JP3944027B2 - フレキシブルプリント配線板の製造方法及びその製造方法で得られたフレキシブルプリント配線板 - Google Patents

フレキシブルプリント配線板の製造方法及びその製造方法で得られたフレキシブルプリント配線板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる2層フレキシブル銅張積層板を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、フレキシビリティに富み柔軟であり、機械的強度、耐熱性、電気的特性等の諸特性に優れ、従来から、接着剤を用いて銅箔と張り合わせた3層基板としてフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板の一種と言えるテープオートメーティドボンディング(TAB)製品の製造に広く用いられてきた。
【0003】
ところが、近年の電気・電子製品のダウンサイジングの要求の高まりから、狭小化したスペースにデバイスするためのフレキシブルプリント配線板の薄層化及び小型化が要求され、配線密度の向上、耐折強度の向上の観点から、接着剤層を省略し、ポリイミド樹脂フィルムの表面に直接銅層を備えた2層基板の供給が行われてきた。
【0004】
ポリイミド樹脂フィルムの表面に接着剤を用いることなく、銅層を形成して2層基板にする方法としては、蒸着法、キャスティング法、メッキ法が広く用いられてきたが、いずれの方法も欠点を有するものである。蒸着法を用いて、蒸着で銅層を形成した2層基板では銅層とポリイミド樹脂フィルムとの密着力に欠け、また耐マイグレーション性が低いとされている。キャスティング法は、銅箔にポリイミド前駆体であるポリアミック酸を塗布し、高温でイミド化を行う必要があること、また製造した基板が反り返るというカール不良が発生し易いため、これも実用化困難とされている。従って、最も一般的に用いられるのはメッキ法であり、無電解メッキ法又は無電解メッキ法と電気メッキ法とを組み合わせて用いる方法が一般的であるが、無電解銅メッキで形成した銅層もポリイミド樹脂フィルムとの密着力に欠け、銅層の引き剥がし強度が低く基板としての信頼性に欠けるのである。
【0005】
そこで、上述した方法に替わるものとして、ポリイミド樹脂フィルムと銅層との密着性を比較的良好に維持することのできるものとして、特開2001−73159に開示されているようなダイレクトメタライゼーション法というものが提唱されてきたのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のリジットタイプのプリント配線板と異なり、上述したフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板の一種と言えるTAB製品には、極めて微細なファインピッチ回路が形成されるのが一般化しており、良好な耐マイグレーション性能を備えることが求められるのである。
【0007】
フレキシブルプリント配線板、TAB製品におけるマイグレーションとは、当該製品にIC部品等を実装して電気・電子機器に組み込んで使用する場合の通電過程において、当該フレキシブルプリント配線板、TAB製品の回路を構成する銅成分がポリイミド樹脂基板の表層又は内部を拡散して、ブリッジを形成する現象のことをいうのである。マイグレーションが起こると、隣り合った回路間にショートサーキットを形成することで、誤動作、動作不良を起こさせる原因となり、深刻な問題となる。従って、このマイグレーションの起きにくい基板ほど、耐マイグレーション性に優れた基板であると言えるのである。
【0008】
上述した如き2層基板は、耐マイグレーション性に優れるものではなかったのである。よって、市場においては、ダイレクトメタライゼーション法を用いた場合のポリイミド樹脂フィルムと銅層との良好な密着性を維持したまま、更に、耐マイグレーション性に優れた2層基板が望まれてきたのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下の発明に係るリジットプリント配線板、フレキシブル配線板を製造した際の耐マイグレーション性能を大幅に向上させることの出来る製造方法に想到したのである。以下、本件発明について説明する。
【0010】
本件発明について説明する前に、本件発明の理解を容易にするため、マイグレーション現象について、簡単に説明しておく。現段階において、マイグレーションの発生するメカニズムに関しての、確固たる説明は出来ず、諸説が存在するのが実状である。一般的に存在する説を考えるに、本件発明者等は以下のような理論を想定することが妥当であると考えている。
【0011】
諸説の中には、回路を構成する銅層又はその銅層の表面に施されたメッキ層の内部にパッケージされた歪みの大きさに応じてマイグレーションの発生のしやすさが定まるとするもの(以下、本件明細書では「内蔵歪み説」と称する。)がある。ところが、本件発明者等は、回路を構成する銅層又はその銅層の表面に施されたメッキ層の内蔵歪みのみが影響を与え、マイグレーションが起こりやすくなるのではないと考えている。即ち、前記した内部にパッケージされた歪みエネルギーを解放するためにマイグレーションが起こっていると考えている。このとき、内蔵歪みの大きさが影響を与えていることは明らかであろうが、歪みの解放運動を起こさせるためのプロモーターとなる要因があるはずである。本件発明者等は、このプロモーターが回路の存在しない基材樹脂の表層又は内部を流れる微弱電流であり、この微弱電流が銅原子を泳動的に動かし、歪みを解放する動力となっている(以下、本件明細書では「微弱電流による内部歪み解放説」と称する。)と考えるのである。
