JP4061792B2 - 無鉛低融点ガラスおよびガラスフリット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)等のフラットディスプレイパネルにおける封着、被覆、隔壁形成に好適な無鉛低融点ガラスおよびガラスフリットに関する。
【0002】
【従来の技術】
PDP、VFDの封着用、被覆用、または隔壁形成用のガラスフリットに用いられるガラス粉末のガラスとして、電気絶縁性を低下させるおそれのあるアルカリ金属酸化物を含有することなく、または含有したとしても低含有量で、低軟化点を実現できるリン酸スズ亜鉛系ガラスが注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来知られているリン酸スズ亜鉛系ガラスは焼成時に結晶化しやすく、2回以上焼成・流動させて使う場合、2回目以降の焼成において流動しにくい、または繰り返し焼成によって寸法安定性が低下する、等の問題があった。
本発明は、以上の課題を解決し、2回以上焼成を行う用途にも適用できる無鉛低融点ガラスおよびガラスフリットの提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記酸化物基準のモル%表示で、P2O5:15〜50、SnO:2〜35、ZnO:5〜45、B2O3:0.1〜30、MgO:0〜35、CaO:0〜35、SrO:0〜35、BaO:0〜35、Al2O3:0〜10、In2O3:0〜10(0.1以上を除く)、WO3:0〜10、Li2O:0〜1、Na2O:0〜1、K2O:0〜1、から実質的になり、MgO+CaO+SrO+BaOが0〜35モル%であり、Al2O3+In2O3+WO3が0〜10モル%であり、Li2O+Na2O+K2Oが0〜1モル%であり、かつ、SnOのZnOに対するモル比が1未満である無鉛低融点ガラス、および、
低膨張セラミックスフィラーおよび耐熱顔料の少なくともいずれか一方と、前記無鉛低融点ガラスの粉末を含有するガラスフリットを提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の無鉛低融点ガラス(以下単に本発明のガラスという。)を、封着、被覆、または隔壁形成に用いるときは、粉末化して使用される。この粉末化されたガラスは通常、必要に応じて低膨張セラミックスフィラー、耐熱顔料、等と混合され、次にビヒクルと混練してペースト化される。このガラスペーストは下地のガラスの所定部位に塗布され、焼成される。ここでいう下地のガラスは、ガラスの上に透明電導膜等が被覆されているものも含む。
【0006】
本発明のガラスの軟化点(Ts)は580℃以下であることが好ましい。580℃超では、PDP、VFD、等の封着、被覆、または隔壁形成に用いることが困難になるおそれがある。より好ましくは560℃以下、特に好ましくは550℃以下である。また、Tsは500℃以上であることが好ましい。500℃未満では、PDP、VFD、等における被覆または隔壁形成に用いることが困難になるおそれがある。より好ましくは510℃以上、特に好ましくは520℃以上、最も好ましくは530℃以上である。
【0007】
本発明のガラスの結晶化温度(Tc)はTsよりも40℃以上高いことが好ましい。TcとTsの差(Tc−Ts)が40℃未満では焼成時に結晶化しやすくなるおそれがある。ここで、Tcは示差熱分析(DTA)によって得られる結晶化ピーク温度であり、結晶化ピークが認められない場合は、Tc=∞とする。(Tc−Ts)は60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが特に好ましく、80℃以上であることが最も好ましい。
【0008】
本発明のガラスの50〜250℃における線膨張係数は120×10-7/℃以下であることが好ましい。120×10-7/℃超では、後述の本発明のガラスフリットの焼成物の前記線膨張係数が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは110×10-7/℃以下、特に好ましくは100×10-7/℃以下である。また、前記線膨張係数は60×10-7/℃以上であることが好ましい。以下、50〜250℃における線膨張係数を単に膨張係数という。
【0009】
次に、本発明のガラスの組成について、モル%を単に%と記して以下に説明する。
