JP4050133B2 - 構造体モデルの作成方法、タイヤ性能予測方法、タイヤ製造方法、タイヤおよびプログラム - Google Patents

構造体モデルの作成方法、タイヤ性能予測方法、タイヤ製造方法、タイヤおよびプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の動的状態の構造体を再現する有限要素モデル等の構造体モデルを作成する際の構造体モデルの作成方法、例えば、並進運動および回転運動の少なくとも1つを行う走行状態のタイヤのタイヤモデルの作成方法に関し、さらに、この作成方法を用いてタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法、この予測方法を用いて行うタイヤ製造方法、この製造方法を用いて製造されるタイヤおよび、上記構造体モデルの作成方法を実行するプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの処理速度の向上に伴って、車両に装着される空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)のドライ路面での走行性能や濡れた路面でのウェット性能を、有限要素法や有限体積法を用いて予測する方法が種々提案されている。
例えば、タイヤのウェット性能は、路面に溜まった水膜上をタイヤが走行する際、タイヤと路面との間に水が進入してタイヤが持つ路面へのグリップ力が低下し、最終的に水膜の上をタイヤが滑りタイヤの制御が効かなくなるハイドロプレーニング現象に代表されるように、タイヤと路面間に水が介在することによってタイヤ性能が低下することをいう。
このようなタイヤ性能の低下は、タイヤの走行速度が増大した際に発生するため、有限要素法や有限体積法を用いてウェット性能を予測する場合、タイヤの有限要素モデルの走行速度を増大した状態で計算処理を行う必要がある。
ハイドロプレーニング性能の場合、例えば80〜100km/時の走行速度の動的状態を持つタイヤの有限要素モデルを作成する必要がある。
【0003】
下記特許文献1では、有限要素モデルのタイヤモデルと有限体積モデルの流体モデルとを用いて、タイヤモデルが流体モデルと接触した際の物理量を算出することにより、タイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法を提案している。当該特許文献1では、「回転変位及び直進変位(変位は力、速度でも良い)の少なくとも一方」を静止したタイヤモデルに与えることで、タイヤモデルの転動状態を再現することが記載されている(当該特許文献1第10頁右欄第30〜32行目)。また、「路面との摩擦を考慮する場合は、回転変位(または力、速度でもよい)もしくは直進変位(または力、速度でもよい)のどちらか一方のみ」を与えることで、タイヤモデルの転動状態を再現する(当該特許文献1第10頁右欄第32〜35行目)ことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第3133738号公報(第10頁右欄第30〜32行目、第10頁右欄第32〜35行目)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1では、タイヤモデルの転動状態の再現は、静止しているタイヤモデルに内圧充填処理を行った後、タイヤを路面に接地させて荷重を与え、この状態のタイヤモデルに上述したような回転変位や直進変位を付与することによって行われ、例えば、時速80〜100km/時の高速転動状態を再現して、予め作成した静止している流体モデルを踏む。この場合、タイヤモデルが転動して移動する領域に流体モデルを作成し、この領域に安定した転動状態となったタイヤモデルを通過させるように各モデルを配置する。
【0006】
ここで、高速転動状態のタイヤモデルを再現するために、タイヤモデルに一気に(極短時間に)回転変位や直進変位を付与した場合、タイヤモデルの一部分が大きく変形したり、振動が発生して、タイヤモデルが不安定となってしまう。そのため、タイヤモデルが安定した高速転動状態となるように、段階的に転動速度を上げる繰り返し計算を行う必要がある。そのため、高速で転動する状態のタイヤモデルが得られるまでに多大の計算時間を費やさなければならない。また、タイヤモデルを所定の転動速度となるまでにタイヤモデルの助走する領域も確保しなければならず、モデルの大規模化につながるといった問題がある。
しかし、このような問題に関して上述の特許文献1では解決策が開示されていない。
また、高速転動状態をタイヤモデルで再現する際に発生する上述の問題は、タイヤモデルに制限されるものではなく、一般の変形可能な構造体のモデルを静的状態から動的状態とする場合に発生する問題でもある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の従来技術の問題点を解消するために、所望の動的状態にある構造体を再現した構造体モデルを短時間の計算処理時間で作成することのできる構造体モデルの作成方法を提供するとともに、この構造体モデルの作成方法を用いたタイヤ性能予測方法、この予測方法を用いて行うタイヤ製造方法、この製造方法を用いて製造されるタイヤおよび、構造体モデルの作成方法を実行するプログラムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、所望の動的状態の構造体を再現する構造体モデルの作成方法であって、解析対象とする構造体に対して、少なくとも変形可能な弾性体部分を有して構成される構造体モデルを作成するモデル作成ステップと、前記構造体モデルにおける変形可能な弾性体部分を剛体に変換した剛体モデルを作成する剛体化ステップと、前記剛体モデルに、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与して、前記剛体モデルの動的状態を算出する動的状態算出ステップと、前記動的状態を有する前記剛体モデルを、変形可能な弾性体部分を有して構成される前記構造体モデルに復元することによって、前記構造体モデルを所望の動的状態とする弾性体復元ステップと、を有し、前記構造体モデルは、並進運動および回転運動の少なくとも一方の運動を行うタイヤのタイヤモデルを含むことを特徴とする構造体モデルの作成方法を提供する。
【0009】
その際、前記タイヤモデルは、解析対象の構造体の構成部材を有限個の要素に分割して作成された有限要素モデルであるのが好ましい。
その際、前記タイヤモデルは、変形可能なトレッドパターンを外表面に備えるのが好ましい。また、前記構造体モデルは、弾性体として、もしくは剛体としてモデル化されたリムモデルが前記タイヤモデルに装着されたモデルであるのが好ましい。
また、前記タイヤモデルは、内圧充填処理の施された内圧充填後の変形形状を有するモデルであるのが好ましく、さらに、前記モデル作成ステップにおいて、前記タイヤモデルが作成される他、前記タイヤモデルを接地する路面モデルが作成され、前記内圧充填後のタイヤモデルは、前記内圧充填処理後、荷重が付与されて前記路面モデル上で接地変形したモデルであるのが好ましい。この場合、前記剛体モデルは、前記接地変形したタイヤモデルの変形形状を維持したまま剛体に変換した剛体モデルである。
【0010】
また、前記動的状態算出ステップにおいて、前記路面モデル上で接地変形した前記タイヤモデルの形状を有する前記剛体モデルに、並進速度とタイヤ回転軸の軸周りの回転角速度とを付与する際、前記モデル作成ステップで作成された前記タイヤモデルの最大外径と同等またはこれより短く、かつ、前記最大外径から接地変形したタイヤの撓み量を差し引いた値、すなわち、接地変形した前記タイヤモデルにおける前記タイヤ回転軸と前記路面モデル間の距離よりも長い回転半径で前記並進速度を除した値を、前記剛体モデルに前記回転角速度として付与するのが好ましい。さらに好ましくは、前記回転半径を、前記転動するタイヤの有効転がり半径とするのが好ましい。すなわち、前記並進速度を前記モデル作成ステップで作成されたタイヤモデルの有効転がり半径で除した値を、前記回転角速度として付与するのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記構造体モデルの作成方法を用いて得られる動的状態のタイヤモデルを用いてタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法であって、
