JP4010279B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に大型車両において補助ブレーキとして使用される渦電流式減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トラック等の大型車両の補助ブレーキとして渦電流式減速装置(リターダ)が使用されている。
【0003】
本発明者は、特願2002−154349号の明細書に記載されているような渦電流式減速装置を先に開発した。
【0004】
この渦電流式減速装置は、図8〜図10に示すように、車両のプロペラシャフト等の回転軸2に取り付けられたドラム状の制動ロータ3と、制動ロータ3の径方向内側に配置され、ミッションケース等の固定側に取り付けられたステータ4(磁力源)とを備え、ステータ4からロータ3へ磁気を供給することでロータ3に渦電流を生じさせて回転軸2を減速制動し、磁気をステータ4内に遮蔽することで減速制動を解除するものである。
【0005】
ステータ4は、固定側に支持された環状ケーシング5を有し、その環状ケーシング5の外周壁には、制動ロータ3の内周面と対向させて第1磁石環18が取り付けられる。図9及び図10に示すように、第1磁石環18は、環状ケーシング5に取り付けられたリング状の磁性体部材17(電磁鋼板の積層体や鉄のブロック材等)と、その磁性体部材17に制動ロータ3(回転軸2)の周方向に所定間隔を隔てて埋設された複数の永久磁石16とを有する。各永久磁石16は、周方向両端部に磁極面を有し、且つ周方向に隣接する永久磁石16が同極で向き合うように設定される。各永久磁石16の径方向外側には磁性体部材17からなる薄板部13が形成される。
【0006】
環状ケーシング5の内部には、第2磁石環7が、第1磁石環18に制動ロータ3と反対側(径方向内側)から対向させて収容される。第2磁石環7はブッシュ6を介して回動自在に支持され、環状ケーシング5の側部に設けられたアクチュエータ8(流体シリンダ等)により回動される。第2磁石環7は、非磁性体(オーステナイト系ステンレス等)からなる支持リング9と、支持リング9の外周に設けられたリング状の磁性体部材11(電磁鋼板の積層体や鉄のブロック材等)と、磁性体部材11に制動ロータ3(回転軸2)の周方向に所定間隔を隔てて埋設された複数の永久磁石10とを有する。各永久磁石10は、その周方向両端部に磁極面を有し、且つ周方向に隣接する永久磁石10が同極で向き合うように設定される。
【0007】
この渦電流式減速装置の減速制動をオフするときには、アクチュエータ8で第2磁石環7を回動させて、図9に示すように、第2磁石環7の各永久磁石10が第1磁石環18の各永久磁石16と異極で対向する位相に位置させる。すると、第2磁石環7の永久磁石10及び磁性体部材11と第1磁石環18の永久磁石16及び磁性体部材17との間で短絡的な磁気回路w1が形成される。よって、制動ロータ3には磁気が作用せず、減速制動は生じない。このとき、永久磁石16の磁束の一部が制動ロータ3側へ流れたとしても、その磁束が薄板部13を通って短絡するため、制動ロータ3への磁気漏れを効果的に防止できる。
【0008】
他方、減速制動をオンするときには、第2磁石環7を回動させて、図10に示すように、第2磁石環7の各永久磁石10が第1磁石環18の各永久磁石16と同極で対向する位相に位置させる。すると、第1磁石環18の永久磁石16及び磁性体部材17と制動ロータ3との間、第2磁石環7の永久磁石10及び磁性体部材11と制動ロータ3との間でそれぞれ磁気回路w2,w3が形成される。よって、制動ロータ3に渦電流が生じ、その渦電流と永久磁石10,16からの磁束との相互作用により回転軸2が減速制動される。
【0009】
【特許文献1】
特開平07−123697号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような渦電流式減速装置では、制動オン時に制動ロータ3が高温となるため、第1磁石環18の各永久磁石16が制動ロータ3からの熱伝達により高温となり、減磁してしまうおそれがあった。永久磁石16が減磁すると、渦電流式減速装置の制動力が低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、永久磁石の減磁を防止した渦電流式減速装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、回転軸に取り付けられた制動ロータと、該制動ロータに対向させて配置され、磁性体部材及び該磁性体部材に上記回転軸の周方向に間隔を隔てて埋設された複数の永久磁石を備えた第1磁石環と、該第1磁石環の上記制動ロータと反対側に対向させて配置され、上記回転軸の周方向に間隔を隔てて配置された複数の永久磁石を備えた第2磁石環とを備えた渦電流式減速装置であって、上記磁性体部材における、上記制動ロータと対向する側の端部と上記永久磁石との間の部分に、空隙を設けたものである。
【0013】
ここで、上記空隙内に非磁性体からなる断熱部材を挿入しても良い。
