JP4456835B2 - 高プロトン導電性ガラス、及び、これを製造できる製造方法 - Google Patents

高プロトン導電性ガラス、及び、これを製造できる製造方法 Download PDF

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Description

本発明は高プロトン導電性ガラス及びその製造方法に関する。本発明は水素検知器、水素ガスセンサー、水素濃淡電池、水素分離膜、水素燃料電池用の固体電解質、エレクトロクロミック表示素子用の固体電解質などのプロトン(水素イオン)の移動性が要請される用途に使用できる。
プロトン(水素イオン)による高い電気伝導をもつ、例えば室温で10-5Scm-1以上を示すような高プロトン導電性膜は、燃料電池などの隔膜(高プロトン導電性固体電解質)として、近年、有望視されている。高プロトン導電性膜を作製する方法として、通常のガラスの製法である溶融ー急冷法を用いて作製する方法も考えられる。ところが、従来のこの方法では高温で溶融するために、原料中の水分または水素イオンの大半が蒸発して失われるため、分子状の水及び水素イオンが極めて少なく、高プロトン導電性ガラスは得られない。そこで、いわゆるゾルーゲル法を用いて、低温合成によりリン酸ジルコニウム系などの高プロトン導電性ガラスを得る方法が研究されている(特許文献1)。
特開平8−119612号公報
上記したゾルーゲル法を用いて高プロトン導電性ガラスを作製する場合には、作製過程に極めて長時間を要するうえ、作製途中にガラスに亀裂が入りやすいため、大面積の膜や板などが得られない。
ところで、従来から実施されているガラスの製造方法は、いわゆる溶融ー急冷法と言われる方法である。例えば、原料としてケイ砂、炭酸ソーダ、炭酸カルシウムなどの混合物を用い、これらを混合して溶融させた後、急冷固化させてガラスを得ることができる。この方法によれば、原料混合物を溶解させるために、その液相温度(融点)以上の高温に維持して調製する必要がある。
そのため、原料混合物の付着水分、含有水分、または結晶水等による水及び水素イオンは、蒸発揮散してガラス中にほとんど残存しない状態となる。したがって、従来の方法では、高プロトン導電性を示すガラスを得られなかったのである。そこで、近年、導電率10-4Scm-1以上を示すことができる高プロトン電導性ガラスを、半溶融法によりアルカリ土類金属(IIA族)と鉛(IVB族)及び亜鉛(IIB族)を含むリン酸ガラスにより実現する技術が本出願人等により開発されている。
このような特性をもつガラス合成ができたのは、ガラス中に数種類の金属イオンを含ませることにより、非架橋酸素濃度を減少させ(なお、非架橋酸素の減少に伴って水素結合しているプロトン濃度が増加する)、かつ、ガラス中に多量の分子状水分子(プロトンのホッピング移動の点として働くと考えられる)の導入が成功したためであると推察される。
しかしながら、このガラスは、高プロトン導電性をもつものの、水分に対する耐久性が必ずしも充分ではない。このガラスは、例えば水素ガスセンサー等のような加湿雰囲気で使用されると、長時間の連続使用には用いることが事実上できない。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、高プロトン導電性を維持しつつ、水分に対する耐久性を高めるのに有利な高プロトン導電性ガラス、及び、これを製造できる製造方法を提供することを課題とするにある。
本発明者等は上記した課題のもとに高プロトン導電性ガラスについて鋭意開発を進めている。そして、上記した高プロトン導電性ガラスの耐久性の悪い主な原因は、このガラス中には多量のオルトリン酸塩が存在し、ガラスを加湿雰囲気下に長時間置くと、オルトリン酸塩化合物がガラス中から徐々に溶けでてくるためと考えられる。このため、プロトン導電性は高いもののガラス中に多量のオルトリン酸塩を含む導電性ガラスをそのまま、現在多くの研究分野から注目を浴びている固体電解質等の用途として用いるには、充分ではない。
例えば、燃料電池に用いられる固体電解質においては、ガラス中のオルトリン酸塩化合物が反応系に含まれる水分を吸収し、ガラス表面に析出する反応が加速度的に進み易くなり、この結果、燃料電池の特性を低下させるおそれがある。
そこで、本発明者等は、リン酸化物等を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性含水ガラスで形成され、重量%で、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が51.5〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有すれば、高いプロトン導電性を確保しつつ、上記した高プロトン導電性ガラスがもつ不具合、つまり、水分に対する耐久性を改良できることを知見し、試験で確認し、本発明を完成させた。
即ち、様相1の本発明に係る高プロトン導電性ガラスは、リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性含水ガラスで構成され、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が51.5〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有されており、且つ、ガラスを100重量部とするとき水が0.5〜10重量部存在していることを特徴とするものである。
様相2の本発明に係る高プロトン導電性ガラスは、リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成され高プロトン導電性含水ガラスで構成され、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が51.5〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有されており、且つ、ガラスを100重量部とするとき水が1.4〜10重量部存在していることを特徴とするものである。
