JP2004340849A - タイヤモデル作成方法、タイヤ性能予測方法およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】有限要素を用いたタイヤモデルの接地処理、あるいは、転動処理を行う際、振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成する。
【解決手段】タイヤ・リムモデル204に接地処理を施す際、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に位置する節点Rに、垂直方向に作用するダンピング要素Aを付与して、路面を再現した路面モデルにタイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行う。接地したタイヤ・リムモデル204に転動処理を施す際、ダンピング要素Aの他に、接地したタイヤ・リムモデル204の、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素に、位相遅れ特性を有する剛性に関する材料定数を付与して、転動処理を行う。
【選択図】図7
【解決手段】タイヤ・リムモデル204に接地処理を施す際、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に位置する節点Rに、垂直方向に作用するダンピング要素Aを付与して、路面を再現した路面モデルにタイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行う。接地したタイヤ・リムモデル204に転動処理を施す際、ダンピング要素Aの他に、接地したタイヤ・リムモデル204の、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素に、位相遅れ特性を有する剛性に関する材料定数を付与して、転動処理を行う。
【選択図】図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有限要素を用いてモデル化され、路面に接地したタイヤ、あるいは路面上を転動するタイヤを再現したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成方法、このタイヤモデル作成方法を用いてタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法およびこれらの方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの処理速度の向上に伴って、車両に装着される空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)のドライ路面でのタイヤ性能(ドライ性能)や濡れた路面でのタイヤ性能(ウェット性能)をはじめとする、路面上を転動して走行するタイヤの種々のタイヤ性能を、有限要素法や有限体積法を用いて予測する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記非特許文献1では、パターン付きタイヤのコーナリングシミュレーションを有限要素解析を用いて行っている。すなわち、剛表面からなる路面モデルと、タイヤの構造および形状を忠実に再現したパターン付きタイヤモデルとを作成し、タイヤの進行方向に対してタイヤの向きがずれている(スリップ角が付いている)状態を再現し、路面モデルとパターン付きタイヤモデルとの間に発生する摩擦力に基づくコーナリングフォースの発生シミュレーションを開示している。これによると、発生するコーナリングフォースのシミュレーション結果は実測の結果と一致する妥当な結果を得ることができるとされている。
【0004】
また、下記特許文献1では、有限要素を用いたタイヤモデルと有限体積モデルの流体モデルとを用いて、路面モデル上を転動するタイヤモデルが流体モデルと接触することで発生する物理量を算出することにより、タイヤのウェット性能を予測するタイヤ性能予測方法を提案している。
このような転動状態におけるタイヤ性能を評価するには、静止状態のタイヤモデルに速度を与え所定の走行速度になるまで徐々に速度を上昇させる過程の計算を実行し、定常走行状態のタイヤモデルを作成しなければならない。
【0005】
【非特許文献1】
「パターン付タイヤのコーナリングシミュレーション」,LS−DYNA User Conference ,’97 講演論文集, 1997年11月26−27日
【特許文献1】
特許第3133738号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、作成されたタイヤモデルを路面モデルに接地させ、所定の荷重が負荷されたタイヤモデルを生成する場合、所定の荷重が負荷されるまでタイヤモデルと路面モデルとを所定の速度で近づけた後停止する。また、転動するタイヤモデルを生成する場合、路面モデルに接地して静止しているタイヤモデルを転動させ、徐々に速度を上げていく。すなわち、いずれの場合も、タイヤモデルを動的な状態から静的な状態へ、あるいは、静的な状態から動的な状態へ移行させる処理を行う。
【0007】
しかし、この処理を行うことで、処理後のタイヤモデルには振動が発生し、場合によっては、発生した振動が収束しない場合もある。振動が収束する場合でも、収束するまでの時間が長く、処理速度の速いコンピュータといえども、振動が収束するまで、各時間ステップ毎に逐次計算を行わなければならず、多大な時間が必要となる。
一方、上記処理において、タイヤモデルに振動を発生させないように長時間に渡りゆるやかに速度を変化させることもできるが、処理速度の速いコンピュータといえども、振動が収束するまで計算を多大な時間行わなければならない。
すなわち、いずれの場合も、所定の状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく再現することができないといった問題があった。
このような問題については、上記非特許文献1あるいは特許文献2において、何も開示しておらず、示唆もされていない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、有限要素を用いたタイヤモデルの接地処理、あるいは、転動処理を行う際、タイヤモデルが振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成するタイヤモデル作成方法、および、この作成方法を用いたタイヤ性能予測方法、さらには、これらの方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを作成するステップと、前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを作成し、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施すステップと、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法を提供する。
例えば、タイヤの転動シミュレーションをタイヤモデルを用いて行う際、接地処理および転動処理を行う。その際、接地処理されたタイヤ・リムモデルが振動しない安定した状態として効率よく作成されるように、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与する。
【0010】
ここで、前記ダンピング要素は、例えば、前記路面モデルの面の垂直方向に可動する、前記タイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸に位置する節点に付与されるダンパ要素である。あるいは、前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である。
すなわち、タイヤモデルを用いてタイヤの転動シミュレーションを行う際、前記ダンパ要素は、タイヤ回転軸に位置する節点に取り付けられて、タイヤ回転軸に減衰力を作用させてタイヤ・リムモデルの上下振動(路面に対して垂直の振動)を減衰させる。一方、前記グローバルダンピング要素は、前記タイヤ・リムモデルの各節点に減衰力を作用させてタイヤ・リムモデルの上下振動を減衰させる。
前記ダンパ要素は、接地処理中、タイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸において生じる上下振動を減衰させることはできるが、タイヤモデルの各節点を効率よく減衰させることはできない場合もある。この場合、前記グローバルダンピング要素を用いて接地処理を行うのが好ましい。
【0011】
なお、前記ダンピング要素の減衰係数は、臨界減衰係数を0.5〜2.0倍したものであるのが好ましい。この臨界減衰係数は、振動解析の分野で公知なもの係数であり、種々の方法によって臨界減衰係数の値を求めることができる。
例えば、前記ダンピング要素としてダンパ要素を用いる場合、実際のタイヤを加振して得られる振動波形から公知の手法により、臨界減衰係数を同定して設定してもよいし、前記タイヤの質量をm、前記タイヤの縦バネ係数をkとしたとき、質量mと縦バネ係数kの積の平方根を2倍した値、すなわち下記式(1)で定める値c0 を臨界減衰係数の値としてもよい。この値c0 に0.5〜2倍したものをダンパ要素の減衰係数として用いる。
さらには、前記ダンピング要素がグローバルダンピング要素の場合、減衰係数をゼロとした条件で前記タイヤ・リムモデルに荷重を与えて接地させる際に生じる上下振動を予め計算する。この時の振動の周期tから自由角振動数ωを求め、この自由角振動数ωを下記式(2)に示すように前記タイヤ・リムモデルの質量マトリクスMに乗算して、各節点に付与する臨界減衰係数をマトリクス要素として有する臨界減衰マトリクスC0 を求める。この場合、臨界減衰マトリクスC0 の各マトリクス要素の各値に0.5〜2倍したものをグローバルダンピング要素の減衰係数として用いる。なお、式(2)で表される臨界減衰マトリクスC0 は、質量比例減衰型の減衰マトリクスである。
いずれの場合においても、算出される臨界減衰係数に0.5〜2倍した値を用いる。
【0012】
c0 = 2・(m・k)(1/2) (1)
C0 = 2・ω・M=2・(2π/t)・M (2)
【0013】
さらに、本発明は、路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを作成するステップと、路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに転動処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法を提供する。
【0014】
ここで、前記路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの作成は、上述した、路面に接地したタイヤを再現したタイヤモデルの作成方法を用いて行われるのが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、前記タイヤモデル作成方法で作成されたタイヤ・リムモデルを用いてタイヤ性能を予測する方法であって、前記タイヤ・リムモデルに付与されたダンピング要素が前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である場合、このグローバルダンピング要素を取り除いた後、前記タイヤ・リムモデルを用いて、所定の条件でタイヤ挙動を再現する演算処理を行うステップと、この演算処理結果から特性物理量を算出してタイヤ性能を予測するステップと、を有することを特徴とするタイヤ性能予測方法を提供する。すなわち、前記接地処理の後、転動処理を行う場合、タイヤ・リムモデルの各節点にグローバルダンピング要素を付与したまま、転動処理を行うことはできない。各節点が速度を持ってタイヤ・リムモデルが回転するとき、グローバルダンピング要素により、移動する各節点に対して減衰力が作用するためである。各節点に作用する減衰力の方向を制限したグローバルダンピング要素であっても、移動する各節点に対して減衰力が作用する。
そして、転動処理においてタイヤ・リムモデルの移動方向である前後方向の振動(前後振動)を減衰させるために、タイヤトレッド部さらにはサイド部に対応する有限要素の剛性に関する材料定数に位相遅れ特性(tanδ)を付与し、この位相遅れ特性によりタイヤ・リムモデルに生じる前後振動を減衰させる。なお、前記接地処理において前記ダンパ要素を用いた場合、転動処理において前記ダンパ要素を取り除くことなく付与したままとし、転動処理時に生じるタイヤ・リムモデルの上下振動を減衰させることができる。
【0016】