【0012】
従来から、特に、フレキシブルプリント配線板、TAB製品等を製造する者は、内部歪み説のみをマイグレーションの原因と考え、銅層を形成するのに内部歪みの少ない銅箔の選択使用、内部歪みの少ないメッキ被膜の形成、又は事後的に行う再溶融による歪み取りであるフュージング処理等の種々の方法によって、耐マイグレーション性を向上させようとして一定の成果を上げてきたが、完全にマイグレーション現象を無くすことは出来なかったのである。
【0013】
従って、本件発明では、微弱電流による内部歪み解放説が妥当なものとの前提で、マイグレーション現象を起こす銅原子を泳動的に動かすプロモーターとなる基材樹脂の表層又は内部を流れる微弱電流を可能な限り小さくすることを考えたのである。基材樹脂の表層又は内部を流れる微弱電流(極微弱なリーク電流)を可能な限り小さくするためには、基材樹脂の表面抵抗、体積抵抗を可能な限り大きくする必要があると考えたのである。
【0014】
また、回路と回路との線間に露出した基材樹脂の表面に、銅等の金属成分が残留して存在するとリーク電流を増大させる要因となるため、マイグレーション現象を助長することも考えられる。従って、露出した基材樹脂の表面に残留する金属成分を可能な限り除去する必要性があると考えられるのである。以上に述べてきた考え方を基礎として、以下に述べる発明に想到するに到ったのである。
【0015】
請求項には、「ポリイミド樹脂フィルムを基材に用いたフレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、以下に述べる工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
(a)当該フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。
(b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。
(c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。」としている。
【0016】
発明を明確に理解するために、ここで次のことを最初に明らかにしておく。本件明細書に言う「フレキシブルプリント配線板」とは、銅層とポリイミド樹脂フィルム層とが張り合わされたものであり、銅層とポリイミド樹脂フィルム層との間に異種金属のバリア層、防錆層等が介在している場合をも含む概念として記載しており、テープオートメーティッドボンディング(TAB)、チップオンフレキシブル基板(COF)等のあらゆる製品を含む概念として記載している。従って、ここで言う「フレキシブル銅張積層板」も、上述したフレキシブルプリント配線板の製造原料となるものの全てを含むものとして記載している。
【0017】
回路エッチング工程で、アルカリ銅エッチング液を用いて、銅張積層板の回路エッチングが行われると、銅成分がエッチング除去された部位では、基材のポリイミド樹脂が表面に露出することになる。この露出した基材のポリイミド樹脂表面は、必然的にエッチング液に晒されることになる。銅張積層板の基材用に用いられるポリイミド樹脂の全てのものは環状のイミド環を化学構造式に持つものであり、アルカリエッチング液に晒されれば、そのイミド環が開環する現象が起こるのである。この開環が起こることの裏付けは、後述するダイレクトメタライゼーション法を用いた2層フレキシブル基板の製造方法の中で、ポリイミド樹脂の開環現象を例にとり詳説することとする。ダイレクトメタライゼーション法は、シード層(本件明細書では、「金属薄膜」と称している。)を形成する際に、不可避的にポリイミド樹脂フィルムを開環させるからである。
【0018】
従って、基板に形成した回路間ギャップに露出する基材表面で、ポリイミド樹脂のイミド環の開環現象が起こると、エッチング液中に存在する金属イオンの存在等に起因して、開環部においてカルボキシル基と金属イオンとがカルボキシル金属塩を生成し、金属成分がポリイミド樹脂表面に残留することになる。そこで、回路エッチングの終了した基板を酸洗処理することで、露出したポリイミド樹脂表面からカルボキシル金属塩として残留した金属成分を除去するのである。これを本件明細書では、残留金属成分除去工程と称する。
【0019】
以上のようにして、基材表面にあるカルボキシル金属塩から、金属成分を除去した後のポリイミド樹脂表面は、イミド環の開環が起こった状態で放置されていることになる。開環した状態をそのまま放置しておくと、やはりマイグレーション現象が起こりやすくなるのである。そこで、残留金属成分除去工程の終了した基板を、180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出する基材樹脂の表面を閉環処理するのである。これを、再閉環工程と称することとする。これらの工程の、詳細についても、以下に述べるダイレクトメタライゼーション法を用いた2層フレキシブル基板の製造方法の中で、ポリイミド樹脂基材を例にとり詳説することとする。
