JP4174709B2 - 防汚加工剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚加工剤に関するものである。更に詳しくは、基材に塗工、含浸又はスプレー等の加工方法により、基材に防汚性に優れる層を形成させる目的で使用可能な防汚加工剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
化粧紙、壁紙等の基材に防汚性を与える手段としては、従来、基材の表面に耐汚染性を有するフィルム[例えば、エバールフィルム、(株)クラレ製、エチレン酢酸ビニルポリビニルアルコール(EVOH樹脂)製フィルム]を貼着する方法(特開平5−140345号、特開平7−112502号、実公開平7−010000号等)が知られている。しかしながら、エバールフィルム自体艶消性が十分ではなく、また加工方法においては、フィルムと基材表面との接着不良の問題、あるいは、エンボス加工した場合には、基材のエンボス凹部のみがフィルムとの接着点となり、凸部は事実上接着していないことから生じるフィルムの浮きなどの問題を生じやすく、フィルムが剥離したり破れたりして、その部分が汚染されやすいなどの問題を有していた。更に、基材とフィルムの伸縮度の差に起因してカールが発生し、化粧紙や壁紙として用いた場合に、作業効率、美観などの点で不具合を生じており問題であった。
【0003】
また、防汚性能を有する樹脂の塗工により防汚性を付与する方法が知られている。例えば、フルオロアルキル基を有する化合物が、撥水撥油性能を有することが知られており、フルオロアルキル基をポリシロキサン類に導入したフルオロシリコーンオリゴマーは、優れた撥水撥油性と防汚性を有しているため、これらを合成樹脂エマルジョンと組み合わせて、各種製品の撥水撥油性及び防汚性を有する塗工剤などに利用されている。しかし、これらの塗工剤は、防湿性が不充分であり、浸透性の高い汚染物質による長時間の接触に対して汚染を受けやすいという問題を有していた。
【0004】
また、フルオロアルキル基を含有する重合性化合物、例えば、フルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体を主構成単位としてなるフッ素系ビニル系重合体や塩化ビニリデン、塩化ビニルのような化合させたポリマーやオリゴマーが知られており、繊維の撥水・防汚加工剤、紙の撥水撥油加工剤などとしてエマルジョンの形態で広く利用されている。しかし、これらのフルオロアルキル基含有共重合物は高価で経済性に乏しく、品質面では特に塩化ビニリデンや塩化ビニルは加工物の風合いを粗硬にする等の欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、基材への塗工、含浸又はスプレー等の加工方法により、基材にエバールフィルム貼りと同等の防汚性能と共に、優れた艶消性を付与することが出来る防汚加工剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、合成樹脂エマルジョンと、ワックスと、ポリオレフィンの微粉体あるいは水分散体を特定割合で配合した防汚加工剤を基材に塗工、含浸又はスプレー等の適当な加工手段により付着させることにより、エバールフィルム貼りの加工基材並の防汚性能と共に、優れた艶消性を付与することが出来ることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
即ち、本発明は、合成樹脂エマルジョン(A)と、融点が40〜110℃の範囲であるワックス(B)、及び平均粒子径が1〜100μmの範囲であり滴点が50〜170℃の範囲であるポリオレフィン(C)からなる防汚加工剤であり、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分100重量部に対し、ワックス(B)の固形分が3〜50重量部の範囲であり、前記ワックス(B)が、パラフィンを90重量%以上含む石油ワックスであり、かつポリオレフィン(C)の固形分が5〜200重量部の範囲であることを特徴とする防汚加工剤である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明を実施するにあたり、必要な事項を以下に述べる。
【0009】
本発明の防汚加工剤は、少なくとも、合成樹脂エマルジョン(A)と、ワックス(B)、及びポリオレフィン(C)からなる。
【0010】
本発明で用いる合成樹脂エマルジョン(A)の製造に使用する重合性単量体としては、特に限定せず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレートおよびこれらの塩、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基又はそのアルコキシ化物含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/又はブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有重合性単量体;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有重合性単量体、スルホン酸基及び/又はサルフェート基(及び/又はその塩)、リン酸基及び/又はリン酸エステル基(及び/又はその塩)を含有するエチレン性不飽和単量体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のビニルスルホン酸類又はその塩、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類又はその塩、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル等の(メタ)アクリレート基含有スルホン酸類又はその塩、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類又はその塩、リン酸基を有する「アデカリアソープPP−70、PPE−710」(旭電化工業(株)製)等、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等のラジカル重合可能な単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0011】
