JP4068141B2 - 音響補正装置 - Google Patents
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Description
1.技術分野
本発明はオーディオ強調システム、特にステレオ音響の再生の現実性を改良するように設計されたシステムおよび方法に関する。特に本発明は音響システム内のスピーカが理想的に位置付けられていないときに生じるような聴取者により知覚されるときの音響システムの音響上の欠点を克服するための装置に関する。
2.発明の背景
音響再生環境では、聴取者により知覚されるとき種々の要因が再生される音響の品質を劣化するように作用する。このような要因は音響の再生を本来の音響ステージの音響と区別する。1つのこのような要因は音響ステージのスピーカの位置であり、これは不適切に位置付けられるならば、可聴周波数スペクトルにわたって歪んだ音圧応答が生じる。スピーカの位置はまた音響ステージの知覚幅に影響を与える。例えば、スピーカは、生の音響ステージで容易に知覚される反響音の再生能力を限定する点音源として作用する。実際、多数の音響再生システムの知覚される音響ステージ幅は、1対のスピーカが聴取者の正面に位置するとき、これらのスピーカを分離する距離に限定される。再生音の品質を劣化する別の要因は人間の聴覚システムが音響を知覚する方法と異なった方法で音響を記録するマイクロホンにより生じる。再生音の品質を劣化する要因を克服するため、生の音響ステージで聴取者により聴取される音響を模倣するため音響再生環境特性を変更する無数の努力が行われている。
ステレオイメージ強調に関する努力は人間の耳の音響能力および制限にそそがれている。人間の耳の聴覚応答は音の強度、ある音間の位相差、音自体の周波数、音が発生する方向に感度がある。人間の聴覚システムの複雑さにもかかわらず、人間の耳の周波数応答は個人差がなく比較的一定である。
全周波数にわたって一定の音圧レベルをもつ音波が1つの位置から聴取者に導かれるとき、人間の耳は音響の個々の周波数成分に対して異なった反応をする。例えば、等しい音圧の音が聴取者の正面から聴取者へ導かれる時、1000ヘルツの音により聴取者の耳内で生成される圧力レベルは、2000ヘルツの音により生成される圧力レベルと異なっている。
周波数感度に加えて、人間の聴覚システムは種々の角度から耳に入る音に対して異なった反応をする。特に、人間の耳内の音圧レベルは音の方向で変化する。外耳または耳介、および内耳管は方向の関数として音響の周波数特性の形状に大きな影響を与える。
人間の聴覚応答特性は音源の方位変化および上下変化の両者に感度がある。これは特に複雑な音響信号、即ち多数の周波数成分を有する音響信号および、一般的に高い周波数成分に対して正しい。耳内の音圧の変動は脳によって音源の指示をするため解釈される。記録された音響が再生されるとき、音圧情報から耳により解釈されるとき音源の方向指示はしたがって音を再生するスピーカの実際位置に依存している。
一定の音圧レベル、即ち“フラットな”音圧対周波数応答特性は聴取者の正面に直接位置される高声器から聴取者の耳で捕捉されることができる。このような応答特性はしばしば現実的なサウンドイメージを実現するのに望ましい。しかしながら、1組のスピーカの品質は理想よりも低く、これらは最も音響的に所望される位置に配置されていない。このような両要因はしばしば混乱した音圧特性を生じる。従来技術のシステムは、空間的に正確な応答特性を生成し、それによって結果的なサウンドイメージを改良するためにスピーカから発生される音圧を“補正する”方法を開示している。
所定のシステムのさらに空間的に正確な応答を達成するために、頭部に関連する伝達機能(HRTF)を選択しこれをオーディオ信号に適用することが知られている。HRTFは人間の聴覚システムの音響に基づいている。HRTFの応用は、空間的歪みを補償するためにオーディオ信号の部分の振幅を調節するために使用されている。HRTFベースの原理はまた最適ではない位置に置かれた高声器からステレオイメージを再度位置付けるためにも使用されてよい。
音響再生システム内の音響上の欠点を補正するために従来技術で行われた努力はしばしば自動車音響システムに存在する欠点にそそがれている。1つのこのような試みがKunugi氏による米国特許第4,648,117号と、Tokumo氏による米国特許第4,622,691号の両明細書に記載されている。これらの明細書には、音響吸収レベルを補正し、音波の干渉を防止するシステムが自動車内で使用するために記載されている。開示されたシステムは所望の周波数応答特性を実現するために音圧補正回路と信号遅延回路を含んでいる。音圧補正は3段階で行われる音響信号の高周波数のブーストにより実現される。第1の段は自動車の平均吸音係数の高周波数補正であり、第2の高周波数補正段は特定の自動車の音吸収係数に依存され、第3の高周波数補正係数は自動車内に着席している搭乗者数に依存される。
Satoh氏による米国特許第5,146,507号明細書では、音響再生システム制御装置は標準的な周波数応答特性と一致するように所定の再生環境の周波数応答特性を補正するために開示されている。Satoh氏のシステムは自動車内等の音響フィールドの左前、右前、左後、右後のスピーカに導かれる音響信号の補正パラメータを与える。周波数および反響に関連する予め記録された音響特性は音響再生制御装置を種々の音響環境に適合するために利用される。
自動車内の周波数応答特性を変更するように設計された別のシステムはKnibbeler氏の米国特許第4,888,809号明細書に開示されている。Knibbeler氏のシステムは1対のフィルタユニットの調節によって、自動車搭乗者コンパートメントの前部および後部位置等の2つの別々の一致しない聴取位置でフラットな周波数応答を生成することを試みている。各フィルタユニットは入力信号を受信し、対応する音響トランスデューサへ転送される出力信号に影響を与える。
さらにその他の米国特許明細書は周波数応答特性を等化するためにオーディオ信号を変化させる音響システムを開示している。このような特許明細書はLowe氏による米国特許第5,371,799号と、Date氏による米国特許第5,325,435号と、Aylward氏による米国特許第5,228,085号と、Sadaie氏による米国特許第5,033,092号と、van den Berg氏による米国特許第4,393,270号と、Yamada氏による米国特許第4,329,544号明細書を含んでいる。
[発明の要約]
従来技術の貢献にもかかわらず、歪まされた空間的特性を有する種々の音響再生環境に容易に適合されることができるイメージ補正装置の必要性が存在する。補正されたステレオイメージを空間的に強調するためイメージ強調装置と共に動作するこのようなイメージ補正システムの必要性も存在する。
ここで説明されているような音響補正装置および、その関連する動作方法は不完全な再生環境のサウンドイメージを改良するための精巧で効率的なシステムを提供する。
改良されたステレオイメージを得るため、イメージ補正装置は入力信号を第1、第2の周波数範囲に分割し、これは実質上集合的に全てのオーディオ周波数スペクトルを含んでいる。第1、第2の周波数範囲内の入力信号の周波数応答特性は別々に補正され結合され、それによって聴取者に関して比較的フラットな周波数応答特性を有する出力信号を発生する。周波数補正のレベル、即ち音響エネルギ補正のレベルは再生環境に依存し、このような環境の音響制限を克服するように調整される。音響補正装置の設計は、空間的に補正され再度位置付けられたサウンドイメージを実現するために個々の周波数範囲内の入力信号を容易に独立して補正することを可能にする。
音響再生環境内で、スピーカは聴取者の耳から離れた位置に配置され、それによって聴取者により知覚されるサウンドイメージに悪影響を与える。例えば、自動車内で、低音、中音、高音範囲のオーディオ信号を発生するスピーカは聴取者の耳より下のドアパネル中に配置される。本発明の音響補正装置はサウンドイメージを聴取者の耳レベルの近くの見掛けの位置に再度位置付ける。
ある音響再生環境では、高周波数トランスデューサまたはトウィターが中音範囲または低周波数トランスデューサ、即ち中音範囲スピーカまたはウーハーから離れた位置に配置される。自動車では中音範囲スピーカはしばしばドアパネルまたは聴取者の足または脚部近くに位置する類似の位置に配置される。しかしながら、トウィターは周囲の物体による干渉または吸収を避けるため聴取者の耳のレベル近辺または上方に位置される。小さいサイズのトウィターは自動車内でこのような離れた位置させることを可能にする。トウィターが聴取者の耳の付近に配置されたとき、高周波数範囲中の聴取者の耳の音圧レベルは対応する低周波数範囲よりも大きくなる。したがって音響補正装置は、高周波数成分の補正が正または負であるように設計される。即ち、高周波数成分は離れた位置のトウィターを補償するため低周波数成分に関してブーストされるか減衰される。
音響補正装置の適用により、オーディオ信号の再生によって生成されるステレオイメージは、スピーカの位置と異なった垂直および/または水平位置を有する知覚される音源を与えるために空間的に補正されてもよい。聴取者により知覚される正確な音源は空間的補正レベルに依存する。自動車についての状況では、ここで記載した音響補正装置がドア取付けスピーカを伴って使用され、それによって搭乗者の耳に実質上フラットな周波数応答特性を実現する。このような応答特性は見掛けのステレオイメージを適切な耳レベルで聴取者の正面の位置に生成する。
知覚される音源が空間的歪みの補正によって一度得られたならば、補正されたオーディオ信号は拡張されたステレオイメージを提供するために強調される。好ましい実施形態にしたがって、再度位置付けられたオーディオイメージのステレオイメージ強調は現実的な音響ステージに聴取者を収容するために人間の聴覚の音響原理を考慮している。自動車内部のように聴取位置が比較的固定している音響再生環境では、オーディオ信号に対して適用されるステレオイメージ強調量は聴取者に関するスピーカの実際位置により部分的に決定される。
本発明の好ましい1観点にしたがって、オーディオ補正装置は、自動車の運転者席にいる聴取者に関して自動車の音響システムにより放射されるステレオイメージを空間的に強調するための自動車の自動車音響システムに適合可能である。自動車は前部搭乗者席を有し、自動車音響システムは自動車の運転者側のドアと搭乗者側のドア内にそれぞれ取付けられた1対のスピーカを具備しており、ここではスピーカは聴取者の両耳の下方に位置されている。
好ましいオーディオ補正装置は、ステレオ音響信号を受信するため自動車音響システムに接続されたステレオイメージ補正回路を具備し、ステレオ音響信号はスピーカにより再生される時に聴取者に関するオーディオ歪みを示し、イメージ補正回路は補正されたステレオ音響信号を発生するためステレオ音響信号の成分を変更し、補正されたステレオ音響信号は、オーディオ歪みを補償し、それによって補正されたステレオ音響信号がスピーカにより再生されるときに聴取者に対して見掛けのサウンドイメージを与える。
さらに、好ましいオーディオ補正装置は、見掛けのサウンドイメージを広くするために補正されたステレオ音響信号を受信するステレオイメージ強調回路を具備し、そのステレオイメージ強調回路はスピーカにより再生するため空間的に強調された音響信号を発生するようにステレオ音響信号を変更し、イメージ強調回路はステレオ音響信号のステレオ情報内容を分離する手段と、周波数の関数として前記ステレオ情報内容へ振幅ブーストのレベルを提供する等化装置とを具備し、ここで前記ブーストのレベルは最大利得が200ヘルツより下、最小利得が1kHzと5kHz間であることを特徴とし、さらにイメージ強調回路は、前記ステレオ情報内容と前記ステレオ信号とを結合し前記空間的に強調された音響信号を発生する手段を具備している。
別の実施形態では、ステレオイメージ補正回路は可聴周波数スペクトルを低い周波数範囲と、その低い周波数範囲に関して高い周波数範囲とに分割し、イメージ補正回路は低い周波数範囲内のステレオ音響信号の成分を高い周波数範囲内の成分と独立して変化させる。
別の実施形態では、歪みがドア内のスピーカの位置から生じ、それによってスピーカはそれぞれの聴取者の側方へ指向され、スピーカは聴取者の耳が音響分散角度外に実質上位置されるような音響分散角度を特徴としている。
別の実施形態では、スピーカにより空間的に強調された音響信号の再生は聴取者方向に見掛けのサウンドイメージを回転する見掛け上の効果を有し、ここでステレオ情報内容信号の最小利得は聴取者に関するスピーカシステムの位置の関数である。別の実施形態では歪みは自動車内部の吸音特性から生じる。
本発明の別の観点によれば、オーディオ強調装置は音響再生環境内に固定位置を有するスピーカシステムにより再生するためステレオ再生装置によって与えられた左および右ステレオ入力信号に作用し、強調装置は入力信号が音響再生環境内のスピーカシステムにより再生されるときに起こる音響制限を補償することによって改良されたステレオイメージを生成するためにステレオ入力信号を変化させる。オーディオ強調装置はエネルギ補正された左および右ステレオ信号を発生するために左および右ステレオ入力信号を受信し、入力信号を変更するステレオイメージ補正回路を具備し、エネルギ補正された左および右ステレオ信号は、音響再生環境でスピーカシステムにより再生され聴取者により聴取されたとき補正された空間的応答を生成し、補正された空間的応答は、聴取者に現実的であり再指向された音響経験を与えるために聴取者に関して見掛け上のサウンドイメージを生成する。
オーディオ強調装置のこの実施形態はさらに見掛け上のサウンドイメージを強調するように、エネルギ補正された左および右ステレオ信号を受信し、強調された左および右ステレオ信号を発生するためのステレオイメージ強調回路を具備し、それによって強調された左および右ステレオ信号がスピーカシステムにより再生されるとき、聴取者により知覚される改良されたサウンドイメージを提供し、エネルギ補正された左および右信号はエネルギ補正された左信号と右信号間の差を表す第1の差信号成分を特徴とし、強調された左および右ステレオ信号は強調された左信号と右信号間の差を表す第2の差信号成分を特徴とし、第2の差信号成分は第1の差信号成分に関して選択的に等化される。