【0020】
そして、他の請求項には、「(1)〜(5)の工程を備えるダイレクトメタライゼーション法、(1)ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し表面にカルボキシル基を形成する開環工程。(2)開環して形成したカルボキシル基を酸溶液を用いて中和する中和工程。(3)中和したカルボキシル基と金属イオン含有溶液とを接触させ金属成分を吸着させることでカルボキシル金属塩をポリイミド樹脂フィルム表面に形成する金属イオン吸着工程。(4)ポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル金属塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程。(5)ポリイミド樹脂フィルムの表面に形成した金属薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を形成する回路用銅層形成工程。を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、以下に示す(a)〜(c)の各工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
(a)当該2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。(b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。(c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。」としている。
【0021】
このフレキシブルプリント配線板の製造方法は、いわゆるダイレクトメタライゼーション法を用いて導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板(以上及び以下において、単に「2層基板」と称する場合がある。)を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法である。以下、請求項に登場する各工程を順を追って説明する。ダイレクトメタライゼーション法は、導体層を形成するために、ポリイミド樹脂フィルムの表面を、必然的に開環処理するため、先に説明した製造方法を採用することが、とりわけ有効である。
【0022】
最初に、ダイレクトメタライゼーション法を構成する工程(1)〜工程(5)について説明する。工程(1)は、ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し表面にカルボキシル基を形成する開環工程である。ここで言うポリイミド樹脂フィルムとは、市販されている商品名カプトンフィルム(東レ・デュポン株式会社製)のHタイプ、ENタイプのものを用いた場合に、本件発明の効果が著しい。但し、Vタイプ及びユーピレックスS(宇部興産株式会社製)等を用いる場合にも、同様の効果を得ることが可能である。
【0023】
アルカリ処理とは、アルカリ溶液中にポリイミド樹脂フィルムを浸漬するか、ポリイミド樹脂フィルムの表面にアルカリ溶液をスプレーすることによる等の手法で行われる。このアルカリ処理に用いる溶液は、水酸化カリウム溶液又は水酸化ナトリウム溶液を用いることが好ましい。後に行う中和が容易で、表面への残留が少ないものだからである。
【0024】
ここで用いるアルカリ溶液は濃度が高いほど、ポリイミド樹脂フィルムの開環処理を短時間で容易に行うことが可能である。しかしながら、本件発明に係る製造方法は、後に説明する再閉環工程が必須のものであり、この閉環処理が困難になるレベルの開環処理を行うことは出来ない。従って、アルカリ溶液の濃度は、3.0mol/l〜10.0mol/l、溶液温度は20℃〜60℃、処理時間1分〜10分の条件を採用することが好ましい。この条件以上に過酷なアルカリ処理条件を採用すると、ポリイミド樹脂フィルムの表面が、単に開環する以上に樹脂自体の劣化を引き起こし、後の再閉環が良好に行えない結果となるのである。一方、ここに掲げる範囲を下回るアルカリ処理条件では、開環処理自体が良好に行えないのである。
【0025】
開環しているか否かの判断は、フーリエ変換吸収スペクトル分析装置(FT−IR)を用いて、閉環しているポリイミド樹脂には見られない、1647cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが観察され、更にイミド環に特徴的な1774cm−1(C=O)、1720cm−1(C=O)及び1381cm−1(C−N−C)の吸収スペクトルの消失を確認することで可能である。また、カルボキシル基(COO)に由来すると考えられる吸収スペクトルが1579cm−1、1371cm−1、1344cm−1付近に観察される。アルカリ処理を行ったポリイミド樹脂フィルムには、これら全てのスペクトルが観察できる。
【0026】
工程(1)が終了すると、通常、開環処理したポリイミド樹脂フィルムを水洗して工程(2)の中和工程に入ることになる。開環してカルボキシル基を形成し、強アルカリ化したポリイミド樹脂表面を、酸溶液を用いて中和する工程のことである。ここで中和に用いる溶液には、塩酸を用いることが好ましい。中和処理した後に、十分な水洗を施せば、ポリイミド樹脂表面への残留を完全になくすることが出来るからである。ここで用いる中和条件には、塩酸溶液の濃度が3.0mol/l〜6.0mol/l、溶液温度は20℃〜35℃、処理時間1分〜2分の条件を採用することができる。中和が終了すると水洗処理が行われる。
