JP4067135B2 - 液体組成物から腐食金属汚染物を除去する方法 - Google Patents

液体組成物から腐食金属汚染物を除去する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一般的にカルボン酸および/またはこれの無水物を包含する液体組成物からの腐食金属汚染物の除去、特にカルボン酸および/またはこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒、カルボニル化触媒助促進剤および腐食金属汚染物を包含する液体組成物から腐食金属汚染物を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルボニル化による酢酸および無水酢酸のようなカルボン酸および無水物の製造方法は周知であり、工業的に取り扱われている。
【0003】
即ち、英国特許第1233121号は、ロジウム触媒を使用するカルボニル化により有機酸またはその相当するエステルの製造方法を記載している。米国特許第4374070号は、ロジウム、ヨウ素化合物およびリチウムの存在において、酢酸メチルのカルボニル化による無水酢酸の調製を記載している。欧州特許公開第087870号は、酢酸のネット−コプロダクションにより、またはよらずに無水酢酸を製造する方法を記載している。
【0004】
延長された時間をかけてのカルボニル化処理の操作において、鉄、ニッケル、モリブデン、クロム等のような腐食金属汚染物がカルボニル化反応組成物中に形成され、蓄積する。このような腐食金属汚染物は、もし十分な量で存在するならば、カルボニル化反応において有害な作用を及ぼす。
【0005】
米国特許第4628041号は、腐食金属塩からロジウムを分離するためにロジウムを沈殿させるカルボニル化による酢酸の製造において、ロジウムおよびヨウ素値を回復する方法を記載している。
【0006】
米国特許第4007130号は、陽イオン交換樹脂とその水素型において接触することによりロジウムまたはイリジウム触媒を包含する使用したカルボニル化触媒溶液を再生する方法を記載している。
【0007】
欧州特許出願公開第0384652号は、ロジウム触媒およびヨウ化物促進剤の存在において、液相カルボニル化における酢酸生産性の向上について第IV B族金属の挙動を記載している。欧州特許出願公開第0384652号は、クロム、モリブデンまたはタングステン塩を除いて、プロセス流から全ての腐食金属を選択的に除去することを特徴とするプロセス流がロジウムおよび代表的な腐食金属塩を含有する、メタノールからの酢酸の製造で生ずるプロセス流を処理する方法を提案している。欧州特許出願公開第0384652号によれば、例えばロジウム、鉄、クロム、モリブデンおよびタングステンを含有するプロセス流からの鉄の選択的除去が、選択的な鉄交換樹脂、電気透析、選択的沈殿等の使用により達成できる。好適なイオン交換樹脂についての詳細は与えられていない。
【0008】
欧州特許出願公開第0161874号は、ヨウ化物塩、好ましくはヨウ化リチウムを触媒助促進剤として使用する、例えばメタノールから酢酸への、カルボン酸を製造するアルコールのロジウム接触したカルボニル化を記載している。欧州特許出願公開第0265140号公報によれば、米国特許4007130号に記載された方法により欧州特許出願公開第0161874号に記載の方法から触媒溶液を再生する場合、リチウムイオン濃度が、陽イオン交換樹脂床を通過する時にも減少することを見出している。触媒溶液からのリチウムイオンの除去は、反応媒質の反応性および安定性を大きく低下させる。
【0009】
この問題を解決する一つの方法は、欧州特許出願公開第0265140号に記載されており、それにはロジウム、限定濃度のリチウムイオンおよび腐食金属を包含する触媒溶液を、そのリチウム型において陽イオン交換樹脂と接触させることが記載されている。欧州特許出願公開第0265140号によれば、陽イオン交換樹脂はそれらのリチウム型において強酸または弱酸型のいずれでもあり、好ましくは強酸型である。
【0010】
リチウム型陽イオン交換樹脂の使用は、溶液からのリチウムのロスを減少させる。しかしながら、リチウムおよび腐食金属が同じ交換体の位置について競合するため、腐食金属が樹脂により取り上げられる場合、さらに腐食金属を除去するための樹脂の効果は、腐食金属のリチウムに対する相対濃度が落ちるので、低下してしまうのである。
【0011】