別の実施形態では、音響限定は聴取者に関するスピーカシステムの固定位置の関数である。別の実施形態では音響限定はスピーカシステムの固有の特性である。さらに別の実施形態では、見掛け上のサウンドイメージはスピーカシステムの方位および上下角とは異なった聴取者に関する方位および上下角により限定される。
別の実施形態では、音響限定は聴取者に関するスピーカシステムの固定位置の関数および音響再生環境の吸音特性の関数である。さらに別の実施形態では、補正された空間的応答特性は100Hzを越える全ての可聴周波数にわたって聴取者に関して実質上一定の音圧エネルギレベルを特徴とする。
別の実施形態では、ステレオイメージ補正回路は、第1の補正されたステレオ信号成分を発生するため第1の周波数範囲内の左および右入力信号成分を変更する第1の補正回路と、第2の補正されたステレオ信号成分を発生するため第2の周波数範囲内の左および右入力信号成分を別々に変更する第2の補正回路と、第1と第2の補正されたステレオ信号成分を結合し、エネルギ補正された左および右信号を発生する手段とを具備している。
別の実施形態では、結合する手段はエネルギ補正された左および右信号を発生するためにそれぞれ1つ1つの入力信号を第1、第2の補正されたステレオ信号成分と結合する。さらに別の実施形態では、第1の補正されたステレオ信号成分は約100Hz乃至1kHzの範囲の周波数を有する信号を含み、第2の補正されたステレオ信号成分は約1kHz乃至10kHzの範囲の周波数を有する信号を含んでいる。
別の実施形態では、第2の補正されたステレオ信号成分はエネルギ補正回路により減衰される。さらに別の実施形態では、第2の補正回路は第2の補正されたステレオ信号成分を発生するために第2の周波数範囲内の入力信号成分を強調し、結合手段はさらに第1の位置および第2の位置を有するスイッチを具備しており、第2の補正されたステレオ信号成分はスイッチが第1の位置にあるとき結合手段により第1の補正されたステレオ信号成分に付加され、第2の補正されたステレオ信号成分はスイッチが第2の位置にあるとき第1の補正されたステレオ信号成分から減算される。
別の実施形態では、ステレオイメージ強調回路は遠近法等化曲線を第1の差信号へ適用することにより第2の差信号を生成するために第1の差信号の周波数応答特性を変更するための等化装置を具備しており、遠近法等化曲線は約100〜200ヘルツの第1の周波数範囲内の最大利得周波数で発生する最大利得変化点を特徴とし、曲線は約1680〜5000ヘルツの第2の周波数範囲内の最小利得周波数で生じる最小利得変化点を特徴とする。
別の実施形態では、最大利得は約10〜15dBの範囲内にあり、最小利得は約0〜10dBの範囲内にある。さらに別の実施形態では最大利得、最大利得周波数、最小利得、最小利得周波数は聴取者に関するスピーカシステムの固定位置に依存している。付加的な実施形態では、遠近法等化曲線は(1)スピーカシステムから放射されて隣接する聴取者の耳に入る直接フィールドの音響通路と、(2)聴取者の前方視線に平行な平面との間の角度の関数である。
別の実施形態では、オーディオ強調装置はデジタル信号プロセッサによりデジタルフォーマットで構成される。さらに別の実施形態では、オーディオ強調装置はディスクリートな回路素子を使用して構成される。付加的な実施形態では、左および右ステレオ入力信号はモノラルのオーディオ信号源から合成して発生される。付加的な実施形態では、左および右ステレオ入力信号はオーディオ可視複合信号の一部である。
別の実施形態では、オーディオ強調装置はデジタルおよびアナログハイブリッド回路として構成されている。さらに別の実施形態ではオーディオ強調システムは半導体基体内に含まれている。付加的な実施形態では、オーディオ強調システムはマルチチップモジュール内に含まれている。
別の実施形態では、音響再生環境は、自動車の運転者の両側に位置する第1、第2のドアパネルを有する自動車の内部であり、スピーカシステムは第1のドアパネル内に位置する第1のスピーカと、第2のドアパネル内に位置する第2のスピーカとを具備している。さらに別の実施形態では、音響再生環境はキーボードを有する電子キーボードと関連され、ここでスピーカシステムは電子キーボード装置に接続されている第1、第2のスピーカを具備し、第1、第2のスピーカはキーボードの下方に位置されている。
本発明の別の観点にしたがって、ステレオ強調装置は1対のステレオ音響の左および右オーディオ信号を受信または入力し、処理された左および右オーディオ信号をスピーカシステムへ提供して処理された信号に対応するサウンドイメージを再生する。この実施形態のステレオ強調装置は補正された左および右オーディオ信号を発生するために左および右オーディオ信号の振幅レベルを選択的に変更する手段を具備し、補正された左および右オーディオ信号は補正された信号がスピーカシステムにより再生されるとき聴取者に関して知覚されるサウンドイメージの音源を与え、知覚される音源はサウンドイメージの実際の音源と異なっており、さらにステレオ強調装置は、左および右オーディオ信号に存在する反響音響エネルギを強調するために補正された左および右オーディオ信号を強調する手段を具備し、この強調する手段は処理された左および右オーディオ信号を発生する。
別の実施形態では、補正された信号を強調する手段は予め定められた量だけ差信号の選択された周波数成分を増幅し、ステレオ情報量を表す差信号は補正された左および右オーディオ信号に存在し、予め定められた量はサウンドイメージの実際の音源の関数として決定される。さらに別の実施形態では、スピーカシステムによる左および右オーディオ信号の再生は聴取者に関して第1の周波数依存音圧応答特性を生成し、知覚される音源に位置されたスピーカシステムによる左および右オーディオ信号の再生は聴取者に関して第2の周波数依存音圧応答特性を生成し、補正された左および右オーディオ信号は、これらがスピーカシステムにより再生されるとき聴取者に関して第2の周波数依存音圧応答特性を発生する。
別の実施形態では、選択的に変更する手段は立体音的オーディオ信号を低周波数成分と高周波数成分とに分割する手段と、低周波および高周波のエネルギ補正されたオーディオ信号を発生するために低周波数成分と高周波数成分とを等化する手段と、補正された左および右オーディオ信号を発生するために低および高周のエネルギ補正されたオーディオ信号を結合する手段とをさらに具備している。
別の実施形態では、低周波数成分は約100〜1000Hzの周波数範囲内に含まれ、高周波数成分は約1000〜10,000Hzの周波数範囲内に含まれている。さらに別の実施形態では、低周波数成分は立体音的オーディオ信号の第1の周波数範囲に対応し、高周波数成分は立体音的オーディオ信号の第2の周波数範囲に対応し、低周波数成分は第1の周波数範囲にわたって強調され、高周波数成分は第2の周波数範囲にわたって減衰される。
別の実施形態では、強調する手段は、補正された左オーディオ信号と補正された右オーディオ信号の合計を表す合計信号を発生する手段と、補正された左オーディオ信号と補正された右オーディオ信号の差を表す差信号を発生する手段と、処理された差信号を生成するために第1、第2の周波数範囲内の差信号の成分を第3の周波数範囲内の差信号の成分に関して増加させる手段とを具備し、第3の周波数範囲は第1の周波数範囲よりも大きく、第2の周波数範囲よりも小さく、さらに強調する手段は処理された左および右オーディオ信号を発生するために合計信号と処理された差信号を結合する手段を具備している。
別の実施形態では、差信号は第3の周波数範囲内の最小利得周波数で生じる最小利得変化点を有し、この最小利得変化点はサウンドイメージの実際の音源の関数として決定される。さらに別の実施形態では、第1、第2、第3の周波数範囲内の差信号成分は強調する手段により全て増幅される。
本発明の別の観点にしたがって、空間的強調装置は音響再生環境内に位置するスピーカシステムから放射される立体音的イメージを再指向し、強調する。本発明のこの観点では、空間強調装置はオーディオ入力信号を受信し、補正されたオーディオ信号を発生する音響イメージ補正回路を具備し、オーディオ入力信号はスピーカシステムにより再生されるとき聴取者に関して第1の音圧応答特性を生成し、補正されたオーディオ信号はスピーカシステムにより再生されるとき第2の音圧応答特性を発生し、第2の音圧応答特性は聴取者に関してスピーカシステムの見掛け上の位置に対応する見掛け上のステレオイメージを生成し、さらに強調装置はスピーカシステムにより再生されるように補正されたオーディオ信号を受信し、強調されたオーディオ信号を提供する音響イメージ強調回路を具備し、強調されたオーディオ信号は見掛け上のステレオイメージを広くするため補正されたオーディオ信号に関して等化される。
別の実施形態では、補正されたオーディオ信号はそれに存在するステレオ情報量を表す差信号を有する立体音的信号であり、音響イメージ強調回路は見掛け上のステレオイメージを広くするために補正されたオーディオ信号の反響音響エネルギを強調するため差信号を等化する。
別の実施形態では、補正されたオーディオ信号は、補正されたオーディオ信号に存在するステレオ情報量を表した差信号を含む立体音的信号であり、音響イメージ強調回路は処理された差信号を発生するため等化の遠近法レベルにしたがって差信号を等化し、等化の遠近法レベルは差信号の周波数に関して変化し、約100〜200ヘルツの第1の周波数範囲内の最大利得周波数で発生する最大利得と、約1680〜5000Hzの第2の周波数範囲内の最小利得周波数で生じる最小利得とを特徴とし、等化レベルは最小利得周波数方向へ第1の周波数より下、第1の周波数範囲よりも上で減少し、等化レベルはさらに最小利得周波数より上で増加する。本発明のさらに別の実施形態では、最大利得および最小利得は音響再生環境内の聴取者に関するスピーカシステムの実際位置の関数である。
本発明の別の実施形態では、差信号の等化レベルはさらに最大利得に関する差信号の低音減衰を特徴とし、低音減衰は最大利得周波数の下方で生じ、低音減衰は差信号周波数の減少により増加する。さらに別の実施形態では、最大利得および最小利得はプリセット利得レベルに固定され、最大利得および最小利得はスピーカシステムの実際位置から放射され聴取者の耳に到達する直接フィールド音響の入射角度に依存している。
別の実施形態では、音響イメージ補正回路は、オーディオ入力信号を受信し、第1のフィルタ処理された出力信号を提供する第1のフィルタを具備し、この第1のフィルタは第1の転移帯域を含む周波数応答特性を有し、オーディオ入力信号は周波数の関数として第1の転移帯域を通じて変更される振幅レベルを有し、さらに音響イメージ補正回路は、オーディオ入力信号を受信し第2のフィルタ処理された出力信号を提供する第2のオーディオフィルタを具備し、この第2のオーディオフィルタは第2の転移帯域を含む周波数応答特性を有し、オーディオ入力信号は周波数の関数として第2の転移帯域を通じて変更される振幅レベルを有し、さらに音響イメージ補正回路は第1、第2のフィルタ処理された出力信号の振幅レベルを増加して第1、第2のフィルタ処理された出力信号をオーディオ入力信号と結合し、補正されたオーディオ信号を発生する増幅器を具備しており、補正されたオーディオ信号はスピーカシステムにより再生されるとき見掛け上のステレオイメージを生成する。
本発明の別の実施形態では、オーディオ入力信号は左入力信号と右入力信号を含み、音響イメージ補正回路は左入力信号を処理するために左入力信号を受信し補正された左オーディオ信号を発生する第1のエネルギ補正装置を具備し、この第1のエネルギ補正装置は、左入力信号を受信して補正された低周波数左信号を提供し第1の周波数範囲内の左入力信号の振幅成分を増加する低周波数補正回路と、左入力信号を受信して補正された高周波数左信号を提供し第2の周波数範囲内の左入力信号の振幅成分を調節する高周波数補正回路と、補正された左オーディオ信号を発生するために補正された低周波数左信号と高周波数左信号を結合する手段と、補正された右オーディオ信号を発生するため右入力信号を受信する第2のエネルギ補正装置とを具備している。
第2のエネルギ補正装置はさらに、右入力信号を受信して補正された低周波数右信号を提供し、第1の周波数範囲内の右入力信号の振幅成分を増加する低周波数補正回路と、右入力信号を受信して補正された高周波数右信号を提供し、第2の周波数範囲内の右入力信号の振幅成分を調節する高周波数補正回路と、補正された右オーディオ信号を発生するために補正された低周波数右信号と高周波数右信号を結合する手段とを具備している。
別の実施形態では、音響再生環境は自動車内部であり、自動車はダッシュボードを有し、見掛け上のステレオイメージが聴取者方向へダッシュボードの方向から発生する。さらに別の実施形態では、音響再生環境は屋外の区域であり、ここでは聴取者は音響再生環境内の複数の位置にいてもよい。
別の実施形態では、音響イメージ強調回路は、音響イメージ補正回路により供給される補正された左および右オーディオ信号を入力して差信号と合計信号を発生する第1の合計回路網を具備し、差信号は補正された左および右オーディオ信号中に存在するステレオ情報量を表しており、さらに音響イメージ強調回路は、第1の合計回路網に接続された等化装置を具備し、この等化装置は差信号の周波数応答特性を変更して処理された差信号の周波数に関して変化する等化レベルを有する処理された差信号を生成する。
この実施形態の等化レベルは、約100〜200Hzの最大利得周波数で生じる最大利得と、約1680〜5000Hzの最小利得周波数で生じる最小利得と、最大利得に関する差信号の中範囲減衰とを特徴とし、中範囲減衰は最大利得周波数より上で生じ、最大利得周波数まで差信号周波数の対応する増加により増加し、中範囲減衰は差信号周波数の増加により最小利得周波数より上で減少する。
この実施形態の音響イメージ強調回路はさらに、処理された差信号を受信し、これを合計信号および補正された左オーディオ信号と結合してスピーカシステムにより再生するための強調された左出力信号を発生する信号ミキサを具備しており、信号ミキサは処理された差信号を合計信号および補正された右オーディオ信号と結合し、それによってスピーカシステムにより再生するための強調された右出力信号を発生する。
