きく、不飽和酸単量体の量が多い領域ではゴム状共重合体(I)ラテックスが破壊される場合がある。親水性が低いアクリル酸アルキルエステルを使用する場合には、不飽和酸単量体の量が少ない領域では肥大化の効果が小さく、不飽和酸単量体の量が多い領域で効果が大きい。
【0014】
例えば、親水性の高いアクリル酸メチルやアクリル酸エチルを使用する場合には、不飽和酸単量体含有量は5〜10重量%が好ましく、アルキル基の炭素数が4以上の疎水性のアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等を使用する場合には、不飽和酸単量体含有量は13〜20重量%が好ましい。
また、親水性の高いアクリル酸アルキルエステルを用いると、不飽和酸単量体の量が5〜10%の場合であっても、系が不安定になり易く、そのためにカレット(粗大粒子)が生じる場合があるが、疎水性アクリル酸アルキルエステルを用いれば、系が不安定になることもなく、均一な肥大化粒子が得られることが多く好ましい。
酸基含有共重合体を製造する乳化重合は、1段階で行ってもよいし、同一組成または異なる組成で2段階以上で行ってもよく、多層構造の酸基含有共重合体を製造してもよい。
【0015】
肥大化剤として使用される酸素酸塩は、周期律表の第IAまたは第IIA族の、第3または第4周期に属する元素群の中から選ばれた元素を中心とする酸素酸の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、亜鉛塩、ニッケル塩、アルミニウム塩である。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
酸素酸塩としては、硫酸、硝酸、リン酸等と、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、アルミニウムとの塩が挙げられ、好ましくは、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム等である。
【0016】
以上に述べた酸基含有共重合体および酸素酸塩は、それぞれ単独で使用しても併用してもよく、ゴム状共重合体(I)ラテックス中に、ゴム状共重合体(I)の固形分100重量部に対して、0.1〜5重量部添加することが好ましい。酸基含有共重合体を単独で使用する場合は、0.5〜3重量部がさらに好ましく、酸素酸塩を単独で使用する場合は、0.1〜4重量部がさらに好ましい。
また、酸基含有共重合体を用いて肥大化処理を行う場合、ゴム状共重合体(I)ラテックスのpHは7以上であることが好ましい。pHが7未満では、酸基含有共重合体ラテックスを添加しても肥大化効率が低く、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が不十分となる場合がある。ラテックスのpHを7以上にする場合、ゴム状共重合体(I)を得る重合反応中にpH調節しても良いし、また、重合反応後に行っても良い。
これらの肥大化剤を、ゴム状共重合体(I)100重量部に対して0.1〜5重量部添加することによって、ゴム状共重合体(I)の肥大化がより効率的に行われ、肥大化した粒子を含むラテックスの安定性も大きく向上する。
【0017】
ゴム状グラフト重合体は、上記で得られたゴム状共重合体(I)粒子100重量部に対して、メタクリル酸メチル量体単位50〜100重量%と、アクリル酸エチル単量体単位0〜50重量%からなる単量体混合物(II)10〜1000重量部を重合して得られるものである。タクリル酸メチル量体単位は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物中でのゴム状共重合体(I)の分散性を向上させるものであって、単量体混合物(II)中のメタクリル酸メチル量体単位が50重量%未満では、熱可塑性樹脂組成物中のゴム状共重合体(I)の分散性が低下する場合がある。
【0018】
このような単量体混合物(II)を、ゴム状共重合体(I)粒子100重量部に対して重合させる割合が、10重量部未満では、熱可塑性樹脂組成物中でのゴム状共重合体(I)の分散性が低下する場合があり、1000重量部を超えるとPMMA樹脂等と振動溶着させた際の溶けしろ外観、耐衝撃性または耐候性のうちの少なくとも一つが不十分となる場合がある。
この際、単量体混合物(II)は、あらかじめその一部をゴム状重合体(I)に重合させ、次いで残りを重合させる2段階以上の重合で行ってもよく、各段階の単量体混合物(II)の組成は同一でも、異なっていてもよい。
ゴム状共重合体(I)と単量体混合物(II)を重合する方法には特に制限はないが、乳化重合法で重合することが好ましく、公知の触媒、乳化剤、重合開始剤、メルカプタン等の連鎖移動剤を適宜添加することができる。
【0019】
グラフト共重合体(A)としては、上記のゴム状グラフト共重合体を単独で使用してもよいし、他に公知のゴム状グラフト共重合体を併用してもよい。ただし、この場合、公知のゴム状グラフト共重合体の配合量は、グラフト共重合体(A)中のゴム状成分重量(ゴム状共重合体(I)と公知のゴム状グラフト共重合体の合計重量)の50重量%以下となる範囲である。50重量%を超えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性または振動溶着性の少なくとも一方が不十分となる場合がある。