動的状態の前記タイヤモデルまたは前記路面モデルに生じる物理量を求めるステップと、
この物理量を用いてタイヤの性能を予測するステップと、を少なくとも有することを特徴とするタイヤ性能予測方法を提供する。
【0012】
ここで、タイヤ性能として、ドライ路面でのコーナリング特性やウェット路面での排水特性などが挙げられる。
このうち、ドライ路面での前記タイヤ性能予測方法は、さらに、動的状態の前記タイヤモデルのタイヤ回転軸にキャンバ角、スリップ角、制動トルクおよび駆動トルクの少なくとも1つを付与して第1の動的解析を行う第1の動的解析ステップを、前記物理量を求めるステップの前に有し、前記物理量を前記第1の動的解析ステップの解析結果から求めることを特徴とするタイヤ性能予測方法である。
ドライ路面でのタイヤ性能を予測するために必要な物理量は、タイヤと路面の間に生じる摩擦力、タイヤの変形形状、内部応力分布、エネルギー密度分布、接地形状、接地面積、接地圧分布などがある。
【0013】
さらには、ドライ路面での前記タイヤ性能予測方法は、動的状態の前記タイヤモデルのタイヤ回転軸にキャンバ角、スリップ角、制動トルクおよび駆動トルクの少なくとも1つを付与して第1の動的解析を行う第1の動的解析ステップを、前記物理量を求めるステップの前に有し、前記物理量を前記第1の動的解析ステップの解析結果から求めるタイヤ性能予測方法であってもよい。
【0014】
一方、ウェット路面での前記タイヤ性能予測方法は、動的状態の前記タイヤモデルと干渉する流体モデルを作成するステップと、この流体モデルと動的状態の前記タイヤモデルとを用いて第2の動的解析を行う第2の動的解析ステップとを、前記物理量を求めるステップの前に有し、前記第2の動的解析ステップは、前記タイヤモデルと干渉する前記流体モデルの流動計算を前記タイヤモデルを用いて行うステップと、前記流体モデルと干渉する動的状態の前記タイヤモデルの変形計算を行うステップと、前記変形計算後の動的状態の前記タイヤモデルと前記流動計算後の前記流体モデルとの干渉部分を求め、この干渉部分に関する境界条件を求めて前記流体モデルおよび動的状態の前記タイヤモデルに付与し、前記流動計算および前記変形計算を繰り返し行うステップとを有し、前記物理量を、前記流動計算および前記変形計算の計算結果から求めることを特徴とするタイヤ性能予測方法であるのが好ましい。
ウェット路面でのタイヤ性能を予測するために必要な物理量は、タイヤ・リムモデルに生じる物理量として、タイヤと路面の間に生じる摩擦力、タイヤの変形形状、内部応力分布、エネルギー密度分布、接地形状、接地面積、接地圧分布などの他、流体モデルに生じる物理量として、流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布などがある。
【0015】
さらには、ウェット路面での前記タイヤ性能予測方法は、前記第2の動的解析ステップにおいて、動的状態の前記タイヤモデルのタイヤ回転軸にキャンバ角、スリップ角、制動トルクおよび駆動トルクの少なくとも1つを付与することを特徴とするタイヤ性能予測方法であってもよい。
【0016】
さらに、本発明は、前記タイヤ性能予測方法を用いて設計してタイヤを製造することを特徴とするタイヤ製造方法を提供する。
本発明は、前記タイヤ製造方法を用いて製造されたことを特徴とするタイヤを提供する。
【0017】
また、本発明は、所望の動的状態の構造体を再現する構造体モデルをコンピュータに作成させるコンピュータが実行可能なプログラムであって、
解析対象とする構造体に対して、少なくとも変形可能な弾性体部分を有して構成される構造体モデルをコンピュータの演算手段に作成させ、コンピュータの記憶手段に記憶させる手順と、
前記構造体モデルにおける変形可能な弾性体部分を剛体に変換した剛体モデルを前記演算手段に作成させる手順と、
前記剛体モデルに、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与して、前記剛体モデルの動的状態を前記演算手段に算出させ、前記記憶手段に記憶させる手順と、
前記記憶手段から前記動的状態を呼び出し、前記動的状態を有する前記剛体モデルを、変形可能な弾性体部分を有して構成される前記構造体モデルに復元することによって、前記構造体モデルが所望の動的状態となるように前記演算手段に計算させる手順と、を有することを特徴とする構造体モデルの作成をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の構造体モデルの作成方法およびタイヤ性能予測方法を、下記に示すタイヤ性能予測装置に基づいて説明する。
図1は、タイヤ性能予測装置100(以降、本装置という)の概略の構成をブロック図で示した概略構成図である。
【0019】
本装置100は、解析対象とするタイヤ単体モデル(タイヤモデル)あるいはタイヤ単体モデルとリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルをはじめとする各種モデルの作成を行うモデル作成部200と、静的解析処理、例えば、タイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施したり、鉛直荷重を負荷して接地変形させる接地処理を行う静的解析部300と、静的解析部300の結果から短時間に動的状態へ移行する、剛体変換を利用して動的状態のタイヤ・リムモデルを作成する剛体変換部400と、一定速度で転動させたり、ドライ路面でのコーナリング状態や制動状態などドライ路面での動的状態のタイヤ・リムモデルを作成する、ドライ路面における動的解析を行う動的解析部500と、ハイドロプレーニング状態などのウェット路面での動的状態のタイヤ・リムモデルを作成する、ウェット路面における動的解析を行う動的解析部600と、これらの結果からタイヤ・リムモデルなどに生じる物理量を抽出する物理量抽出部700と、その結果に基づいてドライ路面やウエット路面でのタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測部800と、を有し、さらに、上記各部位の機能および制御を行うCPU110と、各部位で作成された結果を保持するメモリ120とを有する。
【0020】
本装置100は、プログラムを実行することによって各部位が機能を発揮するコンピュータによって構成された装置であってもよいし、専用回路によって構成された専用装置であってもよいし、一部分がコンピュータにより、他の部分が専用回路によって構成された装置であってもよい。
【0021】
図2(a)〜(f)は、モデル作成部200で作成される各種モデルの一例を示す。
モデル作成部200は、操作者により図示されないマウスやキーボード等の操作系を用いて、設定されたモデル作成条件に基づいてタイヤ基台モデル201(図2(a)参照)とパターンモデル202(図2(b)参照)とを組み合わせたタイヤ単体モデル(図示されない)を作成する。また、このタイヤ単体モデルとリムモデル203(図2(c)参照)とを組み合わせたタイヤ・リムモデル204(図2(d)参照)や、さらに別途作成された路面モデル205(図2(e)参照)を組み合わせたタイヤ・路面モデル206(図2(f)参照)を作成する。さらに、ウェット路面でのタイヤ性能を予測する場合には、後述する流体モデル207(図15(a)参照)を組み合わせることで、後述するタイヤ・流体モデル208(図15(b)参照)を作成する。
【0022】
なお、タイヤ単体モデルは、変形可能な弾性体の有限要素によって構成された公知の三次元有限要素モデルである。例えば、カーカス補強部材およびベルト補強部材、ビード補強材等の構成部材は、張力と曲げ剛性を持つシェル要素で、ゴム部材、例えば、トレッドゴム部材やサイドウォールゴム部材やビードフィラーゴム部材やカーカスコートゴム部材等の構成部材は、4面体、5面体、6面体固体要素などで作成される。
【0023】