無水条件下で実施されるカルボニル化反応からの金属性腐食生成物の除去が、米国特許5124290号に記載されており、それには(a)触媒系を含有し且つ金属性腐食生成物で汚染された反応溶液をイオン交換体と接触させること、(b)反応溶液を分離すること、(c)酢酸または無水酢酸による再生の前に促進剤を放出すること、(d)工程(c)および(b)の各々からの溶出液および溶液をカルボニル化反応に結合し且つ再循環すること、(e)工程(c)で得られたイオン交換体を強鉱酸を用いて再生することおよび(f)酢酸または無水酢酸で洗浄することからなる方法を記載している。
【0012】
強酸イオン交換体は、それらが酸および/または無水物を炭化するのでカルボン酸および/または無水物を包含する液体組成物からの腐食金属の除去を全く満足しない。
【0013】
有機化合物またはその溶液から金属イオンを除くためのアミノ炭素基および/またはイミノ炭素基を有するキレート化樹脂の使用は、日本の特開平第4−22439号公報に記載されている。この公報は、ロジウムカルボニル化触媒およびカルボニル化触媒助促進剤をも包含する液体組成物から、腐食金属汚染物を選択的に除去する問題を考慮していない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
それ故、解決すべき技術的課題は、カルボン酸および/またはこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒、カルボニル化触媒助促進剤および腐食金属汚染物を包含する液体組成物から腐食金属汚染物を除去するための改良方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、液体組成物を腐食金属の保持に対して選択的なキレート化樹脂と接触させてなる、カルボン酸および/またはこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒、カルボニル化触媒助促進剤および腐食金属汚染物を包含する液体組成物から腐食金属汚染物を除去し、且つ減少した腐食金属汚染物濃度を有する液体組成物を回収するための方法を提供するものである。
【0016】
本発明はキレート化樹脂の使用により前記の技術的な問題を解決するものである。
【0017】
キレート化樹脂は、ワンポイントより多く金属汚染物に付着する官能基を有している。二座配位子および/または三座配位子官能基を有するキレート化樹脂を使用することができる。
【0018】
次のキレート化樹脂を本発明の方法で使用することができる。
【0019】
(a)イミノジアセテート官能基を有するキレート化樹脂、例えば一般式(I)
【化7】
Figure 0004067135
【0020】
[式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表される官能基を有するもの。この種のキレート化樹脂の好適な例としては、アンバーライトIRC−718、Lewatit TP207およびLewatit TP208(商標)のプロトン型が挙げられる。
【0021】
(b)アミノホスホン酸官能基を有するキレート化樹脂、例えば一般式(II)
【化8】
Figure 0004067135
【0022】
[式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表される官能基を有するもの。この種のキレート化樹脂の好適な例としては、プロトン型Bayer TP1060、以前にLewatit VP OC 1060 MDと称されていたもの、Purolite S940およびS950およびDuolite C467(商標)がある。
【0023】
(c)一般式(III)
【化9】
Figure 0004067135
【0024】
[式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表される官能基を有するキレート化樹脂。この種のキレート化樹脂の好適な例としては、Lewatit TP214(商標)がある。
【0025】
(d)一般式(IV)
【化10】
Figure 0004067135
【0026】
[式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表される官能基を有するキレート化樹脂。この種のキレート化樹脂の好適な例としては、Purolite S920(商標)がある。
【0027】
(e)一般式(V)
