JP2010116427A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
透明性、耐薬品性および流動性が均衡に優れており、かつ色調安定性に優れたゴム含有スチレン系熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
芳香族ビニル系単量体(a1)10〜30重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)50〜85重量%、およびシアン化ビニル系単量体(a3)8〜15重量%を含有するビニル系単量体混合物(a)を重合してなるビニル系共重合体(A)中に、ゴム質重合体(b)の存在下に1種以上のビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)が分散してなる熱可塑性樹脂組成物であって、この熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、前記アセトン可溶分に対し、0.001重量%以上10重量%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明性を有する熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、透明性、耐薬品性、流動性および色調安定性が均衡して優れたゴム含有スチレン系熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
ジエン系ゴム等のゴム質重合体に、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、およびアクリロニトリルやメタアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物を共重合したグラフト共重合体を含有してなる透明ABS樹脂は、透明性、耐衝撃性および剛性等の機械的強度バランス、成形加工性およびコストパフォーマンス等に優れていることから、家電製品、通信関連機器および一般雑貨等の用途分野で幅広く利用されている。しかしながら、このような透明ABS樹脂は、有機溶媒等の薬品類や洗剤等の溶剤に対する耐性が低いため、使用される用途が制限されている。
これら透明ABS樹脂の耐薬品性を改善するために、シアン化ビニル化合物の含有割合を高めることが一般に知られており、いくつかのいわゆる高ニトリル含有熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
例えば、耐薬品性の向上という点では、グラフト共重合体のグラフト率を規定した樹脂組成物(特許文献1および2参照。)や、マトリックス成分にメタクリル酸エステルを必須成分とした高ニトリル樹脂組成物(特許文献3参照。)が提案されている。
また、透明性、耐薬品性および色調安定性が向上するという点では、単量体の重量%を規定した高ニトリル含有熱可塑性樹脂組成物(特許文献4参照。)が提案されている。
しかしながら、上記提案の耐薬品性のある高ニトリル含有熱可塑性樹脂組成物は、流動性を上げにくいという問題があった。
一般のABS樹脂の流動性を改善するための手段としては、滑剤添加量を増やすことや、マトリックス成分の分子量を下げることが一般的に知られている。しかしながら、滑剤添加量を増やすと、ブリード量が増加し成形加工時の離型性に問題が生じる。また、マトリックス成分の分子量を下げると衝撃性が低下することが知られており、また、ゴム成分の添加量を増やすことにより衝撃性を補う方法もあるが得策ではない。
したがって、透明性、耐薬品性および流動性が均衡に優れており、かつ色調安定性に優れた高ニトリル含有熱可塑性樹脂組成物は、これまで得られていなかった。
特開平4−258619号公報 特開平5−78428号公報 特開平4−126756号公報 特開2002−179873号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、透明性、耐薬品性および流動性が均衡に優れており、かつ色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系共重合体中に、グラフト重合体が分散した熱可塑性樹脂組成物が特定の条件を満たす場合に、透明性、耐薬品性および流動性に優れ、かつ色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ビニル系単量体(a1)10〜30重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)50〜85重量%、およびシアン化ビニル系単量体(a3)8〜15重量%を含有するビニル系単量体混合物(a)を重合してなるビニル系共重合体(A)中に、ゴム質重合体(b)の存在下に1種以上のビニル系単量体混合物またはビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)が分散してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、該アセトン可溶分に対し、0.001重量%以上10重量%以下である熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂組成物のヘイズ値が30%以下であること、前記のグラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体成分と前記のアセトン可溶分との屈折率の差が0.03以内であること、前記のアセトン可溶分の酸化が0.01〜1mgKOH/gであること、前記のビニル系共重合体(A)が懸濁重合法により製造されたものであること、前記のビニル系共重合体(A)が乳化重合法により製造されたものであること、前記のビニル系共重合体(A)が連続塊状重合法により製造されたものであること、ビニル系単量体混合物(a)を連続塊状重合または連続溶液重合することによりビニル系共重合体(A)を製造し、続いて溶融状態のビニル系共重合体(A)に、グラフト共重合体(B)を添加し、溶融混合する方法により連続的に熱可塑性樹脂生成物を製造することが、いずれも好ましい態様として挙げられ、これらの態様を満たす場合にはさらに優れた効果の取得を期待することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性、耐薬品性、流動性および色調安定性に優れたものであり、機械的強度バランス、成形加工性およびコストパフォーマンスなどにも優れていることから、家電製品、通信関連機器および一般雑貨などの用途分野で幅広く利用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、基本組成として、芳香族ビニル系単量体(a1)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含有するビニル系単量体混合物(a)を重合してなるビニル系共重合体(A)中に、ゴム質重合体(b)の存在下に1種以上のビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)が分散してなる熱可塑性樹脂組成物である。
本発明で用いられる芳香族ビニル系単量体(a1)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
芳香族ビニル系単量体(a1)は、10〜30重量%の範囲で使用される必要がある。使用割合が10重量%未満では、Izod衝撃強度および剛性などの機械特性が著しく低下し、使用割合が30重量%を超えると透明性が著しく低下する。芳香族ビニル系単量体(a1)の割合は、好ましくは20〜25重量%である。
本発明で用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)は、50〜85重量%の範囲で使用される必要がある。使用割合が50重量%未満では透明性を得ることが困難となり、使用割合が85重量%を超えると耐薬品性が著しく低下する。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の割合は、好ましくは60〜70重量%である。
