JP4180807B2 - スピーカ検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のスピーカを使用して高品位の音場空間を提供するオーディオシステムの技術分野に属し、特にオーディオシステムに対するスピーカの接続状況を自動的に検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
高品位の音場空間を提供するオーディオシステムでは、複数のスピーカを使用して臨場感のある音場空間を自動的に作り出すことが要求されている。このため、システムで使用するスピーカの構成を予め設定する必要がある。
【0003】
従来は、複数のスピーカをオーディオシステムに接続した後、ユーザ自身がスピーカ構成をシステムに対して手入力していた。
【0004】
また、スピーカ構成を自動的に検出する方法としては、システムのアンプ側から見たインピーダンスの変化を検知することによりスピーカ有無の検出をオーディオシステム側で自動で行うことが考えられる。スピーカが接続されているか否かに応じてシステムのアンプ側から見たインピーダンスが変化するので、所定のテスト信号を出力した場合のインピーダンスの変化をシステム側で検出することによりスピーカの有無を検出することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法では、スピーカの有無を検出するための専用ハードウェアが必要となる。
【0006】
本発明は、環境雑音の影響を受けることなく、オーディオシステムに接続されたスピーカを自動検出することができるスピーカ検出装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様は、スピーカ検出装置において、スピーカを駆動する信号が出力される出力端子と、前記出力端子へテスト信号を供給するテスト信号供給手段と、前記スピーカが設置された音響空間内に設けられ、前記テスト信号に対応するテスト音を検出するテスト音検出手段と、前記テスト信号供給手段が前記出力端子へテスト信号を供給した時に前記テスト音検出手段により検出されたテスト音の信号レベルを、所定の閾値レベルと比較することにより、前記出力端子にスピーカが接続されているか否かを判定するスピーカ有無判定手段と、前記音響空間の環境雑音を検出する環境雑音検出手段と、前記環境雑音のレベルをスペクトラム分析することにより、テスト信号についての最適帯域を決定する最適帯域決定手段と、を備え、前記スピーカ有無判定手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には前記最適帯域内の信号レベルを最適帯域用の閾値レベルと比較して判定を行い、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより小さい場合には全帯域の信号レベルを全帯域用の閾値レベルと比較して判定を行う
【0008】
上記のスピーカ検出装置によれば、スピーカが接続されるべき出力端子にテスト信号が供給される。当該出力端子にスピーカが接続されていれば、そのスピーカを通じてテスト音が発生するが、出力端子にスピーカが接続されていなければ、テスト音は発生しない。音響空間内に設けられたテスト音検出手段がテスト音を検出し、その信号レベルを所定の閾値レベルと比較することにより、出力端子にスピーカが接続されているか否かが判定される。
また、スピーカ検出装置は、音響空間の環境雑音を検出する環境雑音検出手段と、前記環境雑音のレベルをスペクトラム分析することにより、テスト信号についての最適帯域を決定する最適帯域決定手段と、を備える。スピーカ有無判定手段は、環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には前記最適帯域内の信号レベルを最適帯域用の閾値レベルと比較して判定を行い、環境雑音のレベルが所定の基準レベルより小さい場合には全帯域の信号レベルを全帯域用の閾値レベルと比較して判定を行う。これにより、環境雑音が大きいときは最適帯域のテスト信号を使用して正確にスピーカ有無判定を行い、環境雑音のレベルが小さいときは、特に最適帯域に限定せず、全帯域のテスト信号を使用して迅速にスピーカ検出を行うことができる。
【0010】
また、上記のスピーカ検出装置において、前記最適帯域決定手段は、音響的S/Nが最も高い帯域を前記最適帯域に決定することができる。これにより、スピーカ有無判定の精度が向上する。
【0011】
