JP3727137B2 - 紙の防湿被覆用水性樹脂組成物 - Google Patents

紙の防湿被覆用水性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は紙の被覆用組成物に関するもので、防湿性を付与し、かつ古紙再生のための離解性に優れたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、防湿性を要する包装紙などはポリオレフィンのラミネート紙が広く利用されている。しかしこの場合優れた防湿性を有するものの、使用後省資源の面から古紙として再利用する際、離解性がないため大きな問題となっている。
【0003】
これに対して、離解性のある防湿塗工紙を得る被覆用樹脂組成物として、合成ゴム系ラテックス、アクリル系エマルションなどの可撓性のある樹脂にワックスエマルションを配合した組成物が開示されている(特公昭55−22597号公報、特公昭62−28826号公報など)。しかし、この場合、同じ厚みで塗工されたポリオレフィンのラミネート紙と比較して、初期の防湿性能は同程度の値が得られるが、これを巻き戻し、裁断などの処理をしたり、包装材として使用している過程で、摩擦により防湿面のワックス成分が転移移行して、防湿性能が低下したり、被接触面がワックスで汚染されると云った問題がある。また、防湿面同志が重ね合わさった場合の耐ブロッキング性に劣り、更に包装紙として使用する場合、防湿面と裏面をホットメルト接着剤で接着するが、防湿面のワックスのために接着性が著しく悪くなるという問題がある。
【0004】
一方、ワックスの使用による上記の問題点を改良する方法として、特開平8ー284094号公報において、ワックスと相溶性の良いポリテルペン樹脂をワックスと併用する方法が開示されている。この方法では、上記した防湿面からのワックス成分の移行の問題や、接着性の問題はある程度改良されるものの、塗工層が脆弱になり包装紙として使用する際の折り曲げなどの処理により防湿性能が低下する問題がある。
【0005】
また、防湿面の耐折り曲げ性や、耐ブロッキング性を改良する方法として、合成ゴムラテックスとアクリル系エマルションおよびワックスエマルションの三成分からなる組成物が特開平8−176992号公報に開示され、また低い塗布量で防湿性を発揮させる方法として、特開平6−184988号公報においてアクリル系エマルションなどの合成樹脂バインダーと、水性ワニス(水溶性樹脂)および水性ワックスエマルションからなる組成物が開示されている。しかし、これらの方法も上記したワックスの移行の問題を十分に解決することはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、従来のポリオレフィンをラミネートする方法よりも優れた防湿性能を有し、特に、上記したワックスエマルションを含む水性被覆組成物において問題となるワックスの移行や、包装時の折り曲げによる防湿性の低下を防止すること、更に耐ブロッキング性、古紙の再利用時の離解性、防湿面のホットメルト接着剤による接着性にも優れる被覆用水性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、防湿性の付与に効果のあるワックスの使用割合をできるだけ減らして防湿効果を高める方法について種々検討した結果、透湿性が低く、且つ可撓性のある樹脂に水溶性のアクリル樹脂とロジン系樹脂を組み合わせることでワックスの転移性の問題を大幅に改善できることを見い出した。次いで、可撓性と耐ブロッキング性、ホットメルト接着剤に対する接着性および再パルプ化時の離解性を満足する組成物について種々検討し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)スチレン・アクリル系共重合体の水性分散液を固形分で90〜5重量%、(b)スチレン・ブタジエン系合成ゴムラテックスを固形分で5〜60重量%、(c)アルカリ可溶性アクリル系共重合体の水溶液を固形分で1.5〜15重量%、(d)ロジン、テルペン、石油樹脂から選ばれた樹脂を2.5〜30重量%、および(e)融点が50℃以上のパラフィンワックスを乳化して得られたワックスエマルションを固形分で1〜10重量%[ただし(a)(b)(c)(d)(e)の合計を100重量%とする]からなり、上記(a)のスチレン・アクリル系共重合体が、スチレン単量体20〜70重量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体79.5〜20重量%、およびカルボキシル基含有ビニル系単量体、および/または親水性基含有ビニル系単量体0.5〜5重量%を共重合して得られるものであって、上記(c)のアルカリ可溶性アクリル系共重合体が、共重合するカルボキシル基含有ビニル系単量体の使用量が、単量体混合物の7〜40重量%である紙の防湿被覆用水性樹脂組成物である。
