JP2005072676A - 自動音場補正装置及びそのためのコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】残響音の影響を受けることなく、主として直接音について所望の周波数特性が得られるような補正を行うことが可能な自動音場補正システム及びそのためのコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】自動音場補正装置は、複数チャンネルのオーディオ信号を対応する信号伝送路上で処理し、複数のスピーカを介して再生する。各信号伝送路の周波数特性の調整時には、各信号伝送路に対して測定用信号が供給され、対応するスピーカから測定用信号音が放射される。この測定用信号音は直接音期間において例えばマイクロホンなどを含む検出手段により検出信号として検出される。検出信号に基づいて、イコライザ利得値を適切に設定することにより、各信号伝送路の周波数特性が調整される。測定用信号音を検出する期間である直接音期間は、測定用信号音が残響音成分を含まない期間であるので、直接音を主対象として、各信号伝送路の周波数特性を調整することが可能となる。
【選択図】 図10
【解決手段】自動音場補正装置は、複数チャンネルのオーディオ信号を対応する信号伝送路上で処理し、複数のスピーカを介して再生する。各信号伝送路の周波数特性の調整時には、各信号伝送路に対して測定用信号が供給され、対応するスピーカから測定用信号音が放射される。この測定用信号音は直接音期間において例えばマイクロホンなどを含む検出手段により検出信号として検出される。検出信号に基づいて、イコライザ利得値を適切に設定することにより、各信号伝送路の周波数特性が調整される。測定用信号音を検出する期間である直接音期間は、測定用信号音が残響音成分を含まない期間であるので、直接音を主対象として、各信号伝送路の周波数特性を調整することが可能となる。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のスピーカを備えるオーディオシステムにおいて音場特性を自動的に補正する自動音場補正システム及び音場補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のスピーカを備えて高品位の音場空間を提供するオーディオシステムでは、臨場感の得られる適切な音場空間を自動的に作り出すことが要求されている。即ち、受聴者自らが適切な音場空間を得ようとしてオーディオシステムを操作しても、複数のスピーカで再生される再生音の位相特性、周波数特性、音圧レベル等を適切に調節することは極めて困難であるため、オーディオシステム側で自動的に音場特性を補正することが要求されている。
【0003】
従来、この種の自動音場補正システムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。このシステムでは、複数のチャンネルに対応する信号伝送路毎に、スピーカから出力したテスト信号を集音してその周波数特性を分析し、当該信号伝送路内に配置されたイコライザの係数を設定することにより、各信号伝送路を所望の周波数特性に調整している。テスト信号としては、例えばピンクノイズなどが使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−330499号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の自動音場補正システムでは、スピーカから出力されたテスト信号が分析部に届いた後、どのようなタイミングでテスト信号を取り込んで周波数特性の分析に使用するかについては、特に考察されてはいなかった。また、一般的には、テスト信号が分析部に届いてからある程度の時間が経過した後、即ち残響音が十分に鳴り響いている状態でテスト信号を取り込み、周波数特性の分析を行なっていた。
【0005】
しかし、このようにテスト信号の残響音成分を含めて各信号伝送路の周波数特性を分析すると、音源信号の再生時においても、残響音が十分に鳴り響いた後に目標の周波数特性が得られるように、各信号伝送路の周波数特性が調整されることになる。その結果、臨場感や定位感など、聴感上の音質を大きく左右するスピーカからの直接音が目標の周波数特性にならないように各信号伝送路の周波数特性が調整されてしまうことがあった。また、複数のチャンネル毎に残響特性が異なる場合には、音源信号再生時のスピーカからの直接音の聞こえ方がチャンネル毎に異なってしまうという不具合もあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、残響音の影響を受けることなく、主として直接音について所望の周波数特性が得られるような補正を行うことが可能な自動音場補正システム及びそのためのコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数のオーディオ信号に対して、各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置において、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記集音手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の発明は、コンピュータを、複数のオーディオ信号に対して各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記自動音場補正装置は、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記集音手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの観点では、複数のオーディオ信号に対して、各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置は、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0010】
上記の自動音場補正装置は、複数チャンネルのオーディオ信号を対応する信号伝送路上で処理し、複数のスピーカを介して再生する。各信号伝送路の周波数特性の調整時には、各信号伝送路に対して測定用信号が供給され、対応するスピーカから測定用信号音が放射される。そして、直接音期間における測定用信号音が例えばマイクロホンなどを含む検出手段により検出信号として検出される。検出信号に基づいて、イコライザ利得値を適切に設定することにより、各信号伝送路の周波数特性が調整される。測定用信号音を検出する期間である直接音期間は、測定用信号音が残響音成分を含まない期間であるので、直接音を主対象として、各信号伝送路の周波数特性を調整することが可能となる。
【0011】
上記の自動音場補正装置の一態様では、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が直接音成分及び初期反射音成分を含む期間とすることができる。信号伝送路の周波数特性の調整後には音源信号の再生が行われるが、通常の環境では、利用者はスピーカなどから再生される音源信号の直接音成分及び初期反射音成分を聴くことになる。よって、周波数特性の調整において、初期反射音成分が考慮されるようにすることは有益となる。
【0012】
好適な実施例では、前記直接音期間は、前記測定用信号音が前記集音手段により最初に検出された時点から所定の時間範囲内、例えば20〜40msecとすることが好ましい。
【0013】
上記の自動音場補正装置の他の一態様は、各信号伝送路の信号遅延時間を測定する遅延測定手段を備え、前記検出手段は、前記測定用信号音が前記スピーカから放射された時点と、前記信号伝送路の信号遅延時間と、前記所定の時間範囲とに基づいて、前記直接音期間を決定することができる。これにより、各信号伝送路毎の信号遅延時間の測定結果に基づいて、直接音期間の測定用信号音を正確に検出することが可能となる。
【0014】
本発明の他の観点では、複数のオーディオ信号に対して各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置として機能させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータを、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備える自動音場補正装置として機能させ、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0015】
上記プログラムをコンピュータに読み込んで実行することにより、該コンピュータを上記の自動音場制御装置として機能させることができる。
【0016】
【実施例】
[1]システム構成
以下、本発明による自動音場補正システムの実施例を図面を参照して説明する。図1は、本実施例の自動音場補正システムを備えたオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、本オーディオシステム100には、CD(Compact disc)プレーヤやDVD(Digital Video Disc又はDigital Versatile Disc)プレーヤ等の音源1から複数チャンネルの信号伝送路を通じてデジタルオーディオ信号SFL,SFR,SC,SRL,SRR,SWF,SSBL及びSSBRが供給される信号処理回路2と、測定用信号発生器3とが設けられている。
【0018】
なお、本オーディオシステムは複数チャンネルの信号伝送路を含むが、以下の説明では各チャンネルをそれぞれ「FLチャンネル」、「FRチャンネル」などと表現することがある。また、信号及び構成要素の表現において複数チャンネルの全てについて言及する時は参照符号の添え字を省略する場合がある。また、個別チャンネルの信号及び構成要素に言及する時はチャンネルを特定する添え字を参照符号に付す。例えば、「デジタルオーディオ信号S」と言った場合は全チャンネルのデジタルオーディオ信号SFL〜SSBRを意味し、「デジタルオーディオ信号SFL」と言った場合はFLチャンネルのみのデジタルオーディオ信号を意味するものとする。
【0019】
