JP4061762B2 - 低吸湿性ガラスフリット、ガラスセラミックス組成物および焼成体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、等のフラットディスプレイパネルにおける封着、被覆、等に用いられ吸湿性の低い低融点ガラスフリットおよび該低融点ガラスフリットを含有するガラスセラミックス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
低融点ガラスフリットは、フラットディスプレイパネルにおける封着、被覆、等に用いられているが、近年、鉛やカドミウムを含まないものが求められている。そのようなものとしてリン酸スズ酸化物ガラスフリットが知られている。たとえば特開平9−235136には、鉛やカドミウムを含まず、BaO、MgO、CaO、SrO、CuO、NiO、MnO、CoO、Fe2O3、Bi2O3、Sb2O3、TiO2およびZrO2の合量が0.01〜10モル%であるリン酸スズ酸化物系低融点ガラスが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来の低融点ガラスフリットは吸湿性が高いものが多く、保存している間に空気中の湿気を吸って濡れた状態となり、粉末状態での保存が困難な場合があった。
【0004】
本発明は、フラットディスプレイパネルにおける封着、被覆、等に用いられ、鉛やカドミウムを含まず、かつ吸湿性の低い低融点ガラスフリット、および、該低融点ガラスフリットを含有するガラスセラミックス組成物の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、実質的に下記酸化物基準のモル%で、
P2O5 25〜50、
SnOに換算したスズ酸化物 0〜70、
ZnO 0〜50、
MgO 0〜50、
In2O3 0.1〜12、
WO3 0〜15、
Li2O+Na2O+K2O 0〜20、
B2O3 0〜20、
Al2O3 0〜10、
SiO2 0〜10、
からなり、かつ、SnOに換算したスズ酸化物、ZnOおよびMgOの合量が30〜70モル%であり、軟化点が620℃以下である低吸湿性ガラスフリットを提供する。
【0006】
また、前記低吸湿性ガラスフリット40〜99重量%と、セラミックス粉末1〜60重量%とから実質的になるガラスセラミックス組成物であって、該ガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体の、50〜250℃における平均線膨張係数が60×10−7〜90×10−7/℃であるガラスセラミックス組成物を提供する。なお、「50〜250℃における平均線膨張係数」を、以下単に「膨張係数」という。
また、前記低吸湿性ガラスフリットまたは前記ガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の低吸湿性ガラスフリットは吸湿性の低いガラスフリットである。その吸湿量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.35%以下、特に好ましくは0.2%以下である。ここでいう吸湿量は次のようにして測定される。ガラスフリット2gを、ふたのない15mmφの円筒型の容器に入れ、温度40℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に48時間静置後取出して重量を測定し、重量増加率すなわち吸湿量を求めた。
【0008】
本発明の低吸湿性ガラスフリットおよびガラスセラミックス組成物は、PDP、VFD、等のフラットディスプレイパネルにおける封着、被覆、リブ形成、等に好適に用いられる。
【0009】
本発明の低吸湿性ガラスフリットまたは本発明のガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体は、無色、または着色していてもわずかな着色にすぎないものであり、フラットディスプレイパネルにおける透視性およびカラー表示機能を阻害しない。
【0010】
また、フラットディスプレイパネルにおけるリブは無彩色、すなわち、白色、灰色または黒色であることが好ましく、その点からも、無色、または着色していてもわずかな着色にすぎない本発明の低吸湿性ガラスフリットは好ましい。その理由は、青、緑、等の強い着色があるガラスフリットの焼成体、または該ガラスフリットを含有するガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体を白色または黒色にすることは、たとえ白色顔料または黒色顔料を用いても、焼成体の焼結不足等の問題を起こすことなく実現するのは困難であるからである。
【0011】
本発明の低吸湿性ガラスフリットは、軟化点が620℃以下であり、650℃以下の焼成温度で充分軟化流動する。
本発明の低吸湿性ガラスフリットは、膨張係数が50×10-7〜160×10-7/℃(範囲A)であることが好ましい。より好ましくは60×10-7〜90×10-7/℃(範囲B)である。その理由は以下のとおりである。
【0012】