公知のゴム状グラフト共重合体としては、ブタジエンゴムグラフト共重合体、架橋アクリルゴムグラフト共重合体、シリコーンゴムグラフト共重合体や、これらを複合化した共重合体等が挙げられる。
このようなグラフト共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐候性、耐衝撃性に優れ、かつ、振動溶着によるPMMA樹脂、PC樹脂等との溶着が良好で、振動溶着で生じる溶けしろ外観に優れたものとなる。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに、ビニル重合体(B)を90重量%以下の割合で配合することができ、ビニル重合体(B)は芳香族ビニル単量体単位を含有する芳香族ビニル重合体を有するものである。ビニル重合体(B)の配合量が90重量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性、耐衝撃性と振動溶着性が不十分となる場合がある。
ビニル重合体(B)は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物に成形加工性を付与するものであり、芳香族ビニル重合体を構成する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、O−メチルスチレン、1、3−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ハロゲン化スチレン、p−エチルスチレン等が用いられる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、芳香族ビニル重合体には、シアン化ビニル単量体単位およびその他のビニル単量体単位を導入してもよい。
シアン化ビニル単量体単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルフマロニトリルなどが挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
他のビニル単量体単位としては、特に制限はなく、N−フェニルマレイミド等のマレイミド単量体、ピリジン単量体等が挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0022】
芳香族ビニル重合体中の芳香族ビニル単量体単位の割合は50〜90重量%が好ましい。これは、50重量%未満では最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物が成形性に劣る場合があり、90重量%を超えると耐衝撃性が不十分となる場合がある。
シアン化ビニル単量体単位の割合は、0〜45重量%が好ましく、45重量%を超えると最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物が成形性に劣る場合がある。
他のビニル単量体単位の割合は、0〜40重量%が好ましく、40重量%を超えると耐衝撃性、成形性のいずれか少なくとも一方が劣る場合がある。
芳香族ビニル重合体を製造する重合方法には特に制限はないが、ラジカル重合法で重合されることが好ましい。ラジカル重合は、溶液重合、懸濁重合、バルク重合等によって行われるが、懸濁重合、溶液重合によるものが好ましい。
【0023】
ビニル重合体(B)は、上記の芳香族ビニル重合体を1種類のみ使用してもよいし、複数種の芳香族ビニル重合体を製造して配合し、耐熱性や流動性等を適宜調整してもよい。また、ビニル重合体(B)には、公知のその他のビニル重合体を30重量%以下の範囲で配合することもできる。ビニル重合体(B)中のその他のビニル重合体の配合量が30重量%を超えると、PMMA樹脂等と振動溶着させた際の溶けしろ外観、耐衝撃性または耐候性のうちの少なくとも一つが不十分となる場合がある。
【0024】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物には、グラフト共重合体(A)と、ビニル重合体(B)の他に、PC樹脂(C)を配合することができる。この場合、グラフト共重合体(A)は10〜80重量%、ビニル重合体(B)は0〜90重量%、PC樹脂(C)は20〜90重量%である。
PC樹脂(C)は、熱可塑性樹脂組成物に耐熱性を付与するものであり、ジヒドロキシ化合物やポリジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させて得られる公知のものが使用される。また、側鎖が任意に分岐しているPC樹脂(C)を使用してもよい。
【0025】