本発明によれば、含水率が高い高プロトン導電性ガラスが得られる。殊に、リン酸化物が上記した割合で含有されていると、含水率が高い高プロトン導電性ガラスが得られる。
また、本発明に係る高プロトン導電性ガラスの製造方法は、前記した本発明に係る高プロトン導電性ガラスの製造に適する方法であり、ガラス構成成分を含む化合物と、タングステン、モリブデン、インジウムのうちの1種または2種以上を含む化合物と、液状リン酸を主要成分とする溶媒とを用意する工程と、
液状リン酸を主要成分とする溶媒と前記化合物とを混合し、その混合物を300℃〜850℃の範囲内に加熱して融液とする工程と、融液を冷却固化させる工程とを順に実施し、前記した各請求項に記載の高プロトン導電性ガラスを製造することを特徴とするものである。
本発明によれば、含水率が高い高プロトン導電性ガラスが得られる。殊に、リン酸化物が上記した割合で含有されていると、含水率が高い高プロトン導電性ガラスが得られる。
本発明によれば、高プロトン導電性を維持しつつ、水分に対する耐久性を高めるのに有利な高プロトン導電性ガラス及びその製造方法を提供することができる。本発明によれば、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が適量含有されているため、これらが含有されていない場合に比較して、ガラス骨格が強化され、水分に対する耐久性(耐溶解性、耐形状変形性)を高めることができる。
本発明によれば、次の形態を採用することができる。即ち、本発明に係る高プロトン導電性ガラスは、リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成されており、水分を含有する。ガラス構成成分としては、例えば、バリウム酸化物、鉛酸化物、ストロンチウム酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、シリコン酸化物のうちの1種または2種以上を主要成分とすることができる。
本発明によれば、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物は51.5〜77重量%とされている。このうち、リン酸化物の上限値としては70重量%、60重量%を例示することができ、この上限値と組み合わせ得るリン酸化物の下限値としては51.5重量%を例示することができる。従って、リン酸化物は51.5〜75重量%、51.5〜70重量%を例示することができる。
本発明によれば、BaO−PbO−SrO−P25系のガラス、あるいは、SrO−PbO−ZnO−P25系のガラスを例示することができる。BaO−PbO−SrO−P25系のガラスによれば、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25をベースとして、組成を調製することができる。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。この場合、重量%で表すと、このガラスの基本組成は、BaOは0.0092〜31.6重量%、殊に9.6〜21.0重量%にできる。PbOは0.015〜40.2重量%、殊に7.6〜21.8重量%にできる。SrOは0.0062〜23.8重量%、殊に0.69〜7.0重量%を例示できる。P2551.5〜77重量%、殊に51.5〜76.2重量%を例示できる。そして上記したガラスに加えるWO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は、WO3,MoO3,In23の1種または2種以上を含むガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、0.01〜15重量%、0.1〜15重量%、0.14〜15重量%を例示でき、殊に、0.95〜13.4重量%を例示できる。
またSrO−PbO−ZnO−P25系のガラスによれば、10モル%SrO−10モル%PbO−10モル%ZnO−70モル%P25系のガラスをベースとして例示することができる。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。この場合、重量%で表すと、基本組成は、SrOは0.0062〜23.8重量%、殊に3.2〜12.2重量%を例示できる。PbOは0.017〜40.2重量%、殊に8.2〜23.1重量%を例示できる。ZnOは0.0049〜20.7重量%、殊に2.6〜9.6重量%を例示できる。P25 51.5〜77重量%、殊に51.5〜76.9重量%にできる。そして上記したガラスに加えるWO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、0.01〜15重量%、0.1〜15重量%、0.14〜15重量%、殊に1.0〜14.2重量%を例示できる。
換言すると、本発明によれば、タングステン酸化物を含む上記ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、タングステン酸化物としては、0.005〜15重量%含有されている形態を採用できる。タングステン酸化物の量が増加すると、プロトン導電率は低下する傾向になるが、水分に対する耐久性が向上する。従って、高プロトン導電性と、水分に対する耐久性とについての重視の度合により、タングステン酸化物については、上限値として14重量%、13重量%、10重量%、8重量%、5重量%、3重量%、あるいは、2重量%、1重量%等を例示することができ、この上限値と組み合わせ得る下限値として0.01重量%、0.02重量%、または0.1重量%等を例示することができる。
ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、モリブデン酸化物が0.005〜10重量%含有されている形態を採用できる。モリブデン酸化物の量が増加すると、導電率は低下する傾向になるが、水分に対する耐久性が向上する。従って、高プロトン導電性と、水分に対する耐久性とについての重視の度合により、モリブデン酸化物については、モリブデン酸化物を含むガラスを100重量%としたとき、上限値として8重量%、5重量%、3重量%、1重量%等を例示することができ、この上限値と組み合わせ得る下限値を0.01重量%、0.02重量%、または0.1重量%等を例示することができる。
上記ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、インジウム酸化物が0.005〜2重量%含有されている形態を採用できる。インジウム酸化物の量が増加すると、プロトン導電率は低下する傾向になるが、水分に対する耐久性が向上する。従って、高プロトン導電性と、水分に対する耐久性とについての重視の度合により、インジウム酸化物については、上限値として1.5重量%、1重量%、または0.5重量%を例示することができ、下限値として0.01重量%、または0.02重量%等を例示することができる。
本発明によれば、150℃で1×10-5Scm-1以上のプロトン導電率を有する形態を採用できる。殊に、150℃で、1×10-4Scm-1以上、2×10-4Scm-1以上、あるいは、3×10-4Scm-1以上のプロトン導電率を有する形態を採用できる。例えば80〜200℃において、1×10-4Scm-1以上、2×10-4Scm-1以上のプロトン導電率を有する形態を採用できる。
本発明に係る高プロトン導電性ガラスは、液状リン酸を主要成分とする溶媒と前記化合物とを混合し、その混合物を加熱して融液とし、その融液を冷却固化させることにより製造することができる。
本発明に係る高プロトン導電性ガラスの製造方法は、上記した高プロトン導電性ガラスを製造するのに適する方法である。本発明方法によれば、ガラス構成成分としては、バリウム、鉛、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、シリコンのうちの1種または2種以上を含む化合物を用いることができる。また、リン成分の原料として液状リン酸が用いられている。液状リン酸は液状リン酸塩を含む。例えば、液状正リン酸(H3PO4、濃度85wt%)、液状リン酸アルミニウムのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの液状リン酸を用いることによって、本発明方法で製造されるガラスのH2Oを高濃度に保つことができる。ここでガラスは半ガラスも含む意味である。半ガラスは50wt%以下の結晶を含むガラスを示すが、本発明においては併せてガラスと称する。
液状リン酸と金属塩とを含む混合物を攪拌しながら温度を上げていくと、混合物は融解して透明または半透明の高粘度融液となる。混合物を加熱保持する調製温度は、ガラスの組成等によっても相違するが、一般的には300〜850℃、殊に300〜850℃、あるいは、400〜800℃、600〜800℃を例示することができる。この場合、調製温度は液相温度以下が良く、800℃以下、750℃以下、650℃以下、下限側としては300℃以上を例示することができる。一般的には、調製温度が低いと、ガラスに含まれる含水量が増加すると共に、調製温度が高いと、ガラスに含まれる含水量が減少する傾向が得られる。
液相温度とはP25と金属塩とで構成される多元系を加熱したときに平衡状態として溶融液化するときの温度である。加熱して温度を上昇させるとリン酸は脱水縮合して熱リン酸となり、この熱リン酸の分解作用によって金属はその融点よりもはるかに低い温度でリン酸中に反応して均一に溶け込むことができ、高粘度の融液となる。この高粘度の融液を冷却固化させることにより、多量の分子状の水と水素イオンとが残存したガラス状物質が得られる。上記した分子状の水と水素イオンとの数値が大きいほど、プロトン導電性は高くなる傾向にある。一方、分子状の水と水素イオンとの数値が大きすぎると、ガラス体の化学的耐久性が低下する傾向がある。
分子状の水と水素イオンとは、通常のガラスにおいてはほとんど存在しない。しかし本発明に係るガラスの骨格を100重量部としたとき、ガラスの骨格100重量部に対して、水分は0.5〜10重量部、殊に1.4〜10重量部存在することができる。ここで、水分が10重量部であるとは、ガラスの骨格100重量部と水10重量部とで合計110重量部となることを意味する。
本発明方法によれば、ゾルーゲル法を用いずに、高プロトン導電性ガラスが得られる。本発明方法によれば、従来の溶融法に較べてはるかに製造時の温度が低いため、ガラス中には多量の水と水素イオンが残存している。そのため、本発明方法で製造したガラスに高プロトン導電性が発現する。なお、加熱時間と加熱温度(調製温度)を変えることにより、残存する分子状の水と水素イオンとの量をコントロ−ルすることができる。
本発明の実施例を具体的に説明する。
(ガラスの製造)
溶媒として所定量のリン酸をアルミナ製または白金製のるつぼ(1000℃まで耐えられる容器)に入れ、使用する化合物をそのるつぼに少量づつ添加していった。例えば、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25をベースとするガラスの場合には、溶媒である正リン酸16.14g、バリウム成分として炭酸バリウム2.96g、鉛成分として酸化鉛2.23g、ストロンチウム成分として炭酸ストロンチウム0.74gを添加した。正リン酸はリン供給源となる。
なお、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25のガラスは、重量%で表すと、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25のガラスである。
