JP5791102B2 - 耐水性および化学耐久性に優れたバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス - Google Patents
耐水性および化学耐久性に優れたバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス Download PDFInfo
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Description
本発明のバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスにおいて、上記の割合で酸化バリウム、酸化鉄および酸化タングステンを含んでいると、特に高い電気伝導度を有するバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスを得ることができる。
10−5S・cm−1以上の高い電気伝導率を有する場合、バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスは、導電性および高い化学耐久性を併せ持つ導電性材料として、幅広い用途に適用できる。
本発明の一実施の形態に係るバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス(以下、単に「バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス」と呼称する場合がある。)は、酸化バリウム、酸化鉄、酸化タングステンおよび酸化バナジウムを含有する混合酸化物を、溶融および急冷固化することにより得られる。混合酸化物中の酸化バリウム、酸化鉄、酸化タングステンおよび酸化バナジウムのモル比を、x:y:z:(100−x−y−z)とした場合、x、y、zは、それぞれ、1≦x≦30、1≦y≦20、1≦z≦60を満たす数である。
(1)酸化バナジウム
バナジウムは酸化物系ガラスの主骨格を形成させるための構成元素であり、その酸化数を+2、+3、+4、+5等に適宜変化させることにより、電子がホッピングする確率を高めることができる。酸化バナジウムとしては、一酸化バナジウム(VO)、三酸化二バナジウム(V2O3)、二酸化バナジウム(VO2)、五酸化二バナジウム(V2O5)が含まれ、特に五酸化二バナジウムが好適に用いられる。
酸化バリウムは、2次元構造を有する酸化バナジウムのガラス骨格を3次元化するために添加される。五酸化バナジウムは、VO5ピラミッドを構成単位とする層状の結晶構造を有しており、これに酸化カリウム(K2O)や酸化ナトリウム(Na2O)などのアルカリ酸化物を第2成分として加えてガラス化した場合には、そのガラス骨格が1次元的になる。しかし、五酸化バナジウムに酸化バリウム(BaO)を第2成分として加えることにより、そのガラス骨格を3次元的に形成させることができる。その結果、電子ホッピングの確率が増加し、電気伝導度を向上させることができる。なお、酸化バリウムの原料としては、通常用いられている炭酸バリウム(BaCO3)などの塩を用いることができる。
3価の鉄、すなわちFeIII は3d軌道に5個の電子を有するイオンであり、この電子がガラス骨格の電気伝導性、すなわち3価あるいは4価のバナジウムから5価のバナジウムへの電子のホッピングに寄与している可能性が高い。酸化バリウムと同様に酸化鉄の濃度を変化させることで導電性を調整することができるので、電気伝導度の調整成分として添加される。
酸化鉄としては、ヘマタイト(Fe2O3)の他に、ウスタイト(FeO)やマグネタイト(Fe3O4)などが含まれる。バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス中の酸化鉄の含有量は、混合酸化物全体の1〜20モル%の範囲とすることが好ましく、混合酸化物全体の5〜20モル%の範囲とすることがより好ましい。これは適用条件にもよるが酸化鉄の含有量が1モル%より少ないと、鉄による電子ホッピングの効率が下がる傾向が現れ、逆に20モル%を超えると均質なガラス形成が困難となる等の弊害が現れるからである。
酸化タングステンは、ガラスの耐水性を向上させるための調整成分としてガラスに添加される。また、酸化タングステンは電気伝導性を示すことが知られており、ガラスの耐水性の向上のためリン酸を用いた場合よりも高い電気伝導性を示す。バナジン酸塩ガラスに含まれる酸化バナジウムの一部を酸化タングステンで置換する場合、酸化タングステンのモル分率の増大に伴い、耐水性や化学耐久性は増大するが、ガラスの再加熱による電気伝導度の増大は低下する。したがって、得られるバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスに要求される電気伝導性と耐水性および化学耐久性とのバランスを考慮して、混合酸化物中の酸化タングステンの最適なモル分率を決定する。バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス中の酸化タングステンの含有量は、混合酸化物全体の1〜60モル%の範囲とすることが好ましく、混合酸化物全体の10〜40モル%の範囲とすることがより好ましい。これは適用条件にもよるが酸化タングステンの含有量が10モル%より少ないと、耐水性および化学耐久性が低下する傾向が現れ、逆に40モル%を超えると電気伝導性が低下する等の弊害が現れるからである。