【0014】
また、上記制動ロータが、ドラム状又はディスク状であっても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は本実施形態に係る渦電流式減速装置の第1磁石環の部分拡大正面断面図である。
【0017】
本実施形態の渦電流式減速装置は、基本的な構成が図8〜図10に示したものと同様であるので、同一要素には同一の符号を付して説明を省略する。なお、以下の説明では、制動ロータ3の径方向を単に径方向と言い、制動ロータ3の周方向を単に周方向と言い、制動ロータ3の軸方向を単に軸方向と言う。
【0018】
本実施形態の渦電流式減速装置の特徴は、図1に示すように、第1磁石環18の磁性体部材17における、制動ロータ3と対向する側の端部、つまり径方向外側端部17aと、各永久磁石16の径方向外側端部との間の部分に空隙20を形成した点にある。
【0019】
本実施形態の空隙20は、その断面が略矩形状であり、磁性体部材17を軸方向(紙面裏表方向)に貫通して形成される。また、空隙20の径方向内側端部20aは永久磁石16の径方向外側端部まで延出しており、径方向外側端部20bは、磁性体部材17の径方向外側端部17aよりも所定距離内側の位置まで延出している。空隙20の径方向外側端部20bと磁性体部材17の径方向外側端部17aとの間に、薄板部13が形成される。空隙20の周方向長さは、永久磁石16の周方向長さよりも若干小さく形成される。
【0020】
この空隙20は、制動ロータ3から永久磁石16へと伝達する熱量を抑制する機能を有する。つまり、空隙20内には空気層が存在することになり、この空気層が制動ロータ3と永久磁石16との間の断熱材として機能する。空気は磁性体部材17とくらべて熱伝達率が著しく小さいので、制動ロータ3から永久磁石16へと伝達する熱量は、図9及び図10に示した渦電流式減速装置と比較して著しく小さくなる。従って、永久磁石16の温度上昇を低く抑えることができ、減磁を防止又は抑制できる。
【0021】
このように、本実施形態の渦電流式減速装置では、非常に簡単な構成で、永久磁石16の減磁、ひいては渦電流式減速装置の制動能力の低下を防止できるという効果を奏するものである。
【0022】
図2及び図3を用いて、本実施形態の変形例を説明する。
【0023】
図2(a)に示した例は、空隙20を永久磁石16の径方向外側端部から磁性体部材17の径方向外側端部17aまで貫通させて形成し、磁性体部材17の外周面を覆うように磁性体からなる薄板21を設けたものである。この例では、薄板21が、図1における薄板部13と同様の機能を有することになる。
【0024】
図2(b)に示した例は、空隙20の周方向ほぼ中央部を横断するように磁性体部材17からなる脚22を形成したものである。脚22は、空隙20の径方向外側端部20aから径方向内側に延出し、その先端部が永久磁石16の径方向外側端部と接触する。脚22は、先端部において周方向長さが拡大されている。空隙20は脚22の両側にそれぞれ形成される。この例では、空隙20を設けたことによる磁性体部材17の強度低下を抑制することができる。
【0025】
図2(c)に示した例は、空隙20の径方向内側端部20aを、永久磁石16の径方向外側端部よりも所定距離外側に位置させたものである。この例では、永久磁石16と空隙20との間、および空隙20と磁性体部材17の径方向外側端部17aとの間にそれぞれ薄板部13が形成される。
【0026】
このように、空隙20は永久磁石16の径方向外側端部から連続するように形成しても良いし、永久磁石16から間隔を隔てて形成しても良い。
【0027】
図3(a)に示した例は、図2(c)と同様の空隙20であって、その周方向長さLを永久磁石16の周方向長さよりも長くしたものである。この例では、空隙20による断熱効果をより高くすることができる。しかしながら、空隙20の周方向長さLをあまり大きくしすぎると、永久磁石16から制動ロータ3へと流れる磁束の抵抗が大きくなり制動能力が低下することが考えられるため、制動能力とのかねあいを考慮して空隙20の周方向長さLを設定する必要がある。
【0028】
図3(b)に示した例は、空隙20の周方向両端部に、径方向内側に延出した延出部23をそれぞれ形成したものである。
【0029】
図3(c)に示した例は、磁性体部材17における永久磁石16と径方向外側端部17aとの間に、図1に示した空隙20と同様の空隙20を形成すると共に、その空隙20及び永久磁石16の周方向両端部に、径方向に延出した長方形状のスリット25を形成したものである。
【0030】
図3(b)及び図3(c)の例では、永久磁石16の周方向両端部に形成された磁極面への熱伝達を効率的に防止できる。しかしながら、これらの例においても、延出部23及びスリット25のサイズ及び形状は、制動能力とのかねあいを考慮して設定される。
【0031】
図1〜図3に示した全ての例において、空隙20及びスリット25内に合成樹脂などの非磁性体からなる断面部材を挿入しても良い。
【0032】
本発明は他にも様々な変形例が考えられるものである。