本発明で用いられるシアン化ビニル系単量体(a3)の具体例としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
シアン化ビニル系単量体(a3)は、8〜15重量%の範囲で使用される必要がある。使用割合が8重量%未満では耐薬品性が著しく低下し、使用割合が15重量%を超えると色調安定性が得られない。同様に、使用割合が8重量%より小さく、かつ15重量%より大きいと流動性は著しく低下する。シアン化ビニル系単量体(a3)の使用割合は、好ましくは8〜12重量%であり、より好ましくは8〜10重量%であり、さらに好ましくは8〜9重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂生成物においては、透明性、耐衝撃性、剛性および色調安定性の観点から、この熱可塑性樹脂生成物中に含まれるアセトン可溶分の酸価は0.01〜1mgKOH/gであることが好ましい。
さらに、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の加水分等による酸成分を含有した際の熱可塑性樹脂生成物の透明性低下を抑制するために、(φST/φMMA)の組成分布において、その重量比(φST/φMMA)の平均値の0.75〜1.2倍の範囲内に、アセトン可溶分の80重量%以上の部分が含まれることが好ましい。また、平均値の0.75から1.2倍の範囲内に、アセトン可溶分の90重量%以上の部分が含まれることがより好ましく、95重量%以上の部分が含まれることが最も好ましい態様である。
アセトン共可溶分の単量体組成が、芳香族ビニル単量体(a1)10〜30重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)50〜85重量%、およびシアン化ビニル系単量体(a3)8〜15重量%であると、樹脂生成物の透明性、色調、耐衝撃性などをよりバランス良く優れたものとすることができる。
上記のアセトン可溶分の組成は、FT−IRチャートに現れる下記ピークにより定量して求めることができる。
・芳香族ビニル系単量体(a1):ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク、
・不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2):エステルのカルボニル基のC=O伸縮振動に帰属される1730cm−1のピーク、
・シアン化ビニル系単量体(a3):−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク。
アセトン可溶分は、主として、ビニル系共重合体(A)に由来する樹脂成分からなるが、グラフト共重合体(B)中においてビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)から重合された共重合体部分に由来する樹脂成分も一部含まれる。従って、アセトン可溶分の組成を上記した所定範囲内に制御するためには、その主成分をなすビニル系共重合体(A)の組成を上記した所定範囲内に制御することが有効であり、さらに、ビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)から重合された共重合体部分の組成も上記した所定範囲内に制御することが好ましい。
本発明で用いられるビニル系共重合体(A)の還元粘度(ηsp/c)は、耐衝撃性および成形性のバランスの観点から、0.1〜1.0dl/g、特に0.2〜0.7dl/gの範囲にあることが好ましい。
また、アセトン可溶分中における(φST/φMMA)の組成分布条件、即ち、アセトン可溶分を構成する芳香族ビニル系単量体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)との重量比、その重量比(φST/φMMA)の平均値の0.75〜1.2倍の範囲内に、アセトン可溶分の80重量%以上の部分が含まれることは、アセトン可溶分の組成分布が狭いことを意味するものであり、この組成分布条件は、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性を一層高めるものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、そのマトリックス樹脂中に共重合された微量の酸成分が存在するとより良好な物性を与える。即ち、前述のとおり、耐衝撃性、剛性および色調の観点から、熱可塑性樹脂組成部中におけるアセトン可溶分の酸価が0.01〜1mgKOH/gであることが好ましい。色調と物性バランスの点から、酸価はより好ましくは0.012〜0.5mgKOH/gであり、特に好ましくは0.015〜0.1mgKOH/gである。
本発明において、上記の酸価を上記範囲内に制御する方法としては、得られる熱可塑性樹脂組成物の色調の悪化を最小限に抑えるという点から、ビニル系共重合体(A)の原料であるビニル系単量体混合物(a)および/またはゴム質含有グラフト共重合体(b)の原料であるビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)が、不飽和カルボン酸系単量体(不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を除く)(a4)等の酸性単量体を実質的に含有せず、また、工程中において不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を加水分解させることにより、酸価を所定範囲内に制御することが好ましい。なかでも、ビニル系単量体混合物(a)およびビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)が、どちらも不飽和カルボン酸系単量体(不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を除く)(a4)等の酸性単量体を実質的に含有しないことが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の屈折率については、熱可塑性樹脂組成物の透明性の点から、屈折率が実質的にゴム質重合体(b)と同じかまたは僅差であることが好ましい。具体的な範囲としては、ゴム質重合体(b)とビニル系共重合体(A)の屈折率の差、換言すると、グラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体(b)成分とアセトン可溶分との屈折率の差を0.03以下、さらには0.01以下に抑えることが好ましい。より好ましくは、屈折率の差がないことが好ましい。
また、前述のとおり、ビニル系共重合体(A)中における芳香族ビニル系単量体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)との重量比(φST/φMMA)の組成分布において、その重量比(φST/φMMA)の平均値の0.75〜1.2倍の範囲内に、ビニル系共重合体(A)の80重量%以上の部分が含まれることが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合は、アセトン可溶分に対し、0.001重量%以上10重量%以下である。アクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスとは、下記の(式1)に表される、アセトン可溶分中に含有される共重合体中のセグメントであり、かかるセグメントを有する共重合体が高温にさらされる状態では、下記の(式2)に示す分子内環化反応が進むため、着色の原因となる。
Figure 2010116427
アクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、上記アセトン可溶分に対し10重量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融時の色調安定性が悪くなる。上記3連シーケンスの割合は、色調安定性の点から、好ましくは8重量%未満であり、さらに好ましくは5重量%以下である。
このようなアセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が10重量%以下に制御された熱可塑性樹脂組成物は、例えば上記のようにアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を10重量%以下に制御したビニル系共重合体(A)を用いることにより達成される。