混合酸化物において、各金属酸化物(酸化バリウム、酸化鉄、酸化タングステンおよび酸化バナジウム)の好ましい含有量は上記のとおりであるが、各金属酸化物の含有量比(モル比)も、所定の範囲内であることが好ましい。
℃をいう。)の水中、さらには沸騰水中に浸漬してもバナジウムイオンの溶出やそれに伴う水の着色は観測されない。特に、混合酸化物に含まれる酸化バナジウムのモル数と酸化タングステンのモル数の比が40:30〜20:50の範囲内では、バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスを20%塩酸に72時間浸漬した場合のバナジウムイオンの溶出量を50%以下に低減することができる。
(1)電気炉などの温度を予め目標とする温度に設定しておき、温度が一定となったところで、室温に保存しておいたガラス試料を電気炉等に入れる方法である。この方法の特徴は、加熱時間を比較的正確に制御できるという点である。目標とする時間が経過したら、直ちに電気炉等からガラスを取り出し、白金るつぼ等の容器の外側を氷水等で急冷するか、空気中に放置する。このように急冷することにより、加熱開始からの加熱時間を正確に制御できるので、高い精度でガラスの構造緩和が可能となる。よって、電気伝導度の制御が高精度で可能となり、目的の電気伝導度(導電性)に設定することができる。
(2)ガラスを室温からゆっくり加熱する方法である。これは、電気炉等の昇温速度を一定に(任意に)設定し、目的の温度に到達後、適当な時間加熱し、その後一定速度で徐々に室温、または室温付近まで冷却する方法である。
(1)バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスの製造
混合酸化物に含まれる酸化バナジウム(V2O5)、酸化バリウム(BaO)、酸化鉄(Fe2O3)および酸化タングステン(WO3)のモル数の比が下記の表1に示す8種類の異なる組成(実施例1〜17、比較例1〜4)となるように各金属酸化物を秤量し、めのう乳鉢で粉砕および混合後、得られた混合酸化物をアルミナ製のるつぼに入れた。るつぼに入れた混合酸化物を電気炉中1200℃で90分間加熱し、溶融させた。溶融した混合酸化物をステンレス製金型に流し込み急速冷却処理を行った。450℃に加熱した電気炉中で自然放冷後金型から取り出し、ガラス化していることを確認した。
上記(1)において製造したバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスの一部をめのう乳鉢で粉砕した。得られた粉体30mgを用いてDTA測定を行った。結晶化に伴う吸熱ピークの温度を元にガラス転移温度および結晶化温度を決定し、これらを元に熱処理(アニーリング)温度を決定した。
上記(1)において製造したバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスをルーターで所定の形状に成形後、側面に銀ペーストを塗布し、銀入りスズはんだを用いて銅線をハンダ付けした。これを基板に取り付け、直流四端子法を用いて室温における電気伝導度を測定した。測定はアニーリング前後のサンプルについて行い、アニーリングがバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスの電気伝導性に及ぼす影響についても検討した。測定結果を下記の表2に示す。
以上の結果より、アニーリングにより、バナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスの電気伝導度は、10−1〜10−3S・cm−1程度まで増大可能であることが確認された。
上記(1)において製造したバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラスおよびバナジン酸塩ガラスを10mm×10mm×3mmの直方体状に加工し、サンプル管にとった超純水15mL中に浸漬した。サンプルを浸漬した超純水を室温で120分間撹拌し、超純水中に溶出したバナジウム、タングステンおよび鉄の濃度は、それぞれ原子吸光分析および吸光度分析により、検量線法を用いて定量した。結果は、下記の表3に示すとおりである。
Claims (1)
- モル比がx:y:z:(100−x−y−z)の酸化バリウム、酸化鉄、酸化タングステンおよび酸化バナジウムからなる混合酸化物系であって、x、yおよびzが、それぞれ、10≦x≦30、5≦y≦20、10≦z≦40を満たす数であり、直流四端子法を用いて室温で測定した電気伝導率が10 −5 S・cm −1 以上であることを特徴とするバナジン酸塩−タングステン酸塩ガラス。
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