本発明の別の観点によれば、音響エネルギ補正装置は、ステレオ信号がスピーカシステムにより再生されるとき、スピーカシステムの音響上の欠点を克服するためにステレオ信号のスペクトル密度を変化させる。本発明のこの観点では、音響エネルギ補正装置はステレオ信号がスピーカシステムにより再生されるとき、聴取者に関して所望の音響空間応答を得るためにステレオ信号を受信してステレオ信号の振幅を調節する補償回路を具備し、この補償回路は第1の補正されたステレオ信号を発生するためにステレオ信号を受信して第1の周波数範囲にわたって周波数の第1の関数としてステレオ信号を増加させる第1の補正回路と、第2の補正されたステレオ信号を発生するためにステレオ信号を受信して第2の周波数範囲にわたって周波数の第2の関数としてステレオ信号を調節する第2の補正回路とを具備し、周波数の第1の関数は周波数の第2の関数と独立しており、さらにエネルギ補正された出力信号を発生するため第1、第2の補正されたステレオ信号を結合する手段を具備している。
別の実施形態では、第1の周波数範囲は約1000Hzより下の可聴周波数を含み、第2の周波数範囲は約1000Hzより上の可聴周波数を含んでいる。さらに別の実施形態では、ステレオ信号は結合する手段によって第1、第2の補正されたステレオ信号と結合される。付加的な実施形態では、第1の補正回路により供給される増加レベルは周波数の対応する増加により増加する。
別の実施形態では、第2の補正回路は第2の周波数範囲内のステレオ信号を増加させ、その増加は周波数の対応する増加によって増加するレベルを有する。さらに別の実施形態では、第2の補正回路は第2の周波数範囲内のステレオ信号を減衰させる。
付加的な実施形態では、音響エネルギ補正装置はさらに、第2の補正されたステレオ信号を受信し、結合する手段に接続されている出力を備えている電子スイッチを含んでおり、この電子スイッチは第1、第2の位置を有し、第1、第2の補正されたステレオ信号は、スイッチが第1の位置にあるとき結合する手段により加算され、スイッチが第2の位置にあるとき第2の補正されたステレオ信号は第1の補正されたステレオ信号から減算される。
本発明の別の観点にしたがって、電子装置は音響トランスデューサにより再生された音響信号から見掛け上のサウンドイメージを生成する。本発明のこの観点において、電子装置は、音響信号を受信して第1のフィルタ処理された出力信号を提供する第1のフィルタを具備し、この第1のフィルタは第1の通過帯域と第1の転移帯域とを有する周波数応答特性を有し、音響信号は周波数の関数として第1の転移帯域を通過して変更される振幅レベルと、第1の通過帯域内の実質上均一なレベルの変更とを有し、さらに電子装置は、音響信号を受信し第2のフィルタ処理された出力信号を提供する第2のオーディオフィルタを具備し、この第2のオーディオフィルタは第2の通過帯域と第2の転移帯域とを有する周波数応答特性を有し、音響信号は周波数の関数として第2の転移帯域を通過して変更される振幅レベルと、第2の通過帯域内の実質上均一なレベルの変更とを有し、さらに電子装置は、第1、第2のフィルタ処理された出力信号の振幅レベルを増加させ、第1、第2のフィルタ処理された出力信号を音響信号と結合してエネルギ補正された音響信号を発生する増幅手段を具備しており、エネルギ補正された音響信号は音響トランスデューサにより再生されるとき見掛け上のサウンドイメージを生成する。
別の実施形態では、第2のフィルタ処理された出力信号は、第1のフィルタ処理された出力信号および音響信号と結合するとき増幅手段により反転される。さらに別の実施形態では、第1、第2のオーディオフィルタはハイパスフィルタであり、第1の転移帯域は約100Hz〜1000Hzの周波数範囲を有し、第2の転移帯域は約1000Hz〜10kHzの周波数範囲を有する。
付加的な実施形態では、電子装置はさらに、エネルギ補正された音響信号を空間的に強調する手段を具備し、エネルギ補正された音響信号は左のエネルギ補正された信号と右のエネルギ補正された信号からなる。空間的に強調する手段は、エネルギ補正された左信号と右信号の合計を表す合計信号を発生する手段と、エネルギ補正された左信号とエネルギ補正された右信号との差を表す差信号を発生する手段と、第1、第2の周波数範囲内の差信号成分を第3の周波数範囲内の差信号成分に関して増加させる等化装置とを具備し、第3の周波数範囲は第1の周波数範囲よりも大きく、第2の周波数範囲よりも小さく、さらに空間的に強調する手段は合計信号と、処理された差信号とを結合して空間的に強調された左および右出力信号を発生する手段を具備している。
別の実施形態では、音響信号は左信号および右信号からなり、増幅手段は、フィルタ処理された出力信号の左信号成分を増加させる第1の増幅器と、フィルタ処理された出力信号の右信号成分を増加させる第2の増幅器とを具備し、第1、第2の増幅器はフィルタ処理された出力信号の可変レベルのブーストを行い、ブーストのレベルは第1および第2の連動された可変抵抗によって調節可能であり、第1および第2の連動された可変抵抗はフィルタ処理された出力信号を増幅手段へ伝送する。
本発明の付加的な観点は、オーディオ信号が音響システムでスピーカにより再生されるとき音響エネルギの歪みを補償するためにオーディオ信号を処理する方法を提供する。本発明のこの観点の方法は、(a)第1のフィルタ処理されたオーディオ信号を生成し、この信号は周波数の第1の転移帯域と第1の通過帯域を特徴とし、(b)第2のフィルタ処理されたオーディオ信号を生成し、この信号は周波数の第2の転移帯域と第2の通過帯域を特徴とし、(c)第1の転移帯域内の周波数の関数として第1のフィルタ処理されたオーディオ信号の振幅成分をブーストし、(d)第1の帯域通過内で一定量だけ第1のフィルタ処理されたオーディオ信号の振幅成分をブーストし、(e)第2の転移帯域内の周波数の関数として第2のフィルタ処理されたオーディオ信号の振幅成分を変更し、(f)第2の帯域通過内で一定量だけ第2のフィルタ処理されたオーディオ信号の振幅成分を変更し、(g)空間的に補正されたオーディオ信号を発生するため、ブーストされた第1のフィルタ処理されたオーディオ信号と、変更された第2のフィルタ処理されたオーディオ信号とを結合して空間的に補正されたオーディオ信号がスピーカにより再生されるとき補正されたサウンドイメージを生成し、(h)補正されたサウンドイメージを広げるために補正されたオーディオ信号を空間的に強調するステップを含んでいる。
別の実施形態では、第1の転移帯域は約1000ヘルツより下の周波数範囲であり、第1の通過帯域は約1000ヘルツを越える周波数を有し、第2の転移帯域は約1000〜10,000ヘルツの周波数範囲であり、第2の通過帯域は約10,000ヘルツを越える周波数を有する。別の実施形態では、補正されたオーディオ信号を空間的に強調するステップは、(a)空間的に補正されたオーディオ信号のステレオ情報内容を表す差信号を発生し、(b)遠近法等化曲線を差信号に適用することにより、処理された差信号を生成するために差信号を変化させるステップを含んでおり、遠近法等化曲線は約100〜200ヘルツの第1の周波数範囲内の最大利得周波数で生じる最大利得変化点を特徴とし、曲線は約1680〜5000ヘルツの第2の周波数範囲内の最小利得周波数で生じる最小利得変化点を特徴とする。
本発明の別の観点は、再生環境内に存在するスピーカシステムによってオーディオ信号が再生されるとき、オーディオ再生環境内の聴取者により知覚される音響の空間的な歪みを補償する方法を提供する。この方法は(a)オーディオ信号を第1の周波数範囲内の第1のグループの信号成分と、第2の周波数範囲内の第2のグループの信号成分に分離し、第1のグループの信号成分は約1000ヘルツより下の第1の周波数範囲内に含まれ、第2のグループの信号成分は約1000ヘルツを越える第2の周波数範囲内に含まれ、(b)第1の周波数範囲にわたって周波数の関数として第1のグループの信号成分の振幅レベルをブーストして第1の変更されたグループの信号成分を生成し、(c)第2の周波数範囲にわたって周波数の関数として第2のグループの信号成分の振幅レベルを調節して第2の変更されたグループの信号成分を生成し、(d)エネルギ補正されたオーディオ出力信号を生成するために、第1の変更されたグループの信号成分と、第2の変更されたグループの信号成分とを結合するステップを有する。
別の実施形態では、第2の変更されたグループの信号成分は第2のグループの信号成分に関して減衰される。さらに別の実施形態では、方法はさらに、第2の周波数範囲にわたって実質上一定量だけ第2の周波数範囲内のオーディオ信号の振幅レベルをブーストするステップを有し、この一定量は第1のグループの信号成分に行われるブーストの最大レベルに対応する。
【図面の簡単な説明】
本発明の上述の特徴、その他の特徴および利点は以下の図面を参照にした説明からさらに明らかになるであろう。
図1は、1対の入力ステレオ信号から現実的なステレオイメージを生成するためにステレオ強調回路に動作可能に接続されているステレオイメージ補正回路の概略ブロック図である。
図2は、自動車内部内のスピーカの配置を示している自動車を側面から見た図である。
図3は、自動車内部内のスピーカの配置を示している図2の自動車を上方から図である。
図4Aは、音響再生システムに対する所望の音圧対周波数特性のグラフである。
図4Bは、第1の音響再生環境に対応する音圧対周波数特性のグラフである。
図4Cは、第2の音響再生環境に対応する音圧対周波数特性のグラフである。
図4Dは、第3の音響再生環境に対応する音圧対周波数特性のグラフである。
図5は、1対の入力ステレオ信号から現実的なステレオイメージを生成するためのステレオイメージ強調回路に動作可能に接続されたエネルギ補正回路の概略ブロック図である。
図6Aは、本発明の好ましい実施形態にしたがった低周波数補正回路により与えられる種々のレベルの信号変形のグラフである。
図6Bは、本発明の好ましい実施形態にしたがったオーディオ信号の高周波数成分を増加するための高周波数補正回路により与えられる種々のレベルの信号変形のグラフである。
図6Cは、本発明の好ましい実施形態にしたがったオーディオ信号の高周波数成分を減衰するための高周波数補正回路により与えられる種々のレベルの信号変形のグラフである。
図6Dは、ステレオイメージを再度位置付けるための音圧補正の可能な範囲を示した複合エネルギ補正曲線のグラフである。
図7は、ステレオイメージ強調量の変化を実現するためオーディオ差信号に与えられた種々のレベルの等化のグラフである。
図8Aは、第1の位置に配置されているスピーカから聴取者により知覚され聴取された実際の音源を示した図である。
図8Bは、第2の位置に配置されているスピーカから聴取者により知覚され聴取された実際の音源を示した図である。
図9は、広い周波数範囲にわたるオーディオ信号の音圧レベルを変更するためのエネルギ補正回路の概略図である。
図10は、図9のエネルギ補正回路と共に使用するステレオイメージ強調回路の概略図である。
図11は、図9のエネルギ補正回路と共に使用するステレオイメージ強調回路の別の実施形態の概略図である。
図12は、本発明の別の実施形態で使用する低音ブースト回路の概略図である。
図13は、本発明の応用に適した第1の別の音響再生環境の図である。
図14は、本発明の応用に適した第2の別の音響再生環境の斜視図である。
[好ましい実施例の詳細な説明]
最初に図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態を示したブロック図が示されている。特に、音響補正システム20はステレオイメージ強調回路24に結合されているステレオイメージ補正回路22を具備している。イメージ補正回路22は左ステレオ信号26と右ステレオ信号28とを入力する。イメージ補正された左ステレオ信号Lcと右ステレオ信号Rcはそれぞれ通路27、29に沿ってステレオイメージ強調装置24へ送られる。ステレオイメージ強調回路24は信号LcとRcを処理し、左出力信号30と右出力信号32を与える。出力信号30、32はその後他の形態の信号処理回路に接続されてもよく、またこれらは直接スピーカ(図示せず)へ接続されてもよい。
本発明の好ましい実施形態では、ステレオイメージ補正回路22とステレオイメージ強調回路24は音響再生環境の音響上の欠点を克服するため共同して動作する。このような音響再生環境は劇場程の大きなものであってもよく、または電子キーボード程の小型サイズであってもよい。本発明の利点が特に有効であるこのような環境の1つは自動車内部である。
図2を参照すると、音響再生システムを有する自動車40が、自動車40の内部の席の配置とスピーカ配置を示すために側面を切断して示されている。同様に、図3では、音響再生システムの同一のスピーカ位置が上面から示されている。自動車40の内部は前部42と後部44に分割されることができる。自動車40の音響システムは前部搭乗者48の足または脚部近辺に取付けられた1対のドア取付けスピーカ46を含んでいる。同様に、自動車40の後部44も1対のドア取付けスピーカ50を含んでいる。ドアパネル内のスピーカ対46、50の位置は自動車製造業者のポピュラーな選択である。しかしながら、ある自動車ではドア取付けスピーカ46、50は後部荷台54に取付けられたスピーカ52に置換されるかそれを付加されてもよい。
さらに、ある自動車ステレオシステムは高周波音と異なった位置で中音域または低周波音域を再生するために分離したスピーカ位置を有する。図2の自動車40はこのようなステレオシステムを示している。特に、1対の高周波スピーカ56、即ちトウィターが搭乗者48の上方に取付けられている。スピーカ56の取付け位置はしばしば自動車40内の物体から生じる高周波音の歪みおよび干渉を防止することを意図している。スピーカ56の配置は小型のトウィターにより可能である。
図2で示されているスピーカ位置とは別に、製造業者または販売後に専門業者によって、自動車内の種々の他の可能な位置にスピーカが位置されてもよい。例えば、スピーカはダッシュボード55内またはドアパネル58の他の領域に位置されてもよい。自動車ステレオシステムのタイプまたはスピーカの位置にかかわらず、自動車内に着席している聴取者に関してステレオシステムから前面のステレオイメージを実現することが所望される。
図4Aは音響再生環境内の聴取者の外耳で現れる所望な周波数応答特性のグラフを示している。曲線60はデシベルで測定した音圧レベル(SPL)対周波数の関数である。図4Aで示されているように音圧レベルは全ての可聴周波数で比較的一定である。曲線60は、ほぼ耳レベルで聴取者の前方に直接位置されている1対の理想的なスピーカによりピンクノイズの再生から実現されることができる。ピンクノイズは1オクターブ当り等しいエネルギを有するオーディオ周波数スペクトルにわたって伝送される音を意味している。実際、曲線60のフラットな周波数応答特性はスピーカシステムの固有の音響限定に応じて変動する。