(焼成)
上記したるつぼに入った試料を電気炉に入れ、室温から10℃/minで試料を昇温させた。そして試料が所定の温度(300〜850℃の範囲内)になったら、所定時間(5分〜20時間)を保持し、高粘度の試料の融液を調製した。その後、その融液を市販ガラス容器により室温で冷却させてガラス製の試験片を形成した。
(徐歪)
ガラス転位温度Tgをわずかに超える温度範囲に予め加熱した電気炉を用い、合成したガラスをその電気炉に装入した。そして、電気炉の電源スイッチを切り、室温近くまで自然放置することによって試験片の徐歪処理を行った。例えば、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25をベースとするガラスの場合には、電気炉の設定温度は220℃とした。
(ガラスの含水率の測定)
ガラスに含まれている水分の定量には、E,J,Griffithらが開発した簡単な重量法を改良した下記の方法を適用した。即ち、上記したように製造したガラスの試料の微粉末約0.5gを用意した。この試料の微粉末に、予め加熱脱水して恒量しておいた酸化亜鉛の粉末を配合した。この場合、(MO+ZnO)/P25のモル比が3(オルトリン酸塩の組成に相当)を充分超えるように、酸化亜鉛の粉末を配合した。MOのMは、本発明に使用したガラス中の金属成分(Ba,Pb,Sr,Zn)を示す。ZnOは、酸化亜鉛の粉末に相当する。
例えば、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25をベースとするガラスの場合には、酸化亜鉛の粉末を1.5g配合した。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。
この配合物を白金るつぼにおいて少量の純水を加えて混和した。白金るつぼ内の配合物を徐々に昇温し、700℃で2時間加熱保持した。さらに恒量となるまで加熱を反復した。そして、開始時の試料と添加した酸化亜鉛との合計量から、重量減少量を測定し、試料の含水量を求めた。
上記したガラスの骨格を100重量部としたとき、ガラスの骨格100重量部に対して、水分は1.4〜10重量部程度存在することができる。
15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25の組成をもつ比較例のガラス(WO3,MoO3,In23を含まず)について、調製温度、保持時間に分けて含水率を測定した。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。このガラスは、水分を除いたガラス骨格を100%とすると、重量%で表すと、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25である。測定結果を表1に示す。表1に示すように比較例のガラス含水率は1.4〜7.4重量部であった。この比較例は、水分に対する耐久性が低いものである。
更に、発明品として、BaO−PbO−SrO−P 2 5 −WO 3 の組成をもつガラスについても、同様に含水率を測定した。このガラスは、水分を除いたガラス骨格を100%とすると、重量%で表すと、基本的には、13.3重量%BaO−12.9重量%PbO−3.0重量%SrO−57.3重量%P25−13.4重量%WO3である。この発明品の含水率をガラスの調製温度、保持時間に分けて測定した、測定結果を表2に示す。表2に示すように発明品のガラス含水率は、0.84〜5.4重量部であった。つまり、WO3を含有すると、含水率はWO3を含有しない比較例に比べて若干低下するものの、高い含水率が得られる。
発明品及び比較例共に、ガラスの調製温度が高いほどガラスの含水率は低下し、且つ、ガラスの調製温度が低いほどガラス含水率は高くなる。また発明品及び比較例共に、保持温度が長いほどガラスの含水率は低下し、且つ、保持時間が短いほどガラス含水率は高くなる。なお、この場合の含水率は分子状の水と構造水(水素イオンを含む)を包含する。
Figure 0004456835
Figure 0004456835
(耐水試験)
(30℃における耐水試験)
(1)BaO−PbO−SrO−P25系のガラスをベースとして用い、耐水試験を行った。このガラスは、モル%で表すと、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25であり、重量%で表すと、 ガラス骨格を100%としたとき、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25である。
そしてこのガラスをベースにし、金属酸化物(WO3,MoO3,In23)をそれぞれ単独でこのガラスに含有させた試験片を形成した。各試験片のガラスを純水中において30℃で1週間保持し、ガラスの耐水性を試験した。
試験結果によれば、WO3(13.4重量%)を含むガラス(No.a)は、水にほとんど溶けなかった。ここでWO3(13.4重量%)は、ガラス骨格を100重量%としたとき、100重量%のうちWO3、MoO3,In23の占める重量割合を意味する。以下の( )内の重量%も同様である。
MoO3(4.6重量%)を含むガラス(No.b)は、水にほとんど溶けなかった。In23(1.5重量%)を含むガラス(No.c)は、水にほとんど溶けなかった。なお、上記ガラス(No.a〜No.c)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は57.3〜65.3重量%であり、請求項1の条件を満足する。