さらに、本発明は、路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを前記演算手段を用いて作成させ、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施す処理を前記演算手段に実行させる手順と、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラムを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに施す転動処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラムを提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0019】
本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法およびプログラムを、下記に示すタイヤ性能予測装置に基づいて説明する。
図1は、タイヤ性能予測装置100(以降、本装置という)の概略の構成を示す概略構成図である。
【0020】
本装置100は、解析対象とするタイヤ単体モデル(タイヤモデル)あるいはタイヤ単体モデルとリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルをはじめとする各種モデルの作成を行うモデル作成部200と、タイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施す内圧充填処理部300と、路面モデルに荷重を負荷して振動のない安定した接地状態のタイヤ・リムモデルを作成する接地処理部400と、接地処理部400の処理結果から振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成する転動処理部500と、ドライ路面でのコーナリング状態や制動状態などドライ路面での動的状態、あるいは、ハイドロプレーニング状態などのウェット路面での動的状態を、転動状態のタイヤ・リムモデルを用いてシミュレーション演算し、演算結果からタイヤ・リムモデルなどに発生する特性物理量を算出して、ドライ路面やウエット路面でのタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測部600と、を有し、さらに、上記各部位の機能および制御を行うCPU110と、各部位で作成された結果を保持するメモリ120とを有する。
【0021】
本装置100は、プログラムを実行することによって各部位が機能を発揮するコンピュータによって構成された装置であってもよいし、専用回路によって構成された専用装置であってもよいし、一部分がコンピュータにより、他の部分が専用回路によって構成された装置であってもよい。
【0022】
図2(a)〜(f)は、モデル作成部200で作成される各種モデルの一例を示す。
モデル作成部200は、操作者により図示されないマウスやキーボード等の操作系を用いて入力設定されたモデル作成条件に基づいてタイヤ基台モデル201(図2(a)参照)とパターンモデル202(図2(b)参照)とを組み合わせたタイヤ単体モデル(図示されない)を作成する。また、このタイヤ単体モデルとリムモデル203(図2(c)参照)とを組み合わせたタイヤ・リムモデル204(図2(d)参照)や、さらに別途作成された路面モデル205(図2(e)参照)を組み合わせたタイヤ・路面モデル206(図2(f)参照)を作成する。さらに、ウェット路面でのタイヤ性能を予測する場合には、図示されない流体モデルを路面モデル205の上に作成することで、タイヤ・流体モデルを作成する。
【0023】
なお、タイヤ単体モデルは、変形可能な弾性体の有限要素によって構成された三次元有限要素モデルである。例えば、カーカス補強部材およびベルト補強部材、ビード補強材等の構成部材は、張力と曲げ剛性を持つシェル要素で作成され、ゴム部材、例えば、トレッドゴム部材やサイドウォールゴム部材やビードフィラーゴム部材やカーカスコートゴム部材等の構成部材は、4面体、5面体、6面体固体要素などで作成される。
【0024】
図2(a)に示す有限要素モデルとしてのタイヤ基台モデル201と、図2(b)に示す有限要素モデルとしてのパターンモデル202は変形可能なモデルによって構成され、タイヤ基台モデル201にパターンモデル202が合体(マージ)されることで、タイヤ単体モデルとして作成される。モデル作成部200は、操作者によるモデル作成条件によって直接タイヤ単体モデルを作成してもよいし、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を別途作成した後、合体してタイヤ単体モデルを作成してもよい。
【0025】
図2(c)に示すリムモデル203は、タイヤ回転軸でもあるリムモデルの回転軸に節点を有する、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルであるが、解析範囲において有限要素の変形を許容しないように、あるいは、極めて小さな変形に抑えるように、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっていてもよい。
図2(d)に示すタイヤ・リムモデル204は、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を有する前記タイヤ単体モデルとリムモデル203とを組み合わせて装着した例である。
図2(e)に示す路面モデル205は、変形を許容しない剛体平面モデルとなっている。勿論、一部分もしくは全体が変形可能な弾性体によって路面モデルが構成されてもよい。
図2(f)に示すタイヤ・路面モデル206は、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205を組み合わせた例である。
【0026】
これらの各種モデルのうちの有限要素モデルは、予め解析対象とするタイヤやリムの構造体の輪郭形状と構成部材配置の情報とを用いて、構成部材毎にメッシュ分割を行って各有限要素の節点と各有限要素の形状を規定し、これらの情報をファイルに記録するとともに、構成部材に対応する剛性および密度に関する材料定数を数値データとしてファイルに記録することによって作成される。すなわち、有限要素モデルは、実質的には、各有限要素の節点の座標値と、各節点を番号化して各有限要素の形状を規定した番号の組と、各有限要素によって表される構成部材の材料定数の数値データとによって構成されたもので、これら座標値、番号の組および数値データは一つのファイルとしてメモリ120に記憶される。
なお、モデル作成の流れについては後述する。
【0027】
内圧充填処理部300は、モデル作成部200で作成されたタイヤ・路面モデル206に、所定の内圧を充填する内圧充填処理を行う部分である。
接地処理部400は、タイヤ・路面モデル206を用いて、タイヤ・リムモデル204を路面モデル205に所定の荷重で接地させ接地変形させる部分であり、ダンピング要素をタイヤ・リムモデル204に付与して、振動のない安定したタイヤ・リムモデル204を速やかに作成する。詳細については後述する。
【0028】
転動処理部500は、路面モデル205に接地したタイヤ・リムモデル204に並進速度および回転角速度を付与して転動状態とする部分で、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に付与されたダンピング要素を維持したまま、タイヤ・リムモデル204のタイヤトレッド部に対応する有限要素の剛性に関する材料定数に、入力変位に対する応答反力の位相が遅れる、いわゆる位相遅れ特性を与えて、転動処理を行い、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させ、振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成する。
【0029】
なお、転動処理部500は、接地処理の施された変形可能なタイヤ・リムモデル204を瞬時に剛体モデルに変換し、この剛体モデルに並進速度および回転角速度を付与して動的情報を求め、さらに、この動的情報を備えた剛体モデルを、動的情報を備えた状態で変形が可能な構成部分を備える動的状態のタイヤ・リムモデル204に瞬時に復元するように構成してもよい。
ここで、タイヤ・リムモデル204の剛体化とは、転動を開始させる時に、有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となるように、例えば、タイヤ単体モデルの材料定数のうち剛性に関する材料定数を極めて高い値(無限大)に変換することと同等に扱われ、実質的に有限要素を剛体に変換して剛体モデルを作成することをいう。
この変換は、内圧を充填する内圧充填処理を施したタイヤ・リムモデル204に所定の荷重を負荷して接地処理を行った後の、所定の時間ステップにおいて瞬時に行うとよい。
【0030】
剛体モデルへの並進速度および回転角速度の付与は、例えば、剛体モデルを作成した後の所定の時間ステップにおいて行い、剛体モデルにおける各節点の変位等の動的情報を算出する。さらに、並進速度および回転角速度の付与した後、回転角速度だけを除去して、以降の時間ステップにおいて並進速度のみを継続して付与してもよい。
変形可能なタイヤ・リムモデル204への復元は、動的情報を有する剛体モデルの材料定数を、もとのタイヤ・リムモデル204の材料定数に戻すことによって行う。
このようなタイヤ・リムモデル204を剛体モデルへの変換処理、変換した剛体モデルに並進速度と回転角速度を付与する処理、および剛体モデルを変形可能なタイヤ・リムモデル204へ復元する処理は、計算処理する際の時間ステップの最小単位で行うのがよい。
【0031】
タイヤ性能予測部600は、転動状態のタイヤ・リムモデル204と、ドライ路面を再現した路面モデル、あるいは、ウェット路面を再現した流体モデルを備えた路面モデルとを用いて、ドライ路面やウェット路面を走行する動的状態のタイヤの挙動を再現するシミュレーション演算を行い、この演算結果に基づいて、動的状態のタイヤ・リムモデル204の特性物理量を算出し、算出した特性物理量に基づいて、ドライ性能あるいはウェット性能等の良否を予測する部分である。
例えば、キャンバ角やスリップ角が付いたコーナリング時のドライ性能やタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与した時の制駆動性能、あるいは、ウェット路面でのハイドロプレーニング性能等のウェット性能が挙げられる。ウェット性能を予測する場合、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205上に作成された流体モデルを踏み込みながら通過するシミュレーション演算を行って、流体モデルがタイヤ・リムモデル204に作用する浮力、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に作用する踏面力、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布、また、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布等を特性物理量として算出する。
【0032】
このような本装置100では、まず、図3に示すフローに沿ってタイヤ・リムモデルが作成される。
まず、本装置100に、操作者から図示されない操作系によって、モデル作成条件および転動条件が入力される。
モデル作成条件とは、タイヤ単体モデル、リムモデル203、路面モデル205、あるいは、流体モデルをどのように構成するか、モデルの形状、メッシュ分割数、有限要素の配置や有限要素の剛性に関する材料定数等を設定するための条件である。
一方、転動条件とは、タイヤ・リムモデル204の転動状態を定める、並進速度や回転角速度、およびタイヤ・リムモデル204に負荷される荷重、さらには路面モデル205による摩擦係数等のタイヤ・リムモデル204の運動や接地に関する条件である。
【0033】
まず、モデル作成部200において、タイヤ基台モデル201の作成(ステップS201)およびパターンモデル202の作成(ステップS202)が行われ、パターンモデル202がタイヤ基台モデル201へマージされてタイヤ単体モデルが作成される(ステップS203)。
一方、別途リムモデル203が作成され(ステップS204)、先に作成されたタイヤ単体モデルとリムモデル203がマージされてタイヤ・リムモデル204が作成される(ステップS205)。
一方、別途路面モデル205が作成され、この路面モデル205にタイヤ・リムモデル204が付加され、タイヤ・路面モデル206が作成される(ステップS207)。タイヤ性能としてドライ性能を予測する場合、モデル作成は終了する。
一方、タイヤ性能としてウェット性能を予測する場合、別途流体モデルが作成され(ステップS208)、タイヤ・路面モデル206に流体モデルが付加されることで、タイヤ・流体モデルが作成される(ステップS209)。これにより、モデル作成は終了する。
【0034】