曲線60は聴取者の耳で処理される以前に存在する音圧レベルを表している。図2、3に戻って参照すると、曲線60により表されるフラット周波数応答特性は、示されているように方向Aのようにダッシュボード55の位置から搭乗者48の方向へ放射される音響と一貫している。曲線60により表されているように、固有の聴覚応答を音響信号に適用することによって人間の耳はこのような音を処理する。この人間の聴覚応答は耳の外耳および内耳管部により示される。
残念ながら、多数の自動車音響再生システムの周波数応答特性は図4Aで示されている所望の特性を提供しない。反対に、スピーカは他の人間工学上の必要性に適合するために音響的には望ましくない位置に位置される。図2を再度参照すると、ドア取付けスピーカ46、50が便利で邪魔にならない位置に配置されている。しかしながら、このような位置では、スピーカ46、50から発する音響は特に搭乗者48に関するスピーカ46、50の位置によりスペクトル的に歪みを受ける。さらに、搭乗者48の足および自動車の座席45のような自動車40の内部の周囲状況は、結果として生じる音響信号の吸収、振幅歪みを生じる。高周波数でしばしば起こりがちなこのような吸収は従来技術のいくつかの音響強調システムの問題である。
スペクトル歪みおよび振幅歪みの両者の結果として、搭乗者48により知覚されるステレオイメージは空間的に歪を受け、不所望な聴覚経験をもたらす。図4B〜4Dは種々の自動車音響再生システムの空間歪みレベルをグラフで示している。図4B〜4Dで示されている歪み特性はデシベルで測定された聴取者の耳近辺に存在している音圧レベルを表している。
図4Bの周波数応答曲線64は約100Hzを越える周波数において減少した音圧レベルを有する。曲線64は、ウーハーおよびトウィターの両者を含むスピーカから発生された可能な音圧特性を表しており、これらは聴取者より下方位置で自動車に取付けられている。例えば、図2のスピーカ46がトウィターを含んでいると仮定すると、このようなスピーカ46のみにより再生されるオーディオ信号は図4Bの応答を示す。図4Bの音圧応答特性が図2の自動車で得られると仮定すると、搭乗者48は前部42の下部に結果的なサウンドイメージを位置付ける。
下降曲線64に関する特定の勾配は自動車の内部、スピーカの品質、ドアパネル58内のスピーカの正確な位置に応じて変化する傾向があり完全に線形ではない。例えば、皮またはビニールの内装は布の内装よりも特に高周波数においてオーディオ信号を反射する。スペクトル歪みのレベルは、スピーカが聴取者からさらに離れた位置に配置されると大きく変化する。
図4Cは音圧対周波数特性68のグラフ表示であり、ここでオーディオ信号の第1の周波数範囲はスペクトルの歪みを受けるが、信号の高い周波数範囲は歪みを受けない。特性曲線68は、聴取者より下方に配置された低および中音周波数スピーカと、聴取者の耳のレベルまたはその付近に位置する高周波数スピーカを有するスピーカ装置から得られる。図2を再度参照すると、このような低音および中音周波数スピーカはスピーカ46に対応し、一方でこのような高周波数スピーカ(図示せず)はダッシュボード55上に位置されている。この装置では、周波数応答曲線68は約100Hzで最大の振幅レベルを有し、これは約1000Hzまで周波数の関数として減少する。1000Hzにおいて、曲線68は再度最大の振幅レベルまで増加する。1000Hzより大でのこの音圧レベルの増加は、自動車の搭乗者48の前方の邪魔にならない位置に置かれたトウィターの直接的な結果である。特性曲線68から生じるサウンドイメージは図2の搭乗者48の下方に位置する低音周波数成分と、搭乗者の耳レベル近辺に位置する高音周波数成分を有する。
図4Dは低音周波数中の減少された音圧レベルと、高音周波数中の増加した音圧レベルを有する音圧対周波数特性70のグラフ表示である。特性70は聴取者よりも下方に位置する中音および低音周波数スピーカと、聴取者より上方に位置する高音周波数スピーカとを有するスピーカ装置によって得られる。このような装置は図2のスピーカ46、56を含んだ音響システムに対応する。耳より上方の自動車の屋根に位置されたトウィターは邪魔にならず直接聴取者の耳への比較的短い通路を与える。図4Dの曲線70が示しているように、1000Hzを越える周波数の音圧レベルは低音周波数のレベルよりも非常に高く、近くの聴取者に不所望なオーディオ効果を生じる。特性曲線70から生じるサウンドイメージは図2の搭乗者48より下方に位置する低音周波数成分と、搭乗者48より上方に位置する高音周波数成分とを有する。
図4B乃至4Dのオーディオ特性は、前方部分42(図2に示されている)内において得られ、搭乗者48によって聞かれている種々の音圧レベルを表す。前方および後方部分を有する自動車再生環境において、各部分内のサウンドイメージを再調節することが可能である。大部分の自動車は、このような分離した信号補正を可能にする分離した前方および後方チャンネルを備えている。後方部分44における空間的な歪みを補正するために要求される信号調整は、特定のスピーカ位置に依存する。例えば、図2のスピーカ50は、スピーカ46の対と実質的に同じレベルの空間的補正を必要とする。これは、スピーカ46と50が前部の搭乗者48と後部の搭乗者とに関してそれぞれ同じ位置に設置されているためである。しかしながら、後方チャンネルスピーカが上向きスピーカ52から構成され、或は付加的にこれらを含んでいる場合、自動車40の後方聴取コンパートメント中の空間的な歪みが存在するならば、これを補正するために異なるレベルの調整が行われる。
図4B乃至4Dのオーディオ応答曲線は、聴取者の耳におけるオーディオ信号が種々の音響再生システムによりどのように歪められるかの数例に過ぎない。任意の所定の周波数における空間的歪みの正確なレベルは、再生システムおよび再生環境に応じて広範囲にわたって変化する。ここに記載されている本発明の好ましい実施形態の適用を通じて、実際のスピーカ位置のものとは異なる見掛け上の仰角および方位角座標により規定されたスピーカシステムの見掛け上の位置が固定した聴取者に関して生成されることができる。
図5は、本発明の好ましい実施形態の詳細なブロック図を示す。好ましい実施形態は、左および右ステレオ信号26および28を入力するステレオイメージ補正回路22を含む。イメージ補正回路22は、比較的低い周波数を含む第1の周波数成分と、比較的高い周波数を含む第2の周波数成分とに可聴周波数スペクトルを有効に分割することによって種々のサウンドシステムの歪まされたスペクトル密度を補正する。左信号26および右信号28はそれぞれ、対応した低周波数補正回路80および82、並びに高周波補正回路84および86により別々に処理される。好ましい実施形態では、補正回路80および82がほぼ100乃至1000Hzの比較的“低い”周波数範囲で動作し、一方補正回路84および86がほぼ1000乃至10,000Hzの比較的“高い”周波数範囲で動作することに注意しなければならない。低音周波数が100Hzまでの周波数を表し、中音周波数が100乃至4kHzの間の周波数を表し、また高音周波数が4kHzより高い周波数を表している一般的なオーディオ技術とこれを混同すべきではない。
入力オーディオ信号の低い周波数成分と高い周波数成分とを分離することにより、他のものから独立して一方の周波数範囲において音圧レベルの補正が行われることができる。補正回路82,84,86および88は、スピーカによる再生時に入力信号のスペクトルおよび振幅歪みを補正するように入力信号26および28を修正する。結果的な信号は、元の入力信号26および28と共に、各合計結合部90および92において結合される。補正された左ステレオ信号Lcおよび補正された右ステレオ信号Rcは、それぞれ出力94および96に沿って出力される。
出力94および96における補正されたステレオ信号は、搭乗者48(図2に示されている)の耳において平坦な、すなわち均一な周波数応答特性を生成する。この空間的に補正された応答特性は、図2のスピーカ46を通って再生された時に、搭乗者48の直接前方に位置されているように思われる見掛け上の音源を生じさせる。オーディオ信号のエネルギ補正により、音源が適切に位置されると、ステレオイメージ強調回路24は、見掛け上の音源から生じたステレオイメージを広げるようにステレオ信号を調整する。図8Aおよび図8Bと関連して説明するように、ステレオイメージ強調回路24は、実際の音源の位置を補正するためのステレオ指向方向(orientation)装置130による調節を必要とする。
好ましい実施形態において、ステレオ強調システム24は、左および右ステレオ信号に存在する差信号情報を等化する。ここに示されているステレオ強調システム24は、米国特許出願第08/430,751号明細書に記載されているものに類似している。本発明において使用される関連したステレオ強調システムは、本出願に記載されている発明の発明者の1人であるArnold Klayman氏に対して特許権が共に与えられた米国特許第4,748,669号明細書および第4,866,774号明細書にも記載されている。米国特許第4,748,669号明細書、米国特許第4,866,774号明細書および米国特許出願第08/430,751号明細書の内容は、ここでは参考文献として含まれている。
通路94および96に沿って伝送された信号LcおよびRcは、強調システム24に入力され、ハイパスフィルタ98に供給される。このフィルタ98は、実際に2個の個別のハイパスフィルタを含んでいる。フィルタ98は、差信号に存在する不所望な約100Hzより下の低音成分を減少させるように設計された予備調整フィルタである。フィルタ98からの出力は、差信号発生器100に伝送される。補正された左および右入力信号のステレオ成分を表す差信号(Lc−Rc)が出力102で与えられる。ステレオイメージ補正回路22からの出力はまた、和信号発生器104に直接伝送される。補正された左および右ステレオ信号の和を表す和信号(Lc+Rc)が出力106で発生される。
出力102および106における和および差信号はそれぞれ、別個のレベル調節装置108および110に供給される。これらの装置108および110は、理想的にはポテンショメータ、或は類似した可変インピーダンス装置である。装置108および110の調節は典型的に、出力信号中に存在する和および差信号のベース・レベルを制御するように手動で行われる。これによって、ユーザーは再生された音のタイプにしたがって、またユーザーの個人的嗜好に応じてステレオ強調のレベルおよびアスペクトを調整することができる。和信号のベース・レベルを増加させることにより、1対のスピーカの間に位置されている中央段におけるオーディオ情報が強調される。逆に、差信号のベース・レベルを増加させると、広い音域のサウンドイメージを感知させる周囲サウンド情報が強調される。音楽タイプおよびシステム構成パラメータの知られている、或は手動調節が実際に使えない幾つかのオーディオ装置では、調節装置108および110は除去され、和および差信号レベルが予め定められ、固定される必要がある。
装置110の出力は、ステレオ強調等化装置120の入力122に供給される。等化装置120は、ローパスオーディオフィルタ124およびハイパスオーディオフィルタ126を差信号に対して別々に適用することによって入力122に現れた差信号をスペクトル的に成形する。フィルタ124および126により為された調節に加えて、差信号レベルは、ステレオ指向方向回路130によって別々に調節される。フィルタ124および126並びに指向方向回路130からの出力信号は、それぞれ通路132、134および136に沿って等化装置120から出力する。
通路132、134および136に沿って伝送された修正された差信号は、出力140に沿って現れる処理された差信号(Lc−Rc)pの成分である。処理された差信号はミキサ142に供給され、このミキサ142はまた出力94および96からステレオ信号LcおよびRcを受取ると共に装置108から和信号を受取る。これらの信号は全てミキサ142内で結合され、強調され、空間的に補正された左出力信号30および右出力信号32を生成する。
強調回路24によって行われる左および右出力信号30および32の調整は、以下の式によって表される:
Lout=Lc+K1(Lc+Rc)+K2(Lc−Rc)p (1)
Rout=Rc+K1(Lc+Rc)−K2(Lc−Rc)p (2)
上記の式中の入力信号LcおよびRcは、理想的には補正されたステレオソース信号を表すが、それらはまた単一音源から合成的に生成されてもよい。本発明により使用されることのできるこのようなステレオ合成方法の1つは、Arnold Klayman氏に対して特許権が与えられ、ここでは参考文献として含まれている米国特許第4,841,572号明細書に記載されている。
イメージ補正特性
図6A乃至6Cは、1対のステレオ信号から生成された位置を再調整されたイメージを得るために“低”および“高”周波数補正回路80,82,84,86によって行われた空間的補正のレベルを表したグラフである。
最初に図6Aを参照すると、補正回路80および82によって行われる空間的補正の可能なレベルが、異なる振幅対周波数特性を有する曲線として示されている。回路80および82によって行われる最大レベルの補正、すなわちブースト(dBで測定された)は、補正曲線150で表されている。この曲線150は、ほぼ100Hz乃至1000Hzの第1の周波数範囲内で増加するブーストのレベルを示している。1000Hzより高い周波数では、ブーストのレベルがほぼ一定したレベルに維持される。曲線152は、ゼロ付近の補正レベルを表している。
当業者に対して、典型的なフィルタは、遮断周波数によって分離される周波数のパスバンドとストップバンドとにより通常特徴付けられる。図6A乃至6Cの補正曲線は、典型的な信号フィルタを表わすものであるが、パスバンド、ストップバンドおよび転移バンドによって特徴付けられている。図6Aの特性にしたがって構成されたフィルタは、ほぼ1000Hzより高いパスバンド、ほぼ100乃至1000Hzの転移バンド、およびほぼ100Hzより低いストップバンドを有する。図6Bおよび6Cによるストップバンドは、ほぼ10kHzより高いパスバンド、ほぼ1kHz乃至10kHzの転移バンド、およびほぼ1kHzより低いストップバンドを有する。好ましい実施形態にしたがって使用されるフィルタは、単なる1次フィルタであるため、パス、ストップおよび転移バンドを規定する周波数は、設計目標に過ぎない。正確な周波数特性は、所定の回路に対して大幅に異なってもよい。
