JP4038707B2 - 防汚加工剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚加工剤に関するものであり、さらに詳しくは、基材に塗工または含浸することによって、防汚性を有する層を形成させる防汚加工用組成物に関するものであり、特に不織布や建材用紙、壁紙などの内装材の表面に処理することにより、汚れにくい内装材の製造に適用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
基材の防汚性を得る手段として、基材の表面に耐汚染性のある樹脂フイルム(代表的なものとしてエバールフイルム)を貼着する方法(特開平5−140345号公報、特開平7−112502号公報、実開平7−010000号公報など)が提案され採用されてきている。
【0003】
しかしながら、これらの加工方法においては、フイルムと基材表面との接着不良の問題、あるいはエンボス加工した場合に、基材のエンボス凹部のみがフイルムとの接着点となり、凸部は事実上接着していないことから生じるフイルムの浮きなどの問題を生じやすく、フイルムが剥離したり破れたりして、その部分が汚染されやすいなどの問題を有していた。
【0004】
更に、基材とフイルムの伸縮度の差に起因してカールが発生することがあり、化粧紙として利用する場合や壁紙として利用する場合に作業効率が悪いといった欠点を有していた。又、フイルムそのものも比較的高価なものが多いため、これらの点が相まって、経済性の点でもデメリットを有していた。
【0005】
そこで前述の方法とは異なり、樹脂を塗工することにより防汚性を得る方法が用いられてきている。
すなわち、フルオロアルキル基を有する化合物が、撥水撥油性能を有することが知られており、このフロオロアルキル基をポリシロキサン類に導入したフルオロシリコーンオリゴマーは、優れた撥水撥油性、防汚性を有しているため、これらを合成樹脂エマルジョンと組み合わせ、各種製品の撥水撥油性・防汚付与剤などに利用されている。
しかし、これらのフッ素系塗工剤は、透湿性を有するために、防湿性が得られなかったり、浸透性の高い汚染物質による長時間の汚染に対して汚染を受けやすいという欠点を有していた。
【0006】
また、フルオロアルキル基を含有する重合可能な化合物、例えばフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体を主構成単位としてなるフッ素系ビニル系重合体や塩化ビニリデンや塩化ビニルのような化合物を共重合させたポリマーやオリゴマーが知られており、繊維の撥水・防汚加工剤、紙の撥水撥油加工剤としてエマルジョンの形態で広く利用されている。
しかし、これらのフルオロアルキル基含有共重合物はエマルジョンとして利用する時に種々の要因により沈降しやすかったり、エマルジョンの機械的安定性や長期保存安定性が悪いなどの欠点があった。
【0007】
さらに、最近では、その他の方法として酸化チタンを使った光触媒による防汚方法(特開平10−072664号公報、特許第2920140号公報)が用いられるようになってきている。これらは、光触媒層を形成し、そこに光を当て光触媒作用により、汚染物質の分解、除去を行うものである。
【0008】
しかし、上記の方法では壁紙の防汚方法に用いるには、室内であるために充分な機能が発揮されなかったり、除去に時間がかかるなどの問題を抱えている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は基材への塗工又は含浸によってエバールフィルム張り並みの防汚性能を付与することができる防汚加工剤を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、合成樹脂エマルジョンとパラフィンワックスエマルジョンと無機系充填剤を特定割合でブレンドした組成物を使用した樹脂組成物を加工基材に塗工することにより、エバールフィルム張り加工基材と同等の防汚性能を付与することができることを発見し、本発明を完成させるに到った。
【0011】
すなわち[I]本発明は、酸価が0〜150mgKOH/gである合成樹脂エマルジョン(1)と融点が53〜65℃のパラフィンワックス(2)と平均粒子径が1〜20μmの無機系充填剤(3)とを含んでなり、該合成樹脂エマルジョン(1)の固形分100重量部に対し、該パラフィンワックス(2)が固形分で3〜50重量部であり、該無機系充填剤が5〜200重量部である防汚加工剤を提供するものであり、
【0012】
また[II]本発明は、合成樹脂エマルジョン(1)のTgが、−30〜50℃である上記[I]記載の防汚加工剤を提供するものであり、
[III]本発明は、ワックス(2)が、ノルマルパラフィンワックスを90重量%以上含むものである上記[I]又は[II]記載の防汚加工剤を提供するものであり、
[IV]無機質充填剤(3)が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、クレー、タルク、カオリン、二酸化ケイ素からなる群から選ばれる1種又は2種以上である[I]〜[III]のいずれか1項記載の防汚加工剤を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳述する。