【0009】
本発明に使用するスチレン・アクリル系共重合体の水性分散液は、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分とし、該共重合体のTgが−10〜50℃、好ましくは0〜40℃を有する共重合体の水性分散液である。本発明のスチレン・アクリル系共重合体は、通常のアクリル系共重合体では得られない優れた低透湿性および耐水性の皮膜を与えることから、本発明組成物の主成分として使用する。該共重合体のTgが−10℃以下では、塗工面の耐ブロッキング性が劣り、50℃以上では、成膜性が不十分となり防湿性が低下する。ここで共重合体のTgは、日本エマルジョン工業会規格の「合成樹脂エマルジョンの皮膜硬さ表示方法(107ー1966)」に記載の各ホモポリマーのTg値を使用して計算式から求める。
【0010】
本発明のスチレン・アクリル系共重合体(a)は、スチレン単量体20〜70重量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体79.5〜20重量%、およびカルボキシル基含有ビニル系単量体、および/または親水性基含有ビニル系単量体0.5〜5重量%、およびその他のビニル系単量体0〜30重量%を共重合して得られる。
【0011】
本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物に占めるスチレン・アクリル系共重合体の使用量は、固形分の重量百分率で90〜5重量%、好ましくは85〜40重量%が適量である。5重量%以下では古紙再生のための十分な離解性を得ることが難しく、また90重量%以上では防湿性が低下するので好ましくない。
【0012】
上記の(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、各種の単量体が使用でき、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に、炭素数4〜12個の直鎖または分岐鎖を有するエステル類から選ばれた1種または2種以上の単量体が好ましい。
【0013】
上記のカルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、および無水マレイン酸、無水イタコン酸と炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖を有するアルコールとのハーフエステルなどが挙げられる。
【0014】
上記の親水性基含有単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、Nーエチル(メタ)アクリルアミド、N,Nージメチル(メタ)アクリルアミドなどの酸アミド基またはN−アルキル基置換アミド基を含有するビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)モノアクリレート、平均付加モル数4から100モルのポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類またはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類などのヒドロキシル基を含有するビニル単量体などが挙げられる。
【0015】
上記のその他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどが挙げられる。更に、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの2から3個の二重結合を有するビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、Nーメチロールアクリルアミドなどの反応性ビニル単量体から選ばれた官能基を有するビニル系単量体を使用することもできる。
【0016】
本発明の防湿被覆用樹脂組成物に使用するスチレン・ブタジエン系合成ゴムラテックス(b)は、スチレンおよびブタジエンを必須成分とする単量体混合物を乳化重合した共重合体の水性分散液であり、カルボキシル基などの官能基、その他のビニル系単量体を共重合したものも含まれる。この合成ゴムラテックスとしては、各社で市販されているスチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエンラテックスなどが使用できる。該合成ゴムラテックス(b)は、Tgが−10〜40℃、ゲル分率が60〜90%程度の高ゲル分率のものが好ましい。
【0017】