図6A乃至6Cに認められるように、回路80,82,84および86によるオーディオ信号の空間的補正は、パスバンド内で実質的に均一であるが、転移バンド内ではほぼ周波数依存的である。オーディオ信号に対して行われる音響補正量は、図6A乃至6Cの転移バンドの傾斜を変化させるステレオイメージ補正回路22の調節によって周波数の関数として変化されることができる。その結果、周波数依存性の補正がまた100乃至1000Hzの第1の周波数範囲に適用され、1000乃至10,000Hzの第2の周波数範囲に適用される。補正回路80,82,84および86を独立に調節することによって、無限数の補正曲線が可能である。
好ましい実施形態によると、高周波ステレオ信号成分の空間的な補正は、ほぼ1000Hz乃至10,000Hzの間で発生する。これらの信号成分のエネルギ補正は図6Bに示されているように正、すなわちブーストされてもよいし、或は図6Cに示されているように負、すなわち減衰されてもよい。補正回路84,86によって行われたブーストの範囲は、最大ブースト曲線160と最小ブースト曲線162とによって特徴付けられる。曲線164,166および168は、異なるサウンド再生システムから生じた音を空間的に補正するために必要とされるさらに別のレベルのブーストを表している。
図6Cは、本質的に図6Bにおけるものの逆数であるエネルギ補正曲線を示す。上述のように、トゥィターが対応したウーファまたは中音域のスピーカから離されて聴取者の上方に取付けられた場合に、高周波サウンド信号の減衰が要求される可能性がある。回路84および86から得ることのできる減衰レベルは、曲線170によって表されている最大レベルの減衰から曲線172によって表されている最小レベルの減衰まで変化してもよい。中間曲線174,176および178は、それらの間の可能性のある変化のいくつかを表している。
図6A乃至6Cの曲線によって表された低周波数および高周波数の補正係数は一緒に付加されるため、100乃至10,000Hzの周波数の間に適用可能な広範囲の空間的補正曲線が存在する。図6Dは、ステレオイメージ補正回路22によって提供された複合的な空間的補正特性の範囲を示したグラフである。特に、実線の曲線180は、曲線150(図6Aに示された)と曲線160(図6Bに示された)とで構成された最大レベルの空間的補正を表している。低周波の補正は、実線の曲線180からθ1で示されている範囲まで変化してもよい。同様に、高周波の補正は、実線の曲線180からθ2で示されている範囲まで変化してもよい。したがって、100乃至1000Hzの第1の周波数範囲に適用されるブーストの量はほぼ0乃至15dBの間で変化し、一方1000乃至10,000Hzの第2の周波数範囲に適用される補正はほぼ30dBから−15dBまで変化してもよい。
イメージ強調特性
本発明のステレオイメージ強調アスペクトに関して、一連の遠近法−強調、すなわち正規化曲線が図7にグラフで示されている。上記の式1および2における信号(Lc−Rc)pは、図7の周波数応答特性にしたがってスペクトル的に成形された処理された差信号を表している。これらの周波数応答特性は、図5に示された等化装置120によって与えられ、部分的にHRTF原理に基づいている。
一般に、差信号の選択的な増幅は、差信号に存在している可能性があるが、さらに強い直接フィールドの音響によってマスクされて周囲または反響サウンド効果を強調する。これらの周囲音響は、適切なレベルでライブ音響ステージで容易に知覚される。しかしながら、記録された特性において、周囲の音響は、ライブ特性に関して減衰される。1対のステレオ左および右信号から得られた差信号のレベルをブーストすることによって、投影されたサウンドイメージは、イメージが聴取者の前方に配置された1対のラウドスピーカから生じた時に著しく広げられることができる。
図7の遠近法曲線190,192,194,196および198は、対数形式で表示された可聴周波数に対する利得の関数として表示される。種々の音響再生システムを説明するために図7の曲線間における異なるレベルを等化にすることが要求される。特に、好ましい実施形態において、差信号等化のレベルは、音響再生システム内の聴取者に関するスピーカの実際の位置の関数である。曲線190,192,194,196,198は、一般に米国特許出願08/430,751号明細書に詳細に示されたものに類似した周波数形態の特性を表示する。すなわち、低音および高音差信号周波数は、周波数の中間帯域に関してブーストされる。
好ましい実施形態によると、図7の遠近法曲線に対する範囲は、ほぼ125乃至150Hzに位置されたほぼ10乃至15dBの最大利得によって規定される。最大利得値は、曲線190,192,194,196および198の傾斜が正の値から負の値に変化する図7の曲線に対する転移点を示している。このような転移点は、図7において点A,B,C,DおよびEによって示されている。遠近法曲線の利得は、125Hzより下では1オクターブごとにほぼ6dBの割合で減少する。125Hzより上でも、図7の曲線の利得は、可変的な割合ではあるが、ほぼ−2乃至+10dBの最小利得転移点に向かって減少する。最小利得転移点は、曲線190,192,194,196および198の間で著しく異なる。最小利得転移点はA′,B′,C′,D′およびE′によってそれぞれ示されている。最小利得転移点が生じる周波数は、曲線190に対するほぼ2.1kHzから曲線198に対するほぼ5kHzまで様々である。曲線190,192,194,196および198の利得は、ほぼ10kHzまでそれらの各最小利得周波数より上に増加する。10kHzを越えると、各曲線が示す利得は、平らになり始める。利得の増加はほぼ20kHz、すなわち人間が聴取可能なほぼ最高周波数まで全ての曲線で連続する。
前述の利得および周波数の図は、単なる設計目標に過ぎず、実際の図はおそらく、使用された部品の実際の値に応じて回路間において異なる。さらに、信号レベル装置108および110の調節は、最大および最小利得値、並びに最大利得周波数と最小利得周波数との間の利得分離に影響を与える。
図7の曲線による差信号の等化は、統計的に高い強度の差信号成分を過度に強調することなく、低い強度の差信号成分をブーストするように意図されている。典型的なステレオ信号の高い強度の差信号成分は、ほぼ1乃至4kHzの間の中間範囲の周波数において認められる。人間の聴覚は、これらの中間範囲の周波数に対して高められた感度を有する。したがって、周囲音響は、再生された音響ステージ内の聴取者を完全に取り囲むように選択的に強調されるため、強調された左および右出力信号30および32はかなり改良されたオーディオ効果を生成する。遠近法曲線190,192,194,196および198が表す全体的な等化は、等化装置120のハイパスおよびローパスフィルタを使用して行われるが、同じ信号調整を行うためにバンド排除フィルタを使用することも可能である。また、デジタル信号プロセッサによる遠近法曲線の形状は、ほとんどの場合に上述された設計制約を正確に反映する。アナログ形態については、最大および最小利得に対応した周波数がプラスまたはマイナス20%だけ変化する場合、それは許容可能である。理想的な仕様からのこのような偏差は、最適な結果ではないが、所望のステレオ強調効果を生成する。
図7に示されているように、125Hzより低い差信号周波数は、もし存在するならば、遠近法曲線70の適用によって、減少された量のブーストを与えられる。この減少は、非常に低い、すなわち低音周波数の過剰な増幅を回避することを意図されている。多数の音響再生システムに関して、この低い周波数範囲におけるオーディオ差信号の増幅は、過剰な低音応答特性を有する不快で現実的ではないサウンドイメージを生成する。このような音響再生システムの例には、マルチメディア・コンピュータシステムおよびホームステレオシステムのような近接フィールドまたはロー・パワー音響システムが含まれる。これらのシステムにおける大きなパワーの抽出は、ハイ・ブースト期間中に増幅器による“クリッピング”を生じさせる可能性がある。すなわち、それはスピーカを含むオーディオ回路の素子に損傷を与える可能性がある。差信号の低音応答特性の制限はまた、大部分の近接フィールド音響強調用途においてこれらの問題を回避することを助ける。差信号等化の別の音響上の利点は、米国特許出願第08/430,751号明細書に詳細に記載されている。
好ましい実施形態によると、静止している聴取者を有するオーディオ環境における差信号等化のレベルは、実際のスピーカタイプおよび聴取者に関するそれらの位置に依存する。この決定の基礎となる音響原理は、図8Aおよび8Bと関連して最も適切に説明することができる。図8Aおよび8Bは、スピーカシステムの方位角の変化に関してこのような音響原理を示すように意図されている。
図8Aは、スピーカ200および202が聴取者204の両側を向いた状態でその少し前方に配置されている音響再生環境を上方から見た図を示す。スピーカ200および202はまた、図2に示されたスピーカ46のそれに類似したレベルの位置で聴取者204の下方に配置されている。参照平面AおよびBは、聴取者204の耳206および208と整列されている。平面AおよびBは、示されているように聴取者の視線と平行である。
図8Aの音響環境内においてスピーカ200および202によって再生された音は、耳206および208に達する前に、あるスペクトル歪みおよび、または振幅歪みを被ると考えられる。このような歪みは、例えば、スピーカ200および202を通して再生された時に、空間的に歪められたイメージを生成する図4Bに示された曲線64によって表されもよい。イメージ補正回路22の使用によりスペクトル歪みを補償することによって、スピーカ200および202を通して再生されたオーディオ信号は、聴取者204に見掛け上のサウンドイメージを伝達する。図8Aの例では、見掛け上のサウンドイメージは、実際の音源とは異なる高さを有する。さらに、本発明のイメージ強調アスペクトを適用することによって、この見掛け上のサウンドイメージは、空間的に強調されて、見掛け上のイメージを広げる。結果的なイメージは、破線で示されているスピーカ210および212から生じた強調されたイメージに対応する。
見掛け上のサウンドイメージの強調は、差信号を選択的に等化することによって行われる。すなわち、差信号の利得が周波数と共に変化する。図7の曲線190は、実際のスピーカ位置が破線のスピーカ210および212に対応した状態での所望のレベルの差信号等化を表している。しかしながら、図8Aのスピーカ200および202のように、スピーカが聴取者に向かって内側に向けられた場合には、音響的な知覚が大幅に変化し、修正されたレベルの差信号等化を必要とする。特に、スピーカ200および202から生じる直接フィールドの音響は、参照平面AおよびBに関する角度θ1で聴取者の耳206および208に入力する。スピーカがさらに前方に配置されると、角度θ1は減少する。図8Bを参照すると、1対のスピーカ214および216が聴取者204の前方下方に配置された第2の音響再生システムが示されている。この構造において、スピーカ214および216から生じた直接フィールドの音響は、聴取者の耳206および208にθ1より小さい入射角度θ2で入力する。
大部分のスピーカは、音が放射される分散角度、すなわちビーム特性によって特徴付けられる。所定の周波数の音が分散する角度は、周波数が高くなるにしたがって減少する。その結果、スピーカ200および202が図8Bの位置に向かって前方に移動されるにつれて、聴取者204はそれらの正常なビームアスペクトの外側に位置し始める。これが発生したとき、聴取者204は中間範囲および中間範囲の高い方の周波数を知覚できなくなる。さらに、小さいスピーカは典型的に大きいスピーカより狭い分散角度を有しているため、小さいスピーカでは、この影響が拡大される可能性がある。
中間からその高い方の範囲のオーディオ周波数の損失を補償するために、差信号の利得は同じ周波数範囲において対応的にブーストされる。スピーカ200および202の実際の位置が前方に移動されるにしたがって、中間範囲の利得補償が増加されなければならない。遠近法等化曲線190は、周波数のこの中間帯域を比較的減衰するため、減衰レベルは図8Aおよび8Bの内側に放射されたスピーカを考慮するように修正される。したがって、図7の曲線196はスピーカ218および220の見掛け上のソースを生成するように図8Bのシステムを空間的に強調するために使用され、一方曲線192は図8Aのシステムを空間的に強調するのに十分である。中間範囲または中間範囲の高い方の周波数の中の差信号をブーストすることによって、見掛け上のサウンドイメージは、聴取者204に関して適切に指向されることができる。サウンドイメージの適切な指向方向は、聴取者204に見掛け上の分散ビームを導くようにスピーカ200,202,214および216を内側に回転させるという見掛け上の効果を有する。
ステレオイメージ補正回路
図9は、ステレオイメージ補正回路22の好ましい実施形態の詳細な回路図である。この回路22は、左信号補正回路230と右信号補正回路232とに分離されている。左および右信号補正回路230および232は、それらの各入力信号26および28に対して同一の信号調整を行うように意図されている。したがって、左信号補正回路230の仕様は、右信号補正回路232のものと同一でなければならない。説明を簡単にするために、右信号補正回路232の回路接続および機能上の動作だけを説明する。
右ステレオ信号28は、右信号補正回路232に入力され、可変抵抗234に伝送される。可変抵抗234、すなわちポテンショメータは、左信号補正回路230中の類似の可変抵抗236と連動されている。これは、右信号補正回路232に対して行われる任意の調節が回路230および232の両方に等しく影響を与え、或はその逆もそうであることを保証する。右ステレオ信号はまた、通路238に沿ってスイッチ240の端子“1”に伝送され、スイッチ240の位置に応じて、この端子がステレオ信号28の等化を阻止するバイパスとして動作する。
入力信号は、可変抵抗234から第1の増幅器244の非反転入力242に接続されている。反転入力246は、抵抗248を介して接地され、それはフィードバック抵抗250の一方の端部にも接続されている。フィードバック抵抗250の他方の端部は増幅器244の出力252に接続されている。