ビニル系共重合体(A)の重合方法としては、透明性と生産性の点から、懸濁重合法または乳化重合法がそれぞれ好ましく選択される。次に、その製造方法の一例について述べる。
懸濁重合または乳化重合においては、ビニル系単量体混合物(a)の分散媒として適当な非溶媒を用いることができるが、良好な重合熱の除熱効率と重合後の処理の容易さから水が好ましく用いられる。
懸濁重合に用られる懸濁安定剤には、粘土、硫酸バリウムおよび水酸化マグネシウムなどの無機系懸濁安定剤や、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミドおよびメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体などの有機系懸濁安定剤などが挙げられ、なかでも色調安定性の面で、有機系懸濁安定剤が好ましく使用される。これらの懸濁安定剤は、1種または2種以上を併用して使用される。
乳化重合に用られる乳化剤には、各種の界面活性剤が使用できるが、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型およびスルホン酸塩型などのアニオン系界面活性剤が特に好ましく使用される。このような乳化剤の具体例としては、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリル酸塩、ミスチリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸塩、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、その他高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニールエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
ここでいう塩とは、アルカリ金属塩やアンモニウム塩などであり、アルカリ金属塩の具体例としてはカリウム塩、ナトリウム塩およびリチウム塩などが挙げられる。これらの乳化剤は、1種または2種以上を併用して使用される。
重合に使用される開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが用いられる。過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでもクメンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサンが特に好ましく用いられる。
また、アゾ系化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、および2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。これらの開始剤を使用する場合、1種または2種以上を併用して使用される。なかでもアゾビスイソブチロニトリルが特に好ましく用いられる。
懸濁重合または乳化重合を行うに際しては、得られるビニル系共重合体(A)の重合度調節を目的として、メルカプタンやテルペンなどの連鎖移動剤を使用することも可能である。その具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、およびテルピノレンなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤を使用する場合は、1種または2種以上を併用して使用される。なかでもn−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性および色調安定性の点から、また、熱可塑性樹脂組成物の特性を所定値に制御するために、本発明で用いられるビニル系共重合体(A)の重合方法には、連続塊状重合または連続溶液重合が用いられる。
本発明で用いられるビニル系単量体混合物(a)を共重合させてビニル系共重合体(A)を製造する工程において、連続塊状重合または連続溶液重合を行う方法としては任意の方法が採用可能であり、例えば、重合槽で重合した後、脱モノマー(脱溶媒・脱揮)する方法をとることができる。
重合槽としては、各種の撹拌翼、例えばパドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼およびダブルヘリカル翼などを有する混合タイプの重合槽、または各種の塔式の反応器などを使用することができる。また、多管反応器、ニーダー式反応器および二軸押出機などを重合反応器として使用することもできる(例えば、高分子製造プロセスのアセスメント10「耐衝撃性ポリスチレンのアセスメント」高分子学会、1989年1月26日発行などを参照。)。
これら重合槽類(反応器)は、1基(槽)または2基(槽)以上で使用され、また必要に応じて2種類以上の反応器を組み合わせても使用される。なかでも、得られる熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の組成分布を狭くするという点、またアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンス割合を低く抑えるという点から、2基(槽)以下であることが好ましく、特に1槽式の完全混合型重合槽が好ましく選択される。
これらの重合槽または反応器で重合して得られた反応混合物は、通常、次に脱モノマー工程に供され、モノマーおよび溶媒その他の揮発成分が除去される。脱モノマーの方法としては、ベントを有する一軸または二軸の押出機で加熱下、常圧または減圧下でベント穴より揮発成分を除去する方法、遠心型などのプレートフィン型加熱器をドラムに内臓する蒸発器で揮発成分を除去する方法、遠心型などの薄膜蒸発器で揮発成分を除去する方法、および多管式熱交換器を用いて余熱、発泡して真空槽へフラッシュして揮発成分を除去する方法などがある。本発明では、これらのいずれの方法も使用できるが、特にベントを有する一軸または二軸の押出機が好ましく用いられる。
図1は、連続塊状重合し樹脂混合する方法により本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するための装置の一実施態様を示す縦断面概略図である。
図1の装置において、順に、ビニル系単量体(a)を連続塊状重合してビニル系共重合体(A)を製造するための攪拌機を備えた反応槽(1)、重合して得られたビニル系共重合体(A)を所定温度に昇温させるための予熱機(2)、および、脱モノマーのためのベント口(31)を有する二軸押出機型脱モノマー機(3)が連結されており、さらに、二軸押出機型脱モノマー機(3)に対してタンデムに、グラフト共重合体(B)添加用の二軸押出機型等のフィーダー(5)が接続されている。
図1においては、反応槽(1)から連続的に供給される反応生成物は、予熱機(2)で昇温され、次いで、二軸押出機型脱モノマー機(3)に供給され、150〜280℃程度の温度で、常圧または減圧下で、ベント口(31)から単量体などの揮発成分が系外に除去される。この揮発成分の除去は、未反応単量体量が所定量、例えば10重量%以下、より好ましくは5重量%以下になるまで行なわれる。
図1においては、二軸押出機型脱モノマー機(3)の途中の下流側に近い位置に、フィーダー(5)からの添加口が開口していて、例えば100〜220℃程度の所定温度のグラフト共重合体(B)が系内に添加される。このフィーダー(5)には加熱装置が配設されていて、添加されるグラフト共重合体(B)を半溶融もしくは溶融状態の所定温度に加熱しておくことが、混合状態を良くするために好ましい態様である。例えば、スクリュー、シリンダーおよびスクリュー駆動部からなり、シリンダーは加熱・冷却機能を有する装置構造をとることが好ましい。このフィーダーとして、加熱装置を有する一軸又は二軸の押出機型のフィーダーを使用することができる。
このグラフト共重合体(B)の供給口が接続された位置においては、その後の未反応単量体を除去する操作中におけるゴム成分の熱劣化を防止するために、未反応単量体の含有量が10重量%以下、より好ましくは5重量%以下まで低減していることが好ましい。