【0027】
この中和が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1647cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルは確認できる。また1579cm−1、1371cm−1及び1344cm−1に見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが1711cm−1、1319cm−1、1296cm−1付近にシフトし、中和によりカルボキシル基がCOOH型の構造を備えるものとなったと考えられる。
【0028】
次に工程(3)は、中和したカルボキシル基と金属イオン含有溶液とを接触させ金属イオンを吸着させポリイミド樹脂の表面にカルボキシル金属塩を形成するものである。ここで用いる金属イオン含有溶液には、例えば、銅イオンを吸着させる場合には、硫酸銅溶液を用いることができる。このときの硫酸銅溶液には銅濃度が0.01mol/l〜1.0mol/l、溶液温度は20℃〜50℃、処理時間30秒〜2分の条件を採用することができる。従って、以下の説明ではカルボキシル銅塩が生成した場合を代表例として具体的に説明する。その他、ニッケル、コバルト等のカルボキシル金属塩とすることも可能である。特に、コバルトを用いた場合には、形成した回路の引き剥がし強度を高く維持することが可能となるのである。
【0029】
工程(3)が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルム上に吸着した金属イオン量は、銅の場合であって、上述した硫酸銅溶液を用いれば100〜400mg/m程度であった。この吸着した銅イオン量の分析手法は、5wt%の硝酸溶液を用いて、吸着した銅イオンを溶かしだし、その溶液をイオンプラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて分析することにより行った。ニッケル、コバルト等の他の金属イオンを用いた場合も同様である。
【0030】
工程(3)で、金属イオンの吸着を行いカルボキシル金属塩をポリイミド樹脂フィルムの表面に形成し、水洗した後に、工程(4)でポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル金属塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜を形成するのである。これが金属膜形成工程である。また、上述した工程(3)及び工程(4)を、繰り返し行うことで金属薄膜を、厚めに形成すると、ポリイミド樹脂フィルムと、最終的に得られる導体層との密着性を向上させることが可能となるのである。このときの還元は、カルボキシル金属塩を形成したポリイミド樹脂フィルムの表面と還元剤とを接触させることにより行う。例えば、カルボキシル銅塩の場合の還元剤は、特開2001−73159に開示されているように、濃度を0.003mol/l〜0.05mol/lとした水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸、ジメチルアミン等を用いることができる。このカルボキシル金属塩の還元剤は、その種類に応じて任意に選択することが可能であり、特に限定を要するものではない。
【0031】
工程(4)の還元が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルム上の銅薄膜層を例示的に示すと、80〜380mg/mの重量厚さの銅薄膜層が形成できるのである。このときの重量厚さの測定は、吸着した銅イオン量を測定したと同様の手法を用いてICP装置を用いて分析し、1m当たりの重量厚さとして換算したものである。
【0032】
還元が終了し、水洗するとポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜(銅薄膜)が形成された状態になる。この金属薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を成長させるのが、工程(5)の回路用銅層形成工程である。「電気化学的手法を用いて」としているのは、無電解銅メッキでも、電解銅メッキでも、無電解銅メッキと電解銅メッキとを組み合わせて、銅層を成長させ厚さを増し回路形成可能な銅層厚さを得ることを意味している。ここで用いる無電解銅メッキ浴、電解銅メッキ浴の組成、その他のメッキ条件に関しては、特に限定は要さない。任意の条件を選択使用すればよいのである。この段階で導体層の形成が完了することになる。従って、導体層は銅層の下に、ニッケル、コバルト等の銅ではない異種金属が存在する場合もあるのである。
【0033】