出力252は、回路232の3つの別個の箇所に伝送される。特に、この出力252はハイパスフィルタ回路258および260に接続され、また混合回路264にも接続されている。回路258に関して、出力252からの信号は、キャパシタ266を通って増幅器270の非反転入力268に伝送される。この入力268は、抵抗272を通って接地電位にも接続されている。増幅器270の反転入力272は、抵抗274を介して接地され、またフィードバック抵抗276を通って増幅器270の出力280に接続されている。フィルタ回路260は、素子284,286,288,290,292および294により回路258に類似して構成されている。
出力280および増幅器288の対応した出力294は、1対の可変抵抗282および296にそれぞれ供給される。抵抗282は、左信号補正回路230の可変抵抗298と連動され、一方可変抵抗296は同様にして可変抵抗300と連動されている。各抵抗282および296は、各出力302および304を有している。
混合回路264は、接地電位に接続された非反転入力308を有する増幅器306を含んでいる。出力302,304および252において供給される信号は、混合回路264に入力し、増幅器306の反転入力310に伝送される。抵抗312,314および316は、反転入力310と出力252,302および304との間にそれぞれ接続されている。さらに、出力302における信号は、2位置手動または自動選択スイッチであってもよいスイッチ318を介して増幅器306に伝送される。フィードバック抵抗320は、増幅器308の出力322に反転入力310を接続している。
増幅器324は、接地電位に接続された非反転入力326と、出力322に接続された反転入力328とを有する。さらに、反転入力は抵抗330を通ってスイッチ318に接続される。出力302における信号は、スイッチ318が位置“2”のときに、抵抗330を介して入力328に伝送される。抵抗332およびキャパシタ334は、入力328と増幅器324の出力336との間において並列に接続されている。この出力336は、スイッチ240の位置“2”に接続されている。スイッチ240は、類似したバイパススイッチ338と連動されていることが好ましい。
左および右エネルギ補正回路230および232は、入力ステレオ信号の振幅成分を修正して、エネルギ補正された左ステレオ信号340およびエネルギ補正された右ステレオ信号342を生じさせる。再び簡単化のために、エネルギ補正された右信号342の発生だけを説明する。しかしながら、同じ原理がエネルギ補正された左信号340の発生にも適用されることは容易に理解できる。
動作において、ステレオ信号28は入力されて、信号28が音響再生システムを通して再生された時に生成された歪んだ音圧レベルを補正するように回路232によって処理される。最初に、可変抵抗234は入力信号レベルの調節を可能にする。このような調節は、回路232の全体的な利得を制御するために、或はいくつかの例では入力信号28が先行する回路によって著しく減衰されている場合に、この信号をブーストするために必要とされる可能性がある。抵抗234は、可変抵抗236と連動される標準的な10kオームの時計回りのポテンショメータであってもよい。
増幅器244は、入力信号28と回路232の残りのものとの間の絶縁バッファとして動作する電圧フォロワとして構成されている。出力252に現れるバッファされたレベル調節された信号は、ほぼ5kHzの折曲点周波数を有するシングル・オーダーのハイパスフィルタを通って信号が送られる回路258に供給される。好ましい実施形態において、ハイパスフィルタ処理は、3900ピコファラドのインピーダンスを有するキャパシタ266と10kオームのインピーダンスを有する抵抗272とのRC組合せ体によって行われる。入力268に現れるハイパスフィルタ処理された結果的な信号は、1の利得で動作する増幅器270を通ってバッファされる。その後、それに応じて可変抵抗282を調節することにより、出力280に現れた信号の振幅が増加または減少されてもよい。
同様に、回路260には出力252から信号が入力し、この信号はキャパシタ284と抵抗286とのRCフィルタにより処理される。キャパシタ284と抵抗286との直列接続はまた、ほぼ500Hzの折曲点周波数を有するハイパスフィルタとして動作する。これは、キャパシタ284に対して0.022マイクロファラドを選択し、かつ抵抗286に対して10kオームの抵抗値を選択することによって達成される。その後、濾波された入力信号は増幅器288によってバッファされ、レベル調節可変抵抗296に供給される。
抵抗282および296に存在する濾波された信号はそれぞれ通路302および304を通って混合回路264に供給される。さらに、利得調節だけによって影響を与えられた元の信号28はまた、抵抗312を介して混合回路264に伝送される。混合回路は入力された3つの信号を全て結合し、エネルギ補正された出力信号を生成する。
連動された抵抗の対296/300および282/298の調節により、図6A乃至6Cに示されている種々のレベルの空間的補正が達成される。特に、図6Aの低周波補正曲線は出力336で利得を測定することによって得ることができ、一方高周波補正に影響を与える可変抵抗282は最小値に設定される。この設定において、スイッチ318は接地され、高周波の補正は全く行われない。したがって、低周波数範囲の補正は、抵抗296を調節することによって達成される。このやり方において、反転増幅器306は、出力252からの元の信号と濾波された信号とを通路304で結合する。図6Aの曲線152は、回路232が空間的補正を全く伴わずに入力信号28を単に伝送するに過ぎない1の利得を表している。これは、抵抗296がゼロ・インピーダンスに設定され、それによって増幅器306の入力310を接地したときに生じる。抵抗296のレベルが高くされるにしたがって、さらに多くの濾波された信号が元の信号に付加され、100乃至1000Hzの範囲の空間的補正が実現される。抵抗296が最大抵抗値に設定されている場合、低い周波数における全空間的補正が図6Aの曲線150により明示されたように行われる。
図6Bの曲線は、回路260によって行われた補正を全て除去し、すなわち抵抗296をゼロ・インピーダンスに設定して、スイッチ318を示されている位置1に維持することによって得られたものを表している。可変抵抗282の調節により、図6Bにグラフで表したような高周波数領域中で所望のブーストが行われる。対照的に、図6Cによってグラフで表されている高周波数の減衰は、スイッチ318を位置2に設定することによって達成される。この位置において、濾波回路258からの出力が分離反転増幅器324に供給される。その後、増幅器306および324は、通路302および304からの濾波された信号を連続的な反転されたステージで結合する。特に、通路304からの信号と出力252からの信号が、増幅器306によって最初に結合される。その後、反転された出力322における結果的な信号が抵抗282からの出力と結合される。
通路302および304からの濾波された信号の入力信号に関する利得は、増幅器306によって結合されたときに、抵抗314および316に対するフィードバック抵抗320および332のインピーダンス比によって決定される。歪まされた音圧レベルを有する大部分のオーディオ再生環境について、これらの抵抗は、濾波された信号対入力信号に対してほぼ3:1の最大利得比を提供するように設定されることができる。好ましい実施形態において、抵抗320および332は約10kオームのインピーダンスを有し、一方抵抗314および316はほぼ3.32kオームのインピーダンスを有する。可変抵抗282および296の調節、並びにスイッチ318の選択により、図6Dに示された全てのレベルの空間的補正を行うことができる。
図9の回路は、ステレオイメージ補正回路の好ましい実施形態を表しているに過ぎない。当業者は、回路22の設計が本発明の技術的範囲を逸脱することなく、特定の再生環境を考慮に入れるように変更されてもよいことを理解することができる。例えば、0.1乃至1kHz(“低”周波数補正)および1kHz乃至10kHz(“高”周波数補正)のエネルギ補正周波数範囲は、フィルタ回路258および260内におけるRCインピーダンスの組合せを選択することにより変更されてもよい。いくつかの例では、このようなエネルギ補正周波数範囲を3以上有していることが望ましい。キャパシタ334は、ディスクリートな構造に存在する漂遊容量の結果発生する可能性のある回路22中の発振を阻止することを意図されていることにも注意しなければならない。キャパシタ334は、回路22の印刷回路板または半導体構造の場合には必要ないかも知れない。
ステレオイメージ強調回路
図10は、ステレオイメージ強調回路24の概略図である。回路24は、補正された左および右信号LcおよびRcのステレオイメージを広げるように設計されている。好ましい実施形態によると、エネルギ補正された左信号340は抵抗350、抵抗352およびキャパシタ354に供給される。エネルギ補正された右信号342はキャパシタ356並びに抵抗358および360に供給される。
抵抗350は増幅器366の非反転入力端子362に接続されている。同じ端子362はまた、抵抗360および抵抗368にも接続されている。増幅器366は、抵抗372を介して接地に接続された反転入力端子370を有する合計増幅器として構成されている。増幅器366の出力374は、フィードバック抵抗376を介して反転入力端子370に接続されている。左および右信号340および342の和を表す和信号(Lc+Rc)は、出力374で発生され、他方の端部が接地されている可変抵抗378の一方の端部に供給される。増幅器366によって信号340および342を適切に合計するために、好ましい実施形態における抵抗350,360,368および376の値は、抵抗372のほぼ2倍である。
第2の増幅器380は、“差”増幅器として構成されている。この増幅器380は抵抗384に接続された反転入力端子382を有し、この抵抗384はキャパシタ354と直列に接続されている。同様に、増幅器380の正の入力端子386は、抵抗388とキャパシタ356との直列接続によって信号340を受信する。入力端子386はまた抵抗390を介して接地されている。増幅器380の出力端子392は、フィードバック抵抗394を通って反転入力端子に接続されている。出力392はまた可変抵抗396に接続され、この可変抵抗396は接地に接続されている。増幅器380は、“差”増幅器として構成されているが、その機能は、差信号(Lc−Rc)を発生するための右入力信号と負の左入力信号との合計として特徴付けられる。したがって、増幅器366および380は、和信号および差信号をそれぞれ発生する合計ネットワークを形成している。
素子354/384および356/388をそれぞれ含んでいる2つの直列に接続されたRCネットワークは、入力信号LcおよびRcの非常に低い、すなわち低音周波数を減衰するハイパスフィルタとして動作する。これらのRCフィルタは、図5の装置98に対応している。図7の等化曲線にしたがって適切な周波数応答特性を得るために、装置98の遮断周波数wcすなわち−3dBの周波数はほぼ100Hzでなければならない。したがって、好ましい実施形態では、キャパシタ354および356は0.1マイクロファラドの容量を有し、抵抗384,388はほぼ33.2kオームのインピーダンスを有する。その後、フィードバック抵抗394および減衰抵抗390に対する値を
R120/R128=R116/R124 (3)
であるように選択することによって、出力392は利得2の増幅された差信号を表す。出力392における信号の位相は実際には反転され、信号Rc−Lcを生成する。
差信号の特定の位相は、出力信号の最終的なメークアップを決定したときに問題となる。技術においてよくあるように、ここで使用されている“差信号”という用語は、単に位相が180°ずれているに過ぎないLc−RcとRc−Lcの両方を示している。当業者により理解されることができるように、左および右出力の差信号の位相が互いに関してずれたままである限り、増幅器380は、Rc−Lcの代わりに“左”差信号Lc−Rcが出力392に現れるように構成されることが可能である。
入力をハイパスフィルタ処理した結果、出力392における差信号は、1オクターブごとに6dBの割合で減少するほぼ125Hzより低い減衰された低周波数成分を有する。フィルタ98を使用する代わりに、等化装置120(図5に示されている)内の差信号の低周波数成分を濾波することが可能である。しかしながら、低周波数で濾波するキャパシタはかなり大きくなければならないため、先行する回路の負荷を避けるために入力段でこの濾波を行うことが好ましい。
単純なポテンショメータであってもよい可変抵抗378および396は、ワイパー・コンタクト400および402をそれぞれ位置させることによって調節される。結果的な出力信号中に存在する差信号のレベルは、ワイパー・コンタクト402の手動、遠隔または自動調節によって制御されてもよい。同様に、強調された出力信号に存在する和信号のレベルは、ワイパー・コンタクト400の位置によって部分的に決定される。本出願人は、コンタクト402の設定を結果的なサウンドイメージの“スペース”制御と呼び、一方コンタクト400の設定を“センター”制御と呼んでいる。
ワイパー・コンタクト400に存在する和信号は、直列接続された抵抗408を通って第3の増幅器406の反転入力404に供給される。ワイパー・コンタクト400におけるこの和信号はまた、別の直列接続された抵抗414を通って第4の増幅器412の反転入力410に供給される。増幅器406は、その反転入力端子404がフィードバック抵抗420を通って接地に接続されている差動増幅器として構成されている。
増幅器406の正の入力端子422は、信号路426に沿った信号群の合計接合点である。入力端子422はまた、抵抗424を介して接地に接続されている。レベル調節された差信号は、ワイパー・コンタクト402から送られ、通路428,430および432を通って分割される。この結果、地点A,BおよびCにそれぞれ現れる3つの別々に調整される差信号が生成される。地点A,BおよびCの信号は、図5の出力132,136および134のものとそれぞれ一致する。地点BおよびCの調整された差信号は、示されている固定された抵抗432および436を経て正の入力端子422に送られる。地点Aにおける調整された差信号は、可変抵抗438を通って入力端子422に送られる。