P2O5はネットワークフォーマであり、必須である。15%未満ではガラス化が困難になる。好ましくは25%以上、より好ましくは27%以上、特に好ましくは28%以上である。50%超では化学的耐久性が低下する。好ましくは40%以下、より好ましくは37%以下である。
【0010】
SnOは軟化点を下げ流動性を増加させる成分であり、必須である。2%未満では軟化点が高くなりすぎる。好ましくは3%以上、より好ましくは7%以上、特に好ましくは15%以上である。35%超ではガラスの溶解性が低下し、溶融ガラス表面に被膜状の異物層が形成される。好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
【0011】
ZnOは、ガラスを安定化させる効果、化学的耐久性を向上させる効果、膨張係数を低下させる効果、または、軟化点を下げる効果を有し、必須である。5%未満では前記効果が小さい。好ましくは20%以上、より好ましくは24%以上、特に好ましくは25%以上である。45%超では焼成時に結晶化しやすくなる。好ましくは35%以下、より好ましくは32%未満である。
【0012】
SnOのZnOに対するモル比、すなわちSnOの含有量をZnOの含有量で除した値は1未満でなければならない。このモル比が1以上では、ガラスの溶解性が低下し、溶融ガラス表面に被膜状の異物層が形成される。好ましくは0.97以下、より好ましくは0.93以下、特に好ましくは0.90以下である。
【0013】
B2O3はガラスを安定化し、また流動性を増加させる効果を有し、必須である。0.1%未満では前記効果が小さくなりすぎる。好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。30%超では化学的耐久性が低下する、またはガラスが不安定になる。好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
【0014】
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、ガラスを安定化するために、または焼成時の結晶化を抑制するために、それぞれ35%まで含有してもよい。35%超では軟化点が高くなりすぎるおそれがある。より好ましくは19%以下、特に好ましくは15%以下である。
【0015】
MgO、CaO、SrOおよびBaOの内の1種以上を含有する場合、その含有量の合計は35%以下であることが好ましい。35%超では軟化点が高くなりすぎるおそれがある。より好ましくは19%以下、特に好ましくは15%以下である。また、前記含有量の合計は2%以上であることが好ましい。2%未満では、ガラスが不安定になるおそれがある、または焼成時に結晶が析出しやすくなるおそれがある。より好ましくは2.5%以上、特に好ましくは4%以上、最も好ましくは8%以上である。
【0016】
Al2O3、In2O3およびWO3はいずれも必須ではないが、化学的耐久性を高くするために、または焼成時の結晶化を抑制するために、それぞれ10%まで含有してもよい。10%超では軟化点が高くなりすぎるおそれがある。より好ましくは5%以下、特に好ましくは4%以下である。
【0017】
Al2O3、In2O3およびWO3の内の1種以上を含有する場合、その含有量の合計は0.5〜10%の範囲にあることが好ましい。10%超では軟化点が高くなりすぎるおそれがある。より好ましくは7%以下、特に好ましくは5%以下である。
【0018】
Li2O、Na2OおよびK2Oはいずれも必須ではないが、軟化点を低下させるためにそれぞれ1%まで含有してもよい。1%超では電気絶縁性が低下するおそれがある、化学的耐久性が低下するおそれがある、または膨張係数が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは0.5%以下である。Li2O、Na2OおよびK2Oのいずれも実質的に含有しないこと、すなわち不純物レベル以下であることが最も好ましい。
【0019】
Li2O、Na2OおよびK2Oの含有量の合計は1%以下であることが好ましい。1%超では電気絶縁性が低下するおそれがある、化学的耐久性が低下するおそれがある、または膨張係数が大きくなりすぎるおそれがある。より好ましくは0.5%以下である。
【0020】