図2(a)に示す有限要素モデルとしてのタイヤ基台モデル201と、図2(b)に示す有限要素モデルとしてのパターンモデル202は変形可能なモデルによって構成され、タイヤ基台モデル201にパターンモデル202が合体(マージ)されることで、タイヤ単体モデルとして作成される。モデル作成部200は、操作者によるモデル作成条件によって直接タイヤ単体モデルを作成してもよいし、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を別途作成した後、合体してタイヤ単体モデルを作成してもよい。
図2(c)に示すリムモデル203は、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルであるが、解析範囲において有限要素の変形を許容しないように、あるいは、極めて小さな変形に抑えるように、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっていてもよい。
図2(d)に示すタイヤ・リムモデル204は、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を有する前記タイヤ単体モデルとリムモデル203とを組み合わせて装着した例である。
図2(e)に示す路面モデル205は、変形を許容しない剛体平面モデルとなっている。勿論、一部分もしくは全体が変形可能な弾性体によって路面モデルが構成されてもよい。
図2(f)に示すタイヤ・路面モデル206は、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205を組み合わせた例である。
【0024】
これらの各種モデルのうちの有限要素モデルは、予め解析対象とするタイヤやリムの構造体の輪郭形状と構成部材配置の情報とを用いて、構成部材毎にメッシュ分割を行って各有限要素の節点と各有限要素の形状を規定し、これらの情報をファイルに記録するとともに、構成部材に対応する剛性や密度等の材料定数を数値データとしてファイルに記録することによって作成される。すなわち、有限要素モデルは、実質的には、各有限要素の節点の座標値と、各節点を番号化して各有限要素の形状を規定した番号の組と、各有限要素によって表される構成部材の材料定数の数値データとによって構成されたもので、これら座標値、番号の組および数値データは一つのファイルとしてメモリ120に記憶される。
なお、モデル作成の流れについては後述する。
【0025】
静的解析部300は、モデル作成部200で作成された各種モデルに、静的解析処理、例えば、所定の内圧を充填する内圧充填処理と、路面モデルに接地変形させたタイヤ路面モデルを求める接地処理を行うように構成される。
なお、静的解析処理の流れについては後述する。
【0026】
剛体変換部400は、静的解析処理の施された変形可能なタイヤ・リムモデル204を剛体化した剛体モデルを作成し、この剛体モデルに並進速度および回転角速度を付与して動的情報を求め、さらに、この動的情報を備えた剛体モデルを、動的情報を備えた状態で変形が可能な構成部分を備える動的状態のタイヤ・リムモデル204に復元する部位である。
【0027】
ここで、タイヤ・リムモデル204の剛体化とは、後述するように転動を開始させる時に、有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となるように、例えば、タイヤ単体モデルの材料定数のうち剛性に関する材料定数を極めて高い値(無限大)に変換することと同等に扱われ、実質的に有限要素を剛体に変換して剛体モデルを作成することをいう。
この変換は、タイヤ・リムモデル204に内圧を充填する内圧充填処理、さらに所定の荷重を負荷して接地処理を行った後の所定の時間ステップにおいて瞬時に行う。なお、接地変形したタイヤ単体モデルを瞬時に剛体化した場合、剛体モデルは接地変形した変形形状を有する。
【0028】
剛体モデルへの並進速度および回転角速度の付与は、例えば、剛体モデルを作成した後の所定の時間ステップにおいて行い、剛体モデルにおける各節点の変位等の動的情報を算出する。さらに、並進速度および回転角速度の付与した後、回転角速度だけを除去して、以降の時間ステップにおいて並進速度のみを継続して付与してもよい。
変形可能なタイヤ・リムモデル204への復元は、動的情報を有する剛体モデルの材料定数を、もとのタイヤ・リムモデル204の材料定数に戻すことによって行う。
リムモデル203が、実質的に剛体のモデルとなっている場合、タイヤ単体モデルが変形可能な弾性体部分として剛体化され、動的状態となった後復元化される。
このようなタイヤ・リムモデル204を剛体モデルへの変換処理、変換した剛体モデルに並進速度と回転角速度を付与する処理、および剛体モデルを変形可能なタイヤ・リムモデル204へ復元する処理は、計算処理する際の時間ステップの最小単位で行うのがよい。
剛体変換部400で行われる剛体変換の流れについては後述する。
【0029】
動的解析部500、600は、剛体変換部400で作成された動的状態のタイヤ・リムモデル204と路面モデル205の境界条件(例えば、タイヤの回転軸の進行方向変位を固定して、路面をタイヤの後方へ移動させることによりタイヤを転動させるなどの計算条件)をタイヤ・路面モデル206に付与する境界条件を設定する境界条件設定部と、設定された境界条件に基づいて、並進速度を付与した条件下における安定した転動状態(動的状態)のタイヤ・リムモデル204の変位や応力を計算するタイヤ・路面モデル計算部を有して構成される。
タイヤ・路面モデル計算部において、タイヤ・リムモデル204の計算処理時間が所定の時間経過したか否かが判別され、所定の時間が経過していない場合、上記境界条件設定部へ戻り、変形後のタイヤ・リムモデル204の変位や応力を新たな境界条件として設定して上記計算が繰り返される。
なお、動的解析部500は、ドライ路面を再現した路面モデルを用いる場合に上記計算を行い、動的解析部600は、ウェット路面を再現した後述する流体モデル207を備えた路面モデルを用いる場合に上記計算を行う。すなわち、動的解析部500における上記計算と動的解析部600における上記計算は異なる。
【0030】
物理量抽出部700は、作成された動的状態のタイヤ・リムモデル204の物理量を算出する部位である。
例えばウェット性能を予測する場合、路面モデル上の流体モデル207を踏み込みながら通過する解析を行って、流体モデル207がタイヤ・リムモデル204に作用する浮力、タイヤ・リムモデル204が路面モデルに作用する踏面力、流体モデル207の圧力分布、あるいは、流体モデル207における流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布、また、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布等を物理量として算出する。
【0031】
タイヤ性能予測部800は、前記物理量に基づいて、ウェット性能の良否を予測する部位である。もちろん、ここでは、流体モデル207を準備しないドライ路面で、タイヤ・リムモデル204にキャンバ角やスリップ角が付いたコーナリング状態でのタイヤ性能、もしくはタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与したブレーキング状態のドライ性能を予測してもよい。
詳細については後述する。
【0032】
このような本装置100がコンピュータによって構成される場合、以下のプログラムが実行されて各部位が機能する。すなわち、所望の動的状態の構造体を再現した構造体モデルをコンピュータに作成させるコンピュータが実行可能なプログラムは、
解析対象とするタイヤに対して、少なくとも変形可能な弾性体部分を用いて構成したタイヤ・リムモデルをCPU110に作成させ、メモリ120に記憶させる手順と、
作成されたタイヤ・リムモデル204から、このタイヤ・リムモデル204の弾性体部分を剛体に変換した剛体モデルをCPU110に作成させる手順と、
前記剛体モデルに、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与して、前記剛体モデルの動的状態を表す動的情報をCPU110に算出させ、メモリ120に記憶させる手順と、
メモリ120から前記動的情報を呼び出し、前記剛体モデルを前記タイヤ・リムモデル204に復元することによって、動的状態の構造体を再現した動的状態のタイヤ・リムモデル204をCPU120に作成させる手順とを有する。