二軸押出機型脱モノマー機(3)の溶融混練域(4)内で、ビニル系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)とが溶融混合された後に、吐出口(6)から熱可塑性樹脂組成物が系外に吐出される。
さらに上記の溶融混練域(4)に水注入口(41)を設け、所定量の水を添加することが好ましく、注入された水および残存モノマーはさらに下流に設けられたベント口(42)から脱揮される。
本発明においては、ビニル系共重合体(A)の連続塊状重合または溶液重合では、開始剤を使用せずに熱重合することも、開始剤を用いて開始剤重合することも、さらに熱重合と開始剤重合を併用することも可能である。開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが用いられる。
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでも、クメンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサンが特に好ましく用いられる。
アゾ系化合物の具体例として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、および2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。これらの開始剤を使用する場合、1種または2種以上併用で使用される。なかでも、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリルが特に好ましく用いられる。
ビニル系共重合体(A)の重合度調節を目的として、メルカプタンやテルペンなどの連鎖移動剤を使用することも可能である。その具体例として、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、およびテルピノレンなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤を使用する場合、1種または2種以上併用で使用される。なかでも、特にn−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
ビニル系共重合体(A)を連続溶液重合法により製造する場合には、溶媒の量としては、生産性の点から、好ましくは重合溶液に対して30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の溶媒量が使用される。用いられる溶媒としては、重合安定性の点からエチルベンゼンまたはメチルエチルケトンが好ましく、エチルベンゼンが特に好ましく用いられる。
本発明で用いられるビニル系共重合体(A)の還元粘度(ηsp/ c)は、耐衝撃性および成形性のバランスの点から、0.1〜1.0dl/g、特に0.2〜0.7dl/gの範囲にあることが好ましい。
本発明に用いられるビニル系共重合体(A)を重合するに際しては、シアン化ビニル単量体(a3)の50重量%以上を重合転化率が30%に達する以前に重合系内に添加する方法を用いることが好ましい。この方法により、重合末期の残モノマー中のアクリロニトリル含有量を低く保つことができるため、熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を低下させることができ、得られる熱可塑性樹脂の色調がさらに優れることになる。また、シアン化ビニル単量体(a3)の70重量%以上を重合転化率が30%に達する以前に重合系内に添加することが、より好ましい態様である。
また、芳香族ビニル系単量体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)については、その50重量%以上を重合転化率が10%に達した後に添加することが好ましく、より好ましくは60重量%以上を重合転化率が10%に達した後に添加する。重合転化率が10%に達した後に、50重量%以上の芳香族ビニル系単量体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を添加することによって、重合後期での系内のシアン化ビニル単量体濃度を低く抑えることができ、アクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を低くすることができる。
ここでいう重合転化率とは、均一に混合した系内から未反応モノマーを測定し、仕込みモノマー量から未反応モノマー量を引いて転化しているポリマー量を算出し、全モノマー量に対して転化しているポリマー量の比率を計算したものである。
本発明におけるグラフト共重合体(B)に用いられるゴム質重合体(b)の具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、およびポリ(エチレン−アクリル酸メチル)などが挙げられる。これらのゴム質重合体(b)は、1種または2種以上の混合物で使用される。なかでも、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、およびエチレン−プロピレンラバーの使用が、耐衝撃性の点で好ましい。
また、グラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体(b)の含有量は、好ましくは20〜80重量部であり、特に好ましくは35重量部〜60重量部の範囲である。含有量が20重量部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下し、含有量が80重量部を超えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなる傾向がある。
上記のゴム質重合体(b)の重量平均粒子径は、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、成形加工性、流動性および外観の点から、好ましくは0.1〜1.5μmであり、より好ましくは0.15〜1.2μmの範囲である。
グラフト共重合体(B)のグラフト成分(d)の重合原料となるビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)の組成は、単独成分からなる組成でもよいが、得られる熱可塑性樹脂組成物の色調および耐衝撃性と剛性との物性バランスの点から、芳香族ビニル系単量体(a1)10〜30重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)50〜85重量%、およびシアン化ビニル系単量体(a3)8〜15重量%を含有してなるビニル系単量体混合物であることが好ましい。このビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)を構成する単量体組成は、ビニル系共重合体(A)を構成するビニル系単量体混合物(a)と同一であっても異なっていてもよい。
また、このビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)にも、スチレン系共重合体の重合原料のビニル系単量体混合物(a)の場合と同様、熱可塑性樹脂組成物におけるアセトン可溶分の酸価を所望水準とするため、また、色調を向上させるために、不飽和カルボン酸系単量体(但し不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を除く)(a4)等の酸性単量体を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう、「実質的に含有しない」とは、スチレン系共重合体の重合原料のビニル系単量体混合物(a)の場合と同様である。
本発明では、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性の点から、グラフト共重合体(B)のグラフト成分(d)の屈折率が、ゴム質重合体(b)の屈折率と実質的に同じか、または僅差となるようにビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)の組成を調整することが好ましい。具体的な範囲としては、グラフト成分(d)とゴム質重合体(b)の屈折率の差を0.03以下に抑えることが好ましく、より好ましくは0.01以下に抑えることである。
