JP4015474B2 - ステアリングの跳ね上げ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の停止中に、ステアリングホイールを跳ね上げ自在なステアリングの跳ね上げ装置、とりわけ、チルト機構と跳ね上げ機構を共用しつつ車両停止時にのみ跳ね上げ機構を作動可能とする跳ね上げ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、車両への乗降性向上を目的として、降車する際にはステアリングホイールを所定の待避位置に跳ね上げ移動させる一方、乗車後には、ステアリングホイールをドライビングポジションに移動させるステアリングの跳ね上げ装置が種々提供されている。
【0003】
また、近時にあってはステアリングホイールの跳ね上げ角度を大きくして乗降性をさらに向上させるものも実用化されており、その1つとして、例えば特開2000−71798号公報などに記載されているものが知られている。
【0004】
概略を説明すれば、このステアリングの跳ね上げ装置は、オートマチックトランスミッション(自動変速機)付き車両に具備され、アイドル中またはキーがイグニッションオン位置にある時にステアリングホイールを通常運転角度以上に跳ね上げられるようになっており、ステアリング位置選択手段と、ステアリング位置検出手段と、シフトレバーパーキング位置検出手段と、フットブレーキペダル位置検出手段と、ステアリング移動手段と、シフトセレクトを不可能にするシフトレバー・ロック手段と、前記ステアリング位置選択手段とステアリング位置検出手段およびシフトレバーパーキング位置検出手段、フットブレーキペダル位置検出手段の各信号を取り込んで、前記シフトレバー・ロック手段とステアリング移動手段とを制御するステアリング移動制御手段とを有している。
【0005】
そして、前記ステアリング移動制御手段は、ステアリングホイールが跳ね上がっているときには、フットブレーキペダルを踏んでも前記シフトレバー・ロック手段によってシフトセレクトできず、ステアリングホイール位置を復帰させる場合でも、ステアリングホイール位置がドライビングポジションに完全に復帰していなければ、フットブレーキペダルを踏んでもシフトレバー・ロック手段を解除できないように制御するようになっている。一方、ステアリングホイールがドライビングポジションに完全に復帰すれば、フットブレーキを踏むことによってシフトレバー・ロック手段を解除するように制御するようになっている。
【0006】
このように、ステアリングホイールがドライビングポジションに完全に復帰したときのみフットブレーキを踏むことによってシフトレバー・ロック手段を解除するようにしたため、アイドル又はキーIGNがオンの状態のときでもステアリングホイールが運転不能な位置にあるときはフットブレーキを踏んでもパーキングから他のレンジへのシフトセレクトができないようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のステアリングの跳ね上げ装置は、ステアリングホイールが跳ね上げられた状態を検知した場合や、ステアリングホイールがドライビングポジションに完全に復帰していない場合などにシフトレバー・ロック手段をロック制御したり、ステアリングホイールがドライブポジションに完全に復帰した際にシフトレバー・ロック手段のロックを解除制御するステアリング移動制御手段などの全ての機構が電気回路によって構成されていることから、制御が複雑で専用のコントローラが必要になると共に、部品点数が多く製造コストが高くなるといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来の手動式のステアリングコラムにおいて、チルト機構と跳ね上げ機構とを共用しつつ、その誤差動を確実に防止することができて安全性が高くかつ安価なステアリングの跳ね上げ装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来のステアリング跳ね上げ装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、請求項1に記載の発明は、車両のステアリングコラムを軸方向の所定位置でステアリングギア側の固定部とステアリングホイール側の可動部とに分割する分割部を設けると共に、該分割部に車幅方向に沿って配設された回転軸を中心として、前記可動部を上下方向に回動自在に設け、かつ前記可動部を運転時の最適な位置で保持規制するチルト機構を備えたステアリングの跳ね上げ装置において、車両の停止時にのみ前記可動部をチルト機構による最大上方位置よりも上方への跳ね上げを許容する跳ね上げ機構を設け、該跳ね上げ機構は、前記可動部を跳ね上げ方向へ付勢する付勢部材と、前記可動部の回動を規制したり規制解除したり操作するチルトレバーと、車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、該停止状態検出手段の検出結果に基づいて前記可動部の回動を制御する作動制御部とから構成され前記作動制御部は、前記ステアリングコラムの側部に車体幅方向へ回動自在に設けられたロック部材と、前記可動部に固定され該可動部の回動に伴って車体上下方向へ回動すると共に前記ロック部材の回動に伴い該ロック部材に係脱して前記可動部の上方への回動を規制しあるいは回動を許容する作動部材と、前記ロック部材の回動位置を制御するアクチュエータとから構成されることを特徴としている。
【0010】
したがって、この発明によれば、車両が停止状態にあるときは、停止状態を検出した停止状態検出手段からの信号によって作動制御部のアクチュエータが作動してロック部材の回動位置を制御し、該ロック部材の回動により作動部材の回動が許容されてチルト機構における可動部の最大上方位置よりも上方への回動が許容される。このため、乗員の乗降性を向上させることができることは勿論のこと、可動部の跳ね上げ作動を渦巻きばねなどの機械的な構造とした従来の手動式の構造をそのまま利用することで、従来のようなコントローラを用いた制御とは異なり、制御及び構造が簡素化でき、製造コストを大幅に低減させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、前記車両は自動変速機を備え、前記停止状態検出手段が前記自動変速機のシフトレバーのPレンジ検出手段であり、該Pレンジ検出手段からの検出信号に基づいて前記アクチュエータが前記ロック部材を回動させることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明にあっては、前記可動部が所定以上に跳ね上げられたことを検出する跳ね上げ検出スイッチが設けられると共に、該跳ね上げ検出スイッチの作動に基づいて、前記シフトレバーがPレンジ位置から他方レンジへシフト移動するのを規制するシフトロック機構が設けられたことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るステアリングの跳ね上げ装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0015】
図1〜図4は自動変速機を備えた車両に適用されたステアリングの跳ね上げ装置の一実施形態を示し、ステアリングホイール2を車体に支持させるステアリングコラム1と、ステアリングコラム1の一端部から内部に挿通配置され、外部に露出した上端部にステアリングホイール2が取り付けられたアッパーシャフト3と、上端部がこのアッパーシャフト3の下端部と自在継手を介して連結され、下端部が図外のステアリングギアとユニバーサルジョイントによって連結された図外のロアーシャフトとを備え、前記ステアリングコラム1は、ステアリングギア側の固定部である固定コラム部4と、ステアリングホイール2側の可動部である可動コラム部5とに軸方向から分割形成されている。
【0016】
前記固定コラム部4は、ほぼ円筒状を呈し、ステアリングホイール2側の上端部がアッパークランプ6を介して車体にボルト固定されていると共に、下端部が図外のロアークランプを介して車体にボルト固定されている。
【0017】
前記可動コラム部5は、ステアリングホイール2側に図外のコンビネーションスイッチを取り付けるフランジ部5aを有する異形状に形成されて、車体幅方向から配設した回転軸であるチルトヒンジ軸8を中心として上下方向へ回動自在に支持されていると共に、チルト機構7によって所定角度範囲以内(固定コラム部4の軸線に対して上下に約10°及び約15°)での上下方向への回動が許容されていると共に、跳ね上げ機構9によってチルト機構7による所定角度範囲以上(図4に示す固定コラム部4の軸線に対して45°)の上方向への跳ね上げが許容されるようになっている。
【0018】