【化11】
Figure 0004067135
【0028】
[式中、
【化12】
Figure 0004067135
【0029】
を表す]で表される官能基を有するキレート化樹脂。この種のキレート化樹脂の好適な例としては、Lewatit VP OC1026(商標)がある。
【0030】
キレート化樹脂はプロトン型または金属交換型、例えばナトリウム型で用いることができる。好ましくは樹脂は、カルボニル化反応と両立できない液体組成物中へ金属を導入することを避けるためにプロトン型で使用する。
【0031】
キレート化樹脂は有機性の背骨、例えば任意の交差結合、例えばジビニルベンゼンを有するポリスチレンのようなポリマー背骨に基づくか、または無機性の背骨、例えばシリカに基づいている。
【0032】
ポリマー背骨のキレート化樹脂を使用する場合、それらは好ましくはマクロ網状樹脂である。液体組成物中で膨れるゲル樹脂もまた使用できる。
【0033】
金属汚染した液体組成物のキレート化樹脂との接触は、攪拌容器中で実施され、そこでは樹脂が液体組成物と良く攪拌され、且つ減少した腐食金属汚染物を有する液体組成物が、次いでデカンテーション、濾過、遠心分離その他により回収される。しかしながら、液体組成物の処理は通常、金属汚染された組成物を樹脂の固定床カラムに通過させることにより実施する。この液体組成物の処理は、手動または自動制御法およびイオン交換樹脂についての当業上周知の技術を用いて、回分的、半連続的または連続的操作として実施できる。
【0034】
液体組成物は、液体組成物の凝固点以上で、且つ樹脂および/または組成物が分解し難い温度以下のいずれか好適な温度においてキレート化樹脂と接触させる。好ましい温度は、約20℃〜70℃の範囲にある。液体組成物の大気圧沸点を越える温度を用いる場合、高められた圧力での操作は組成物を液状に維持する必要がある。しかしながら、圧力は臨界的な変数ではない。一般に大気圧または大気圧を僅かに越える圧力が用いられるが、所望により超大気圧または亜大気圧を使用することができる。
【0035】
腐食金属除去処理中の、樹脂の固定床カラムを通る液体組成物の流れの速度は、一般に樹脂製造者が勧めるそれであり、通常、時間当たり約1〜約20床量である。
【0036】
好ましくは、流速は時間当たり約1〜約12床量である。
【0037】
キレート化樹脂が、腐食金属汚染物に対する許容量に達した時、それは先ずカルボニル化処理、例えば残留液体組成物を除去し、次いで再生するカルボン酸と両立し得る液体で濯がれる。このキレート化樹脂を、製造者が勧める方法で再生し、保持された腐食金属汚染物を置換することができる。好適には、酢酸およびヨウ化水素酸の水溶液を、キレート化樹脂の再生のために使用できる。
【0038】
本発明の方法は、回分または連続処理で操作できる。好ましくは、1以上のキレート化樹脂床が提供されて、液体組成物が1つの樹脂床を通過している間に、1以上のその他の樹脂床が再生される。
【0039】
本発明の方法は、特に鉄、ニッケル、クロム、マンガンおよびモリブデン、好ましくは鉄およびニッケルのような腐食金属汚染物の除去に適用できる。各腐食金属汚染物は液体組成物中に、その溶解限度まで存在することができ、そして代表的には、それは10000ppm重量金属までである。液体組成物から除去された各腐食金属の量は、最初の濃度、キレート化樹脂の容量、操作条件等による。
【0040】
カルボニル化触媒助促進剤は、第4級アミンのヨウ化物、ホスフィン、第二ヒ素またはアンチモン化合物またはアルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ化物を包含する。好適な第4級ホスフィンカルボニル化助促進剤は、米国特許第4333884号に記載されている。好適な第4級アミンカルボニル化助促進剤は、米国特許第4333884号、米国特許第4430273号および欧州特許出願公開第0479463号に記載されている。
【0041】
本発明の方法は、特にカルボニル化触媒助促進剤が、1以上のヨウ化アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、および/またはカリウムのヨウ化物、特にヨウ化リチウムを包含する液体組成物から腐食金属汚染物を除去するのに好適である。
【0042】