グラフト共重合体(B)は1種または2種以上を用いることができるが、2種以上のブレンド物を用いる場合は、得られる熱可塑性樹脂の透明性の点から、各成分に含有されるゴム質重合体(b)およびグラフト成分(d)の屈折率が実質的に合致するように調製されることが好ましい。
本発明におけるグラフト共重合体(B)を構成するグラフト成分(d)の還元粘度(ηsp/ c)は、耐衝撃性および成形性のバランスの点から、0.05〜1.2dl/gであることが好ましく、特に好ましくは0.1〜0.7dl/gの範囲である。
グラフト共重合体(B)のグラフト率は、耐衝撃性の点からは好ましくは5〜150重量%、より好ましくは10〜100重量%のものが使用される。
グラフト共重合体(B)製造時のグラフト重合の方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法および連続溶液重合法等の任意の方法を用いることができ、好ましくは乳化重合法または塊状重合法が用いられる。なかでも、過度の熱履歴によるゴム成分の劣化および着色を抑制するため、また、ビニル系共重合体(A)との溶融混練工程における不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の加水分解を制御するために、グラフト共重合体(B)中の乳化剤含有量、水分量を調整しやすいという点から、乳化重合法が最も好ましく用いられる。
通常の乳化重合は、ゴム状重合体ラテックスの存在下に単量体混合物を乳化グラフト重合する。この乳化グラフト重合に用いられる乳化剤には、各種の界面活性剤が使用できるが、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型およびスルホン酸塩型などのアニオン系界面活性剤が特に好ましく使用される。
このような乳化剤の具体例としては、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミスチリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸塩、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、その他高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニールエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。ここでいう塩とは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などであり、アルカリ金属塩の具体例としてはカリウム塩、ナトリウム塩やリチウム塩などが挙げられる。なかでも、加水分解の制御のためには、パルチミン酸、ステアリン酸およびオレイン酸のカリウム塩やナトリウム塩が好ましく用いられる。これらの乳化剤は、1種または2種以上を併用して使用される。
また、これら乳化グラフト重合で使用可能な開始剤および連鎖移動剤としては、前記のビニル系共重合体(A)の製造で挙げた開始剤および連鎖移動剤が用いられ、開始剤はレドックス系でも使用される。
乳化グラフト重合で製造されたグラフト共重合体(B)は、次に凝固剤を添加してラテックス分を凝固させた後、グラフト共重合体(B)を回収する。凝固剤としては、酸または水溶性塩が用いられる。その具体例として、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウムおよび硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。これらの凝固剤は、1種または2種以上の混合物で使用される。
ラテックス分を凝固させて得られたグラフト共重合体(B)スラリーは、そのままもしくは脱水・洗浄工程を経てスラリーや含水ケークの形状で用いることも可能であるが、工程における取り扱い性の点から、脱水・洗浄・再脱水・乾燥工程を経てパウダー形状とし、このパウダー形状で溶融状態にあるビニル系共重合体(A)に添加することが好ましい。
グラフト共重合体(B)をビニル系共重合体(A)に添加する際に、グラフト共重合体(B)側の材料に含まれる乳化剤の量は、工程中における不飽和カルボン酸エステル系単量体(a2)の加水分解反応を制御し、得られる熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の酸価を本発明の所定範囲内とするために、0.1〜5重量%であることが好ましく、特に0.15〜2重量%であることが好ましい。従来は、乳化剤をポリマーの加水分解抑制のために使用できるとの知見は得られていなかったので、通常は乳化剤はできるだけ樹脂製品から除外すべきと考えられていた。しかしながら、本発明においては、熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の酸価を所定範囲内に制御するための有効な手段として、乳化剤を上記範囲内で積極的に含有させることが有効である。
グラフト共重合体(B)中の乳化剤含有率を所定範囲内に調整する方法としては、例えば、凝固後のスラリー状のグラフト共重合体(B)の脱水・洗浄の回数、洗浄水の温度・水量を制御することにより目的の乳化剤含有量に調整することが可能である。また、その他例えば、グラフト共重合体(B)に別途乳化剤を添加して調整することも可能である。
グラフト共重合体(B)をビニル系共重合体(A)に添加する際のグラフト共重合体(B)中に含有される水分の量(水分率)は、工程中における不飽和カルボン酸エステル系単量体(a2)の加水分解反応を制御し、得られる熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の酸価を本発明の所定範囲内とするために、0.1〜5重量%であることが好ましく、特に0.15〜2重量%であることが好ましい。
グラフト共重合体(B)中の水分率を所定範囲内に調整するは、例えば、グラフト共重合体(B)の脱水時間や乾燥温度・風量等を制御することにより所望の水分率値に調整することが可能である。また、その他例えば、グラフト共重合体(B)に水を別途加えて水分率を調整することも可能である。
また、グラフト共重合体(B)は、塊状重合法で製造することも可能である。グラフト共重合体(B)を塊状重合法で製造する場合は、脱モノマー機から出た溶融状態にあるグラフト共重合体(B)を直接ビニル系共重合体(A)に添加することも可能であるし、また、予め単離したグラフト共重合体(B)をビニル系共重合体(A)に添加することも可能であるが、通常、熱劣化防止および工程の連続化の点から、脱モノマー機から出た溶融状態にあるグラフト共重合体(B)を直接ビニル系共重合体(A)に添加することがより好ましい態様である。
ビニル系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)の混合方法としては、色調や耐衝撃性等の点から、連続塊状重合プロセス途中又は連続溶液重合プロセス途中の溶融状態にあるビニル系共重合体(A)に、グラフト共重合体(B)を添加した後、溶融混合する方法が好ましく選択される。またその際、溶融状態にあるビニル系共重合体(A)10〜95重量部に、グラフト共重合体(B)90〜5重量部を添加することが好ましく、より好ましくはビニル系共重合体(A)30〜95重量部にグラフト共重合体(B)70〜5重量部を添加した後に溶融混合する。
このグラフト共重合体(B)のビニル系共重合体(A)への添加は、連続的に行うことが好ましい。この際のグラフト共重合体(B)の添加は、その後の脱モノマー操作中におけるゴム成分の熱履歴による劣化を抑制し、色調や耐衝撃性などをさらに良好とするために、ビニル系共重合体(A)の連続塊状重合プロセスの脱モノマー工程の途中もしくは脱モノマー工程の後で、残存モノマー量が10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下になった時点で行うことが好ましい。
また、ビニル系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)を混合した以降の溶融混練する工程中に、水を、熱可塑性樹脂組成物に対して0.1〜5重量%の量、添加することが、工程中における不飽和カルボン酸エステル系単量体(a2)の加水分解反応をさらに容易に制御するために特に好ましい態様である。