本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物に占める合成ゴムラテックスの使用量は、固形分の重量百分率で5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%が適量である。合成ゴムラテックスの使用量が60重量%以上では離解性、耐ブロッキング性を向上させることが困難である。また、5重量%以下であると折り曲げによる防湿性の低下を防ぐことが難しい。
【0018】
本発明に使用するアルカリ可溶性アクリル系共重合体の水溶液(c)は、本発明の組成物を紙に塗工する際に紙組織への浸透を防止し、紙表面に均一な皮膜を形成する効果にも優れるため必要である。カルボキシル基を含有するビニル系単量体と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、およびその他の共重合可能なラジカル重合性不飽和単量体を共重合させて得られる共重合体をアルカリで中和して、水溶性としたものである。共重合するカルボキシル基含有ビニル系単量体の使用量は、単量体混合物の7〜40重量%、好ましくは10〜20重量%である。7重量%以下では、中和時の溶解性が不足し、また40重量%以上では、アルカリで可溶化したした際の粘度が高くなり、本発明の水性樹脂組成物の塗工性が悪くなる。該共重合体水溶液のpHは7.5〜9.5が適当である。
【0019】
本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物に占めるアルカリ可溶性アクリル系共重合体の使用量は、固形分の重量百分率で1.5〜15重量%、好ましくは2〜10重量%が適量である。1.5重量%以下では、塗工面に均一な防湿層が形成され難く防湿性が低下する。また15重量%以上では、塗膜の耐水性、防湿性が低下する。
【0020】
上記のカルボキシル基を含有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸など炭素原子数3〜4個のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など炭素原子数4〜5個のジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体から選ばれた1種または2種以上の単量体が使用できる。また、その他の共重合可能なラジカル重合性単量体としては(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、Nーエチル(メタ)アクリルアミド、N,Nージメチル(メタ)アクリルアミドなどの酸アミド基またはN−アルキル基置換アミド基を含有するビニル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)モノアクリレート、平均付加モル数4から100モルのポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類またはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類などのヒドロキシル基を含有するビニル系単量体、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどが挙げられる。
【0021】
本発明のアルカリ可溶性アクリル系共重合体は、上記の単量体混合物を通常の乳化重合法、または溶液重合法などにより重合した後、アルカリを添加して加熱溶解させ水溶液として使用する。ここで、溶解するために使用するアルカリとしては、アンモニア水、アルカリ金属の水酸化物などの無機塩基、有機アミンなどの有機塩基が使用でき、具体的には、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、モルホリンなどが使用できる。
【0022】
本発明に使用するロジン系、テルペン系、石油系樹脂から選ばれた樹脂(d)は、ロジン系、テルペン系、石油系樹脂から選ばれた単独若しくはそれぞれ併用して使用できる。ロジン系樹脂としては、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジンなどが使用できる。またテルペン系樹脂としては、テルペン、ポリテルペン、テルペンフェノ−ルなどが使用できる。更に石油系樹脂としては、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂などが使用できる。
【0023】
本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物に占める上記樹脂の使用量は、固形分の重量百分率で2.5〜30重量%が適量である。使用量が2.5重量%以下ではワックスの転移移行を防止する効果が少なく、また30重量%以上ではワックスの転移移行は防止することができるが、塗膜の可撓性が低下する。
【0024】