(2)更に、BaO−PbO−ZnO−P25系ガラスをベースとして用いた。このガラスは、モル%で表すと、10モル%BaO−10%PbO−10モル%ZnO−70モル%P25である。この場合、全成分のモル%を合計すると100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。このガラスを、重量%で表すと、7.4重量%BaO−15.9重量%PbO−5.8重量%SrO−70.9重量%P25である。そしてこのガラスをベースとし、金属酸化物(WO3,MoO3,In23)をそれぞれ単独でこのガラスに含有させた試験片を形成した。各試験片のガラスを純水中において25℃で1週間保持し、ガラスの耐水性を試験した。試験結果によれば、ガラスは水にほとんど溶けなかった。
即ち、WO3(14.2重量%)を含むガラス(No.d)は、水にほとんど溶けなかった。(14.2重量%)は、ガラス骨格を100%としたとき、100%に占める割合を意味する。以下も同様である。MoO3(4.9重量%)を含むガラス(No.e)は、水にほとんど溶けなかった。In23(1.6重量%)を含むガラス(No.f)は、水にほとんど溶けなかった。上記した試験結果によれば、30℃程度の室温においては耐水性がかなり向上していることがわかる。なお、上記ガラス(No.d〜No.f)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は60.8〜69.7重量%であり、請求項1の条件を満足する。
(50℃における耐水試験)
(1)BaO−PbO−SrO−P25系のガラスを用いた。このガラスは、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25である。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。そして金属酸化物(WO3,MoO3,In23)をそれぞれ単独でこのガラスに含有させた試験片を形成した。各試験片のガラスを純水中において50℃で1週間保持する耐水試験を行った。試験結果によれば、WO3(13.4重量%)を含むガラス(No.a1)は、水にほとんど溶けなかった。MoO3(4.6重量%)を含むガラス(No.b1)は、水にほとんど溶けなかった。In23(1.5重量%)を含むガラス(No.c1)は、水にほとんど溶けなかった。なお、上記ガラス(No.a1〜No.c1)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は57.3〜65.3重量%であった。
またWO3(7.2重量%)を含むガラス(No.a2)は、一部水に溶け始めた。MoO3(1.0重量%)を含むガラス(No.b2)は、一部水に溶け始めた。InO3(0.8重量%)を含むガラス(No.c2)は、一部水に溶け始めた。なお、上記ガラス(No.a2〜No.c2)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は61.5〜65.8重量%であり、請求項1の条件を満足する。
(2)BaO−PbO−ZnO−P25系のガラスをベースとして用いた。そして金属酸化物(WO3,MoO3,In23)をそれぞれ単独でガラスに含有させた。この金属酸化物を含むガラスを純水中において65℃で1週間保持し、耐水性試験を行った。この場合、WO3(14.2重量%)を含むガラス(No.d3)は、水にほとんど溶けなかった。MoO3(4.9重量%)を含むガラス(No.e3)は水にほとんど溶けなかった。In23(1.6重量%)を含むガラス(No.f3)は水にほとんど溶けなかった。なお、上記ガラス(No.d3〜No.f3)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は60.8〜69.7重量%であり、請求項1の条件を満足する。
またWO3(8.1重量%)を含むガラス(No.d4)は一部水に溶け始めた。MoO3(1.0重量%)を含むガラス(No.e4)は一部水に溶け始めた。In23(0.16重量%)を含むガラス(No.f4)は一部水に溶け始めた。なお、上記ガラス(No.d4〜No.f4)によれば、ガラス骨格を100重量%としたとき、100%重量のうち、P25は69.7〜70.8重量%であり、請求項1の条件を満足している。
上記した耐水試験の結果によれば、試験温度が50℃と比較的温度が高い場合には、WO3,MoO3,In23の添加濃度が8.1重量%以下のときには、ガラスの一部の溶解が認められることもある。これは、ガラス使用温度の上昇によりガラスの溶解度が上がった(溶解速度が上昇した)ためと考えられる。しかしWO3が13.4重量%以上、MoO3が4.6重量%以上、InO3が1.5重量%以上のときには、上記した条件ではガラスはほとんど溶けない。
(3)ガラスの形状観察
この場合、15モル%BaO−10%PbO−5モル%SrO−70モル%P25のガラスを比較例として用いた。この場合、全成分のモル%を合計すると、100モル%となり、当該モル%はモル比に相当する。このガラスは、重量%で表すと、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25である。そしてこの比較例のガラスにタングステン酸化物(WO3)を13.4重量%単独で含有させた発明品のガラスを形成した。発明品のガラスは、ガラス骨格を100%としたとき、重量%で表すと、基本的には、13.3重量%BaO−12.9重量%PbO−3.0重量%SrO−57.3重量%P25−13.4重量%WO3である。この実施例のガラス、比較例のガラスをそれぞれ恒温乾燥器に装入した。そして27℃の飽和水蒸気を恒温乾燥器に送りながら、それぞれのガラスの形状変化を観察した。比較例のガラスは液状化、失透、粉末化が進行した。これに対して発明品のガラスは変化がなかった。
