JP2015046359A - リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、固体電解質およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、固体電解質およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】金属リチウムに対して比較的安定であり、イオン伝導度がより改善されたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物に換算したモル%単位で、原料混合物の各成分の合計含有量を100%としたときに、RO(ただし、Rは、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種を示す。)、SiO、およびAlを合計して90超〜100%含むように原料を調合して原料混合物を得、前記原料混合物を溶融し固化させて被処理体を得、
リチウムイオンを含む溶融塩中で前記被処理体をイオン交換処理して、前記被処理体中のRイオンをリチウムイオンに交換するとともに、イオン交換処理する過程でガラスセラミックスを得るリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、固体電解質およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、自動車、パーソナルコンピュータ、および携帯電話等、様々な分野において小型で高容量の駆動電源として使用されている。
現在、リチウムイオン二次電池の電解質には、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、および炭酸エチルメチルなどの、有機溶媒系の液体電解質が使用されている。しかしながら、有機溶媒系の液体電解質は可燃性である。そのため、液体電解質を使用した現在のリチウムイオン二次電池は、安全上の問題を抱えているおそれがある。また、有機溶媒系の液体電解質は耐用電圧に限界があり、大きな電圧を印加すると、電解質が分解、変質してしまうおそれがある。上述のような問題から、次世代のリチウムイオン二次電池用の電解質として、不燃性で、電圧印加に対して高い安定性を有する固体電解質の適用が期待されている。
リチウムイオン二次電池用途に、セラミックス製の固体電解質およびガラスセラミックス製の固体電解質が提案されている。セラミックス製の固体電解質は、成形性に劣り、薄膜状の固体電解質や大型形状の固体電解質など、容易に製造できないという問題がある。これに対して、ガラスセラミックスの固体電解質は、成形性に優れ、薄膜状の固体電解質や大型形状の固体電解質を提供することが可能である。そのため、ガラスセラミックス製の固体電解質が、リチウムイオン二次電池用途として、有望視されている。
ガラスセラミックス製の固体電解質として、例えば主結晶相がLi1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1である)で構成される材料(特許文献1)、主結晶相がLi(1+X)MgAlSi3(1+x)10+6.5x(X=0.5,1.0)で構成される材料が提案されている(非特許文献1)。
特開2007−66703号公報
Journal of Non−Crystalline Solids, 354 (2008) p.848−p.855
特許文献1に記載のガラスセラミックス製の固体電解質は、チタンおよび/またはゲルマニウムを有する。チタンおよびゲルマニウムのイオンは、複数の価数状態を取り得る。そのため、リチウムイオン二次電池の充放電時に、チタンイオンおよびゲルマニウムイオンの価数状態が変化し、サイクル特性などの電池特性が不安定になるおそれがある。特に、チタンおよびゲルマニウムは、負極に金属リチウムを用いた場合に、還元反応により価数状態が変化しやすく、電位窓が狭くなって不安定になるおそれが高い。上述のような問題があり、サイクル特性などの電池特性の安定性およびイオン伝導度をより向上させたリチウムイオン二次電池用の固体電解質が求められている。
本発明は、上述のような問題を鑑み、金属リチウムに対して比較的安定であり、イオン伝導度がより改善されたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法を提供することを課題とする。また、本発明では、そのような方法により製造されたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含む固体電解質、固体電解質を有するリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
本発明では、酸化物に換算したモル%単位で、原料混合物の各成分の合計含有量を100%としたときに、RO(ただし、Rは、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種を示す。)、SiO、およびAlを合計して90超〜100%含むように原料を調合して原料混合物を得、前記原料混合物を溶融し固化させて被処理体を得、
リチウムイオンを含む溶融塩中で前記被処理体をイオン交換処理して、前記被処理体中のRイオンをリチウムイオンに交換するとともに、イオン交換処理する過程でガラスセラミックスを得るリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法が提供される。
前記原料混合物は、ROを5〜40%含むことが好ましい。前記RはNaであることが好ましい。また、SiOを40〜95%未満含むことが好ましい。また、Alを0超〜30%含むことが好ましい。
前記原料混合物は、1400℃〜1700℃の温度で溶融することが好ましい。前記イオン交換処理は、200℃〜500℃の温度で、前記リチウムイオンを含む溶融塩中に、前記被処理体を24時間〜120時間保持することにより実施されることが好ましい。
また、本発明では、前述のような製造方法により得られるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、前記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含む固体電解質、正極と負極との間に、前記固体電解質を有するリチウムイオン二次電池が提供される。