本発明で使用する合成樹脂エマルジョン(A)は、上記の重合性単量体を乳化重合することにより得られる。この際使用する乳化剤としては、一般に入手可能な陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、陽イオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを使用することができる。
本発明で使用可能な陰イオン性乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩等が挙げられる。また、本発明で使用可能な非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。また、本発明で使用可能な陽イオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルトリメチルクロライド等が挙げられる。更に、本発明で使用可能な両イオン性乳化剤としては、例えば、アルキルベタイン等が挙げられる。これら乳化剤は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
更に、本発明では、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することも出来る。本発明で使用可能な反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有するラテムル S−180[花王(株)製]、エレミノール JS−2、RS−30[三洋化成工業(株)製]等;硫酸基及びその塩を有するアクアロン HS−10、HS−20[第一工業製薬(株)製]、アデカリアソープ SE−10、SE−20[旭電化工業(株)製]等;リン酸基を有するニューフロンティア A−229E[第一工業製薬(株)製]等;非イオン性親水基を有するアクアロン RN−10、RN−20、RN−30、RN−50[第一工業製薬(株)製]等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用できる。
【0013】
また、本発明においては、乳化剤を使用せず、合成ゴムラテックス、又は合成樹脂エマルジョンの樹脂にカルボキシル基やスルホン酸基等の陰イオン性基、第4級アンモニウム塩基等の陽イオン性基、エチレンオキサイド鎖等の非イオン性の官能基を含ませた自己乳化型のソープフリーのエマルジョンを使用することもできる。
【0014】
また、ワックスエマルジョンとの相溶性の点から、乳化剤のイオン性、非イオン性を一致させることが好ましく、例えば、ワックスエマルジョンに陰イオン性乳化剤を使用した場合は合成樹脂エマルジョンも陰イオン性乳化剤を使用したものが好ましい。
【0015】
本発明において、乳化剤の使用量としては、合成ゴムラテックス、又は合成樹脂エマルジョンの固形分換算で100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。乳化剤の使用量がかかる範囲であれば、過度な浸透が抑制されて優れた防汚性を得ることが出来る。
【0016】
本発明で使用する合成樹脂エマルジョン(A)は、上記エチレン性不飽和単量体を乳化重合したものであるが、これらのエチレン性不飽和単量体の中でも2−エチルヘキシルアクリレートを使用することが好ましい。
【0017】
前記合成樹脂エマルジョン(A)を製造するに際しては、例えば、前記した単量体混合物を、フリーラジカル発生触媒の存在下で、40〜90℃で重合反応を行えばよい。フリーラジカル発生触媒としては、例えば過硫酸カリウム(K2S2O8)、過硫酸アンモニウム[(NH4)2S2O8]、過酸化水素等の水性触媒、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の油性触媒などが挙げられる。
【0018】
また、ラジカル重合に通常用いられる添加剤、例えば、連鎖移動剤、エチレンジアミン四酢酸、pH調整のためのアルカリ物質などを必要に応じて使用することができる。
【0019】
本発明で使用する合成樹脂エマルジョン(A)は、未反応モノマーの臭気低減等のため、例えばストリッピング等の方法によって必要とされる固形分含量に濃縮されて使用することが好ましい。
【0020】
本発明の防汚加工剤に使用されるワックス(B)は、石油ワックス、動植物ワックス、鉱物ワックス、ポリオレフィンワックス及びその他エステル系合成ワックスなどから選ばれる少なくとも1種が好ましく、加工基材の着色抑制の点から石油ワックスがより好ましい。
本発明で使用する石油ワックスは、ノルマルパラフィンを70重量%以上含み、イソパラフィン及びシクロパラフィンは30重量%以下であることが加工面のブロッキング抑制と防汚性の向上において特に好ましい。
【0021】
また、本発明で使用するワックス(B)の融点は、通常40〜110℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜70℃の範囲である。ワックス(B)の融点がかかる範囲であれば、本発明の加工剤を基材に塗布後乾燥工程において、ワックスが塗膜の表面に出て、優れた防汚性を発現させることが出来る。
【0022】
更に、本発明で使用するワックス(B)の数平均分子量は、特に制限はないが、好ましくは300〜500の範囲であり、かかる範囲であれば優れた防汚性を発揮する上でより好ましい。
【0023】
本発明の防汚加工剤において、ワックス(B)の使用量は、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分100重量部に対し、ワックス(B)の固形分が3〜50重量部であることが好ましい。ワックス(B)の使用量がかかる範囲であれば、優れた防汚性能を有する皮膜を形成出来る。
