JP4636296B2 - 防湿加工用樹脂組成物および防湿材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防湿加工用樹脂組成物と、この防湿加工用樹脂組成物を用いた防湿材に関するものであり、さらに詳しくは、紙または不織布に塗工または含浸することによって、防湿性の層を形成させる防湿加工用樹脂組成物と、この防湿加工用樹脂組成物を用いた防湿材に関するものである。この防湿加工用樹脂組成物は、特に故紙や損紙の回収が容易な防湿、防水組成物であり、特に包装紙の分野に適用されるものであり、防湿材としては、特に防湿紙が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
従来から防湿紙としては、原紙に塩化ビニリデン樹脂を塗工した防湿コ−ト紙や、ポリエチレンラミネ−ト紙などがある。これらの防湿紙は、防湿性能の面で良好であるため包装紙分野に適用されている。
【0003】
近年、資源の有効利用および公害対策の面から故紙や損紙の回収に際して、紙に再生することが容易か否かという問題がある。この観点からポリエチレンラミネート紙の場合は、樹脂層と紙との解離が困難であり、故紙や損紙を回収しても再生し難いという問題がある。
【0004】
また、塩化ビニリデン樹脂を塗工した場合は、塗工紙の焼却廃棄処理するときハロゲンの有毒ガス発生が、最近環境上問題となっている。
【0005】
このように、いずれの防湿紙も問題点があり、代替防湿紙の開発が強く要求されている。
【0006】
この代替技術として、ブタジエン系ラテックス100重量部にワックス5〜200重量部を配合し塗工することにより防湿紙を得る技術が、特公昭55−2259号公報の中に提案されている。しかし、この技術は、ワックスを使用しているため塗工面が滑りやすく、防滑剤などを用いても、耐スベリ性を満足するものではない。また、塗工面の磨耗によるワックスの脱落によってかえって防湿性能の低下がみられる。さらに塗工紙の巻取り時の圧力によって塗工紙のブロッキングなどの問題が発生する。
【0007】
また、アクリル系エマルジョンにワックスをブレンドしてダンボ−ルへ塗工し、防湿紙を製造する技術も提案されている(特公平2−1671号公報)。しかし、この技術で得られる防湿紙は、耐スベリ性は満足するものであるが、防湿性は、上記塩化ビニリデン樹脂塗工紙や、ポレエチレンラミネート紙に較べて劣っている。
【0008】
更に、パラフィンワックスと特定のマレイン化もしくはフマール化ロジンと多価アルコールとのエステル化物とポリブテン等を含有するワックスエマルジョンを防湿組成物として使用した技術がある(特公平3−10759号公報)。しかし、この防湿組成物を基材に塗布して得られる防湿紙は、塗工面の摩耗によってワックスが脱落し防湿性が低下する。
【0009】
また、紙支持体上の少なくとも片面にワックスおよび合成樹脂ラテックスを含む防湿層を形成してなる防湿性紙において、該防湿層がアスペクト比5以上で粒子径が5〜50μmの平板状顔料を含有し、しかもn−パラフイン成分率が防湿層全体に対し0.5〜5.0重量%である防湿性紙に関する技術がある(特開平9−111696号公報)。しかし、この技術は、組成物を製造するときの顔料分散性、顔料配合での増粘により低粘度化が難しく、低粘度を必要とする塗工機での塗工適性に問題がある。また、塗工紙の光沢性(白色度)と摩擦係数においても十分満足の行く性能が得られない。
【0010】
更にまた、スチレン−ブタジエンラテックス等の合成樹脂ラテックスを主材とする防湿剤に水酸化アルミニウム細粉、好ましくは更にワックスを添加した塗工液を、水酸化アルミニウム細粉の粒子の一部が塗工液の塗工により形成された防湿層の表面に突出するように原紙に塗工した防湿加工紙に関する技術がある(特開平11−335999号公報)。しかし、この技術は、ポリエチレンラミネ−ト紙に匹敵する防湿性が得られるものの、それ以上の防湿性能を得るのは困難である。また、ここで用いる塗工液は、水酸化アルミニウム細粉が沈降し易く、保存安定性に劣るという欠点がある。
【0011】
そこで、ポリエチレンラミネ−ト紙以上の防湿性を付与できると共に、故紙と損紙の回収が可能なエマルジョン系の防湿加工用樹脂組成物、好ましくは保存安定性に優れる防湿加工用樹脂組成物の開発が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ポリエチレンラミネ−ト紙以上の高防湿性能(JIS Z−0208)を付与することができ、再生に際し樹脂層と紙との離解性がよく、耐スベリ性がよく、ワックスの脱落のない防湿加工用樹脂組成物、好ましくは保存安定性に優れる防湿加工用樹脂組成物と、この防湿加工用樹脂組成物を用いた防湿材を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)と、平均粒子径が1〜50μmで軟化点が70℃以上の疎水性有機樹脂粉末(B)、好ましくは、さらに特定割合の融点が45〜65℃のパラフィンワックス(C)とを、含有してなる樹脂組成物は、保存安定性に優れ、これを紙等の基材に塗工することにより、ポリエチレンラミネ−ト並みの高い防湿性能を発揮し、かつ、故紙と損紙の回収が容易で、しかも、耐ブロッキング性に優れるものが得られること等を見い出し、本発明を完成させるに到った。