本発明の方法で処理する液体組成物はまた、転換されないカルボニル化反応体、例えばアルコール、エーテル、ハロゲン化物および/またはエステルも包含する。好適には、カルボニル化反応体はC1 〜C10アルコール、例えばメタノール、アルキル基がそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するジアルキルエーテル、例えばジメチルエーテル、1〜10個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル、例えばヨウ化メチルおよびC1 〜C10アルコールとC2 〜C11カルボン酸、例えば酢酸メチルとのエステルを包含する。本発明の方法で処理する液体組成物はまた、ハロゲン含有カルボニル化助促進剤、例えばヨウ化メチルのようなハロゲン化アルキルも包含する。本発明の方法で処理する液体組成物はまた、液体組成物が誘導され且つまたキレート化樹脂と両立し得るカルボニル化処理と両立し得る溶媒も包含する。カルボン酸の製造のために液体組成物がカルボニル化処理から誘導される所で、液体組成物はまた、水をも包含する。カルボン酸および/またはこれの無水物は、1〜10個の炭素原子を有するカルボン酸またはこれの無水物を包含しており、そして好ましくは酢酸および/または無水酢酸である。カルボン酸またはこれの無水物は、カルボニル化生成物および/または液体組成物が誘導されるカルボニル化処理の溶媒である。
【0043】
好適には、液体組成物は、ロジウムカルボニル化触媒、ハロゲン含有カルボニル化助促進剤およびカルボニル化触媒助促進剤の存在下、アルコール、エーテル、エステルおよび/またはハロゲン化物のカルボニル化によりカルボン酸および/または無水物、好ましくは酢酸および/または無水酢酸を製造するための液相カルボニル化反応の液体反応組成物から誘導される。好適なカルボニル化反応処理は、カルボニル化によるカルボン酸の製造に関して、例えば英国特許出願公開第2146637号、米国特許第4994608号、米国特許第5001259号、米国特許第5026908号、欧州特許出願公開第0144935号および欧州特許出願公開第0144936号に記載されており、米国特許第5003104号には、カルボン酸およびカルボン酸無水物の製造のためのカルボニル化処理が記載されており、米国特許第4374070号にはカルボニル化による無水酢酸の調製が記載され、そして欧州特許出願公開第87870号には酢酸のネット−コプロダクションによるまたはよらない無水酢酸の製造が記載されている。
【0044】
代表的には、カルボニル化反応処理は150〜250℃および高められた圧力において、2〜30気圧の一酸化炭素分圧で操作する。
【0045】
液体カルボニル化反応組成物中の腐食金属汚染物の蓄積はカルボニル化反応組成物の全部または一部を処理することにより減少できる。この液体カルボニル化反応組成物は、本発明の方法における処理に先立って、組成物中に存在するその他の成分の若干を除去するための処理をしてもよい。本発明の方法が適用できる代表的な液相カルボニル化処理において、液体カルボニル化反応組成物は、カルボニル化反応器から除かれそして加熱によりまたはよらずに、未反応カルボニル化反応体のような揮発成分、ハロゲン含有カルボニル化促進剤およびカルボニル化生成物を包含する蒸気区分が、ロジウムカルボニル化触媒のような不揮発性成分および、カルボニル化触媒助促進剤、例えば第4級アミンのヨウ化物、ホスフィン、第二ヒ素またはアンチモン化合物またはアルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ化物を包含する液体区分から分離する。カルボニル化生成物は、例えば蒸発により蒸気区分から回収され、残りの成分はカルボニル化反応器に再循環する。流出域からの液体区分がカルボニル化反応器に再循環する。腐食金属汚染物がプロセス流のいずれかに存在し得る。腐食金属汚染物が、プロセス流のいずれかに存在し得ることが見出されている。しかしながら、慣用の方法による流出域液体区分からのそれらの除去は、ロジウムカルボニル化触媒およびカルボニル化触媒助促進剤の存在の故に困難である。本発明に係る方法によるこの液体区分の少なくとも一部を処理することにより、液体カルボニル化反応組成物中の腐食金属汚染物の蓄積を減少できる。好ましくは、スリップストリームを流出域液体区分から除去し、本発明の方法に基づいて処理して腐食金属汚染物を除去し、そしてカルボニル化反応器に再循環する減少した腐食金属汚染物を有する液体組成物を与える。
【0046】