ノードBにおける信号は、接地に接続されたキャパシタ444を横切って現れたレベル調節された差信号の濾波された形態を表す。キャパシタ444と抵抗446とのRCネットワークは、ワイパー・コンタクト402における差信号用のローパスフィルタとして動作する。このローパスフィルタは、図5のフィルタ124と対応する。好ましい実施形態によると、このRCネットワークの遮断周波数は、ほぼ200Hzである。このような遮断周波数は、抵抗446が1.5kオームであり、キャパシタ444が4.7マイクロファラドであり、かつ駆動抵抗434が20kオームである場合に得られる。
ノードCにおいて、差信号は、ノードCと接地との間に接続された抵抗446と、ノードCとワイパー・コンタクト402との間に接続されたキャパシタ448とのRC組合せによって濾波される。このようなフィルタは、図5のハイパスフィルタ126に対応する。結果的な差信号成分は、駆動抵抗436を通って増幅器406の入力端子422に供給される。ハイパスフィルタ126は、ほぼ7kHzの遮断周波数と、ノードBのものに関して−6dBの利得とを有するように設計されている。このような遮断周波数は、キャパシタ448が4700ピコファラドのインピーダンスを有し、抵抗180が3.74kオームの抵抗値を有している場合に得られる。
地点Aにおいて、ワイパー・コンタクト402からレベル調節された差信号は、選択的な等化が行われずに抵抗440に伝送される。したがって、地点Aにおける信号は、全ての周波数にわたって均一に減衰されるだけである。さらに、地点Aにおける信号は、関連したワイパー・コンタクト442の変位によって調節される可変抵抗438のインピーダンスにより減衰される。
標準的な100kオームのポテンショメータであってもよい可変抵抗438を調節することにより、聴取者に関するスピーカの方位方向を補正するためにステレオ強調のレベルを変化させる。可変抵抗438の抵抗値を減少させることによって、差信号のベースレベルが増加される。これは、中間範囲の周波数における対応した振幅の増加を生じさせ、フィルタ124および126(図5に示された)によってこれらの周波数の減衰を部分的に克服する。再び図7を参照すると、差信号に適用された遠近法等化曲線は、抵抗438のインピーダンスが減少するにしたがって曲線190から曲線198に変化する。この方法で、選択的な差信号等化のレベルを、部分的またはほぼ完全に低下させることができる。すなわち、周波数の関数としての振幅調節量は、中間範囲の周波数に対して著しく減少される。適切な曲線の選択は、図8Aおよび8Bとの関連して上述された音響原理にしたがって決定される。
既知の再生環境においてステレオイメージ補正回路22およびステレオイメージ強調回路24が適用された場合、可変抵抗438および抵抗440は、所望のインピーダンスを有する単一の固定抵抗によって置換されてもよい。好ましい実施形態において、抵抗438および440の全体的な抵抗値は、ほとんどの再生環境を考慮にいれると20乃至100kオームの間で変化する。このような設計により、抵抗424はほぼ27.4kオームのインピーダンスを有する。
回路位置A,BおよびCに存在する修正された差信号はまた、それぞれ可変抵抗450と固定された抵抗451との直列の組合せ、並びに固定抵抗452および454をそれぞれ通って増幅器412の反転入力端子410に供給される。これらの修正された差信号、和信号およびエネルギ補正された右信号342は、一群の信号路456に沿って伝送される。信号路456の群からの信号は、増幅器412の入力端子410において結合される。増幅器412は、接地に接続された正の入力端子458と、入力端子410と出力462との間に接続されたフィードバック抵抗460を有する反転増幅器として構成されている。可変抵抗450の抵抗レベルは、抵抗438のものと同じレベルに調節される。反転増幅器412による信号の適切な合計を達成するために、抵抗452は20kオームのインピーダンスを有し、抵抗454は44.2kオームのインピーダンスを有する。ステレオ強調システム24における抵抗とキャパシタとの正確な値は、正しい強調レベルを達成する適切な割合が維持されている限り、変更されてもよい。受動素子の値に影響を与える別の要因は、強調システム24のパワー要求と、増幅器370,380,406および412の特性である。
増幅器406の出力418における信号は、駆動抵抗464を通って供給され、強調された左出力信号30を生成する。同様に、増幅器412の出力462における信号は、駆動抵抗466を通って伝送され、強調された右出力信号32を生成する。駆動抵抗は、典型的に200オーム程度のインピーダンスを有する。
動作において、地点A,BおよびCに認められる差信号成分は差動増幅器406の入力端子422で、および増幅器412の入力端子410で再結合され、処理された差信号(Lc−Rc)pを形成する。理想的には、この(Lc−Rc)pを発生するために所望される範囲の遠近法曲線は、ほぼ125Hzにおける、および7kHzより上での最大利得と、ほぼ2100Hzと5kHzとの間の最小利得とによって特徴付けられる。処理された差信号はまた、和信号と左または右のいずれかの信号と結合され、出力信号LoutおよびRoutを生成する。強調された左および右出力信号は、上述の数式(1)および(2)によって表すことができる。式(1)および(2)の中のK1の値は、ワイパー・コンタクト400の位置によって制御され、K2の値はワイパー・コンタクト402の位置によって制御される。
図11には、ステレオイメージ強調回路24の別の実施形態が示されている。図11の回路は、図10の回路に類似しており、1対のステレオオーディオ信号から生成された差信号を選択的に等化する別の方法を表している。ステレオイメージ強調回路500は、図10の回路24とは異なる和および差信号を生成する。
回路500において、左および右エネルギ補正信号340および342は、混合増幅器502および504の負の入力にそれぞれ供給される。しかしながら、和および差信号を生成するために、左および右信号340および342は各抵抗506および508を通って第1の増幅器512の反転入力端子510に接続されている。増幅器512は、接地された入力514とフィードバック抵抗516を備えた反転増幅器として構成されている。和信号、この場合には反転された和信号−(Lc+Rc)が出力518で発生される。その後、和信号は、可変抵抗520によってレベル調節された後、残りの回路に供給される。回路500中の和信号が反転されるため、それは増幅器504の非反転入力522に供給される。したがって、増幅器504が非反転入力522と接地電位との間に設けられた電流平衡抵抗524を必要とする。同様に、増幅器504による正しい合計を行って出力信号32を発生するために、電流平衡抵抗526が反転入力528と接地電位との間に設けられている。
差信号を生成するために、反転合計増幅器530は反転入力532で左入力信号および和信号を受取る。入力信号340は、入力532に到達する前にキャパシタ534および抵抗536を通過する。同様に、出力518における反転された和信号はキャパシタ540および抵抗542を通過される。素子534/536および素子540/542によって形成されたRCネットワークは、好ましい実施形態と関連して説明されたオーディオ信号の低音周波数濾波を行う。
増幅器530は、接地された非反転入力544およびフィードバック抵抗546を有する。図11のこの別の構造により、差信号Rc−Lcは増幅器530の出力548において発生される。その後、差信号は可変抵抗560によって調節され、残りの回路に供給される。回路500の許容可能なインピーダンス値には、抵抗506,508,516および536に対する100kオームと、抵抗542および546に対する200kオームのインピーダンス値と、キャパシタ540に対する0.15マイクロファラドの容量と、キャパシタ534に対する0.33マイクロファラドの容量とが含まれている。上述された以外では、図11の残りの回路は図10に示されたものと同じである。
ステレオイメージ強調システム24は、典型的には増幅器366,380,406および412に対応する演算増幅器である、4個の能動素子だけにより構成されていてもよい。これらの増幅器は、単一の半導体チップ上のクアド・パッケージとして容易に入手できる。ステレオ強調システム24を完成するために必要とされる付加的な素子は、29個の抵抗(駆動抵抗は除く)と4個のキャパシタだけである。図11の回路500は、クアド増幅器、4個のキャパシタ、およびポテンショメータを含む28個の抵抗から製造されることができる。回路24および500は、多層半導体基板、すなわち集積回路パッケージとして形成されることができる。
図10および11に示された実施形態は別として、本発明によるステレオ信号の遠近法強調を達成するようにその同じ素子を接続する付加的な方法がある。例えば、差動増幅器として構成された1対の増幅器は左および右信号をそれぞれ受取ることができ、またそれぞれ和信号を受取ることができる。このやり方では、増幅器はそれぞれ左差信号Lc−Rcと、右差信号Rc−Lcとを発生する。
強調装置24によって行われるステレオイメージ強調は、高品質のステレオ録音媒体を利用するように特有に構成されている。特に、従来のアナログテープまたはビニル・レコードとは異なり、今日のデジタル的に記録された録音媒体は、差信号、すなわちステレオの、低音周波数を含む広い周波数スペクトルにわたる情報を含むことができる。これらの周波数内では、低音周波数における差信号のブースト量を制限することによって過度の差信号増幅が回避される。
しかしながら、サウンド再生環境に応じて、サウンドイメージの位置を再調整し、指向させた結果、発生する可能性のある低音周波数の損失を補償するためにオーディオ信号の低音周波数をブーストすることが望ましい。図12は、低音応答特性におけるこのような減少を補償するために本発明の別の実施形態において使用される低音ブースト回路550を示している。低音ブースト回路550は、低音、すなわち非常に低い周波数の情報のほとんどが存在する和信号に対して動作する。
この回路550は、図10の増幅器366の出力374への接続を通して和信号を受取る入力Aを有している。和信号のレベルは、10kオームのポテンショメータであってもよい可変抵抗552によって調節される。この可変抵抗552は、手動ユーザー調節設定として使用されてもよく、或は所望の低音ブースト量が分かっているならば、抵抗552は適切な固定抵抗によって置換されてもよい。抵抗552を出たレベル調節された和信号は、その後抵抗554,556とキャパシタ558,562とから構成された2次ローパスフィルタを通過する。結果的な濾波された信号が演算増幅器564の非反転入力端子に現れる。増幅器564は、2次フィルタの負荷を回避するための電圧フォロワとして構成されている。好ましい実施形態において、増幅器564の利得は、反転入力端子から接地点に、および反転入力端子から出力端子へそれぞれ接続されて、フィードバック・ループを形成している等しい値の抵抗566および568の選択により2の最大値に設定されている。好ましい実施形態において、抵抗554,566および568は10kオームの抵抗であり、抵抗556は100kオームの抵抗であり、キャパシタ558は0.1ミリファラドのインピーダンスを有し、キャパシタ562は0.01ミリファラドのインピーダンスを有する。上記の素子の値の選択は、抵抗552を調節することによる、ほぼ75Hzより低い低音周波数の選択的な増幅を可能にしている。
増幅器564の出力は、固定抵抗578および580をそれぞれ含む2つの通路に分割される。Xとラベル付けされた出力を有する1つの通路は、図10の増幅器406の反転入力端子404に接続されている。同様に、X′とラベル付けされた出力は、増幅器412の反転入力端子410に接続されている。動作において、抵抗578,580の抵抗420および460に対する比率をそれぞれ変化させることによって、低音周波数をさらにブーストしてもよい。例えば、好ましい実施形態において、抵抗578および580の値は、抵抗420および426の値の1/2であり、したがって図10の増幅器406および412により2の利得が可能になる。したがって、抵抗552を調節することによって、低音ブースト回路550の全体的な利得を4の最大利得からゼロ利得まで変化させることができる。
所望に応じて、種々のステレオ強調システムにより、システム24のそれを置換できることが理解できる。例えば、米国特許第4,748,669号明細書および第4,866,774号明細書に記載されているシステムの1実施形態は、特定の周波数帯域における差および和信号の両方の相対的な振幅を等化する。
本発明は、自動車に加えて、再生された音響が聴取者の感覚から空間的に歪まされる種々の室内または屋外音響再生環境に適している。本発明はまた、聴取者が固定した位置にいない環境において使用されてよい。
図13は、聴取者574に関して空間的に歪んだステレオイメージを生成する屋外スピーカ570および572を備えたこのような屋外音響再生環境を示している。スピーカ570および572は、図13に示されているように地上に近い高さに位置されてもよいし、或は広い屋外聴取エリアにステレオサウンドを提供するために種々の他の位置に設置されてもよい。屋外スピーカ570および572の位置が最適な音響応答特性ではない要因によって部分的に決定されることは確かである。このような位置は、それが地上付近にあるか、頭上にあるか、或は葉の茂った木々の中にあるか否かにかかわらず、聴取者に聞こえたときに、ある周波数にわたって放射された音の圧力レベルを歪ませる。結果的な歪みを有するサウンドイメージは、ステレオイメージ補正回路22の適用によって補正され、その後ここに記載されている原理にしたがってステレオイメージ強調回路24によって強調されることができる。その結果、所望の聴取範囲576内の見掛け上のサウンドイメージが生成されることができる。
図13のスピーカ570および572のようないくつかの屋外スピーカは、広い聴取エリアと、聴取者574の移動を考慮して無指向性である。このような音響再生環境において、図8Aおよび8Bと関連して説明されたように中音範囲または中音範囲の高い方の周波数の低下を補償する必要性はない。したがって、図13の環境では、スピーカ570および572を通して再生されたエネルギ補正されたステレオ信号を強調するために図7の遠近法曲線190を適用することによって最適な強調結果が達成される。