また、上記のスピーカ検出装置において、前記最適帯域決定手段は、人間の聴感特性を考慮して予め決定された信号カーブデータを記憶する手段と、前記環境雑音検出手段により検出された環境雑音のレベルを複数の帯域毎に検出し、雑音カーブデータを作成する手段と、前記信号カーブデータと前記雑音カーブデータを比較することにより、音響的S/Nが最も高い帯域を最適帯域に決定する手段と、を備えるように構成することができる。これによれば、人間の聴感特性に基づいて決定された信号カーブデータと、環境雑音カーブデータとに基づいて最適帯域が決定されるので、音響空間にいる人間がテスト音により不快感を感じることを防止することができる。
【0012】
また、上記のスピーカ検出装置は、前記最適帯域内の前記信号カーブデータと前記雑音カーブデータの間のあるレベルを前記最適帯域用の閾値レベルに設定する閾値レベル設定手段をさらに備えることができる。これにより、実際の最適帯域内のS/Nに基づいて適切な閾値を決定することができる。
【0014】
また、上記のスピーカ検出装置において、前記テスト信号供給手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には、前記最適帯域内のテスト信号成分のみを前記出力端子へ供給することができる。よって、最適帯域以外の、判定に寄与しない成分を再生することにより、音響空間内の人が不要な大きい音を聞いたりして不快感を感じることを防止することができる。
【0015】
また、上記のスピーカ検出装置においては、前記テスト音検出手段と前記環境雑音検出手段は同一の音響検出手段とすることができる。これにより、スピーカ検出のための構成を単純化することができる。
【0016】
また、本発明の他の一態様によれば、コンピュータを、スピーカ検出装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記スピーカ検出装置は、スピーカを駆動する信号が出力される出力端子と、前記出力端子へテスト信号を供給するテスト信号供給手段と、前記スピーカが設置された音響空間内に設けられ、前記テスト信号に対応するテスト音を検出するテスト音検出手段と、前記テスト信号供給手段が前記出力端子へテスト信号を供給した時に前記テスト音検出手段により検出されたテスト音の信号レベルを、所定の閾値レベルと比較することにより、前記出力端子にスピーカが接続されているか否かを判定するスピーカ有無判定手段と、前記音響空間の環境雑音を検出する環境雑音検出手段と、前記環境雑音のレベルをスペクトラム分析することにより、テスト信号についての最適帯域を決定する最適帯域決定手段と、を備え、前記スピーカ有無判定手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には前記最適帯域内の信号レベルを最適帯域用の閾値レベルと比較して判定を行い、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより小さい場合には全帯域の信号レベルを全帯域用の閾値レベルと比較して判定を行う。
【0017】
上記プログラムをコンピュータに読み込んで実行することにより、該コンピュータを上記のスピーカ検出装置として機能させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[1]システム構成
以下、本発明のスピーカ検出装置の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のスピーカ検出装置を備えたオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1において、オーディオシステム100は、CD(Compact disc)プレーヤやDVD(Digital Video Disc又はDigital Versatile Disc)プレーヤ等の音源1から複数チャンネルの信号伝送路を通じてデジタルオーディオ信号SFL,SFR,SC,SRL,SRR,SWF,SSBL及びSSBRが供給される信号処理回路2と、テスト信号発生器3とを備えている。
【0020】
なお、オーディオシステム100は複数チャンネルの信号伝送路を含むが、以下の説明では、図1の上から順に第1チャンネル〜第8チャンネルと表現することがある。また、信号及び構成要素の表現において複数チャンネルの全てについて言及する時は参照符号の添え字を省略する場合がある。また、個別チャンネルの信号及び構成要素に言及する時はチャンネルを特定する添え字を参照符号に付す。例えば、「デジタルオーディオ信号S」と言った場合は全チャンネルのデジタルオーディオ信号SFL〜SSBRを意味し、「デジタルオーディオ信号SFL」と言った場合はFLチャンネルのみのデジタルオーディオ信号を意味するものとする。
【0021】