上記のロジン系、テルペン系、石油系樹脂は、通常の方法によって適当な乳化剤を使用して水に乳化分散させた水性分散物として用いることができる。また、これらの樹脂をスチレン・アクリル系共重合体(a)を製造する際に共存させて乳化重合することにより、上記スチレン・アクリル系共重合体(a)と樹脂(d)の複合樹脂水性分散液として使用することもできる。複合樹脂として本発明の被覆用樹脂組成物に使用することで、塗工液の固形分濃度を高めることができる。
【0025】
本発明に使用するワックスエマルション(e)は、融点が50℃以上のパラフィンワックスの水性分散液である。更に、その他のワックス類、例えばポリエチレンワックス、脂肪酸ワックス、石油樹脂ワックス、合成樹脂ワックスなどもパラフィンワックスと混合して使用することができる。これらのワックスは、通常の方法によって水に乳化分散したものである。
【0026】
本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物に占める上記ワックスエマルションの使用量は、固形分の重量百分率で1〜10重量%が適量である。ワックスエマルション(e)の使用量が1重量%以下では十分な防湿性が得られ難い。また、10重量%以上使用すると塗工面からのワックスの転移により防湿性が低下し好ましくない。
【0027】
本発明の防湿被覆用組成物は、防湿性、および耐折り曲げ性、耐ブロッキング性、ホットメルト接着剤による接着性などの実用性能、および再パルプ化時の離解性に優れており、紙基材の防湿コ−ト剤、特にクラフト紙、段ボ−ル用ライナ−紙、コ−ト紙などの包装用紙の防湿加工剤として有用である。
【0028】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における部は重量部を示し、百分率(%)は重量%を示す。
【0029】
製造例−1(スチレン・アクリル共重合体Aの製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管および滴下ロートを備えた3Lのガラス製4ツ口フラスコに脱イオン水1025部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ20部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル(50モル)30部を仕込み、昇温する。温度が78〜81℃で過硫酸アンモニウム5部を添加し、その直後にスチレン550部、ブチルアクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレ−ト230部、アクリル酸20部の混液を3時間かけて滴下し、78〜81℃で乳化重合を行う。滴下終了後、同温度で3時間熟成した後冷却し、アンモニア水(25%)を20部添加して固形分50%、pH8.5、粘度100cp、Tg8℃のスチレン・アクリル共重合体Aを得た。
【0030】
製造例−2(スチレン・アクリル/ロジン複合樹脂Bの製造)
製造例−1と同様の方法にて、スチレン550部、ブチルアクリレ−ト200部、2−エチルヘキシルアクリレ−ト230部、アクリル酸20部の混液にロジンのペンタエリスリト−ルエステル化物(ハリマ化成株式会社製 ハリエスタ−ST−100)500部を溶解させた混合液を3時間かけて滴下し、78〜81℃で乳化重合を行う。滴下終了後同温度で3時間熟成した後冷却し、アンモニア水(25%)を20部添加して固形分50%、pH8.2、粘度200cpのスチレン・アクリル共重合体100部に対してロジン樹脂50部からなるスチレン・アクリル/ロジン複合樹脂Bを得た。
【0031】
製造例−3(スチレン・アクリル/ロジン複合樹脂Cの製造)
製造例−1と同様の方法にて、スチレン550部、ブチルアクリレ−ト200部、2−エチルヘキシルアクリレ−ト230部、アクリル酸20部の混液にロジンのペンタエリスリト−ルエステル化物(ハリマ化成株式会社製 ハリエスタ−ST−100)250部を溶解させた混合液を3時間かけて滴下し、78〜81℃で乳化重合を行う。滴下終了後同温度で3時間熟成した後冷却し、アンモニア水(25%)を20部添加して固形分50%、pH8.4、粘度170cpのスチレン・アクリル共重合体100部に対してロジン樹脂25部からなるスチレン・アクリル/ロジン複合樹脂Cを得た。
【0032】
製造例−4(水溶性アクリル樹脂の製造)
攪拌機,還流冷却器,温度計,窒素導入管および滴下ロートを備えた3Lのガラス製4ツ口フラスコに脱イオン水1070部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ50部を仕込み昇温する。温度が78〜81℃で過硫酸アンモニウム10部を添加し、その直後にスチレン180部、エチルアクリレート360部、メチルメタクリレ−ト360部、メタクリル酸100部、N−ドデシルメルカプタン30部の混液を3時間かけて滴下し、78〜81℃で乳化重合を行う。滴下終了後、同温度で3時間熟成した後冷却し、その後水を1360部、アンモニア水(25%)を80部添加して内温を70℃に加温、2時間攪拌して、固形分30%、pH8.0、粘度500cpの水溶性アクリル樹脂溶液を得た。