すなわち、前記チルト機構7は、図1及び図2に示すように、前記可動コラム部5を支承する前記チルトヒンジ軸8と、前記可動コラム部5の一側部に形成されたほぼ三角形状の取付面10の端部にレバーボルト11aを介して前後方向へ回動自在に取付られたチルトレバー11と、固定コラム部4の可動コラム部5側の下端部にボルト12によって固定され、下端部に凸円弧状の複数の係合歯13aを有する固定側ツース13と、可動コラム部5の下端部に枢支軸14を中心に回動自在に設けられて、前記固定側ツース13の各係合歯13aに噛合あるいは噛合解除される凹円弧状の複数の係止歯15aを有する可動側ツース15とから主として構成されている。
【0019】
前記チルトレバー11は、下部内面に前記可動側ツース15を下方へ回動させて各係合歯13aに対する各係止歯15aの噛合を解除する解除用突起16を有すると共に、前記レバーボルト11aの頭部側に巻回された捩りコイルスプリングで構成されたレバースプリング17によって、図1中時計方向、つまり係止歯15aが係合歯13aに噛合する方向に可動側ツース15を押圧するように付勢されている。
【0020】
前記跳ね上げ機構9は、図1に示すように、基本的にチルトヒンジ軸8やチルトレバー11及び固定側ツース13,可動側ツース15などのチルト機構7の各構成部品を共用し、相違する構成部材は可動コラム部5の他側部に該可動コラム部5を上方向(跳ね上げ方向)へ回動付勢する付勢部材である渦巻きばね18が巻装されていると共に、図4に示すように前記固定側ツース13に対して可動側ツース15を完全に離脱させて、可動コラム部5を固定コラム部4の軸線Xに対して約45°の角度で跳ね上げできるように構成した点である。前記渦巻きばね18は、図2に示すように、外端部が固定コラム部4の他側部から突出した支持ピン19に係止している一方、内端部が可動コラム部5の他側部に係止している。
【0021】
また、前記跳ね上げ機構9は、車両の非走行時、つまり自動変速機のシフトレバーがPレンジ位置にあるか否かによって前記可動側ツース15の回動を規制あるいは規制を解除する作動制御部20を備えている。
【0022】
さらに、この跳ね上げ機構9は、前記可動コラム部5が跳ね上げられた状態においては、前記シフトレバーをPレンジ位置から他のレンジへの移動を規制する図5に示すシフトロック機構21と連係している。
【0023】
具体的に説明すれば、前記作動制御部20は、図1〜図4に示すように基本的に機械的な部材によって構成され、固定コラム部4の固定側ツース13近傍に車体幅方向へ回動自在に設けられたロック部材であるロックプレート22と、前記可動コラム部5の取付面10にボルト10aによって固定されて、前記ロックプレート22に係脱する作動部材であるストッパーレバー23と、前記固定コラム部4の下部に車体幅方向に沿ってブラケットを介して固定されたアクチュエータである電磁アクチュエータ24とから構成されており、この電磁アクチュエータ24は、Pレンジ検出手段としての後述するPレンジ検出スイッチ52からの検出信号に基づいて前記ロックプレート22を係合方向あるいは係合解除方向に回動させるようになっている。
【0024】
前記ロックプレート22は、図1及び図3に示すように上下方向に長いほぼ長方形状に形成され、ほぼ中央が固定コラム部4の側部に突設された支持ブラケット25に保持された枢軸26を中心として車体幅方向に回動自在に設けられていると共に、上端部の内側に前記ストッパープレート23の先端部23aが係脱する矩形状の係合溝27が形成されている。また、ロックプレート22の下端部には、前記電磁アクチュエータ24の駆動軸24aのL字形状の先端部28を係合する孔が形成されている。
【0025】
前記ストッパープレート23は、図1に示すようにほぼく字形状に形成され、下端部が前記ボルト10aによって取付面10に固定されていると共に、中央部が前記チルトヒンジ軸8に固定されて可動コラム部5と一体に車体上下方向へ回動するようになっている。また、ストッパープレート23の先端部23aは、ほぼ扇状に形成されて、平坦状の下端縁23bが前記ロックプレート22の係合溝27に係脱するようになっていると共に、先端縁23cが後述する跳ね上げ検出スイッチ53に適宜当接可能なように円弧状に形成されている。
【0026】
この跳ね上げ検出スイッチ53は、固定コラム部4の前端部に設けられ、通常はオン状態になっているが、跳ね上げが行われると、前記先端部23cによりスイッチ片53aが押圧されてオフ状態になり、後述するブレーキペダルスイッチ54の検出信号を遮断するようになっている。
【0027】