以上の工程(1)〜工程(5)として記載したダイレクトメタライジング法により、導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層基板が得られるのである。そして、本件発明は、まず工程(a)として、この2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、回路形状を露光、現像し、エッチングすることで配線回路を形成した基板とする回路エッチングを行うのである。従来の製造方法では、この回路エッチングが終了した段階で、水洗、乾燥して製品としてのフレキシブルプリント配線板としていたのである。
【0034】
この回路エッチングを行った後に、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1650cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1547cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルは確認できる。また、1707cm−1と1308cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが再出現する。
【0035】
ところが、本件発明では、更に工程(b)として、回路エッチングの終了した基板を酸洗処理することで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去して、カルボキシル基に変換する残留金属成分除去工程を備えている。そして、更に、工程(c)として、残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程を付加的に備えるのである。
【0036】
工程(b)で行う酸洗処理には、塩酸を用いることが好ましい。最終的に付着した塩酸成分は、十分な水洗を施せば完全に除去することが可能であり、結果としてポリイミド表面への金属成分の残留を完全になくすることが出来るからである。ここで用いる塩酸溶液の濃度は1.0mol/l〜6.0mol/l、溶液温度は室温、処理時間15秒〜5分の条件を採用することが好ましい。この条件以上に過酷な酸洗条件を採用すると、形成した回路の銅までもが浸食を起こし、回路形状の維持が困難となるのである。一方、ここに掲げる範囲を下回る酸洗処理条件では、カルボキシル金属塩から金属成分を除去して、カルボキシル基に変換することが良好に行えないのである。
【0037】
酸洗処理が終了した段階での、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1649cm−1に開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1541cm−1付近に開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認でき、1714cm−1と1298cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが現れていた。そして、更に、金属成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて2種類の方法で分析したが、銅成分及びその他の金属成分は検出できず、酸洗による除去が確実に行われていると確認できた。
【0038】
酸洗処理し、水洗して、残留金属成分除去工程の終了した基板が、工程(c)に言う再閉環工程に入るのである。この再閉環工程では、残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すのである。加熱することにより、露出したポリイミド樹脂フィルムの表面に開環状態で存在するカルボキシル基を閉環させてしまうのである。ここに示した条件以上に過酷な加熱条件を採用すると、ポリイミド樹脂フィルム自体の変質を招き易くなり、一方、ここに掲げる範囲を下回る加熱条件では、十分な閉環操作が行えないのである。
【0039】
閉環操作を行った後に、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析してみると、開環しているポリイミド樹脂フィルムに見られた、1649cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1541cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトル、1714cm−1、1371cm−1及び1344cm−1とに見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルのいずれもが確認出来なくなり、イミド環に特徴的な1778cm−1、1724cm−1及び1379cm−1に吸収スペクトルが観察されるようになる。このことは閉環操作が、良好に行われていることを裏付けるものとなる。
【0040】
以上の製造方法で得られたフレキシブルプリント配線板は、従来の同一製品に比べて、非常に大きな表面抵抗を持つものとなる。本件発明者等の確認した結果を一例として示すと、従来のダイレクトメタライゼーション法を用いて製造し、再閉環処理を行わなければ、表面抵抗率が2.5×1011Ω/□以下、体積抵抗率が1.8×1013Ω・cm以下である。これに対し、本件発明に係る製造方法を用いて得られたフレキシブルプリント配線板の持つ表面抵抗率は1.0×1015Ω/□以上、体積抵抗率は4.8×1015Ω・cm以上であり、非常に大きな値となっている。
【0041】