ジヒドロキシ化合物は、脂肪族または芳香族のどちらでもよいが、芳香族であるジヒドロキシジアリールアルカンが使用されることが好ましい。ジヒドロキシジアリールアルカンとしては、ヒドロキシ基に関しオルトの位置にアルキル基、塩素原子または臭素原子を有するものが好ましく、4、4−ジヒドロキシ2、2−ジフェニルプロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
また、側鎖が分岐したPC樹脂(C)は、ジヒドロキシ化合物の一部、例えば0.2〜2モル%をポリヒドロキシ化合物で置換することにより製造でき、ポリヒドロキシ化合物としては、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリー(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼンなどが挙げられる。
【0026】
PC樹脂(C)を熱可塑性樹脂組成物に配合する場合、PC樹脂(C)の配合量が20重量%未満では、熱可塑性樹脂組成物に十分な耐熱性を付与できない場合があり、90重量%を超えると成形性が十分ではない場合がある。
グラフト重合体(A)の配合量が10重量%未満では、PMMA樹脂等と振動溶着させた際の溶けしろ外観、耐衝撃性または耐候性のうちの少なくとも一つが不十分となる場合があり、80重量%を超えると耐熱性、成形性が不十分となる場合がある。ビニル重合体(B)の配合量が90重量%を超えると、耐熱性、耐衝撃性が不十分となる場合がある。
このように熱可塑性樹脂組成物に、PC樹脂(C)を20〜90重量%配合することによって、得られる熱可塑性樹脂組成物は、耐候性、耐衝撃性、成形性、振動溶着性だけではなく、さらに耐熱性にも優れたものとなる。
【0027】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物には、グラフト共重合体(A)10〜80重量%、ビニル重合体(B)0〜90重量%、ポリカーボネート樹脂(C)10〜80重量%に加え、ポリエステル樹脂(D)を10〜80重量%の範囲で配合することもできる。
ポリエステル樹脂(D)は、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性を向上させるものであり、炭素数8〜22個の芳香族ジカルボン酸単量体単位と炭素数2〜22個のアルキレングリコールあるいはシクロアルキレングリコール単量体単位からなるアルキレンテレフタレート繰り返し単位を50重量%以上含有する芳香族ポリエステル樹脂を有するものである。
この芳香族ポリエステル樹脂には、所望により劣位量のアジビン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを構成単位として含んでもよい。
特に好ましい芳香族ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、これらの芳香族ポリエステル樹脂は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリエステル樹脂(D)を熱可塑性樹脂組成物に配合する場合、ポリエステル樹脂(D)の配合量が10重量%未満では、熱可塑性樹脂組成物の高温時の形状保持性や、耐薬品性が不十分となり、80重量%を超えると耐衝撃性が不十分となる場合がある。
グラフト重合体(A)の配合量が10重量%未満では、耐候性、耐衝撃性が不十分となり、80重量%を超えると、耐熱性、成形性が不十分となる場合がある。ビニル重合体(B)の配合量が90重量%を超えると、耐熱性や成形性が不十分となる場合がある。ポリカーボネート樹脂(C)の割合が10重量%未満では、耐熱性が不十分となり、80重量%を超えると成形性が低下し、振動溶着時の溶けしろが凹凸のある形状になり、外観が劣る場合がある。
このように熱可塑性樹脂組成物に、ポリエステル樹脂(D)を10〜90重量%配合することによって、得られる熱可塑性樹脂組成物は、耐候性、耐衝撃性、耐熱性、成形性、振動溶着性だけではなく、さらに耐薬品性にも優れたものとなる。
【0029】
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常、樹脂のブレンドに用いられるヘンシェルミキサー等の高速ミキサーや、タンブラー、ペレタイザー等の混合混練装置を使用して調製された後、通常の射出成形、押出成形等で成形され成形体となる。
この際、熱可塑性樹脂組成物には、通常使用される強化材、難撚化剤等の添加物を配合することができる。
強化材は、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維やウオラスナイト、タルク、マイカ粉、ガラス箔、チタン酸カリウム等の無機フィラー等で、上記組成物100重量部に対して0〜60重量部、好ましくは0〜50重量部配合される。強化材が60重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣る場合がある。