本発明のガラスは実質的に上記成分からなるが、これ以外の成分を合計で5モル%まで含有してもよい。このような成分として、La2O3、CeO2、等の希土類酸化物、SiO2、TiO2、V2O5、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、CuO、Y2O3、ZrO2、MoO3、Rh2O3、PdO、Ag2O、TeO2、Bi2O3が例示される。なお、PbOおよびCdOについてはいずれも実質的に含有しない、すなわち不純物レベル以下である。
【0021】
また、F、Cl、等のハロゲン元素も実質的に含有しないことが好ましい。ハロゲン元素は焼成時にガス化し、PDP、VFD、等における蛍光体と反応して蛍光体を劣化させたり、また、VFDのフィラメントに付着してエミッション低下を起したりするおそれがあるからである。
【0022】
本発明のガラスフリットは本発明のガラスの粉末を含有し、この他に、低膨張セラミックスフィラー、耐熱顔料の内の少なくとも一方を含有する。
ここでいう低膨張セラミックスフィラーは、膨張係数が70×10-7/℃以下であるセラミックスフィラーであり、アルミナ、ムライト、ジルコン、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、β−スポデュメン、α−石英、β−石英固溶体およびβ−ユークリプタイトから選ばれる1種以上の粉末であることが、取り扱いやすさまたは入手しやすさの点から好ましい。
また、耐熱顔料として、たとえばチタニア等の白色顔料、Fe−Mn複酸化物系、Fe−Co−Cr複酸化物系、Fe−Mn−Al複酸化物系等の黒色顔料が挙げられる。
【0023】
本発明のガラスフリットを焼成して得られる焼成物の膨張係数は60×10-7〜90×10-7/℃の範囲にあることが好ましい。膨張係数がこの範囲外では焼成物と下地のガラスとの膨張マッチングが困難になるおそれがある。
【0024】
次に本発明のガラスフリットの組成について説明する。
本発明のガラスの粉末は必須である。その含有量は50〜99.9体積%であることが好ましい。50体積%未満ではガラスフリットの焼成時の流動性が小さくなりすぎるおそれがある。より好ましくは55体積%以上、特に好ましくは60体積%以上である。また、その含有量が99.9体積%超では、低膨張セラミックスフィラーまたは耐熱顔料の含有量が小さくなりすぎる。より好ましくは99体積%以下、特に好ましくは98体積%以下である。
【0025】
低膨張セラミックスフィラーは、膨張係数を小さくするために50体積%まで含有してもよい。50体積%超では焼成時の流動性が小さくなりすぎるおそれがある。より好ましくは45体積%以下、特に好ましくは40体積%以下である。また、低膨張セラミックスフィラーを含有する場合はその含有量は1体積%以上であることがより好ましく、2体積%以上であることが特に好ましい。
耐熱顔料は、必要に応じて40体積%まで含有してもよい。40体積%超では焼成時の流動性が小さくなりすぎるおそれがある。
【0026】
本発明のガラスフリットは低膨張セラミックスフィラー、耐熱顔料の内の少なくともいずれか一方を含有しなければならないが、それらの含有量の合計は0.1〜50体積%であることが好ましい。より好ましくは1〜45体積%、特に好ましくは2〜40体積%である。
【0027】
本発明のガラスフリットは、通常はビヒクルと混合してガラスペーストとされる。ビヒクルとの混合は、乳鉢、三本ロール、等を用いて行われる。このガラスペーストをスクリーン印刷等の方法により下地のガラス、たとえばガラス基板またはガラス基板上に形成された薄膜の所定部位に塗布し、たとえば600℃以下で焼成し、封着、被覆、隔壁形成、等を行う。
前記ビヒクルとしては、エチルセルロース、ニトロセルロース、等の樹脂を、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、酢酸イソペンチル、等の溶剤に溶解したものが通常用いられる。
【0028】
【実施例】
表のP2O5〜WO3の欄にモル%表示で示した組成となるように原料を調合、混合して蓋付きの石英ルツボに入れ、1100℃に加熱し30分間溶融した。次いで、溶融ガラスをステンレス製ローラに流し込んでフレーク化した。得られたフレーク状のガラスをアルミナ製ボールミルで105分間粉砕してガラス粉末とした。
【0029】