フラットディスプレイパネルに用いられるガラス基板の膨張係数は概ね60×10-7〜100×10-7/℃の範囲にある。このようなガラス基板にガラスフリットまたはガラスセラミックス組成物を良好に焼き付けるためには、焼成して得られる焼成体の膨張係数は範囲Bにあることが好ましい。本発明の低吸湿性ガラスフリットの膨張係数が範囲Aにあれば、低膨張セラミックスフィラーを添加して焼成体の膨張係数を範囲Bにできる。また、本発明の低吸湿性ガラスフリットの膨張係数が範囲Bにあれば、焼成体の膨張係数制御のために低膨張セラミックスフィラーを添加する必要はない。
【0013】
本発明の低吸湿性ガラスフリットの組成について、モル%を単に%と表示して以下に説明する。
P2O5はネットワークフォーマであり必須成分である。25%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは27%以上である。50%超では耐水性が低下する。好ましくは45%以下である。
【0014】
スズ酸化物、ZnO、およびMgOはガラスを安定化させる成分であり、そのいずれかの成分は含有しなければならない。SnOに換算したスズ酸化物の含有量(以下単にSnO含有量という。)、ZnO含有量、MgO含有量の合計が30%未満ではガラス化が困難となる。好ましくは35%以上である。70%超ではガラスが失透しやすくなる。
【0015】
また、SnO含有量が70%超、ZnO含有量が50%超、またはMgO含有量が50%超、では失透するおそれがある。
【0016】
In2O3は吸湿性を低下させるとともに耐水性を向上させる成分であり、また、溶融状態のガラスの粘度を上昇させることなくガラスを安定化させる成分であり、必須である。0.1%未満では前記効果が小さい。好ましくは0.5%以上である。12%超では軟化点が高くなりすぎる。好ましくは6%以下、より好ましくは3%以下である。
【0017】
WO3は耐水性を向上させ、またガラスを安定化させる成分であり、また、In2O3に比べて安価であり、15%まで含有してもよい。15%超では軟化点が高くなりすぎ、また、逆にガラスが不安定になり、また、強く着色するおそれがある。好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0018】
Li2O、Na2O、K2Oは軟化点を低下させる成分であり、合量で20%まで含有してもよい。20%超では耐水性を低下させるおそれがある。また、膨張係数が大きくなりすぎ、封着、被覆、等が困難になるおそれがある。
【0019】
B2O3、Al2O3、SiO2は耐水性を向上させる成分であり、また、In2O3に比べて安価であり、それぞれ20%、10%、10%まで含有してもよい。これを超えて含有すると、軟化点が高くなりすぎる、ガラスが不安定になる、等のおそれがある。
【0020】
本発明の低吸湿性ガラスフリットは実質的に上記成分からなるが、この他にCaO、SrO、BaO、Y2O3、TiO2、ZrO2、MoO3、MnO、Fe2O3、Rh2O3、CoO、NiO、PdO、CuO、Ag2O、Bi2O3、TeO2、希土類酸化物(La2O3、CeO2、等)を合量で5%まで含有してもよい。
【0021】
本発明のガラスセラミックス組成物は650℃以下の焼成温度で充分軟化流動し、これを焼成して得られる焼成体の膨張係数は60×10-7〜90×10-7/℃である。本発明のガラスセラミックス組成物は、膨張係数が60×10-7〜100×10-7/℃であるガラス基板に関する封着、被覆等に好適である。
【0022】
本発明のガラスセラミックス組成物は、焼成体の膨張係数の制御、着色、強度向上、等のためにセラミックス粉末を含有する。セラミックス粉末が1重量%未満では、効果が小さい。60重量%超では、本発明の低吸湿性ガラスフリットの含有量が小さくなりすぎ焼成体が焼結不足となる。
【0023】
焼成体の膨張係数を60×10-7〜90×10-7/℃に制御するために用いられるセラミックス粉末、すなわち低膨張セラミックスフィラーとしては、ジルコン、コーディエライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ムライト、シリカ、β−ユークリプタイト、β−スポジュメン、β−石英固溶体、等が挙げられる。
【0024】
着色のために用いられるセラミックス粉末は、通常無機耐熱顔料と称されているものである。白色にするためには、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、等が用いられる。黒色にするためには、鉄とマンガンの複合酸化物、銅とクロムの複合酸化物、コバルトとクロムの複合酸化物、等が用いられる。
【0025】
本発明のガラスセラミックス組成物は、実質的に、本発明の低吸湿性ガラスフリットとセラミックス粉末からなるが、この他に結晶化促進剤、表面処理剤、等を本発明の目的を損なわない範囲で5重量%まで含有してもよい。
【0026】
本発明の低吸湿性ガラスフリットおよび本発明のガラスセラミックス組成物は、たとえば、ビークルと混合してペースト化され、ガラスペーストとされる。ビークルとの混合は、乳鉢、3本ロールミル、等を用いて行われる。このガラスペーストをガラス基板またはガラス基板上に形成された薄膜に塗布し、650℃以下の温度で焼成し、封着、被覆、リブ形成、等を行う。
