JP4055943B2 - 圧電トランス及びその圧電トランスを有するストロボ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば各種カメラに内蔵または外付けして好適なストロボ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、銀塩写真を撮影するカメラ、或いは撮像素子を用いて画像を撮像するデジタルカメラには、撮影時に被写体を瞬間的に照明する所謂ストロボ装置が普及している。
【0003】
このようなストロボ装置の一例として、本願出願人は、先行する特願2000−395929号及びその国内優先権主張を伴う特願2001−160983号(尚、本願出願時には未公開である)において、シンプルな回路構成で、省スペース性に優れるストロボ装置を実現すべく、図6に示すストロボ装置を提案している。
【0004】
即ち、図6に示すストロボ装置は、大別して、閃光用の放電管(例えばキセノン放電管)4、放電管4を発光させる電気エネルギを蓄える放電コンデンサ3、放電コンデンサ3に電気エネルギを充電する充電回路1、並びに放電管4の放電を促す高電圧信号を発生させるトリガ回路2により構成されている。
【0005】
係る回路は、充電回路1及びトリガ回路2の昇圧手段として共用されるところの、1つの圧電トランス13を含む昇圧回路(11,12,13)を備え、その圧電トランス13の出力と放電コンデンサ3とを接続するラインには、圧電トランス13の出力電圧を、放電コンデンサ3または放電管4に印加すべく、スイッチ(またはスイッチング素子)14が直列に設けられており、このスイッチ14を適宜オン・オフ操作することにより、放電コンデンサ3の充電動作と、放電管4のトリガ動作とを実現する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の回路構成によれば、1つの昇圧回路だけで充電機能とトリガ機能を両立することができ、シンプルな回路構成で、省スペース性に優れるストロボ装置を実現することができる。
【0007】
但し、上記の回路構成において、スイッチ14には、その切り替え動作に応じて、圧電トランス13から出力される交流高電圧(数kV程度)が印加されるため、その交流高電圧に耐え得る高耐圧のスイッチング素子を採用しなければならない。
【0008】
しかしながら、スイッチ14の如く圧電トランスの出力電圧をオン・オフすべく本願出願時点で採用可能な高耐圧のスイッチング素子は、高価であり、且つ外形サイズが比較的大きいため、ストロボ装置の全体形状の小型化を阻む要因となり、ストロボ装置の更なる小型化の要求に応えるためには、図6に示す回路構成では十分とは言えない。
【0009】
ところで、国際公開番号(再公表特許)WO97/29521号公報には、材料固有の振動レベル限界よりも低い振動速度で、従来の圧電トランスより小型でありながら、従来のそれと同程度の出力を得ることを目的として、1波長共振モードにて駆動される複数種類の圧電トランスが提案されている。
【0010】
図7は、国際公開番号WO97/29521号公報において提案されている圧電トランスを示す斜視図(同公報の図6に相当)であり、矢線は、分極方向を表わす。
【0011】
係る公報において、圧電トランス121には、単板型の圧電素子である矩形板123の長手方向の1/2を占める1次側領域に、入力電極としての表面電極124,125が形成され、2次側領域には、その端部から矩形板123の長手方向に1/4の位置に、出力電極としての帯状電極126,127が形成されると共に、その2次側領域の端面には、出力用接地(アース)電極としての端面電極132が形成されている。
【0012】
また、同公報において、図7に示す構造を有する圧電トランス121は、その駆動に先立って、表面電極124,125の何れか一方と、端面電極132とがアースされ、表面電極124,125間に対して、1波長が矩形板123の長さに相当する周波数の交流電圧が印加されることにより、1波長共振モード(λモード)にて駆動される。
【0013】