なお、タイヤ単体モデルは、図2(a)に示すような有限要素モデルであるタイヤ基台モデル201に図2(b)に示すような有限要素モデルであるパターンモデル202とがマージされて作成された有限要素モデルである。ここで、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202とがモデル作成条件により別々に設定されて作成され、パターンモデル202がマージされてタイヤ単体モデルが作成されてもよいし、モデル作成条件により直接タイヤ単体モデルが作成されてもよい。また、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202の作成は、メモリ120に記憶されていたモデルを呼び出して再生したものであってもよい。
【0035】
リムモデル203は、図2(c)に示すように、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルである。しかし、タイヤ単体モデルと異なり、解析範囲において有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さな変形に抑えた、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっている。
なお、リムモデル203は、変形可能な弾性体の有限要素モデルであってもよいし、一部分が剛体となっており、他の部分が弾性体となって構成されたものであってもよい。
路面モデル205は、図2(e)に示すように、変形を許容しない剛体平面モデルである。あるいは、変形を許容する弾性体のモデルであってもよい。
【0036】
なお、パターンモデル202のタイヤ基台モデル201へのマージおよびリムモデル203のタイヤ単体モデルへのマージは、具体的には、パターンモデル202やリムモデル203のファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、剛性および密度等に関する材料定数の数値データとが、タイヤ基台モデル210やタイヤ単体モデルのファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、材料定数の数値データとに結合される。その際、タイヤ単体モデルとリムモデル203の接触部分は剛結合されてもよいし、接触部分に剛体要素または弾性体要素が別途付加されてもよい。
以上がモデル作成の流れである。
【0037】
次に、作成されたタイヤ・リムモデル204を用いてタイヤ性能の予測を行う流れを図4に沿って説明する。
作成されたタイヤ・リムモデル204に対して内圧充填処理部300にて内圧充填処理が行われる(ステップS300)。内圧充填処理は、タイヤの内側表面に相当するタイヤ・リムモデル204の空洞領域内面に圧力を加える計算によって行われる。
この処理が所定時間行われたか否かが判断され、所定時間が経過するまで内圧充填処理が施される。
【0038】
次に、内圧充填処理部400において、内圧充填処理されたタイヤ・リムモデル204が路面モデル205に対して、設定された荷重で接地するように接地処理が行われる(ステップS400)。この処理が所定時間行われたか否かが判断され、所定時間が経過するまで接地処理が施される。なお、荷重は転動条件の1つとして与えられている。
ここで、接地処理を開始する最初の時間ステップの直前に、あるいは、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に最初に接触する最初の時間ステップの直前に、タイヤ・リムモデル204の節点にダンピング要素を付与して、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させる。すなわち、接地処理のためにタイヤ・リムモデル204を路面モデル205に向けて行う移動を停止する時に発生する振動を、速やかに減衰させるようにする。
ここで、ダンピング要素は、例えば、タイヤ・リムモデル204の各節点に付与されるグローバルダンピング要素である。あるいは、路面モデル205の面の垂直方向に可動する、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に位置する節点に付与されるダンパ要素である。
図5(a)には、タイヤ回転軸に位置するタイヤ・リムモデル204の節点Rに路面モデル205の面に対して垂直方向に作用するダンパ要素Aを付与した例を示している。ダンパ要素Aは、路面モデル205の面に対して垂直方向の節点Rの変位を抑制するように、節点Rの変位速度に応じて抗力を節点Rに与えて上下振動を速やかに減衰させる。図5(b)は、タイヤ・リムモデル204の各節点にグローバルダンピング要素Bを付与した例を示している。
【0039】
ここで、ダンピング要素の減衰係数の値は、臨界減衰係数を0.5〜2倍した値を用いるのが好ましい。より好ましくは、臨界減衰係数を0.8〜1.5倍した値、さらにより好ましくは、0.8〜1.2倍した値を用いるとよい。このような範囲に臨界係数に乗ずる係数を設定することで、図6に示すように、タイヤ回転軸に作用する力の変動を速やかに減衰させることができるからである。
例えばダンピング要素がダンパ要素Aの場合、上記式(1)に示すように、タイヤ単体モデルの基となったタイヤにおけるばね特性、すなわち、上記内圧充填処理に用いられる圧力をタイヤ内圧とし、接地処理に用いられる所定の荷重をタイヤ荷重とした時のタイヤ縦ばね定数kと上記タイヤ質量mの積の平方根の値2・(m・k)(1/2) を臨界減衰係数c0 としてもよく、また、タイヤを実際に加振実験して得られる上下振動から公知の解析手法を用いて求めてもよく、臨界減衰係数の求め方は特に制限されない。
ダンピング要素がクローバルダンピング要素Bの場合、例えば、減衰係数をゼロとした条件で前記タイヤ・リムモデル204に荷重を与えて接地させる際に生じる自由振動を予め計算し、その時の振動の周期tから自由角振動数ωを求め、この自由角振動数ωを上記式(2)に示すようにタイヤ・リムモデル204の質量マトリクスMに乗算して、各節点に付与する臨界減衰係数をマトリクス要素として有する臨界減衰マトリクスC0 を求めてもよい。この場合、減衰させようとする角振動数を0.5〜2倍した値を式(2)中の自由角振動ωに代入することでグローバルダンピング要素の各減衰係数が求められる。
【0040】
図6は、図5(b)に示すようにグローバルダンピング要素Bを付与した場合のタイヤ回転軸に作用する軸力で、路面モデル205の面に垂直方向の力の時間変動を示したものであり、臨界係数に乗ずる係数を種々変化させている。図6に示す例では、時間0.02秒までに、内圧充填処理を終了し、時間0.02秒からタイヤ・リムモデル204を路面モデル205の方向に所定の移動速度で移動させて徐々に接地させて荷重4.2(kN)としている。なお、接地処理におけるタイヤ・リムモデル204の移動は、時間0.02秒〜0.04秒の間に終了するが、グローバルダンピング要素Bの効果により時間0.04秒以降において軸力が荷重に徐々に漸近する。したがって、接地処理には、時間0.04秒以降時間0.1秒までの0.06秒間を緩和処理時間として接地処理の一部として設けている。
【0041】
図6によると、臨界減衰係数に乗ずる係数を0.5未満とすると、発生した振動が十分に減衰しない。係数を2.0より大きくすると、時間0.1秒までに軸力が4.2(kN)に漸近しない。係数を0.5〜2.0の範囲に設定することで、0.02秒から0.1秒までに振動することなく軸力が略4.2(kN)近傍に漸近することがわかる。特に、係数を0.8〜1.5、さらには、0.8〜1.2とすることで、軸力を目標とする荷重4.2(kN)により一層速やかに漸近することができる。こうして目標とする荷重に一致する軸力を持った、振動のない安定したタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0042】
なお、図5(b)に示すような、タイヤ・リムモデル204の各節点の変位速度、あるいは、各節点間の相対変位速度を抑制する抗力を与えるように、グローバルダンピング要素Bを付与した場合、このグローバルダンピング要素は、タイヤ・リムモデル204の質量マトリクスM、剛性マトリクスKとして、下記式(3)に示すように、質量マトリクスM、剛性マトリクスKを用いて表される無減衰系の運動方程式にグローバル減衰の減衰マトリクスCを付与した減衰系の運動方程式に従って、振動を速やかに減衰させるものである。ここで、xは、タイヤ・リムモデル204の節点の変位ベクトル、aは節点の加速度ベクトル、vは節点の速度ベクトル、およびpは節点に作用する外力ベクトルである。
M・a + C・v + K・x = p (3)
【0043】
ここで、グローバルダンピング要素の減衰マトリクスCは、下記式(4)に示すように係数α、βおよびγを定めて設定してもよい。
C = αM + βK + γM・K (4)
例えば、α=γ=0、β≠0の場合、高周波振動に対して減衰効果を発揮する剛性比例減衰となり、α≠0、β=γ=0とすると、剛体運動を含む全ての振動に対して減衰効果を発揮する質量比例減衰となる。したがって、発生する振動の振動数に応じて係数α、βおよびγを設定するとよい。
例えば上記式(2)に示す質量比例減衰の場合、速やかに振動を減衰させるために、タイヤ・リムモデル204に発生する、注目する振動の最小振動数をfmin とすると、α=2(2πfmin )とするのが好ましい。
【0044】
次に、転動処理部500において、接地したタイヤ・リムモデル204の転動処理が行われる(ステップS500)。
転動処理は、接地したタイヤ・リムモデル204に並進速度および回転角速度を付与し、転動状態のタイヤ・リムモデル204の作成を行うことをいう。
並進速度および回転角速度は、転動条件として操作者により設定されたものである。例えば、並進速度は、ドライ性能やウェット性能を解析するために速度100km/時が設定される。一方、回転速度は、荷重を負荷して変形したタイヤリムモデルの回転半径、例えば有効転がり半径によって並進速度を除した値を回転角速度として付与される。ここで、有効転がり半径とは、接地変形したタイヤリムモデルを転動させて一回転させた時の移動距離を2πで除した値である。なお、有効転がり半径の替わりに、ステップS300にて作成された内圧充填処理後のタイヤ・リムモデル204の最大外径と同等またはこれより小さく、接地変形したタイヤ・リムモデル204におけるタイヤ回転軸に相当する中心軸と路面モデル205間の距離とより短い回転半径によって並進速度を除した値を、回転角速度として付与してもよい。このような回転角速度を与えることで、タイヤ・リムモデル204に発生する振動が大きくならず、少ない回数の時間ステップで(短時間で)安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0045】
なお、転動処理において、タイヤ・リムモデル204を転動させることで発生する振動を速やかに減衰させるために、接地処理において付与されたダンパ要素Aを保持したまま、さらに、ゴム部材で構成されるタイヤトレッド部に対応するタイヤ・リムモデル204の対応部分の有限要素の、剛性に関する材料定数を、粘弾性特性に基づいた位相遅れ特性を有するものとする。
この材料定数の設定は、タイヤトレッド部に対応するタイヤ単体モデルの有限要素全周に対して行ってもよく、あるいは、タイヤトレッド部に対応する有限要素のうち、転動処理により路面モデル205と接触するタイヤ・リムモデル204の周上の一部分に位置する有限要素のみに対して行ってもよい。本発明においては、この材料定数の設定は、タイヤトレッド部に対応する有限要素に限定されるものでなく、タイヤトレッド部の一部を少なくとも含むタイヤ構成部材に対応する有限要素に対して行われるとよい。例えば、タイヤサイド部またはタイヤ内周面に形成されるインナライナー部のゴム部材に対応するタイヤ・リムモデル204の有限要素、あるいは、タイヤベルト部のスチールコード部材に対応するタイヤ・リムモデル204の有限要素に対して行ってもよい。
【0046】
材料定数の設定では、具体的には、タイヤトレッド部のゴム部材の場合、入力する歪みに対して位相が遅れて応力が発生するゴム部材の粘弾性特性に従って、入力変位に対して位相が遅れて反力が生じるよう、各有限要素の材料定数に付加するtanδを設定する(図7参照)。
ここで、tanδは、粘弾性試験によって得られる損失弾性率E’’を貯蔵弾性率E’ で割った値であり、tanδが大きいほど振動を速やかに減衰させることができる。
【0047】
なお、ゴム材料のtanδは、一般的に周波数依存性を有するため、タイヤ・リムモデル204に発生する振動の振動数に応じたtanδの値を用いる必要があり、以下の理由から、100〜1000(Hz)の周波数域におけるtanδの値を用いるとよい。
【0048】
すなわち、一般に、タイヤの基台部分(ケーシング)は略150(Hz)付近に固有周波数を持つ固有モードを有するため、タイヤ・リムモデル204においても、この固有モードの影響を受けて略150Hz付近に振動成分を持つ。このため、減衰のないタイヤ・リムモデル204では、実際のタイヤに発生する振動より大きな振動が発生する。一方、タイヤのトレッドパターンを構成する各ブロックは、略800〜1000(Hz)付近に固有周波数を持つ固有モードを有し、路面とタイヤ間の接地近傍で振動を発生し、しかも、転動時、トレッドパターンのブロックの接地、離地を繰り返して絶えず加振されるため、振動が発散し大きな振動となり易い。このため、タイヤ・リムモデル204においても、この固有モードの影響を受けて略800〜1000Hz付近に振動成分を持つ。