前記ビークルとして、通常、エチルセルロース、ニトロセルロース、ブチラール樹脂、等の樹脂成分を、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、酢酸イソアミル、等の溶剤に溶解したものが用いられる。
【0027】
本発明のガラスセラミックス組成物を、PDP、VFD、等のフラットディスプレイパネルの封着に用いる場合、低膨張セラミックスフィラーの含有量は1〜40重量%であることが好ましい。
【0028】
以上の説明ではフラットディスプレイパネルへの適用について述べたが、本発明の低吸湿性ガラスフリットおよび本発明のガラスセラミックス組成物の用途はこれに限られず、他のガラス物品における封着、被覆、等にも使用できる。たとえば、ブラウン管におけるパネルとファンネルの封着にも使用できる。
【0029】
【実施例】
表のP2O5からSiO2までの欄にモル%で表示した組成(表においてSnOは、SnOに換算したスズ酸化物を表わす。)のガラスとなるように、原料を調合、混合した。P2O5に関係する原料としては、オルトリン酸水溶液、ピロリン酸亜鉛粉末、ピロリン酸マグネシウム粉末、を用いた。調合、混合した原料を、例1、例2、例8、例9についてはふた付きの石英るつぼに、例3〜7、例10、例11については白金るつぼに、それぞれ入れて1200℃で30分溶融した。このようにして得られた溶融ガラスをステンレス鋼製ローラに流し込みフレーク化したあと、アルミナ製ボールミルで100分間粉砕して粉末化しガラスフリットを得た。
【0030】
前記ガラスフリットについて、以下の測定を行った。
ガラス転移点(℃)、軟化点(℃)、結晶化温度(℃):DTAにより昇温速度10℃/分の条件下で測定した。軟化点620℃以下のものを可とした。
【0031】
膨張係数(×10-7/℃):粉末化する前のガラスフレークを再溶融後ステンレス鋼製板上に流し出し、ガラス転移点近傍の温度で徐冷した。得られたガラスを2mm×20mmφの棒状に加工し、石英ガラスを標準試料として熱示差膨張計により50〜250℃の平均線膨張係数を測定した。50×10-7〜160×10-7/℃であるものが好ましい。
【0032】
耐水性(%):膨張係数測定用サンプルと同じサンプルを80℃の水に2時間浸漬し、浸漬前後の重量から重量減少率を求めた。0.03%以下のものが好ましい。
【0033】
吸湿量(%):ガラスフリット2gを、ふたのない15mmφの円筒型の容器に入れ、温度40℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に48時間静置後取出した。取出したガラスフリットの重量を測定し、重量増加率を求めた。1%以下のものが好ましい。
【0034】
色:ガラスフリットを目視観察し、無色のものを○、わずかに着色しているものを△、強く着色しているものを×、とした。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
例1〜7は実施例、例8〜11は比較例である。例8、例9は吸湿量が大きい。例10は着色が強い。例11は失透が顕著であり安定なガラスが得られなかった。
【0038】
次に、例2のガラスフリット90重量%とコーディエライト10重量%を混合してガラスセラミックス組成物を作製した。これを490℃で10分間焼成して焼成体を得た。その膨張係数は78×10-7/℃であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、吸湿性が低く長期保存ができ、耐水性にすぐれ、鉛やカドミウムを含まず、かつ、まったくまたはほとんど着色していない低融点ガラスフリットを提供できる。また、この低融点ガラスフリットを用いて、長期保存ができ吸湿性の低いガラスセラミックス組成物を提供できる。
Claims (3)
- 下記酸化物基準のモル%で、
P2O5 25〜50、
SnOに換算したスズ酸化物 0〜70、
ZnO 0〜50、
MgO 0〜50、
In2O3 0.1〜12、
WO3 0〜15、
Li2O+Na2O+K2O 0〜20、
B2O3 0〜20、
Al2O3 0〜10、
SiO2 0〜10、
を含み、かつ、SnOに換算したスズ酸化物、ZnOおよびMgOの合量が30〜70モル%であり、軟化点が620℃以下である低吸湿性ガラスフリット。 - 請求項1に記載の低吸湿性ガラスフリット40〜99重量%と、セラミックス粉末1〜60重量%とから実質的になるガラスセラミックス組成物であって、該ガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体の、50〜250℃における平均線膨張係数が60×10-7〜90×10-7/℃であるガラスセラミックス組成物。
- 請求項1に記載の低吸湿性ガラスフリットまたは請求項2に記載のガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体。
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