JP2002265744A - レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

Info

Publication number
JP2002265744A
JP2002265744A JP2001071859A JP2001071859A JP2002265744A JP 2002265744 A JP2002265744 A JP 2002265744A JP 2001071859 A JP2001071859 A JP 2001071859A JP 2001071859 A JP2001071859 A JP 2001071859A JP 2002265744 A JP2002265744 A JP 2002265744A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
copolymer
resin composition
thermoplastic resin
laser marking
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001071859A
Other languages
English (en)
Inventor
Satoshi Mitsui
聡 三井
Shusuke Tanaka
秀典 田中
Nobuo Kuriki
伸男 栗木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2001071859A priority Critical patent/JP2002265744A/ja
Publication of JP2002265744A publication Critical patent/JP2002265744A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザーマーキング性、耐衝撃性及び剛性が
物性バランス良く優れたレーザーマーキング用熱可塑性
樹脂組成物及びその効果的な製造方法を提供する。 【解決手段】 ゴム強化スチレン系樹脂(I)100重
量部に対して、カーボンブラック(II)0.0001〜
0.5重量部および/または四酸化三鉄(III)0.0
01〜5重量部が配合されてなる熱可塑性樹脂組成物で
あって、該樹脂組成物中に含まれるアセトン可溶性樹脂
成分は、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量
%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a
2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a
3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量
体(a4)0〜50重量%からなる単量体組成を有する
ものであり、かつ、アセトン可溶性樹脂成分の酸価が
0.01〜1mgKOH/gであるレーザーマーキング
用熱可塑性樹脂組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マーキング性、耐
衝撃性及び剛性が物性バランスよく優れているレーザー
マーキング用熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
ン共重合体(ABS樹脂)は、成形性、耐衝撃性のバラ
ンスに優れ、OA機器や家電製品向けの用途に幅広く利
用されている。このような成形品は文字等による表示が
されることが多く、従来はシルク印刷やタンポ印刷等の
インキなどを用いた印刷またはシールによる表示が行わ
れてきた。
【0003】ところが、近年になって、レーザー光線に
よるマーキング手法が簡便かつ効率的に行えるため、注
目を集めている。これはレーザー光線の照射時に樹脂が
発泡・分解または樹脂表面が炭化することにより、マー
キングが可能となる技術である。
【0004】これらの技術的方法として、カーボンブラ
ックまたはグラファイトを材料にブレンドする方法(特
開昭57−116620号公報)、(メタ)アクリル酸
エステル系単量体とビニル系単量体からなる共重合体を
ゴム含有スチレン系樹脂にブレンドする方法(特開平8
−112968号公報)およびゴム含有スチレン系樹脂
に他の熱可塑性樹脂をブレンドする方法(特開平9−1
00390号公報)などが提案されている。
【0005】しかしながら、マーキング部分の鮮明度、
白色度が劣る問題、(メタ)アクリル酸エステル系単量
体とビニル系単量体からなる共重合体を用いると耐衝撃
性が低下する問題、さらには他の熱可塑性樹脂を添加し
ても鮮明度が十分でないなどの問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来技術の欠点を解消し、マーキング性、耐衝撃性
および剛性が物性バランス良く優れているレーザーマー
キング用熱可塑性樹脂組成物、およびその効果的な製造
方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的の達成に
ついて鋭意検討した結果、特定の条件を満たすことによ
り樹脂の加水分解を制御することなどが、レーザーマー
キング性および耐衝撃性と剛性との物性バランスなどが
優れたレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物を得る
ために極めて有効であるという知見を見出し、本発明を
なすに到った。
【0008】すなわち、本発明のレーザーマーキング用
熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(I)
100重量部に対して、カーボンブラック(II)0.0
001〜0.5重量部および/または四酸化三鉄(II
I)0.001〜5重量部が配合されてなる熱可塑性樹
脂組成物であって、該樹脂組成物中に含まれるアセトン
可溶性樹脂成分は、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜
70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体
(a3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の
単量体(a4)0〜50重量%からなる単量体組成を有
するものであり、かつ、アセトン可溶性樹脂成分の酸価
が0.01〜1mgKOH/gであることを特徴とす
る。
【0009】また、本発明のレーザーマーキング用熱可
塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(I)が、
ビニル系単量体混合物(a)を共重合してなる共重合体
(A)10〜95重量部、および、ゴム質重合体(b)
の存在下にビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合
してなるゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜5重
量部からなることが好ましい。
【0010】そして、本発明のレーザーマーキング用熱
可塑性樹脂組成物の製造方法は、共重合体(A)とゴム
質含有グラフト共重合体(B)とを溶融混合してゴム強
化スチレン系樹脂(I)を製造し、さらにカーボンブラ
ック(II)および/または四酸化三鉄(III)を混合す
ることにより請求項3又は4記載のレーザーマーキング
用熱可塑性樹脂組成物を製造する方法において、共重合
体(A)との混合に供するゴム質含有グラフト共重合体
(B)が、乳化剤を0.1〜5重量%含有していること
を特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態について
説明する。
【0012】本発明にいうゴム強化スチレン系樹脂
(I)は、ゴム質重合体により耐衝撃性が付与されたス
チレン系共重合体系の熱可塑性樹脂組成物であり、なか
でも、ゴム質重合体に、スチレン、α−メチルスチレン
等の芳香族ビニル系単量体;メタクリル酸メチル等の不
飽和カルボン酸エステル系単量体;及び、アクリロニト
リル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量
体を含むビニル系単量体混合物の共重合体を用いること
が好ましい。
【0013】特に、ビニル系単量体混合物(a)を共重
合してなる共重合体(A)10〜95重量部、および、
ゴム質重合体(b)の存在下にビニル系単量体混合物
(c)をグラフト重合してなるゴム質含有グラフト共重
合体(B)90〜5重量部からなるゴム強化スチレン系
透明樹脂(I)が好ましい。ここで、ビニル系単量体混
合物(a)及びビニル系単量体混合物(c)は、芳香族
ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボ
ン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量
%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%お
よびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50
重量%からなり、かつ、不飽和カルボン酸系単量体(但
し不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)
を除く)(a5)を実質的に含有しない単量体混合物で
あることが好ましい。
【0014】本発明においては、このレーザーマーキン
グ用熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアセトン可溶性樹
脂成分が、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量
%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a
2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a
3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量
体(a4)0〜50重量%からなる単量体組成を有する
こと、かつ、そのアセトン可溶性樹脂成分の酸価が0.