更に、オーディオシステム100は、信号処理回路2によりチャンネル毎に信号処理されたデジタル出力DFL〜DSBRをアナログ信号に変換するD/A変換器4FL〜4SBRと、これらのD/A変換器4FL〜4SBRから出力される各アナログオーディオ信号を増幅する増幅器5FL〜5SBRとを備えている。これらの増幅器5で増幅した各アナログオーディオ信号SPFL〜SPSBRを、図6に例示するようなリスニングルーム7等に配置された複数チャンネルのスピーカ6FL〜6SBRに供給して鳴動させるようになっている。
【0020】
また、オーディオシステム100は、受聴位置RVにおける再生音を集音するマイクロホン8と、マイクロホン8から出力される集音信号SMを増幅する増幅器9と、増幅器9の出力をデジタルの集音データDMに変換して信号処理回路2に供給するA/D変換器10とを備えている。
【0021】
ここで、オーディオシステム100は、オーディオ周波数帯域のほぼ全域にわたって再生可能な周波数特性を有する全帯域型のスピーカ6FL,6FR,6C,6RL,6RRと、所謂重低音だけを再生するための周波数特性を有する低域再生専用のスピーカ6WFと、受聴者の背後に配置されるサラウンドスピーカ6SBL及び6SBRを鳴動させることで、受聴位置RVにおける受聴者に対して臨場感のある音場空間を提供する。
【0022】
各スピーカの配置としては、例えば、図6に示すように、受聴者が好みに応じて、受聴位置RVの前方に、左右2チャンネルのフロントスピーカ(前方左側スピーカ、前方右側スピーカ)6FL,6FRとセンタースピーカ6Cを配置する。また、受聴位置RVの後方に、左右2チャンネルのスピーカ(後方左側スピーカ、後方右側スピーカ)6RL,6RRと左右2チャンネルのサラウンドスピーカ6SBL,6SBRを配置し、更に、任意の位置に低域再生専用のサブウーハ6WFを配置する。オーディオシステム100に備えられた自動音場補正システムは、周波数特性、各チャンネルの信号レベル及び信号到達遅延特性を補正したアナログオーディオ信号SPFL〜SPSBRをこれら8個のスピーカ6FL〜6SBRに供給して鳴動させることで、臨場感のある音場空間を実現する。
【0023】
信号処理回路2は、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)等で形成されており、図2に示すように、大別して信号処理部20と、係数演算部30とから構成される。信号処理部20は、CD、DVD、その他の各種音楽ソースを再生する音源1から複数チャンネルのデジタルオーディオ信号を受け取り、各チャンネル毎に周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正を施してデジタル出力信号DFL〜DSBRを出力する。係数演算部30は、マイクロホン8で集音された信号をデジタルの集音データDMとして受け取り、周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正のための係数信号SF1〜SF8、SG1〜SG8、SDL1〜SDL8をそれぞれ生成して信号処理部20へ供給する。マイクロホン8からの集音データDMに基づいて信号処理部20が適切な周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正を行うことにより、各スピーカ6から最適な信号が出力される。
【0024】
信号処理部20は、図3に示すようにグラフィックイコライザGEQと、チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8と、遅延回路DLY1〜DLY8とを備えている。一方、係数演算部30は、図4に示すように、システムコントローラMPUと、周波数特性補正部11と、チャンネル間レベル補正部12と、遅延特性補正部13とを備えている。周波数特性補正部11、チャンネル間レベル補正部12及び遅延特性補正部13はDSPを構成している。
【0025】
周波数特性補正部11がグラフィックイコライザGEQの各チャンネルに対応するイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調整し、チャンネル間レベル補正部12がチャンネル間アッテネータATG1〜ATG8の減衰率を調整し、遅延特性補正部13が遅延回路DLY1〜DLY8の遅延時間を調整することで、適切な音場補正を行うように構成されている。
【0026】
ここで、各チャンネルのイコライザEQ1〜EQ5、EQ7及びEQ8は、それぞれ複数の帯域毎に周波数特性補正を行うように構成されている。即ち、オーディオ周波数帯域を例えば9つの帯域(各帯域の中心周波数をf1〜f9とする。)に分割し、帯域毎にイコライザEQの係数を決定して周波数特性補正を行う。なお、イコライザEQ6は、低域の周波数特性を調整するように構成されている。
【0027】
オーディオシステム100は、動作モードとして自動音場補正モードと音源信号再生モードの2つのモードを有する。自動音場補正モードは、音源1からの信号再生に先だって行われる調整モードであり、システム100の設置された環境について自動音場補正を行う。その後、音源信号再生モードでCDなどの音源1からの音響信号が再生される。本発明は、主として自動音場補正モードにおける補正処理に関するものである。
【0028】
図3を参照すると、FLチャンネルのイコライザEQ1には、音源1からのデジタルオーディオ信号SFLの入力をオン/オフ制御するスイッチ素子SW12と、測定用信号発生器3からの測定用信号DNの入力をオン/オフ制御するスイッチ素子SW11が接続され、スイッチ素子SW11はスイッチ素子SWNを介して測定用信号発生器3に接続されている。
【0029】
スイッチ素子SW11,SW12,SWNは、図4に示すマイクロプロセッサで形成されたシステムコントローラMPUによって制御され、音源信号再生時には、スイッチ素子SW12がオン(導通)、スイッチ素子SW11とSWNがオフ(非導通)となり、音場補正時には、スイッチ素子SW12がオフ、スイッチ素子SW11とSWNがオンとなる。
【0030】
また、イコライザEQ1の出力接点には、チャンネル間アッテネータATG1が接続され、チャンネル間アッテネータATG1の出力接点には遅延回路DLY1が接続されている。そして、遅延回路DLY1の出力DFLが、図1中のD/A変換器4FLに供給される。
【0031】
他のチャンネルもFLチャンネルと同様の構成となっており、スイッチ素子SW11に相当するスイッチ素子SW21〜SW81と、スイッチ素子SW12に相当するスイッチ素子SW22〜SW82が設けられている。そして、これらのスイッチ素子SW21〜SW82に続いて、イコライザEQ2〜EQ8と、チャンネル間アッテネータATG2〜ATG8と、遅延回路DLY2〜DLY8が備えられ、遅延回路DLY2〜DLY8の出力DFR〜DSBRが図1中のD/A変換器4FR〜4SBRに供給される。
【0032】
更に、各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8は、チャンネル間レベル補正部12からの調整信号SG1〜SG8に従って0dBからマイナス側の範囲で減衰率を変化させる。また、各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8は、位相特性補正部13からの調整信号SDL1〜SDL8に従って入力信号の遅延時間を変化させる。
【0033】
周波数特性補正部11は、各チャンネルの周波数特性を所望の特性となるように調整する機能を有する。図5(A)に示すように、周波数特性補正部11は、バンドパスフィルタ11a、係数テーブル11b、利得演算部11c、係数決定部11d、及び係数テーブル11eを備えて構成される。
【0034】
バンドパスフィルタ11aは、イコライザEQ1〜EQ8に設定されている9個の帯域を通過させる複数の狭帯域デジタルフィルタで構成されており、A/D変換器10からの集音データDMを周波数f1〜f9と中心とする9つの周波数帯域に弁別することにより、各周波数帯域のレベルを示すデータ[PxJ]を利得演算部11cに供給する。なお、バンドパスフィルタ11aの周波数弁別特性は、係数テーブル11bに予め記憶されているフィルタ係数データによって設定される。
【0035】
利得演算部11cは、帯域毎のレベルを示すデータ[PxJ]に基づいて、自動音場補正時のイコライザEQ1〜EQ8の利得(ゲイン)を周波数帯域毎に演算し、演算した利得データ[GxJ]を係数決定部11dに供給する。即ち、予め既知となっているイコライザEQ1〜EQ8の伝達関数にデータ[PxJ]を適用することで、イコライザEQ1〜EQ8の周波数帯域毎の利得(ゲイン)を逆算する。
【0036】
係数決定部11dは、図4に示すシステムコントローラMPUの制御下でイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節するためのフィルタ係数調整信号SF1〜SF8を生成する。(なお、音場補正の際に、受聴者の指示する条件に応じて、フィルタ係数調整信号SF1〜SF8を生成するように構成されている。)
受聴者が音場補正の条件を指示せず、本音場補正システムに予め設定されている標準の音場補正を行う場合には、利得演算部11cから供給される周波数帯域毎の利得データ[GxJ]によって係数テーブル11eからイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節するためのフィルタ係数データを読み出し、このフィルタ係数データのフィルタ係数調整信号SF1〜SF8によりイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節する。
【0037】
即ち、係数テーブル11eには、イコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を様々に調節するためのフィルタ係数データが予めルックアップテーブルとして記憶されており、係数決定部11dが利得データ[GxJ]に対応するフィルタ係数データを読み出し、その読み出したフィルタ係数データをフィルタ係数調整信号SF1〜SF8として各イコライザEQ1〜EQ8に供給することで、チャンネル毎に周波数特性を調整する。
【0038】
本実施例では、周波数特性補正部11が周波数特性の調節のために使用する集音データが残響音成分を含まないようにする点に特徴を有する。図8に、周波数特性補正部11による周波数特性の調整方法を模式的に示す。図8に示すように、周波数特性補正では、測定用信号発生器3から出力されたピンクノイズなどの測定用信号が信号処理回路2から出力され、D/A変換器4を通ってスピーカ6から測定用信号音として出力される。この測定用信号音はマイク8により集音され、A/D変換器10を介して信号処理回路2へ集音データとして供給される。