そして、1波長共振モードにて駆動された圧電トランス121では、帯状電極126,127に出力電圧が現れ、この出力電圧は、帯状電極126,127の少なくとも一方の電極と、アースした側の表面電極124または125との間から、或いは、帯状電極126,127の少なくとも一方の電極と、アースされている端面電極132との間から取り出される。係る圧電トランス121の使用時の接続構成は、同公報にも記載されているように、上記の目的の通り、従来より振動速度及び発熱が小さく、高効率とするために採用される。
【0014】
本発明は、図6を参照して上述した課題を鑑みてなされたものであり、スイッチ(スイッチング素子)を用いること無くコンデンサへの充電機能と、放電管のトリガ機能とを切り替えると共に、充電回路とトリガ回路とで共通の昇圧手段として共用可能な圧電トランス及びその圧電トランスを備えるストロボ装置の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係る圧電トランスは、以下の構成を特徴とする。
【0016】
即ち、長手方向の片側が1次側領域、他方が2次側領域をなす矩形状の外形形状を有し、その2次側領域の端部(当該2次側領域の端面または端面近傍を含む)に形成された電極、並びにその端部と該1次側領域との間に形成された中間電極の、少なくとも2種類の出力電極が形成された圧電トランスであって、
前記2種類の出力電極(22,23)において、第1共振モードにて駆動されているときには、第1の出力電圧を第1出力電極から取り出し可能である一方で、その第1共振モードとは異なる第2共振モードにて駆動されているときには、該第1の出力電圧とは大きさが異なる第2の出力電圧を第2出力電極から取り出し可能であることを特徴とする。
【0017】
好適な実施形態において、前記圧電トランスの2次側領域において、前記1次側領域と前記中間電極間の領域における分極方向と、前記中間電極と前記2次側領域の端部間の領域における分極方向とは、互いに逆方向に分極を施すと良い。
【0018】
尚、上記構造の圧電トランスにおいて、好ましくは、昇圧比を高めるべく、前記圧電トランスの1次側領域は、複数の内部電極が一層おきに導体によって接続された積層構造をなすと良い。
【0019】
そして、上記の同目的を達成するため、本発明に係るストロボ装置は、閃光用の放電管(4)と、該放電管を発光させる電気エネルギを蓄えるコンデンサ(3)と、該コンデンサに電気エネルギを充電する充電回路(1A)と、該放電管の放電を促す高電圧信号を発生させるトリガ回路(2A)と、前記充電回路及び前記トリガ回路の昇圧手段として共用されるところの、1つの圧電トランスを含む昇圧回路とを備えるストロボ装置であって、
前記圧電トランスとして、上述した構造を有する圧電トランス(13A)を備えており、
前記昇圧回路において、前記第1または第2共振モードにて前記圧電トランスを駆動すると共に、前記2種類の出力電極からそれぞれ出力電圧を取り出すことにより、前記昇圧回路を、前記充電回路用または前記トリガ回路用に切り替え可能であることを特徴とする。
【0020】
また、好ましくは前記昇圧回路において、前記圧電トランスが前記第1共振モード(例えば5/2波長モード)にて駆動されているときには、前記2種類の出力電極のうち、前記第1出力電極から取り出された前記第1の出力電圧によって前記コンデンサが充電される一方で、前記第1共振モードから前記第2共振モードに駆動状態が切り替えられるのに応じて、前記第2共振モード(例えば1/2波長モードまたは1波長モード)にて前記圧電トランスが駆動されることにより、前記第2出力電極から取り出された前記第2の出力電圧によって前記放電管にトリガが駆けられると良い。
【0021】
好適な実施形態において、前記ストロボ装置は、カメラに内蔵または外付けされるカメラ用のストロボ装置であって、前記昇圧回路において、前記第1及び第2共振モードは、該カメラのシャッター操作に応じて切り替えられると良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る圧電トランス及びその圧電トランスを有するストロボ装置の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
<圧電トランス>
図1は、本実施形態に係る圧電トランスを示す図であり、図1(a)は、その圧電トランスの斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す圧電トランスを手前から見た正面図である。また、図1において、矢線は、分極方向を表わす。