前記電磁アクチュエータ24は、いわゆるソレノイド型であって、内蔵されたコイルへの通電が遮断されている場合は、内部のソレノイドスプリングによって駆動軸24aを突出方向に付勢してロックプレート22の係合溝27にストッパープレート23の先端部23aを係合させて、ストッパープレート23のそれ以上の図1中反時計方向への回動を規制するようになっている。一方、コイルに通電されると、電磁吸引力によって駆動軸24aが後退動してロックプレート22によるストッパープレート23の係合を解除するようになっている。そして、この電磁アクチュエータ24は、前記シフトレバー40のPレンジ検出スイッチ52からのオン信号(シフトレバーがPレンジにある)によって通電されるようになっている。
【0028】
前記シフトロック機構21は、公知のものをそのまま採用することが可能であり、例えば本出願人が先に出願した特開平6−249327号公報に記載のものと基本的に同じ構造を採用し、図5に基づいて概略を説明すれば、このシフトロック機構21は、シフトレバー40が挿通支持されたブラケット31のポジションプレート30にユニット化して取り付けられており、第1作動部材32と、第2作動部材33と、ロック部材34と、電磁駆動部35と、ユニットベース31aとを備えている。
【0029】
前記第1作動部材32は、ベルクランク状に形成されて、基部をユニットベース31aに枢軸36により軸着されている。ポジションピン37側に延出した一方の腕部32aの下面は、シフトレバー40がPレンジ位置Pにある時のポジションピン37と当接する位置に配置されており、また、他方の腕部32bの先端には図外のキーインターロック機構に連係するキーロックケーブル38の一端が連結されている。
【0030】
前記第2作動部材33は、基部を第1作動部材32と同軸の枢軸36によりブラケット31に軸着されており、基部からポジションピン37側に延出した腕部33aは、第1作動部材の腕部32aと対向して下方に配置されている。また、腕部33aには、ロック部材34側に突出する突部が形成されている。
【0031】
また、第1作動部材32の腕部32aと第2作動部材33の腕部33aは、枢軸36に巻装された捩りコイルばね39によって互いに引き寄せられるように付勢されており、これによってPレンジ位置Pにある時のポジションピン37を各腕部32a、33aにより圧接挟持するようになっている。
【0032】
前記ロック部材34は、ベルクランク状に形成され、基部を枢軸36と直交する枢軸によりブラケット31に軸着している。ロック部材34の一方の図外の腕部には長孔が形成されており、この長孔に後述する電磁駆動部35のプランジャ35aのフック部が係合されている。また、ロック部材34の他方側の腕部は、ロック部材34の回動に伴ってPレンジ位置Pにある時に第2作動部材33の突部下面と対向する位置に移動するようになっている。さらに前記腕部と対向する第1作動部材32には突部32cが形成されている。
【0033】
そして、走行ポジションにあるシフトレバー40をノブボタン40aを押しながらPレンジ位置Pに移動させると、まず、ポジションピン37が第2作動部材33の腕部33a上面に当接する。ここからさらにシフトレバー40をPレンジ位置P側に移動させると、ポジションピン37が第2作動部材33の腕部33aを捩りコイルばね39のばね力にこうして押し下げながらPレンジ位置Pの下側に移動する。
【0034】
その後、Pレンジ位置Pに達すると、第1作動部材32の腕部32aと第2作動部材33の腕部33aとによりポジションピン37は圧接挟持される。
【0035】
ここで、ノブボタン40aを離すと、圧縮ばねのばね力によってポジションピン37がPレンジ位置Pのポジション溝30aに上端に係合する。同時に、シフトレバー40のポジションピン37が、Pレンジ検出スイッチ(マイクロスイッチ)の接点に接触してオンになり、これによってコントローラ50を介してソレノイド35が励磁されてプランジャ35aが吸引される。これにより、ロック部材34は、図中時計方向に回動してその腕部が第2作動部材33の突部下面と対向する位置に移動して、シフトレバー40をPレンジ位置Pにロックするようになっている。また、ロック部材34は、第1作動部材32の突部32cに当接してロック位置に保持されてもいる。
【0036】
以下、跳ね上げ機構9及びシフトロック機構21の制御構成を図6に基づいて説明する。
【0037】
まず、コントローラ50は、Pレンジ検出スイッチ52がオンされている場合に、ソレノイド35を励磁させると共に、この状態でブレーキペダルスイッチ54がオンされると、ソレノイド35の励磁を解除するという制御を行っている。なお、この実施形態では、ソレノイド35が励磁されたときにロック部材34がロック位置に移動する通電ロックのシフトロック機構を説明しているが、ソレノイド35が励磁されることで、ロック部材34がロック解除位置に移動する通電解除のシフトロック機構では、Pレンジ検出スイッチ52とブレーキペダルスイッチがともにオンの場合のみソレノイド35を励磁するという制御になる。