【0039】
ここで、スピーカ6から出力された測定用信号音は、大別して直接音成分35、初期反射音成分33及び残響音成分37の3種類の音としてマイク8へ到達する。直接音成分35は、スピーカ6から出力され、壁、床などを含む障害物などの影響を受けることなく、直接的にマイク8へ至る音成分である。初期反射音(一次反射音とも呼ばれる。)成分33は、部屋の壁や床などにより1回反射してマイク8へ到達する音成分である。また、残響音成分37は、部屋の壁、床その他の障害物などにより複数回の反射を繰り返した後にマイク8へ到達する音成分である。
【0040】
図9に、測定用信号音の出力後の音圧レベル変化を示す。なお、測定用信号音としては、ピンクノイズを一定レベルで継続的に出力するものとする。時刻t0で測定用信号音を出力した場合、遅延時間Td経過後の時刻t1において、測定用信号音が信号処理回路2により受信される。なお、遅延時間Tdは測定用信号が信号処理回路2から出力された後、図8に示すループを一周して信号処理回路2へ戻るまでに要する時間であり、具体的には、測定用信号が信号処理回路2からD/A変換器4を通ってスピーカ6まで送られるのに要する時間と、測定用信号音がスピーカ6からマイク8へ伝搬するのに要する時間と、マイク8により集音された音信号がA/D変換器10を通って信号処理回路2まで送られるのに要する時間の合計に相当する。即ち、測定用信号音の伝搬時間と、測定用信号及び収集された信号の電気的な処理時間の和となる。
【0041】
図9に示されるように、最初に信号処理回路2により受信されるのは測定用信号音の直接音成分であり、直接音成分はその後も一定のレベルで受信される。また、その後、直接音成分が受信された時刻t1の直後から初期反射音成分が受信され始め、さらに時刻t1から数十msecが経過すると、残響音成分が増大する。残響音成分は、その後一定のレベルL1で飽和する。
【0042】
本実施例では、測定用信号音の直接音成分及び初期反射音成分が信号処理回路2に到達しているが、残響音成分が未だほとんど到達していない時間(以下、「直接音期間」と呼ぶ。)40に測定用信号音を検出し、その検出結果に基づいて、各チャンネルの信号伝送路の周波数特性の調整を行う。これにより、周波数特性の調節において、測定用信号音の残響音成分の影響を排除することができる。直接音期間は40は、スピーカから出力された測定用信号音が信号処理回路2に到達した直後の期間となり、本システムを配置する部屋や空間の大きさや構造などに依存する。一般的な家庭の部屋などの場合、直接音期間は、測定用信号音が最初に受信された時刻t1から20〜40msec程度の範囲であることがわかっている。よって、直接音期間を、測定用信号音の直接音成分が最初に受信された時刻t1から20〜40secの範囲内で例えば10msec程度の期間に設定し、その期間にわたって測定用信号音を検出し、それを分析して周波数特性の調整を行えばよい。
【0043】
このように、直接音期間における測定用信号音を集音し、その集音データに基づいて周波数特性の調節を行うことにより、残響音の悪影響を受けることなく、直接音を対象として各チャンネルの信号伝送路の周波数特性を目標の特性となるように調整することが可能となる。なお、直接音期間には、残響音は極力含まれないことが好ましいが、初期反射音が含まれていても構わない。これは、周波数特性の調節後に音源信号を再生した場合、利用者は通常直接音のみでなく、床や壁などからの初期反射音も同時に聴くことになるので、初期反射音も考慮して周波数特性を調節しておくことは有益であるからである。よって、「直接音期間」は、測定用信号音の直接音のみを含む期間のみならず、初期反射音を含む期間であってもよい。
【0044】
また、上記のように、チャンネル毎に直接音に関して目標の周波数特性を設定できるという利点に加え、複数のチャンネル間における残響特性がまちまちであるような環境においても、それに影響されることなく、チャンネル間の特性を揃えることができるという利点もある。
【0045】
なお、実際に直接音期間における集音データを検出する方法としては、いくつかの方法がある。1つの方法では、図5(a)に示す周波数特性補正部11において、バンドパスフィルタ11aが直接音期間においてのみ集音データDMをフィルタリングして利得演算部11cへフィルタ処理後のレベルデータ[PxJ]を供給するように構成すればよい。また、別の方法では、バンドパスフィルタ11aは期間を問わずフィルタリング処理を行うこととし、利得演算部11cが直接音期間のみにおけるレベルデータ[PxJ]に基づいて利得データ[GxJ]を生成するように構成してもよい。
【0046】
次に、チャンネル間レベル補正部12について説明する。チャンネル間レベル補正部12は、各チャンネルを通じて出力される音響信号の音圧レベルを均一にする役割を有する。具体的には、測定用信号発生器3から出力される測定用信号(ピンクノイズ)DNによって各スピーカ6FL〜6SBRを個別に鳴動させたときに得られる集音データDMを順に入力し、その集音データDMに基づいて、受聴位置RVにおける各スピーカの再生音のレベルを測定する。
【0047】
チャンネル間レベル補正部12の概略構成を図5(B)に示す。A/D変換器10から出力される集音データDMはレベル検出部12aに入力される。なお、チャンネル間レベル補正部12は、基本的に各チャンネルの信号の全帯域に対して一律にレベルの減衰処理を行うので帯域分割は不要であり、よって図5(A)の周波数特性補正部11に見られるようなバンドバスフィルタを含まない。
【0048】
レベル検出部12aは集音データDMのレベルを検出し、各チャンネルについての出力オーディオ信号レベルが一定となるように利得調整を行う。具体的には、レベル検出部12aは検出した集音データのレベルと基準レベルとの差を示すレベル調整量を生成し、調整量決定部12bへ出力する。調整量決定部12bはレベル検出部12aから受け取ったレベル調整量に対応する利得調整信号SG1〜SG8を生成して各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8へ供給する。各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8は、利得調整信号SG1〜SG8に応じて各チャンネルのオーディオ信号の減衰率を調整する。このチャンネル間レベル補正部12の減衰率調整により、各チャンネル間のレベル調整(利得調整)が行われ、各チャンネルの出力オーディオ信号レベルが均一となる。
【0049】
遅延特性補正部13は、各スピーカの位置と受聴位置RVとの間の距離差に起因する信号遅延を調整する、即ち、本来同時に受聴者が聴くべき各スピーカ6からの出力信号が受聴位置RVに到達する時刻がずれることを防止する役割を有する。よって、遅延特性補正部13は、測定用信号発生器3から出力される測定用信号(ピンクノイズ)DNによって各スピーカ6を個別に鳴動させたときに得られる集音データDMに基づいて各チャンネルの遅延特性を測定し、その測定結果に基づいて音場空間の位相特性を補正する。
【0050】
具体的には、図3に示すスイッチSW11〜SW82を順次切り換えることにより、測定用信号発生器3から発生された測定用信号DNを各チャンネル毎に各スピーカ6から出力し、これをマイクロホン8により集音して対応する集音データDMを生成する。測定用信号を例えばインパルスなどのパルス性信号とすると、スピーカ8からパルス性の測定用信号を出力した時刻と、それに対応するパルス信号がマイクロホン8により受信された時刻との差は、各チャンネルのスピーカ6とマイクロホン8との距離に比例することになる。よって、測定より得られた各チャンネルの遅延時間のうち、最も遅延量の大きいチャンネルの遅延時間に残りのチャンネルの遅延時間を合わせることにより、各チャンネルのスピーカ6と受聴位置RVとの距離差を吸収することができる。よって、各チャンネルのスピーカ6から発生する信号間の遅延を等しくすることができ、複数のスピーカ6から出力された時間軸上で一致する時刻の音響が同時に受聴位置RVに到達することになる。
【0051】
図5(C)に遅延特性補正部の構成を示す。遅延量演算部13aは集音データDMを受け取り、パルス性測定用信号と集音データとの間のパルス遅延量に基づいて、各チャンネル毎に音場環境による信号遅延量を演算する。遅延量決定部13bは遅延量演算部13aから各チャンネル毎に信号遅延量を受け取り、一時的にメモリ13cに記憶する。全てのチャンネルについての信号遅延量が演算され、メモリ13cに記憶された状態で、調整量決定部13bは最も大きい信号遅延量を有するチャンネルの再生信号が受聴位置RVに到達するのと同時に他のチャンネルの再生信号が受聴位置RVに到達するように、各チャンネルの調整量を決定し、調整信号SDL1〜SDL8を各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8に供給する。各遅延回路DLY1〜DLY8は調整信号SDL1〜SDL8に応じて遅延量を調整する。こうして、各チャンネルの遅延特性の調整が行われる。なお、上記の例では遅延調整のための測定用信号としてパルス性信号を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の測定用信号を用いてもよい。
[2]自動音場補正処理
次に、かかる構成を有する自動音場補正システムによる自動音場補正の動作について説明する。
【0052】
まず、オーディオシステム100を使用する環境としては、受聴者が、例えば図6に示したように複数のスピーカ6FL〜6SBRをリスニングルーム7等に配置し、図1に示すようにオーディオシステム100に接続する。そして、受聴者がオーディオシステム100に備えられているリモートコントローラ(図示省略)等を操作して自動音場補正開始の指示をすると、システムコントローラMPUがこの指示に従って自動音場補正処理を実行する。
【0053】
次に、本発明の自動音場補正における基本的な原理を説明する。先に述べたように、自動音場補正において行う処理は、各チャンネルの周波数特性補正、音圧レベルの補正及び遅延特性補正がある。ここで本発明においては、周波数特性補正において、直接音(初期反射音を含む)を主対象として、所望の周波数特性が得られるように各チャンネルの周波数特性の調整を行う点に特徴を有する。