01〜1mgKOH/gであることが重要である。
【0015】さらに、アセトン可溶性樹脂成分を構成す
る単量体組成における芳香族ビニル系単量体(a1)と
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)と
の重量比(φST/φMMA)の組成分布において、その重
量比(φST/φMMA)の平均値の0.75〜1.2倍の
範囲内に、アセトン可溶性樹脂成分の80重量%以上の
部分が含まれることが、不飽和カルボン酸アルキルエス
テル系単量体(a2)の加水分解等による酸成分を含有
した際のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物のマ
ーキング部分の鮮明性、白色度低下を抑制するために好
ましい。また、平均値の0.75〜1.2倍の範囲内に
90重量%以上が含まれることがより好ましく、95重
量%以上であることが最も好ましい。
【0016】アセトン可溶性樹脂成分の単量体組成が、
芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和
カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜9
5重量%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重
量%及びこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜
50重量%であることは、樹脂組成物のマーキング性、
耐衝撃性などをバランス良く優れたものとするために必
要である。
【0017】アセトン可溶性樹脂成分の単量体組成にお
ける芳香族ビニル系単量体(a1)の含有量は、その単
量体組成全体に対して5〜70重量%である。5重量%
未満では得られるレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組
成物が耐衝撃性に劣り、また70重量%を越えるとマー
キング部分の鮮明性に劣る。耐衝撃性およびマーキング
性の点から好ましくは9〜50重量%、特に好ましくは
14〜35重量%である。
【0018】不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体(a2)の量は、アセトン可溶性樹脂成分の単量体組
成全体に対して30〜95重量%である。30重量%未
満では得られるレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成
物のマーキング性に劣り、95重量%を越えると耐衝撃
性に劣る。耐衝撃性、マーキング性の点から好ましくは
35〜90重量%、特に好ましくは40〜85重量%で
ある。
【0019】シアン化ビニル系単量体(a3)の量は、
アセトン可溶性樹脂成分の単量体組成全体に対して0〜
50重量%である。50重量%を越えるとマーキング部
分の色調が悪化する。マーキング部分の色調および耐衝
撃性の点から好ましくは0.1〜45重量%、特に好ま
しくは1〜40重量%である。
【0020】上記アセトン性樹脂成分の組成は、FT−
IRチャートに現れる下記ピークにより定量して求めれ
ばよい。 ・芳香族ビニル系単量体(a1): ベンゼン核の振動
に帰属される1605cm-1のピーク、 ・不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a
2): エステルのカルボニル基のC=O伸縮振動に帰
属される1730cm-1のピーク、 ・シアン化ビニル系単量体(a3): −C≡N伸縮に
帰属される2240cm -1のピーク、 アセトン可溶性樹脂成分は、主として、共重合体(A)
に由来する樹脂成分からなるが、ゴム質含有グラフト共
重合体(B)中においてビニル系単量体混合物(c)か
ら重合された共重合体部分に由来する樹脂成分も一部含
まれる。従って、アセトン可溶性樹脂成分の組成を上記
した所定範囲内に制御するためには、その主成分をなす
共重合体(A)の組成を上記した所定範囲内に制御する
ことが有効であり、さらに、ビニル系単量体混合物
(c)から重合された共重合体部分の組成も上記した所
定範囲内に制御することが好ましい。
【0021】また、アセトン可溶性樹脂成分中における
(φST/φMMA)の組成分布条件、即ち、アセトン可溶
性樹脂成分を構成する芳香族ビニル系単量体(a1)と
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)と
の重量比(φST/φMMA)の平均値の0.75〜1.2
倍の範囲内に、アセトン可溶性樹脂成分の80重量%以
上の部分が含まれることは、アセトン可溶性樹脂成分の
組成分布が狭いことを意味するものであり、この組成分
布条件は、得られるレーザーマーキング用熱可塑性樹脂
組成物のマーキング性の安定性を一層高めるために好ま
しい。
【0022】本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹
脂組成物においては、そのマトリックス樹脂中に共重合
された微量の酸成分が良好な物性を与えるものであり、
即ち、樹脂組成部中におけるアセトン可溶性樹脂成分の
酸価が0.01〜1mgKOH/gであることが重要で
ある。この酸価が0.01mgKOH/g未満では本発
明の特徴である耐衝撃性と剛性の物性バランスの向上が
見られず、1mgKOH/gを越えると、得られるレー
ザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物のマーキング部分
の色調の悪化が著しい。マーキング部分の色調、物性バ
ランスの点から好ましくは0.012〜0.5mgKO
H/g、特に好ましくは0.015〜0.1mgKOH
/gである。
【0023】本発明においての酸価を上記範囲内に制御
する方法は特に制限はないが、得られるレーザーマーキ
ング用熱可塑性樹脂組成物のマーキング部分の色調の悪
化を最小限に抑えるという点から、共重合体(A)の原
料であるビニル系単量体混合物(a)および/またはゴ
ム質含有グラフト共重合体(b)の原料であるビニル系
単量体混合物(c)が、不飽和カルボン酸系単量体(不
飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を除
く)(a5)等の酸性単量体を実質的に含有せず、ま
た、工程中において不飽和カルボン酸アルキルエステル
系単量体(a2)を加水分解させることにより、酸価を
所定範囲内に制御することが特に好ましい。なかでも、
ビニル系単量体混合物(a)およびビニル系単量体混合
物(c)がどちらも不飽和カルボン酸系単量体(不飽和
カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)を除く)
(a5)等の酸性単量体を実質的に含有しないことが特
に好ましい。
【0024】樹脂組成物中のアセトン可溶性樹脂成分を
構成する単量体組成の特定において、また、共重合体
(A)や、ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフ
ト成分(b)を構成する好ましい単量体組成の特定にお
いて用いた、芳香族ビニル系単量体(a1)、不飽和カ
ルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)、シアン化
ビニル系単量体(a3)、及び、これらと共重合可能な
他の単量体(a4)は、それぞれ、次のとおりの化合物
である。
【0025】芳香族ビニル系単量体(a1)としては、
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、
ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチ
レン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチ
レン等が挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチ
レンが好ましい。これらは1種または2種以上を用いる
ことができる。
【0026】不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体(a2)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピ
ル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル
酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メ
タ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グ
リシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メ
タ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸
2−クロロエチルなどが挙げられるが、特にメタクリル
酸メチルが好ましい。これらは1種または2種以上を用
いることができる。
【0027】シアン化ビニル系単量体(a3)として
は、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエ
タクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニト
リルが好ましい。これらは1種または2種以上を用いる
ことができる。
【0028】また、これらと共重合可能な他の単量体
(a4)としては、N−メチルマレイミド、N−シクロ
ヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレ
イミド化合物、アクリルアミド等の不飽和アミドなどが
挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることが
できる。
【0029】共重合体(A)の重合原料となるビニル系
単量体混合物(a)の組成は特に制限はないが、芳香族
ビニル系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボ
ン酸アルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量
%、シアン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%お
よびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50
重量%からなる単量体組成が好ましく、耐衝撃性の点か
ら、より好ましくは芳香族ビニル系単量体(a1)9〜
50重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
体(a2)35〜90重量%、シアン化ビニル系単量体
(a3)0.1〜45重量%およびこれらと共重合可能
な他の単量体(a4)0〜50重量%からなる単量体組
成であり、最も好ましくは、芳香族ビニル系単量体(a
1)14〜35重量%、不飽和カルボン酸アルキルエス
テル系単量体(a2)40〜85重量%、シアン化ビニ
ル系単量体(a3)1〜40重量%およびこれらと共重
合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%からなる単
量体組成である。
【0030】ビニル系単量体混合物(a)は、不飽和カ
ルボン酸系単量体(但し不飽和カルボン酸アルキルエス
テル系単量体(a2)を除く)(a5)等の酸性単量体
を実質的に含有しないことが、レーザーマーキング用熱
可塑性樹脂組成物におけるアセトン可溶性樹脂成分の酸
価を所望水準とするため、また、色調を向上させるため
に特に好ましい。ここでいう、「実質的に含有しない」
とは、これら酸性単量体を意図的に単量体混合物として
添加しないことであり、たとえば単量体混合物(a)に
対し0.01%以上の添加は意図的な添加とみなすこと
ができる。なお、単量体混合物(a)の各単量体中の不
純物に由来する不飽和カルボン酸、例えば、不飽和カル
ボン酸アルキルエステル系単量体(a2)中に不純物と
して含有される0.01%未満の不飽和カルボン酸は、
意図的な添加したものではない。不飽和カルボン酸系単
量体(a5)としては、アクリル酸、メタクリル酸等が
例示される。
【0031】共重合体(A)の極限粘度は特に制限はな
いが、0.05〜1.2dl/gが耐衝撃性および成形
性のバランスの点から好ましく、さらには0.15〜
0.8dl/gがより好ましい。
【0032】また、共重合体(A)中における芳香族ビ
ニル系単量体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエス
テル系単量体(a2)との重量比(φST/φMMA)の組
成分布において、その重量比(φST/φMMA)の平均値
の0.75〜1.2倍の範囲内に、共重合体(A)の8
0重量%以上の部分が含まれることが好ましい。
【0033】共重合体(A)は、公知の乳化重合法、懸
濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法等の任意の
方法により製造されるが、(φST/φMMA)の組成分布
において、その重量比(φST/φMMA)の平均値の0.