本発明の合成樹脂エマルジョンは、以下に示すエチレン性不飽和単量体を複数組み合わせて乳化重合することにより製造される。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタルクル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタルリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、などで例示されるアクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステル、1,2ブタジェン、1,3ブタジェン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン2、4―ジブロモスチレン等で示されるエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸並びに、不飽和ジカルボン酸モノアクキルエステル例えば、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の如きビニルエステル、塩化ビニリデン臭化ビニリデン等の如き、ビニリデンハライド、アクリル酸−2−ヒドロキシエチレル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキルエチル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステルおよび、アクリルアミド、メタクリルアミド、Nーメチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルミド等のラジカル重合可能な単量体等が挙げられる。
【0014】
乳化重合する際の乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを挙げることができる。これらのうち、防湿性をより高めるためには反応性乳化剤を用いることが好ましい。この反応性乳化剤を用いることによりソープフリー型のエマルジョンが得られる。反応性乳化剤としては、例えばスチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソ−ダ、各種エチレン性不飽和基を有する乳化剤などを挙げることができる。この中でも、特開昭58−203960号公報で示される下記の構造式を有する化合物が最も好ましい。
【化1】
Figure 0004038707
(式中、Rは炭素数12のアルキル基、又は水素原子の1つがフッ素原子で置換された炭素数18のアルキル基を表し、MはNa、又はNH4表す。)
また本発明の合成樹脂エマルジョンとして、乳化剤を使用せず、合成ゴムラテックス、又は合成樹脂エマルジョンの樹脂にカルボキシル基等の陰イオン性基、第4級アンモニウム塩基等の陽イオン性基、エチレンオキサイド鎖等の非イオン性の官能基を含ませた自己乳化型のソープフリーのエマルジョンを使用することもできる。
また合成樹脂エマルジョンに乳化剤を使用する場合、ワックスエマルジョンとの相溶性の点から、乳化剤のイオン性、非イオン性を一致させることが好ましい。例えばワックスエマルジョンに陰イオン性界面活性剤を使用すれば合成樹脂エマルジョンも陰イオン性界面活性剤を使用したものが好ましい。
【0015】
乳化剤の使用量としては、特に制限はないが、合成ゴムラテックス、又は合成樹脂エマルジョンの固形分換算で100重量部に対して、0.1〜3重量部用いるのが好ましい。乳化剤を3重量部を越えて用いた合成ゴムラテックス又は合成樹脂エマルジョンを本発明の充填剤と組合せて用いても高い防汚性の発現は困難になる。また0.1重量部未満用いても乳化性能を発揮しない。
【0016】
本発明の合成樹脂エマルジョンは、上記エチレン性不飽和単量体を乳化重合したものであるが、これらのエチレン性不飽和単量体の中でも、2−エチルヘキシルアクリレ−トを使用することが防汚性の点で好ましい。
【0017】
合成エマルジョンの合成樹脂の酸価は、0〜150mgKOH/gであることがエマルジョンの安定性の点で必要である。酸価が150mgKOHを越えるとワックスを入れても撥水効果がでないので好ましくない。
【0018】
合成樹脂エマルジョンの合成樹脂のTgは、−30℃〜50℃が好ましい。−30℃未満の場合は、耐ブロッキング性の面で好ましくなく、50℃を越えると、成膜性や割れ性の面で好ましくない。
【0019】
本発明の合成樹脂エマルジョンを製造するには、前記した単量体混合物を、フリ−ラジカル発生触媒の存在下で、40℃〜80℃で重合を行なえばよい。フリ−ラジカル発生触媒としては、例えば過硫酸カリウム(K2S2O8)、過硫酸アンモニウム[(NH4)2S2O8]、過酸化水素等の水性触媒、tert−ブチルハイドパ−オキサイド、クメンハイドロパ−オキサイド等の油性触媒が挙げられる。
【0020】
またラジカル重合に通常用いられる添加剤、例えば連鎖移動剤、エチレンジアミン四酢酸、pH調整のためのアルカリ性物質を必要に応じて使用することができる。
【0021】
本発明の合成樹脂エマルジョンは、未反応モノマーの臭気を低減する等のため、例えばストリッピング等の方法によって必要とされる固形分含量に濃縮されて使用することが好ましい。
【0022】
本発明のワックスは、特に限定されないが、石油から分離され、精製された結晶性パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスは、主としてノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等の構造のものがあるが、ノルマルパラフィンを90重量%以上含み、イソパラフィンとシクロパラフィンが10重量%以下であることが防汚性において好ましい。またパラフィンの炭素原子数は、特に制限はないが、20〜35のものが好ましい。
【0023】
また融点は、通常47〜68℃の範囲で変化するが、本発明の目的である防汚性を維持するには、53〜65℃であることが必要である。53℃に満たないと、本発明組成物を基材に塗布後乾燥工程において、基材にしみ込み防汚性を発揮せず、また65℃を越えるとワックスが塗膜の表面にでないため防汚性を発揮せず、好ましくない。さらに分子量は、特に制限がないが、数平均分子量で330〜480あることが防汚性を発揮する上で好ましい。
【0024】
またパラフィンワックスの使用量は、3〜50重量部であることが必要である。3重量%未満では所期の防汚性能を得ることができず、又、50重量部を越えると基材に浸透し、皮膜形成の面で好ましくない。
パラフィンワックスの形態としては、固形状またはこの固形状のものを乳化分散したエマルジョン状のものが挙げられ、いずれの形態も使用することができるが、合成樹脂エマルジョン等との相溶性の点でエマルジョン状のものが好ましい。
【0025】
乳化分散の際、乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。