【0054】
次に、このような周波数特性補正を含む自動音場補正処理の概要を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
始めに、ステップS10で、周波数特性補正部11がイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調整する処理が行われる。次に、ステップS20のチャンネル間レベル補正処理で、チャンネル間レベル補正部12により、各チャンネルに設けられているチャンネル間アッテネータATG1〜ATG8の減衰率を調節する処理が行われる。次に、ステップS30の遅延特性補正処理で、遅延特性補正部13により、全チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8の遅延時間を調整する処理が行われる。この順序で本発明による自動音場補正が行われる。
【0056】
次に、各処理段階の動作を順に詳述する。まず、ステップS10の周波数特性補正処理について、図10を参照して説明する。図10は本実施例による周波数特性補正処理のフローチャートである。なお、図10に示す周波数特性補正処理は、各チャンネルの周波数特性補正処理に先だって、各チャンネルの遅延測定を行うものである。ここで、遅延測定とは、測定用信号を信号処理回路2が出力してから、それに対応する集音データが信号処理回路2に到達するまでの遅延時間、即ち、図8に示した遅延時間Tdを各チャンネル毎に事前に測定する処理である。図9に示されるように、直接音期間40は、測定用信号音が信号処理回路2に到達した時刻t1から所定の時間範囲に設定されるので、各チャンネル毎に遅延時間Tdを測定しておくことにより、信号処理回路2は時刻t1を正確に把握することができ、正確に直接音期間40内の集音データDMを検出することが可能となる。図10においては、ステップS100〜S106がこの遅延測定処理に対応し、ステップS108〜S116が実際の周波数特性補正処理に対応している。
【0057】
図10において、信号処理回路2は、まず複数のチャンネルのうちの1つのチャンネルについて例えばパルス性の遅延測定用信号を出力し、これがスピーカ6から測定用信号音として出力される(ステップS100)。この測定用信号音は、マイクロホン8により集音され、集音データDMが信号処理回路2へ供給される(ステップS102)。信号処理回路2内の周波数特性補正部11は遅延時間Tdを演算し、内部メモリなどに記憶する(ステップS104)。これらステップS100〜S104の処理を全てのチャンネルについて行うことにより(ステップS106:Yes)、全てのチャンネルについての遅延時間Tdがメモリに格納されたことになる。こうして、遅延時間測定が完了する。
【0058】
次に、各チャンネルについて、周波数特性補正を行う。即ち、信号処理回路2は1つのチャンネルについてピンクノイズなどの周波数特性測定用信号を出力し、これがスピーカ6から測定用信号音として出力される(ステップS108)。この測定用信号音はマイクロホン8により集音され、先に例示した方法により、直接音期間に対応する集音データのみが信号処理回路2の周波数特性補正部11内で取得される(ステップS110)。そして、周波数特性補正部11内の利得演算部11cが集音データを分析し、係数決定部11dがイコライザ係数を設定し(ステップS112)、そのイコライザ係数に基づいてイコライザが調整される(ステップS114)。こうして、1つのチャンネルについて、直接音期間内に得られた集音データに基づいて周波数特性の調節が完了する。この処理を全てのチャンネルについて行い(ステップS116;Yes)、周波数特性補正処理が終了する。
【0059】
次に、ステップS20のチャンネル間レベル補正処理が行われる。チャンネル間レベル補正処理は、図11に示すフローに従って行われる。なお、チャンネル間レベル補正処理では、先の周波数特性補正処理により設定されたグラフィックイコライザGEQの周波数特性を上記周波数特性補正処理で調整した状態に維持して行う。
【0060】
図3に示す信号処理部20において、まずスイッチSW11をオンにすると同時にスイッチSW1をオフとすることにより、1つのチャンネル(例えばFLチャンネル)に測定用信号DN(ピンクノイズ)が供給され、その測定用信号DNがスピーカ6FLから出力される(ステップS120)。マイクロホン8はその信号を集音し、増幅器9及びA/D変換器10を通じて集音データDMが係数演算部30内のチャンネル間レベル補正部12へ供給される(ステップS122)。チャンネル間レベル補正部12では、レベル検出部12aが集音データDMの音圧レベルを検出し、調整量決定部12bへ送る。調整量決定部12bは、目標レベルテーブル12cに予め設定されている所定の音圧レベルと一致するようにチャンネル間アッテネータATG1の調整信号SG1を生成し、チャンネル間アッテネータATG1へ供給する(ステップS124)。こうして、1つのチャンネルのレベルが所定のレベルと一致するように補正される。この処理を、各チャンネルに対して順に行い、全てのチャンネルについてレベル補正が完了した時点で(ステップS126:Yes)、処理は図7のメインルーチンへ戻る。
【0061】
次に、ステップS30の遅延特性補正処理が図12に示すフローに従って行われる。まず、1つのチャンネル(例えばFLチャンネル)について、SW11をオンにすると同時にSW12をオフとして、測定用信号DNをスピーカ6から出力する(ステップS130)。次に、出力された測定用信号DNをマイクで集音し、集音データDMが係数演算部30内の遅延特性補正部13に入力される(ステップS132)。遅延特性補正部13内では、遅延量演算部13aがそのチャンネルの遅延量を演算により求め、一時的にメモリ13cに記憶する(ステップS134)。この処理が他の全てのチャンネルについて実行される。全てのチャンネルについて処理が完了した時点で(ステップS136:Yes)、メモリ13cには全てのチャンネルの遅延量が記憶されることになる。次に、係数演算部13bはメモリ13cの記憶内容に基づいて、全てのチャンネルのうち最大遅延量を有するチャンネルを基準とし、他の全てのチャンネルの信号が同時に受聴位置RVに到達するように各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8の係数を決定し、各遅延回路DLYに供給する(ステップS138)。これにより、遅延特性補正が完了する。
【0062】
こうして、周波数特性、チャンネル間レベル及び遅延特性が補正され、自動音場補正が完了する。
[3]変形例
図10に示した周波数特性補正処理においては、各チャンネル毎に遅延時間Tdを事前に測定することにより、信号処理回路2が直接音期間を正確に把握できるように構成した。しかし、ある程度の誤差を許容できるシステムにおいては、チャンネル毎に遅延測定を行うことなく、予め決められた遅延時間を全て又は一部のチャンネルに適用することとしてもよい。例えば、家庭用のシステムなどにおいては、通常、スピーカ8とマイクロホン8との距離にそれほど大きな相違はないと考えられるので、標準的な大きさのリビングルームにおける標準的な遅延時間を予め実験的に決定しておき、それを利用することとしてもよい。また、システム上、そのように予め用意された遅延時間を使用して周波数特性補正を行うモードと、上記の実施例のように遅延測定を行った上で周波数特性補正を行うモードとを用意し、利用者が任意に選択できるように構成してもよい。
【0063】
なお、上記実施形態においては本発明に係る信号処理を信号処理回路により実現する例を示したが、その代わりに、同一の信号処理をコンピュータ上で実行されるプログラムとして構成し、コンピュータ上で実行することにより実現することも可能である。この場合、該プログラムはCD−ROM、DVDなどの記録媒体の形態で、又はネットワークなどを利用した通信により供給される。コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができ、周辺機器として複数のチャンネルに対応するオーディオインターフェース、複数のスピーカ及びマイクなどを接続する。パーソナルコンピュータ上で上記プログラムを実行することにより、コンピュータ内部又は外部に設けた音源を利用して測定用信号を発生し、これをオーディオインターフェース及びスピーカを介して出力し、マイクで集音することにより、コンピュータを使用して図1に示すのと同様の自動音場補正装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の自動音場補正システムを備えるオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号処理回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す周波数特性補正部、チャンネル間レベル補正部及び遅延特性補正部の構成を示すブロック図である。
【図6】ある音場環境におけるスピーカの配置例を示す図である。
【図7】自動音場補正処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】周波数特性補正を行うための構成を模式的に示す。
【図9】周波数特性補正の測定用信号音の音圧レベル変化を示すグラフである。
【図10】周波数特性補正処理を示すフローチャートである。
【図11】チャンネル間レベル補正処理を示すフローチャートである。
【図12】遅延補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…音源
2…信号処理回路
3…測定用信号発生器
8…マイクロホン
9…増幅器
10…A/D変換器
11…周波数特性補正部
12…チャンネル間レベル補正部
13…遅延特性補正部
6…スピーカ
GEQ…グラフィックイコライザ
EQ1〜EQ8…イコライザ
ATG1〜ATG8…チャンネル間アッテネータ
DLY1〜DLY8…遅延回路
SW11〜SW82,SWN…スイッチ素子