75〜1.2倍の範囲内に、共重合体(A)の80重量
%以上の部分が含まれるように組成分布を狭くするため
には、水系懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合
が好ましい。また、連続塊状重合法または連続溶液重合
法が、定常反応状態において系内の残存単量体組成が一
定に保たれ、本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹
脂組成物の特性を所定値に制御し易くなるので特に好ま
しい。
【0034】本発明においてビニル系単量体混合物
(a)を共重合させて共重合体(A)を製造する工程に
おいて連続塊状重合または連続溶液重合を行う方法は特
に制限はなく、任意の方法が採用可能であり、例えば、
重合槽で重合した後、脱モノマー(脱溶媒・脱揮)する
方法をとることができる。
【0035】重合槽としては、各種の撹拌翼、たとえば
パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、
多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼、ダブルヘリ
カル翼、などを有する混合タイプの重合槽、または各種
の塔式の反応器などが使用できる。また、多管反応器、
ニーダー式反応器、二軸押出機などを重合反応器として
使用することもできる(例えば、高分子製造プロセスの
アセスメント10「耐衝撃性ポリスチレンのアセスメン
ト」高分子学会、1989年1月26日発行などを参
照)。これら重合槽類(反応器)は、1基(槽)また
は、2基(槽)以上で使用され、また必要に応じて2種
類以上の反応器を組み合わせても使用される。なかで
も、得られるレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物
のアセトン可溶性樹脂成分の組成分布を狭くするという
点からは、1槽式の完全混合型重合槽が好ましく選択さ
れる。
【0036】これらの重合槽または反応器で重合して得
られた反応混合物は、通常、次に脱モノマー工程に供さ
れ、モノマ、溶媒その他の揮発成分が除去される。脱モ
ノマーの方法としては、ベントを有する一軸または二軸
の押出機で加熱下、常圧または減圧下でベント穴より揮
発成分を除去する方法、遠心型などのプレートフィン型
加熱器をドラムに内臓する蒸発器で揮発成分を除去する
方法、遠心型などの薄膜蒸発器で揮発成分を除去する方
法、多管式熱交換器を用いて予熱、発泡して真空槽へフ
ラッシュして揮発成分を除去する方法などがあり、いず
れの方法も使用できるが、特にベントを有する一軸また
は二軸の押出機が好ましく用いられる。
【0037】図1は、連続塊状重合し樹脂混合する方法
により本発明で用いるゴム強化スチレン系樹脂(I)を
製造する工程における、製造装置の一実施態様を示す装
置縦断面概略図であり、順に、ビニル系単量体(a)を
連続塊状重合して共重合体(A)を製造するための反応
槽(1)、重合して得られた共重合体(A)を所定温度
に昇温させるための予熱機(2)、及び、脱モノマーの
ためのベント口(31)を有する二軸押出機型脱モノマ
ー機(3)が連結されており、さらに、脱モノマー機に
対してタンデムに、ゴム質含有グラフト共重合体(B)
添加用の二軸押出機型フィーダー(5)が接続されてい
る。
【0038】図1においては、反応槽(1)から連続的
に供給される反応生成物は、予熱機(2)で昇温され、
次いで、二軸押出機型脱モノマー機(3)に供給され、
150〜280℃程度、常圧または減圧下で、ベント口
(31)から単量体などの揮発成分が系外に除去され
る。この揮発成分の除去は、未反応単量体量が所定量、
例えば10重量%以下、より好ましくは5重量%以下に
なるまで行なわれる。
【0039】図1においては、脱モノマー機(3)の途
中の下流側に近い位置に、フィーダー(5)からの添加
口が開口していて、所定温度(例えば100〜220℃
程度)のゴム質含有グラフト共重合体(B)が系内に添
加される。このフィーダー(5)には加熱装置が配設さ
れていて、添加されるゴム質含有グラフト共重合体
(B)を半溶融もしくは溶融状態の所定温度に加熱して
おくことが、混合状態を良くするために好ましい。例え
ば、スクリュー、シリンダー、スクリュー駆動部からな
り、シリンダーは加熱・冷却機能を有する装置構造をと
ることが好ましい。また、このフィーダーとして、加熱
装置を有する一軸又は二軸の押出機型のフィーダーを使
用することができる。
【0040】このゴム質含有グラフト共重合体(B)の
供給口が接続された位置においては、未反応単量体の含
有量が10重量%以下、より好ましくは5重量%以下ま
で低減していることが、その後の未反応単量体を除去す
る操作中におけるゴム成分の熱劣化を防止するために好
ましい。
【0041】二軸押出機型脱モノマー機(3)の溶融混
練域(4)内で共重合体(A)とゴム質含有グラフト共
重合体(B)とが溶融混合された後に、吐出口(6)か
ら樹脂組成物が系外に吐出される。
【0042】さらに上記溶融混練域(4)に水注入口
(41)を設け、所定量の水を添加することが好まし
く、注入された水および残存モノマーはさらに下流に設
けられたベント口(42)から脱揮される。
【0043】共重合体(A)の連続塊状重合または溶液
重合では、開始剤を使用せずに熱重合することも、開始
剤を用いて開始剤重合することも、さらに熱重合と開始
剤重合を併用することも可能である。開始剤としては、
過酸化物またはアゾ系化合物などが用いられる。
【0044】過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパ
ーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミ
ルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパ
ーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t
−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ
アセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−
ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−
ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−ト
リメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパ
ーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2
−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでもク
メンハイドロパーオキサイドおよび1,1−ビス(t−
ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキ
サンが特に好ましく用いられる。アゾ系化合物の具体例
として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,
4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,
4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シア
ノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビ
スシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4
−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメ
チル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチ
ルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルア
ゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シア
ノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられ
る。これらの開始剤を使用する場合、1種または2種以
上併用で使用される。なかでも1,1′−アゾビスシク
ロヘキサン−1−カーボニトリルが特に好ましく用いら
れる。
【0045】共重合体(A)の重合度調節を目的とし
て、メルカプタン、テルペンなどの連鎖移動剤を使用す
ることも可能であり、その具体例として、n−オクチル
メルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシ
ルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−
オクタデシルメルカプタン、テルピノレンなどが挙げら
れる。これらの連鎖移動剤を使用する場合、1種または
2種以上併用で使用される。なかでも特にn−オクチル
メルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシ
ルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0046】共重合体(A)を連続溶液重合法により製
造する場合には、溶媒の量に特に限定はないが、生産性
の点から、好ましくは重合溶液に対して30重量%以
下、より好ましくは20重量%以下の溶媒量が使用され