したがって、上記固有周波数に起因した振動が抑制されるように、100〜1000(Hz)の周波数域におけるゴム部材のtanδの値を用いるとよい。
【0049】
なお、転動処理において、タイヤトレッド部に対応する有限要素の材料定数に位相遅れ特性を持たせるものであるが、タイヤトレッド部に対応する有限要素の材料定数に位相遅れ特性を持たせる替わりに、接地処理において用いた、図5(b)に示すグローバルダンピング要素Bをタイヤトレッド部に対応する有限要素に付与することはできない。グローバルダンピング要素Bを付与すると、上記式(3)に示すように、変位速度vと減衰マトリクスCの作用により、タイヤの回転角速度に対しても抗力が発生し、タイヤ・リムモデル204を所定の回転角速度で回転できなくなるからである。したがって、転動処理においてグローバルダンピング要素Bは取り除かれる。なお、接地処理の際に付与されたダンピング要素がダンパ要素Aである場合、ダンパ要素Aを取り除くことなくタイヤ・リムモデル204を転動処理してもよい。
【0050】
こうして、所定の移動速度で転動するタイヤ・リムモデル204が作成され、さらに、所定の時間、発生した振動を減衰させるための減衰処理時間を設けることで振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204の作成が行われる(ステップS600)。
【0051】
なお、転動処理においては、静止したタイヤ・リムモデル204を弾性変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となる剛体モデルに一旦変換し、変換した剛体モデルに対して並進速度および回転角速度を付与して静止状態から転動状態を作り、この後、剛体モデルをタイヤ・リムモデル204に復元してもよい。この処理を行うことで、静止状態から転動状態を作る場合の加速度の急激な変化に伴って発生する振動を小さくすることができ、ダンパ要素Aを用いた場合、このダンパ要素Aおよび材料定数の位相遅れ特性の効果と重なって、振動の発生しない安定したタイヤ・リムモデル204を速やかに作成することができる。
【0052】
図8は、ダンパ要素および位相遅れ特性を有する材料定数を用いて、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させた例を示している。
図8の例では、時間0.02秒までにタイヤ・リムモデル204に内圧充填処理を終了させて、時間0.02秒〜0.04秒の間でタイヤ・リムモデル204の移動を終了させ、時間0.04秒から0.1秒の間の0.06秒間を緩和処理時間として接地処理の一部として設けている。この後、時間0.1秒から転動処理を開始している。接地処理における荷重は4(kN)である。
図8中、上下力とは、図7に示す路面モデル205の面に垂直な方向に作用する節点Rに作用する力であり、前後力とは、節点Rに作用する力で、上下力に対して直交する方向に作用する力である。
【0053】
図8からわかるように、ダンパ要素を付与して接地処理を行ったため、速やかに軸力が目標とする荷重4(kN)になって安定した接地状態のタイヤ・リムモデル204が作成されている。
さらに、転動処理において、位相遅れ特性を有する材料定数の効果により、極めて短い時間で、例えば時間0.15秒において、振動のない安定した転動状態が作られている。
このように、安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を短時間に作成することができ、すなわち、少ない回数の時間ステップで安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができ、タイヤ性能の予測を効率よく行うことができる。
【0054】
次に、タイヤ性能予測部600において、振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を用いて、ドライ路面あるいはウェット路面を所定の条件で走行するタイヤの挙動を再現するシミュレーション演算が行われる(ステップS700)。
例えば、路面モデル205上を転動するタイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に傾斜角を付与して、キャンバ角やスリップ角を付与したコーナリング状態を再現する演算を行う。さらには、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与して、タイヤのブレーキング状態や駆動状態などを再現する演算を行う。あるいは、タイヤが水膜を排除しながら転動する動的状態を再現する演算を行う。
【0055】
最後に、タイヤ性能予測部600において、シミュレーション演算結果から注目する特性物理量を算出してタイヤ性能が予測される(ステップS800)。
特性物理量は、例えば、ドライ性能の場合、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205との間に生じる摩擦力、タイヤの変形形状、内部応力分布、エネルギー密度分布、接地形状、接地圧分布などが挙げられ、ウェット性能の場合、例えば、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に作用する浮力やタイヤ・リムモデル204と路面モデル205の間に生じる摩擦力、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布が挙げられる。また、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布が挙げられる。
このような特性物理量の大小等によって、タイヤ性能を予測することができる。
【0056】
このように、タイヤ基台モデル201、パターンモデル202を組み合わせてタイヤ単体モデル、さらには、タイヤ・リムモデル204を作成して、効率よく短時間に接地状態、さらには転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成するので、タイヤ性能の予測を効率よく短時間に行うことができる。しかも、振動が発生しない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成できるので、精度の高いタイヤ性能の予測が行える。したがって、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いながら、タイヤ基台モデル201の構成やパターンモデル202の形状を種々変化させながら、所望のタイヤ性能を予測して最適なタイヤの構成やパターン形状を効率よく見出すことができる。また、タイヤ基台モデル201またはパターンモデル202が予め種々用意された中から、所望のタイヤ性能の予測結果が最も良好なタイヤ基台モデルまたはパターンモデルを効率よく選択することができる。
こうして見出されたあるいは選択されたタイヤ基台モデルあるいはパターンモデルを実現するタイヤを設計し、所望のタイヤ性能を備えるタイヤを製造することができる。
【0057】
なお、タイヤ性能として、上記例ではいずれもタイヤのドライ性能およびウェット性能を予測するものであるが、本発明は、タイヤのドライ性能およびウェット性能の性能予測に用いる場合に制限されず、摩耗性能、耐久性能、振動乗心地性能、騒音特性等を予測してもよい。
上記例では、タイヤ単体モデルにリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルを用いるものであるが、リムモデルを組み合わせることなくタイヤ単体モデルを用いて接地状態あるいは転動状態のタイヤモデルを作成してタイヤ性能の予測を行ってもよい。
【0058】
また、路面モデルに接地する接地状態のタイヤ・リムモデル204を作成する上述した方法は、以下に示すプログラムをコンピュータ上で実行することで実現することができる。すなわち、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤ単体モデル、およびリムモデル203をコンピュータの演算手段であるCPU110に作成させる手順と、作成されたタイヤ単体モデルにリムモデル203を結合したタイヤ・リムモデル204をCPU110を用いて作成させ、このタイヤ・リムモデル204に内圧充填処理を施す処理をCPU110に実行させる手順と、タイヤ・リムモデル204にダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデル205にタイヤ・リムモデル204を接地させる接地処理をCPU110に実行させる手順と、を有するプログラムをコンピュータ上で実行することで接地状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0059】
また、路面モデル205上を転動するタイヤ・リムモデル204を作成する上述した方法は、以下に示すプログラムをコンピュータ上で実行することで実現することができる。すなわち、路面を再現した路面モデル205に接地する、有限要素を用いたタイヤ・リムモデル204をコンピュータのCPU110に作成させる手順と、路面モデル205に接地したタイヤ・リムモデル204の、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地したタイヤ・リムモデル204に施す転動処理をCPU110に実行させる手順と、を有するプログラムをコンピュータ上で実行することで転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0060】
以上、本発明のタイヤモデル作成方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明は、タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルにタイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行うので、振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成することができる。
また、路面モデルに接地したタイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に位相遅れ特性を付与して、転動処理を行うので、振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成することができる。
したがって、転動状態のタイヤ・リムモデルを用いて行うタイヤ性能の予測を短時間で効率よく、しかも、精度高く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法を実施するタイヤ性能予測装置の概略の構成を示す概略構成図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明で作成される各種モデルの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のタイヤモデル作成方法の一部分の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明のタイヤモデル作成方法の他の部分の流れを示すフローチャートである。
【図5】(a)および(b)は、本発明のタイヤモデル作成方法の一例を説明する図である。
【図6】接地状態のタイヤモデルの作成中に得られるタイヤ回転軸に作用する力の時間変動を示す図である。
【図7】本発明のタイヤモデル作成方法の他の例を説明する図である。
【図8】転動状態のタイヤモデルの作成中に得られるタイヤ回転軸に作用する力の時間変動を示す図である。
【符号の説明】
100 タイヤ性能予測装置
110 CPU
120 メモリ
200 モデル作成部
201 タイヤ基台モデル
202 パターンモデル
203 リムモデル
204 タイヤ・リムモデル
205 路面モデル
206 タイヤ・路面モデル
300 内圧充填処理部
400 接地処理部
500 転動処理部
600 タイヤ性能予測部
【発明の属する技術分野】