パラフィンワックスの市販品としては、たとえば、115、120、125、130、135、140、150、EMUSTER0135、0136、0384、[日本精蝋(株)製]が挙げられる。
【0026】
その他パラフィンワックスと併用する必須成分としては無機系充填剤が挙げられる。
無機系充填剤としては、特に制限されないが、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、クレー、タルク、カオリン、二酸化ケイ素、雲母等が挙げられる。これらのうち、防汚性と艶消し性の点で炭酸カルシウム、水酸化アルミ、二酸化ケイ素、クレー、タルク、カオリンが好ましい。
無機系充填剤の平均粒子径は、1μm〜20μmのものであり、好ましくは粒子径が3μm〜15μmのものである。粒子径が3μm未満の場合には、流動性の点で好ましくなく、又、15μmを越えると成膜性や防汚性の点において好ましくない。
【0027】
また無機系充填剤の使用量は、艶消し性の点で合成樹脂エマルジョンの固形分換算で100重量部に対し、5〜200重量部が好ましい。無機系充填剤が5重量部未満では艶消し性の面で好ましくなく、又、200重量部を越えると防汚性、皮膜形成において好ましくない。より好ましくは、20〜120重量部である。
【0028】
パラフィンワックスエマルジョンと合成樹脂エマルジョンとの組み合わせ方法としては、パラフィンワックスエマルジョンを該合成樹脂エマルジョンに混合してもよいし、該パラフィンワックスエマルジョンの存在下で合成樹脂エマルジョン用単量体混合物を乳化重合してもよい。
【0029】
本発明の防汚加工剤は、必要に応じて、上記本発明組成物の成分の他に、分散剤、界面活性剤、増粘剤等を添加することができる。
【0030】
分散剤としては、例えば高分子界面活性剤(ポリアクリル酸)やそのナトリウム塩及びアンモニウム塩、更にトリポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダなどが挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダやジアルキルスルホコハク酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダなどが挙げられる。
【0032】
増粘剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0033】
本発明の防汚加工剤を、基材に塗布又は含浸加工させることにより、防汚層が形成される。塗布又は含浸加工の方法として特に限定はしないが、グラビアなどの印刷機やバーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、スクリーンコーター、カーテンコーターなどの各種コーターによる塗工方法や含浸機による含浸加工で、加工した防汚層に欠陥ができにくい方法が好ましい。
防汚層の加工量は固形分として1〜80g/m2、好ましくは5〜50g/m2である。
【0034】
基材としては、紙、不織布や木質基材などが挙げられるが、上述の加工方法により防汚層が得られるものであれば、限定されるものではない。
【0035】
【実施例】
以下に合成例及び実施例を示し本発明を具体的に説明する。特に断らない限り、例中の「部」および「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0036】
<合成例1>
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン41部、2エチルヘキシルアクリレート46部、メチルメタクリレート10部、メタアクリル酸3部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なった。得られたエマルジョンの重合率は98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを8.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Aという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンの酸価は、およそ25であった。
【0037】
<合成例2>
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン35部、2エチルヘキシルアクリレート50部、メタアクリル酸15部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なった。得られたエマルジョンの重合率は98.9%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを6.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Bという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンの酸価は、およそ100であった。
【0038】
<合成例3>
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、パラフィンワックス(軟化点60℃)を表1に示す量で、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン51部、2エチルヘキシルアクリレート46部、メタアクリル酸3部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なった。得られたエマルジョンの重合率は98.2%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを8.4に調整し、固形分45.8%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Cという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンの酸価は、およそ25であった。
【0039】
<合成例4>