【0038】
すなわち、コントローラ50は、イグニッションキースイッチ51のオン作動により電力が供給されて作動し、前記Pレンジ検出スイッチ52及びブレーキペダルスイッチ54からの検出信号によってソレノイド35の作動を制御する。そして、跳ね上げ機構9では、Pレンジ検出スイッチ52がオンされている場合は、前記電磁アクチュエータ24に制御電流を出力して励磁させ、ロックプレート22を回動させてストッパープレート23の係合を解除させる。
【0039】
ここで、チルトレバー11を操作して可動コラム部5をチルト角度範囲を越えて上方へ回動させると、跳ね上げ検出スイッチ53が押圧されるが、この跳ね上げ検出スイッチ53は通常はオン状態でスイッチ片53aが押圧されたときにオフ状態となるもので、ブレーキペダルスイッチ54とコントローラ50との間に設けられている。
【0040】
このため、ブレーキペダルを踏み込んでブレーキペダルスイッチ54がオンされても、跳ね上げ検出スイッチ53がオフ状態にあると、ブレーキペダルスイッチ54の検出信号がコントローラ50に伝達されない
【0041】
つまり、前記可動コラム部5が跳ね上げられて、ストッパープレート23の先端縁23cで跳ね上げ検出スイッチ53が押されてオン状態からオフ状態に切り替わると、ブレーキペダルスイッチ54の検出信号がコントローラ50へ出力されないため、コントローラ50は、たとえブレーキペダルが踏み込まれてブレーキペダルスイッチ54がオンされても前記シフトロック機構21のソレノイド35への通電が遮断されず、該シフトロック機構21によりシフトレバー40のPレンジ位置から他レンジへの移動が規制される
【0042】
換言すれば、コントローラ50は、跳ね上げ検出スイッチ53がオフ状態になっている場合に、この条件を優先してシフトレバー40をPレンジ位置に規制するようになっている。
【0043】
したがって、この実施形態によれば、まず、シフトレバー40がPレンジ以外の位置にある場合、つまり例えばDレンジに位置して車両の走行状態にある場合は、可動コラム部5は所定の運転適正位置にあることから跳ね上げ検出スイッチ53がオン状態になっていると共に、Pレンジ検出スイッチ52は当然オフ状態にあるから、電磁アクチュエータ24には通電されず、駆動軸24aがソレノイドスプリングのばね力によって突出して、ロックプレート22を図3の実線で示すように時計方向に回動させ、したがって、ストッパープレート23は、先端部23aがロックプレート22の係合溝27に係合状態となり、可動コラム部5のチルト角度範囲以上の過度な上方向への回動を規制する。このため、可動コラム部5は、チルトレバー11の操作によってチルト範囲内での回動のみが許容される。
【0044】
次に、シフトレバー40がPレンジ位置にあるとき、つまり車両が非走行状態にあるときは、Pレンジ検出スイッチ52がオン状態になり、電磁駆動部35へ通電されてシフトレバー40はロック状態になる。この状態でブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキペダルスイッチ54がオンされてシフトロック機構21による規制が解除され、シフトレバー40の自由移動が許容される。
【0045】
そして、前記Pレンジ検出スイッチ52がオンされると電磁アクチュエータ24にコントローラ50から通電されて、ロックプレート22の下端部が引き込まれて回動して図3の2点鎖線位置に保持される。これにより、ストッパープレート23の先端部23aが係合溝27から外れて係合が解除される。このため、チルトレバー11を操作して固定側ツース13に対する可動側ツース15の噛合を解除すると、可動コラム部5は渦巻きばね18のばね力によって最大45°の上方位置まで回動可能になる。
【0046】
可動コラム部5が最大上方向に回動すると、ストッパープレート23の先端部23aで跳ね上げ検出スイッチ53をオフ状態とすることから、シフトロック機構21によってシフトレバー40はPレンジ位置に規制される。
【0047】
また、この状態でブレーキペダルを踏んでも、跳ね上げ検出スイッチ53がいまだオフ状態を維持しているため、シフトロック機構21によるシフトレバー40の規制は解除されず、シフトレバー40をPレンジ位置に保持する。