更に、純水中において25℃で1週間保持し、ガラスの耐水性を試験した。この場合においても、発明品のガラスは水にほとんど溶けなかった。即ち、WO3(13.4重量%)を含むガラスは、水にほとんど溶けなかった。MoO3(4.6重量%)を含むガラスは、水にほとんど溶けなかった。In23(1.5重量%)を含むガラスは、水にほとんど溶けなかった。上記した試験結果によれば、25℃程度の室温においては耐水性がかなり向上していることがわかる。なお、上記ガラスによれば、P25は57.3〜65.3重量%であり、請求項1の条件を満足している。
(導電率の測定)
図1は、150℃におけるガラスの導電率とタングステン酸化物(WO3)との関係を示す。導電率はプロトン導電率を意味する。このガラスは、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25をベースとしている。図1の横軸は、タングステン酸化物を含むガラス骨格を100重量%としたとき、100重量%のうちのタングステン酸化物(WO3)の含有量を示す。図1の縦軸は、タングステン酸化物(WO3)を含むガラスの試験片の導電率を示す。ここで、縦軸に記載の『1.00E−04』は1×10-4を意味する。『7.00E−04』は7×10-4を意味する。ここでガラスの試験片の導電率は次のように測定した。即ち、ガラスで形成された円板ディスク状の試験片の中央域に電極を形成し、電極に白金線を接続し、試験片の厚み方向における導電率を測定した。
図1に示すように、タングステン酸化物(WO3)が増加するにつれて、ガラスの導電率は急速に減少し、10重量%以上でほぼ一定値を示した。図1に基づけば、導電率が1×10-4Scm-1以上するためには、WO3は3重量%以内とすることが好ましい。また導電率が2×10-4Scm-1以上するためには、WO3は2重量%以内とすることが好ましい。更に高い導電率を得るためには、WO3は1重量%以内とすることが好ましい。但し、WO3の量が低下すると、水分に対する耐久性が低下するので留意する必要がある。
図2は、150℃におけるガラスの導電率とモリブデン酸化物(MoO3)との関係を示す。図2の横軸は、モリブデン酸化物を含むガラス骨格を100重量%としたとき100重量%のうちのモリブデン酸化物(MoO3)の含有量を示す。図2の縦軸は、モリブデン酸化物(MoO3)を含むガラスの試験片の導電率を示す。このガラスは重量%で、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25をベースとしている。図2に示すように、タングステン酸化物(WO3)の場合と同様に、モリブデン酸化物(MoO3)が増加するにつれて、ガラスの導電率は急速に減少した。図2に基づけば、導電率が1×10-4Scm-1以上するためには、MoO3は6重量%以内とすることが好ましい。また導電率が2×10-4Scm-1以上するためには、MoO3は1重量%以内とすることが好ましい。更に高い導電率を得るためには、MoO3は0.5重量%以内とすることが好ましい。但し、MoO3の量が低下すると、水分に対する耐久性が低下するので留意する必要がある。
図3は、150℃におけるガラスの導電率とインジウム酸化物(In23)との関係を示す。図3の横軸は、インジウム酸化物を含むガラス骨格を100重量%としたとき100重量%のうちのインジウム酸化物(In23)の含有量を示す。図3の縦軸は、インジウム酸化物(In23)を含むガラスの試験片の導電率を示す。このガラスは重量%で、15.3重量%BaO−14.9重量%PbO−3.5重量%SrO−66.3重量%P25をベースとしている。図3に示すように、インジウム酸化物(In23)が増加するにつれて、ガラスの導電率は急速に減少する。図3に基づけば、導電率が1×10-4Scm-1以上にするためには、In23は1.2重量%以内とすることが好ましい。また導電率が2×10-4Scm-1以上するためには、In23は0.5重量%以内とすることが好ましい。更に高い導電率を得るためには、In23は0.3重量%以内とすることが好ましい。但し、In23の量が低下すると、水分に対する耐久性が低下するので留意する必要がある。
図4は、13.4重量%のタングステン酸化物(WO3)を含むガラスにおいて導電率の温度依存性を示す。このガラスは、重量%で表すと、基本的には、13.3重量%BaO−12.9重量%PbO−3.0重量%SrO−57.3重量%P25−13.4重量%WO3である。
図4の横軸は温度を意味し、横軸の数値2.5は(1/2.5)×1000K=127℃を意味する。図4の縦軸は、タングステン酸化物(WO3)を含むガラスの試験片の導電率を示す。この場合、測定は、5℃の加湿水蒸気を含む窒素気流に試験片をセットした状態で行ない、100℃と200℃の間で10回繰り返した。この試験結果によれば、図4に示すように、100℃と200℃においては1×10-5Scm-1以上のプロトン導電率を有することがわかった。100℃と200℃との間でこのガラスのプロトン導電率は測定温度の上昇とともに増加することが分かった。また、測定を繰り返しても同じ値を再現すること等から、耐水性に優れた良質なガラスであるものと考えられる。
図5は、4.6重量%のモリブデン酸化物(MoO3)を含むガラスにおいてプロトン導電率の温度依存性を示す。このガラスは、重量%で表すと、14.6重量%BaO−14.2重量%PbO−3.3重量%SrO−63.3重量%P25−4.6重量%MoO3である。この場合、測定は、5℃の加湿水蒸気を含む窒素気流下で行ない、100℃,150℃,200℃で2回それぞれ繰り返したところ、再現性の有るデータが得られた。
図6は、酸化タングステン(WO3)を含む本発明品のガラスを電解質とした用いた水素濃淡電池における起電力と水素ガス分圧との関係を示す。図6の横軸は水素分圧濃度を示す。図6の縦軸は起電力を示す。このガラスは、15モル%BaO−10モル%PbO−5モル%SrO−70モル%P25系のガラスをベースとし、WO3を適宜含有されたものである。ガラスを100%としたき、重量%で表すと、13.3重量%BaO−12.9重量%PbO−3.0重量%SrO−57.3重量%P25−13.4重量%WO3とした。