【0033】
このような本装置100は、図3〜6に示すフローに沿って動的状態のタイヤ・リムモデルを作成することにより、ドライ性能やウェット性能の予測を行うことができる。
図3はモデル作成部200で行われるモデル作成の流れの一例を、図4は静的解析部300で行われる静的解析処理の流れの一例を、図5は剛体変換部400で行われる剛体変換処理の流れの一例を、図6は動的解析部500で行われる動的解析処理の流れの一例を、それぞれ示す。
【0034】
まず、本装置100に、操作者10から図示されない操作系によって、モデル作成条件および転動条件が入力される。
モデル作成条件とは、タイヤ単体モデル、リムモデル203、路面モデル205および流体モデル207をどのように構成するか、モデルの形状、メッシュ分割数、あるいは、有限要素モデルの場合、有限要素の配置や有限要素の剛性等を設定するための条件である。
一方、転動条件とは、タイヤ・リムモデル204の動的状態を定める、並進速度や回転角速度、およびタイヤ・リムモデル204に負荷される荷重、さらには路面モデル205による摩擦係数等のタイヤ・リムモデル204の運動や接地に関する条件である。
【0035】
まず、モデル作成部200では、タイヤ基台モデル201の作成(ステップS201)およびパターンモデル202の作成(ステップS202)を行い、パターンモデル202をタイヤ基台モデル201へマージしてタイヤ単体モデルを作成する(ステップS203)。
一方、別途リムモデル203を作成し(ステップS204)、先に作成されたタイヤ単体モデルとリムモデル203をマージしてタイヤ・リムモデル20を作成する(ステップS205)。
一方、別途路面モデル205を作成し、この路面モデル205をタイヤ・リムモデル204に付加し、タイヤ・路面モデル206を作成する(ステップS207)。タイヤ性能としてドライ性能を予測する場合、モデル作成は終了する。
一方、タイヤ性能としてウェット性能を予測する場合、別途流体モデル207(図15(a)参照)を作成し(ステップS208)、タイヤ・路面モデル206に流体モデル207を付加することで、タイヤ・流体モデル208を作成する(ステップS209)。これにより、モデル作成は終了する。
【0036】
なお、タイヤ単体モデルは、図2(a)に示すような有限要素モデルであるタイヤ基台モデル201に図2(b)に示すような有限要素モデルであるパターンモデル202とがマージされて作成された有限要素モデルのタイヤ単体モデルである。ここで、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202とがモデル作成条件により別々に設定されて作成され、パターンモデル202がマージされてタイヤ単体モデルが作成されてもよいし、モデル作成条件により直接タイヤ単体モデルが作成されてもよい。また、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202の作成は、メモリ120に記憶されていたモデルを呼び出して再生したものであってもよい。
【0037】
リムモデル203は、図2(c)に示すように、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルである。しかし、タイヤ単体モデルと異なり、解析範囲において有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さな変形に抑えた、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっている。
リムモデル203は、変形可能な弾性体の有限要素モデルであってもよいし、一部分が剛体となっており、他の部分が弾性体となって構成されたものであってもよい。後述するように、並進速度および回転角速度をタイヤ・リムモデルに付与する際に、リムモデル203も同時に剛体モデルとすることができるためである。
路面モデル205は、図2(d)に示すように、変形を許容しない剛体平面モデルとなっていてもよい。
【0038】
なお、パターンモデル202のタイヤ基台モデル201へのマージおよびリムモデル203のタイヤ単体モデルへのマージは、具体的には、パターンモデル202やリムモデル203のファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、材料定数の数値データとが、タイヤ基台モデル210やタイヤ単体モデルのファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、材料定数の数値データとに結合される。その際、タイヤ単体モデルとリムモデル203の接触部分は剛結合されてもよいし、接触部分に剛体要素または弾性体要素が別途付加されてもよい。
以上がモデル作成の流れである。
【0039】
次に、静的解析部300で行われる静的解析の流れを図4に沿って説明する。
作成されたタイヤ・リムモデル204に対して内圧充填処理が行われる(ステップS301)。内圧充填処理は、タイヤ内表面に相当するタイヤ・リムモデル204の空洞領域内面に圧力を加える計算によって行われる。
この処理が所定時間行われたか否かが判断され(ステップS302)、所定時間が経過するまで内圧充填処理が施される。
さらに、内圧充填処理されたタイヤ・リムモデル204が路面モデル205に対して接地するように、設定された荷重に応じて接地処理が行われる(ステップ303)。この処理が所定時間行われたか否かが判断され(ステップS304)、所定時間が経過するまで接地処理が施される。なお、荷重は転動条件の1つとして与えられている。
これによってタイヤ・リムモデル204は、路面モデル205に接地して変形されたタイヤ・リムモデル204となる。接地処理の際、転動条件の1つとして設定された路面モデル205の摩擦係数を用いて接地処理を行ってもよい。
以上が静的解析の流れである。
【0040】
次に、剛体変換部400で行われる剛体変換処理の流れを図5に沿って説明する。
タイヤ・リムモデル204は、剛体変換部400において、剛体モデルへ変換される(ステップS401)。剛体モデルへの変換では、後述するように転動を開始させた時に有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となるように、タイヤ・リムモデル204の剛性に関する材料定数を極めて高い値に変換し、タイヤ・リムモデル204の弾性体部分を剛体化する。
その後、剛体モデルに対して並進速度および回転角速度を付与し、動的状態の算出を行う(ステップS402)。
並進速度および回転角速度は、転動条件として操作者により設定されたものである。例えば、並進速度は、ドライ性能やウェット性能を解析するために速度100km/時が設定される。一方、回転速度は、荷重を負荷して変形したタイヤリムモデルの回転半径、例えば有効転がり半径によって並進速度を除した値を回転角速度として付与される。ここで、有効転がり半径とは、接地変形したタイヤリムモデルを転動させて一回転させた時の移動距離を2πで除した値である。
これによって、剛体モデルの転動時の動的情報を得ることができる。なお、有効転がり半径の替わりに、ステップS205にて作成されたタイヤ・リムモデル204の最大外径と同等またはこれより小さく、接地変形したタイヤ・リムモデル204におけるタイヤ回転軸に相当する中心軸と路面モデル205間の距離とより短い回転半径によって並進速度を除した値を、回転角速度として付与してもよい。このような回転角速度を与えることで、後述するように、剛体モデルをタイヤリムモデルに復元した際に発生する振動が大きくならず、少ない回数の時間ステップで(短時間で)安定した転動状態のタイヤリムモデルを作成することができる。
このようにして求められるタイヤ・リムモデル204の動的情報は、例えば、剛体モデルにおける各節点の変位の情報である。
【0041】
なお、本実施形態では、並進速度および回転角速度をタイヤ・リムモデル204に付与するが、本発明では、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与すればよい。
【0042】
この後、剛体モデルをタイヤ・リムモデル204に復元する(ステップS403)。この復元は、剛体モデルにおける材料定数をステップS401におけるタイヤ・リムモデル204の材料定数に戻す処理をいう。