オーディオシステム100はさらに、信号処理回路2によりチャンネル毎に信号処理されたデジタル出力DFL〜DSBRをアナログ信号に変換するD/A変換器4FL〜4SBRと、これらのD/A変換器4FL〜4SBRから出力される各アナログオーディオ信号を増幅する増幅器5FL〜5SBRとを備えている。これらの増幅器5で増幅した各アナログオーディオ信号SPFL〜SPSBRを、図8に例示するようなリスニングルーム7に配置された複数チャンネルのスピーカ6FL〜6SBRに供給して鳴動させるようになっている。
【0022】
また、オーディオシステム100は、リスニングルーム7内の受聴位置RVにおける再生音を集音するマイクロホン8と、マイクロホン8から出力される集音信号SMを増幅する増幅器9と、増幅器9の出力をデジタルの集音データDMに変換して信号処理回路2に供給するA/D変換器10とを備えている。
【0023】
ここで、本実施形態のオーディオシステム100は、図8に示すように、オーディオ周波数帯域のほぼ全域にわたって再生可能な周波数特性を有する全帯域型のスピーカ6FL,6FR,6C,6RL,6RRと、所謂重低音だけを再生するための周波数特性を有する低域再生専用のスピーカ6WFと、受聴者の背後に配置されるサラウンドスピーカ6SBL及び6SBRを鳴動させることで、受聴位置RVにおける受聴者に対して臨場感のある音場空間を提供する。
【0024】
各スピーカの配置としては、例えば図8に示すように、受聴者が好みに応じて、受聴位置RVの前方に、左右2チャンネルのフロントスピーカ(前方左側スピーカ、前方右側スピーカ)6FL,6FRとセンタースピーカ6Cを配置する。また、受聴位置RVの後方に、左右2チャンネルのスピーカ(後方左側スピーカ、後方右側スピーカ)6RL,6RRと左右2チャンネルのサラウンドスピーカ6SBL,6SBRを配置し、更に、任意の位置に低域再生専用のサブウーハ6WFを配置する。
【0025】
信号処理回路2は、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)等で形成されており、図2に示すように、大別して信号処理部20と、係数演算部30とから構成される。
【0026】
図1に示すオーディオシステム100は、2つのモードで動作する。1つは、音源再生モードであり、図1の音源1から出力されるオーディオ信号を、複数のスピーカから再生するモードである。もう1つは、音源再生モードに先立って行われるスピーカ検出モードである。スピーカ検出モードでは、オーディオシステムに接続されたスピーカの有無を自動的に判別する。
【0027】
音源再生モードでは、信号処理部20はCD、DVD、その他の各種音楽ソースを再生する音源1から複数チャンネルのデジタルオーディオ信号を受け取り、必要な信号処理を行って、デジタル出力信号DFL〜DSBRを出力する。また、スピーカ検出モードでは、信号処理部20はテスト信号発生器3からのテスト信号を各チャンネルの伝送路を通じて出力するとともに、出力されたテスト信号をマイクロホン8で集音し、信号処理回路2に戻して処理することによりスピーカの有無を検出する。
【0028】
図3に、信号処理部20の構成を示す。図3において、第1〜第8のチャンネルFL〜SBRは、バンドバスフィルタBPF1〜BPF8と、その後段に設けられた可変増幅器ATG1〜8とを備える。また、信号処理部2は、スピーカ検出のためのテスト信号を出力するためのテスト信号発生器3と、各チャンネル毎に設けられたスイッチSW11〜SW81及びSW12〜SW82と、テスト信号発生器3からの出力信号DNを各チャンネルのバンドパスフィルタへ選択的に供給するためのスイッチSWNとを備える。
【0029】
音源再生モードにおいては、スイッチSWN及びSW11〜SW81がオフとされ、スイッチSW12〜82がオンとされる。これにより音源1からの信号SFL〜SSBRが対応するバンドパスフィルタBPF1〜BPF8へ送られる。各バンドパスフィルタは、スルー状態に設定され、全帯域において入力信号を可変増幅器ATG1〜8へ送る。可変増幅器ATG1〜8は、係数演算部30から供給される制御信号SGに従ってチャンネル毎に適切な増幅度で各チャンネルの信号を増幅し、デジタル信号DFL〜DSBRとして図1のD/A変換器4FL〜4SBRへ出力する。なお、音源再生モードにおける各可変増幅器ATG1〜8の設定は、適切な音場補正処理により決定されるものであるが、その処理自体は本発明とは直接関連がないので、詳細な説明は行わない。こうして、音源再生モードでは、音源1からのオーディオ信号がチャンネル毎に再生される。
【0030】
一方、スピーカ検出モードでは、スイッチSWN及びSW11〜81がオンとされ、スイッチSW12〜82がオフとされる。よって、テスト信号DNがテスト信号発生器3から各バンドパスフィルタBPF1〜BPF8へ入力され、後述するスピーカ検出処理が実行される。