別の態様において、本発明の方法は、無水酢酸の製造から導かれるタール含有プロセス流からのロジウム触媒値を回収する方法に見出されるような、酢酸および/または無水酢酸を包含するプロセス流からの腐食金属を除去するために使用することができる。このような処理の例は、欧州特許出願公開第0087870号、欧州特許出願公開第0255389号、欧州特許出願公開第0314352号および欧州特許出願公開第0584964号に記載されている。
【0047】
本発明の方法を、次の実施例および図1を参照することにより説明する。図1は、Amberlyst 15およびLewatit OC1060樹脂による腐食金属測定の結果を、ブロック線図形式で表している。
【0048】
【実施例】
実施例1〜3および試験例A
無水酢酸を製造するためのカルボニル化処理からの、そして重量酢酸(31.6%)、無水酢酸(13%)、n−メチルイミダゾリウムイオダイド(見積り約30%)、酢酸メチル(6.7%)、ヨウ化メチル(4.4%)、鉄(3880ppm)、ニッケル(2180ppm)、クロム(1330ppm)、マンガン(345ppm)、モリブデン(630ppm)およびロジウム(617ppm)を包含する液体組成物を腐食金属除去処理した。各試験において、樹脂100mlを酢酸(500ml)で前洗いし、固定床カラム中に詰めた。液体組成物を常温且つ液体時間当たりスペース速度2の圧力で樹脂に通し、そして減少した腐食金属汚染物濃度を有する液体廃液組成物を、腐食金属汚染物の保持を決定するために分析に供した。
【0049】
実施例1〜3について、キレート化樹脂IRC−718、TP207およびOC1060を使用した。本発明に基づかない試験例Aにおいて、強酸樹脂Amberlyst 15を使用した。樹脂はプロトン型で使用した。結果を下の表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004067135
【0051】
表1の結果は、これらの試験において、本発明のキレート化樹脂は、腐食金属汚染物の除去に関してAmberlyst 15のような強酸樹脂よりも優れていた。
【0052】
試験例B
本発明に基づかないこれらの試験は、ヨウ化リチウムカルボニル化触媒助促進剤の存在において、腐食金属を、非常に低レベルにまで除去せんと試みる場合の強酸樹脂に関する問題を説明している。
【0053】
液体組成物を次の重量組成で調製した。
【0054】
水 10%
酢酸メチル 0.7%
酢酸 72%
ヨウ化メチル 2%
鉄 2400ppm
ニッケル 400ppm
クロム 600ppm
リチウム 3100ppm
金属はヨウ化物として添加した。
【0055】
この液体組成物を、液体時間当たりスペース速度4および常温で、60時間、強酸Amberlyst 15樹脂の60ml固定床カラムに通した。樹脂は供給された通りプロトン型で使用し、使用に先立ち酢酸に浸漬する条件とした。樹脂床を通過する減少した腐食金属汚染物を有する液体組成物を、樹脂床の供給点に再循環させた。液体供給組成物を、金属の残留濃度を決定する間隔で分析し、そしてこれから樹脂床による金属の保持を算出した。樹脂は、非常に少量のリチウムを除去したが、しかしその値を評価するのは困難であった。腐食金属の摂取は、浸漬した樹脂のリッター当たり金属の重量として表し、鉄21.7g/l、ニッケル1.2g/lおよびクロム1.5g/lであった。
【0056】
試験を、金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を用いて繰り返した:鉄1500ppm、ニッケル1000ppm、クロム360ppmおよびリチウム3800ppm。腐食金属の摂取は、鉄3.6g/l、ニッケル8.5g/lおよびクロム0g/lであった。
【0057】
試験を、金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を用いて繰り返した:鉄560ppm、ニッケル410ppm、クロム430ppmおよびリチウム4850ppm。腐食金属の摂取は、鉄1.6g/l、ニッケル2.1g/lおよびクロム0g/lであった。
【0058】
結果を図1にブロック線図形式で示す。図で明らかなように、腐食金属に関するAmberlyst 15の容量は、リチウム濃度に比例して腐食金属の濃度に強く影響される。腐食金属汚染物の濃度がリチウム濃度に比例して低い場合、樹脂は有効ではない。
【0059】
実施例4