本発明では、金属リチウムに対して比較的安定であり、イオン伝導度がより改善されたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法を提供することができる。また、本発明では、そのような方法により製造されたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含む固体電解質、固体電解質を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明におけるリチウムイオン二次電池を模式的に示した図である。 例1の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例2の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例3の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例4の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例5の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例8の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。 例9の評価用サンプルの微小部X線回折スペクトルである。
以下、本発明について、より詳しく説明する。なお、本明細書において、特に明記しない限りは、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法およびそれにより得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスにおける各成分の含有量は、酸化物に換算したモル%単位で表わす。これは、酸化物に換算した各成分の合計含有量を100%としたときに、酸化物に換算した各成分の含有量を百分率で表記する際の単位である。
また、本明細書において、イオン伝導度は、室温(20℃〜25℃。以下同じ)での交流インピーダンス測定によって得られた値を意味する。すなわち、イオン伝導度は、両面に電極を形成したサンプルを用いて、交流インピーダンス法による測定により求められる。本発明におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスのイオン伝導度は、測定条件を印加電圧50mV、測定周波数域1Hz〜1MHzとし、交流インピーダンス測定により得られたcole−coleプロットの円弧径から算出する。
(リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法)
本発明のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法は、RO(ただし、Rは、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種を示す。)、SiO、およびAlを合計して90超〜100%含むように原料を調合して原料混合物を得、前記原料混合物を溶融し固化させて被処理体を得、
リチウムイオンを含む溶融塩中で前記被処理体をイオン交換処理して、前記被処理体中のRイオンをリチウムイオンに交換するとともに、イオン交換処理する過程でガラスセラミックスを得る。
原料混合物は、RO、SiO、およびAlの合計含有量が90超%〜100%、好ましくは92%〜100%、より好ましくは95%〜100%となるように、原料を調合する。
O、SiO、およびAlの各成分の含有量は下記の範囲が好ましい。
O:5%〜40%、好ましくは10%〜35%、より好ましくは12%〜33%。さらに好ましくは22%〜28%。
SiO:40%〜95%未満、好ましくは40%〜80%、より好ましくは50%〜80%、さらに好ましくは55%〜65%。
Al:0超%〜30%、好ましくは5%〜30%、より好ましくは10〜30%、さらに好ましくは、13%〜22%。
各成分を上記の範囲で含むように原料を調合することで、原料を調合して得られた原料混合物を溶融し固化させて得た被処理体を、リチウムイオンを含む溶融塩中でイオン交換処理する過程で、イオン交換処理するとともに結晶を析出させることができる。なお、原料混合物には、上記成分の他に、Zr、P、およびBなどが含まれていてもよい。
原料混合物は、5%〜40%のRO、40%〜95%未満のSiO、および0超%〜30%のAlを含むように、原料を調合することが好ましい。原料混合物は、10%〜35%のRO、40%〜80%のSiO、および5%〜30%のAlを含むように、原料を調合することがより好ましい。原料混合物は、12%〜33%のRO、50%〜80%のSiO、および10%〜30%のAlを含むように、原料を調合することがさらに好ましい。原料混合物は、22%〜28%のRO、55%〜65%のSiO、および13%〜22%のAlを含むように、原料を調合することが特に好ましい。
原料は、通常のガラスセラミックスの製造に用いる原料であれば特に限定されない。例えば、原料には、珪砂、炭酸ナトリウム、珪酸ソーダ、リン酸三ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、二ケイ酸ナトリウム・n水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、および硝酸カリウムなどを使用することができる。
原料を調合して原料混合物を得た後、原料混合物を溶融し固化させて被処理体を得る。具体的には、上記の範囲で各成分を含むように原料を調合した原料混合物を、一般的な方法で加熱し溶融して、溶融物を得ればよい。溶融温度は、1400℃〜1700℃が好ましく、1450℃〜1700℃がより好ましく、1500℃〜1700℃がさらに好ましい。
原料混合物を加熱し溶融する際は、例えば電気炉で加熱した後、減圧炉を用いて加熱してもよい。原料混合物の組成によって溶融物に泡が生じやすい場合があるが、減圧炉による加熱を行うことで泡を除去することができ、溶融物に泡が含まれるのを防ぐことができる。泡を除去することにより、製造物(リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス)における組成のばらつきおよび伝導度のばらつきを防ぐことができる。
得られた溶融物は、一般的な方法で冷却して固化させて、被処理体を得ればよい。
また、溶融物は、徐冷して固化させてもよい。得られる被処理体の歪みを除去できる。冷却速度は、例えば、0.2℃/分〜2℃/分が好ましく、0.2℃/分〜1℃/分がより好ましい。また、溶融物は、冷却途中に、一定温度に一定時間保持させて、固化させてもよい。保持させる温度は、例えば400℃〜1000℃が好ましく、500℃〜900℃がより好ましい。保持させる時間は、例えば30分〜4時間が好ましく、1時間〜2時間がより好ましい。特に好ましくは、製造物(原料混合物の組成から製造されうるガラスセラミックス)のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg+20℃で、1時間保持させるとよい。