難燃化剤は、通常ABS樹脂や熱可塑性ポリエステル樹脂の難燃化に用いられるハロゲン化合物やアンチモン化合物等の無機系難燃化剤が使用され、ハロゲン化合物としては、デガブロムジフェニルエーテル、オクタブロムジフェニルエーテル等のハロゲン化ジフェニルエーテルやハロゲン化ポリカーボネイト等、無機系難燃化剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、水酸化アルミニウム等がその一例に挙げられる。ハロゲン化合物の配合量は、上記樹脂組成物100重量部に対して0〜35重量部、好ましくは0〜30重量部であり、アンチモン化合物の配合量は0〜25重量部、好ましくは0〜20重量部である。
さらに、この熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、染顔料などの種々の添加剤を適宜加えることもできる。
【0030】
熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体には特に制限はなく、例えば、屋内外照明、自動車や二輪車用ランプのハウジング等として使用できるが、特に、PMMA樹脂やPC樹脂との振動溶着性に優れ、振動溶着で生じる溶けしろ外観が優れたものとなるため、自動車用ランプハウジングとしての使用に適している。
本発明の自動車用ランプハウジングは、レンズと振動溶着法によって一体化され、自動車用ランプとして使用される。
レンズの材質には特に制限はないが、透明性、耐候性、耐傷つき性が優れ、本発明の熱可塑性樹脂組成物との振動溶着性が良く、振動溶着で生じる溶けしろ外観が優れた形状となることから、PMMA樹脂、PC樹脂等が使用されることが好ましい。
振動溶着法は、摩擦熱を利用した溶着方法で、接着面どうしを0.1〜0.6MPa程度で加圧しながら、振れ幅0.5〜2.0mm程度、振動数100Hz程度の振動を与え、生じた摩擦熱によって熱可塑性樹脂が溶融、接合する方法である。
レンズとランプハウジングを振動溶着する方法は通常行われている方法であり、振動溶着機によって振動が与えられ、溶着される。
本発明の自動車用ランプは、ランプハウジングが、耐候性、耐衝撃性を有し、PMMA樹脂やPC樹脂との振動溶着性に優れ、振動溶着の溶けしろが凹凸のない滑らかな形状となる熱可塑性樹脂組成物からなるので、外観、耐候性、耐衝撃性に優れた自動車用ランプを効率よく生産することができる。
【0031】
【実施例】
以下、具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるものではないことは言うまでもない。また、具体例での「部」および「%」は各々「重量部」および「重量%」を意味する。
[製造例1]
以下のようにしてゴム状グラフト共重合体(A1)を製造した。
1)ゴム状共重合体(I−1)の製造
以下の物質を401オートクレーブに仕込み、50℃で重合した。ただし、以下の物質のうち1,3−ブタジエン以外については、その中に含まれる酸素を窒素で置換し、実質上重合反応を阻害しない状態として使用した。
重合反応は9時間でほぼ完了し、転化率97%、粒子径0.07μmのゴムラテックスが得られた。
ブチルアクリレート 50部
1.3−ブタジエン 50部
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド 0.2部
牛脂脂肪酸カリウム 1部
N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム 0.5部
ピロリン酸ナトリウム 0.5部
硫酸第一鉄 0.5部
デキストローズ 0.3部
脱イオン水 200部
2)肥大化剤である酸基含有共重合体ラテックスの製造
以下の組成の混合物をガラス製丸底フラスコ中、70℃で1.5時間重合させた。
n−ブチルアクリレート 2.5部
オレイン酸カリウム 0.25部
ジオクチルスルコハク酸ナトリウム 0.1部
クメンヒドロパーオキシド 0.01部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.03部
脱イオン水 20部
その後、70℃で保持したままで以下の組成の混合物を1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌し、転化率98%の酸基含有共重合体ラテックスを得た。
n―ブチルアクリレート 6部
メタクリル酸 1.5部
クメンヒドロパーオキシド 0.03部
【0032】
3)ゴム状共重合体(I−1)の肥大化
上記1)で製造したポリマー固型分100部を含むゴム状共重合体(I−1)ラテックスの入ったオートクレーブを攪拌しながら、10%硫酸ナトリウム水溶液15部を、オートクレーブの内温を50℃で保持しながら加えてさらに15分間保持した後、上記2)で製造した酸基含有共重合体ラテックス1.52部を加えて30分間保持し、ゴム状共重合体(I−1)を肥大化した。
得られたゴム状共重合体(I−1)の平均粒子径は0.148μmであった。4)ゴム状グラフト共重合体(A1−1)ラテックスの製造
上記3)で肥大化されたゴム状共重合体(I−1)のポリマー固型分100部を含むラテックスに、以下の物質を加えた。