更に、当該フレキシブルプリント配線板を恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、従来のダイレクトメタライゼーション法を用いて製造した場合の表面抵抗率が1.1×1013Ω/□以下、体積抵抗率が2.7×1014Ω・cm以下であり、これに対し、本件発明に係る製造方法を用いて得られたフレキシブルプリント配線板の持つ表面抵抗率は6.8×1014Ω/□以上、体積抵抗率は1.4×10 Ω・cm以上であり、やはり非常に大きな値となっている。従って、表面抵抗率及び体積抵抗率の値が大きいことより、耐マイグレーション性能が大幅にアップすることが予測できるのである。この効果に関しては、以下の実施形態の中で述べることとする。
【0042】
本件明細書における表面抵抗及び体積抵抗率の測定は、両面に銅層を備えた2層基板を用いて、以下のようにして行った。表面抵抗とは、基板表面に位置する電極間の絶縁抵抗であり、体積抵抗とは基板の厚さ方向を1cmの立方体と考えたときの相対向する両面に位置する電極間の電気抵抗である。従って、測定に用いた試料は100mm×100mmの2層基板をエッチングすることで、その中心に直径50mmの円形の主電極を形成し、同時にその主電極に対して、10mmの間隔があくようにして、同心状に幅10mmの円弧回路を形成した。そして、更に、ポリイミド樹脂フィルムを挟んで相対向する面には、主電極と円弧回路との同心状となるように、エッチングによって直径83mmの対電極を作製した。
【0043】
表面抵抗を測定する場合には、主電極と円弧回路とを電極として用い、対面に形成した対電極がガードの役割を果たすものとなり、電圧を印可するのである。そして、体積抵抗率を求める場合には、主電極と対電極との間に電圧を印可して、円弧回路をガードとして用いて体積抵抗を測定し、換算式[体積抵抗率]=([体積抵抗]×[電極面積])/板厚 により算出したのである。この測定には、三菱化学株式会社製の高抵抗率計ハイレスタUPを用い、JIS K 6911に準拠した方法で行った。
【0044】
なお、本件明細書において、フレキシブルプリント配線板とは、ポリイミド樹脂フィルムを絶縁層の構成材として用いて、その表面に回路形成を行ったものであって、一般にフレキシブルプリント配線板(FPC)と称される製品のみならず、液晶ディスプレイのドライバー等として用いられるテープ オートメーティッド ボンディング製品(TAB)、チップ オン フレキシブル製品(COF)等のフレキシビリティを持つプリント配線板の総称としての意味合いで用いたものである。
【0045】
更に、別の請求項には、「(1)〜(5)の工程を備えるダイレクトメタライゼーション法、(1)ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し表面にカルボキシル基を形成する開環工程。(2)開環して形成したカルボキシル基を酸溶液を用いて中和する中和工程。(3)中和したカルボキシル基と金属イオン含有溶液とを接触させ金属成分を吸着させることでカルボキシル金属塩をポリイミド樹脂フィルム表面に形成する金属イオン吸着工程。(4)ポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル金属塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程。(5)ポリイミド樹脂フィルムの表面に形成した金属薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を形成する回路用銅層形成工程。
を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、以下に示す(a)〜(d)の各工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
(a)当該ダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた2層フレキシブル銅張積層板を予め加熱処理する予備加熱工程。(b)予備加熱した2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。(c)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。(d)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。」としている。
【0046】
この製造方法は、上述したフレキシブルプリント配線板の製造方法と、その殆どの工程において共通するものであるが、回路エッチングを行う前に、当該ダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた2層フレキシブル銅張積層板を予め加熱処理する予備加熱工程を備えている点で異なる。従って、共通して重複した説明となる部分は、その記載を省略し、予備加熱工程に関してのみ説明する。
【0047】
この予備加熱工程を設けて、フレキシブルプリント配線板に加工することで、300℃を越える温度のヒートショック、若しくは、当該温度の雰囲気中での回路剥離が起こらなくなるのである。従って、予備加熱工程を設けることで、導体層とポリイミド樹脂層との密着性が著しく向上し、高温回路剥離防止能力が高まるものと考えられる。