溶融物は、型内で固化させることにより、成形された被処理体を得てもよい。被処理体は、いかなる形状であってもよく、例えば、ブロック状、板状、およびディスク状等であってもよい。
リチウムイオンを含む溶融塩中で被処理体をイオン交換処理し、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを得る。イオン交換処理の条件は、被処理体において、Rイオンが占める少なくとも一部のサイトに、リチウムイオンを導入することができれば、特に限定されない。
例えば、イオン交換処理は、リチウムイオンを含む溶融塩中に、被処理体を所定時間浸漬することにより行われてもよい。リチウムイオンを含む溶融塩としては、例えば、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、およびこれらの混合塩等を使用してもよい。
イオン交換処理の温度条件は、使用する溶融塩によっても変化するが、例えば、200℃〜500℃、好ましくは200℃〜450℃、より好ましくは230℃〜430℃である。また、イオン交換処理の処理時間は、温度によっても変化するが、例えば、24時間〜120時間、好ましくは30時間〜100時間、より好ましくは40時間〜80時間であってもよい。上述の温度および処理時間とすることで、被処理体の90%以上のRイオンをリチウムイオンに置換することができる。
イオン交換処理により、被処理体中のRイオンの一部または全部がリチウムイオンと置換される。イオン交換されたリチウムイオンは、Rイオンが占有していたサイトに導入されると考えられる。
一般的にリチウムイオンを含むアルカリ珪酸塩ガラスは、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンを含むアルカリ珪酸塩ガラスと比較して結晶化しやすい。本発明では、イオン交換処理時において、同時に結晶を析出させることができる。また、リチウムイオンは、リチウム以外のアルカリ金属イオンに比べてイオン半径が小さい。このため、元来リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンが占有していたサイトに導入されたリチウムイオンは、移動に対して大きな自由度を有することになる。これらの効果により、例えば、本発明では、イオン交換処理前後で、被処理体のイオン伝導度を、約1桁以上、好ましくは2桁以上、より好ましくは3桁以上上昇させることができる。本発明におけるリチウムイオン伝導性固体電解質のイオン伝導度は、好ましくは1×10−6S/cm以上であり、より好ましくは5×10−6S/cm以上であり、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上である。
本発明では、リチウムイオンを含む溶融塩中で被処理体をイオン交換処理する過程で、直接リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスが得られる。すなわち、被処理体中のRイオンをリチウムイオンでイオン交換処理するときに、同時に結晶を析出させるという、2段階のイオン伝導向上効果を1回のプロセスで達成できる。本発明では、従来に比べて、イオン伝導度がより向上したリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを提供することができる。
本発明により得られるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは、X線回折スペクトルが、明瞭な回折ピークを有することが好ましく、半価幅3°以下の回折ピークを有することがより好ましい。また、本発明における製造方法を用いることで、高イオン伝導結晶であるLi−Al−Si系固溶体結晶相(例えば、Li4+xAlSi1−x)を析出させることが可能となる。このようなLi−Al−Si系結晶相は高イオン伝導結晶であるため、イオン伝導度がより向上したリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを提供することができる。
本発明により得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは、リチウムイオン二次電池用の固体電解質に有意に適用できる。本発明による固体電解質は、金属空気電池または全固体電池用の固体電解質に有意に適用できる。
(リチウムイオン二次電池)
上述のとおり、本発明により得られたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは、リチウムイオン二次電池に使用することができる。
図1に、リチウムイオン二次電池の構成の一例を概略的に示す。リチウムイオン二次電池100は、カソード電極110、アノード電極150、および両者の間の電解質120を有する。
カソード電極110には、例えば、LiCoO、LiMn、またはLiFePO等が使用される。アノード電極150には、例えば、金属リチウム、グラファイトまたはLiTi12等が使用される。ただし、これは、一例であって、両電極に、その他の電極材料を使用しても良いことは、当業者には明らかである。
ここで、電解質120には、本発明におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含む固体電解質を使用すればよい。電解質120として、本発明におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを使用した場合、従来の有機溶媒系の液体電解質を使用した場合に比べて、リチウムイオン二次電池に高い安全性を提供できる。また、本発明におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは、従来の有機溶媒系の液体電解質に比べて、電圧印加に対して高い安定性を有する。このため、リチウムイオン二次電池に大きな電圧を印加した際に、電解質が分解または変質してしまうという従来の問題が軽減される。