【0024】
同図に示す圧電トランス13Aは、一例として、長手方向の長さLが30mmの矩形形状であって、その左側の1次側領域に、入力電極21A,21Bが形成されており、その位置において、昇圧用のトランスとしての1次側領域をなす。
【0025】
本実施形態において、圧電トランス13Aは、外形形状を構成する6つの面のうち、圧電トランス13Aの長手方向の1つの面(端面)には、出力電極23が形成されており、短手方向には、一例として、出力電極23から長手方向にL/4の位置において、相対する2組の面(側面)を取り巻く出力電極22が形成されている。
【0026】
このような外形形状を有する圧電トランス13Aにおいて、その1次側領域は、入力電極21Aから入力電極21Bに向かって分極されている。また、圧電トランス13Aの2次側領域は、図1に示すように、出力電極23から出力電極22に向かって分極されており、且つ入力電極21A,21Bから出力電極22に向かって分極されている。
【0027】
但し、2次側領域の内部の分極方向は、出力電極22から出力電極23に向かって分極すると共に、出力電極22から入力電極21A,21Bに向かって分極することにより、図1に示す分極方向とは逆方向としても良く、このことは、以下に説明する各変形例における圧電トランスにおいても同様である。
【0028】
[表1]は、圧電トランス13Aの2種類の出力電極22,23から取り出し可能な出力電圧と、共振モードとの関係を示す一覧表であり、λ/2モード、λモード、3λ/2モードにてそれぞれ駆動した場合に取り出し可能な出力電圧を表わす(但し、λは波長を表わす)。
【0029】
【表1】
Figure 0004055943
【0030】
[表1]に示すように、駆動周波数fdが54KHzであるλ/2モードにて圧電トランス13Aが駆動された場合、端面に位置する出力電極23から取り出し可能な出力電圧V1は1.2kVであるのに対して、出力電極22から取り出し可能な出力電圧V2は2.9kVである。
【0031】
また、駆動周波数fdが108KHzであるλモードにて圧電トランス13Aが駆動された場合、端面に位置する出力電極23から取り出し可能な出力電圧V1は0.1kV以下であるのに対して、出力電極22から取り出し可能な出力電圧V2は2.1kVである。
【0032】
そして、駆動周波数fdが162KHzである3λ/2モードにて圧電トランス13Aが駆動された場合、端面に位置する出力電極23から取り出し可能な出力電圧V1は1.4kVであるのに対して、出力電極22から取り出し可能な出力電圧V2は0.1kV以下である。
【0033】
このような圧電トランス13Aの動作特性のうち、「第1共振モード」をλ/2モード、「第2共振モード」をλモードとした組み合わせ、或いは、「第1共振モード」を3λ/2モード、「第2共振モード」をλモードとした組み合わせにそれぞれ着目して、その動作特性を客観的に表わすと、「第1共振モード」にて駆動されているときには、第1の出力電圧を第1出力電極から取り出し可能である一方で、その第1共振モードとは異なる「第2共振モード」にて駆動されているときには、該第1の出力電圧とは大きさが異なる第2の出力電圧を第2出力電極から取り出し可能であると言える。
【0034】
好適な実施形態において、圧電トランス13Aの1次側領域は、昇圧比を高めるべく、複数の内部電極が、当該1次側領域の内部または外部に形成された層間接続用の導体によって、一層おきに接続された積層構造をなすと良い。また、係る層間接続用の導体が当該1次側領域の外部に形成された場合には、図1に示すような位置に入力電極21A,21Bを設けることは必ずしも必要ではなく、その層間接続用の導体自体を入力電極として利用しても良い。
【0035】
また、本実施形態では、出力電極22を短手方向の2組の面(側面)を取り巻くように形成した例を説明したが、この構造に限られるものではなく、出力電極23と1次側領域との間に出力電極22が形成されていれば良く、例えば、入力電極21A,21Bと同様に、図1における上下方向(厚さ方向)において相対する2つの側面に形成しても良い。
【0036】