【0033】
実施例−1
製造例−1にて得られたスチレン・アクリル共重合体Aを84部(固形分比率42%)に、スチレン・ブタジエン系合成ゴムラテックス(旭化成工業株式会社製 SBRゴムラテックスDL−612:ブタジエン含有量40〜55%、固形分48%、pH10.5、成膜温度2℃)を62.5部(30%)、製造例−4で得た水溶性アクリル樹脂を16.7部(5%)、変性ロジン樹脂の水分散液としてハリエスタ−DS−70(ハリマ化成株式会社製、固形分50%、pH8.5、粘度250cp)を40部(20%)、およびワックスエマルションとしてサイビノ−ルPN−3500(サイデン化学株式会社製、固形分35%、pH8.0、粘度200cp)を8.6部(3%)混合し、攪拌して固形分濃度とpHを調整後、固形分45%、pH7.5、粘度100cpなる本発明の防湿被覆用水性樹脂組成物を得た(カッコ内は配合割合を固形分比率にて示す)。この防湿被覆用水性樹脂組成物を両更クラフト紙(70g/m2)に15g/m2・dryになるように塗布し、直ちに110℃で1分間乾燥させ防湿コ−ト紙を得た。上記のようにして得られた防湿コ−ト紙は表−1に示すように透湿度、ワックス非転移性、耐ブロッキング性、ホットメルト接着剤による接着性に極めて良好なものであった。また、離解性は標準パルプ離解機を用いて評価したところ、完全に単繊維の状態になり、良好であった。よって古紙の再利用化に実用的であることを実証するものである。
【0034】
実施例―2〜5
実施例―1の(a)スチレン・アクリル共重合体A、(b)SBRゴムラテックス、(c)水溶性アクリル樹脂、(d)変性ロジン樹脂、(e)ワックスエマルションの配合割合を変更する以外は実施例―1と全く同様にして、防湿紙を作製した。得られた防湿紙は表―1に示すように透湿度、ワックス非転移性、耐ブロッキング性、離解性、ホットメルト接着剤による接着性において良好なものであった。
【0035】
実施例−6〜9
実施例−1の(a)スチレン・アクリル共重合体Aに変えてスチレン・アクリル/ロジン複合樹脂BまたはCを使用して、(b)SBRゴムラテックス、(c)水溶性アクリル樹脂、(d)変性ロジン樹脂,(e)ワックスエマルションの配合割合を変更する以外は実施例−1と全く同様にして、防湿紙を作製した。変性ロジン樹脂の水性分散液として使用しても、またスチレン・アクリル/ロジン複合樹脂として使用しても同様な試験結果が得られた。
【0036】
比較例−1
比較例−1は、(a)スチレン・アクリル共重合体A、(d)変性ロジン樹脂(e)ワックスエマルションの3成分で実施例−1と同様の条件にて塗工乾燥して防湿紙を作製した。得られた防湿紙の耐湿ブロッキング性、離解性は表−2に示すとおり良好であった。しかしながら透湿度の折り目試験、ワックス非転移性、ホットメルト接着剤による接着性が劣っていた。
【0037】
比較例−2
比較例−2は、(a)スチレン・アクリル共重合体A、(c)水溶性アクリル樹脂、(d)変性ロジン樹脂、(e)ワックスエマルションの4成分で実施例−1と同様の条件にて塗工乾燥して防湿紙を作製した。得られた防湿紙の耐ブロッキング性、離解性、ホットメルト接着剤による接着性は表−2に示すとおり良好であった。しかしながら透湿度の折り目試験が劣っていた。
【0038】
比較例−3
比較例−3は、(b)SBRゴムラテックス、(c)水溶性アクリル樹脂、(d)変性ロジン樹脂、(e)ワックスエマルションの4成分で実施例−1と同様の条件にて塗工乾燥して防湿紙を作製した。得られた防湿紙の耐ブロッキング性、ホットメルト接着剤による接着性は表−2に示すとおり良好であった。しかしながら透湿度の折り目試験、ワックス非転移性、離解性が劣っていた。
【0039】
比較例−4
比較例−4は、(a)スチレン・アクリル共重合体A、(b)SBRゴムラテックス、(e)ワックスエマルションの3成分で実施例−1と同様の条件にて塗工乾燥して防湿紙を作製した。得られた防湿紙の透湿度、離解性は表−2に示すとおり良好であった。しかしながらワックス非転移性、耐ブロッキング性およびホットメルト接着剤による接着性が劣っていた。
【0040】
比較例−5
比較例−5は、(a)スチレン・アクリル共重合体A、(b)SBRゴムラテックス、(d)変性ロジン樹脂の3成分で実施例−1と同様の条件にて塗工乾燥して防湿紙を作製した。得られた防湿紙のワックス非転移性と離解性およびホットメルト接着剤による接着性は表−2に示すとおり良好であった。しかしながら透湿度、耐ブロッキング性が劣っていた。
【0041】
対象例