【0014】
すなわち、本発明は、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)と平均粒子径が1〜50μmで軟化点が70℃以上の疎水性有機樹脂粉末(B)としてのポリエステル樹脂粉末とを含有し、前記合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)中の樹脂分のガラス転移温度(Tg)が5〜30℃であることを特徴とする防湿加工用樹脂組成物、防湿材を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)は、その種類は特に限定されるものではなく、樹脂分のガラス転移温度(Tg)が−39〜40℃の合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテツクスを通常用いるが、なかでも、耐ブロッキング性、防湿性に優れる防湿材が得られることから、樹脂分のガラス転移温度(Tg)が5〜30℃の合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテツクスが好ましい。
【0016】
上記合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)としては、例えば、以下に示すようなエチレン性不飽和単量体を単独もしくは複数組み合わせて(ただし、合成ゴムラテックスの場合は、脂肪族共役ジエン単量体等を必須成分として用いて)乳化重合させることにより製造されるものが挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタルクル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタルリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;1,2−ブタジェン、1,3−ブタジェン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等の不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸およびその無水物、フマル酸、イタコン酸;マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル等の不飽和ジカルボン酸モノアクキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のビニリデンハライド;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキルエチル等のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の如きエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルミド等のラジカル重合可能な単量体が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)は、上記のエチレン性不飽和単量体を乳化重合することによって得られるが、この際使用する乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。これらのうち、防湿性をより高めるためには反応性乳化剤を用いることが好ましい。この反応性乳化剤を用いることによりソープフリー型のエマルジョンが得られる。
【0018】
反応性乳化剤としては、例えば、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、各種エチレン性不飽和基を有する乳化剤などを挙げることができる。
この中でも、特開昭58−203960号公報で示される下記の構造式を有する化合物が最も好ましい。
【化1】
(式中、Rは炭素原子数12のアルキル基または水素原子の1つがフッ素原子で置換された炭素原子数18のアルキル基を表し、Mはナトリウム原子またはアンモニウム基を表す。)
【0019】
また、乳化剤を使用せず、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)中のの樹脂にカルボキシル基等の陰イオン性基、第4級アンモニウム塩基等の陽イオン性基、エチレンオキサイド鎖等の非イオン性の官能基を含ませた自己乳化型のソープフリーのエマルジョンを使用することもできる。
【0020】
なお、本発明の防湿加工用樹脂組成物が、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)とワックスエマルジョンとを併用するものである場合には、ワックスエマルジョンとの相溶性の点から、乳化剤のイオン性、非イオン性を一致させることが好ましい。例えば、ワックスエマルジョンに陰イオン性界面活性剤を使用すれば合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)も陰イオン性界面活性剤を使用したものが好ましい。
【0021】