MPU…システムコントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のスピーカを備えるオーディオシステムにおいて音場特性を自動的に補正する自動音場補正システム及び音場補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のスピーカを備えて高品位の音場空間を提供するオーディオシステムでは、臨場感の得られる適切な音場空間を自動的に作り出すことが要求されている。即ち、受聴者自らが適切な音場空間を得ようとしてオーディオシステムを操作しても、複数のスピーカで再生される再生音の位相特性、周波数特性、音圧レベル等を適切に調節することは極めて困難であるため、オーディオシステム側で自動的に音場特性を補正することが要求されている。
【0003】
従来、この種の自動音場補正システムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。このシステムでは、複数のチャンネルに対応する信号伝送路毎に、スピーカから出力したテスト信号を集音してその周波数特性を分析し、当該信号伝送路内に配置されたイコライザの係数を設定することにより、各信号伝送路を所望の周波数特性に調整している。テスト信号としては、例えばピンクノイズなどが使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−330499号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の自動音場補正システムでは、スピーカから出力されたテスト信号が分析部に届いた後、どのようなタイミングでテスト信号を取り込んで周波数特性の分析に使用するかについては、特に考察されてはいなかった。また、一般的には、テスト信号が分析部に届いてからある程度の時間が経過した後、即ち残響音が十分に鳴り響いている状態でテスト信号を取り込み、周波数特性の分析を行なっていた。
【0005】
しかし、このようにテスト信号の残響音成分を含めて各信号伝送路の周波数特性を分析すると、音源信号の再生時においても、残響音が十分に鳴り響いた後に目標の周波数特性が得られるように、各信号伝送路の周波数特性が調整されることになる。その結果、臨場感や定位感など、聴感上の音質を大きく左右するスピーカからの直接音が目標の周波数特性にならないように各信号伝送路の周波数特性が調整されてしまうことがあった。また、複数のチャンネル毎に残響特性が異なる場合には、音源信号再生時のスピーカからの直接音の聞こえ方がチャンネル毎に異なってしまうという不具合もあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、残響音の影響を受けることなく、主として直接音について所望の周波数特性が得られるような補正を行うことが可能な自動音場補正システム及びそのためのコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数のオーディオ信号に対して、各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置において、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記集音手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の発明は、コンピュータを、複数のオーディオ信号に対して各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記自動音場補正装置は、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記集音手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの観点では、複数のオーディオ信号に対して、各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置は、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0010】
上記の自動音場補正装置は、複数チャンネルのオーディオ信号を対応する信号伝送路上で処理し、複数のスピーカを介して再生する。各信号伝送路の周波数特性の調整時には、各信号伝送路に対して測定用信号が供給され、対応するスピーカから測定用信号音が放射される。そして、直接音期間における測定用信号音が例えばマイクロホンなどを含む検出手段により検出信号として検出される。検出信号に基づいて、イコライザ利得値を適切に設定することにより、各信号伝送路の周波数特性が調整される。測定用信号音を検出する期間である直接音期間は、測定用信号音が残響音成分を含まない期間であるので、直接音を主対象として、各信号伝送路の周波数特性を調整することが可能となる。
【0011】
上記の自動音場補正装置の一態様では、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が直接音成分及び初期反射音成分を含む期間とすることができる。信号伝送路の周波数特性の調整後には音源信号の再生が行われるが、通常の環境では、利用者はスピーカなどから再生される音源信号の直接音成分及び初期反射音成分を聴くことになる。よって、周波数特性の調整において、初期反射音成分が考慮されるようにすることは有益となる。
【0012】
好適な実施例では、前記直接音期間は、前記測定用信号音が前記集音手段により最初に検出された時点から所定の時間範囲内、例えば20〜40msecとすることが好ましい。
【0013】
上記の自動音場補正装置の他の一態様は、各信号伝送路の信号遅延時間を測定する遅延測定手段を備え、前記検出手段は、前記測定用信号音が前記スピーカから放射された時点と、前記信号伝送路の信号遅延時間と、前記所定の時間範囲とに基づいて、前記直接音期間を決定することができる。これにより、各信号伝送路毎の信号遅延時間の測定結果に基づいて、直接音期間の測定用信号音を正確に検出することが可能となる。
【0014】
本発明の他の観点では、複数のオーディオ信号に対して各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置として機能させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータを、各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備える自動音場補正装置として機能させ、前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする。
【0015】
上記プログラムをコンピュータに読み込んで実行することにより、該コンピュータを上記の自動音場制御装置として機能させることができる。
【0016】
【実施例】
[1]システム構成
以下、本発明による自動音場補正システムの実施例を図面を参照して説明する。図1は、本実施例の自動音場補正システムを備えたオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、本オーディオシステム100には、CD(Compact disc)プレーヤやDVD(Digital Video Disc又はDigital Versatile Disc)プレーヤ等の音源1から複数チャンネルの信号伝送路を通じてデジタルオーディオ信号SFL,SFR,SC,SRL,SRR,SWF,SSBL及びSSBRが供給される信号処理回路2と、測定用信号発生器3とが設けられている。
【0018】
なお、本オーディオシステムは複数チャンネルの信号伝送路を含むが、以下の説明では各チャンネルをそれぞれ「FLチャンネル」、「FRチャンネル」などと表現することがある。また、信号及び構成要素の表現において複数チャンネルの全てについて言及する時は参照符号の添え字を省略する場合がある。また、個別チャンネルの信号及び構成要素に言及する時はチャンネルを特定する添え字を参照符号に付す。例えば、「デジタルオーディオ信号S」と言った場合は全チャンネルのデジタルオーディオ信号SFL〜SSBRを意味し、「デジタルオーディオ信号SFL」と言った場合はFLチャンネルのみのデジタルオーディオ信号を意味するものとする。
【0019】
更に、オーディオシステム100は、信号処理回路2によりチャンネル毎に信号処理されたデジタル出力DFL〜DSBRをアナログ信号に変換するD/A変換器4FL〜4SBRと、これらのD/A変換器4FL〜4SBRから出力される各アナログオーディオ信号を増幅する増幅器5FL〜5SBRとを備えている。これらの増幅器5で増幅した各アナログオーディオ信号SPFL〜SPSBRを、図6に例示するようなリスニングルーム7等に配置された複数チャンネルのスピーカ6FL〜6SBRに供給して鳴動させるようになっている。
【0020】
また、オーディオシステム100は、受聴位置RVにおける再生音を集音するマイクロホン8と、マイクロホン8から出力される集音信号SMを増幅する増幅器9と、増幅器9の出力をデジタルの集音データDMに変換して信号処理回路2に供給するA/D変換器10とを備えている。
【0021】
ここで、オーディオシステム100は、オーディオ周波数帯域のほぼ全域にわたって再生可能な周波数特性を有する全帯域型のスピーカ6FL,6FR,6C,6RL,6RRと、所謂重低音だけを再生するための周波数特性を有する低域再生専用のスピーカ6WFと、受聴者の背後に配置されるサラウンドスピーカ6SBL及び6SBRを鳴動させることで、受聴位置RVにおける受聴者に対して臨場感のある音場空間を提供する。
【0022】
各スピーカの配置としては、例えば、図6に示すように、受聴者が好みに応じて、受聴位置RVの前方に、左右2チャンネルのフロントスピーカ(前方左側スピーカ、前方右側スピーカ)6FL,6FRとセンタースピーカ6Cを配置する。また、受聴位置RVの後方に、左右2チャンネルのスピーカ(後方左側スピーカ、後方右側スピーカ)6RL,6RRと左右2チャンネルのサラウンドスピーカ6SBL,6SBRを配置し、更に、任意の位置に低域再生専用のサブウーハ6WFを配置する。オーディオシステム100に備えられた自動音場補正システムは、周波数特性、各チャンネルの信号レベル及び信号到達遅延特性を補正したアナログオーディオ信号SPFL〜SPSBRをこれら8個のスピーカ6FL〜6SBRに供給して鳴動させることで、臨場感のある音場空間を実現する。
【0023】