脱イオン水 90部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム 0.5部
その後、内温を75℃まで昇温し、下記の物質を90分間にわたり連続的に添加し重合した。なお、反応は、上記3)で使用したオートクレーブで行った。
メタクリル酸メチル 38.4部
アクリル酸エチル 1.6部
ノルマルオクチルメルカプタン 0.0675部
クメンヒドロパーオキシド 0.16部
添加終了後、さらに60分間重合を継続した。メタクリル酸メチルの転化率はほぼ100%であった。
こうして得られたゴム状グラフト共重合体(A1)ラテックスに、以下の原料を加えた。
スチレン化フェノール 0.58部
ジラウリルチオプロピオネート 0.44部
トリフェニルフォスファイト 0.58部
次いで50℃の温度条件下、0.25%の硫酸水を使用し、ラテックス/硫酸水=1/2(重量比)で凝集させて、さらに85℃で5分間保持した。
得られたスラリー状ポリマーを洗浄、脱水して、65℃で36時間乾燥し白色のゴム状グラフト共重合体(A1)粉末を得た。
【0033】
[製造例2]
以下のようにしてコアがブタジエンゴム、シェルが架橋アクリルゴムで、多層構造ゴムであるグラフト共重合体(A2)を製造した。
固形分含量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジェンラテックス50部(固形分)にアクリル酸n−ブチル単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス0.9部(固形分)を攪拌しながら添加し、さらに30分間攪拌を続け、平均粒子径0.28μmの肥大化したジエン系ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化したジエン系ゴムラテックス50部(固形分)を反応釜に移し、以下の物質を加えた後窒素置換を行い、70℃(内温)に昇温した。
不均化ロジン酸カリウム 0.7部
イオン交換水 150部
これに、7部のイオン交換水に0.8部の過硫酸カリウムを溶解した溶液を加え、下記の窒素置換された単量体混合物を2時間にわたって連続的に滴下した。
アクリル酸n−ブチル 50部
メタクリル酸アリル 0.22部
ジメタクリル酸エチレングリコール 0.11部
滴下終了と同時に内温の上昇はなくなるが、更に80℃に昇温し1時間反応を続けると、重合率は、98.8%に達し、肥大化したジエン系ゴムを内部に含む多層構造アクリル系ゴムを得た。
この多層構造アクリル系ゴムの膨潤度(メチルエチルケトン中、30℃24時間浸漬静置後の膨潤重量と絶乾重量の比)は6.4、ゲル含有量は93.0%、粒子径は0.28μmであった。
得られた多層構造アクリル系ゴムラテックス100部(固形分)を反応釜に取り、イオン交換水280部を加え希釈し、70℃に昇温した。
一方、別途アクリロニトリル/スチレン=29/71(重量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルパーオキサイド0.7部を溶解し、窒素置換しした後、その単量体混合物を30部/時間の速度で、上記の多層構造アクリル系ゴムラテックスが入った反応釜に、定量ポンプで加えた。
全単量体混合物の注入終了後、系内温度を80℃に昇温し、30分攪拌を続けグラフト共重合体(A2)ラテックスを得た。重合率は99%であった。
このラテックスの一部に希硫酸を加えて凝固乾燥した粉末をメチルエチルケトン還流下で抽出を行い、抽出部のηsp/Cをジメチルホルムアミドを溶媒として25℃で測定したところ、0.67であった。
このようにして製造したグラフト共重合体(A2)ラテックスを、その3倍量の塩化アルミニウム(A1Cl3 ・6H2 O)0.15%水溶液(90℃)中に攪拌しながら投入し、凝集させた。
グラフト共重合体(A2)ラテックスの添加終了後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、このまま5分間放置した。これを冷却後、遠心脱水機により脱液、洗浄を行い乾燥し、グラフト共重合体(A2)の乾燥粉末を得た。
【0034】
[製造例3]
以下のようにしてブタジエンゴムグラフト共重合体(A3)を調製した。
固形分含量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジェンラテックス100部(固形分として)にアクリル酸n−ブチル単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス2部(固形分として)を攪拌しながら添加し、30分間攪拌を続け平均粒子径0.28μmの肥大化ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ゴムラテックスを反応容器に加え、更に蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加して攪拌しながら、昇温させて内温60℃の時点で硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜二チオン酸ナトリウム0.06部を加えた後、下記の混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却した。