【0048】
このため、ステアリングホイール2が跳ね上げ機構9によって上方へ跳ね上がったままの状態での車両の走行を確実に阻止できるから、この点でも安全性が高くなる。
【0049】
しかも、前述のように、車両が走行した状態では、電磁アクチュエータ24に通電されずにロックプレート22にストッパープレート23が係合していることから、走行中にチルトレバー11を不用意に操作したとしても、ステアリングホイール2が跳ね上がってしまうことが確実に防止される。
【0050】
以上のように、この実施形態によれば、車両の走行中はステアリングホイール2の不用意な跳ね上げが防止できるとともに、停止中においてもシフトレバー40がPレンジ位置を占めるときだけしか跳ね上げることができないので、安全性が向上する。
【0051】
また、従来公知の手動式チルト機構とシフトレバーのシフトロック機構をそのまま利用できると共に、簡単な構造の追加でチルト機構と跳ね上げ機構を共用しつつ、その誤作動を確実に防止することができる。この結果、部品点数を削減でき製造作業が容易になると共に、製造コストの低廉化が図れる。
【0052】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば可動コラム部5の跳ね上げを渦巻きばねに代えて他の捩りばねなどの機械的なスプリングによって構成することが可能であり、また作動制御部をロックプレート22やストッパープレート23の他に、他の機械的な構造によって構成することも可能である。
【0053】
さらに、Pレンジ検出手段としてスイッチとソレノイドの電気的手段としたが、これを機械的構造に置き換えることも可能である。すなわち、Pレンジ位置にあるときのポジションピン37と当接して回動する第1作動部材32には、キーインターロック機構に連係するキーロックケーブル38の一端を連結しておく。このキーインターロック機構は、シフトレバーがPレンジ位置になければイグニッションキーを抜くことができず、イグニッションキーが差し込まれていなければシフトレバーをPレンジ位置から移動できない構造で、キーロックケーブル38の押し引きで行われている。そのため、このキーロックケーブル38の他端は、キーロックユニット、つまり、ステアリングコラムのところにきている。したがって、これを利用してキーロックケーブル38の他端を分岐、若しくは別部材を用いてロックプレート22と連動させればよい。この場合、全てを機械的に行えるため、信頼性が高く、しかもシフトロック機構は従来と全く同じにでき、異なる部品点数削減とコスト削減が可能になる。
【0054】
また、前記実施形態では、シフトレバー11がPレンジ位置にある状態では、電磁アクチュエータ24に通電されることにより、発熱や耐久性の問題が考えられるため、図6に破線で示すように、チルトレバーの操作を検出するスイッチ55を設け、チルトレバー11が操作されたときに、電磁アクチュエータ24に通電するようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、車両が停止状態にあるときは、この停止状態を検出した停止状態検出手段からの信号によって作動制御部のアクチュエータがロック部材を回動させて作動部材が係合しないようにして可動部の上方への回動を許容するので、可動部はチルト機構における最大上方位置よりも上方へ回動することができる。
【0056】
このため、乗員の乗降性を向上させることができることは勿論のこと、車両の走行中には、作動制御部が機械的に可動部の跳ね上げ作動を規制するため、ステアリングホイールの不用意な跳ね上げを確実に阻止することができ、これによって安全性を向上させることができる。
【0057】
しかも、この発明は、可動部の跳ね上げ作動を渦巻きばねなどの機械的な構造とした従来公知の手動式のチルト機構をそのまま利用できると共に、簡単な構造の追加によってチルト機構と跳ね上げ機構を共用しつつその誤操作を確実に防止できるため、部品点数を削減できる。この結果、製造コストを大幅に低減させることができる。そして、作動制御部の主たる構成を単にロック部材と作動部材とアクチュエータとの具体的かつ簡単な機械的構造としたことから、製造作業がさらに容易になり、コストの大幅な低減化が図れる。
【0058】
請求項2に記載の発明によれば、車両が停止状態にあり、かつシフトレバーがPレンジに位置しているときは、この状態を検出したPレンジ検出手段からの信号によって作動制御部のアクチュエータがロック部材を回動させて作動部材の回動を許容し、チルト機構における可動部が最大上方位置よりも上方へ回動する。