信号処理回路2は、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)等で形成されており、図2に示すように、大別して信号処理部20と、係数演算部30とから構成される。信号処理部20は、CD、DVD、その他の各種音楽ソースを再生する音源1から複数チャンネルのデジタルオーディオ信号を受け取り、各チャンネル毎に周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正を施してデジタル出力信号DFL〜DSBRを出力する。係数演算部30は、マイクロホン8で集音された信号をデジタルの集音データDMとして受け取り、周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正のための係数信号SF1〜SF8、SG1〜SG8、SDL1〜SDL8をそれぞれ生成して信号処理部20へ供給する。マイクロホン8からの集音データDMに基づいて信号処理部20が適切な周波数特性補正、レベル補正及び遅延特性補正を行うことにより、各スピーカ6から最適な信号が出力される。
【0024】
信号処理部20は、図3に示すようにグラフィックイコライザGEQと、チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8と、遅延回路DLY1〜DLY8とを備えている。一方、係数演算部30は、図4に示すように、システムコントローラMPUと、周波数特性補正部11と、チャンネル間レベル補正部12と、遅延特性補正部13とを備えている。周波数特性補正部11、チャンネル間レベル補正部12及び遅延特性補正部13はDSPを構成している。
【0025】
周波数特性補正部11がグラフィックイコライザGEQの各チャンネルに対応するイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調整し、チャンネル間レベル補正部12がチャンネル間アッテネータATG1〜ATG8の減衰率を調整し、遅延特性補正部13が遅延回路DLY1〜DLY8の遅延時間を調整することで、適切な音場補正を行うように構成されている。
【0026】
ここで、各チャンネルのイコライザEQ1〜EQ5、EQ7及びEQ8は、それぞれ複数の帯域毎に周波数特性補正を行うように構成されている。即ち、オーディオ周波数帯域を例えば9つの帯域(各帯域の中心周波数をf1〜f9とする。)に分割し、帯域毎にイコライザEQの係数を決定して周波数特性補正を行う。なお、イコライザEQ6は、低域の周波数特性を調整するように構成されている。
【0027】
オーディオシステム100は、動作モードとして自動音場補正モードと音源信号再生モードの2つのモードを有する。自動音場補正モードは、音源1からの信号再生に先だって行われる調整モードであり、システム100の設置された環境について自動音場補正を行う。その後、音源信号再生モードでCDなどの音源1からの音響信号が再生される。本発明は、主として自動音場補正モードにおける補正処理に関するものである。
【0028】
図3を参照すると、FLチャンネルのイコライザEQ1には、音源1からのデジタルオーディオ信号SFLの入力をオン/オフ制御するスイッチ素子SW12と、測定用信号発生器3からの測定用信号DNの入力をオン/オフ制御するスイッチ素子SW11が接続され、スイッチ素子SW11はスイッチ素子SWNを介して測定用信号発生器3に接続されている。
【0029】
スイッチ素子SW11,SW12,SWNは、図4に示すマイクロプロセッサで形成されたシステムコントローラMPUによって制御され、音源信号再生時には、スイッチ素子SW12がオン(導通)、スイッチ素子SW11とSWNがオフ(非導通)となり、音場補正時には、スイッチ素子SW12がオフ、スイッチ素子SW11とSWNがオンとなる。
【0030】
また、イコライザEQ1の出力接点には、チャンネル間アッテネータATG1が接続され、チャンネル間アッテネータATG1の出力接点には遅延回路DLY1が接続されている。そして、遅延回路DLY1の出力DFLが、図1中のD/A変換器4FLに供給される。
【0031】
他のチャンネルもFLチャンネルと同様の構成となっており、スイッチ素子SW11に相当するスイッチ素子SW21〜SW81と、スイッチ素子SW12に相当するスイッチ素子SW22〜SW82が設けられている。そして、これらのスイッチ素子SW21〜SW82に続いて、イコライザEQ2〜EQ8と、チャンネル間アッテネータATG2〜ATG8と、遅延回路DLY2〜DLY8が備えられ、遅延回路DLY2〜DLY8の出力DFR〜DSBRが図1中のD/A変換器4FR〜4SBRに供給される。
【0032】
更に、各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8は、チャンネル間レベル補正部12からの調整信号SG1〜SG8に従って0dBからマイナス側の範囲で減衰率を変化させる。また、各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8は、位相特性補正部13からの調整信号SDL1〜SDL8に従って入力信号の遅延時間を変化させる。
【0033】
周波数特性補正部11は、各チャンネルの周波数特性を所望の特性となるように調整する機能を有する。図5(A)に示すように、周波数特性補正部11は、バンドパスフィルタ11a、係数テーブル11b、利得演算部11c、係数決定部11d、及び係数テーブル11eを備えて構成される。
【0034】
バンドパスフィルタ11aは、イコライザEQ1〜EQ8に設定されている9個の帯域を通過させる複数の狭帯域デジタルフィルタで構成されており、A/D変換器10からの集音データDMを周波数f1〜f9と中心とする9つの周波数帯域に弁別することにより、各周波数帯域のレベルを示すデータ[PxJ]を利得演算部11cに供給する。なお、バンドパスフィルタ11aの周波数弁別特性は、係数テーブル11bに予め記憶されているフィルタ係数データによって設定される。
【0035】
利得演算部11cは、帯域毎のレベルを示すデータ[PxJ]に基づいて、自動音場補正時のイコライザEQ1〜EQ8の利得(ゲイン)を周波数帯域毎に演算し、演算した利得データ[GxJ]を係数決定部11dに供給する。即ち、予め既知となっているイコライザEQ1〜EQ8の伝達関数にデータ[PxJ]を適用することで、イコライザEQ1〜EQ8の周波数帯域毎の利得(ゲイン)を逆算する。
【0036】
係数決定部11dは、図4に示すシステムコントローラMPUの制御下でイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節するためのフィルタ係数調整信号SF1〜SF8を生成する。(なお、音場補正の際に、受聴者の指示する条件に応じて、フィルタ係数調整信号SF1〜SF8を生成するように構成されている。)
受聴者が音場補正の条件を指示せず、本音場補正システムに予め設定されている標準の音場補正を行う場合には、利得演算部11cから供給される周波数帯域毎の利得データ[GxJ]によって係数テーブル11eからイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節するためのフィルタ係数データを読み出し、このフィルタ係数データのフィルタ係数調整信号SF1〜SF8によりイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調節する。
【0037】
即ち、係数テーブル11eには、イコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を様々に調節するためのフィルタ係数データが予めルックアップテーブルとして記憶されており、係数決定部11dが利得データ[GxJ]に対応するフィルタ係数データを読み出し、その読み出したフィルタ係数データをフィルタ係数調整信号SF1〜SF8として各イコライザEQ1〜EQ8に供給することで、チャンネル毎に周波数特性を調整する。
【0038】
本実施例では、周波数特性補正部11が周波数特性の調節のために使用する集音データが残響音成分を含まないようにする点に特徴を有する。図8に、周波数特性補正部11による周波数特性の調整方法を模式的に示す。図8に示すように、周波数特性補正では、測定用信号発生器3から出力されたピンクノイズなどの測定用信号が信号処理回路2から出力され、D/A変換器4を通ってスピーカ6から測定用信号音として出力される。この測定用信号音はマイク8により集音され、A/D変換器10を介して信号処理回路2へ集音データとして供給される。
【0039】
ここで、スピーカ6から出力された測定用信号音は、大別して直接音成分35、初期反射音成分33及び残響音成分37の3種類の音としてマイク8へ到達する。直接音成分35は、スピーカ6から出力され、壁、床などを含む障害物などの影響を受けることなく、直接的にマイク8へ至る音成分である。初期反射音(一次反射音とも呼ばれる。)成分33は、部屋の壁や床などにより1回反射してマイク8へ到達する音成分である。また、残響音成分37は、部屋の壁、床その他の障害物などにより複数回の反射を繰り返した後にマイク8へ到達する音成分である。
【0040】
図9に、測定用信号音の出力後の音圧レベル変化を示す。なお、測定用信号音としては、ピンクノイズを一定レベルで継続的に出力するものとする。時刻t0で測定用信号音を出力した場合、遅延時間Td経過後の時刻t1において、測定用信号音が信号処理回路2により受信される。なお、遅延時間Tdは測定用信号が信号処理回路2から出力された後、図8に示すループを一周して信号処理回路2へ戻るまでに要する時間であり、具体的には、測定用信号が信号処理回路2からD/A変換器4を通ってスピーカ6まで送られるのに要する時間と、測定用信号音がスピーカ6からマイク8へ伝搬するのに要する時間と、マイク8により集音された音信号がA/D変換器10を通って信号処理回路2まで送られるのに要する時間の合計に相当する。即ち、測定用信号音の伝搬時間と、測定用信号及び収集された信号の電気的な処理時間の和となる。
【0041】
図9に示されるように、最初に信号処理回路2により受信されるのは測定用信号音の直接音成分であり、直接音成分はその後も一定のレベルで受信される。また、その後、直接音成分が受信された時刻t1の直後から初期反射音成分が受信され始め、さらに時刻t1から数十msecが経過すると、残響音成分が増大する。残響音成分は、その後一定のレベルL1で飽和する。
【0042】