本発明は、有限要素を用いてモデル化され、路面に接地したタイヤ、あるいは路面上を転動するタイヤを再現したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成方法、このタイヤモデル作成方法を用いてタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測方法およびこれらの方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの処理速度の向上に伴って、車両に装着される空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)のドライ路面でのタイヤ性能(ドライ性能)や濡れた路面でのタイヤ性能(ウェット性能)をはじめとする、路面上を転動して走行するタイヤの種々のタイヤ性能を、有限要素法や有限体積法を用いて予測する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記非特許文献1では、パターン付きタイヤのコーナリングシミュレーションを有限要素解析を用いて行っている。すなわち、剛表面からなる路面モデルと、タイヤの構造および形状を忠実に再現したパターン付きタイヤモデルとを作成し、タイヤの進行方向に対してタイヤの向きがずれている(スリップ角が付いている)状態を再現し、路面モデルとパターン付きタイヤモデルとの間に発生する摩擦力に基づくコーナリングフォースの発生シミュレーションを開示している。これによると、発生するコーナリングフォースのシミュレーション結果は実測の結果と一致する妥当な結果を得ることができるとされている。
【0004】
また、下記特許文献1では、有限要素を用いたタイヤモデルと有限体積モデルの流体モデルとを用いて、路面モデル上を転動するタイヤモデルが流体モデルと接触することで発生する物理量を算出することにより、タイヤのウェット性能を予測するタイヤ性能予測方法を提案している。
このような転動状態におけるタイヤ性能を評価するには、静止状態のタイヤモデルに速度を与え所定の走行速度になるまで徐々に速度を上昇させる過程の計算を実行し、定常走行状態のタイヤモデルを作成しなければならない。
【0005】
【非特許文献1】
「パターン付タイヤのコーナリングシミュレーション」,LS−DYNA User Conference ,’97 講演論文集, 1997年11月26−27日
【特許文献1】
特許第3133738号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、作成されたタイヤモデルを路面モデルに接地させ、所定の荷重が負荷されたタイヤモデルを生成する場合、所定の荷重が負荷されるまでタイヤモデルと路面モデルとを所定の速度で近づけた後停止する。また、転動するタイヤモデルを生成する場合、路面モデルに接地して静止しているタイヤモデルを転動させ、徐々に速度を上げていく。すなわち、いずれの場合も、タイヤモデルを動的な状態から静的な状態へ、あるいは、静的な状態から動的な状態へ移行させる処理を行う。
【0007】
しかし、この処理を行うことで、処理後のタイヤモデルには振動が発生し、場合によっては、発生した振動が収束しない場合もある。振動が収束する場合でも、収束するまでの時間が長く、処理速度の速いコンピュータといえども、振動が収束するまで、各時間ステップ毎に逐次計算を行わなければならず、多大な時間が必要となる。
一方、上記処理において、タイヤモデルに振動を発生させないように長時間に渡りゆるやかに速度を変化させることもできるが、処理速度の速いコンピュータといえども、振動が収束するまで計算を多大な時間行わなければならない。
すなわち、いずれの場合も、所定の状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく再現することができないといった問題があった。
このような問題については、上記非特許文献1あるいは特許文献2において、何も開示しておらず、示唆もされていない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、有限要素を用いたタイヤモデルの接地処理、あるいは、転動処理を行う際、タイヤモデルが振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成するタイヤモデル作成方法、および、この作成方法を用いたタイヤ性能予測方法、さらには、これらの方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを作成するステップと、前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを作成し、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施すステップと、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法を提供する。
例えば、タイヤの転動シミュレーションをタイヤモデルを用いて行う際、接地処理および転動処理を行う。その際、接地処理されたタイヤ・リムモデルが振動しない安定した状態として効率よく作成されるように、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与する。
【0010】
ここで、前記ダンピング要素は、例えば、前記路面モデルの面の垂直方向に可動する、前記タイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸に位置する節点に付与されるダンパ要素である。あるいは、前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である。
すなわち、タイヤモデルを用いてタイヤの転動シミュレーションを行う際、前記ダンパ要素は、タイヤ回転軸に位置する節点に取り付けられて、タイヤ回転軸に減衰力を作用させてタイヤ・リムモデルの上下振動(路面に対して垂直の振動)を減衰させる。一方、前記グローバルダンピング要素は、前記タイヤ・リムモデルの各節点に減衰力を作用させてタイヤ・リムモデルの上下振動を減衰させる。
前記ダンパ要素は、接地処理中、タイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸において生じる上下振動を減衰させることはできるが、タイヤモデルの各節点を効率よく減衰させることはできない場合もある。この場合、前記グローバルダンピング要素を用いて接地処理を行うのが好ましい。
【0011】
なお、前記ダンピング要素の減衰係数は、臨界減衰係数を0.5〜2.0倍したものであるのが好ましい。この臨界減衰係数は、振動解析の分野で公知なもの係数であり、種々の方法によって臨界減衰係数の値を求めることができる。
例えば、前記ダンピング要素としてダンパ要素を用いる場合、実際のタイヤを加振して得られる振動波形から公知の手法により、臨界減衰係数を同定して設定してもよいし、前記タイヤの質量をm、前記タイヤの縦バネ係数をkとしたとき、質量mと縦バネ係数kの積の平方根を2倍した値、すなわち下記式(1)で定める値c0 を臨界減衰係数の値としてもよい。この値c0 に0.5〜2倍したものをダンパ要素の減衰係数として用いる。
さらには、前記ダンピング要素がグローバルダンピング要素の場合、減衰係数をゼロとした条件で前記タイヤ・リムモデルに荷重を与えて接地させる際に生じる上下振動を予め計算する。この時の振動の周期tから自由角振動数ωを求め、この自由角振動数ωを下記式(2)に示すように前記タイヤ・リムモデルの質量マトリクスMに乗算して、各節点に付与する臨界減衰係数をマトリクス要素として有する臨界減衰マトリクスC0 を求める。この場合、臨界減衰マトリクスC0 の各マトリクス要素の各値に0.5〜2倍したものをグローバルダンピング要素の減衰係数として用いる。なお、式(2)で表される臨界減衰マトリクスC0 は、質量比例減衰型の減衰マトリクスである。
いずれの場合においても、算出される臨界減衰係数に0.5〜2倍した値を用いる。
【0012】
c0 = 2・(m・k)(1/2) (1)
C0 = 2・ω・M=2・(2π/t)・M (2)
【0013】
さらに、本発明は、路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを作成するステップと、路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに転動処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法を提供する。
【0014】
ここで、前記路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの作成は、上述した、路面に接地したタイヤを再現したタイヤモデルの作成方法を用いて行われるのが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、前記タイヤモデル作成方法で作成されたタイヤ・リムモデルを用いてタイヤ性能を予測する方法であって、前記タイヤ・リムモデルに付与されたダンピング要素が前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である場合、このグローバルダンピング要素を取り除いた後、前記タイヤ・リムモデルを用いて、所定の条件でタイヤ挙動を再現する演算処理を行うステップと、この演算処理結果から特性物理量を算出してタイヤ性能を予測するステップと、を有することを特徴とするタイヤ性能予測方法を提供する。すなわち、前記接地処理の後、転動処理を行う場合、タイヤ・リムモデルの各節点にグローバルダンピング要素を付与したまま、転動処理を行うことはできない。各節点が速度を持ってタイヤ・リムモデルが回転するとき、グローバルダンピング要素により、移動する各節点に対して減衰力が作用するためである。各節点に作用する減衰力の方向を制限したグローバルダンピング要素であっても、移動する各節点に対して減衰力が作用する。
そして、転動処理においてタイヤ・リムモデルの移動方向である前後方向の振動(前後振動)を減衰させるために、タイヤトレッド部さらにはサイド部に対応する有限要素の剛性に関する材料定数に位相遅れ特性(tanδ)を付与し、この位相遅れ特性によりタイヤ・リムモデルに生じる前後振動を減衰させる。なお、前記接地処理において前記ダンパ要素を用いた場合、転動処理において前記ダンパ要素を取り除くことなく付与したままとし、転動処理時に生じるタイヤ・リムモデルの上下振動を減衰させることができる。
【0016】
さらに、本発明は、路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを前記演算手段を用いて作成させ、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施す処理を前記演算手段に実行させる手順と、前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラムを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに施す転動処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラムを提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0019】
本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法およびプログラムを、下記に示すタイヤ性能予測装置に基づいて説明する。
図1は、タイヤ性能予測装置100(以降、本装置という)の概略の構成を示す概略構成図である。
【0020】
本装置100は、解析対象とするタイヤ単体モデル(タイヤモデル)あるいはタイヤ単体モデルとリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルをはじめとする各種モデルの作成を行うモデル作成部200と、タイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施す内圧充填処理部300と、路面モデルに荷重を負荷して振動のない安定した接地状態のタイヤ・リムモデルを作成する接地処理部400と、接地処理部400の処理結果から振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成する転動処理部500と、ドライ路面でのコーナリング状態や制動状態などドライ路面での動的状態、あるいは、ハイドロプレーニング状態などのウェット路面での動的状態を、転動状態のタイヤ・リムモデルを用いてシミュレーション演算し、演算結果からタイヤ・リムモデルなどに発生する特性物理量を算出して、ドライ路面やウエット路面でのタイヤ性能を予測するタイヤ性能予測部600と、を有し、さらに、上記各部位の機能および制御を行うCPU110と、各部位で作成された結果を保持するメモリ120とを有する。
【0021】
本装置100は、プログラムを実行することによって各部位が機能を発揮するコンピュータによって構成された装置であってもよいし、専用回路によって構成された専用装置であってもよいし、一部分がコンピュータにより、他の部分が専用回路によって構成された装置であってもよい。
【0022】
図2(a)〜(f)は、モデル作成部200で作成される各種モデルの一例を示す。