【0031】
図4に係数演算部30の構成を示す。図示のように、係数演算部30はスペクトラム分析部11と、レベル検出部12と、システムコントローラMPUと、バンドパスフィルタ17と、メモリ15とを備える。なお、スペクトラム分析部11、レベル検出部12及びバンドパスフィルタ17はDSP(Digital Processing Unit)を構成する。
【0032】
係数演算部30は、スピーカ検出モードにおいて、信号処理部20内のバンドパスフィルタBPF1〜8の通過帯域を制御するための制御信号SF1を生成するとともに、同じく信号処理部20内の可変増幅器ATG1〜8の増幅度を制御するための制御信号SGを生成し、信号処理部2へ供給する。
【0033】
具体的には、スペクトラム分析部11は、まず環境雑音測定処理として、スピーカ6FL〜6SBRから何らの信号を再生しない状態で、周囲の音をマイクロホン8で集音して得られた集音データDMを受け取り、その集音データDMのスペクトラムを分析する。即ち、集音データDMを所定数の帯域(例えば低域から高域までの9個の帯域)に分割し、各帯域のレベルを検出することにより、環境雑音の集音データDMのスペクトラムを分析する。そして、各帯域のレベルを示すレベルデータ21をシステムコントローラMPUへ入力する。
【0034】
バンドパスフィルタ17は、集音データDMから所定の帯域の成分を抽出し、レベル検出部12へ供給する。レベル検出部12は、バンドパスフィルタ17が選択した帯域における信号レベルを検出し、検出レベルデータ22をシステムコントローラMPUへ供給する。
【0035】
メモリ15は、後述する閾値レベルTH1及びTH2、人間の聴覚特性を考慮して定められた信号カーブ(以下、「Sカーブ」とも呼ぶ。)、スピーカ有無判定処理により得られた各チャンネルのスピーカ有無判定結果などを記憶する。
【0036】
システムコントローラMPUは、スペクトラム分析部11から各帯域のレベルデータ21を受け取るとともに、バンドパスフィルタ17により抽出された帯域のレベルを示すレベルデータ22をレベル検出部12から受け取り、メモリ15に記憶された閾値レベルTH1又はTH2などと比較して制御信号SF1及びSGを生成し、信号処理部2へ供給する。
[2]スピーカ検出モードの処理
次に、スピーカ検出モードにおいて実行されるスピーカ検出処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。スピーカ検出モードは、例えばユーザが複数のスピーカをオーディオシステム100に接続した後、オーディオシステム100の図示しない操作部などを操作して指示を入力することにより開始する。なお、以下に説明するスピーカ検出処理は、主として信号処理回路2内のシステムコントローラMPUが信号処理回路2内の各要素を制御することにより実行される。また、スピーカ検出処理は、大別して、リスニングルームなどの音場の環境雑音を測定する処理と、それに続いてスピーカの有無を判定する処理とにより構成される。なお、図5に示す例では、これらの処理がチャンネル毎に順に実行される。
【0037】
さて、ユーザによりスピーカ検出処理が指示されると、まず、チャンネル番号を示す変数xに1を代入する(ステップS1)。これにより、図1に示す第1〜第8のスピーカSPFL〜SPSBRのうち、第1のスピーカSPFLが選択される。
【0038】
次に、信号処理回路2は、オーディオシステムが設置されたリスニングルーム7などの音響空間の環境雑音レベルを検出する(ステップS2)。具体的には、マイクロホン8により音場環境の周囲音を集音し、増幅器9及びA/D変換器10によりデジタルの集音データDMを生成して図4に示すスペクトラム分析部11及びレベル検出部12へ供給する。この際、係数演算部30内のバンドパスフィルタ17はスルー状態に設定されている。レベル検出部12は、入力された集音データDMから環境雑音レベルを検出し、レベルデータ22としてシステムコントローラMPUへ供給する。バンドパスフィルタ17がスルー状態に設定されているので、このレベルデータ22は音場の環境雑音の全帯域レベルを示している。
【0039】
システムコントローラMPUは、レベルデータ22として受け取った環境雑音レベルが予め定められた第1の閾値TH1以下であるかを判定する(ステップS3)。ここで、第1の閾値TH1は、音場において、スピーカ検出処理を実行するために必要な音響的S/Nが確保されているか否かを決定するための基準となる雑音レベル値である。
【0040】