乳化剤の使用量としては、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜3重量部用いるのが、防湿性に優れる防湿材が得られることから、好ましい。
【0022】
本発明で用いる合成ゴムラテックスとしては、高い防湿性能が得られることから、スチレンブタジエンゴム(SBR)、メチルメタクリレートブタジエンゴム(MBR)の水分散体が好ましい。
【0023】
また、本発明で用いる合成樹脂エマルジョンとしては、上記エチレン性不飽和単量体を乳化重合したものであるが、防湿性に優れる防湿材が得られることから、これらのエチレン性不飽和単量体の中でも2−エチルヘキシルアクリレ−トを必須成分として使用したものが好ましい。
【0024】
本発明で用いる合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)を製造するに際しては、例えば、前記したエチレン性不飽和単量体を必須成分とした単量体混合物を、フリ−ラジカル発生触媒の存在下で、40〜80℃で乳化重合を行なえばよい。フリ−ラジカル発生触媒としては、例えば、過硫酸カリウム(K2S2O8)、過硫酸アンモニウム[(NH4)2S2O8]、過酸化水素等の水性触媒、tert−ブチルハイドパ−オキサイド、クメンハイドロパ−オキサイド等の油性触媒などが挙げられる。
【0025】
上記乳化重合に際しては、ラジカル重合に通常用いられる添加剤、例えば、連鎖移動剤、エチレンジアミン四酢酸、pH調整のためのアルカリ物質を必要に応じて使用することができる。
【0026】
また、本発明で用いる合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテッス(A)は、未反応モノマーの臭気を低減する等のため、例えば、ストリッピング等の方法によって必要とされる固形分含量に濃縮されて使用することが好ましい。
【0027】
合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテッス(A)の最低造膜温度(MFT)としては、特に制限はないが、皮膜形成性に優れる防湿加工用樹脂組成物が得られることから、50℃以下が好ましい。
【0028】
本発明で用いる疎水性有機樹脂粉末(B)としては、平均粒子径が1〜50μmで、軟化点が70℃以上の疎水性有機樹脂からなる粉末であればよく、特に限定されないが、疎水性有機樹脂粉末(B)を含有させた本発明の防湿加工用樹脂組成物からなる塗工液を紙等の基材に塗工した際に疎水性有機樹脂粉末(B)の粒子の一部分が塗工液の塗工により形成された防湿層の表面に突出するようになるものが望ましいことから、平均粒子径が8〜30μmのものが好ましく、なかでも平均粒子径が8〜30μm、軟化点が80〜300℃、比重が1.0〜2.0のものが特に好ましい。平均粒子径が1μm未満の場合には、耐ブロッキング性の劣る防湿材となるし、50μmを越えると造膜性、防湿性および表面状態に劣る防湿材となることから、それぞれ好ましくない。
【0029】
上記疎水性有機樹脂粉末(B)としては、例えば、ポリエステル系樹脂粉末、ロジン酸エステル系樹脂粉末、テルペンフェノ−ル系樹脂粉末、石油系樹脂粉末、スチレン系樹脂粉末、アクリル系樹脂粉末、エポキシ系樹脂粉末等が挙げられ、なかでも分散性が良好で長期保存安定性に優れる防湿加工用樹脂組成物が得られることから、ポリエステル系樹脂粉末、スチレン系樹脂粉末が好ましい。
【0030】
疎水性有機樹脂粉末(B)の使用量は、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)の固形分100重量部に対して、通常5〜250重量部であるが、なかでも耐すべり性、造膜性、防湿性に優れる防湿材が得られることから、10〜150重量部が好ましい。
【0031】
本発明の防湿加工用樹脂組成物には、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテッス(A)および疎水性有機樹脂粉末(B)と共に、融点が45〜65℃のパラフィンワックス(C)や脂肪酸エステルを併用することが、透湿性、造膜性および耐すべり性を同時に満足する防湿材が得られることから好ましく、なかでもパラフィンワックス(C)を併用することが特に好ましい。
【0032】
パラフィンワックスは、石油から分離され、精製された結晶性パラフィンであり、主としてノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等の構造のものがある。パラフィンワックスの融点は、通常40〜70℃の範囲で変化するが、本発明で用いるパラフィンワックス(C)は、融点が45〜65℃であることが必須である。融点が45℃に満たないと、本発明の防湿加工用樹脂組成物を基材に塗布後、乾燥工程において基材にしみ込んでしまうため防湿性を発揮せず、65℃を越えるとワックスが塗膜の表面に出ないため防湿性を発揮しないことから、それぞれ好ましくない。さらに、本発明で用いるパラフィンワックス(C)としては、なかでも、ノルマルパラフィンを90重量%以上含み、イソパラフィンとシクロパラフィンは10重量%以下であるものが、防湿性に優れる防湿材が得られることから、好ましい。また、分子量は、特に制限がないが、数平均分子量で330〜480であることが、防湿性に優れる防湿材を得られることから、好ましい。炭素原子数は、特に制限はないが、20〜35のものが好ましい。