キレート化樹脂を使用する利点を説明するために、Lewatit OC1060(容量2.9meg/ml水湿式プロトン型)を使用して比較試験Bを繰り返した。試験Bに対して、金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を使用した:鉄1215ppm、ニッケル905ppm、クロム395ppmおよびリチウム3860ppm。腐食金属の摂取は、鉄14.2g/l、ニッケル3.9g/lおよびクロム0.1g/lであった。
【0060】
本例を、金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を用いて繰り返した:鉄640ppm、ニッケル510ppm、クロム370ppmおよびリチウム4450ppm。腐食金属の摂取は、鉄14.8g/l、ニッケル4.7g/lおよびクロム1.5g/lであった。
【0061】
比較例を含む試験例Bからのデータを使用して、結果を図1にブロック線図形式で示す。試験から、キレート化樹脂による腐食金属汚染物の保持は、腐食金属とリチウムの濃度比に、試験誤差の範囲内で影響を受けないことが明らかである。
【0062】
実施例5
本実施例は、広い範囲のリチウム塩カルボニル化助促進剤濃度に関してLewatit OC1060の効果を示す。試験例Bにおけるそれと類似の組成を有する溶液を、次の金属濃度を含有させて調製した:鉄600ppm、ニッケル450ppmおよびクロム365ppm。リチウム濃度は0から9000ppmの間で変化した。試験例Bの実験操作を繰り返して、樹脂による金属の保持を表2に示す。
【0063】
【表2】
Figure 0004067135
【0064】
実施例6
キレート化樹脂を使用する利点を説明するために、Amberlite IRC718(容量1.1meg/ml水湿式プロトン型)を使用して実施例4の試験を繰り返した。金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を使用した:鉄1500ppm、ニッケル1100ppm、クロム520ppmおよびリチウム4850ppm。樹脂による腐食金属の保持は、鉄5.4g/l、ニッケル18.5g/lおよびクロム1.8g/lであった。
【0065】
試験を、金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を用いて繰り返した:鉄660ppm、ニッケル450ppm、クロム145ppmおよびリチウム4990ppm。樹脂による腐食金属の保持は、鉄4.9g/l、ニッケル9.9g/lおよびクロム1.0g/lであった。
【0066】
かくして異なる腐食金属は、使用した特殊なキレート化樹脂の選択により選択的に除去することができた。
【0067】
実施例7
溶液中に存在するロジウムの効果を説明するために、メタノールをカルボニル化して酢酸を製造するための代表的なカルボニル化処理の流出分離域からサンプル1リッタ−を取った。このものは次のものを含有していた:ヨウ化リチウム14重量%、鉄305ppm、ニッケル<10ppm、クロム60ppmおよびロジウム640ppm。この溶液を常温および常圧で48時間、Lewatit OC106050と接触させた。樹脂で処理した後の溶液の分析は、それが次のものを含有することを示していた:鉄55ppm、ニッケル<10ppm、クロム60ppmおよびロジウム630ppm。
【0068】
このことは、樹脂がヨウ化リチウムカルボニル化触媒助促進剤およびロジウムカルボニル化触媒の高水準の存在において、腐食金属を非常に低い水準にまで除去できることを示している。
【0069】
試験例C
ヨウ化リチウムカルボニル化触媒助促進剤の存在において、溶液中の腐食金属の濃度を低い水準にまで減少させる強酸Amberlyst 15樹脂の能力がないことを説明するために、次のものを含有する酢酸へのメタノールのカルボニル化のための代表的なカルボニル化溶液組成物のサンプル15リッターを使用した:ヨウ化リチウム10重量%、鉄2240ppm、ニッケル<10ppm、クロム23ppmおよびロジウム360ppm。これらの金属の総量は、期待した総容量の樹脂(約1.7meg/ml水湿プロトン型樹脂)より有意に少なく計算された。溶液を、液体時間当たりスペース速度0.25で、リチウム交換したAmberlyst 15の2つの800ml床に数回通過させた。処理後の溶液の分析は、それがまだ次のものを含有していることを示していた:鉄900ppm、ニッケル<10ppm、クロム35ppmおよびロジウム355ppm。
【0070】