一方、環境雑音レベルが第1の閾値TH1より大きい場合は、システムコントローラMPUは、その音場には雑音が多く、必要なS/Nが満たされていないと判断し、環境雑音のスペクトラム分析を行う(ステップS4)。即ち、スペクトラム分析部11が集音データDMを複数の帯域に分割し、各帯域毎のレベルを検出し、帯域毎のレベルを示すレベルデータ21をシステムコントローラMPUへ供給する(ステップS4)。
【0041】
次に、システムコントローラMPUは、レベルデータ21に基づいて、スピーカ検出を行うための最適帯域を選択する。ここで、「最適帯域」とは、予め用意された複数の帯域中で、概念的には十分に静かな帯域であり、より具体的には所定の基準より高い音響的S/Nを有する帯域である。そして、選択した最適帯域のS/Nに基づいて第2の閾値TH2を決定し、メモリ15に記憶する。なお、最適帯域及び第2の閾値の決定方法については後に詳細に説明する。
【0042】
さらに、先に選択された最適帯域の信号を通過するように各バンドパスフィルタBPF1〜8の特性を制御する制御信号SF1を生成して各バンドパスフィルタBPF1〜8に供給するとともに、バンドパスフィルタ17の通過域を同様に最適帯域に設定するための制御信号SF2を生成してバンドパスフィルタ17へ供給する。また、最適帯域に対応したゲインを各可変増幅器ATG1〜8に設定するための制御信号SGを生成して各可変増幅器ATG1〜8へ供給する(ステップS5)。これにより、バンドパスフィルタBPF1〜8及びバンドパスフィルタ17は最適帯域を通過する特性に設定される。
【0043】
一方、環境雑音レベルが第1の閾値TH1以下である場合は、システムコントローラMPUはその音場がスピーカ検出を行うために必要な音響的S/Nを満たしていると判定する。そして、バンドパスフィルタBPF1〜8を全てスルー状態とするように係数を決定して制御信号SF1として各バンドパスフィルタBPF1〜8へ入力する。また、各可変増幅器ATG1〜8の増幅率を、スルー状態に対応する所定のゲイン(予め設定されている)に設定するための制御信号SGを生成し、各可変増幅器ATG1〜8へ入力する。さらに、第2の閾値TH2を所定の値に設定する(ステップS6)。
【0044】
これで音場の環境雑音の測定が完了したことになり、続いてスピーカ有無の判定に入る。
【0045】
システムコントローラMPUはスイッチSWN及びSW11をオンにするとともに、他の全てのスイッチをオフとする。テスト信号発生器3がテスト信号DNを発生し、これが第1チャンネルのバンドパスフィルタBPF1及び可変増幅器ATG1を介してスピーカ6FLから出力される。マイクロホン8はこのテスト音を集音し、集音データDMが図4に示すバンドパスフィルタ17を介してレベル検出部12に供給される。
【0046】
ステップS3で環境雑音が第1の閾値TH1より小さい(即ち、環境雑音が少ない)と判断された場合は、ステップS6においてバンドパスフィルタ17がスルー状態に設定されるので、レベル検出部12はテスト信号の全帯域のレベルを示すレベルデータ22を受け取る。一方、ステップS3で環境雑音が第1の閾値TH1より大きい(即ち、環境雑音が大きい)と判断された場合は、バンドパスフィルタ17は先のステップS4において最適帯域に設定されているので、レベル検出部12は集音データSMのうちの最適帯域の成分のみを受け取り、そのレベルを示すレベルデータ22をシステムコントローラMPUへ供給する。
【0047】
そして、システムコントローラMPUは、受け取ったレベルデータ22を先のステップS5又はS6で決定された第2の閾値TH2と比較することによりスピーカ有無の判定を行う(ステップS8)。このスピーカ有無判定処理の詳細を図7に示す。図7において、レベルデータ22が第2の閾値TH2と比較され、第2の閾値TH2より大きい場合はそのチャンネルにはスピーカが接続されていると判定する(ステップS21)。一方、レベルデータ22が第2の閾値TH2より小さい場合は、そのチャンネルにはスピーカが接続されていないと判定する(ステップS22)。その後、処理は図5に示すメインルーチンへ戻る。
【0048】
さて、こうして第1チャンネルのスピーカの有無が決定されると、システムコントローラMPUはその判定結果をメモリ15に記憶する(ステップS9)。次にチャンネルの変数xを1だけ増加し(ステップS10)、xの値がチャンネル数を超えたか否かを判定する(ステップS11)。xがチャンネル数を超えていない場合は、ステップS2へ戻って次のチャンネルについてのスピーカ判定処理(ステップS2〜S10)を繰り返す。一方、xがチャンネル数を超えたか否かを判定し(ステップS11)、超えた場合は全てのチャンネルについてスピーカの有無が検出されたことになるので、処理は終了する