また、圧電トランス13Aの2次側領域の構造についても、端面に設けられた出力電極23から略L/4の位置に、複数の内部電極が当該2次側領域の内部または外部に形成された層間接続用の導体によって接続された積層構造を採用しても良い。また、係る層間接続用の導体が当該2次側領域の外部に形成された場合には、図1に示すような形状の出力電極22を設けることは必ずしも必要ではなく、その層間接続用の導体自体を出力電極として利用しても良い。
【0037】
また、出力電極23についても、2次側領域の端面に形成せずに、その端面近傍の2次側領域の内部に形成された複数の内部電極が当該2次側領域の内部または外部に形成された層間接続用の導体によって接続された積層構造を採用しても良い。また、係る層間接続用の導体が当該2次側領域の外部に形成された場合には、図1に示すような形状の出力電極23を設けることは必ずしも必要ではなく、その層間接続用の導体自体を出力電極として利用しても良い。
【0038】
即ち、本実施形態において、圧電トランスは、長手方向の片側に1次側領域、他方に2次側領域をなす矩形状の外形形状を有し、その2次側領域の端面または端面近傍(即ち、当該2次側領域の端部)に出力電圧V1を取り出し可能な電極構造(圧電トランス13Aでは出力電極23)が形成され、且つ当該端部と1次側領域との間に、出力電圧V2を取り出し可能な中間電極(圧電トランス13Aでは出力電極22)を有する構造が採用されていれば、図1に示す圧電トランス13Aと同じ構造を採用しなくても良い。ここで、具体的な変形例について説明する。
【0039】
<圧電トランスの変形例>
図3は、本実施形態の変形例1に係る圧電トランスを示す図であり、図3(a)は、その圧電トランスの斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示す圧電トランスを手前から見た正面図である。
【0040】
同図に示す圧電トランス13Bにおいて、1次側領域には、上下方向で相対する入力電極25Aと不図示の入力電極25Bとが形成されている。また、1次側領域の内部には、複数の内部電極26A及び26Bが交互に複数積層されており、側面に設けられた層間接続導体27には、1次側領域内部の複数の内部電極26Aがそれぞれ接続されると共に、入力電極25B(不図示)に接続されている。そして、他方の側面に設けられた層間接続導体24には、1次側領域内部の複数の内部電極26Bがそれぞれ接続されると共に、入力電極25Aに接続されている。
【0041】
また、圧電トランス13Bにおいて、2次側領域の端面には、図1の場合と同様に出力電極23が形成されているが、その出力電極23と1次側領域との間には、複数の内部電極28が、出力電極としても機能する層間接続導体22Aに接続されている。
【0042】
このような構造を有する圧電トランス13Bを、図1に示す圧電トランス13Aと同様な駆動回路によって駆動することにより、層間接続導体22Aと、出力電極23とから、異なる大きさの出力電圧を取り出すことができる。
【0043】
図4は、本実施形態の変形例2に係る圧電トランスを示す図であり、図4(a)は、その圧電トランスの斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す圧電トランスを手前から見た正面図である。
【0044】
同図に示す圧電トランス13Cにおいて、1次側領域の内部には、複数の内部電極33A及び33Bが交互に複数積層されており、側面に設けられた層間接続導体34には、1次側領域内部の複数の内部電極33Aがそれぞれ接続されている。そして、他方の側面に設けられた層間接続導体25には、1次側領域内部の複数の内部電極33Bがそれぞれ接続されている。
【0045】
また、圧電トランス13Bにおいて、2次側領域の端面近傍には、複数の内部電極30が、出力電極としても機能する層間接続導体29に接続されている。内部電極30と1次側領域との間には、複数の内部電極32が出力電極としても機能する層間接続導体31に接続されている。
【0046】
このような構造を有する圧電トランス13Cを、図1に示す圧電トランス13Aと同様な駆動回路によって駆動することにより、層間接続導体30と、層間接続導体31とから、異なる大きさの出力電圧を取り出すことができる。
【0047】