【0048】
この予備加熱工程では、ダイレクトメタライゼーション法で製造した2層基板を、90℃〜160℃の温度で、0.5時間〜4時間程度の加熱処理を行うことが望ましい。ここで述べた温度条件を外れ、加熱不足になれば予備加熱の効果が得られず回路剥離防止は出来ず、過度な加熱を行えばポリイミド樹脂側の劣化を促進することになり、むしろ回路剥離防止能力が低下するのである。また、予備加熱に用いる温度は、室温から徐々に昇温して、目標温度に到達した時点で、所定時間保持する方法を採用することが好ましいようである。2層基板を、急激に90℃〜160℃の雰囲気温度に入れれば、当然に軽度ながらもヒートショックを与える事になるからである。
【0049】
例えば、一例として、ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し、開環して形成したカルボキシル基を酸溶液を用いて中和し、中和したカルボキシル基とコバルトイオン含有溶液とを接触させカルボキシルコバルト塩をポリイミド樹脂フィルム表面に形成し、当該カルボキシルコバルト塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面にコバルト薄膜を形成し、当該コバルト薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を形成した2層基板を、予備加熱の有無の差異を見るために用いた。その結果、予備加熱が無ければ、350℃の加熱を20秒間行うと回路剥離が確認された。これに対し、予備加熱を行うと、350℃の加熱を5分間行っても、回路剥離が起こらないことが確認されるのである。
【0050】
更に、フレキシブルプリント配線板の場合、その用途に応じて、種々のメッキ処理が施される場合がある。例えば、TABの場合に多く見られる端子メッキであるスズメッキ、多層フレキシブルプリント配線板の場合の層間導通銅メッキ等である。その他、用途に応じてニッケルメッキ等が採用される。従って、本件明細書に言うメッキ処理工程とは、特にメッキの種類を限定したものではない。このようなメッキ処理は、回路エッチングの終了後に行われる場合もある。上述してきたような本件発明に係る製造方法を基本フローとして用いれば、フレキシブルプリント配線板の製造方法の回路エッチングの終了後に、このようなメッキ処理を任意の段階で行っても、耐マイグレーション性を良好に維持することが可能となるのである。
【0051】
そこで、請求項には、「上述してきた3つのフレキシブルプリント配線板の製造方法を基本としたメッキ層を備えたフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、回路エッチング工程以降の任意の段階にメッキ処理工程を設けたものであるメッキ層を備えたフレキシブルプリント配線板の製造方法。」と記載しているのである。
【0052】
具体的には、次に示すようなタイミングでメッキ処理工程を設けるのである。最初に、本件発明では基本的に、ポリイミド樹脂フィルムを基材に用いたフレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する場合には、(a)当該フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。(b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。(c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。を経てフレキシブルプリント配線板を製造するのである。従って、かかる場合には回路エッチング工程と残留金属成分除去工程との間にメッキ処理工程を設ける。また、残留金属成分除去工程と再閉環工程との間にメッキ処理工程を設ける。更には、再閉環工程の終了後にメッキ処理工程を設ける。のいずれかのメッキ工程の配置を採用する事が出来ることになる。
【0053】
次には、上述したダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板を用いて、(a)当該2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。(b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。(c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。を経てフレキシブルプリント配線板を製造する場合にメッキ処理工程の配置を考える。かかる場合には、上述した場合と同様に回路エッチング工程と残留金属成分除去工程との間にメッキ処理工程を設ける。また、残留金属成分除去工程と再閉環工程との間にメッキ処理工程を設ける。更には、再閉環工程の終了後にメッキ処理工程を設ける。のいずれかのメッキ工程の配置を採用する事が出来ることになる。
【0054】