【0033】
パラフィンワックス(C)の使用量は、防湿性と耐スベリ性に優れる防湿材が得られることから、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.3〜150重量部であることが好ましく、なかでも、2〜100重量部が特に好ましい。
【0034】
パラフィンワックス(C)の形態としては、固形状またはこの固形状のものを乳化分散したエマルジョン状のものが挙げられ、いずれの形態も使用することができるが、合成樹脂エマルジョン等との相溶性の点でエマルジョン状のものが好ましい。
【0035】
パラフィンワックス(C)の乳化分散の際、乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、一般に市販されている陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。
【0036】
パラフィンワックス(C)の市販品としては、例えば、115、120、125、130、135、140、150〔以上、日本精蝋(株)製〕等の固形状パラフィンワックス;EMUSTER 0135、0136、0384〔以上、日本精蝋(株)製〕、ハリックス WE200〔ハリマ化成(株)製〕、セロゾール 428、B−460、B−608、B−982、686〔以上、中京油脂(株)製〕等のエマルジョン状パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0037】
本発明では、上記したように合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテッス(A)および疎水性有機樹脂粉末(B)と共に、好ましく併用することができる脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、炭素原子数が6〜36の高級脂肪酸と炭素原子数が6〜36の高級アルコ−ルとから得られる脂肪酸エステルが挙げられ、なかでも耐水性に優れる防湿加工用樹脂組成物が得られることから、炭素原子数14〜26の高級脂肪酸と炭素原子数14〜26の高級アルコ−ルとから得られる脂肪酸エステルが好ましく、ステアリン酸ステアリルが特に好ましい。
【0038】
上記脂肪酸エステルの形態としては、粉末、水分散化されたタイプ等の形態のものが挙げられるが、配合作業性を考えると水分散化されたタイプが好ましい。
【0039】
脂肪酸エステルの使用量としては、特に制限されないが、防湿性と塗工面の耐久性に優れる防湿加工用樹脂組成物が得られることから、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテッス(A)の固形分100重量部に対して、3〜200重量部であることが好ましく、なかでも5〜100重量部であることが特に好ましい。
【0040】
本発明の防湿加工用樹脂組成物は、必要に応じて、上記した各成分の他に、無機物質粉末、界面活性剤、多価アルコ−ル、増粘剤等を添加することができる。
【0041】
上記無機物質粉末としては、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等の粉末が挙げられる。
【0042】
界面活性剤および多価アルコールは、塗工紙を再生する場合の離解性を向上させるために使用するものである。
この界面活性剤としては、例えば、市販品として、エマルゲン105、108、109P、120、123P、705、707、709、エマ−ル、エマ−ル2F、ネオペレックスF25〔以上、花王(株)製〕;ノイゲンEA−80、120、140、142、160、170、190D、ネオコ−ルYSK、P〔以上、第一工業製薬(株)製〕等が挙げられる。
【0043】
また、多価アルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0044】
増粘剤としては、例えば、ポリビニ−ルアルコ−ル、ポリアクリル酸ソ−ダ塩、及びアンモニウム塩、ポリエチレン系増粘剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の防湿加工用樹脂組成物の製造方法としては、例えば、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)と、疎水性有機樹脂粉末(B)とを混合する方法等が挙げられる。なお、パラフィンワックス(C)を添加する場合には、パラフィンワックス(C)を、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)と疎水性有機樹脂粉末(B)と共に混合する方法や、パラフィンワックス(C)の存在下で合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)を乳化重合した後、疎水性有機樹脂粉末(B)と混合する方法等が挙げられる。また、無機物質粉末、界面活性剤、多価アルコ−ル、増粘剤等は、疎水性有機樹脂粉末(B)と共に用いて混合することが好ましい。