18μのポリエチレンをラミネ−トした市販のポリエチレンラミネ−ト紙において同様に各試験を行った。透湿度は、35g/m2・24Hrでありワックス非転移性、耐ブロッキング性は、良好だが、離解性はポリエチレンおよび繊維の塊りが認められ離解性不足であることが認められた。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
[試験方法]
各試験に使用する防湿紙の試料は両更クラフト紙(70g/m2)にバ−コ−タ−にて15g/m2・dryになるよう塗布し、110℃で1分間乾燥して得た。
【0045】
透湿度は、JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じて、温湿度40℃、90%RHにて測定した。折り目試験は、プレスロ−ルを通して十文字に折り目をつけ、そのクロス部分の透湿度を測定した。
【0046】
ワックス非転移性試験は、クラフト紙の防湿コ−ト面とコピ−用紙を重ねた状態でプレスロ−ルに2回通し、ワックスをコピ−用紙に転移させ、コピー用紙表面のワックスの転移具合を調べた。その結果から以下のように判定した。
◎:変化なし
○:殆ど転移していない
△:やや転移がある
×:転移が激しい
【0047】
耐ブロッキング性試験は、クラフト紙の防湿コ−ト面と非コート面およびコート面とコート面とをそれぞれ重ね合わせて、50℃、90%RHの雰囲気中、荷重500g/cm2で24時間放置後の重ね合わせ面のブロッキング程度を判定した。
◎:抵抗なく剥がれる
○:剥がす時、少し抵抗がある
△:剥がす時、抵抗はあるがコ−ト面の破壊はない
×:ブロッキングし、コ−ト面の破壊が生じる
【0048】
離解性試験は、水1500ml中にコート紙60gを細かく刻んで浸漬し、標準パルプ離解機を用いて回転数3000rpmにて、15分間攪拌分散させ、得られたスラリー液を水で20倍に希釈し、分散状態を観察した。
◎:未離解繊維のフロックなし
○:未離解繊維のフロック若干あり
△:未離解繊維のフロック少しあり
×:未離解繊維のフロック多い
【0049】
接着性試験は、ホットメルト接着剤としてサイビノ−ルHM−P−185(サイデン化学株式会社製、EVA系、軟化点87℃)を使用して、170℃に溶融した接着剤を非コート面に塗り、コート面と貼り合わせ20℃、65%湿度の雰囲気中に24時間放置し、剥離状態を調べる。
◎:紙破
○:80〜60%が紙破
△:40〜20%が紙破
×:接着不良
【0050】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレンラミネ−ト紙に代わる包装紙用防湿コ−ト剤として、防湿性に優れ、従来のワックスエマルションを含む水性被覆組成物において問題となるワックスの転移や、包装時の折り曲げによる防湿性の低下を防止し、更に耐ブロッキング性、古紙の再利用時の離解性、防湿面のホットメルト接着剤による接着性に優れる防湿被覆用樹脂組成物である。従って、紙製品等の包装用紙として被包装物を湿度から保護し、使用した包装用紙は一般紙と同様に古紙回収紙として取り扱うことが出来る。

Claims (3)

  1. (a)スチレン・アクリル系共重合体の水性分散液を固形分で90〜5重量%、(b)スチレン・ブタジエン系合成ゴムラテックスを固形分で5〜60重量%、(c)アルカリ可溶性アクリル系共重合体の水溶液を固形分で1.5〜15重量%、(d)ロジン系、テルペン系、石油系樹脂から選ばれた樹脂を2.5〜30重量%、および(e)融点が50℃以上のパラフィンワックスを乳化して得られたワックスエマルションを固形分で1〜10重量%[ただし(a)(b)(c)(d)(e)の合計を100重量%とする]からなり、上記(a)のスチレン・アクリル系共重合体が、スチレン単量体20〜70重量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体79.5〜20重量%、およびカルボキシル基含有ビニル系単量体、および/または親水性基含有ビニル系単量体0.5〜5重量%を共重合して得られるものであって、上記(c)のアルカリ可溶性アクリル系共重合体が、共重合するカルボキシル基含有ビニル系単量体の使用量が、単量体混合物の7〜40重量%である紙の防湿被覆用水性樹脂組成物。
  2. スチレン・アクリル系共重合体(a)が、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分とし、該共重合体のTgが−10〜50℃である請求項1記載の水性樹脂組成物。
  3. アルカリ可溶性アクリル系共重合体の水溶液(c)が、カルボキシル基含有ビニル系単量体単位を7〜40重量%含有するアクリル系共重合体の水性分散液にアルカリを加えpHを7.5〜9.5に調整して溶解させた水溶液からなる請求項1記載の水性樹脂組成物。
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