一方、剛体モデルに付与された回転角速度は、復元されたタイヤ・リムモデル204を走行させる処理において除去して、並進速度のみを常時付与してもよく、これにより、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に対して制動や駆動のない転動状態を作り出すことができる。その際、路面モデル205との摩擦係数を考慮して転動状態を作り出してもよい。
勿論、制動や駆動時の転動状態を作り出す場合は、以降の計算処理において回転角速度をタイヤ・リムモデル204に付与してもよいし、回転トルクを付与してもよい。この場合、所望の制動力または駆動力に、タイヤ・リムモデル204の回転半径、例えば、タイヤ・リムモデル204の最大外径と同等またはこれより短く、接地変形したタイヤ・リムモデル204におけるタイヤ回転軸に相当する中心軸と路面モデル205間の距離より短い所定の長さ、好ましくは有効転がり半径を乗算した値を回転トルクとして付与するとよい。
この後、算出された動的情報を初期条件として、復元されたタイヤ・リムモデル204を路面モデル205上で転動させる計算処理を行う。この時、動的情報は剛体モデルにおける情報なので、計算処理直後は振動やバイアス成分が発生するが、少ない回数の時間ステップで収束し安定した転動状態を作り出すことができる。このようにしてタイヤ・リムモデル204を復元する(ステップS403)ことにより、動的状態のタイヤ・リムモデル204の作成を行う。
【0043】
図7および図8はそれぞれ、転動状態のタイヤ・リムモデル204が作成され、後述する動的解析までの処理内容の時間履歴、タイヤリムモデルに並進速度と回転角速度を付与する過程の一例、およびタイヤリムモデルのタイヤ回転軸にかかる軸力の変化を示すグラフを示している。また、図9(a)〜(c)は、タイヤ・リムモデル204および剛体モデルの状態を説明する図である。
【0044】
図7および図8に示すように、内圧充填処理が終了した時刻を基準として、接地処理は、0.000002秒(2μ秒)の時間間隔毎の時間ステップで行ってタイヤ・リムモデル204を路面モデル205に近づける。接地処理においては、時刻0.02秒からタイヤ・リムモデル204が路面モデル205に接地を開始する。そして、時刻0.099993秒まで接地処理が行われる。ここで、時間ステップの時間間隔を2μ秒としているが、このような時間間隔は、クーラン条件によって下限値が定まっており、この下限値より長い時間間隔が設定される。
【0045】
この後、時刻0.099995秒において、変形可能な弾性体部材で構成されたタイヤ・リムモデル204が剛体モデルに変換される。この時、タイヤ・リムモデル204は静止した状態で並進速度は0km/時である(図9(a)参照)。次に、時刻0.099997秒において、剛体モデルに並進速度100km/時および回転角速度が付与されて、静止状態から動的状態に移行する(図9(b)参照)。さらに、次の時刻0.099999秒において、剛体モデルが変形可能なタイヤ・リムモデル204に復元される。また、これと同時に、並進速度と共に付与された回転角速度が除去される(図9(c)参照)。こうして、タイヤ・リムモデル204が、剛体モデルによって算出された動的情報を初期条件、すなわち、並進速度100km/時を維持した転動状態として、これ以後の時間ステップの計算処理が続けられる。
【0046】
このようにしてタイヤ・リムモデル204が転動を開始するが、上述したように、時刻0.099997秒において、剛体モデルに並進速度100km/時および回転角速度が付与されて、静止状態から動的状態に移行する際の形状は、時刻0.099995秒におけるタイヤ・リムモデル204の形状をそのまま維持しているため、時刻0.099999秒において、剛体モデルが変形可能なタイヤ・リムモデル204に復元された直後では振動が発生する。しかし、この振動は転動状態の計算を繰り返し行うことによってがやて収束する。こうしてドライ路面を転動するタイヤを再現した動的状態のタイヤ・リムモデルを作成することができる。
【0047】
図8には、振動の収束する様子の一例が示されている。すなわち、0.10001秒後の時間ステップ以降、振動が発生するが、時刻0.15秒付近の時間ステップでその振動は略収束し、安定した転動状態となっていることがわかる。なお、図8でいう「上下力」とは、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸にかかる路面モデル205の面に対して上下方向の軸力(荷重)であり、「前後力」とは、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸にかかる前後方向(進行方向)の軸力である。
【0048】
このように、タイヤ・リムモデル204を例えば並進速度100km/時といった高速の転動状態を安定した状態で得るには、タイヤ・リムモデル204を一旦剛体モデルに変換して、並進速度および回転角速度を付与した後、剛体モデルをタイヤ・リムモデル204に復元することによって、短時間の計算処理で(少ない回数の時間ステップで)、安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0049】
これに対し、高速の並進速度およびこれに対応した回転角速度を変形可能なタイヤ・リムモデル204に瞬時に与える場合、リムモデル203の代表点に並進速度および回転角速度を与え、しかも、瞬時に静止状態から高速の並進速度を強制的に与えるので、加速度が極めて大きくなり、タイヤ・リムモデル204が極端な局部変形を起こしてしまう。
例えば、タイヤ・リムモデル204の変形可能な弾性体部分を剛体化しないままタイヤ・リムモデル204のリムモデル203に並進速度を付与しても、慣性の法則によって、タイヤ単体モデルは依然としてその位置に居続けようとする。その結果、リムモデル203の移動に対して、タイヤ単体モデルの変形が追従することができず、図10に示すように、リムモデル203がタイヤ単体モデルから飛び出すような局部変形を起こす。
また、タイヤ単体モデルの変形可能な弾性体部分を剛体化したとしても、回転角速度を付与せず並進速度のみを付与した場合は、剛体モデルが変形可能なタイヤ・リムモデル204に復元された直後、図11に示すように、タイヤ・リムモデル204のパターンモデル202が路面モデル205と接触している部分(図11中丸印部分)が極めて大きな局部変形を起こしてしまう。
【0050】
このような局所変形を有する動的情報を初期条件として、これ以降の転動状態の計算処理を行うことは困難であり、たとえ、計算を続行することができたとしても、メッシュが崩れるなどにより計算が破綻してストップしてしまう。
このため、剛体化したタイヤ・リムモデルに、並進速度を付与する場合は、その回転を補助する目的で、回転角速度を同時に付与することが必要となる。
【0051】
従来、タイヤ・リムモデル204を剛体化せずに、変形可能な弾性体のまま加速して並進速度を増加させる際、上記のような異常変形を生じさせないためには、タイヤをゆっくりと加速させる必要があり、並進速度をわずかづつ増加させなければならない。このため、並進速度100km/時といった高速の転動状態を得るまでに多大な時間ステップを要し、ひいては計算時間が増大してしまう。
【0052】
このような従来の問題に対して、上記方法は、タイヤ・リムモデルを所定の速度まで加速する計算時間を大幅に削減することができるため、比較的短時間(少ない回数の計算ステップ)で安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作り出すことができる。さらに本手法は、任意の速度まで瞬時に速度を増大させることが可能であるため、自動車用タイヤのように、様々な走行速度におけるタイヤ性能を効率良く予測するために必要不可欠な手法であると言える。
図13は、従来方法でゆっくりと加速した場合の並進速度,上下力、前後力の時刻歴を示したものである。図8に示す本発明の方法による加速方法は、極めて短時間に安定した結果を得ることができることが分かる。
こうして動的状態となったタイヤ・リムモデル204を用いて動的解析が行われる。
【0053】
動的解析部500にて行われるタイヤのドライ性能を予測するために行われる動的解析の流れを図6に沿って説明する。
まず、ステップS403で復元されたタイヤ・リムモデル204と路面モデル205の境界条件(例えば、タイヤ回転軸の進行方向変位を固定して、路面モデル205をタイヤ・リムモデル204の後方へ移動させることによりタイヤ・リムモデル204を転動させるなどの計算条件)を設定して(ステップS501)タイヤ・路面モデル206にこの境界条件を付与する。
タイヤ・路面モデル206について、設定された境界条件に基づいて、並進速度を付与した条件下におけるタイヤ・リムモデル204の変位や応力を計算する(ステップS502)。
この後、タイヤ・リムモデル204の計算処理時間が所定の時間経過したか否かが判別される(ステップS503)。所定の時間が経過していない場合、ステップS501へ戻り、変形後のタイヤリムモデルの変位や応力を新たな境界条件として設定して計算が繰り返される。こうして、安定した転動状態(動的状態)のタイヤ・リムモデル204が作成される。
【0054】
すなわち、動的解析部500で行われる動的解析は、タイヤ・リムモデル204を路面モデル205上、一定速度のまま転動させる計算を所定時間だけ繰り返す。この時、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に傾斜角を付与して、キャンバ角やスリップ角を付与したコーナリング状態を再現してもよいし、さらには、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与したブレーキング状態などを再現してもよい。
以上が、動的解析部500で行われる動的解析である。
【0055】
この後、物理量抽出部700にて、動的状態のタイヤ・リムモデル204に生じる物理量を求める。この物理量は、例えば、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205との間に生じる摩擦力、タイヤの変形形状、内部応力分布、エネルギー密度分布、接地形状、接地圧分布などがある。
この物理量を用いてタイヤ性能予測部800にて、タイヤのドライ性能を予測する。
【0056】
図13は、一例として、安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸を傾斜させることでスリップ角を付与した時に生じる横方向軸力を示している。スリップ角は、時刻0.2秒から徐々に増大させ、時刻0.4秒で所定の値になるように変化させている。スリップ角の増大に伴って、時刻0.2秒ではほぼゼロであったタイヤ横方向軸力が徐々に増加して、時刻0.4秒付近でほぼ一定値になっている。
タイヤの横方向軸力は車両の旋回性能に影響をおよぼし、一般的には、この横方向力が大きいほど、車両の操縦性や安定性が高めることができると言われている。したがって、上記タイヤ横方向軸力の大小により、車両の操縦性や安定性に影響を与えるタイヤのドライ性能を予測することができる。
【0057】
一方、ウェット路面でのタイヤ性能を予測する場合、上記の方法で求められる安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を、路面モデル205上に作成された流体モデル207を踏み付けながら通過させることにより、タイヤが水膜を排除しながら転動する動的状態を再現することができる。
【0058】
図14は、動的解析部600にて行われる、タイヤが水膜を排除しながら転動する動的状態を再現する動的解析の流れの一例を示している。図15(a)はモデル作成部200で作成される流体モデル207の一例を、図15(b)は、タイヤ・流体モデル208の一例を示したものである。なお、図15(a),(b)は、リムモデル203を省略してタイヤ・リムモデル204を表している。
ここで、流体モデル207は、路面モデル205上に付加され、さらに、この付加された流体モデル207がタイヤ・リムモデル204に付加されてタイヤ・流体モデル207として作成される。流体モデル207の作成は、図3に示すタイヤ単体モデルの作成(ステップS203)またはタイヤ・リムモデル204の作成(ステップS205)またはタイヤ・路面モデル206の作成(ステップS207)と同時に行われてもよい。
【0059】
流体モデル207は、例えば、図16(a),(b)に示すように固定された空間領域をメッシュ分割したオイラーメッシュによって路面モデル205の上に作成されたものであり、オイラーメッシュ中の下方領域に流体物質が設けられている。この流体物質は密度と粘性係数によって特徴付けられたものである。なお、図16(a),(b)では、リムモデル203を省略してタイヤ・リムモデル204を表している。
この流体モデル207における流動計算は、ウェット路面での動的解析部600における動的解析処理において、公知の有限体積法に基づいて定式化された方程式によって行うことができる。また、タイヤ・リムモデル204が流体モデル207を通過すると、流体物質とタイヤ・リムモデル204の干渉が発生するが、この干渉は、流体と構造体の連成解析として公知の方法、例えば、General Coupling法などを用いて解かれる。
【0060】
動的解析部600における動的解析の流れを図14に沿って説明する。
まず、作成された流体モデル207の境界条件が設定される。例えば、タイヤ・リムモデル204の進行方向前方面および後方面の境界、および、流体物質の上層表面の境界において流体物質の流入流出を自由とし、進行方向に対して側方の境界を壁とする。また、側方の境界において流体物質の流入流出を自由とする。
【0061】
次に、タイヤ・リムモデル204と流体モデル207の境界面の計算が行われる(ステップS601)。
このとき、動的状態のタイヤ・リムモデル204と流体モデル207の干渉部分が認識される。次に、流体モデル207からの圧力がタイヤ・リムモデル204へ与える境界条件として設定され(ステップS602)、これに基づいてタイヤ・リムモデル204の変位や応力が計算される(ステップS603)。
一方、タイヤ・リムモデル204と流体モデル207の境界面が認識され干渉部分とされ、流体モデル207の一部がタイヤ・リムモデル204で隠された状態になり、流体モデル207における流体の体積変化が境界条件として設定される(ステップS604)。これに基づいて、流体モデル207の圧力や流速が計算される(ステップS605)。
【0062】
上記の処理を所定時間だけ繰り返すことで、タイヤ・リムモデル204が流体モデル207における流体を排除しながら転動するウェット路面での動的状態を求めることが可能となる。
このタイヤ・リムモデル204の変形計算(ステップS603)および流体モデル207の流動計算(ステップS605)はどちらを先に行ってもよい。変形計算は有限要素法に基づく公知の方法で、流動計算は有限体積法に基づく公知の方法で行われる。
【0063】
なお、変形計算および流動計算の度に、タイヤ・リムモデル204の物理量あるいは流体モデル207の物理量が算出される。タイヤ・リムモデル204の物理量として、例えば、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に作用する浮力やタイヤ・リムモデル204と路面モデル205の間に生じる摩擦力、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布が算出される。一方、流体モデル207の物理量として、流体モデル207の圧力分布、あるいは、流体モデル207における流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布が算出される。
このような物理量が算出された後、タイヤリムモデルの計算処理時間が所定の時間経過したか否かが判別される(ステップS604)。所定の時間が経過していない場合、タイヤ・リムモデル204の変形計算の結果と流体モデル207の流動計算の結果とから、変形後のタイヤ・リムモデル204と流動後の流体モデル207の境界条件が算出される(ステップS601)。
こうして、所定の時間が経過するまで、上記変形計算および上記流動計算が繰り返し行われる。
【0064】