【0024】
石油ワックスを代表とするワックス(B)の形態としては、固形状又はこの固形状のものを乳化分散したエマルジョン状のものが挙げられ、何れの形態も使用できるが、合成樹脂エマルジョン等との相溶性の点でエマルジョン状のものが好ましい。
【0025】
ワックス(B)の乳化分散の際に、乳化剤を使用することができ、該乳化剤としては、一般に入手可能な陰イオン性乳化剤、非イオン乳化剤、陽イオン乳化剤、両イオン乳化剤などの乳化剤を使用することができる。
【0026】
本発明において、石油ワックスとは、石油中に存在する常温固体の炭素数12以上の炭化水素系化合物、及び常温固形のものをエマルジョン化したものを云い、本発明で使用される石油ワックスの市販品としては、例えば、固形状品では、パラフィンワックス 115、125、135、150、155、マイクロクリスタリンワックス Hi−Mic−2045、Hi−Mic−2065[日本精蝋(株)]などが挙げられ、エマルジョン品では、EMUSTER 0135、0136、0384[日本精蝋(株)製]、フエニックス EW−165、EW−180[フタバファインケミカル(株)製]などが挙げられる。
【0027】
次いで、本発明の防汚加工剤において、使用するポリオレフィン(C)は、平均粒子径が、好ましくは1〜100μmの範囲の微紛体もしくはその水分散体が挙げられ、より好ましくは平均粒子径が3〜30μmの範囲のものであり、特に好ましくは3〜15μmの範囲のものである。ポリオレフィン(C)の微紛体もしくはその水分散体の平均粒子径がかかる範囲であれば、艶消性に優れ、皮膜表面のザラツキ感などの荒れもなく、好ましい。
【0028】
また、ポリオレフィン(C)の滴点は、好ましくは50〜170℃の範囲であり、より好ましくは80〜170℃の範囲である。ポリオレフィン(C)の滴点がかかる範囲であれば、優れた艶消性を発現できる。尚、本発明において云う「滴点」とは、ポリオレフィンが融解して自重で滴下し始める温度(℃)のことを云う。
【0029】
本発明で使用するポリオレフィン(C)は、特に限定はしないが、好ましくはポリエチレン及び/又はポリプロピレンである。
【0030】
ポリオレフィン(C)としては、ポリエチレン粉体品では、例えば、セリダスト 130、3620、6071、PE−130[クラリアントジャパン(株)]、アキュミスト A−6、C−9[アライド・シグナル社製]などが挙げられ、ポリエチレン水分散体では、例えば、A−512、A−516、A−329[(株)岐阜セラック製]、ファインテックス PE、PE−140[大日本インキ化学工業(株)製]などが挙げられ、ポリプロピレン粉体品では、例えば、プロピルテックス 325S、230S[マイクロパウダース社製]などが挙げられ、ポリプロピレン水分散体では、例えば、マイクロスパージョン 31−35[マイクロパウダース社製]などが挙げられる。
【0031】
また、本発明の防汚加工剤において、粉体もしくは水分散体のポリオレフィン(C)の使用量は、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分換算で100重量部に対し、ポリオレフィン(C)の固形分が、好ましくは5〜200重量部の範囲であり、より好ましくは20〜120重量部の範囲である。ポリオレフィン(C)の使用量がかかる範囲であるならば、皮膜表面の荒れが生じ難く、艶消性に優れる。
【0032】
本発明の防汚加工剤において、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分のガラス転移温度(Tg)は、−30〜50℃の範囲が好ましい。合成樹脂エマルジョン(A)の固形分のTgがかかる範囲であれば、耐ブロッキング性に優れ、成膜の割れが発生し難く、防汚性能に優れる。
【0033】
また、本発明の防汚加工剤において、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の酸価は、0〜150mgKOH/g(以下単位省略)の範囲が好ましい。合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の酸価がかかる範囲であれば、汚れの吸着が減少し、防汚性能に優れる。
【0034】
ワックス(B)と合成樹脂エマルジョン(A)との組み合わせ方法としては、特に限定せず、例えば、ワックスエマルジョンを合成樹脂エマルジョンに混合してもよいし、該混合物の存在下で合成樹脂エマルジョン用単量体混合物を乳化重合してもよい。また、ポリオレフィン(C)と合成樹脂エマルジョン(A)との組み合わせ方法としては、特に限定せず、例えば、ポリオレフィンは粉体もしくは水分散体を用いて合成樹脂エマルジョンに混合してもよい。
【0035】
本発明の防汚加工剤は、必要に応じて、上記の成分(A)、(B)及び(C)の他に、例えば、分散剤、界面活性剤、増粘剤、無機充填剤等の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
【0036】
本発明の防汚加工剤に使用できる分散剤としては、特に限定しないが、例えば、ポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の合成或いは天然の水溶性高分子物質などが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0037】
本発明の防汚加工剤に使用できる界面活性剤としては、特に限定しないが、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジアルキルスルホコハク酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0038】
本発明の防汚加工剤に使用できる増粘剤としては、特に限定しないが、例えば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)水溶液、ヒドロキシルエチルセルロース水溶液、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ塩及びアンモニウム塩、親水性基含有合成樹脂エマルジョン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合使用してもよい。