以上説明したスピーカ検出処理によれば、音場の環境雑音が小さい(より正確には、S/Nが大きい)場合は、全帯域のテスト信号を出力し、これをマイクロホン8で集音して各チャンネルのスピーカの有無を検出する。一方、音場の環境雑音が大きい(より正確には、S/Nが小さい)場合には、最適帯域(即ち、S/Nが十分に大きい帯域)のテスト信号を用いてスピーカの有無を検出する。よって、ある帯域において環境雑音が大きい場合でも、所定基準より高いS/Nを確保できる最適帯域でテスト信号によるスピーカ有無判定を行うので、環境雑音が多い音場環境においても正確にスピーカの有無を自動判定することができる。
【0049】
なお、図5に示す処理においては、ステップS5で信号処理部20内の各バンドパスフィルタBPF1〜8の通過帯域を最適帯域とするように各バンドパスフィルタBPF1〜8を制御したが、スピーカ有無判定の対象となるチャンネル(xで示される)に対応するバンドパスフィルタBPFのみの通過帯域を制御するように構成することもできる。
【0050】
また、その代わりに、係数演算部30内のバンドパスフィルタ17のみを最適帯域に設定し、各バンドパスフィルタBPF1〜8はスルー状態(即ち、全帯域を通過)とすることもできる。これは、テスト信号再生側のバンドパスフィルタBPF1〜8を全帯域に設定したとしても、バンドパスフィルタ17を最適帯域に設定しさえすればレベル検出部12は集音されたテスト信号の最適帯域成分のみのレベルを検出できるからである。
【0051】
但し、最終的にはレベル検出部12が対象とする帯域のみのテスト信号をスピーカから出力することになるので、テスト信号再生側の各バンドパスフィルタBPF1〜8を最適帯域に設定すれば不要な帯域(最適帯域以外の帯域であるので、環境雑音が多い帯域であるといえる)のテスト信号をスピーカから出力する必要が無くなる。よって、スピーカから出力されるテスト信号が、スピーカが設置された音場環境内にいる人間にとって耳障りとなることが防止できる。また、最適帯域のみのテスト信号を出力すれば足りるので、その分相対的にスピーカからの出力パワーを増加させることができ、S/Nがかせげる結果、検出精度が向上するという利点がある。
【0052】
また、図5に示したスピーカ検出処理は、チャンネル毎にステップS4で最適帯域を決定してスピーカの有無判定を行っているが、その代わりに、最初のスピーカについて決定した最適帯域を他の全てのスピーカ有無判定でも使用することもできる。本来はチャンネル毎に最適帯域を決定することが好ましいが、図5の処理ルーチンに示されるように、通常は各スピーカについての最適帯域の選択及びスピーカ有無判定は比較的短い時間内に実行されるので、音場空間における環境雑音が時間的に急激に変化するような場合以外は、最初のスピーカについて決定された最適帯域を使用することにより、スピーカ有無検出処理全体を単純化及び迅速化することもできる。
[3]最適帯域及び第2の閾値TH2の決定方法
次に、ステップS5における最適帯域の決定方法について説明する。音場の環境雑音が所定レベル(第1の閾値TH1)より大きい場合は、全帯域でテスト信号を出力してスピーカの有無を検出しようとしても精度が低い。よって、特定の帯域に限定してテスト信号を出力し、その帯域のみのレベルを検出することにより、環境雑音の影響を排除して高精度でスピーカの有無を検出することができる。よって、最適帯域は、予め設定された複数の帯域(上記の例では9つ)のうち、音響的S/Nが所定の基準より高い複数の帯域から選択するのが好ましい。音響的S/Nが所定の基準より高い複数の帯域から1つの最適帯域を決定する最も理論的な手法は、最も音響的S/Nが高い帯域を選択することである。但し、現実的には音響的S/Nが所定の基準より高いことが確保されていれば、その中からS/N以外のパラメータを考慮して最適帯域を決定することも可能である。
【0053】
本発明では、上記S/Nの評価において、人間の聴感特性を考慮することに1つの特徴を有する。一般的に、人間の聴感特性は全ての周波数の音に対してフラットではなく、聴感感度の高い周波数帯域と聴感感度の低い周波数帯域とがある。よって、例えば同じレベルのテスト信号をスピーカから出力した場合でも、人間の聴感感度の高い周波数のテスト信号はユーザにとってうるさい、耳障りであると感じることがある一方、人間の聴感感度の低い周波数のテスト信号はユーザにとってよく聞こえないと感じることもある。
【0054】