本実施例では、測定用信号音の直接音成分及び初期反射音成分が信号処理回路2に到達しているが、残響音成分が未だほとんど到達していない時間(以下、「直接音期間」と呼ぶ。)40に測定用信号音を検出し、その検出結果に基づいて、各チャンネルの信号伝送路の周波数特性の調整を行う。これにより、周波数特性の調節において、測定用信号音の残響音成分の影響を排除することができる。直接音期間は40は、スピーカから出力された測定用信号音が信号処理回路2に到達した直後の期間となり、本システムを配置する部屋や空間の大きさや構造などに依存する。一般的な家庭の部屋などの場合、直接音期間は、測定用信号音が最初に受信された時刻t1から20〜40msec程度の範囲であることがわかっている。よって、直接音期間を、測定用信号音の直接音成分が最初に受信された時刻t1から20〜40secの範囲内で例えば10msec程度の期間に設定し、その期間にわたって測定用信号音を検出し、それを分析して周波数特性の調整を行えばよい。
【0043】
このように、直接音期間における測定用信号音を集音し、その集音データに基づいて周波数特性の調節を行うことにより、残響音の悪影響を受けることなく、直接音を対象として各チャンネルの信号伝送路の周波数特性を目標の特性となるように調整することが可能となる。なお、直接音期間には、残響音は極力含まれないことが好ましいが、初期反射音が含まれていても構わない。これは、周波数特性の調節後に音源信号を再生した場合、利用者は通常直接音のみでなく、床や壁などからの初期反射音も同時に聴くことになるので、初期反射音も考慮して周波数特性を調節しておくことは有益であるからである。よって、「直接音期間」は、測定用信号音の直接音のみを含む期間のみならず、初期反射音を含む期間であってもよい。
【0044】
また、上記のように、チャンネル毎に直接音に関して目標の周波数特性を設定できるという利点に加え、複数のチャンネル間における残響特性がまちまちであるような環境においても、それに影響されることなく、チャンネル間の特性を揃えることができるという利点もある。
【0045】
なお、実際に直接音期間における集音データを検出する方法としては、いくつかの方法がある。1つの方法では、図5(a)に示す周波数特性補正部11において、バンドパスフィルタ11aが直接音期間においてのみ集音データDMをフィルタリングして利得演算部11cへフィルタ処理後のレベルデータ[PxJ]を供給するように構成すればよい。また、別の方法では、バンドパスフィルタ11aは期間を問わずフィルタリング処理を行うこととし、利得演算部11cが直接音期間のみにおけるレベルデータ[PxJ]に基づいて利得データ[GxJ]を生成するように構成してもよい。
【0046】
次に、チャンネル間レベル補正部12について説明する。チャンネル間レベル補正部12は、各チャンネルを通じて出力される音響信号の音圧レベルを均一にする役割を有する。具体的には、測定用信号発生器3から出力される測定用信号(ピンクノイズ)DNによって各スピーカ6FL〜6SBRを個別に鳴動させたときに得られる集音データDMを順に入力し、その集音データDMに基づいて、受聴位置RVにおける各スピーカの再生音のレベルを測定する。
【0047】
チャンネル間レベル補正部12の概略構成を図5(B)に示す。A/D変換器10から出力される集音データDMはレベル検出部12aに入力される。なお、チャンネル間レベル補正部12は、基本的に各チャンネルの信号の全帯域に対して一律にレベルの減衰処理を行うので帯域分割は不要であり、よって図5(A)の周波数特性補正部11に見られるようなバンドバスフィルタを含まない。
【0048】
レベル検出部12aは集音データDMのレベルを検出し、各チャンネルについての出力オーディオ信号レベルが一定となるように利得調整を行う。具体的には、レベル検出部12aは検出した集音データのレベルと基準レベルとの差を示すレベル調整量を生成し、調整量決定部12bへ出力する。調整量決定部12bはレベル検出部12aから受け取ったレベル調整量に対応する利得調整信号SG1〜SG8を生成して各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8へ供給する。各チャンネル間アッテネータATG1〜ATG8は、利得調整信号SG1〜SG8に応じて各チャンネルのオーディオ信号の減衰率を調整する。このチャンネル間レベル補正部12の減衰率調整により、各チャンネル間のレベル調整(利得調整)が行われ、各チャンネルの出力オーディオ信号レベルが均一となる。
【0049】
遅延特性補正部13は、各スピーカの位置と受聴位置RVとの間の距離差に起因する信号遅延を調整する、即ち、本来同時に受聴者が聴くべき各スピーカ6からの出力信号が受聴位置RVに到達する時刻がずれることを防止する役割を有する。よって、遅延特性補正部13は、測定用信号発生器3から出力される測定用信号(ピンクノイズ)DNによって各スピーカ6を個別に鳴動させたときに得られる集音データDMに基づいて各チャンネルの遅延特性を測定し、その測定結果に基づいて音場空間の位相特性を補正する。
【0050】
具体的には、図3に示すスイッチSW11〜SW82を順次切り換えることにより、測定用信号発生器3から発生された測定用信号DNを各チャンネル毎に各スピーカ6から出力し、これをマイクロホン8により集音して対応する集音データDMを生成する。測定用信号を例えばインパルスなどのパルス性信号とすると、スピーカ8からパルス性の測定用信号を出力した時刻と、それに対応するパルス信号がマイクロホン8により受信された時刻との差は、各チャンネルのスピーカ6とマイクロホン8との距離に比例することになる。よって、測定より得られた各チャンネルの遅延時間のうち、最も遅延量の大きいチャンネルの遅延時間に残りのチャンネルの遅延時間を合わせることにより、各チャンネルのスピーカ6と受聴位置RVとの距離差を吸収することができる。よって、各チャンネルのスピーカ6から発生する信号間の遅延を等しくすることができ、複数のスピーカ6から出力された時間軸上で一致する時刻の音響が同時に受聴位置RVに到達することになる。
【0051】
図5(C)に遅延特性補正部の構成を示す。遅延量演算部13aは集音データDMを受け取り、パルス性測定用信号と集音データとの間のパルス遅延量に基づいて、各チャンネル毎に音場環境による信号遅延量を演算する。遅延量決定部13bは遅延量演算部13aから各チャンネル毎に信号遅延量を受け取り、一時的にメモリ13cに記憶する。全てのチャンネルについての信号遅延量が演算され、メモリ13cに記憶された状態で、調整量決定部13bは最も大きい信号遅延量を有するチャンネルの再生信号が受聴位置RVに到達するのと同時に他のチャンネルの再生信号が受聴位置RVに到達するように、各チャンネルの調整量を決定し、調整信号SDL1〜SDL8を各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8に供給する。各遅延回路DLY1〜DLY8は調整信号SDL1〜SDL8に応じて遅延量を調整する。こうして、各チャンネルの遅延特性の調整が行われる。なお、上記の例では遅延調整のための測定用信号としてパルス性信号を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の測定用信号を用いてもよい。
[2]自動音場補正処理
次に、かかる構成を有する自動音場補正システムによる自動音場補正の動作について説明する。
【0052】
まず、オーディオシステム100を使用する環境としては、受聴者が、例えば図6に示したように複数のスピーカ6FL〜6SBRをリスニングルーム7等に配置し、図1に示すようにオーディオシステム100に接続する。そして、受聴者がオーディオシステム100に備えられているリモートコントローラ(図示省略)等を操作して自動音場補正開始の指示をすると、システムコントローラMPUがこの指示に従って自動音場補正処理を実行する。
【0053】
次に、本発明の自動音場補正における基本的な原理を説明する。先に述べたように、自動音場補正において行う処理は、各チャンネルの周波数特性補正、音圧レベルの補正及び遅延特性補正がある。ここで本発明においては、周波数特性補正において、直接音(初期反射音を含む)を主対象として、所望の周波数特性が得られるように各チャンネルの周波数特性の調整を行う点に特徴を有する。
【0054】
次に、このような周波数特性補正を含む自動音場補正処理の概要を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
始めに、ステップS10で、周波数特性補正部11がイコライザEQ1〜EQ8の周波数特性を調整する処理が行われる。次に、ステップS20のチャンネル間レベル補正処理で、チャンネル間レベル補正部12により、各チャンネルに設けられているチャンネル間アッテネータATG1〜ATG8の減衰率を調節する処理が行われる。次に、ステップS30の遅延特性補正処理で、遅延特性補正部13により、全チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8の遅延時間を調整する処理が行われる。この順序で本発明による自動音場補正が行われる。
【0056】
次に、各処理段階の動作を順に詳述する。まず、ステップS10の周波数特性補正処理について、図10を参照して説明する。図10は本実施例による周波数特性補正処理のフローチャートである。なお、図10に示す周波数特性補正処理は、各チャンネルの周波数特性補正処理に先だって、各チャンネルの遅延測定を行うものである。ここで、遅延測定とは、測定用信号を信号処理回路2が出力してから、それに対応する集音データが信号処理回路2に到達するまでの遅延時間、即ち、図8に示した遅延時間Tdを各チャンネル毎に事前に測定する処理である。図9に示されるように、直接音期間40は、測定用信号音が信号処理回路2に到達した時刻t1から所定の時間範囲に設定されるので、各チャンネル毎に遅延時間Tdを測定しておくことにより、信号処理回路2は時刻t1を正確に把握することができ、正確に直接音期間40内の集音データDMを検出することが可能となる。図10においては、ステップS100〜S106がこの遅延測定処理に対応し、ステップS108〜S116が実際の周波数特性補正処理に対応している。
【0057】