【0046】
本発明の防湿材は、本発明の防湿加工用樹脂組成物を基材に塗布または含浸させることにより得られる。例えば、基材が紙であれば防湿紙が得られる。
【0047】
本発明の防湿材で用いる基材としては、例えば、紙、板紙、不織布、繊維基材、木材などが挙げられる。
これら基材に、本発明の防湿加工用樹脂組成物を塗布または含浸する方法としては、各種コ−タ−による塗工、含浸機による含浸加工、サイズプレスによる加工等多種多様な加工方法を用いることができる。
【0048】
基材への塗工量としては、できるだけ低塗工量であることが、乾燥性に優れ、コストが低く、故紙や損紙の回収が容易であること、および、塗工液を紙等の基材に塗工した際に疎水性有機樹脂粉末(B)の粒子の一部分が塗工液の塗工により形成された防湿層の表面に突出するようになり、防湿性と共に耐スベリ性に優れる防湿紙が得られることから望ましい。通常の場合、塗工量が10〜50g/m2 となるよう塗工するのが好ましく、なかでも20〜30g/m2 となるよう塗工するのが特に好ましい。
【0049】
【実施例】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明を説明する。なお、例中の部および%はすべて重量基準とする。
【0050】
合成例1
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に水120部、水酸化ナトリウム0.1部、反応性乳化剤S−180〔不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製〕0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン30部、ブタジエン25部、メチルメタクリレ−ト40部、アクリル酸5.0部、および、t−ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、撹拌下に反応温度を60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して反応を開始させ、7時間後、重合率が98%に達したとき冷却を行なって合成ゴムラテックスを得た。得られたラテックスは、重合率98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でラテックスのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留によって乳化剤の含有量が1%以下の固形分50.1%のSBR(スチレン−ブタジエンゴム)ラテックス(以下、LX−Aという)を得た。
【0051】
合成例2
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に水120部、水酸化ナトリウム0.1部、乳化剤ネオペレックスF−25〔アルキルベンゼンスルホン酸ソ−ダ塩、花王(株)製〕0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン30部、ブタジエン25部、メチルメタクリレ−ト40部、アクリル酸5.0、および、t−ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、撹拌下に反応温度を60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して反応を開始させ、7時間後、重合率が98%に達したとき冷却を行なって合成ゴムラテックスを得た。得られたラテックスは、重合率98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でラテックスのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留によって乳化剤の含有量が1%以下の固形分50.1%のSBRラテックス(以下、LX−Bという)を得た。
【0052】
合成例3
撹拌装置を備えた重合容器に水120部、水酸化ナトリウム0.1部、反応性乳化剤S−180〔不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製〕0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン30部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、メチルメタクリレート40部、アクリル酸5.0、および、t−ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、撹拌下に反応温度を70℃に昇温し、重合容器内温度が70℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して反応を開始させ、7時間後、重合率が98%に達したとき、冷却を行なって合成樹脂エマルジョンを得た。行なった。得られたエマルジョンは、重合率98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でエマルジョンのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留によって乳化剤の含有量が1%以下の固形分50.5%の合成樹脂エマルジョン(以下、EM−Aという)を得た。