本発明におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは、高いリチウムイオン伝導度を有する。したがって、本発明のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスで構成された電解質120を有するリチウムイオン二次電池100は、従来の固体電解質を使用したリチウムイオン二次電池に比べて、良好な特性を発揮することができる。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。例1〜6は実施例であり、例7〜9は比較例である。表1には、原料混合物の組成(モル%単位)、イオン交換処理後に得られた評価用サンプルのイオン伝導度を示す。
(例1)
(評価用サンプルの作製)
以下の方法で、評価用サンプルを作製し、その特性を評価した。評価用サンプルは、以下の手順で作製した。
原料混合物が、表1に示す組成(表1では原料混合物組成(モル%)と記す)で各成分を含むように、各原料粉を秤量、混合した。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1700℃で3時間加熱した後、さらに1683℃で12時間保持を行うことで、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、841℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のサンプルを作製した。以下、例1〜例7では、原料混合物を加熱し溶融して溶融物を得、該溶融物を冷却し固化させて得られたサンプルを、イオン交換処理前サンプルという。
イオン交換処理前サンプルについて、微小部X線結晶回折測定を行った。得られたX線回折スペクトルに明瞭な回折ピークが認められなかったことから、イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、後述の方法でイオン伝導度を測定した結果、イオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
次に、イオン交換処理前サンプルを、厚さが0.6mmとなるまで研磨した。
次に、研磨後のイオン交換処理前サンプルを用いて、イオン交換処理を行った。イオン交換処理は、イオン交換処理前サンプルを、400℃の硝酸リチウム溶融塩中に浸漬することにより実施した。処理期間は、72時間とした。
これにより、評価用サンプルが得られた。以下、例1〜例7では、イオン交換処理前サンプルに対してイオン交換処理を行った後のサンプルを、評価用サンプルという。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった(図2参照)。本評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造はLi−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で5.5質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.4質量%あった。例1において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で6.1質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、ナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、以下の方法でイオン伝導度を測定した。なお、イオン交換処理前サンプルも同じ方法でイオン伝導度を測定した。
まず、評価用サンプルの両面に、蒸着法により白金膜(厚さ約200nm)を形成した。白金膜を電極として、両電極間に50mVの測定電圧を印加し、交流インピーダンス法により、インピーダンス測定を行った。測定には、FRA(周波数応答アナライザ)を備えるソーラトロン1260(Solartron社製)を使用し、測定周波数は、10Hz〜10Hzとした。Cole−Coleプロットで求められる円弧径より、評価用サンプルのイオン伝導度を算定した。測定の結果、イオン伝導度は、2.0×10−6S/cmとなった。
Figure 2015046359
(例2)
(評価用サンプルの作製)
例2では、原料混合物が、上記表1における例2の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1663℃で16時間加熱し、さらに泡を除去する目的で減圧炉を用いて1575℃で4時間保持することで原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、827℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
イオン交換処理前サンプルについて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められなかったことから、本イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、イオン交換処理前サンプルのイオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった(図3参照)。本評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造は、Li−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で7.2質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.6質量%であった。例2において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で8.0質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、ナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、2.9×10−5S/cmとなった。
(例3)
(評価用サンプルの作製)
例3では、原料混合物が、上記表1における例3の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1650℃で3時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、840℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