モデル作成部200は、操作者により図示されないマウスやキーボード等の操作系を用いて入力設定されたモデル作成条件に基づいてタイヤ基台モデル201(図2(a)参照)とパターンモデル202(図2(b)参照)とを組み合わせたタイヤ単体モデル(図示されない)を作成する。また、このタイヤ単体モデルとリムモデル203(図2(c)参照)とを組み合わせたタイヤ・リムモデル204(図2(d)参照)や、さらに別途作成された路面モデル205(図2(e)参照)を組み合わせたタイヤ・路面モデル206(図2(f)参照)を作成する。さらに、ウェット路面でのタイヤ性能を予測する場合には、図示されない流体モデルを路面モデル205の上に作成することで、タイヤ・流体モデルを作成する。
【0023】
なお、タイヤ単体モデルは、変形可能な弾性体の有限要素によって構成された三次元有限要素モデルである。例えば、カーカス補強部材およびベルト補強部材、ビード補強材等の構成部材は、張力と曲げ剛性を持つシェル要素で作成され、ゴム部材、例えば、トレッドゴム部材やサイドウォールゴム部材やビードフィラーゴム部材やカーカスコートゴム部材等の構成部材は、4面体、5面体、6面体固体要素などで作成される。
【0024】
図2(a)に示す有限要素モデルとしてのタイヤ基台モデル201と、図2(b)に示す有限要素モデルとしてのパターンモデル202は変形可能なモデルによって構成され、タイヤ基台モデル201にパターンモデル202が合体(マージ)されることで、タイヤ単体モデルとして作成される。モデル作成部200は、操作者によるモデル作成条件によって直接タイヤ単体モデルを作成してもよいし、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を別途作成した後、合体してタイヤ単体モデルを作成してもよい。
【0025】
図2(c)に示すリムモデル203は、タイヤ回転軸でもあるリムモデルの回転軸に節点を有する、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルであるが、解析範囲において有限要素の変形を許容しないように、あるいは、極めて小さな変形に抑えるように、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっていてもよい。
図2(d)に示すタイヤ・リムモデル204は、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202を有する前記タイヤ単体モデルとリムモデル203とを組み合わせて装着した例である。
図2(e)に示す路面モデル205は、変形を許容しない剛体平面モデルとなっている。勿論、一部分もしくは全体が変形可能な弾性体によって路面モデルが構成されてもよい。
図2(f)に示すタイヤ・路面モデル206は、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205を組み合わせた例である。
【0026】
これらの各種モデルのうちの有限要素モデルは、予め解析対象とするタイヤやリムの構造体の輪郭形状と構成部材配置の情報とを用いて、構成部材毎にメッシュ分割を行って各有限要素の節点と各有限要素の形状を規定し、これらの情報をファイルに記録するとともに、構成部材に対応する剛性および密度に関する材料定数を数値データとしてファイルに記録することによって作成される。すなわち、有限要素モデルは、実質的には、各有限要素の節点の座標値と、各節点を番号化して各有限要素の形状を規定した番号の組と、各有限要素によって表される構成部材の材料定数の数値データとによって構成されたもので、これら座標値、番号の組および数値データは一つのファイルとしてメモリ120に記憶される。
なお、モデル作成の流れについては後述する。
【0027】
内圧充填処理部300は、モデル作成部200で作成されたタイヤ・路面モデル206に、所定の内圧を充填する内圧充填処理を行う部分である。
接地処理部400は、タイヤ・路面モデル206を用いて、タイヤ・リムモデル204を路面モデル205に所定の荷重で接地させ接地変形させる部分であり、ダンピング要素をタイヤ・リムモデル204に付与して、振動のない安定したタイヤ・リムモデル204を速やかに作成する。詳細については後述する。
【0028】
転動処理部500は、路面モデル205に接地したタイヤ・リムモデル204に並進速度および回転角速度を付与して転動状態とする部分で、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に付与されたダンピング要素を維持したまま、タイヤ・リムモデル204のタイヤトレッド部に対応する有限要素の剛性に関する材料定数に、入力変位に対する応答反力の位相が遅れる、いわゆる位相遅れ特性を与えて、転動処理を行い、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させ、振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成する。
【0029】
なお、転動処理部500は、接地処理の施された変形可能なタイヤ・リムモデル204を瞬時に剛体モデルに変換し、この剛体モデルに並進速度および回転角速度を付与して動的情報を求め、さらに、この動的情報を備えた剛体モデルを、動的情報を備えた状態で変形が可能な構成部分を備える動的状態のタイヤ・リムモデル204に瞬時に復元するように構成してもよい。
ここで、タイヤ・リムモデル204の剛体化とは、転動を開始させる時に、有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となるように、例えば、タイヤ単体モデルの材料定数のうち剛性に関する材料定数を極めて高い値(無限大)に変換することと同等に扱われ、実質的に有限要素を剛体に変換して剛体モデルを作成することをいう。
この変換は、内圧を充填する内圧充填処理を施したタイヤ・リムモデル204に所定の荷重を負荷して接地処理を行った後の、所定の時間ステップにおいて瞬時に行うとよい。
【0030】
剛体モデルへの並進速度および回転角速度の付与は、例えば、剛体モデルを作成した後の所定の時間ステップにおいて行い、剛体モデルにおける各節点の変位等の動的情報を算出する。さらに、並進速度および回転角速度の付与した後、回転角速度だけを除去して、以降の時間ステップにおいて並進速度のみを継続して付与してもよい。
変形可能なタイヤ・リムモデル204への復元は、動的情報を有する剛体モデルの材料定数を、もとのタイヤ・リムモデル204の材料定数に戻すことによって行う。
このようなタイヤ・リムモデル204を剛体モデルへの変換処理、変換した剛体モデルに並進速度と回転角速度を付与する処理、および剛体モデルを変形可能なタイヤ・リムモデル204へ復元する処理は、計算処理する際の時間ステップの最小単位で行うのがよい。
【0031】
タイヤ性能予測部600は、転動状態のタイヤ・リムモデル204と、ドライ路面を再現した路面モデル、あるいは、ウェット路面を再現した流体モデルを備えた路面モデルとを用いて、ドライ路面やウェット路面を走行する動的状態のタイヤの挙動を再現するシミュレーション演算を行い、この演算結果に基づいて、動的状態のタイヤ・リムモデル204の特性物理量を算出し、算出した特性物理量に基づいて、ドライ性能あるいはウェット性能等の良否を予測する部分である。
例えば、キャンバ角やスリップ角が付いたコーナリング時のドライ性能やタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与した時の制駆動性能、あるいは、ウェット路面でのハイドロプレーニング性能等のウェット性能が挙げられる。ウェット性能を予測する場合、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205上に作成された流体モデルを踏み込みながら通過するシミュレーション演算を行って、流体モデルがタイヤ・リムモデル204に作用する浮力、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に作用する踏面力、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布、また、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布等を特性物理量として算出する。
【0032】
このような本装置100では、まず、図3に示すフローに沿ってタイヤ・リムモデルが作成される。
まず、本装置100に、操作者から図示されない操作系によって、モデル作成条件および転動条件が入力される。
モデル作成条件とは、タイヤ単体モデル、リムモデル203、路面モデル205、あるいは、流体モデルをどのように構成するか、モデルの形状、メッシュ分割数、有限要素の配置や有限要素の剛性に関する材料定数等を設定するための条件である。
一方、転動条件とは、タイヤ・リムモデル204の転動状態を定める、並進速度や回転角速度、およびタイヤ・リムモデル204に負荷される荷重、さらには路面モデル205による摩擦係数等のタイヤ・リムモデル204の運動や接地に関する条件である。
【0033】
まず、モデル作成部200において、タイヤ基台モデル201の作成(ステップS201)およびパターンモデル202の作成(ステップS202)が行われ、パターンモデル202がタイヤ基台モデル201へマージされてタイヤ単体モデルが作成される(ステップS203)。
一方、別途リムモデル203が作成され(ステップS204)、先に作成されたタイヤ単体モデルとリムモデル203がマージされてタイヤ・リムモデル204が作成される(ステップS205)。
一方、別途路面モデル205が作成され、この路面モデル205にタイヤ・リムモデル204が付加され、タイヤ・路面モデル206が作成される(ステップS207)。タイヤ性能としてドライ性能を予測する場合、モデル作成は終了する。
一方、タイヤ性能としてウェット性能を予測する場合、別途流体モデルが作成され(ステップS208)、タイヤ・路面モデル206に流体モデルが付加されることで、タイヤ・流体モデルが作成される(ステップS209)。これにより、モデル作成は終了する。
【0034】
なお、タイヤ単体モデルは、図2(a)に示すような有限要素モデルであるタイヤ基台モデル201に図2(b)に示すような有限要素モデルであるパターンモデル202とがマージされて作成された有限要素モデルである。ここで、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202とがモデル作成条件により別々に設定されて作成され、パターンモデル202がマージされてタイヤ単体モデルが作成されてもよいし、モデル作成条件により直接タイヤ単体モデルが作成されてもよい。また、タイヤ基台モデル201とパターンモデル202の作成は、メモリ120に記憶されていたモデルを呼び出して再生したものであってもよい。
【0035】
リムモデル203は、図2(c)に示すように、複数の有限要素によって構成された有限要素モデルである。しかし、タイヤ単体モデルと異なり、解析範囲において有限要素の変形を許容しない、あるいは、極めて小さな変形に抑えた、剛性に関して極めて高い材料定数を有し、実質的に剛体となっている。
なお、リムモデル203は、変形可能な弾性体の有限要素モデルであってもよいし、一部分が剛体となっており、他の部分が弾性体となって構成されたものであってもよい。
路面モデル205は、図2(e)に示すように、変形を許容しない剛体平面モデルである。あるいは、変形を許容する弾性体のモデルであってもよい。
【0036】
なお、パターンモデル202のタイヤ基台モデル201へのマージおよびリムモデル203のタイヤ単体モデルへのマージは、具体的には、パターンモデル202やリムモデル203のファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、剛性および密度等に関する材料定数の数値データとが、タイヤ基台モデル210やタイヤ単体モデルのファイルに記録された各有限要素の節点座標値と、各節点の番号の組と、材料定数の数値データとに結合される。その際、タイヤ単体モデルとリムモデル203の接触部分は剛結合されてもよいし、接触部分に剛体要素または弾性体要素が別途付加されてもよい。
以上がモデル作成の流れである。
【0037】
次に、作成されたタイヤ・リムモデル204を用いてタイヤ性能の予測を行う流れを図4に沿って説明する。
作成されたタイヤ・リムモデル204に対して内圧充填処理部300にて内圧充填処理が行われる(ステップS300)。内圧充填処理は、タイヤの内側表面に相当するタイヤ・リムモデル204の空洞領域内面に圧力を加える計算によって行われる。
この処理が所定時間行われたか否かが判断され、所定時間が経過するまで内圧充填処理が施される。
【0038】
次に、内圧充填処理部400において、内圧充填処理されたタイヤ・リムモデル204が路面モデル205に対して、設定された荷重で接地するように接地処理が行われる(ステップS400)。この処理が所定時間行われたか否かが判断され、所定時間が経過するまで接地処理が施される。なお、荷重は転動条件の1つとして与えられている。