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に水120部、水酸化ナトリウム0.1部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン60部、ブタジエン30部、メタアクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき冷却を行なった。得られたラテックスは、重合率98.4%であった。次いで、25%アンモニア水でラテックスのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留によって乳化剤の含有量が1%以下の固形分50.1%のSBRラテックス(以下LX−Aという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンの酸価は、およそ75であった。
【0040】
<実施例1〜9>
得られた合成樹脂エマルジョンとパラフィンワックス、無機充填剤を表1の通り配合し、本発明の防汚加工剤を得た。
【0041】
<比較合成例1>
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン30部、2エチルヘキシルアクリレート45部、メタアクリル酸25部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なった。得られたエマルジョンの重合率は98.9%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを6.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−1という)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンの酸価は、およそ180であった。
【0042】
<比較合成例2>
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン50部、2エチルヘキシルアクリレート25部、メタアクリル酸25部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なった。得られたエマルジョンの重合率は98.9%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを6.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−2という)を得た。得られた合成樹脂エマルジョンのTgは、およそ70℃であった。
【0043】
<応用実施例1〜9>
合成例で得られた合成樹脂エマルジョンを用いて、実施例1〜9の防汚加工用組成物を各種の加工基材基材に対して、マイヤ−ロットにより塗工量約5〜40g/m2を塗工し、熱風乾燥機にて120℃、1分間乾燥し、防汚加工基材を得た。
【0044】
<比較応用実施例1〜8>
合成例及び比較合成例で得られた合成樹脂エマルジョンとパラフィンワックスを用いて、比較例1〜8の組成物を各種の加工基材基材に対して、マイヤ−ロットにより塗工量約5〜40g/m2を塗工し、熱風乾燥機にて120℃、1分間乾燥し、加工基材を得た。
【0045】
このようにして得られた樹脂加工基材について、下記の試験方法により、防汚性をはじめとする諸物性を測定評価した。表3と表4に測定の結果を示す。
【0046】
この表4から比較例1〜8の加工剤により得られた加工基材の防汚性は、実施例1〜9の加工剤により得られた加工基材で得られた防汚性の値よりいずれも低く、防汚性の点でフイルム(エバール)ラミネ−トタイプの防汚加工基材にはなり得ないことがわかる。
【0047】
【表1】
Figure 0004038707
(注)
パラフィンワックス E−0136(融点、60℃) 日本精蝋(株)
水酸化アルミニウム C−303 (平均粒子径2μm) 住友軽金属(株)
炭酸カルシウム NS−100( 〃 3μm) 日東粉化 (株)
二酸化ケイ素 446D ( 〃 4.5μm) 富士シリシア化学(株)
【0048】
【表2】
Figure 0004038707
(注)
パラフィンワックス E−0136(融点 60℃)日本精蝋(株)
水酸化アルミニウム B−153 (平均粒子径 15μm)日本軽金属(株)
炭酸カルシウム NS−100( 〃 3μm)日東粉化 (株)
P−ワックス ポリエチレンワックス (融点 100℃)
水酸化アルミニウム B−53 (平均粒子径 50μm)
【0049】
【表3】
Figure 0004038707
Figure 0004038707
【0050】
【表4】
Figure 0004038707
Figure 0004038707
【0051】
【発明の効果】
本発明の防汚加工剤を用いてなる加工基材は、従来のエバールフィルムを用いた加工基材同等に防汚性能に優れているとともに、艶消し性に優れ加工基材として大変有用である。

Claims (4)

  1. 酸価が0〜150mgKOH/gである合成樹脂エマルジョン(1)と融点が53〜65℃のワックス(2)と平均粒子径が1〜20μmの無機系充填剤(3)とを含んでなり、該合成樹脂エマルジョン(1)の固形分100重量部に対し、該ワックス(2)が固形分で3〜50重量部であり、該無機系充填剤(3)が5〜200重量部であることを特徴とする防汚加工剤。
  2. 合成樹脂エマルジョン(1)の合成樹脂のTgが−30〜50℃である請求項1記載の防汚加工剤。
  3. ワックスが(2)が、ノルマルパラフィンワックスを90重量%以上含むパラフィンワックスである請求項1又は2記載の防汚加工剤。
  4. 無機系充填剤(3)が炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、クレー、タルク、カオリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の防汚加工剤。
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