図5は、本実施形態の変形例2に係る圧電トランスを示す図であり、図5(a)は、その圧電トランスの斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示す圧電トランスを手前から見た正面図である。
【0048】
同図に示す圧電トランス13Dにおいて、1次側領域の構造は、図4に示した圧電トランス13Cと略同様な構造であるが、圧電トランス13Dでは、入力電極として機能する層間接続導体37と層間接続導体37が一側面に形成されている点が異なる。
【0049】
また、圧電トランス13Dにおいて、2次側領域の構造は、図4に示した圧電トランス13Cと同様な構造である。
【0050】
このような構造を有する圧電トランス13Dを、図1に示す圧電トランス13Aと同様な駆動回路によって駆動することにより、層間接続導体30と、層間接続導体31とから、異なる大きさの出力電圧を取り出すことができる。
【0051】
尚、図1に示す外形形状を有する圧電トランス13A並びに上述した変形例に係る圧電トランス13B乃至13Dを製造する手法、並びにその1次側領域及び/または2次側領域の内部を積層構造にする手法については、現在では一般的な方法を採用することができるので、本実施形態における詳細な説明は省略する。
【0052】
<ストロボ装置>
次に、圧電トランス13Aを昇圧手段として備えるストロボ装置について説明する。以下の説明では、上記のような圧電トランス13Aを、「第1共振モード」であるλ/2モード及び「第2共振モード」であるλモードにて駆動するストロボ装置と、「第1共振モード」である3λ/2モード及び「第2共振モード」であるλモードにて駆動するストロボ装置とについて説明する。
【0053】
図2は、本実施形態に係るストロボ装置の回路構成を示すブロック図である。
【0054】
図2に示すストロボ装置は、大別して、閃光用の放電管(例えばキセノン放電管)4、放電管4を発光させる電気エネルギを蓄える放電コンデンサ3、放電コンデンサ3に電気エネルギを充電する充電回路1A、並びに放電管4の放電を促す高電圧信号を発生させるトリガ回路2Aにより構成されている。
【0055】
充電回路1Aとトリガ回路2Aとは、発振回路11、駆動回路12、並びに圧電トランス13Aからなる1組の昇圧回路を、共通の昇圧手段として備えており、駆動回路12は、発振回路11より出力される所定周波数の発振信号に応じて、圧電トランス13Aを駆動する。
【0056】
本実施形態において、発振回路11は、上記の所定周波数として、周波数の異なる少なくとも2種類の発振信号を出力可能であって、駆動回路12は、その発振信号と、外部より印加される所定の直流電圧とに基づいて、周波数が異なる少なくとも2種類の駆動信号を、入力電極21A,21Bに供給することにより、圧電トランス13Aは、異なる2種類の共振モード(「第1共振モード」または「第2共振モード」)の何れによっても駆動することができる。
【0057】
充電回路1Aにおいて、2つのダイオード15及び16は、一般的な整流回路を構成しており、この整流回路には、圧電トランス13Aが「第1共振モード」にて駆動されているときに、出力電極23から出力される出力電圧V1が印加される。そして、放電コンデンサ3は、整流された電圧(直流電圧)の電気エネルギを、放電管4の放電用として充電する。
【0058】
一方、トリガ回路2Aにおいて、圧電トランス13Aが「第2共振モード」にて駆動されているときには、出力電極22から出力される出力電圧V2が、放電管4のトリガ端子に印加される。このとき、放電コンデンサ3が所定の充電状態である場合には、放電管4のトリガ端子に出力電圧V2が印加されるのに応じて、その印加電圧をトリガとして、放電コンデンサ3に充電されていた電気エネルギにより、放電管4が閃光を発する。
【0059】
尚、発振回路11、駆動回路12、並びに整流用ダイオード15及び16からなる整流回路の個々の回路構成については、現在では一般的なデバイスを採用すれば良いので、本実施形態における詳細な説明は省略する。
【0060】
まず、「第1共振モード」であるλ/2モード及び「第2共振モード」であるλモードにて圧電トランス13Aが駆動されるストロボ装置について説明する。
【0061】