イオン交換処理前サンプルについて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められなかったことから、本イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、イオン交換処理前サンプルのイオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった(図4参照)。評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造は、Li−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で8.8質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.5質量%であった。例3において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で9.6質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、ナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、7.5×10−5S/cmとなった。
(例4)
例4では、原料混合物が、上記表1における例4の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1633℃で17時間加熱した後、泡を除去する目的で減圧炉を用いて1570℃1.5時間保持することで原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、821℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
イオン交換処理前サンプルについて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められなかったことから、本イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、イオン交換処理前サンプルのイオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった(図5参照)。評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造は、Li−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で11.2質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.5質量%であった。例4において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で11.9質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、ナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、1.0×10−6S/cmとなった。
(例5)
(評価用サンプルの作製)
例5では、原料混合物が、上記表1における例5の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1550℃で2時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、628℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
イオン交換処理前サンプルについて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められなかったことから、本イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、イオン交換処理前サンプルのイオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった(図6参照)。評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造は、Li−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で12.2質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.4質量%であった。例5において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で12.7質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、ナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、7.5×10−5S/cmとなった。
(例6)
例6では、原料混合物が、上記表1における例6の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1550℃で2時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、553℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
イオン交換処理前サンプルについて微小部X線結晶回折測定を行った。明瞭な回折ピークが認められなかったことから、本イオン交換処理前サンプルには、結晶が含まれていないことがわかった。また、イオン交換処理前サンプルのイオン伝導度は、1.0×10−8S/cm以下であった。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められたことから、結晶が含まれていることがわかった。評価用サンプルは、ガラスセラミックスであることが確認された。本評価用サンプルに含まれる結晶の結晶構造は、Li−Al−Si系固溶体結晶であると推定される。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で15.3質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.8質量%であった。例6において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で16.2質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、サンプル中のナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、4.4×10−6S/cmとなった。