図6に示す試験によれば、ディスク状ガラスの両面に、電極として白金担持カーボン電極、集電体として白金網、リード線として白金線を取付け、リード線をエレクトロメータに接続し、両電極間の電圧を測定できるようにした。ガラスを両電極側からセラミックス管で挟み込み、隙間をシリコーン接着剤でシールし、ガス室を形成した。それぞれのガス室に、25℃飽和水蒸気を含む水素とアルゴンガスとの混合ガスを流した。ここで、片方の電極を基準極、もう片方の電極を測定極とした。この場合、基準極側のガス室に流す混合ガスの水素分圧を0.005atm,0.01atm,0.1atmと変化させた。そして、それぞれについて測定極側のガス室に流す混合ガスの水素分圧を0.005atm,0.01atm,,0.1atmと変化させ、発生した電圧を図6のプロットとして示す。図6の実線はネルンスト式による理論起電力を示す。当該プロットは、理論起電力を示す実線とよく一致している。即ち、いずれの試験片についても、水素分圧濃度に比例して起電力が直線的に変化した。起電力の変化の傾きは、ネルンストの式から予測される60mVを示した。
この試験結果は、このガラスの電荷担体が電子ではなく、イオンであることを強く示唆するものである。なお、図中の□印は、基準極側に流す混合ガスの水素分圧を0.1atmとしたときを意味する。△印は、基準極側に流す混合ガスの水素分圧を0.01atmとしたときを意味する。○印は、基準極側に流す混合ガスの水素分圧を0.005atmとしたときを意味する。
また、この測定系をこの温度及び湿度のまま1週間放置した。その後、同様に起電力を測定した。この場合、良好な起電力の水素分圧依存性を示した。その傾きは60mVであった。このことからも酸化タングステンの含有は、加湿雰囲気において耐久性の向上に有効であることがわかる。
更に、上記したガラスを燃料電池の固体電解質膜として組み込み、発電性能を調べた。このガラスは、15BaO−10PbO−5SrO−70P25系−10WO3である。ガラスを100%としたとき、重量%で表すと、13.3重量%BaO−12.9重量%PbO−3.0重量%SrO−57.3重量%P25−13.4重量%WO3である。
燃料極及び酸化剤極ともに次のように形成した。即ち、炭素粉末及び白金粉末を80:20の重量比で混合した材料Aを形成した。ナフィオンが5重量%含まれている溶液Bを形成した。材料Aと溶液Bとを1:10の重量比で混合したものをスクリーン印刷法にて成膜し、その後、室温にて乾燥して燃料極及び酸化剤極を形成した。面積は0.2cm2とした。作動温度140℃で、燃料極には、25℃における飽和水蒸気を含んだ水素を200cc/minの流量で流した。酸化剤極には、25℃における飽和水蒸気を含んだ酸素を200cc/minの流量で流した。試験結果を図7に示す。特性線H1は出力密度を示し、特性線H2は電圧を示す。この燃料電池によれば、0.3mA/cm2 まで電流を取り出すことが可能である。またPEFCの作動温度(80℃)よりも高い140℃でも発電可能である。ガラスの薄膜化、電極の改良などによって更に性能が向上することが期待できる。
(付記)
上記した記載から次の技術的思想も把握することができる。
(付記項1)BaO−PbO−SrO−P25系の各請求項に係る高プロトン導電性ガラスであって、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、BaOは0.0076〜31.1重量%、PbOは0.012〜39.7重量%、SrOは0.0052〜23.4重量%、P25は41.1〜74.8重量%であり、WO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は0.005〜15重量%であることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
この場合、BaOは7.9〜20.6重量%を例示でき、PbOは6.2〜21.5重量%を例示でき、SrOは0.56〜6.9重量%を例示でき、P25は42.8〜66.8重量%等を例示でき、WO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は0.01〜15重量%、0.1〜15重量%等を例示できる。これにより高プロトン導電性を得つつ、水分に対する耐久性を向上できる。なお場合によっては、WO3の上限値としては18重量、20重量%とすることも可能である。
(付記項2)SrO−PbO−ZnO−P25系の各請求項に係る高プロトン導電性ガラスであって、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、SrOは0.0052〜23.6重量%、PbOは0.013〜40.0重量%、ZnOは0.0049〜20.5重量%、P25は41.1〜76.9重量%であり、WO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は0.005〜15重量%であることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。これにより高プロトン導電性を得つつ、水分に対する耐久性を向上できる。
この場合、SrOは2.7〜12.1重量%を例示でき、PbOは6.5〜22.9重量%を例示でき、ZnOは2.1〜9.5重量%を例示でき、P25は53.8〜76.9重量%等を例示でき、WO3,MoO3,In23の1種または2種以上の含有量は0.01〜15重量%、0.1〜15重量%、0.5〜15重量%,あるいは0.5〜5重量%等を例示できる。