この場合、圧電トランス13Aが「第1共振モード」であるλ/2モードにて駆動されることにより、[表1]に示す特性から、出力電極23から出力される出力電圧V1=1.2kVによって放電コンデンサ3が充電される。放電管4に必要とされる充電電圧は本実施形態において300Vであり、このとき出力電極23に生じている電圧も略300Vであるため、[表1]に記載されている電圧比(2.9/1.2)により、出力電極22から出力される出力電圧V2は725Vであり、この出力電圧V2の値は、放電管4の所定のトリガ電圧(本実施形態では1kV)より小さいので、放電管4が閃光を発することはない。
【0062】
その後、圧電トランス13Aが「第2共振モード」であるλモードにて駆動されるのに応じて、[表1]に示す特性から、出力電極22から出力される出力電圧V2が、0.725kVから2.1kVに増加する。このとき、放電コンデンサ3が所定の充電状態である場合には、出力電圧V2は放電管4の所定のトリガ電圧を超えているので、放電管4は、放電コンデンサ3に充電されていた電気エネルギにより、放電管4が閃光を発する。
【0063】
次に、「第1共振モード」である3λ/2モード及び「第2共振モード」であるλモードにて圧電トランス13Aが駆動されるストロボ装置について説明する。
【0064】
この場合、圧電トランス13Aが「第1共振モード」である3λ/2モードにて駆動されることにより、[表1]に示す特性から、出力電極23から出力される出力電圧V1=1.4kVによって放電コンデンサ3が充電され、このとき出力電極22から出力される出力電圧V2は0.1kV以下であり、放電管4の所定のトリガ電圧より小さいので、放電管4が閃光を発することはない。
【0065】
その後、圧電トランス13Aが「第2共振モード」であるλモードにて駆動されるのに応じて、[表1]に示す特性から、出力電極22から出力される出力電圧V2が、0.1kV以下の状態から2.1kVに増加する。このとき、放電コンデンサ3が所定の充電状態である場合には、出力電圧V2は放電管4の所定のトリガ電圧を超えているので、放電管4は、放電コンデンサ3に充電されていた電気エネルギにより、放電管4が閃光を発する。
【0066】
尚、圧電トランス13Aをλモード及び3λ/2モードにて駆動する場合には、ストロボ装置としての配線の構成を、図2に示す配線とは逆に、出力電圧22を放電コンデンサ3への充電ラインに接続し、出力電圧23を、放電管4のトリガ端子に接続することにより、「第1共振モード」としてλモード、「第2共振モード」として3λ/2モードにて圧電トランス13Aを駆動しても良い。
【0067】
従って、上述した本実施形態のストロボ装置によれば、圧電トランス13Aが「第1共振モード」にて駆動されているときには、2種類の出力電極22,23のうち、第1出力電極から取り出された第1の出力電圧によって放電コンデンサ3を充電する一方で、その共振モードが、「第1共振モード」から「第2共振モード」に切り替えられるのに応じて、「第2共振モード」にて圧電トランス13Aが駆動されることにより、第2出力電極から取り出された第2の出力電圧によって放電管4にトリガを駆けることができる。即ち、圧電トランス13Aの共振モードが切り替えられるのに応じて、放電コンデンサ3への第1の出力電圧の印加と、放電管4のトリガ端子への第2の出力電圧の印加とを切り替え可能であり、充電回路1Aとトリガ回路2Aとで1組の昇圧回路を共用することができる。
【0068】
このように本実施形態では、負荷の大きさに応じて昇圧比(出力電圧)が変化するという圧電トランス素子の特性に着目することにより、単一の圧電トランスを2つの目的(放電コンデンサ3の充電及び放電管4の放電トリガ)に共用すると共に、1組の昇圧回路を、上記2つの目的に共用する回路構成に採用している。係る構成は、図6に示したストロボ装置と同様であるが、本実施形態では、図2に示す回路構成のストロボ装置において、図1に示す圧電トランス13Aを採用し、出力電極22,23から得られる2種類の出力電圧V1,V2を、共振モードを適宜切り替えることによって使い分けるという本願特有の方法により、図6を参照して説明したストロボ装置では必要であったスイッチ(スイッチング素子)を用いること無く、放電コンデンサ3への充電機能と、放電管4のトリガ機能とを適切に切り替えることを実現している。
【0069】