ビニル系共重合体(A)にグラフト共重合体(B)を添加した後の混合は、溶融混合することが耐衝撃性などの物性を十分に発現させるためにも好ましい態様である。この溶融混合は、添加混合時に行ってもあるいは混合物単離後、例えば溶融成形時に行ってもよい。
ビニル系共重合体(A)にグラフト共重合体(B)を添加するには、任意の方法で添加することが可能である。通常、各種のフィーダー類、例えばベルト式フィーダー、スクリュー式フィーダー、単軸押出機および二軸押出機などを用い、ビニル系共重合体(A)にグラフト共重合体(B)が連続的に添加されるが、ビニル系共重合体(A)の脱モノマー押出機の部分に、その吐出端が接続された単軸押出機および二軸押出機が特に好ましく用いられる。これら連続添加装置は、樹脂定量供給構造を有することが好ましい。また、混合状態の向上のために、連続添加装置は加熱装置を有していて、グラフト共重合体(B)を半溶融もしくは溶融状態で添加することが好ましい。この目的のためには、加熱装置を有している押出機などを使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチルテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネートおよび各種エラストマー類を加えて、成形用樹脂としての性能を改良することができる。また、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系および含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系やアクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびサリシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系やヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類や高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類やリン酸エステル類などの可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマーおよび臭素化ポリカーボネートオリゴマーなどの含ハロゲン系化合物、リン系化合物や三酸化アンチモンなどの難燃剤・難燃助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料および染料などを添加することもできる。さらに、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維および金属繊維などの補強剤や充填剤を添加することもできる。
これら添加物の添加方法としては、ビニル系共重合体(A)にグラフト共重合体(B)と共に連続的に添加することも可能であり、またビニル系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)との混合ペレットを作成した後の後工程で添加する等の種々の方法を用いることができる。
かくしてなる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性、耐薬品性および色調安定性が均衡して優れ、かつ耐衝撃性、剛性などの機械的強度バランス、成形加工性およびコストパフォーマンスなどにも優れることから、家電製品、通信関連機器および一般雑貨などの用途分野で幅広く利用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の厚さ3mmの成形品の23℃で測定した全光線透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。また、同様の条件で測定したヘイズは20以下が好ましく、より好ましくは0以上10以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物をさらに具体的に説明するため、次に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。ここで特に断りのない限り「%」は重量%を示し、「部」は重量部を示す。熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の分析方法を下記する。
(1)ゴム質重合体の重量平均ゴム粒子径:
「Rubber Age Vol.88 p.484-490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法、による。
(2)グラフト共重合体(B)のグラフト率:
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったグラフト共重合体(B)の所定量(m;約1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有量である。
・グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
(3)グラフト共重合体(B)の乳化剤含有量:
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったグラフト共重合体(B)を約20g精秤し、10倍量の10%硫酸を加え、500mlビーカー中で30分間煮沸した。これを100メッシュの金網で濾別し、残留固形分をとり、200mlのイオン交換水中で1分間の洗浄、濾別を2回繰り返した。さらにこの固形分を2つに分けて丸底フラスコに入れ、それぞれ100mlのメタノールを加え、70℃の温度に設定した湯浴中3時間還流を行った。さらにこの溶液および固形分を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離し、上澄み液を濾過して得られた濾液を蒸発乾固し、さらに80℃の温度で4時間真空乾燥して固形分を得た。この固形分をグラフト共重合体(B)に含有されていた乳化剤として精秤し、乳化剤含有量を算出した。
(4)グラフト共重合体(B)の水分率測定:
サンプルを精秤し、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
(5)ビニル系共重合体(A)の還元粘度ηsp/c測定:
サンプルをメチルエチルケトンに溶解し、0.4g/100mlメチルエチルケトン溶液として、ウベローデ粘度計を用い、30℃の温度で還元粘度ηsp/cを測定した。
(6)グラフト成分(d)の還元粘度ηsp/c:
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったグラフト共重合体(B)の1gにアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物を80℃の温度で4時間真空乾燥したものを、上記(5)と同様の方法で、0.4g/100mlメチルエチルケトン溶液として、ウベローデ粘度計を用い、30℃で還元粘度ηsp/cを測定した。
(7)アセトン可溶分の単量体組成:
熱可塑性樹脂組成物のサンプル1gにアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物を80℃の温度で4時間真空乾燥したもの(アセトン可溶分)を用いて、220℃の温度に設定した加熱プレスで作成した厚み30±5μmのフィルムを作成した。このフィルムを試料として、FT−IRで分析して得られたチャートに現れた各ピークの面積から単量体組成を求めた。各単量体とピークとの対応関係は、次のとおりである。
・メタクリル酸メチル単量体単位:エステルのカルボニル基のC=O伸縮振動に帰属される1730cm−1のピークの倍音ピークである3460cm−1のピーク、
・メタクリル酸単量体単位:カルボン酸のカルボニル基のC=O伸縮振動に帰属される1690cm−1のピーク、
・スチレン単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク、
・アクリロニトリル単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク。
(8)アセトン可溶分のφST/φMMA分布:
上記(7)と同様にして得たアセトン可溶分のサンプル2gに、80mlのメチルエチルケトンを加え、室温で24時間静置して溶解し、そこへシクロヘキサンを少量ずつ添加し、順次、沈殿したビニル系共重合体の重量を測定し、その沈殿物を試料として、上記(7)と同様の操作でFT−IRにより、単量体組成を求めた。そして、サンプルとして用いたアセトン可溶分に対する沈殿物の累積重量分率と、芳香族ビニル系単量体(a1)含有量と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)含有量との重量比(φST/φMMA)をプロットし、アセトン可溶分全体の平均値の0.75〜1.2倍の範囲に含まれるアセトン可溶分の割合(重量%)を求めた。
(9)アセトン可溶分の酸価:
熱可塑性樹脂組成物のサンプル10gにアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。この濾液を室温で2Lのメタノール中に撹拌しながら静かに注いで再沈し、上澄み液を捨てて沈殿物を得た。これをさらに200mlアセトンに溶解し、2Lメタノールでもう一度再沈し、得られた沈殿物を80℃の温度で4時間真空乾燥し、固形分(アセトン可溶分)を得た。この操作を数サンプル行って得たアセトン可溶分の約10gを精秤して100mlの共栓付き三角フラスコにとり、これにアセトン40mlを加えて2時間撹拌し、均一に溶解させた。この溶液にフェノールフタレイン溶液を3滴加え、1/10NのKOHで中和滴定を行った。この滴定量を用いて、下記式に従って酸価を算出した。また、測定試料と同様に2時間撹拌したアセトンについても中和滴定を行い、これをブランクとして滴定量を補正した。
Figure 2010116427
(式中、Xは滴定量(ml)、X0はブランク滴定量(ml)、Wはサンプル量(g)を表す。)
(8)アセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンス割合:
上記(7)と同じ操作により得たアセトン可溶分を試料として、13C−NMRに現れるアクリロニトリル単量体単位のα−炭素のシグナルシフトが隣接モノマー種の違いで若干異なることを利用し、3連シーケンスの割合をそのシグナル積分値から定量し、全単量体単位中、3連シーケンス中央のアクリロニトリル単量体単位の重量分率として表示した。測定条件は、次のとおりである。
・装置:JEOL JNM−GSX400型
・観測周波数:100.5MHz
・溶媒:DMSO−d6
・濃度:445mg/2.5mL
・化学シフト基準:Me4 Si
・温度:110℃
・観測幅:20000Hz
・データ点:32Kflip angle:90°(21μs)
・pulsedelaytime:5.0s
・積算回数:7400または8400
・デカップリング:gated decoupling(without NOE)アクリロニトリルシーケンスの帰属(A:アクリロニトリル、S:スチレン):−A−A−A−118.6〜119.2ppm、−A−A−S−119.3〜120.2ppm、−S−A−S−120.2〜121.3ppm。
(9)ビニル系共重合体(A)中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンス割合:
上記アセトン可溶分の代わりに、ビニル系共重合体(A)を試料として用いたこと以外は、上記(8)と同じ操作により求めた。
(10)ビニル系共重合体(A)、グラフト成分(d)およびアセトン可溶分の屈折率:
測定サンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて次の条件で屈折率を測定した。
・光源:ナトリウムランプD線、
・測定温度:20℃
グラフト成分(d)のサンプルとしては、上記(6)と同様にして得た析出物の真空乾燥物を用いた。また、アセトン可溶分の測定サンプルとしては、上記(7)と同様にして得たアセトン可溶分を用いた。
(11)ゴム質重合体(b)の屈折率:
文献から、次の値を用いた。共重合ゴムに関しては、FT−IR、粘弾性測定等による同定を行い、各共重合成分から下記の式により共重合ゴムの屈折率(nD)を求めることができる。
・ポリブタジエンの屈折率:1.516nD=1.516・MB+1.594・MS+1.516・MA
(式中、nDは共重合ゴムの屈折率、MBはブタジエン含量(wt%)、MSはスチレン含量(wt%)、MAはアクリロニトリル含量(wt%)を表す。)
(12)樹脂組成物の色調(YI値):
JIS K7103に準拠して測定した。
(13)樹脂組成物の透明性(全光線透過率、ヘイズ値):
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、即時に成形した角板成形品(厚さ3mm)のヘイズ値[%]を、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して測定した。
(14)樹脂組成物のアイゾット衝撃強度:
ASTM D256(23℃,Vノッチ付き)により測定した。
(15)樹脂組成物の引張強度:
ASTM 638に準拠して測定した。
(16)耐薬品性
図2に示すように、プレス成形した試験片(127×12.7×1.5mm)12を、1/4楕円治具11に沿わして固定した後、薬剤(エタノール、イソプロパノール、または、液体洗剤“トップ”(登録商標))を成形品表面全体に塗布し(薬液塗布面13)、紙ワイパー((株)クレシア製“キムワイプ”(登録商標))をその上から敷き、さらに薬剤を十分紙ワイパーにしみこませる。薬剤の蒸発を抑えるために、ビニール袋に1/4楕円治具11と共に成形品を入れて密閉する。そのまま23℃の温度の環境下で24時間放置後、クレ−ズおよびクラック14の発生有無を確認し、クラック発生点の長軸方向長(Xmm)を測定し、下記式により臨界歪み(ε%)を算出し、その値が0.5%未満のものを×、0.5%〜1.0%のものを△、1.0%〜2.0%のものを○、2.0%を超えるものを◎と評価した。◎と○と△を合格とし、×を不合格とした。
Figure 2010116427
但し、上記式および図2における符号は次のとおりである。
ε:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(mm)[127mm]
b:治具の短軸(mm)[38mm]
t:試験片の厚み(mm)[1.5mm]
X:クラック発生点の長軸方向長(mm)
[参考例1]ビニル系共重合体(A)の製造
[A−1]:
20リットルのオートクレーブに、0.05部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165部の純水に溶解した溶液を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、アクリロニトリル4部、スチレン24部、メタクリル酸メチル72部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部およびt−ドデシルメルカプタン0.4部の混合溶液を反応系を撹拌しながら添加し、60℃の温度で共重合反応を開始し、30分かけて70℃の温度まで昇温した。全モノマーの添加終了後120分かけて100℃の温度に昇温した。到達後15分間100℃の温度でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状のビニル系共重合体を得た。得られたビニル系共重合体[A−1]の還元粘度は、0.33dl/gであった。
[A−2a]:
上記[A−1]の製造条件のうち、系内を窒素ガスで置換したオートクレーブに混合溶液におけるアクリロニトリルの量を10部、スチレンの量を10部、メタクリル酸メチルの量を30部投入し重合を開始した。重合開始から60分後にスチレン2部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その30分後にスチレン4部、メタクリル酸メチル11部を添加した。その30分後にスチレン7部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その後は[A−1]と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体[A−2a]の還元粘度は、0.34dl/gであった。
[A−2b]:
上記[A−1]の製造条件のうち、系内を窒素ガスで置換したオートクレーブに混合溶液におけるアクリロニトリルの量を8部、スチレンの量を11部、メタクリル酸メチルの量を31部投入し重合を開始した。重合開始から60分後にスチレン2部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その30分後にスチレン4部、メタクリル酸メチル11部を添加した。その30分後にスチレン7部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体[A−2b]の還元粘度は、0.34dl/gであった。
[A−2c]:
上記[A−1]の製造条件のうち、系内を窒素ガスで置換したオートクレーブに混合溶液におけるアクリロニトリルの量を12部、スチレンの量を9部、メタクリル酸メチルの量を29部投入し重合を開始した。重合開始から60分後にスチレン2部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その30分後にスチレン4部、メタクリル酸メチル11部を添加した。その30分後にスチレン7部、メタクリル酸メチル13部を添加した。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体[A−2c]の還元粘度は、0.34dl/gであった。
[A−3]:
上記[A−1]の製造条件のうち、系内を窒素ガスで置換したオートクレーブに混合溶液におけるアクリロニトリルの量を30部、スチレンの量を10部、メタクリル酸メチルの量を10部投入し重合を開始した。重合開始から60分後にメタクリル酸メチル20部、スチレン3部を添加した。その30分後にスチレン4部、メタクリル酸メチル23部を添加した。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体[A−3]の還元粘度は、0.46dl/gであった。
[参考例2]グラフト共重合体(B)の製造
[B]:
ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)50部(固形分換算)、純水180部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄0.01部およびリン酸ナトリウム0.1部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃の温度に温調し、撹拌下、スチレン11.5部、アクリロニトリル4.0部、メタクリル酸メチル34.5部およびn−ドデシルメルカプタン0.3部の混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム2.5部および純水25部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させた。
重合を終了して得られたラテックス状生成物を、硫酸1.0部を加えた95℃の温度の水2000部中に、撹拌しながら注いで凝固させ、次いで水酸化ナトリウム0.8部で中和して凝固スラリーを得た。これを遠心分離した後、40℃の温度の水2000部中で5分間洗浄し遠心分離し、60℃の温度の熱風乾燥機中で12時間乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体を調製した。得られたグラフト共重合体[B]のグラフトの還元粘度は、0.30dl/gであり、グラフト率は47重量%であった。
[実施例1〜3]
上記の参考例1で製造したビニル系共重合体[A−2a]、[A−2b]および[A−2c]と、グラフト共重合体[B]を、表1に示す配合割合としてヘンシェルミキサーで混練した後、40mmφ押し出し機により、押し出し温度230℃の温度でガット状に押し出しペレット化した。次いで、得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これらの試験片について各物性を測定した結果を、表2に示す。
[比較例1、2]
上記の参考例1で製造したビニル系共重合体[A−1]および[A−3]と、グラフト共重合体(B)を、表1に示す配合割合としてヘンシェルミキサーで混練した後、40mmφ押し出し機により、押し出し温度230℃でガット状に押し出しペレット化した。次いで、得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これらの試験片について各物性を測定した結果を、表2に示す。
Figure 2010116427
Figure 2010116427
表1と表2の結果から判るように、本発明の実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、透明性、耐薬品性および色調安定性において均衡に優れていることがわかる。また、特に、還元粘度が低いため流動性に優れたものであった。
しかしながら、比較例1と2で得られた樹脂組成物は、ビニル系共重合体(A)を構成する単量体組成が本発明の範囲外であったため、色調安定性、流動性および耐薬品性のいずれかが劣るものであった。
図1は、連続塊状重合し樹脂混合する方法により本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に用いられる装置の一実施態様を示す概略縦断面図である。 図2は、耐薬品性の評価に使用する1/4楕円治具を示し、およびその使用方法を説明するための概略縦断面図である。
符号の説明
1: 反応槽
2: 予熱機
3: 二軸押出機型脱モノマー機
4: 溶融混練域
5: フィーダー
11: 1/4楕円治具
12: 試験片
13: 薬液塗布面
14: クラック
X: クラック発生箇所からの距離

Claims (8)

  1. 芳香族ビニル系単量体(a1)10〜30重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)50〜85重量%、およびシアン化ビニル系単量体(a3)8〜15重量%を含有するビニル系単量体混合物(a)を重合してなるビニル系共重合体(A)中に、ゴム質重合体(b)の存在下に1種以上のビニル系単量体またはビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)が分散してなる熱可塑性樹脂組成物であって、この熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、前記アセトン可溶分に対し、0.001重量%以上10重量%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. ヘイズ値が30%以下である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. グラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体(b)成分と、アセトン可溶分との屈折率の差が0.03以内である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. アセトン可溶分の酸価が0.01〜1mgKOH/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ビニル系共重合体(A)が懸濁重合法により製造されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. ビニル系共重合体(A)が乳化重合法により製造されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. ビニル系共重合体(A)が連続塊状重合法により製造されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. ビニル系単量体混合物(a)を連続塊状重合または連続溶液重合することによりビニル系共重合体(A)を製造し、続いて溶融状態のビニル系共重合体(A)に、グラフト共重合体(B)を添加し、溶融混合する方法により連続的に製造される請求項1〜4、7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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