図10において、信号処理回路2は、まず複数のチャンネルのうちの1つのチャンネルについて例えばパルス性の遅延測定用信号を出力し、これがスピーカ6から測定用信号音として出力される(ステップS100)。この測定用信号音は、マイクロホン8により集音され、集音データDMが信号処理回路2へ供給される(ステップS102)。信号処理回路2内の周波数特性補正部11は遅延時間Tdを演算し、内部メモリなどに記憶する(ステップS104)。これらステップS100〜S104の処理を全てのチャンネルについて行うことにより(ステップS106:Yes)、全てのチャンネルについての遅延時間Tdがメモリに格納されたことになる。こうして、遅延時間測定が完了する。
【0058】
次に、各チャンネルについて、周波数特性補正を行う。即ち、信号処理回路2は1つのチャンネルについてピンクノイズなどの周波数特性測定用信号を出力し、これがスピーカ6から測定用信号音として出力される(ステップS108)。この測定用信号音はマイクロホン8により集音され、先に例示した方法により、直接音期間に対応する集音データのみが信号処理回路2の周波数特性補正部11内で取得される(ステップS110)。そして、周波数特性補正部11内の利得演算部11cが集音データを分析し、係数決定部11dがイコライザ係数を設定し(ステップS112)、そのイコライザ係数に基づいてイコライザが調整される(ステップS114)。こうして、1つのチャンネルについて、直接音期間内に得られた集音データに基づいて周波数特性の調節が完了する。この処理を全てのチャンネルについて行い(ステップS116;Yes)、周波数特性補正処理が終了する。
【0059】
次に、ステップS20のチャンネル間レベル補正処理が行われる。チャンネル間レベル補正処理は、図11に示すフローに従って行われる。なお、チャンネル間レベル補正処理では、先の周波数特性補正処理により設定されたグラフィックイコライザGEQの周波数特性を上記周波数特性補正処理で調整した状態に維持して行う。
【0060】
図3に示す信号処理部20において、まずスイッチSW11をオンにすると同時にスイッチSW1をオフとすることにより、1つのチャンネル(例えばFLチャンネル)に測定用信号DN(ピンクノイズ)が供給され、その測定用信号DNがスピーカ6FLから出力される(ステップS120)。マイクロホン8はその信号を集音し、増幅器9及びA/D変換器10を通じて集音データDMが係数演算部30内のチャンネル間レベル補正部12へ供給される(ステップS122)。チャンネル間レベル補正部12では、レベル検出部12aが集音データDMの音圧レベルを検出し、調整量決定部12bへ送る。調整量決定部12bは、目標レベルテーブル12cに予め設定されている所定の音圧レベルと一致するようにチャンネル間アッテネータATG1の調整信号SG1を生成し、チャンネル間アッテネータATG1へ供給する(ステップS124)。こうして、1つのチャンネルのレベルが所定のレベルと一致するように補正される。この処理を、各チャンネルに対して順に行い、全てのチャンネルについてレベル補正が完了した時点で(ステップS126:Yes)、処理は図7のメインルーチンへ戻る。
【0061】
次に、ステップS30の遅延特性補正処理が図12に示すフローに従って行われる。まず、1つのチャンネル(例えばFLチャンネル)について、SW11をオンにすると同時にSW12をオフとして、測定用信号DNをスピーカ6から出力する(ステップS130)。次に、出力された測定用信号DNをマイクで集音し、集音データDMが係数演算部30内の遅延特性補正部13に入力される(ステップS132)。遅延特性補正部13内では、遅延量演算部13aがそのチャンネルの遅延量を演算により求め、一時的にメモリ13cに記憶する(ステップS134)。この処理が他の全てのチャンネルについて実行される。全てのチャンネルについて処理が完了した時点で(ステップS136:Yes)、メモリ13cには全てのチャンネルの遅延量が記憶されることになる。次に、係数演算部13bはメモリ13cの記憶内容に基づいて、全てのチャンネルのうち最大遅延量を有するチャンネルを基準とし、他の全てのチャンネルの信号が同時に受聴位置RVに到達するように各チャンネルの遅延回路DLY1〜DLY8の係数を決定し、各遅延回路DLYに供給する(ステップS138)。これにより、遅延特性補正が完了する。
【0062】
こうして、周波数特性、チャンネル間レベル及び遅延特性が補正され、自動音場補正が完了する。
[3]変形例
図10に示した周波数特性補正処理においては、各チャンネル毎に遅延時間Tdを事前に測定することにより、信号処理回路2が直接音期間を正確に把握できるように構成した。しかし、ある程度の誤差を許容できるシステムにおいては、チャンネル毎に遅延測定を行うことなく、予め決められた遅延時間を全て又は一部のチャンネルに適用することとしてもよい。例えば、家庭用のシステムなどにおいては、通常、スピーカ8とマイクロホン8との距離にそれほど大きな相違はないと考えられるので、標準的な大きさのリビングルームにおける標準的な遅延時間を予め実験的に決定しておき、それを利用することとしてもよい。また、システム上、そのように予め用意された遅延時間を使用して周波数特性補正を行うモードと、上記の実施例のように遅延測定を行った上で周波数特性補正を行うモードとを用意し、利用者が任意に選択できるように構成してもよい。
【0063】
なお、上記実施形態においては本発明に係る信号処理を信号処理回路により実現する例を示したが、その代わりに、同一の信号処理をコンピュータ上で実行されるプログラムとして構成し、コンピュータ上で実行することにより実現することも可能である。この場合、該プログラムはCD−ROM、DVDなどの記録媒体の形態で、又はネットワークなどを利用した通信により供給される。コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができ、周辺機器として複数のチャンネルに対応するオーディオインターフェース、複数のスピーカ及びマイクなどを接続する。パーソナルコンピュータ上で上記プログラムを実行することにより、コンピュータ内部又は外部に設けた音源を利用して測定用信号を発生し、これをオーディオインターフェース及びスピーカを介して出力し、マイクで集音することにより、コンピュータを使用して図1に示すのと同様の自動音場補正装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の自動音場補正システムを備えるオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号処理回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す周波数特性補正部、チャンネル間レベル補正部及び遅延特性補正部の構成を示すブロック図である。
【図6】ある音場環境におけるスピーカの配置例を示す図である。
【図7】自動音場補正処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】周波数特性補正を行うための構成を模式的に示す。
【図9】周波数特性補正の測定用信号音の音圧レベル変化を示すグラフである。
【図10】周波数特性補正処理を示すフローチャートである。
【図11】チャンネル間レベル補正処理を示すフローチャートである。
【図12】遅延補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…音源
2…信号処理回路
3…測定用信号発生器
8…マイクロホン
9…増幅器
10…A/D変換器
11…周波数特性補正部
12…チャンネル間レベル補正部
13…遅延特性補正部
6…スピーカ
GEQ…グラフィックイコライザ
EQ1〜EQ8…イコライザ
ATG1〜ATG8…チャンネル間アッテネータ
DLY1〜DLY8…遅延回路
SW11〜SW82,SWN…スイッチ素子
MPU…システムコントローラ
Claims (6)
- 複数のオーディオ信号に対して、各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置において、
各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、
各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、
直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、
前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、
前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とする自動音場補正装置。 - 前記直接音期間は、前記検出手段に到達した前記測定用信号音が直接音成分及び初期反射音成分を含む期間であることを特徴とする請求項1に記載の自動音場補正装置。
- 前記直接音期間は、前記測定用信号音が前記検出手段により最初に検出された時点から所定の時間範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動音場補正装置。
- 前記所定の時間範囲は、20〜40msecであることを特徴とする請求項3に記載の自動音場補正装置。
- 各信号伝送路の信号遅延時間を測定する遅延測定手段を備え、前記検出手段は、前記測定用信号音が前記スピーカから放射された時点と、前記信号伝送路の信号遅延時間と、前記所定の時間範囲とに基づいて、前記直接音期間を決定することを特徴とする請求項3に記載の自動音場補正装置。
- コンピュータを、複数のオーディオ信号に対して各々に対応する信号伝送路上で信号処理を施し、対応する複数のスピーカへ出力する自動音場補正装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記自動音場補正装置は、
各信号伝送路のオーディオ信号の周波数特性を調整するイコライザと、
各信号伝送路に測定用信号を供給する測定用信号供給手段と、
直接音期間において前記スピーカから放射される測定用信号音を検出信号として出力する検出手段と、
前記検出信号に基づいて、前記イコライザが周波数特性の調整に使用するイコライザ利得値を決定し、前記イコライザへ供給する利得値決定手段と、を備え、
前記直接音期間は、前記集音手段に到達した前記測定用信号音が残響音成分を含まない期間であることを特徴とするコンピュータプログラム。
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