(付記項3)リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性ガラスにおいて、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が26〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.05〜15重量%含有されていることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
(付記項4)リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性ガラスにおいて、ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が26〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有されていることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
(その他)
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
本発明は水素検知器、水素ガスセンサー、水素濃淡電池、水素分離膜、水素燃料電池用の固体電解質、エレクトロクロミック表示素子用の固体電解質などのプロトン(水素イオン)の移動性が要請される用途に利用できる。
ガラスの導電率と酸化タングステンの含有量との関係を示すグラフである。 ガラスの導電率と酸化モリブデンの含有量との関係を示すグラフである。 ガラスの導電率と酸化インジウムの含有量との関係を示すグラフである。 タングステン酸化物(WO3)を含むガラスにおける導電率の温度依存性を示すグラフである。 モリブデン酸化物(MoO3)を含むガラスにおいて導電率の温度依存性を示すグラフである。 酸化タングステンを含むSrO−PbO−ZnO−P25系のガラスを用いて形成した水素ガスセンサにおける起電力と水素ガス分圧との関係を示すグラフである。 ガラスを固体電解質膜として適用した燃料電池における試験結果を示すグラフである。

Claims (9)

  1. リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性含水ガラスで構成され、
    ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が51.5〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有されており、且つ、ガラスを100重量部とするとき水が0.5〜10重量部存在していることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  2. リン酸化物を主要成分とするガラス構成成分で形成された高プロトン導電性含水ガラスで構成され、
    ガラスを100重量%としたとき、100重量%のうち、リン酸化物が51.5〜77重量%含有されていると共に、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物のうち1種または2種以上が0.005〜15重量%含有されており、且つ、ガラスを100重量部とするとき水が1.4〜10重量部存在していることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  3. 請求項1または2において、前記ガラス構成成分は、リン酸化物の他に、バリウム酸化物、鉛酸化物、ストロンチウム酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、シリコン酸化物のうちの1種または2種以上を主要成分とすることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  4. 請求項1〜請求項3のうちの一項において、100重量%のうち、タングステン酸化物が0.005〜15重量%含有されていることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  5. 請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、100重量%のうち、モリブデン酸化物が0.005〜10重量%含有されていることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  6. 請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、100重量%のうち、インジウム酸化物が0.005〜2重量%含有されていることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  7. 請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、150℃において10−5Scm−1以上のプロトン導電率を有することを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  8. 請求項1〜7のうちの一項において、BaO−PbO−SrO−P系のガラス、あるいは、SrO−PbO−ZnO−P系のガラスであることを特徴とする高プロトン導電性ガラス。
  9. ガラス構成成分を含む化合物と、タングステン、モリブデン、インジウムのうちの1種または2種以上を含む化合物と、液状リン酸を主要成分とする溶媒とを用意する工程と、
    液状リン酸を主要成分とする溶媒と前記化合物とを混合し、その混合物を300℃〜850℃の範囲内に加熱して融液とする工程と、
    前記融液を冷却固化させる工程とを順に実施し、
    請求項1〜請求項8のうちのいずれかに記載の高プロトン導電性ガラスを製造することを特徴とする高プロトン導電性ガラスの製造方法。
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