【0039】
本発明の防汚加工剤に使用できる無機充填剤としては、特に限定しないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、マイカ、カオリン、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、アタパルジャイト、シラスバルーン、パーライト等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合使用してもよい。
【0040】
更に、必要に応じて、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、顔料、pH調整剤、皮膜形成助剤、レベリング剤、撥水剤、消泡剤等の公知の添加剤を適宜添加して使用することができる。
【0041】
本発明の防汚加工剤を、基材に塗布、含浸、スプレーなどの加工方法により付着させ加工することにより、防汚性に優れる層を形成させることが出来る。本発明において、該防汚加工剤の加工方法は、特に限定はしないが、好ましくは、例えば、グラビアなどの印刷機やバーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、スクリーンコーター、カーテンコーターなどの各種コーターによる塗工方法や含浸機による含浸加工、或いはスプレー加工などが挙げられ、加工した防汚層に欠陥が出来にくい方法が好ましい。
【0042】
該防汚層の加工量は、通常、固形分として、好ましくは1〜80g/m2、より好ましくは5〜50g/m2の範囲である。
【0043】
本発明で使用される基材としては、例えば、紙、不織布、木質基材などが挙げられるが、上述の加工方法により防汚層が得られるものであれば、特に限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
以下に、合成例及び実施例を示し本発明をより具体的に説明する。特に断らない限り、例中の「部」及び「%」はそれぞれ「固形分重量部」及び「固形分重量%」を表す。諸特性は以下に記載した方法により測定した。尚、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
[ポリオレフィンの滴点の測定方法]
ASTM D566に準じ、自動滴点試験器 RDP−102型[(株)離合社製]を用い、昇温速度3℃/分の条件にて、ポリオレフィンが融解し、装置から滴が落ち始める温度を測定した。
【0046】
[ポリオレフィンの平均粒子径の測定方法]
レーザー回折法により、(株)島津製作所社製 SALD−2100にて平均粒子径(50%メジアン径)の値を測定した。
【0047】
[塗工方法]
紙壁紙に配合物をバーコーター(N0.28)で塗工し、110℃で3分間乾燥した。
【0048】
[艶消性の評価方法]
Gloss Meter VG−2000型[日本電色(株)製]で塗工面直径2cm円内の60度光沢度を5片測定し、それらの平均値で表す。
【0049】
[耐擦過性の評価方法]
学振型摩擦堅牢度試験機[スガ試験機(株)製]を使用し、塗工面同士を荷重20gで100回擦過し、表面突出物が脱落した場合は「×」、表面突出物が脱落しない場合は「○」で表した。
【0050】
[表面状態(皮膜割れ状態)の評価方法]
塗工面をマイクロスコープ VH−6300型[キーエンス(株)製]で150倍に拡大観察し、皮膜割れが多く認められた場合を「×」、皮膜割れが少し認められた場合を「△」、皮膜割れが全く認められなかった場合を「○」で表した。
【0051】
[汚染性の評価方法]
ビニル工業会指定の試験方法(汚染1回方法)に準拠し、塗工面に所定の汚染物質を幅1cm、長さ5cmの面積で汚染させ、48時間後に10倍希釈洗剤液(商標:ママレモン、ライオン(株)製)で拭き取り、汚染物が、ほとんど落ちなかった:1、多少落ちた:2、半分程度落ちた:3、ほとんど落ちたが痕跡が残った:4、完全に落ちた:5の段階評価を目視で行った。
【0052】
《合成例1》
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン41部、2−エチルヘキシルアクリレート46部、メチルメタクリレート10部、メタクリル酸3部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行った。得られたエマルジョンの重合率は98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを8.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Aという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョン(EM−A)の酸価は、約25であった。
【0053】
《合成例2》
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に水120部、水酸化ナトリウム0.1部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン60部、ブタジエン30部、メタクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき冷却を行った。得られたラテックスは、重合率98.4%であった。次いで、25%アンモニア水でラテックスのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留によって乳化剤の含有量が1%以下の固形分50.1%のSBRラテックス(以下LX−Aという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョン(LX−A)の酸価は、約75であった。
【0054】
《比較合成例1》