ここで、ステップS602およびステップS604における境界条件の設定に、例えばGeneral couplingを用いた場合、オイラーメッシュに分割された流体モデル207がタイヤ・リムモデル204と接触するとき、流体モデル207は接触するタイヤ・リムモデル204の境界面によって切断され、この境界面に作用する流体物質の力(物理量)が、切断された境界面と流体モデル207とによって作られる複数の頂点に集約される。そして、この頂点に集約された力がタイヤ・リムモデル204の対応する節点に付与されるようタイヤ・リムモデル204の境界条件が算出される。また、変形したタイヤ・リムモデル204の境界面が幾何学的境界条件として求められる。すなわち、タイヤ・リムモデル204の境界面がタイヤ・リムモデル204と流体モデル207の干渉部分となる。
このようにして、変形計算後のタイヤ・リムモデル204と流動計算後の流体モデル207との干渉部分である境界面が求められ、この境界面に関する境界条件(物理量および幾何学的境界条件)が求められる。
【0065】
求められた境界条件は、タイヤ・リムモデル204および流体モデル207に付与され、次の時間ステップにおける、ステップS603におけるタイヤ・リムモデル204の変形計算およびステップS605における流体モデル207の流動計算に用いられる。このようにして、所定の時間が経過したか否かが判断され(ステップS606)、所定の時間が経過するまで、ステップS601〜ステップS605が繰り返し行われる。
以上が、動的解析部600における動的解析の流れである。
【0066】
この後、所定時間経過すると、物理量抽出部700にて、前記変形計算および流動計算による結果から、動的状態のタイヤ・リムモデル204に生じる物理量がまとめられ、所定の物理量が求められる。
タイヤリムモデルの物理量は、上述したように、例えば、タイヤリムモデルのタイヤ回転軸に作用する浮力やタイヤリムモデルと路面モデルの間に生じる摩擦力、タイヤリムモデルの接地形状、接地面積または接地圧分布である。一方、流体モデルの物理量は、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布である。
【0067】
図17は、ウェット路面でのハイドロプレーニング状態の解析例として、安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204が、時間0.2秒において、流体モデル207を踏み込んで流体モデル207と干渉を開始した時にタイヤ・リムモデル204が受ける軸力について上下軸力の変化を示している。これによると、約0.208秒後において、上下軸力400kg重(約4000N)であったものが軸力200kg重(2000N)に減じている。これは、流体モデル207によって浮力200kg重(2000N)がタイヤ・リムモデル204にかかり、タイヤ・リムモデル204が浮上していることを示している。このような浮力が小さいほど、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に接地しているため、タイヤ・リムモデル204はウェット性能が高いと言える。したがって、上記上下軸力の大小により、タイヤのハイドロプレーニング性能を予測することができる。
また、タイヤ回転軸に作用する浮力、タイヤリムモデルが路面モデルに作用する踏面力、タイヤリムモデルの接地形状、接地面積または接地圧分布や、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布を用いて予測することもできる。
【0068】
以上のようなウェット性能の予測方法は、例えば、タイヤ基台モデル201またはパターンモデル202が予め種々用意された中から、ウェット性能の予測結果が最も良好なタイヤ基台モデル201またはパターンモデル202を選択する際に用いることができる。また、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いながら、タイヤ基台モデル201やパターンモデル202を逐次修正しながら最適なタイヤ基台モデルおよび最適なパターンモデルを見出す際に用いることができる。こうして選択された、あるいは見出されたタイヤ基台モデルおよびパターンモデルを実現するタイヤを設計し、このタイヤを製造することができる。
本発明はこのようなタイヤ製造方法およびこの製造方法を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0069】
上記実施形態では、オイラーメッシュで分割した空間内に流体物質を設けて有限体積法を用いて流体計算を行うが、本発明のタイヤ性能予測方法では、流体物質自体を複数の粒子モデルの集合体とし、複数の粒子モデルを所定の支配方程式の下に流体計算を行う粒子法を用いてもよい。
また、上記実施形態では、タイヤのドライ性能およびウェット性能を予測するものであるが、本発明の構造体モデルの作成は、タイヤのドライ性能およびウェット性能の性能予測に用いる場合に制限されず、耐久性能、振動乗心地性能の予測の際に用いてもよい。また、上記実施形態は、並進運動と回転運動を行って路面上を転動するタイヤを構造体としたものであるが、本発明の構造体モデルの作成方法において構造体はタイヤに制限されない。並進運動のみを行う構造体や回転運動のみを行う構造体を対象としてもよい。
また、上記実施形態では、タイヤ単体モデルにリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルを用いるものであるが、リムモデルを組み合わせることなくタイヤ単体モデルを用いて上述したタイヤ性能の予測を行ってもよい。
本発明によって構造体モデルの動的状態を作成する方法は、静止状態あるいは一定の動的状態の構造体から所望の動的状態の構造体に移行させる場合の構造体モデルにおいて、短時間の計算処理(少ない回数の時間ステップ)により達成することができ、例えば、高速回転するタービンや高速回転する歯車等の複雑形状の工業製品への適用も想定される。さらには、電子分野では、近年発達が目覚しいコンピュータのハードディスク装置や,医学分野には、人間が自動車に乗車して衝突した時の脳や内蔵の損傷解析などにも応用可能である。
【0070】
以上、本発明の構造体モデルの作成方法、タイヤ性能予測方法、タイヤ製造方法、タイヤおよびプログラムについて詳細に述べたが、本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0071】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、所望の動的状態に変化させる場合、構造体モデルを一旦剛体モデルに変換し、この剛体モデルに対して並進速度や回転速度等を瞬時に入力した後、剛体モデルを構造体モデルに復元する処理を行うので、所望の動的状態にある構造体モデルを再現する際の計算処理時間を短縮することができる。また、これを利用してタイヤ性能を短時間で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のタイヤ性能予測方法を実施するタイヤ性能予測装置の一例の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】 (a)〜(f)は、タイヤ性能予測装置で作成される各種モデルの一例を示す斜視図である。
【図3】 本発明の構造体モデルの作成方法におけるモデル作成の一例の流れを示すフローチャートである。
【図4】 本発明の構造体モデルの作成方法における静的解析の一例の流れを示すフローチャートである。
【図5】 本発明の構造体モデルの作成方法における剛体変化の一例の流れを示すフローチャートである。
【図6】 本発明のタイヤ性能予測方法における動的解析の一例の流れを示すフローチャートである。
【図7】 本発明の構造体モデルの作成方法を時系列に説明する図である。
【図8】 本発明の構造体モデルの方法で得られる軸力の時刻歴の一例を示す図である。
【図9】 (a)〜(c)は、本発明の構造体モデルの方法で得られるタイヤ・リムモデルおよび剛体モデルの状態を説明する図である。
【図10】 従来の方法で得られるタイヤ・リムモデルの変形の一例を示す図である。
【図11】 従来の方法で得られるタイヤ・リムモデルの変形の他の例を示す図である。