【0053】
合成例4
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に水120部、パラフィンワックス〔日本精蝋(株)製パラフィンワックスエマルジョン、EMUSTAR−0136、融点60℃、固形分40%)10部、水酸化ナトリウム0.1部、反応性乳化剤S−180〔不飽和アルキル硫酸塩、花王(株)製〕0.5部、エチレンジアミン四酢酸0.1部、スチレン30部、ブタジエン25部、メチルメタクリレート40部、アクリル酸5・0部、および、t−ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、撹拌下に反応温度を60℃に昇温し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1部を添加して反応を開始させ、7時間後、重合率が98%に達したとき冷却を行なって合成ゴムラテックスを得た。得られたラテックスは重合率98.6%であった。次いで、25%アンモニア水でラテックスのpHを9.0に調整し、その後水蒸気蒸留し、乳化剤の含有量が1%以下で、固形分が49.9%の、パラフィンワックスを含有したSBRラテックス(以下、LX−1という)を得た。
【0054】
実施例1、2及び8ならびに参考例3〜7及び9及び比較例1〜6
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、LX−A、LX−B、EM−A、LX−1、パラフィンワックス(0136、042X)、疎水性有機樹脂粉末(M−8630、A−100、803L、M−135、GS−102、A−125、SE−730)、さらに無機物質粉末(B303、NN#200、雲母 A21)を、それぞれ第1表と第2表に示すとおり配合し、実施例1、2及び8ならびに参考例3〜7の防湿加工用組成物と比較例1〜5で用いる防湿加工用組成物を得た。また、比較例6として、市販ポリエチレンラミネ−ト紙を用意した。
【0055】
得られた防湿加工用組成物を市販の上質紙(坪量70m2 )に対して、マイヤ−ロットにより塗工量が25g/m2 となるように塗工し、熱風乾燥機にて120℃で1分間乾燥し、防湿塗工紙を得た。
【0056】
得られた防湿加工用組成物と防湿加工紙について、下記のように各物性の評価試験を行った。第3表と第4表に測定の結果を示す。
【0057】
各物性のは評価試験は以下のように行った。
<測定方法および評価基準>
・透湿度(g/m2 、24時間);防湿加工紙の塗工面の透湿度をJIS Z −0208に準じた恒温恒湿条件下、40℃、90%RHでのカッ プ法で測定した。
・磨耗後の透湿度(g/m2 、24時間);防湿加工紙の塗工面と非塗工面を 合わせ、荷重10Kgをかけ、振盪機を用いて2分間左右に振盪を 行い、塗工面を磨耗した後、塗工面の透湿度をJIS Z−020 8に準じた恒温恒湿条件下、40℃、90%RHでのカップ法で測 定した。
・摩擦係数;防湿加工紙の塗工面の摩擦係数をJIS P−8147(水平法)に準じて測定した。
【0058】
・離解性;家庭用ミキサ−ポット中に535mlの温水40℃に25%水酸化ナトリウム0.8ml加え、3cm角にカットした塗工紙1gを入れ、3分間離解を行い、樹脂と紙の離解状態を下記の評価基準で目視評価した。
○:離解性あり。
△:離解性一部なし。
×:理解性なし。
・ブロッキング性;10×10cmの防湿加工紙の塗工面と黒画用紙を合わせ、プレス圧10kg/cm2 、プレス温度40℃の条件で15分間 プレスを行い、防湿加工紙と黒画用紙のブロッキンン状態を下記の 評価基準で目視評価した。
○:ブロッキングなし。
△:ブロッキングややあり。
×:ブロッキングあり。
・分散性;防湿加工用樹脂組成物をアプリケーター(バーコーター)にて膜厚が20μmとなるようにガラス板上に塗工し、疎水性有機樹脂粉末や無機物質粉末顔料の分散状態を下記の評価基準で目視評価した。
○:均一に分散している。
△:均一だが、分散不十分である。
×:塊があり、分散していない。
・耐溶剤性;防湿加工紙の塗工面に着色したトルエンを落とし、溶剤が塗工紙の裏面浸透していないか、下記の評価基準で指触と目視により評価した。
○:浸透していない。
△:少し滲みあり。
×:完全に浸透している。
・貯蔵安定性;防湿加工用樹脂組成物に水性染料を混合して着色した後、100mlのメスシリンダーに100mlとり、24時間放置した後、疎水性有機樹脂粉末や無機物質粉末の沈降状態を下記の評価基準で目視評価しすると共に、沈降のあるものについてはスパチュラで攪拌し、再分散性の有無を評価した。
○:粉末の沈降なし。
△:粉末の一部が沈降しているが、再分散が容易である。
×:粉末のほぼ全部が沈降しており、再分散不能である。
【0059】
【表1】
【0060】
(第1表の脚注)
・0136 :日本精蝋(株)製パラフィンワックスエマルジョン(EMUSTAR−0136、融点60℃、固形分40%)