る。用いる溶媒としては特に制限はないが、重合安定性
の点からエチルベンゼンまたはメチルエチルケトンが好
ましく、エチルベンゼンが特に好ましい。
【0047】本発明におけるゴム質含有グラフト共重合
体(B)を構成するゴム質重合体(b)としては特に制
限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン
系ゴムなどが例示され、具体的には、ポリブタジエン、
ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−ア
クリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン
−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸
メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、
ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プ
ロピレンラバー、エチレン−プロピレンージエンラバ
ー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン
−アクリル酸メチル)、ポリ(エチレン−アクリル酸メ
チル)などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1
種または2種以上の混合物で使用される。なかでもポリ
ブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴムが耐衝撃
性改善効果の点から特に好ましく用いられる。
【0048】このゴム質重合体(b)の重量平均粒子径
は、得られるゴム強化スチレン系樹脂組成物(I)の耐
衝撃性、成形加工性、流動性、外観の点から0.1〜
1.5μmであることが好ましく、さらに好ましくは
0.15〜1.2μmである。
【0049】ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラ
フト成分(d)の重合原料となるビニル系単量体混合物
(c)の組成は特に制限は無いが、得られるレーザーマ
ーキング用熱可塑性樹脂組成物のマーキング性および耐
衝撃性と剛性との物性バランスの点から、芳香族ビニル
系単量体(a1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸ア
ルキルエステル系単量体(a2)30〜95重量%、シ
アン化ビニル系単量体(a3)0〜50重量%およびこ
れらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜50重量%
を含有してなることが好ましい。このビニル系単量体混
合物(c)を構成する単量体組成は、共重合体(A)を
構成するビニル系単量体混合物(a)と同一であっても
異なっていてもよい。
【0050】また、このビニル系単量体混合物(c)に
も、スチレン系共重合体の重合原料のビニル系単量体混
合物(a)の場合と同様、不飽和カルボン酸系単量体
(但し不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a
2)を除く)(a5)等の酸性単量体を実質的に含有し
ないことが、レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物
におけるアセトン可溶性樹脂成分の酸価を所望水準とす
るため、また、マーキング部分の色調を向上させるため
に特に好ましい。ここでいう、「実質的に含有しない」
とは、スチレン系共重合体の重合原料のビニル系単量体
混合物(a)の場合と同様である。
【0051】ゴム質含有グラフト共重合体(B)を構成
するグラフト成分(d)の極限粘度は特に制限はない
が、0.05〜1.2dl/gが耐衝撃性および成形性
のバランスの点から好ましく、さらには0.1〜0.7
dl/gがより好ましい。
【0052】このゴム質含有グラフト共重合体(B)
は、ゴム質重合体(b)の存在下に、ビニル系単量体混
合物(c)をグラフト重合してなるものであるが、ビニ
ル系単量体混合物(c)全量がグラフトしている必要は
なく、通常はグラフトしていない共重合体との混合物と
して得られたものを使用する。ゴム質含有グラフト共重
合体(B)のグラフト率に制限はないが、耐衝撃性の点
から好ましくは5〜150重量%、より好ましくは10
〜100重量%のものが使用される。
【0053】ゴム質含有グラフト共重合体(B)中のゴ
ム状重合体の割合は、得られる樹脂組成物の機械的強度
および成形性の観点から5〜80重量部であり、より好
ましくは20〜70重量部である。
【0054】ゴム質含有グラフト共重合体(B)製造時
のグラフト重合の方法としては制限ないが、公知の乳化
重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、連続溶液重合法
等の任意の方法により製造でき、好ましくは乳化重合法
または塊状重合法で製造される。なかでも、過度の熱履
歴によるゴム成分の劣化および着色を抑制するため、ま
た、共重合体(A)との溶融混練工程における不飽和カ
ルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の加水分解
を制御するために、ゴム質含有グラフト共重合体(B)
中の乳化剤含有量、水分量を調整しやすいという点か
ら、乳化重合法で製造されることが最も好ましい。
【0055】通常の乳化重合はゴム状重合体ラテックス
の存在化に単量体混合物を乳化グラフト重合する。この
乳化グラフト重合に用いられる乳化剤に特に制限はな
く、各種の界面活性剤が使用できるが、カルボン酸塩
型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型などのアニオン
系界面活性剤が特に好ましく使用される。
【0056】このような乳化剤の具体例としては、カプ
リル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミスチリン酸
塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、
リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸
塩、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸
エステル塩、その他高級アルコール硫酸エステル塩、ド
デシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスル
ホン酸塩、アルキルジフェニールエーテルジスルホン酸
塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、ジアルキルスルホ
コハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリ
オキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエ
チレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられ
る。ここでいう塩とはアルカリ金属塩、アンモニウム塩
などであり、アルカリ金属塩の具体例としてはカリウム
塩、ナトリウム塩、リチウム塩、などが挙げられる。な
かでも加水分解の制御のためには、パルチミン酸、ステ
アリン酸、オレイン酸、のカリウム塩、ナトリウム塩が
好ましく用いられる。これらの乳化剤は、1種または2
種以上を併用して使用される。
【0057】また、これら乳化グラフト重合で使用可能
な開始剤および連鎖移動剤としては、前記共重合体
(A)の製造であげた開始剤および連鎖移動剤が挙げら
れ、開始剤はレドックス系でも使用される。
【0058】乳化グラフト重合で製造されたゴム質含有
グラフト共重合体(B)は、次に凝固剤を添加してラテ
ックス分を凝固させた後、ゴム質含有グラフト共重合体
(B)を回収する。凝固剤としては酸または水溶性塩が
用いられ、その具体例として、硫酸、塩酸、リン酸、酢
酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウ
ム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミ
ニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニ
ウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げ
られる。これらの凝固剤は1種または2種以上の混合物
で使用される。ラテックス分を凝固させて得られたゴム
質含有グラフト共重合体(B)スラリーは、そのままも
しくは脱水・洗浄工程を経てスラリーや含水ケークの形
状で用いることも可能であるが、脱水・洗浄・再脱水・
乾燥工程を経てパウダー形状とし、このパウダー形状
で、溶融状態にある共重合体(A)に添加することが工
程における取り扱い性の点から好ましい。
【0059】共重合体(A)に添加する際に、ゴム質含
有グラフト共重合体(B)側の材料に含まれる乳化剤の
量は、工程中における不飽和カルボン酸エステル系単量
体(a2)の加水分解反応を制御し、得られるゴム強化
スチレン系透明樹脂組成物のアセトン可溶性樹脂成分の
酸価を本発明の所定範囲内とするために、0.1〜5重
量%が好ましく、特に0.15〜2重量%が好ましい。
従来は、乳化剤をポリマーの加水分解制御のために使用
できるとの知見は得られていなかったので、通常は乳化
剤はできるだけ樹脂製品から除外すべきと考えられてい
た。しかし、本発明においては、レーザーマーキング用
熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶性樹脂成分の酸価を
所定範囲内に制御するための有効な手段として、乳化剤
を上記範囲内で積極的に含有させるものである。
【0060】ゴム質含有グラフト共重合体(B)中の乳
化剤含有率を所定範囲内に調整する方法には特に制限は
ないが、例えば凝固後のスラリー状のゴム質含有グラフ
ト共重合体(B)の脱水・洗浄の回数、洗浄水の温度・
水量を制御することで目的の乳化剤含有量に調整するこ
とが可能である。また、その他例えばゴム質含有グラフ
ト共重合体(B)に別途乳化剤を添加して調整すること
も可能である。
【0061】共重合体(A)に添加する際のゴム質含有
グラフト共重合体(B)中に含有される水分の量(水分
率)は、工程中における不飽和カルボン酸エステル系単
量体(a2)の加水分解反応を制御し、得られるゴム強
化スチレン系透明樹脂組成物のアセトン可溶性樹脂成分
の酸価を本発明の所定範囲内とするために、0.1〜5
重量%が好ましく、特に0.15〜2重量%が好まし
い。
【0062】ゴム質含有グラフト共重合体(B)中の水
分率を所定範囲内に調整する方法に特に制限はないが、
例えばゴム質含有グラフト共重合体(B)の脱水時間や
乾燥温度・風量等を制御することで所望の水分率値に調
整することが可能である。また、その他例えばゴム質含
有グラフト共重合体(B)に水を別途加えて水分率を調
整することも可能である。
【0063】また、ゴム質含有グラフト共重合体(B)
は塊状重合法で製造することも可能である。塊状重合法
で製造する場合は、脱モノマー機から出た溶融状態にあ
るゴム質含有グラフト共重合体(B)を直接共重合体
(A)に添加することも可能であるし、また、予め単離
したゴム質含有グラフト共重合体(B)を共重合体
(A)に添加することも可能であるが、通常熱劣化防止
および工程の連続化の点から脱モノマー機から出た溶融
状態にあるゴム質含有グラフト共重合体(B)を直接添
加することがより好ましい。
【0064】共重合体(A)とゴム質含有グラフト共重
合体(B)の混合方法は特に制限はないが、マーキング
部分の色調、耐衝撃性等の点から、連続塊状重合プロセ
ス途中又は連続溶液重合プロセス途中の溶融状態にある
共重合体(A)に、ゴム質含有グラフト共重合体(B)
を添加した後、溶融混合する方法が好ましく選択され
る。またその際、溶融状態にある共重合体(A)10〜
95重量部にゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜
5重量部を添加することが好ましく、より好ましくは共
重合体(A)30〜95重量部にゴム質含有グラフト共
重合体(B)70〜5重量部を添加した後に溶融混合す
る。このゴム質含有グラフト共重合体(B)の添加は連
続的に行うことが好ましい。この際のゴム質含有グラフ
ト共重合体(B)の添加は、共重合体(A)の連続塊状
重合プロセスの脱モノマー工程の途中もしくは脱モノマ
ー工程の後で、残存モノマー量が10重量%以下、さら
に好ましくは5重量%以下になった時点で行うことが、
その後の脱モノマー操作中におけるゴム成分の熱履歴に
よる劣化を抑制し、マーキング部分の色調や耐衝撃性な
どをさらに良好とするために特に好ましい。
【0065】また、共重合体(A)とゴム質含有グラフ
ト共重合体(B)を混合した以降の溶融混練する工程中
に、水を、ゴム強化スチレン系樹脂(I)に対して0.
1〜5重量%の量、添加することが、工程中における不
飽和カルボン酸エステル系単量体(a2)の加水分解反
応をさらに容易に制御するために特に好ましい。
【0066】共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重
合体(B)を添加した後の混合は、溶融混合することが
耐衝撃性などの物性を十分に発現させるためにも好まし
い。この溶融混合は添加混合時に行ってもあるいは混合
物単離後、例えば溶融成形時に行ってもよい。
【0067】ゴム質含有グラフト共重合体(B)の添加
方法には特に制限はなく、任意の方法で添加することが
可能である。通常、各種のフィーダー類、例えばベルト
式フィーダー、スクリュー式フィーダー、単軸押出機、
二軸押出機などを用い連続的に添加されるが、共重合体
(A)の脱モノマー押出機の部分に、その吐出端が接続
された単軸押出機および二軸押出機が特に好ましく用い
られる。これら連続添加装置には樹脂定量供給構造を有
することが好ましい。また、連続添加装置は加熱装置を
有していてゴム質含有グラフト共重合体(B)を半溶融
もしくは溶融状態で添加することが、混合状態の向上の
ために好ましい。この目的には加熱装置を有している押
出機などを使用することができる。
【0068】カーボンブラック(II)は0.0001〜
0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部が
レーザーマーキング性に優れる。0.0001重量部未
満では発色性が十分ではなく、0.1重量部を越える
と、鮮明性に劣る。
【0069】四酸化三鉄(III)は0.001〜5重量
部、好ましくは0.01〜1.5重量部がマーキング性
に優れる。0.001重量部未満では発色性が十分では
なく、5重量部を越えると、鮮明性に劣る。
【0070】また、四酸化三鉄(III)とカーボンブラ
ック(II)を併用することも可能である。併用する場合
でも、四酸化三鉄(III)が0.001重量部未満、か
つ、カーボンブラック(II)が0.0001重量部未満
の場合はレーザーマーキング性が不十分であり、四酸化
三鉄(III)が5重量部またはカーボンブラック(II)
が0.5重量部を越えると発泡と炭化により白色度、鮮
明度が著しく低下する。
【0071】カーボンブラック(II)および四酸化三鉄
(III)の成形品中での平均粒子径は2μm以下が好ま
しく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。2μ
mを越えると発色性が十分ではなく、鮮明性に劣る。
【0072】本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹
脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、塩
化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレ
フィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポ
リエステル、ポリカーボネート、各種エラストマー類を
加えて成形用樹脂としての性能を改良することもでき
る。また、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫
黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、
フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾト
リアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の
紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等
の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高
級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン
酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテ
ル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシ
オリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含
ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等
の難燃剤・難燃助剤、帯電防止剤、酸化チタン、その他
顔料および染料等を添加することもできる。更に、ガラ
ス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金
属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。こ
れら添加物の添加方法については特に制限はなく、ゴム
質含有グラフト共重合体(B)とともに連続的に添加す
ることも可能であり、また共重合体(A)とゴム質含有
グラフト共重合体(B)との混合ペレットを作成した後
に後工程として添加する等の種々の方法を用いることが
できる。
【0073】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するため、以下
に実施例および比較例を挙げて説明するが、これら実施
例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで
特に断りのない限り「%」は重量%、「部」は重量部を
意味する。
【0074】(参考例) (B)グラフト共重合体 B−1: ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.
3μm、ゲル含率85%)50部(固形分換算)、純水
180部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレー
ト0.4部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1
部、硫酸第一鉄0.01部およびリン酸ナトリウム0.