【図12】 従来の方法で得られるタイヤ・リムモデルにおけるタイヤ軸力の時刻歴の一例を示す図である。
【図13】 本発明のタイヤ性能予測方法において路面モデル上でスリップ角を付与したときのタイヤ横力の時刻歴の一例を示す図である。
【図14】 本発明のタイヤ性能予測方法における動的解析の他の例の流れを示すフローチャートである。
【図15】 (a)は本発明のタイヤ性能予測方法において作成される流体モデルの一例を、(b)は本発明のタイヤ性能予測方法において作成されるタイヤ・流体モデルの一例を示した図である。
【図16】 (a)は本発明のタイヤ性能予測方法において作成されるタイヤ・流体モデルの側面図、(b)は本発明のタイヤ性能予測方法において作成されるタイヤ・流体モデルの拡大図である。
【図17】 本発明のタイヤ性能予測方法において作成されるタイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸にかかる上下力の変化を示す図である。
【符号の説明】
100 タイヤ性能予測装置
110 CPU
120 メモリ
200 モデル作成部
201 タイヤ基台モデル
202 パタンーンモデル
203 リムモデル
204 タイヤ・リムモデル
205 路面モデル
206 タイヤ・路面モデル
207 流体モデル
208 タイヤ・流体モデル
300 静的解析部
400 剛体変換部
500,600 動的解析部
700 物理量抽出部
800 タイヤ性能予測部

Claims (16)

  1. 所望の動的状態の構造体を再現する構造体モデルの作成方法であって、
    解析対象とする構造体に対して、少なくとも変形可能な弾性体部分を有して構成される構造体モデルを作成するモデル作成ステップと、
    前記構造体モデルにおける変形可能な弾性体部分を剛体に変換した剛体モデルを作成する剛体化ステップと、
    前記剛体モデルに、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与して、前記剛体モデルの動的状態を算出する動的状態算出ステップと、
    前記動的状態を有する前記剛体モデルを、変形可能な弾性体部分を有して構成される前記構造体モデルに復元することによって、前記構造体モデルを所望の動的状態とする弾性体復元ステップと、を有し、
    前記構造体モデルは、並進運動および回転運動の少なくとも一方の運動を行うタイヤのタイヤモデルを含むことを特徴とする構造体モデルの作成方法。
  2. 前記タイヤモデルは、解析対象の構造体の構成部材を有限個の要素に分割して作成された有限要素モデルである請求項1に記載の構造体モデルの作成方法。
  3. 前記タイヤモデルは、変形可能なトレッドパターンを外表面に備える請求項1又は2に記載の構造体モデルの作成方法。
  4. 前記構造体モデルは、弾性体として、もしくは剛体としてモデル化されたリムモデルが前記タイヤモデルに装着されたモデルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体モデルの作成方法。
  5. 前記タイヤモデルは、内圧充填処理の施された内圧充填後の変形形状を有するモデルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造体モデルの作成方法。
  6. 前記モデル作成ステップにおいて、前記タイヤモデルが作成される他、前記タイヤモデルを接地する路面モデルが作成され、
    前記内圧充填後のタイヤモデルは、前記内圧充填処理後、荷重が付与されて前記路面モデル上で接地変形したモデルである請求項に記載の構造体モデルの作成方法。
  7. 前記剛体モデルは、前記接地変形したタイヤモデルの変形形状を維持したまま剛体に変換した剛体モデルである請求項に記載の構造体モデルの作成方法。
  8. 前記動的状態算出ステップにおいて、前記路面モデル上で接地変形した前記タイヤモデルの形状を有する前記剛体モデルに、並進速度とタイヤ回転軸の軸周りの回転角速度とを付与する際、前記モデル作成ステップで作成された前記タイヤモデルの最大外径と同等またはこれより短く、かつ、接地変形した前記タイヤモデルにおける前記タイヤ回転軸と前記路面モデル間の距離よりも長い回転半径で前記並進速度を除した値を、前記剛体モデルに前記回転角速度として付与する請求項に記載の構造体モデルの作成方法。
  9. 前記回転半径を前記転動するタイヤの有効転がり半径とする請求項に記載の構造体モデルの作成方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造体モデルの作成方法を用いて得られる動的状態のタイヤモデルを用いてタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法であって、
    動的状態の前記タイヤモデルまたは前記路面モデルに生じる物理量を求めるステップと、
    この物理量を用いてタイヤの性能を予測するステップと、を少なくとも有することを特徴とするタイヤ性能予測方法。
  11. 動的状態の前記タイヤモデルのタイヤ回転軸にキャンバ角、スリップ角、制動トルクおよび駆動トルクの少なくとも1つを付与して第1の動的解析を行う第1の動的解析ステップを、前記物理量を求めるステップの前に有し、
    前記物理量を前記第1の動的解析ステップの解析結果から求める請求項10に記載のタイヤ性能予測方法。
  12. 請求項10に記載のタイヤ性能予測方法であって、
    動的状態の前記タイヤモデルと干渉する流体モデルを作成するステップと、この流体モデルと動的状態の前記タイヤモデルとを用いて第2の動的解析を行う第2の動的解析ステップとを、前記物理量を求めるステップの前に有し、
    前記第2の動的解析ステップは、
    前記タイヤモデルと干渉する前記流体モデルの流動計算を前記タイヤモデルを用いて行うステップと、
    前記流体モデルと干渉する動的状態の前記タイヤモデルの変形計算を行うステップと、
    前記変形計算後の動的状態の前記タイヤモデルと前記流動計算後の前記流体モデルとの干渉部分を求め、この干渉部分に関する境界条件を求めて前記流体モデルおよび動的状態の前記タイヤモデルに付与し、前記流動計算および前記変形計算を繰り返し行うステップとを有し、
    前記物理量を、前記流動計算および前記変形計算の計算結果から求めるタイヤ性能予測方法。
  13. 前記第2の動的解析ステップにおいて、動的状態の前記タイヤモデルのタイヤ回転軸にキャンバ角、スリップ角、制動トルクおよび駆動トルクの少なくとも1つを付与する請求項12に記載のタイヤ性能予測方法。
  14. 請求項10〜13のいずれか1項に記載のタイヤ性能予測方法を用いて設計してタイヤを製造することを特徴とするタイヤ製造方法。
  15. 請求項14に記載のタイヤ製造方法を用いて製造されたことを特徴とするタイヤ。
  16. 所望の動的状態の構造体を再現する構造体モデルをコンピュータに作成させるコンピュータが実行可能なプログラムであって、
    解析対象とする構造体に対して、少なくとも変形可能な弾性体部分を有して構成される構造体モデルをコンピュータの演算手段に作成させ、コンピュータの記憶手段に記憶させる手順と、
    前記構造体モデルにおける変形可能な弾性体部分を剛体に変換した剛体モデルを前記演算手段に作成させる手順と、
    前記剛体モデルに、変位、速度、加速度、力、所定軸周りの回転角、所定軸周りの回転角速度、所定軸周りの回転角加速度、および所定軸周りのトルクの少なくとも1つを付与して、前記剛体モデルの動的状態を前記演算手段に算出させ、前記記憶手段に記憶させる手順と、
    前記記憶手段から前記動的情報を呼び出し、前記動的状態を有する前記剛体モデルを、変形可能な弾性体部分を有して構成される前記構造体モデルに復元することによって、前記構造体モデルが所望の動的状態となるように前記演算手段に計算させる手順と、を有し、
    前記構造体モデルは、並進運動および回転運動の少なくとも一方の運動を行うタイヤの タイヤモデル含むことを特徴とする構造体モデルの作成をコンピュータに実行させるプログラム。
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