ここで、接地処理を開始する最初の時間ステップの直前に、あるいは、タイヤ・リムモデル204が路面モデル205に最初に接触する最初の時間ステップの直前に、タイヤ・リムモデル204の節点にダンピング要素を付与して、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させる。すなわち、接地処理のためにタイヤ・リムモデル204を路面モデル205に向けて行う移動を停止する時に発生する振動を、速やかに減衰させるようにする。
ここで、ダンピング要素は、例えば、タイヤ・リムモデル204の各節点に付与されるグローバルダンピング要素である。あるいは、路面モデル205の面の垂直方向に可動する、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に位置する節点に付与されるダンパ要素である。
図5(a)には、タイヤ回転軸に位置するタイヤ・リムモデル204の節点Rに路面モデル205の面に対して垂直方向に作用するダンパ要素Aを付与した例を示している。ダンパ要素Aは、路面モデル205の面に対して垂直方向の節点Rの変位を抑制するように、節点Rの変位速度に応じて抗力を節点Rに与えて上下振動を速やかに減衰させる。図5(b)は、タイヤ・リムモデル204の各節点にグローバルダンピング要素Bを付与した例を示している。
【0039】
ここで、ダンピング要素の減衰係数の値は、臨界減衰係数を0.5〜2倍した値を用いるのが好ましい。より好ましくは、臨界減衰係数を0.8〜1.5倍した値、さらにより好ましくは、0.8〜1.2倍した値を用いるとよい。このような範囲に臨界係数に乗ずる係数を設定することで、図6に示すように、タイヤ回転軸に作用する力の変動を速やかに減衰させることができるからである。
例えばダンピング要素がダンパ要素Aの場合、上記式(1)に示すように、タイヤ単体モデルの基となったタイヤにおけるばね特性、すなわち、上記内圧充填処理に用いられる圧力をタイヤ内圧とし、接地処理に用いられる所定の荷重をタイヤ荷重とした時のタイヤ縦ばね定数kと上記タイヤ質量mの積の平方根の値2・(m・k)(1/2) を臨界減衰係数c0 としてもよく、また、タイヤを実際に加振実験して得られる上下振動から公知の解析手法を用いて求めてもよく、臨界減衰係数の求め方は特に制限されない。
ダンピング要素がクローバルダンピング要素Bの場合、例えば、減衰係数をゼロとした条件で前記タイヤ・リムモデル204に荷重を与えて接地させる際に生じる自由振動を予め計算し、その時の振動の周期tから自由角振動数ωを求め、この自由角振動数ωを上記式(2)に示すようにタイヤ・リムモデル204の質量マトリクスMに乗算して、各節点に付与する臨界減衰係数をマトリクス要素として有する臨界減衰マトリクスC0 を求めてもよい。この場合、減衰させようとする角振動数を0.5〜2倍した値を式(2)中の自由角振動ωに代入することでグローバルダンピング要素の各減衰係数が求められる。
【0040】
図6は、図5(b)に示すようにグローバルダンピング要素Bを付与した場合のタイヤ回転軸に作用する軸力で、路面モデル205の面に垂直方向の力の時間変動を示したものであり、臨界係数に乗ずる係数を種々変化させている。図6に示す例では、時間0.02秒までに、内圧充填処理を終了し、時間0.02秒からタイヤ・リムモデル204を路面モデル205の方向に所定の移動速度で移動させて徐々に接地させて荷重4.2(kN)としている。なお、接地処理におけるタイヤ・リムモデル204の移動は、時間0.02秒〜0.04秒の間に終了するが、グローバルダンピング要素Bの効果により時間0.04秒以降において軸力が荷重に徐々に漸近する。したがって、接地処理には、時間0.04秒以降時間0.1秒までの0.06秒間を緩和処理時間として接地処理の一部として設けている。
【0041】
図6によると、臨界減衰係数に乗ずる係数を0.5未満とすると、発生した振動が十分に減衰しない。係数を2.0より大きくすると、時間0.1秒までに軸力が4.2(kN)に漸近しない。係数を0.5〜2.0の範囲に設定することで、0.02秒から0.1秒までに振動することなく軸力が略4.2(kN)近傍に漸近することがわかる。特に、係数を0.8〜1.5、さらには、0.8〜1.2とすることで、軸力を目標とする荷重4.2(kN)により一層速やかに漸近することができる。こうして目標とする荷重に一致する軸力を持った、振動のない安定したタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0042】
なお、図5(b)に示すような、タイヤ・リムモデル204の各節点の変位速度、あるいは、各節点間の相対変位速度を抑制する抗力を与えるように、グローバルダンピング要素Bを付与した場合、このグローバルダンピング要素は、タイヤ・リムモデル204の質量マトリクスM、剛性マトリクスKとして、下記式(3)に示すように、質量マトリクスM、剛性マトリクスKを用いて表される無減衰系の運動方程式にグローバル減衰の減衰マトリクスCを付与した減衰系の運動方程式に従って、振動を速やかに減衰させるものである。ここで、xは、タイヤ・リムモデル204の節点の変位ベクトル、aは節点の加速度ベクトル、vは節点の速度ベクトル、およびpは節点に作用する外力ベクトルである。
M・a + C・v + K・x = p (3)
【0043】
ここで、グローバルダンピング要素の減衰マトリクスCは、下記式(4)に示すように係数α、βおよびγを定めて設定してもよい。
C = αM + βK + γM・K (4)
例えば、α=γ=0、β≠0の場合、高周波振動に対して減衰効果を発揮する剛性比例減衰となり、α≠0、β=γ=0とすると、剛体運動を含む全ての振動に対して減衰効果を発揮する質量比例減衰となる。したがって、発生する振動の振動数に応じて係数α、βおよびγを設定するとよい。
例えば上記式(2)に示す質量比例減衰の場合、速やかに振動を減衰させるために、タイヤ・リムモデル204に発生する、注目する振動の最小振動数をfmin とすると、α=2(2πfmin )とするのが好ましい。
【0044】
次に、転動処理部500において、接地したタイヤ・リムモデル204の転動処理が行われる(ステップS500)。
転動処理は、接地したタイヤ・リムモデル204に並進速度および回転角速度を付与し、転動状態のタイヤ・リムモデル204の作成を行うことをいう。
並進速度および回転角速度は、転動条件として操作者により設定されたものである。例えば、並進速度は、ドライ性能やウェット性能を解析するために速度100km/時が設定される。一方、回転速度は、荷重を負荷して変形したタイヤリムモデルの回転半径、例えば有効転がり半径によって並進速度を除した値を回転角速度として付与される。ここで、有効転がり半径とは、接地変形したタイヤリムモデルを転動させて一回転させた時の移動距離を2πで除した値である。なお、有効転がり半径の替わりに、ステップS300にて作成された内圧充填処理後のタイヤ・リムモデル204の最大外径と同等またはこれより小さく、接地変形したタイヤ・リムモデル204におけるタイヤ回転軸に相当する中心軸と路面モデル205間の距離とより短い回転半径によって並進速度を除した値を、回転角速度として付与してもよい。このような回転角速度を与えることで、タイヤ・リムモデル204に発生する振動が大きくならず、少ない回数の時間ステップで(短時間で)安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0045】
なお、転動処理において、タイヤ・リムモデル204を転動させることで発生する振動を速やかに減衰させるために、接地処理において付与されたダンパ要素Aを保持したまま、さらに、ゴム部材で構成されるタイヤトレッド部に対応するタイヤ・リムモデル204の対応部分の有限要素の、剛性に関する材料定数を、粘弾性特性に基づいた位相遅れ特性を有するものとする。
この材料定数の設定は、タイヤトレッド部に対応するタイヤ単体モデルの有限要素全周に対して行ってもよく、あるいは、タイヤトレッド部に対応する有限要素のうち、転動処理により路面モデル205と接触するタイヤ・リムモデル204の周上の一部分に位置する有限要素のみに対して行ってもよい。本発明においては、この材料定数の設定は、タイヤトレッド部に対応する有限要素に限定されるものでなく、タイヤトレッド部の一部を少なくとも含むタイヤ構成部材に対応する有限要素に対して行われるとよい。例えば、タイヤサイド部またはタイヤ内周面に形成されるインナライナー部のゴム部材に対応するタイヤ・リムモデル204の有限要素、あるいは、タイヤベルト部のスチールコード部材に対応するタイヤ・リムモデル204の有限要素に対して行ってもよい。
【0046】
材料定数の設定では、具体的には、タイヤトレッド部のゴム部材の場合、入力する歪みに対して位相が遅れて応力が発生するゴム部材の粘弾性特性に従って、入力変位に対して位相が遅れて反力が生じるよう、各有限要素の材料定数に付加するtanδを設定する(図7参照)。
ここで、tanδは、粘弾性試験によって得られる損失弾性率E’’を貯蔵弾性率E’ で割った値であり、tanδが大きいほど振動を速やかに減衰させることができる。
【0047】
なお、ゴム材料のtanδは、一般的に周波数依存性を有するため、タイヤ・リムモデル204に発生する振動の振動数に応じたtanδの値を用いる必要があり、以下の理由から、100〜1000(Hz)の周波数域におけるtanδの値を用いるとよい。
【0048】
すなわち、一般に、タイヤの基台部分(ケーシング)は略150(Hz)付近に固有周波数を持つ固有モードを有するため、タイヤ・リムモデル204においても、この固有モードの影響を受けて略150Hz付近に振動成分を持つ。このため、減衰のないタイヤ・リムモデル204では、実際のタイヤに発生する振動より大きな振動が発生する。一方、タイヤのトレッドパターンを構成する各ブロックは、略800〜1000(Hz)付近に固有周波数を持つ固有モードを有し、路面とタイヤ間の接地近傍で振動を発生し、しかも、転動時、トレッドパターンのブロックの接地、離地を繰り返して絶えず加振されるため、振動が発散し大きな振動となり易い。このため、タイヤ・リムモデル204においても、この固有モードの影響を受けて略800〜1000Hz付近に振動成分を持つ。
したがって、上記固有周波数に起因した振動が抑制されるように、100〜1000(Hz)の周波数域におけるゴム部材のtanδの値を用いるとよい。
【0049】
なお、転動処理において、タイヤトレッド部に対応する有限要素の材料定数に位相遅れ特性を持たせるものであるが、タイヤトレッド部に対応する有限要素の材料定数に位相遅れ特性を持たせる替わりに、接地処理において用いた、図5(b)に示すグローバルダンピング要素Bをタイヤトレッド部に対応する有限要素に付与することはできない。グローバルダンピング要素Bを付与すると、上記式(3)に示すように、変位速度vと減衰マトリクスCの作用により、タイヤの回転角速度に対しても抗力が発生し、タイヤ・リムモデル204を所定の回転角速度で回転できなくなるからである。したがって、転動処理においてグローバルダンピング要素Bは取り除かれる。なお、接地処理の際に付与されたダンピング要素がダンパ要素Aである場合、ダンパ要素Aを取り除くことなくタイヤ・リムモデル204を転動処理してもよい。
【0050】
こうして、所定の移動速度で転動するタイヤ・リムモデル204が作成され、さらに、所定の時間、発生した振動を減衰させるための減衰処理時間を設けることで振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204の作成が行われる(ステップS600)。
【0051】
なお、転動処理においては、静止したタイヤ・リムモデル204を弾性変形を許容しない、あるいは、極めて小さい変形となる剛体モデルに一旦変換し、変換した剛体モデルに対して並進速度および回転角速度を付与して静止状態から転動状態を作り、この後、剛体モデルをタイヤ・リムモデル204に復元してもよい。この処理を行うことで、静止状態から転動状態を作る場合の加速度の急激な変化に伴って発生する振動を小さくすることができ、ダンパ要素Aを用いた場合、このダンパ要素Aおよび材料定数の位相遅れ特性の効果と重なって、振動の発生しない安定したタイヤ・リムモデル204を速やかに作成することができる。
【0052】
図8は、ダンパ要素および位相遅れ特性を有する材料定数を用いて、タイヤ・リムモデル204に発生する振動を速やかに減衰させた例を示している。
図8の例では、時間0.02秒までにタイヤ・リムモデル204に内圧充填処理を終了させて、時間0.02秒〜0.04秒の間でタイヤ・リムモデル204の移動を終了させ、時間0.04秒から0.1秒の間の0.06秒間を緩和処理時間として接地処理の一部として設けている。この後、時間0.1秒から転動処理を開始している。接地処理における荷重は4(kN)である。
図8中、上下力とは、図7に示す路面モデル205の面に垂直な方向に作用する節点Rに作用する力であり、前後力とは、節点Rに作用する力で、上下力に対して直交する方向に作用する力である。
【0053】