図14は、音響補正装置20の1構成を含んでいる別の音響再生環境を示す。特に、スピーカ592および594がキーボード596の下方に配置された電子キーボード装置590が示されている。電子キーボード596の正面に位置したオペレータ(示されていない)にとって、スピーカ592および594は、オペレータの耳の下方の音響上望ましくない位置に配置されている。このようなスピーカ592および594の配置のために生じる空間的な歪みを補正するために、音響補正装置20が、電子キーボード装置590によって発生されたオーディオ信号を変化させる。ここに記載されている原理にしたがって、このようにして位置を再調整された見掛け上のサウンドイメージが、破線で示された見掛け上のスピーカ598および600から放射されるように生成される。図8Bの環境とは異なり、図14の音響再生環境が必要とする指向調整レベルは、オペレータの方を向いたスピーカ592および594の位置のためにおそらく最小である。したがって、図7の曲線190は、位置が再調整されたサウンドイメージを空間的に強調するのに適している。
ここに記載されている全ての音響補正装置20は、(1)デジタル信号プロセッサにより、(2)ディスクリートな回路素子によって、(3)ハイブリッド回路構造として、或は(4)適切な抵抗を調節するための端子を有する半導体基板内に容易に構成されることができる。現在、ユーザーによる調節には、低周波および高周波のエネルギ補正のレベルが含まれ、また種々の信号レベル調節には和および差信号のレベル、および指向方向の調節が含まれる。
上記の説明および添付図面において、本発明は、現在の音響補正およびステレオ強調システムに優る重要な利点を有するものとして記載されている。上述の詳細な説明では、本発明の新しい基本的特徴の図示、説明および指摘が為されているが、示された装置の形態および細部における種々の除去、置換および変更は、当業者によって本発明の技術的範囲を逸脱することなく為されることができることが理解されるであろう。したがって、本発明の技術的範囲は、以下の請求の範囲によってのみ制限されるものである。
Claims (24)
- ステレオ信号がスピーカーシステムを通して再生される場合に、スピーカーシステムの音響の歪みを克服するために、右入力信号と左入力信号とを含む音響補正および強調装置であって、この装置は、
音響周波数を第1の周波数範囲と第2の周波数範囲とに分割することによって、第1の複数の周波数を変更する補正回路を含み、
該補正回路は、
補正された右の空間的応答を得るために右入力信号の振幅を調節するため右入力信号を受信する右信号補正回路を含み、
該右信号補正回路は、
右入力信号を受信し、第1の補正された右信号を生成するために、第1の周波数範囲にわたって、周波数の第1の右関数として右入力信号をブーストする右ハイパスフィルタ回路と、なお該第1の周波数範囲は周波数の第1の転移帯域と第1の通過帯域とを含み、
なお、該右ハイパスフィルタ回路は、第1の転移帯域内で周波数の第1の右関数として右入力信号の振幅成分を約0dBと15dBの間でブーストし、なお第1の転移帯域は約100Hzと1kHzの間の周波数範囲を有し、そして第1の通過帯域内で固定された量として右入力信号の振幅成分をブーストし、なお第1の通過帯域は約1kHzより大きい周波数範囲を有し、
右入力信号を受信し、第2の補正された右信号を生成するために、第2の周波数範囲にわたって、周波数の第2の右関数として右入力信号を調節する右周波数補正回路と、なお第2の周波数範囲は周波数の第2の転移帯域と第2の通過帯域とを含み、
なお、該右周波数補正回路は、第2の転移帯域内で周波数の第2の右関数として右入力信号の振幅成分を−15dBと30dB間で調節し、第2の転移帯域は約1kHzと10kH間の周波数範囲を有し、そして第2の通過帯域内で固定された量として右入力信号の振幅成分を調節し、なお第2の通過帯域は約10kHzより大きい周波数範囲を有し、
なお、周波数の第1の右関数と周波数の第2の右関数は独立して調整することが可能であり、そして
補正された右空間的応答を生成するために第1および第2の補正された右信号を結合させる第1の手段とを含み、
該補正回路はさらに、
補正された左の空間的応答を得るために左入力信号の振幅を調節すため左入力信号を受信する左信号補正回路を含み、
該左信号補正回路は、
左入力信号を受信し、第1の補正された左信号を生成するために、第1の周波数範囲にわたって、周波数の第1の左関数として左入力信号をブーストする左ハイパスフィルタ回路と、
なお、該左ハイパスフィルタ回路は、第1の転移帯域内で周波数の第1の左関数として、左入力信号の振幅成分を約0dBと15dB間でブーストし、そして第1の低通過帯域内で固定された量として左入力信号の振幅成分をブーストし、
左入力信号を受信し、第2の補正された左信号を生成するために、第2の周波数範囲にわたって、周波数の第2の左関数として左入力信号を調節する左周波数補正回路と、
なお、該左周波数補正回路は、第2の転移帯域内で周波数の第2の左関数として左入力信号の振幅成分を−15dBと30dB間で調節し、そして第2の通過帯域内で固定された量として左入力信号の振幅成分を調節し、
なお、周波数の第1の左関数と周波数の第2の左関数は独立して調整することが可能であり、そして、
補正された左空間的応答を生成するために第1および第2の補正された左信号を結合させる第2の手段とを含み、
なお、第1の周波数範囲は、第2の周波数範囲とは独立に処理され、
ここで補正された空間的応答は、音源の感知位置を第1の位置から第2の位置に再配置するように構成され、補正されていない第1の複数の周波数を有する音声情報が聞き取れるように再生される場合に、第1の位置が聴取者によって感知され、そして補正された空間的応答を有する音声情報が聞き取れるように再生される場合に第2の位置が聴取者に感知され、
なお第2の位置は、第1の位置とは異なる聴取者に対する仰角によって画定され、そして
右信号補正回路と左信号補正回路に結合された音響イメージ強調回路を含み、該強調回路は、補正された右および左の空間的応答と関連する差情報を生成し、そして差情報に対して遠近法等化曲線を適用することにより差情報を変換するように構成されており、遠近法等化曲線は約100〜200Hzの第1周波数範囲内の最大利得周波数において生ずる最大利得の転移点により特徴付けられ、そして該曲線は約1680〜5000Hzの第2周波数範囲内の最小利得周波数において生ずる最小利得の転移点により特徴付けられる
音響補正および強調装置。 - 聴取者によって感知された第2の位置は、聴取者に関して第1の位置とは異なった方位角および仰角により規定される請求項1記載の装置。
- 補正された空間的応答特性は、100Hzを越える全ての可聴周波数にわたって聴取者に関して実質上一定の音圧エネルギレベルを特徴とする請求項1記載の装置。
- 第1の低周波数範囲は約100Hz乃至1kHzの周波数を含み、第2の周波数範囲は約1kHz乃至10kHzの周波数を含んでいる請求項1記載の装置。
- 該装置は、デジタル信号プロセッサによりデジタルフォーマットで構成されている請求項1記載の装置。
- 該装置は、ディスクリートな回路素子を使用して構成されている請求項1記載の装置。
- 音響情報は、モノラルのオーディオ信号源から合成して発生された左および右ステレオ入力信号を含んでいる請求項1記載の装置。
- 該装置は、デジタルおよびアナログハイブリッド回路として構成されている請求項1記載の装置。
- さらに第1のスピーカおよび第2のスピーカを具備しており、第1のスピーカが第1のドアパネル内に位置され、第2のスピーカが第2のドアパネル内に位置されている請求項1記載の装置。
- ここで音響イメージ強調回路は音響情報内の第2の複数の周波数を修正して、結果的に得られたサウンドイメージが聴取者によって聞き取られるときに第2の位置に出現した音源の感知される方向を変化させるように構成された強調された補正されたステレオ信号を生成する請求項1記載の装置。
- 音響イメージ強調回路は、補正された空間的応答特性の周囲成分を等化する請求項10記載の装置。
- 音響イメージ強調回路は、補正された空間的応答特性の中の反響音響エネルギを強調する請求項10記載の装置。
- オーディオ再生環境内に位置するスピーカシステムから放射するサウンドイメージを転送しそして強調するためにオーディオ信号を処理する音響強調方法であって、この方法は、
第1の複数の音響周波数を第1の周波数成分と第2の周波数成分とに分割し、
左入力信号をハイパスフィルタ処理することにより第1の左のフィルタされたオーディオ信号を生成し、このフィルタ処理は周波数の第1の転移帯域、なお第1の転移帯域は約100Hzと1kHzの間の周波数範囲を有し、および周波数の第1の通過帯域、なお第1の通過帯域は約1kHzより大きい周波数範囲を有し、によって特徴付けられ、ここで第1の周波数成分は第1の転移帯域および第1の通過帯域を含み、
第1の転移帯域内の周波数の関数として、第1の左のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分を0dBと15dBの間でブーストし、
第1の通過帯域内の固定された量により、第1の左のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分をブーストし、
左の入力信号を補正する処理周波数により第2の左のフィルタされたオーディオ信号を生成し、この補正処理は周波数の第2の転移帯域、なお第2の転移帯域は約1kHzと10kHzの間の周波数範囲を有し、および第2の通過帯域、なお第2の通過帯域は約10kHzより大きい周波数範囲を有し、によって特徴付けられ、ここで第2の周波数成分は第2の転移帯域および第2の通過帯域を含み、
第2の転移帯域内の周波数の関数として、第2の左のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分を−15dBと30dBの間で調節し、
第2の通過帯域内の固定された量により、第2のフィルタされた左のオーディオ信号の振幅成分を調節し、
空間的に補正された左オーディオ信号を発生するために、ブーストされた第1の左のフィルタされたオーディオ信号と調節された第2の左のフィルタされたオーディオ信号とを結合させ、
右入力信号をハイパスフィルタ処理することにより第1の右のフィルタされたオーディオ信号を生成し、このフィルタ処理は周波数の第1の転移帯域および第1の通過帯域によって特徴付けられ、
第1の転移帯域内の周波数の関数として、第1の右のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分を0dBと15dBの間でブーストし、
第1の通過帯域内の固定された量により、第1の右のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分をブーストし、
右の入力信号を補正する処理周波数により第2の右のフィルタされたオーディオ信号を生成し、この補正処理は周波数の第2の転移帯域および第2の通過帯域によって特徴付けられ、
第2の転移帯域内の周波数の関数として、第2の右のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分を−15dBと30dBの間で調節し、
第2の通過帯域内の固定された量により、第2の右のフィルタされたオーディオ信号の振幅成分を調節し、
空間的に補正された右オーディオ信号を発生するために、ブーストされた第1の右のフィルタされたオーディオ信号と調節された第2の右のフィルタされたオーディオ信号とを結合させ、
空間的に補正された右および左オーディオ信号に関連する差情報を生成し、そして
差情報に対して遠近法等化曲線を適用することにより差情報を変換し、遠近法等化曲線は約100〜200Hzの第1周波数範囲内の最大利得周波数において生ずる最大利得の転移点により特徴付けられ、該曲線は約1680〜5000Hzの第2周波数範囲内の最小利得周波数において生ずる最小利得の転移点により特徴付けられ、
ここで補正された空間的応答特性を生成するために第1の周波数成分は第2の周波数成分とは別個に処理され、
ここで補正された空間的応答特性は、音源の感知された位置を第1の位置から第2の位置に再度位置付けるように構成され、補正されていない第1の複数の周波数を有するオーディオ情報が聞き取られるように再生された場合、第1の位置が聴取者に感知され、そして補正された空間的応答特性を有するオーディオ情報が聞き取られるように再生された場合、第2の位置が聴取者に感知され、そして
ここで第2の位置は、第1の位置とは異なる聴取者に対する仰角により画定される音響強調方法。 - 聴取者によって感知された第2の見掛け上の位置は、聴取者に関して第1の位置とは異なった方位角および仰角により規定される請求項13記載の音響強調方法。
- 補正された空間的応答特性は、100Hzを越える全ての可聴周波数にわたって聴取者に関して実質上一定の音圧エネルギレベルを特徴とする請求項13記載の音響強調方法。
- 第1の周波数成分は約100Hz乃至1kHzの周波数を含み、第2の周波数成分は約1kHz乃至10kHzの周波数を含んでいる請求項13記載の音響強調方法。
- 音響強調方法は、デジタル信号プロセッサによりデジタルフォーマットで行われる請求項13記載の音響強調方法。
- 音響強調方法は、ディスクリートな回路素子を使用して行われる請求項13記載の音響強調方法。
- 音響情報は、モノラルのオーディオ信号源から合成して発生された左および右ステレオ入力信号を含んでいる請求項13記載の音響強調方法。
- 音響強調方法は、デジタルおよびアナログハイブリッド回路において行われる請求項13記載の音響強調方法。
- 第1のスピーカを第1のドアパネル内に配置し、第2のスピーカを第2のドアパネル内に配置するステップをさらに含んでいる請求項13記載の音響強調方法。
- 空間的に強調される差情報が、サウンドイメージが聴取者によって聞き取られるときに、第2の位置に出現した音源の感知される方向を変化させるように構成された強調された補正された空間的応答特性を生成する請求項13記載の音響強調方法。
- 空間的に強調される差情報が補正された空間的応答特性の周囲成分を等化する請求項13記載の音響強調方法。
- 空間的に強調される差情報が補正された空間的応答特性の中の反響音響エネルギを強調する請求項13記載の音響強調方法。
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