従って、本実施形態によれば、シンプルな装置構成で、省スペース性に優れるストロボ装置を実現することができ、各種カメラに内蔵または外付けされるカメラ用のストロボ装置として採用して好適である。この場合、2種類の共振モードの切り替えは、当該カメラのシャッター操作に応じて、例えば、発振回路11が駆動回路12に供給する発振信号の周波数を変更することによって実現すれば良い。
【0070】
尚、上述したストロボ装置の説明では、昇圧手段の一例として、圧電トランス13A(図1)を利用した場合について説明したが、この装置構成に限られるものではなく、各変形例にて上述した圧電トランス13B(図3)、圧電トランス13C(図4)、或いは圧電トランス13D(図5)を昇圧手段として備えるストロボ装置であっても良い。
【0071】
<実施例>
上記実施形態において説明した装置構成を備えるストロボ装置に関する検証を重ねる過程で、本願出願人は、上述したλ/2モード、λモード、並びに3λ/2モード以外の共振モードを採用した場合についても実験を行なった。そこで、本願実施形態に基づく実施例として、その実験結果についての説明及びその考察について以下に述べる。
【0072】
[表2]は、本実施例における圧電トランス13Aの2種類の出力電極22,23から取り出し可能な出力電圧と、共振モードとの関係を示す一覧表であり、上記3種類の共振モード(λ/2モード、λモード、3λ/2モード)に加えて、より高次の共振モードとして、2λモード、5λ/2モード、並びに3λモードにてそれぞれ駆動した場合に取り出し可能な出力電圧を表わす(但し、λは波長を表わす)。
【0073】
ここで、本実施例における圧電トランス13Aの仕様は、一例として、長手方向の長さLが20mm、短手方向の長さ(幅W)が5mmの矩形形状であって、実験に際しては、図2に示すストロボ装置の回路構成において、圧電トランス13Aの放電コンデンサ3充電用の出力側(即ち、出力電極23と入力電極21Bとの間)に100kΩの負荷抵抗を接続した状態で、各共振モードにおける出力電圧V1,出力電圧V2の計測を行なった。
【0074】
【表2】
Figure 0004055943
【0075】
そして、上記の仕様及び条件に基づく実験の結果、[表2]に示すように、駆動周波数fdが427KHzである5λ/2モードにて圧電トランス13Aが駆動された場合、端面に位置する出力電極23から取り出し可能な出力電圧V1は、1.7kVであった。これに対して、[表2]において、5λ/2モード以外の各共振モード及びその共振モードにおける各駆動周波数における出力電圧V1は、前記5λ/2モードの場合における出力電圧V1と比較してかなり小さい。
【0076】
即ち、上記の実験結果は、上記仕様の圧電トランス13Aを採用して図2に示す回路構成のストロボ装置を駆動する場合には、放電コンデンサ3の充電が行われる「第1共振モード」において、圧電トランス13Aを5λ/2モードにて駆動する方が、[表2]に示す他の共振モードにて駆動する場合と比較して出力電圧V1が大きいので、放電コンデンサ3を所定の充電電圧(この実験では300V)に達するまでに要する時間(充電速度)を極小化することができ、好適であることを表わす。
【0077】
ここで、[表2]に示す如く5λ/2モードの場合に、出力電圧V1が最も高くなるのは、圧電トランス13A自体のインピーダンスが主に起因するものと想定される。
【0078】
【発明の効果】
上述した本発明によれば、スイッチ(スイッチング素子)を用いること無くコンデンサへの充電機能と、放電管のトリガ機能とを切り替えると共に、充電回路とトリガ回路とで共通の昇圧手段として共用可能な圧電トランス及びその圧電トランスを備えるストロボ装置の提供が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る圧電トランスを示す図である。
【図2】本実施形態に係るストロボ装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の変形例1に係る圧電トランスを示す図である。
【図4】本実施形態の変形例2に係る圧電トランスを示す図である。
【図5】本実施形態の変形例3に係る圧電トランスを示す図である。
【図6】本願出願人が先に提案しているストロボ装置の回路構成を示す図である。