このような考察に基づき、本発明では、人間の聴感特性を考慮して複数の周波数帯域毎にテスト信号の最大許容出力レベルを設定する。この最大許容出力レベルは、ユーザがテスト信号をうるさい、耳障りであるなどと感じない範囲で最も高いレベルに設定され、これを信号カーブとする。信号カーブの例を図6に示す。図6において、信号カーブ35はテスト信号の最大許容出力レベルを示す。信号カーブ35は人間の聴感特性カーブに従って予め決定することができ、又は実際に種々の周波数帯域のテスト信号をスピーカから出力して聴くことにより、実験的に決定することができる。そうして予め決定された信号カーブ35のデータがメモリ17に記憶される。
【0055】
一方、図5に示すステップS2において、スペクトラム分析部11が音場の環境雑音レベルを各帯域について検出し、レベルデータ21としてシステムコントローラMPUへ供給する。よって、システムコントローラMPUはその結果に基づいて雑音カーブ36を決定し、同様にメモリ15に記憶する。ステップS5において最適帯域を選択する際には、システムコントローラMPUは、図6に例示的に示す信号カーブ35と雑音カーブ36に基づいてS/Nが所定の基準より大きい(即ち、信号カーブ35と雑音カーブ36の間の距離38の大きい)帯域を選択し、その内のS/Nが最も高い帯域、又は他のパラメータを考慮して決定された1つの帯域を最適帯域とする。
【0056】
さらに、システムコントローラMPUは、そうして決定された最適帯域の信号カーブ35と雑音カーブ36に基づいてステップS5で第2の閾値TH2を決定する。第2の閾値TH2は、例えば信号カーブ35と雑音カーブ36の値の中間値とすることができる。
【0057】
このように、人間の聴感特性を考慮した信号カーブ35を予め決定し、それを利用してS/Nが所定の基準値より高い帯域から最適帯域を選択することにより、環境雑音の影響を排除して精度の高いスピーカ有無検出を行うことが可能となる。
【0058】
また、信号カーブ35はテスト信号の許容出力レベルであり、それ以上の大きなレベルのテスト信号は出力されないので、スピーカ検出処理の実行中に、音場内にいるユーザがテスト信号をうるさい又は耳障りと感じることを防止できる。
【0059】
なお、上記実施形態においては本発明に係る信号処理を信号処理回路により実現する例を示したが、その代わりに、同一の信号処理をコンピュータ上で実行されるプログラムとして構成し、コンピュータ上で実行することにより実現することも可能である。この場合、該プログラムはCD−ROM、DVDなどの記録媒体の形態で、又はネットワークなどを利用した通信により供給される。コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができ、周辺機器として複数のチャンネルに対応するオーディオインターフェース、複数のスピーカ及びマイクなどを接続する。パーソナルコンピュータ上で上記プログラムを実行することにより、コンピュータ内部又は外部に設けた音源を利用して測定用信号を発生し、これをオーディオインターフェース及びスピーカを介して出力し、マイクで集音することにより、コンピュータを使用して図1に示すのと同様のスピーカ検出装置を実現することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、環境雑音のスペクトラムを調べ、雑音の多い帯域をさけてスピーカ有無判定を行うので、環境雑音が大きい環境でのスピーカ検出精度が向上する。また、テスト信号の出力側にも最適帯域のみを通過するフィルタを挿入することにより、不要な帯域の音(通常は、雑音が大きい帯域である)をスピーカから出力する必要がなくなり、音場にいる人間が不快感を感じることがない。また、最適帯域のみのテスト信号を出力すれば足りるので、出力パワーを上げることができ、音響空間での環境雑音に対するS/Nを向上させることができ、より精度の高いスピーカ検出が実現できる。
【0061】
また、例えば自動音場補正機能を有するオーディオシステムに本発明を適用する場合は、自動音場補正用のハードウェアを利用してスピーカ検出を行うことができるので、スピーカ検出専用のハードウェアを設ける必要が無く、低コストで自動スピーカ検出機能を取り入れることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のスピーカ検出装置を適用したオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号処理回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】スピーカ検出処理を示すフローチャートである。
【図6】信号カーブ及び雑音カーブの例を示す図である。
【図7】図5のスピーカ有無判定ステップの処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明のシステムが適用される音響空間におけるスピーカ構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…音源