図8からわかるように、ダンパ要素を付与して接地処理を行ったため、速やかに軸力が目標とする荷重4(kN)になって安定した接地状態のタイヤ・リムモデル204が作成されている。
さらに、転動処理において、位相遅れ特性を有する材料定数の効果により、極めて短い時間で、例えば時間0.15秒において、振動のない安定した転動状態が作られている。
このように、安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を短時間に作成することができ、すなわち、少ない回数の時間ステップで安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができ、タイヤ性能の予測を効率よく行うことができる。
【0054】
次に、タイヤ性能予測部600において、振動のない安定した転動状態のタイヤ・リムモデル204を用いて、ドライ路面あるいはウェット路面を所定の条件で走行するタイヤの挙動を再現するシミュレーション演算が行われる(ステップS700)。
例えば、路面モデル205上を転動するタイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に傾斜角を付与して、キャンバ角やスリップ角を付与したコーナリング状態を再現する演算を行う。さらには、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に制動トルクや駆動トルクを付与して、タイヤのブレーキング状態や駆動状態などを再現する演算を行う。あるいは、タイヤが水膜を排除しながら転動する動的状態を再現する演算を行う。
【0055】
最後に、タイヤ性能予測部600において、シミュレーション演算結果から注目する特性物理量を算出してタイヤ性能が予測される(ステップS800)。
特性物理量は、例えば、ドライ性能の場合、タイヤ・リムモデル204と路面モデル205との間に生じる摩擦力、タイヤの変形形状、内部応力分布、エネルギー密度分布、接地形状、接地圧分布などが挙げられ、ウェット性能の場合、例えば、タイヤ・リムモデル204のタイヤ回転軸に作用する浮力やタイヤ・リムモデル204と路面モデル205の間に生じる摩擦力、タイヤ・リムモデル204の接地形状、接地面積または接地圧分布が挙げられる。また、流体モデルの圧力分布、あるいは、流体モデルにおける流体物質の流れ速度、流量、エネルギー密度、またはエネルギーの分布が挙げられる。
このような特性物理量の大小等によって、タイヤ性能を予測することができる。
【0056】
このように、タイヤ基台モデル201、パターンモデル202を組み合わせてタイヤ単体モデル、さらには、タイヤ・リムモデル204を作成して、効率よく短時間に接地状態、さらには転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成するので、タイヤ性能の予測を効率よく短時間に行うことができる。しかも、振動が発生しない安定した転動状態のタイヤ・リムモデルを作成できるので、精度の高いタイヤ性能の予測が行える。したがって、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いながら、タイヤ基台モデル201の構成やパターンモデル202の形状を種々変化させながら、所望のタイヤ性能を予測して最適なタイヤの構成やパターン形状を効率よく見出すことができる。また、タイヤ基台モデル201またはパターンモデル202が予め種々用意された中から、所望のタイヤ性能の予測結果が最も良好なタイヤ基台モデルまたはパターンモデルを効率よく選択することができる。
こうして見出されたあるいは選択されたタイヤ基台モデルあるいはパターンモデルを実現するタイヤを設計し、所望のタイヤ性能を備えるタイヤを製造することができる。
【0057】
なお、タイヤ性能として、上記例ではいずれもタイヤのドライ性能およびウェット性能を予測するものであるが、本発明は、タイヤのドライ性能およびウェット性能の性能予測に用いる場合に制限されず、摩耗性能、耐久性能、振動乗心地性能、騒音特性等を予測してもよい。
上記例では、タイヤ単体モデルにリムモデルを組み合わせたタイヤ・リムモデルを用いるものであるが、リムモデルを組み合わせることなくタイヤ単体モデルを用いて接地状態あるいは転動状態のタイヤモデルを作成してタイヤ性能の予測を行ってもよい。
【0058】
また、路面モデルに接地する接地状態のタイヤ・リムモデル204を作成する上述した方法は、以下に示すプログラムをコンピュータ上で実行することで実現することができる。すなわち、タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤ単体モデル、およびリムモデル203をコンピュータの演算手段であるCPU110に作成させる手順と、作成されたタイヤ単体モデルにリムモデル203を結合したタイヤ・リムモデル204をCPU110を用いて作成させ、このタイヤ・リムモデル204に内圧充填処理を施す処理をCPU110に実行させる手順と、タイヤ・リムモデル204にダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデル205にタイヤ・リムモデル204を接地させる接地処理をCPU110に実行させる手順と、を有するプログラムをコンピュータ上で実行することで接地状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0059】
また、路面モデル205上を転動するタイヤ・リムモデル204を作成する上述した方法は、以下に示すプログラムをコンピュータ上で実行することで実現することができる。すなわち、路面を再現した路面モデル205に接地する、有限要素を用いたタイヤ・リムモデル204をコンピュータのCPU110に作成させる手順と、路面モデル205に接地したタイヤ・リムモデル204の、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地したタイヤ・リムモデル204に施す転動処理をCPU110に実行させる手順と、を有するプログラムをコンピュータ上で実行することで転動状態のタイヤ・リムモデル204を作成することができる。
【0060】
以上、本発明のタイヤモデル作成方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明は、タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルにタイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行うので、振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成することができる。
また、路面モデルに接地したタイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に位相遅れ特性を付与して、転動処理を行うので、振動することなく安定した状態にあるタイヤモデルを短時間で効率よく作成することができる。
したがって、転動状態のタイヤ・リムモデルを用いて行うタイヤ性能の予測を短時間で効率よく、しかも、精度高く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤモデル作成方法およびタイヤ性能予測方法を実施するタイヤ性能予測装置の概略の構成を示す概略構成図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明で作成される各種モデルの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のタイヤモデル作成方法の一部分の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明のタイヤモデル作成方法の他の部分の流れを示すフローチャートである。
【図5】(a)および(b)は、本発明のタイヤモデル作成方法の一例を説明する図である。
【図6】接地状態のタイヤモデルの作成中に得られるタイヤ回転軸に作用する力の時間変動を示す図である。
【図7】本発明のタイヤモデル作成方法の他の例を説明する図である。
【図8】転動状態のタイヤモデルの作成中に得られるタイヤ回転軸に作用する力の時間変動を示す図である。
【符号の説明】
100 タイヤ性能予測装置
110 CPU
120 メモリ
200 モデル作成部
201 タイヤ基台モデル
202 パターンモデル
203 リムモデル
204 タイヤ・リムモデル
205 路面モデル
206 タイヤ・路面モデル
300 内圧充填処理部
400 接地処理部
500 転動処理部
600 タイヤ性能予測部
Claims (9)
- 路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、
タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを作成するステップと、
前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを作成し、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施すステップと、
前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。 - 前記ダンピング要素は、前記路面モデルの面の垂直方向に可動する、前記タイヤ・リムモデルのタイヤ回転軸に位置する節点に付与されるダンパ要素である請求項1に記載のタイヤモデル作成方法。
- 前記ダンピング要素は、前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である請求項1に記載のタイヤモデル作成方法。
- 前記ダンピング要素の減衰係数は、臨界減衰係数を0.5〜2.0倍したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
- 路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルの作成方法であって、
路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを作成するステップと、
路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに転動処理を行うステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。 - 前記路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの作成は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法を用いて行われる請求項5に記載のタイヤモデル作成方法。
- 請求項6に記載のタイヤモデル作成方法で作成されたタイヤ・リムモデルを用いてタイヤ性能を予測する方法であって、
前記タイヤ・リムモデルに付与されたダンピング要素が前記タイヤ・リムモデルの各節点に付与されるグローバルダンピング要素である場合、このグローバルダンピング要素を取り除いた後、前記タイヤ・リムモデルを用いて、所定の条件でタイヤ挙動を再現する演算処理を行うステップと、
この演算処理結果から特性物理量を算出してタイヤ性能を予測するステップと、を有することを特徴とするタイヤ性能予測方法。 - 路面に接地したタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、
タイヤの構成要素を有限要素で分割したタイヤモデル、およびリムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、
前記タイヤモデルに前記リムモデルを結合したタイヤ・リムモデルを前記演算手段を用いて作成させ、このタイヤ・リムモデルに内圧充填処理を施す処理を前記演算手段に実行させる手順と、
前記タイヤ・リムモデルにダンピング要素を付与して、路面を再現した路面モデルに前記タイヤ・リムモデルを接地させる接地処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラム。 - 路面上を転動するタイヤを再現した、有限要素を用いたタイヤモデルをコンピュータに作成させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、
路面を再現した路面モデルに接地した、有限要素を用いたタイヤ・リムモデルを前記コンピュータの演算手段に作成させる手順と、
路面モデルに接地した前記タイヤ・リムモデルの、タイヤトレッド部に対応する少なくとも一部の有限要素の剛性に関する材料定数に、位相遅れ特性を付与して、接地した前記タイヤ・リムモデルに施す転動処理を前記演算手段に実行させる手順と、を有することを特徴とするプログラム。
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