アクリロニトリル 30部
スチレン 70部
クメンハイドロパーオキサイド 0.4部
tert−ドデシルメルカプタン 1部
得られたグラフト重合体ラテックスを希硫酸で凝析したのち、洗浄、濾過、乾燥してブタジエンゴムグラフト共重合体(A3)を得た。
【0035】
[製造例4]
以下のようにして架橋アクリルゴムグラフト共重合体(A4)を製造した。
反応容器に下記のような割合で原料を仕込み、窒素置換下50℃で4時間撹拌を行いながら重合を完結させ、弾性体ラテックスを得た。
アクリル酸n−ブチル 100部
メタクリル酸アリル 0.3部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.0部
脱イオン水 300部
過硫酸カリウム 0.3部
リン酸二ナトリウム12水塩 0.5部
リン酸水素ナトリウム2水塩 0.3部
この弾性ラテックス100部(固形分)を反応釜に取り、イオン交換水280部を加え希釈し、70℃に昇温した。
一方、別途アクリロニトリル/スチレン=29/71(重量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルパーオキサイド0.7部を溶解し、窒素置換しした後、その単量体混合物を30部/時間の速度で、上記の弾性ラテックスが入った反応釜に、定量ポンプで加えた。
全モノマーの注入終了後、系内温度を80℃に昇温し30分攪拌を続け架橋アクリルゴムグラフト重合体(A4)ラテックスを得た。重合率は99%であった。
【0036】
[製造例5]
アクリロニトリル単位29%、スチレン単位71%からなる芳香族ビニル重合体(B1)を懸濁重合法によって得た。
この芳香族ビニル重合体(B1)の25℃での還元粘度(ηsp/C)は0.62であった(0.2%ジメチルホルムアミド溶液での測定値)。
【0037】
[製造例6]
アクリロニトリル単位22%、スチレン単位55%、N−フェニルマレイミド単位23%からなる芳香族ビニル重合体(B2)をメチルエチルケトン溶液中で重合して得た。
この芳香族ビニル重合体(B2)の25℃での還元粘度(ηsp/C)は0.52であった(0.2%ジメチルホルムアミド溶液での測定値)。
【0038】
[実施例1〜14および比較例1〜12]
上記の製造例1〜6で製造した重合体、PC樹脂、ポリエステル樹脂を表1〜3に示す組成で配合し、ヘンシェルミキサーにて5分間混合し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物をペレタイザーにてペレット化し、さらにこのペレットを射出成形機に投入して厚さ3mmのシート(25×120mm)に射出成形し、試験用シートを得た。
なお、PC樹脂には、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを構成単位とする、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の「ノバレックス7025A」(商品名)を使用し、ポリエステル樹脂には、三菱レイヨン(株)製の「タフペットPBTN1100」(商品名、ポリブチレンテレフタレート樹脂)を使用した。
得られた試験用シートについて、振動溶着性、耐候性について評価した。評価結果を表1〜表3示す。なお、評価方法を以下に示す。
【0039】
1)振動用着性の評価
レンズ用材料として、三菱レイヨン(株)製の「アクリペット VH4」(商品名、アクリル樹脂)を射出成形にて3mmのリブ付きシート(25×120mm、リブ:10×100mm)に成形したものを使用した。
振動溶着は、日本エマソン社製のBRANSON VIBRATION WELDER 2406を使用し、振幅1.0mm、圧力0.3MPa、沈込み量1.5mmの条件で行った。
振動溶着時に溶融、接合して生じる溶けしろの外観について、5段階で目視にて評価し、表1〜3中、外観の優れている順に、○○○、○○、○、△、×の記号で示す。
最も外観が優れているものは○○○で、溶けしろがシートのリブと滑らかに連続し、かつ、凹凸のない均一形状に形成され外観が極めて良好なものである。
一方、最も外観が劣っているものは×で、溶けしろがシートのリブと全く連続しない広がった形状で、凹凸のある不均一な形状に形成され外観が極めて劣悪なものである。
【0040】
2)耐候性試験は、下記の条件にて加速暴露試験を実施し、光沢保持率(%)を求めて評価した。
加速暴露試験は、試験機として、スガ試験機 サンシャインウエザーメーターWEL−SON−DCを使用し、ブラックパネル温度63℃、降雨条件12分/時間、暴露時間500時間の条件で行った。
試験前後の試験片の光沢(ASTM D523:60°)を測定し、光沢保持率(%)を求めた。ここで光沢保持率(%)は、(加速暴露試験後の光沢)×100/(加速暴露試験前の光沢)である。
【0041】
【表1】
Figure 0004102512