この試験は、強酸樹脂が有用な位置の点から高い容量を有するとはいえ、ヨウ化リチウムの存在下、鉄を低濃度に選択的に除去することはできないことを示している。これは本発明に係る実施例ではない。
【0071】
実施例8
高められた温度においてキレート化樹脂を使用する利点を説明するために、40℃において、Lewatit OC1060を使用して実施例4を繰り返した。金属濃度が次の通りであることを除いて類似の液体組成物を使用した:鉄765ppm、ニッケル315ppm、クロム425ppmおよびリチウム4560ppm。腐食金属の保持は、鉄20.2g/l、ニッケル3.0g/lおよびクロム3.6g/lであった。
【0072】
次の通りの金属濃度を用いて試験を繰り返した:鉄860ppm、ニッケル470ppm、クロム410ppmおよびリチウム5062ppm。腐食金属の保持は、鉄17.0g/l、ニッケル2.7g/lおよびクロム1.2g/lであった。
【0073】
これらの試験から鉄に対する樹脂の選択性は、常温条件における試験と比較して増大していることがわかる。
【0074】
【発明の効果】
本発明方法によれば、カルボニル化触媒および助促進剤よりも腐食金属の除去に対して選択的なキレート化樹脂を使用して、カルボン酸および/またはこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒およびカルボニル化触媒助促進剤を包含する液体組成物から、鉄、ニッケル、クロム、マンガンおよびモリブデンのような腐食金属汚染物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】腐食金属除去に関するAmberlyst 15(H+ 型)とLewatitOC1060の比較結果を表わしたブロック線図である。

Claims (6)

  1. カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物を製造するためのカルボニル化反応において形成される鉄、ニッケル、クロミウム、マンガン及び/又はモリブデンより選択される腐食金属汚染物を、カルボン酸及び/又はこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒、カルボニル化触媒助促進剤及び腐食金属汚染物を包含する液体組成物から除去する方法であって、
    該方法が、
    (a)一般式:
    Figure 0004067135
    [式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表されるイミノジアセテート官能基;と
    (b)一般式:
    Figure 0004067135
    [式中、(P)はポリマー背骨を表す]で表されるアミノホスホン酸官能基;
    を有するキレート化樹脂の群から選択される腐食金属の保持に対して選択的なキレート化樹脂と液体組成物を接触させ、そして減少した腐食金属汚染物濃度を有する液体組成物を回収することからなる除去方法。
  2. キレート化樹脂が、プロトン型である請求項に記載の方法。
  3. 液体組成物が、酢酸及び/又は無水酢酸からなる請求項1または2に記載の方法。
  4. カルボニル化触媒助促進剤が、第4級アミン、ホスフィン、第2ヒ素またはアンチモン化合物のヨウ化物を包含するか、またはアルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ化物塩である請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. カルボニル化触媒助促進剤が、ヨウ化リチウムである請求項に記載の方法。
  6. カルボニル化反応から誘導され且つカルボン酸及び/又はこれの無水物、ロジウムカルボニル化触媒、カルボニル化触媒助促進剤および腐食金属汚染物を包含する液体組成物を、請求項1〜のいずれかに記載の方法において、腐食金属の保持に対して選択的なキレート化樹脂と接触させ、そして減少した腐食金属汚染物濃度を有している液体組成物が、それから回収され且つカルボニル化反応に再循環されてなる、ロジウムカルボニル化触媒、ハロゲン化アルキルおよびカルボニル化触媒助促進剤の存在において、アルコール、エーテル、エステル及び/又はハロゲン化物の液相カルボニル化反応によりカルボン酸及び/又はこれの無水物を製造する方法。
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