・M−8630 :大日本インキ化学工業(株)製ポリエステル系樹脂粉末(ディックファインM−8630、軟化点116〜122℃)を、篩いにかけて平均粒子径30μmに調整したもの
・A−100 :荒川化学工業(株)製ロジン酸エステル系樹脂(スーパーエステルA−100、軟化点95〜105℃)を、粉砕後、篩いにかけて平均粒子径30μmに調整したもの
・803L :荒川化学工業(株)製テルペンフエノ−ル系樹脂(タマノル803L、軟化点145〜160℃)を、粉砕後、篩いにかけて平均粒子径20μmに調整したもの
・M−135 :荒川化学工業(株)製石油系樹脂(アルコンM−135、軟化点130〜140℃)を、粉砕後、篩いにかけて平均粒子径50μmに調整したもの。
・GS−102R:武田薬品(株)製スチレン系樹脂粉末〔スタフィロイドGS−102R、軟化点なし(分解温度200℃以上)、平均粒子径20μm〕
・B303 :日本軽金属工業(株)製水酸化アルミニウム粉末(B303、平均粒子径30μm)
・NN#200 :日東粉化工業(株)製炭酸カルシウム粉末(NN#200、平均粒子径15μm)
【0061】
【表2】
【0062】
(第2表の脚注)
・0136 :日本精蝋(株)製パラフィンワックスエマルジョン(EMUSTAR−0136、融点60℃、固形分40%)
・042X :日本精蝋(株)製パラフィンワックスエマルジョン(EMUSTAR−042X、融点82℃、固形分40%)
・A−125 :荒川化学工業(株)製ロジン酸エステル樹脂(スーパーエステルA−125、軟化点120〜130℃)を、粉砕後、篩いにかけて平均粒子径80μmに調整したもの
・SE−730 :荒川化学工業(株)製ロジン酸エステル樹脂エマルジョン(スーパーエステルSE−730、平均粒子径0.04〜0.07μm)
・B303 :日本軽金属工業(株)製水酸化アルミニウム粉末(B303、平均粒子径30μm)
・A−21 :土屋カオリン工業(株)製雲母粉末(A−21、平均粒子径8μm)
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
この第3表と第4表の結果と比較すると、実施例1〜9で得られた防湿加工紙は、透湿度および摩擦後の透湿度が比較例1〜6で得られた防湿加工紙の値よりいずれも低く、防湿性の点でポリエチレンラミネ−ト紙以上の高い防湿性能を示すことがわかる。また、実施例1〜7で得られた防湿加工用樹脂組成物は、粉末として疎水性有機樹脂粉末のみを分散させているため、貯蔵安定性に優れている。なお、実施例8〜9で得られた防湿加工用樹脂組成物は、一部に粉末の沈降が認められたが、これは粉末として疎水性有機樹脂粉末と共に分散させた無機物質粉末(水酸化アルミニウムや炭酸カルシウム)が沈降するためである。
【0066】
【発明の効果】
本発明の防湿加工用組成物を用いてなる防湿材、特に防湿紙は、従来のポリマ−を用いた防湿塗工紙に比べて防湿性能に優れているとともに摩耗後ワックスの脱落が少なく、防湿性能の低下が極めて少ない。また塗工紙の再パルプ化が容易である。更に、摩擦係数と耐ブロキング性においても極めて優れており防湿加工紙として大変有用である。
Claims (8)
- 合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)と平均粒子径が1〜50μmで軟化点が70℃以上の疎水性有機樹脂粉末(B)としてのポリエステル樹脂粉末とを含有し、前記合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)中の樹脂分のガラス転移温度(Tg)が5〜30℃であることを特徴とする防湿加工用樹脂組成物。
- さらに、融点が45〜65℃のパラフィンワックス(C)を、固形分換算で、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)100重量部に対して0.3〜150重量部含有する、請求項1記載の防湿加工用樹脂組成物。
- パラフインワックス(C)が、ノルマルパラフィンワックスを90重量%以上含むものである、請求項2記載の防湿加工用樹脂組成物。
- 疎水性有機樹脂粉末(B)を、固形分換算で、合成樹脂エマルジョンまたは合成ゴムラテックス(A)100重量部に対して5〜250重量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の防湿加工用樹脂組成物。
- 疎水性有機樹脂粉末(B)が、平均粒子径8〜30μm、軟化点80〜300℃、比重1.0〜2.0の疎水性有機樹脂粉末である、請求項1〜4のいずれか1項記載の防湿加工用樹脂組成物。
- さらに、平均粒子径が1〜50μmの無機物質粉末(無機系顔料)(D)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の防湿加工用樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の防湿加工用樹脂組成物が、固形分換算で、10〜50/m2 となる塗布量で基材上に塗布されていることを特徴とする、防湿材。
- 基材が紙である、請求項7記載の防湿材。
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