1部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃に温調し、
撹拌下、スチレン11.5部、アクリロニトリル4.0
部、メタクリル酸メチル34.5部およびn−ドデシル
メルカプタン0.3部の混合物を4時間かけて連続滴下
した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド
0.25部、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム2.5
部および純水25部の混合物を5時間かけて連続滴下
し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させ
た。
【0075】重合を終了して得られたラテックス状生成
物を、硫酸1.0部を加えた95℃の水2000部中
に、撹拌しながら注いで凝固させ、次いで水酸化ナトリ
ウム0.8部で中和して凝固スラリーを得た。これを遠
心分離した後、40℃の水2000部中で5分間洗浄し
遠心分離し、60℃の熱風乾燥機中で12時間乾燥し
て、パウダー状のグラフト共重合体を調製した。得られ
たグラフト共重合体(B−1)のグラフト特性、グラフ
ト成分の屈折率、乳化剤含有量及び水分率は表1に示す
とおりであった。
【0076】B−2: 表1に示す組成のビニル系単量
体混合物およびポリブタジエンラテックスを用いた以外
はB−1と同様の方法で重合・凝固・中和・洗浄・乾燥
・分離して、表1に示すグラフト共重合体(B−2)を
調製した。得られたグラフト共重合体のグラフト特性、
グラフト成分の屈折率、乳化剤含有量及び水分率は表1
に示したとおりであった。
【0077】B−3: B−1と同様の方法で重合・凝
固・中和した後の凝固スラリーを遠心分離した後、60
℃の水2000部中で10分間の洗浄し遠心分離する作
業を3回繰り返し、60℃の熱風乾燥機中で48時間乾
燥を行って、パウダー状のグラフト共重合体(B−3)
を調製した。得られたグラフト共重合体のグラフト特
性、グラフト成分の屈折率、乳化剤含有量及び水分率は
表1に示したとおりであった。
【0078】(I)ゴム強化熱可塑性樹脂 I−1: 単量体蒸気の蒸発還流用コンデンサーおよび
ヘリカルリボン翼を有する2m3の完全混合型重合槽
と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機
および脱モノマー機の先端から1/3長のバレル部にタ
ンデムに接続した加熱装置を有する2軸押出機型フィー
ダーとからなる連続式塊状重合装置を用いて、重合及び
樹脂混合を実施した。
【0079】まず、スチレン23.0部、アクリロニト
リル8.0部、メタクリル酸メチル69.0部、n−オ
クチルメルカプタン0.15部およびジ−t−ブチルパ
ーオキサイド0.01部からなる単量体混合物を、15
0kg/時で重合槽に連続的に供給し、重合温度130
℃、槽内圧0.08MPaに保って連続塊状重合させ
た。重合槽出における重合反応混合物の重合率は74〜
76%の間に制御した。
【0080】重合反応混合物は単軸押出機型予熱機で予
熱された後、2軸押出機型脱モノマー機により未反応の
単量体をベント口より減圧蒸発回収し、回収した未反応
単量体は連続的に重合槽へ還流させた。脱モノマー機の
出口端より1/3の所で見掛け上の重合率が99%以上
に上昇したスチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸
メチル共重合体に、2軸押出機型フィーダーにより、フ
ェノール系安定剤であるt−ブチルヒドロキシトルエン
0.225kg/時、リン系の安定剤であるトリ(ノニル
フェニル)ホスファイト0.225kg/時、及び、参考
例で製造したグラフト共重合体(B−1)の半溶融状態
物60kg/時を供給し、脱モノマー機中でスチレン/ア
クリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体と溶融混
練した。その溶融混練工程中、脱モノマー機の出口端よ
り1/6の所で水を2kg/時で供給した。この水およ
びその他の揮発分は、さらに脱モノマー機の下流に設置
したベント口より減圧蒸発させて除去した。その後溶融
ポリマーをストランド状に吐出させカッターにより樹脂
組成物ペレットを得た。
【0081】I−2: 加熱した2軸押出機型フィーダ
ーより、参考例で製造したグラフト共重合体(B−2)
を半溶融状態で表2に示す速度で供給した以外はI−1
と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。
【0082】I−3: 容量が20Lで、バッフルおよ
びファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレ
ーブ中で、メタクリル酸メチル20重量%、アクリルア
ミド80重量%からなる共重合体0.05部をイオン交
換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、
系内を窒素ガスで置換した。次に、スチレン23.0
部、アクリロニトリル8.0部、メタクリル酸メチル6
9.0部、t−ドデシルメルカプタン0.15部及び
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.45部の混
合溶液を、反応系を攪拌しながら添加し、58℃に昇温
し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後、
オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからスチレ
ン56部を110分かけて添加した。この間、反応温度
を65℃まで昇温した。スチレンの反応系への添加終了
後、50分かけて100℃まで昇温した。以降は、通常
の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗
浄、乾燥を行ない、ビーズ状の共重合体(A)を得た。
【0083】得られたビーズ状共重合体(A)と参考例
で製造したグラフト共重合体(B−1)を表2に示す割
合で配合し、さらにフェノール系安定剤であるt−ブチ
ルヒドロキシトルエン0.1部およびリン系の安定剤で
あるトリ(ノニルフェニル)ホスファイト0.1部を加
えてドライブレンドした後、出口端より1/3のところ
に水注入設備が、出口端より1/6のところにベントが
付いた40mmφ押出機を用いて、水を樹脂組成物に対
して1重量%の割合で注入しながら230℃で溶融混練
し、押出しペレタイズして樹脂組成物ペレットを得た。
【0084】I−4: 加熱した2軸押出機型フィーダ
ーより参考例で製造したグラフト共重合体(B−3)を
半溶融状態で表2に示す速度で供給したことと、脱モノ
マー機への水供給を行わなかったこと以外はI−1と同
様にして樹脂組成物ペレットを得た。
【0085】I−5: 単量体混合物として、スチレン
23.0部、アクリロニトリル8.0部、メタクリル酸
メチル66.0部、メタクリル酸3.0部、n−オクチ
ルメルカプタン0.15部およびジ−t−ブチルパーオ
キサイド0.01部を用いた以外はI−1と同様にして
樹脂組成物ペレットを得た。
【0086】(II)カーボンブラック カーボンブラックとして三菱化学社製C.B.#850を使用し
た。
【0087】(III)四酸化三鉄 平均粒子径1μmのものを使用した。
【0088】[実施例1〜6、比較例1〜6]参考例で
調製したゴム強化熱可塑性樹脂(I)、カーボンブラッ
ク(II)及び/または四酸化三鉄(III)、を表3に示
した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2軸押出機
(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、溶融混練、
押出しを行うことによって、ペレット状のポリマを製造
した。次いで射出成形機(住友重機社製、プロマット4
0/25)により、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞ
れの試験片を成形した。それらの物性を次の方法で測定
し、その結果を表4に示した。 (1)ゴム質重合体の重量平均ゴム粒子径 「Rubber Age Vol.88 p.484-490 (1960), by E.Schmid
t, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法、即
ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化する
ポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリー
ム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重
量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法、
による。 (2)ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト率 80℃で4時間真空乾燥を行ったゴム質含有グラフト共
重合体(B)の所定量(m;約1g)にアセトン100
mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液
を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離
した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃で4時間
真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は下記
式より算出した。ここでLはグラフト共重合体のゴム含
有量である。 グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/
[(m)×L]}×100
【0089】(3)ゴム質含有グラフト共重合体(B)
の乳化剤含有量 80℃で4時間真空乾燥を行ったゴム質含有グラフト共
重合体(B)を約20g精秤し、10倍量の10%硫酸
を加え、500mlビーカー中で30分間煮沸した。こ
れを100メッシュの金網で濾別し、残留固形分をと
り、200mlのイオン交換水中で1分間の洗浄、濾別
を2回繰り返した。さらにこの固形分を2つに分けて丸
底フラスコに入れ、それぞれ100mlのメタノールを
加え、70℃に設定した湯浴中3時間還流を行った。さ
らにこの溶液および固形分を8800r.p.m.(1000
0G)で40分間遠心分離し、上澄み液を濾過して得ら
れた濾液を蒸発乾固し、さらに80℃で4時間真空乾燥
して固形分を得た。この固形分をゴム質含有グラフト共
重合体(B)に含有されていた乳化剤として精秤し、乳
化剤含有量を算出した。 (4)ゴム質含有グラフト共重合体(B)の水分率測定
サンプルを精秤し、カールフィッシャー水分計を用いて
測定した。 (5)共重合体(A)の還元粘度ηsp/c 測定サンプルをメチルエチルケトンに溶解し、0.4g
/100mlメチルエチルケトン溶液として、ウベロー
デ粘度計を用い、30℃で還元粘度ηsp/cを測定し
た。 (6)ゴム質含有グラフト共重合体(B)中のグラフト
成分の還元粘度ηsp/c 80℃で4時間真空乾燥を行ったゴム質含有グラフト共
重合体(B)の1gにアセトン200mlを加え、70
℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.