【図7】国際公開番号WO97/29521号公報において提案されている圧電トランスを示す斜視図である。
【符号の説明】
1,1A:充電回路,
2,2A:トリガ回路,
3:放電コンデンサ,
4:放電管,
11:発振回路,
12:駆動回路,
13,13A,121:圧電トランス,
14:スイッチ(スイッチング素子),
15,16:整流用ダイオード,
21A,21B,124,125:入力電極,
22,23,126,127:出力電極,
24,27,34,35,37,38:1次側層間接続導体,
22A,29,31:2次側層間接続導体,
26A,26B,33A,33B,36A,36B:1次側内部電極,
28,30,32,:2次側内部電極,
123:矩形板,
132:端面電極,

Claims (8)

  1. 長手方向の片側が1次側領域、他方が2次側領域をなす矩形状の外形形状を有し、その2次側領域の端部に形成された電極、並びにその端部と該1次側領域との間に形成された中間電極の、少なくとも2種類の出力電極が形成された圧電トランスであって、
    前記2種類の出力電極において、第1共振モードにて駆動されているときには、第1の出力電圧を第1出力電極から取り出し可能である一方で、その第1共振モードとは異なる第2共振モードにて駆動されているときには、該第1の出力電圧とは大きさが異なる第2の出力電圧を第2出力電極から取り出し可能である
    ことを特徴とする圧電トランス。
  2. 前記圧電トランスの2次側領域において、前記1次側領域と前記中間電極間の領域における分極方向と、前記中間電極と前記2次側領域の端部間の領域における分極方向とは、互いに逆方向である
    ことを特徴とする請求項1記載の圧電トランス。
  3. 前記圧電トランスの1次側領域は、
    複数の内部電極が一層おきに導体によって接続された積層構造をなす
    ことを特徴とする請求項1記載の圧電トランス。
  4. 閃光用の放電管と、該放電管を発光させる電気エネルギを蓄えるコンデンサと、該コンデンサに電気エネルギを充電する充電回路と、該放電管の放電を促す高電圧信号を発生させるトリガ回路と、前記充電回路及び前記トリガ回路の昇圧手段として共用されるところの、1つの圧電トランスを含む昇圧回路とを備えるストロボ装置であって、
    前記圧電トランスとして、請求項1記載の圧電トランスを備えており、
    前記昇圧回路において、前記第1または第2共振モードにて前記圧電トランスを駆動すると共に、前記2種類の出力電極からそれぞれ出力電圧を取り出すことにより、前記昇圧回路を、前記充電回路用または前記トリガ回路用に切り替え可能である
    ことを特徴とするストロボ装置。
  5. 前記昇圧回路において、
    前記圧電トランスが前記第1共振モードにて駆動されているときには、前記2種類の出力電極のうち、前記第1出力電極から取り出された前記第1の出力電圧によって前記コンデンサが充電される一方で、前記第1共振モードから前記第2共振モードに駆動状態が切り替えられるのに応じて、前記第2共振モードにて前記圧電トランスが駆動されることにより、前記第2出力電極から取り出された前記第2の出力電圧によって前記放電管にトリガが駆けられる
    ことを特徴とする請求項4記載のストロボ装置。
  6. 前記ストロボ装置は、カメラに内蔵または外付けされるカメラ用のストロボ装置であって、
    前記昇圧回路において、前記第1及び第2共振モードは、該カメラのシャッター操作に応じて切り替えられる
    ことを特徴とする請求項4または請求項5記載のストロボ装置。
  7. 前記ストロボ装置において、
    前記昇圧回路は、前記第1共振モードにおいて前記コンデンサを充電すべく、前記圧電トランスを、5/2波長モードにて駆動する
    ことを特徴とする請求項5または請求項6記載のストロボ装置。
  8. 前記ストロボ装置において、
    前記昇圧回路は、前記第2共振モードにおいて前記放電管にトリガを駆けるべく、前記圧電トランスを、1/2波長モードまたは1波長モードにて駆動する
    ことを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載のストロボ装置。
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