【0059】
このため、乗員の乗降性を向上させることができることは勿論のこと、車両の走行中には、Pレンジ検出スイッチがオフになっていることから、作動制御部が機械的に可動部の跳ね上げ作動を規制するため、ステアリングホイールの不用意な跳ね上げを確実に阻止することができ、これによって安全性を向上させることができる。
【0060】
しかも、この発明は、可動部の跳ね上げ作動を渦巻きばねなどの機械的な構造とした従来公知の手動式のチルト機構をそのまま利用できると共に、簡単な構造の追加によってチルト機構と跳ね上げ機構を共用しつつその誤操作を確実に防止できるため、部品点数を削減できる。この結果、製造コストを大幅に低減させることができる。
【0061】
請求項3に記載の発明によれば、可動部が跳ね上げ機構によって最大に跳ね上げられた状態にあるときは、シフトレバーがPレンジ位置に存する場合でかつブレーキペダルを踏んだとしても、シフトロック機構によってシフトレバーのPレンジから他のレンジへの移動を確実に規制することができることから、ステアリングホイールが跳ね上がったままでの車両の走行を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるステアリングの跳ね上げ装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本実施形態におけるステアリングの跳ね上げ装置の平面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】本実施形態におけるステアリングの跳ね上げ装置による最大跳ね上げ状態を示す側面図である。
【図5】本実施形態に供されるシフトロック機構の概略図である。
【図6】本実施形態に供される制御ブロック図である。
【符号の説明】
1…ステアリングコラム
2…ステアリングホイール
4…固定コラム部(固定部)
5…可動コラム部(可動部)
7…チルト機構
8…チルトヒンジ軸
9…跳ね上げ機構
11…チルトレバー
18…渦巻きばね(付勢部材)
20…作動制御部
21…シフトロック機構
22…ロックプレート(ロック部材)
23…ストッパープレート(作動部材)
24…電磁アクチュエータ

Claims (3)

  1. 車両のステアリングコラムを軸方向の所定位置でステアリングギア側の固定部とステアリングホイール側の可動部とに分割する分割部を設けると共に、該分割部に車幅方向に沿って配設された回転軸を中心として、前記可動部を上下方向に回動自在に設け、かつ前記可動部を運転時の最適な位置で保持規制するチルト機構を備えたステアリングの跳ね上げ装置において、
    車両の停止時にのみ前記可動部をチルト機構による最大上方位置よりも上方への跳ね上げを許容する跳ね上げ機構を設け、
    該跳ね上げ機構は、前記可動部を跳ね上げ方向へ付勢する付勢部材と、前記可動部の回動を規制したり規制解除したり操作するチルトレバーと、車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、該停止状態検出手段の検出結果に基づいて前記可動部の回動を制御する作動制御部とから構成され
    前記作動制御部は、前記ステアリングコラムの側部に車体幅方向へ回動自在に設けられたロック部材と、前記可動部に固定され該可動部の回動に伴って車体上下方向へ回動すると共に前記ロック部材の回動に伴い該ロック部材に係脱して前記可動部の上方への回動を規制しあるいは回動を許容する作動部材と、前記ロック部材の回動位置を制御するアクチュエータとから構成されることを特徴とするステアリングの跳ね上げ装置。
  2. 前記車両は自動変速機を備え、前記停止状態検出手段が前記自動変速機のシフトレバーのPレンジ検出手段であり、該Pレンジ検出手段からの検出信号に基づいて前記アクチュエータが前記ロック部材を回動させることを特徴とする請求項1に記載のステアリングの跳ね上げ装置。
  3. 前記可動部が所定以上に跳ね上げられたことを検出する跳ね上げ検出スイッチが設けられると共に、該跳ね上げ検出スイッチの作動に基づいて、前記シフトレバーがPレンジ位置から他方レンジへシフト移動するのを規制するシフトロック機構が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のステアリングの跳ね上げ装置。
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