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン30部、2−エチルヘキシルアクリレート45部、メタクリル酸25部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行った。得られたエマルジョンの重合率は98.9%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを6.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Bという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョン(EM−B)の酸価は、約180であった。
【0055】
《比較合成例2》
撹拌装置を備えた重合容器に水110部、反応性乳化剤S−180[不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製]を1.5部、スチレン50部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、メタクリル酸25部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度80℃に昇温し、重合容器内温度が80℃に達したとき、過硫酸ナトリウム0.25部を添加し、反応を開始させた。7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行った。得られたエマルジョンの重合率は、98.9%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを6.5に調整し、固形分45.5%の共重合体合成樹脂エマルジョン(以下EM−Cという)を得た。得られた合成樹脂エマルジョン(EM−C)のTgは、約70℃であった。
【0056】
《実施例1》
前述の合成例1で得られた合成樹脂エマルジョン(EM−A)100部に、ワックスとしてEMUSTER 0136[石油ワックス、有効成分40%、日本精鑞(株)製]10部を添加し、ポリオレフィンとして3620[平均粒子径8.5μm、滴点125℃のポリエチレン微粉末、クラリアントジャパン(株)製]50部を添加し、本発明の防汚加工剤を得た。合成時の配合組成を表1に示す。
【0057】
本発明の防汚加工剤を用いて、各種の加工基材に対して、マイヤーロットにより塗工量約5〜40g/m2を塗工し、熱風乾燥機にて120℃で2分間乾燥し、得られた防汚加工基材の評価結果を表3に示した。本発明の防汚加工剤を用いて得られた防汚加工基材は、防汚性が良好であり、且つ艶消性に優れた。
【0058】
《実施例2〜8》
合成樹脂エマルジョン、ワックス、ポリオレフィンとして表1に示したものを用いた以外は実施例1と全く同様にして本発明の防汚加工剤を得た。また、これら防汚加工剤から得られた防汚加工基材の評価結果は表3に記載した通りであった。
【0059】
《比較例1〜10》
合成樹脂エマルジョン、ワックス、ポリオレフィンとして表2に示したものを用いた以外は実施例1と全く同様にして防汚加工剤を得た。また、これら防汚加工剤から得られた防汚加工基材の評価結果は表4に記載した通りであった。
【0060】
【表1】
【0061】
表1記載の原料は、下記の通りである。
E−0136:パラフィンワックスエマルジョン、融点60℃、日本精蝋(株)製
EW−180:パラフィンワックスエマルジョン、融点81℃、フタバファインケミカル(株)製
3620 :ポリエチレン微粉末、平均粒子径8.5μm、滴点125℃、クラリアントジャパン(株)製
A−512 :平均粒子径5.9μm、滴点125℃のポリエチレン水分散体、 (株)岐阜セラック
【0062】
【表2】
【0063】
表2記載の原料は、下記の通りである。
E−0136:パラフィンワックスエマルジョン、融点60℃、日本精蝋(株)製
OX−1749:融点40℃、酸価105、ペテロラタムワックス、日本精蝋(株)のアンモニア中和水分散液
3620 :ポリエチレン微粉末、平均粒子径8.5μm、滴点125℃、クラリアントジャパン(株)製
A−329 :平均粒子径0.4μm、滴点108℃のポリエチレン水分散体、 (株)岐阜セラック
PE−130 :ポリエチレン粉末、粒径125〜500μm、滴点125℃、クラリアントジャパン(株)製
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【発明の効果】
本発明の防汚加工剤を用いてなる加工基材は、従来のエバールフィルムを用いた加工基材と同等に防汚性能に優れているとともに、艶消し性に優れており、加工基材として大変有用である。
Claims (3)
- 合成樹脂エマルジョン(A)と、融点が40〜110℃の範囲であるワックス(B)、及び平均粒子径が1〜100μmの範囲であり滴点が50〜170℃の範囲であるポリオレフィン(C)からなる防汚加工剤であり、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分100重量部に対し、ワックス(B)の固形分が3〜50重量部の範囲であり、前記ワックス(B)が、パラフィンを90重量%以上含む石油ワックスであり、かつポリオレフィン(C)の固形分が5〜200重量部の範囲であることを特徴とする防汚加工剤。
- 合成樹脂エマルジョン(A)がエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるエマルジョンであり、(A)の固形分のガラス転移温度が−30〜50℃の範囲であり、且つ(A)の固形分の酸価が150mgKOH/g以下である請求項1記載の防汚加工剤。
- ポリオレフィン(C)が、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンであり、その形状が粉体もしくは水分散体である請求項1または2記載の防汚加工剤。
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