(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を
濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、
析出物を80℃で4時間真空乾燥したものを、上記
(5)と同様の方法で、0.4g/100mlメチルエ
チルケトン溶液として、ウベローデ粘度計を用い、30
℃で還元粘度ηsp/cを測定した。
【0090】(7)アセトン可溶性樹脂成分の単量体組
成 樹脂組成物のサンプル1gにアセトン100mlを加
え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を880
0r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、
不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで
濃縮し、析出物を80℃で4時間真空乾燥したもの(ア
セトン可溶分)を用いて220℃に設定した加熱プレス
で作成した厚み30±5μmのフィルムを作成した。こ
のフィルムを試料としてFT−IRで分析して得られた
チャートに現れた各ピークの面積から単量体組成を求め
た。各単量体とピークとの対応関係は次の通りである。 メタクリル酸メチル単量体単位: エステルのカルボニ
ル基のC=O伸縮振動に帰属される1730cm-1のピ
ークの倍音ピークである3460cm-1のピーク、 メタクリル酸単量体単位: カルボン酸のカルボニル基
のC=O伸縮振動に帰属される1690cm-1のピー
ク、 スチレン単量体単位: ベンゼン核の振動に帰属される
1605cm-1のピーク、 アクリロニトリル単量体単位: −C≡N伸縮に帰属さ
れる2240cm-1のピーク、 (8)アセトン可溶性樹脂成分のφST/φMMA分布 上記(7)と同様にして得たアセトン可溶分のサンプル
2gに、80mlのメチルエチルケトンを加え、室温で
24時間静置して溶解し、そこへシクロヘキサンを少量
ずつ添加し、順次、沈殿したビニル系共重合体の重量を
測定し、その沈殿物を試料として、上記(7)と同様の
操作でFT−IRにより単量体組成を求めた。そして、
サンプルとして用いたアセトン可溶分に対する沈殿物の
累積重量分率と、芳香族ビニル系単量体(a1)含有量
と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)
含有量との重量比(φST/φMMA)をプロットし、アセ
トン可溶分全体の平均値の0.75〜1.2倍の範囲に
含まれるアセトン可溶分の割合(重量%)を求めた。
【0091】(9)アセトン可溶性樹脂成分の酸価 樹脂組成物のサンプル10gにアセトン100mlを加
え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を880
0r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、
不溶分を濾過する。この濾液を室温で2Lのメタノール
中に撹拌しながら静かに注いで再沈し、上澄み液を捨て
て沈殿物を得た。これをさらに200mlアセトンに溶
解し、2Lメタノールでもう一度再沈し、得られた沈殿
物を80℃で4時間真空乾燥し、固形分(アセトン可溶
性樹脂成分)を得た。この操作を数サンプル行って得た
アセトン可溶性樹脂成分の約10gを精秤して100m
lの共栓付き三角フラスコにとり、これにアセトン40
mlを加えて2時間撹拌し、均一に溶解させた。この溶
液にフェノールフタレイン溶液を3滴加え、1/10N
のKOHで中和滴定をおこなった。この滴定量を用い
て、下記式に従って酸価を算出した。また、測定試料と
同様に2時間撹拌したアセトンについても中和滴定を行
い、これをブランクとして滴定量を補正した。
【数1】 但し、式中の値は以下の通り。 X:滴定量(ml)、X0:ブランク滴定量(ml)、
W:サンプル量(g)
【0092】(10)成形品中のカーボンブラック又は
四酸化三鉄の平均粒子径 成形体より剃刀等の刃物により切削し、または成形体を
250℃に加熱しプレス成形機により圧力をかけて、薄
膜試料(平均厚み50μm)を作成する。その薄膜試料
を光学顕微鏡(キーエンス社製”VH−Z450”倍
率:1000倍)によるカーボンブラック、四酸化三鉄
の写真から、カーボンブラック(II)、四酸化三鉄(II
I)の最長径を直接測定し、粒子径とした。測定は統計
的に処理するため、1000個以上の粒子を計測し、算
術平均により求めた。 (11)レーザーマーキング性 成形品の表面に、Nd:YAGレーザーにより、波長1
064nmでマーキングを行い測定した。 白色度: レーザーマーキング部分の白色度を、大日精
化工業社製カラーコンピューター(カラコムシステム)
を用いて、白色度指数WIを測定し、WI値60を超え
るものを○、40〜60を△、40未満を×として評価
した。 鮮明度: レーザーによりマーキングした部分を目視に
より判定し、細い線がはっきりとマーキングされ、ベー
ス色とマーキング文字色のコントラストが良好なものを
(○)、やや良好なものを(△)、不良なものを(×)
とした。 (12)樹脂組成物のアイゾット衝撃強度 ASTM D256(23℃,Vノッチ付き)により測
定した。 (13)樹脂組成物の引張強度 ASTM 638に準拠して測定した。
【0093】実施例1〜4に示すとおり、本発明による
レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物は、マーキン
グ性、耐衝撃性及び剛性が物性バランス良く、優れたも
のであった。
【0094】しかし、比較例1、2で得られた樹脂組成
物は、アセトン可溶性樹脂成分の酸価が本発明で特定し
た範囲外であったため、マーキング性、耐衝撃性及び剛
性の物性バランスが悪く、いずれかが劣るものであっ
た。また、比較例3〜6で得られた樹脂組成物は、カー
ボンブラックや四酸化三鉄の含有量が不適当であったの
でレーザーマーキング性が劣っていた。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【発明の効果】本発明によると、マーキング性、耐衝撃
性及び剛性が物性バランス良く優れているレーザーマー
キング用熱可塑性樹脂組成物とすることができ、また、
この樹脂組成物を効果的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いるゴム強化スチレン系樹脂
(I)を製造する工程における製造装置の一実施態様を
示す装置縦断面概略図である。
【符号の説明】
1:反応槽 11:ヘリカルリボン翼
2:予熱機 3:脱モノマー機 31:ベント口 4:溶融混練域 41:水注入口 4
2:ベント口 5:フィーダー 6:吐出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 3/22 B41M 5/26 S Fターム(参考) 2H111 HA00 HA14 HA23 HA35 4F071 AA12 AA22 AA33 AA34 AA77 AF14 AF23 AH12 BA01 BB05 BC07 4J002 BC041 BG041 BG101 BN131 BN141 BN161 DA036 FD016 GQ00 4J026 AA16 AA17 AA44 AA49 AC10 AC11 AC18 AC32 BA04 BA05 BA06 BA26 BA31 DA02 DA04 DA13 DA15 DB05 DB07 FA03 GA02

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム強化スチレン系樹脂(I)100重
    量部に対して、カーボンブラック(II)0.0001〜
    0.5重量部および/または四酸化三鉄(III)0.0
    01〜5重量部が配合されてなる熱可塑性樹脂組成物で
    あって、該樹脂組成物中に含まれるアセトン可溶性樹脂
    成分は、芳香族ビニル系単量体(a1)5〜70重量
    %、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a
    2)30〜95重量%、シアン化ビニル系単量体(a
    3)0〜50重量%及びこれらと共重合可能な他の単量
    体(a4)0〜50重量%からなる単量体組成を有する
    ものであり、かつ、アセトン可溶性樹脂成分の酸価が
    0.01〜1mgKOH/gであることを特徴とするレ
    ーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 樹脂組成物中に含まれるアセトン可溶性
    樹脂成分は、該樹脂成分を構成する芳香族ビニル系単量
    体(a1)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量
    体(a2)との重量比(φST/φMMA)の組成分布にお
    いて、その重量比(φST/φMMA)の平均値の0.75
    〜1.2倍の範囲内に、アセトン可溶性樹脂成分の80
    重%以上の部分が含まれる請求項1記載のレーザーマー
    キング用熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 ゴム強化スチレン系樹脂(I)が、ビニ
    ル系単量体混合物(a)を共重合してなる共重合体
    (A)10〜95重量部、および、ゴム質重合体(b)
    の存在下にビニル系単量体混合物(c)をグラフト重合
    してなるゴム質含有グラフト共重合体(B)90〜5重
    量部からなる請求項1又は2記載のレーザーマーキング
    用熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 ビニル系単量体混合物(a)及びビニル
    系単量体混合物(c)が、芳香族ビニル系単量体(a
    1)5〜70重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステ
    ル系単量体(a2)30〜95重量%、シアン化ビニル
    系単量体(a3)0〜50重量%およびこれらと共重合
    可能な他の単量体(a4)0〜50重量%からなり、か
    つ、不飽和カルボン酸系単量体(但し不飽和カルボン酸
    アルキルエステル系単量体(a2)を除く)(a5)を
    実質的に含有しない単量体混合物である請求項3記載の
    レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 共重合体(A)とゴム質含有グラフト共
    重合体(B)とを溶融混合してゴム強化スチレン系樹脂
    (I)を製造し、さらにカーボンブラック(II)および
    /または四酸化三鉄(III)を混合することにより請求
    項3又は4記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組
    成物を製造する方法において、共重合体(A)との混合
    に供するゴム質含有グラフト共重合体(B)が、乳化剤
    を0.1〜5重量%含有していることを特徴とするレー
    ザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 共重合体(A)との混合に供するゴム質
    含有グラフト共重合体(B)が、水分率0.1〜5重量
    %である請求項5記載のレーザーマーキング用熱可塑性
    樹脂組成物の製造方法。
  7. 【請求項7】 ビニル系単量体混合物(a)を連続塊状
    重合または連続溶液重合することにより共重合体(A)
    を製造し、続いて溶融状態の共重合体(A)にゴム質含
    有グラフト共重合体(B)を添加し、溶融混合する方法
    によりゴム強化スチレン系樹脂(I)を連続的に製造す
    る請求項5又は6記載のレーザーマーキング用熱可塑性
    樹脂組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 ビニル系単量体混合物(a)の連続塊状
    重合または連続溶液重合に続いて脱モノマーを行うこと
    により共重合体(A)を製造する工程における脱モノマ
    ー工程の途中もしくは脱モノマー工程の後、溶融状態の
    共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重合体(B)を
    添加し、溶融混合する方法によりゴム強化スチレン系樹
    脂(I)を連続的に製造する請求項5又は6記載のレー
    ザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  9. 【請求項9】 ゴム質含有グラフト共重合体(B)と混
    合される時の共重合体(A)は、残存モノマー量が10
    重量%以下である請求項5〜8のいずれかに記載のレー
    ザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  10. 【請求項10】 共重合体(A)との混合に供される時
    のゴム質含有グラフト共重合体(B)は、半溶融もしく
    は溶融状態である請求項5〜9のいずれかに記載のレー
    ザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  11. 【請求項11】 共重合体(A)とゴム質含有グラフト
    共重合体(B)とを混合し溶融混練する工程の途中で、
    水を、ゴム強化スチレン系樹脂(I)に対して0.1〜
    5重量%の量添加する請求項5〜10のいずれかに記載
    のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造方
    法。
  12. 【請求項12】請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ
    ーマーキング用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザーマ
    ーキング用熱可塑性樹脂成形品。
  13. 【請求項13】成形品中において、カーボンブラック
    (II)および/または四酸化三鉄(III)が平均粒子径
    2μm以下で存在することを特徴とする請求項12記載
    のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂成形品。
JP2001071859A 2001-03-14 2001-03-14 レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 Pending JP2002265744A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001071859A JP2002265744A (ja) 2001-03-14 2001-03-14 レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001071859A JP2002265744A (ja) 2001-03-14 2001-03-14 レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002265744A true JP2002265744A (ja) 2002-09-18

Family

ID=18929527

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001071859A Pending JP2002265744A (ja) 2001-03-14 2001-03-14 レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002265744A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005062305A (ja) * 2003-08-08 2005-03-10 Fuji Xerox Co Ltd 表示デバイス用粒子の製造方法、表示デバイス用粒子、および、これを用いた画像表示媒体および画像形成装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005062305A (ja) * 2003-08-08 2005-03-10 Fuji Xerox Co Ltd 表示デバイス用粒子の製造方法、表示デバイス用粒子、および、これを用いた画像表示媒体および画像形成装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6519709B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物の製造方法、成形品及び成形品の製造方法
JP6686440B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法およびその成形品
US6716917B2 (en) Rubber-reinforced styrene transparent resin composition and method of producing the same
JP2001031833A (ja) 透明性を有する熱可塑性樹脂組成物
JP2010116427A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2011132426A (ja) ゴム強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JPH08259777A (ja) 肥大化ゴムラテックスおよびそれを用いたabs系樹脂組成物
JP5044869B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP4802410B2 (ja) ゴム強化スチレン系透明樹脂組成物の製造方法
JP6984730B2 (ja) スチレン系熱可塑性樹脂組成物、スチレン系熱可塑性樹脂組成物の製造方法、成形品及び成形品の製造方法
JP3109378B2 (ja) 耐衝撃性樹脂組成物の製造方法
JP2002265744A (ja) レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法
JP2000178405A (ja) 樹脂組成物及びその製造方法
JP2002179873A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2005343946A (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JP4003484B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JP2006265291A (ja) 難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JP6844753B1 (ja) ポリジメチルシロキサンガム混合物、および、それを添加したポリジメチルシロキサンガム含有熱可塑性樹脂組成物
JP3158901B2 (ja) 耐衝撃性樹脂組成物の製造方法
KR100353758B1 (ko) 내충격성수지조성물의제조방법
JP3536793B2 (ja) 耐衝撃性樹脂組成物
JPH04198261A (ja) 低温耐衝撃性樹脂組成物
JP2008174684A (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法
JP2000080133A (ja) グラフト重合体およびそれからなる熱可塑性樹脂組成物
JP2000273257A (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびシート成形品