(例7)
例7では、原料混合物が、下記表2における例7の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1550℃で2時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、501℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のイオン交換処理前サンプルを作製した。その他の作製条件は、例1の場合と同様にした。
ICP分析法により、評価用サンプルを分析したところ、含有リチウム量は、LiO換算で10.6質量%であり、含有ナトリウム量は、NaO換算で0.5質量%であった。例7において、ナトリウムが、イオン交換処理によって100%リチウムに置換されたと仮定すると、理論上、含有リチウム量は、LiO換算で11.1質量%となる。今回の分析結果は、理論値と極めて接近しており、イオン交換処理によって、サンプル中のナトリウムイオンのほとんどがリチウムイオンに置換されたことが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、9.7×10−8S/cmとなった。
Figure 2015046359
(例8)
例8では、原料混合物が、上記表2における例8の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1600℃で2時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、640℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のサンプルを作製した。
次に、ブロック状サンプルを、厚さが0.6mmとなるまで研磨した。これにより、評価用サンプルが得られた。例8は、例1〜例7と異なり、原料混合物の組成はNaOではなくLiOであり、イオン交換処理を行っていない。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められなかったことから、評価用サンプルに結晶が含まれていないことがわかった(図7参照)。本評価用サンプルはガラスであることが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、1.5×10−10S/cmとなった。
(例9)
例9では、原料混合物が、上記表2における例9の「原料混合物組成」の欄に示す組成で各成分を含むように、原料粉を秤量、混合して原料混合物を得た。次に、原料混合物を、白金坩堝に入れ、1600℃で2時間加熱し、原料混合物の溶融物を得た。次に、該溶融物を用いて、カーボン板上に流しだしを行った。サンプル中の歪みを除去するため、640℃で1時間加熱した後、12時間で室温まで冷却し、ブロック状のサンプルを作製した。
次に、ブロック状のサンプルを400℃72時間で熱処理を行った。次に、ブロック状サンプルを、厚さが0.6mmとなるまで研磨した。これにより、評価用サンプルが得られた。例9は、例8と同じく、イオン交換処理を行っていない。
評価用サンプルを用いて微小部X線結晶回折を行ったところ、明瞭な回折ピークが認められなかったことから、評価用サンプルに結晶が含まれていないことがわかった(図8参照)。評価用サンプルはガラスであることが確認された。
評価用サンプルを用いて、前述の方法でイオン伝導度を測定した。測定の結果、イオン伝導度は、2.8×10−10S/cmとなった。
100 リチウムイオン二次電池
110 カソード電極
150 アノード電極
120 電解質

Claims (10)

  1. 酸化物に換算したモル%単位で、原料混合物の各成分の合計含有量を100%としたときに、RO(ただし、Rは、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種を示す。)、SiO、およびAlを合計して90超〜100%含むように原料を調合して原料混合物を得、前記原料混合物を溶融し固化させて被処理体を得、
    リチウムイオンを含む溶融塩中で前記被処理体をイオン交換処理して、前記被処理体中のRイオンをリチウムイオンに交換するとともに、イオン交換処理する過程でガラスセラミックスを得る
    ことを特徴とするリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
  2. 前記原料混合物は、ROを5〜40%含む請求項1に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
  3. 前記RはNaである、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記原料混合物は、SiOを40〜95%未満含む請求項1〜3のいずれか一に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
  5. 前記原料混合物は、Alを0超〜30%含む請求項1〜4のいずれか一に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
  6. 前記原料混合物を、1400℃〜1700℃の温度で溶融する請求項1〜5のいずれか一に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
  7. 前記イオン交換処理は、200℃〜500℃の温度で、前記リチウムイオンを含む溶融塩中に、前記被処理体を24時間〜120時間保持することにより実施される、請求項1〜6のいずれか一に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一に記載の製造方法により得られるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス。
  9. 請求項8に記載のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含む固体電解質。
  10. 正極と負極との間に、請求項9に記載の固体電解質を有するリチウムイオン二次電池。
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CN111375591A (zh) * 2018-12-31 2020-07-07 罗伯特·博世有限公司 锂导电陶瓷氧化物去污方法

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