【0042】
表1から、ゴム状グラフト共重合体(A1)を含むグラフト共重合体10〜100重量%と、芳香族ビニル重合体を有するビニル重合体(B1、B2)0〜90重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を使用して得られた試験用シートは、振動溶着性および耐候性(光沢保持率)が優れていた。
【0043】
【表2】
Figure 0004102512
【0044】
表2から、ゴム状グラフト共重合体(A1)を含むグラフト共重合体10〜80重量%と、ビニル重合体(B1、B2)0〜90重量%と、PC樹脂10〜80重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を使用して得られた試験用シートは、振動溶着性および耐候性(光沢保持率)が優れていた。
【0045】
【表3】
Figure 0004102512
【0046】
表3から、ゴム状グラフト共重合体(A1)を含むグラフト共重合体10〜80重量%と、PC樹脂10〜80重量%と、ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物を使用して得られた試験用シートは、振動溶着性および耐候性(光沢保持率)が優れていた。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自動車用ランプハウジングの成形に用いる熱可塑性樹脂組成物は、特定のグラフト共重合体(A)を含むので、耐候性、耐衝撃性に優れ、かつ振動溶着時に溶融、接合して生じる溶けしろの外観が優れる。また、特定のビニル重合体(B)0〜90重量%をさらに配合することによって、熱可塑性樹脂組成物に成形加工性を付与できる。グラフト共重合体(A)を10〜80重量%とし、さらに特定のPC樹脂(C)を20〜90重量%配合することによって、熱可塑性樹脂組成物は耐熱性にも優れたものとなる。また、グラフト共重合体(A)を10〜80重量%とし、特定のPC樹脂(C)10〜80重量%と、さらに特定のポリエステル樹脂(D)10〜80重量%を配合することによって、熱可塑性樹脂組成物は耐薬品性にも優れたものとなる。本発明の自動車用ランプハウジングは、上記の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形されるので、耐候性、耐衝撃性、PMMA樹脂やPC樹脂等との振動溶着性に優れ、溶着で生じた溶けしろが均一な形状で優れた外観を有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動車用ランプのハウジングとレンズとを振動溶着する方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
10…自動車用ランプ、11…レンズ、12…ランプハウジング

Claims (4)

  1. アクリル酸アルキルエステル単量体単位と1,3−ブタジエン単量体単位とを含有する単量体混合物を重合して得られるゴム状共重合体(I)100重量部に対して、メタクリル酸メチル量体単位50〜100重量%と、アクリル酸エチル単量体単位0〜50重量%とからなる単量体混合物(II)10〜1000重量部を重合して得られたゴム状グラフト共重合体を有するグラフト共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された自動車用ランプハウジングであって、
    レンズと振動溶着法によって一体化された自動車用ランプハウジング
  2. 上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)10〜100重量%と、ビニル重合体(B)0〜90重量%からなり、ビニル重合体(B)が芳香族ビニル単量体単位を含有する芳香族ビニル重合体を有することを特徴とする請求項1に記載の自動車用ランプハウジング
  3. 上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)が10〜80重量%であり、さらにポリカーボネート樹脂(C)を20〜90重量%含むことを特徴とする請求項2に記載の自動車用ランプハウジング
  4. 上記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)が10〜80重量%であり、さらにポリカーボネート樹脂(C)10〜80重量%と、ポリエステル樹脂(D)10〜80重量%を含み、ポリエステル樹脂(D)が下記の芳香族ポリエステル樹脂を有することを特徴とする請求項2に記載の自動車用ランプハウジング
    芳香族ポリエステル樹脂
    炭素数8〜22個の芳香族ジカルボン酸単量体単位と、炭素数2〜22個のアルキレングリコールまたはシクロアルキレングリコール単量体単位とからなるアルキレンテレフタレート繰り返し単位を50重量%以上含有する芳香族ポリエステル樹脂。
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