【0033】
例えば、図4に示すように第2磁石環7の永久磁石10が制動ロータ3の径方向両端部に磁極面を有するタイプの渦電流式減速装置にも適用できる。つまり、図では示されていないが、係る渦電流式減速装置において、磁性体部材17における、永久磁石16の径方向外側端部と磁性体部材17の径方向外側端部17aとの間に、図1〜図3に示したような空隙及びスリットを形成すれば良い。また、それら空隙及びスリット内に合成樹脂などの非磁性体からなる断熱部材を設けても良い。
【0034】
また本発明は、ステータ4(環状ケーシング5)が制動ロータ3の外側に対向させて配置されたタイプにも適用可能である。その場合、第1磁石環18が環状ケーシング5の内周壁に設けられるため、上記空隙20及びスリット25は各永久磁石16と磁性体部材17の径方向内側端部との間に形成することになる。また、図2(a)に示した例と同様に空隙20を薄板21で覆う場合、磁性体部材17の内周面を覆うように薄板21を設けることになる。
【0035】
更に本発明は、図5に示すように、ディスク状の制動ロータ43を備えたタイプにも適用可能である。この場合、ステータ44が制動ロータ43の側部に対向させて配置され、第1磁石環48が環状ケーシング45の側壁に設けられる。従って、空隙及びスリットは各永久磁石16と磁性体部材57の軸方向外側端部との間に形成することになる。
【0036】
例えば、図6に示すように、空隙50を永久磁石46の軸方向一端(制動ロータ43側端部)から磁性体部材57の軸方向一端57a(制動ロータ43側端部)まで貫通させて形成し、磁性体部材57の軸方向一端面を覆うように薄板51を設ければ良い。
【0037】
ディスク状の制動ロータ43を備えた渦電流式減速装置に適用する場合、図6に示すように、第2磁石環47の永久磁石40が回転軸42(図5参照)の軸方向両端部に磁極面を有するタイプでも、図7に示すように、回転軸42の周方向両端部に磁極面を有するタイプでも適用可能である。また、図6及び図7では、ディスク状の制動ロータ43を1枚だけ備えたタイプを示したが、制動ロータ43がステータ44の両側に設けられ、第1磁石環48が環状ケーシング45の両側壁に設けられるタイプにも適用可能であることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、永久磁石の減磁を防止できるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る渦電流式減速装置の第1磁石環を示す部分拡大正面断面図である。
【図2】(a)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
(b)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
(c)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
【図3】(a)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
(b)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
(c)は、本発明の変形例を示す部分拡大正面断面図である。
【図4】第2磁石環の永久磁石が制動ロータの径方向に磁極面を有する渦電流式減速装置の部分正面断面図である。
【図5】ディスク状の制動ロータを備えた渦電流式減速装置の上半分側面断面図である。
【図6】ディスク状の制動ロータを備えた渦電流式減速装置に適用した例を示す部分平面断面図である。
【図7】ディスク状の制動ロータを備えた渦電流式減速装置に適用した他の例を示す部分平面断面図である。
【図8】渦電流式減速装置の上半分側面断面図である。
【図9】図8の渦電流式減速装置の制動オフ時を示す部分正面断面図である。
【図10】図8の渦電流式減速装置の制動オン時を示す部分正面断面図である。
【符号の説明】
2 回転軸
3 制動ロータ
5 環状ケーシング
7 第2磁石環
10 永久磁石
16 永久磁石
18 第1磁石環
20 空隙
Claims (3)
- 回転軸に取り付けられた制動ロータと、該制動ロータに対向させて配置され、磁性体部材および該磁性体部材に上記回転軸の周方向に間隔を隔てて埋設された複数の永久磁石を備えた第1磁石環と、該第1磁石環の上記制動ロータと反対側に対向させて配置され、上記回転軸の周方向に間隔を隔てて配置された複数の永久磁石を備えた第2磁石環とを備えた渦電流式減速装置であって、
上記磁性体部材における、上記制動ロータと対向する側の端部と上記永久磁石との間の部分に、空隙を設けたことを特徴とする渦電流式減速装置。 - 上記空隙内に非磁性体からなる断熱部材を挿入した請求項1記載の渦電流式減速装置。
- 上記制動ロータが、ドラム状又はディスク状である請求項1又は2記載の渦電流式減速装置。
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