2…信号処理回路
3…テスト信号発生器
8…マイクロホン
9…増幅器
10…A/D変換器
11…スペクトラム分析部
12…レベル検出部
6…スピーカ
SW11〜SW82,SWN…スイッチ素子
MPU…システムコントローラ

Claims (7)

  1. スピーカを駆動する信号が出力される出力端子と、
    前記出力端子へテスト信号を供給するテスト信号供給手段と、
    前記スピーカが設置された音響空間内に設けられ、前記テスト信号に対応するテスト音を検出するテスト音検出手段と、
    前記テスト信号供給手段が前記出力端子へテスト信号を供給した時に前記テスト音検出手段により検出されたテスト音の信号レベルを、所定の閾値レベルと比較することにより、前記出力端子にスピーカが接続されているか否かを判定するスピーカ有無判定手段と、
    前記音響空間の環境雑音を検出する環境雑音検出手段と、
    前記環境雑音のレベルをスペクトラム分析することにより、テスト信号についての最適帯域を決定する最適帯域決定手段と、を備え、
    前記スピーカ有無判定手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には前記最適帯域内の信号レベルを最適帯域用の閾値レベルと比較して判定を行い、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより小さい場合には全帯域の信号レベルを全帯域用の閾値レベルと比較して判定を行うことを特徴とするスピーカ検出装置。
  2. 前記最適帯域決定手段は、音響的S/Nが最も高い帯域を前記最適帯域に決定することを特徴とする請求項に記載のスピーカ検出装置。
  3. 前記最適帯域決定手段は、予め決定された信号カーブデータを記憶する手段と、
    前記環境雑音検出手段により検出された環境雑音のレベルを複数の帯域毎に検出し、雑音カーブデータを作成する手段と、
    前記信号カーブデータと前記雑音カーブデータを比較することにより、音響的S/Nが最も高い帯域を最適帯域に決定する手段と、を備え
    前記信号カーブデータは、人間の聴感特性カーブに従って決定されていることを特徴とする請求項記載のスピーカ検出装置。
  4. 前記最適帯域内の前記信号カーブデータと前記雑音カーブデータの間のあるレベルを前記最適帯域用の閾値レベルに設定する閾値レベル設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のスピーカ検出装置。
  5. 前記テスト信号供給手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には、前記最適帯域内のテスト信号成分のみを前記出力端子へ供給することを特徴とする1乃至4のいずれか一項に記載のスピーカ検出装置。
  6. 前記テスト音検出手段と前記環境雑音検出手段は同一の音響検出手段であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスピーカ検出装置。
  7. コンピュータを、スピーカ検出装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記スピーカ検出装置は、
    スピーカを駆動する信号が出力される出力端子と、
    前記出力端子へテスト信号を供給するテスト信号供給手段と、
    前記スピーカが設置された音響空間内に設けられ、前記テスト信号に対応するテスト音を検出するテスト音検出手段と、
    前記テスト信号供給手段が前記出力端子へテスト信号を供給した時に前記テスト音検出手段により検出されたテスト音の信号レベルを、所定の閾値レベルと比較することにより、前記出力端子にスピーカが接続されているか否かを判定するスピーカ有無判定手段と、
    前記音響空間の環境雑音を検出する環境雑音検出手段と、
    前記環境雑音のレベルをスペクトラム分析することにより、テスト信号についての最適帯域を決定する最適帯域決定手段と、を備え、
    前記スピーカ有無判定手段は、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより大きい場合には前記最適帯域内の信号レベルを最適帯域用の閾値レベルと比較して判定を行い、前記環境雑音のレベルが所定の基準レベルより小さい場合には全帯域の信号レベルを全帯域用の閾値レベルと比較して判定を行うことを特徴とするコンピュータプログラム。
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