得られたガラス粉末について、ガラス転移点Tg(単位:℃)、軟化点Ts(単位:℃)、結晶化ピーク温度Tc(単位:℃)、膨張係数α(単位:10-7/℃)、溶出量Qd(%)、フローボタン径D(単位:mm)、フローボタン外観、を測定・評価した。その方法を以下に、結果を表に示す。例1、3〜5は560℃での焼成に好適な実施例、例6、7は580℃での焼成に好適な実施例、例2は参考例、例8は比較例である。
【0030】
ガラス転移点、軟化点、結晶化ピーク温度:平均粒径が10〜20μmのガラス粉末を試料として示差熱分析により昇温速度10℃/分で室温から800℃までの範囲で測定した。なお、アルミナ粉末を標準物質とした。560℃で焼成する場合は、軟化点が560℃以下かつ結晶化ピーク温度が620℃以上であることが好ましい。580℃で焼成する場合は、軟化点が580℃以下かつ結晶化ピーク温度が650℃以上であることが好ましい。
【0031】
膨張係数:前記溶融ガラスをステンレス製板の上に流し出し、ガラス転移点近傍で徐冷した。徐冷したガラスを直径2mm、長さ20mmの棒状に加工したものを試料とし、石英ガラスを標準試料として、示差熱膨張計により50〜250℃の範囲における平均線膨張係数を測定した。
【0032】
溶出量:膨張係数測定用試料と同じ試料を80℃の水に24時間浸漬し、浸漬前後の試料重量から重量減少率を算出し、%表示とした。この溶出量は化学的耐久性の指標であり、0.1%以下であることが好ましく、0.02%以下であることがより好ましく、0.01%未満であることが特に好ましい。
【0033】
フローボタン径:ガラス粉末3.5gを直径12.7mmの円柱状に加圧成形したものを試料とした。この試料を、例1〜5および例8については560℃に10分間、例6、7については580℃に10分間、それぞれ保持した。この加熱処理後の試料の直径を測定した。この直径は13mm以上であることが好ましく、14mm以上であることがより好ましい。
【0034】
フローボタン外観:フローボタン径の測定によって得られた前記加熱処理後の試料の外観を観察した。光沢があることが好ましい。光沢があるものを○、光沢がないものを×、でそれぞれ示した。なお、例8のガラスの粉末は前記加熱処理によっては充分焼結しなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明のガラスを用いることにより、PDP、VFD、等における封着、被覆、隔壁形成、等に使用できる焼成物が得られる。また、電気絶縁性にも優れているので電気的な問題がおこりにくい。
Claims (8)
- 下記酸化物基準のモル%表示で、
P2O5 15〜50、
SnO 2〜35、
ZnO 5〜45、
B2O3 0.1〜30、
MgO 0〜35、
CaO 0〜35、
SrO 0〜35、
BaO 0〜35、
Al2O3 0〜10、
In2O3 0〜10(0.1以上を除く)、
WO3 0〜10、
Li2O 0〜1、
Na2O 0〜1、
K2O 0〜1、
を含み、MgO+CaO+SrO+BaOが0〜35モル%であり、Al2O3+In2O3+WO3が0〜10モル%であり、Li2O+Na2O+K2Oが0〜1モル%であり、かつ、SnOのZnOに対するモル比が1未満である無鉛低融点ガラス。 - Al2O3を含有し、その含有量が5モル%以下である請求項1に記載の無鉛低融点ガラス。
- MgO+CaO+SrO+BaOが4モル%以上である請求項1または2に記載の無鉛低融点ガラス。
- 結晶化温度が軟化点よりも40℃以上高い請求項1、2または3に記載の無鉛低融点ガラス。
- 50〜250℃における線膨張係数が60×10-7〜100×10-7/℃である請求項1〜4のいずれかに記載の無鉛低融点ガラス。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の無鉛低融点ガラスからなる封着用無鉛低融点ガラス。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の無鉛低融点ガラスからなる被覆用無鉛低融点ガラス。
- 低膨張セラミックスフィラーおよび耐熱顔料の少なくともいずれか一方と、請求項1〜5のいずれかに記載の無鉛低融点ガラスの粉末を含有するガラスフリット。
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