更に、上述したダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板を用いて、(a)当該ダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた2層フレキシブル銅張積層板を予め加熱処理する予備加熱工程。(b)予備加熱した2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。(c)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。(d)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。を経てフレキシブルプリント配線板を製造する場合にメッキ処理工程の配置を考える。すると、かかる場合にも、上述した場合と同様に回路エッチング工程と残留金属成分除去工程との間にメッキ処理工程を設ける。また、残留金属成分除去工程と再閉環工程との間にメッキ処理工程を設ける。更には、再閉環工程の終了後にメッキ処理工程を設ける。のいずれかのメッキ工程の配置を採用する事が出来ることになる。
【0055】
以上に述べたメッキ処理工程のいずれの配置を採用しても、残留金属成分除去工程と再閉環工程とを備えていない場合と比べると、格段に優れた耐マイグレーション性能を得ることが可能となるのである。しかしながら、厳密に言えば、メッキ処理工程を、どの場所に配置するかにより、耐マイグレーション性にかなり大きな影響を及ぼすこととなる。このことを以下に説明する。
【0056】
最もメッキ工程を配置するのに適しているのは、回路エッチング工程と残留金属成分除去工程との間にメッキ処理工程を設ける場合である。このメッキ工程の配置を採用すれば、その後に残留金属成分除去工程が配されることになり、回路エッチングにより形成した回路間ギャップに露出したポリイミド樹脂フィルムの表面へのメッキ液中の金属成分の残留をほぼ完全に無くすことが出来るのである。その結果、最も優れた耐マイグレーション性能を得ることが出来るのである。
【0057】
次には、再閉環工程の終了後にメッキ処理工程を配置することが好ましい。即ち、再閉環工程が終了していると言うことは、回路エッチングにより形成した回路間ギャップに露出したポリイミド樹脂フィルムのイミド環が閉環しているため、当該ポリイミド樹脂フィルム表面へのメッキ溶液中の金属成分の残留が起こりにくくなるためである。従って、良好な耐マイグレーション性を得ることが出来るのである。
【0058】
上記の二つの配置と比べれば、残留金属成分除去工程と再閉環工程との間にメッキ処理工程を設ける場合が、最も耐マイグレーション性の改善効果は小さなものとなる。即ち、残留金属成分除去工程が終了した時点では、回路エッチングにより形成した回路間ギャップに露出したポリイミド樹脂フィルムのイミド環が開環した状態にある。従って、この直後にメッキ処理を行えば、開環したイミド環が存在することで、当該ポリイミド樹脂フィルム表面へのメッキ溶液中の金属成分の残留が起こり易くなるのである。そして、そのまま再閉環工程に入れば、回路間ギャップに露出したポリイミド樹脂フィルムの表面に金属成分が残留する可能性が高くなり、耐マイグレーション性の改善効果は小さくなるのである。なお、誤解を生じないように重ねて明記しておくが、残留金属成分除去工程と再閉環工程との間にメッキ処理工程を設けても、上述した二つの配置と比べて耐マイクレーション性の改善効果が小さいに過ぎないのであり、従来の製品と比べても十分に高い耐マイグレーション性の確保は可能なのである。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本件発明に係る製造方法を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する実施形態を通じて、本件発明をより詳細に説明する。
【0060】
第1実施形態: 本実施形態では、50μm厚のポリイミド樹脂フィルムを用いて、いわゆるダイレクトメタライゼーション法を用いて銅層とポリイミド樹脂層とからなる2層基板を製造し、この2層基板を用いてフレキシブルプリント配線板の製造を行った結果について示す。但し、ここでは当該ポリイミド樹脂フィルムの両面に銅層を備えた両面張り2層基板を製造した。そして、更に、マイグレーション試験を行った結果を示すものとする。以下、各工程を順を追って説明する。
【0061】
最初に、当該ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環し表面にカルボキシル基を形成する開環工程を行った。ここで用いたポリイミド樹脂フィルムの種別は、商品名カプトン 200H(東レ・デュポン株式会社製)を用いた。
【0062】
アルカリ処理は、水酸化カリウム濃度が5.0mol/l、溶液温度が50℃の溶液中に、当該ポリイミド樹脂フィルムを、5分間浸漬することにより行った。アルカリ処理が終了すると、十分に水洗し、ポリイミド樹脂フィルムの表面から付着したアルカリ溶液を除いた。
【0063】
開環しているか否かを判断するために行ったFT−IR分析では、閉環しているポリイミド樹脂には見られない、1647cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが観察され、更にイミド環に特徴的な1774cm−1(C=O)、1720cm−1(C=O)及び1381cm−1(C−N−C)の吸収スペクトルの消失を確認できた。また、カルボキシル基(COO)に由来すると考えられる吸収スペクトルが1579cm−1、1371cm−1、1344cm−1付近に観察された。
【0064】
次に、開環工程が終了し水洗したポリイミド樹脂フィルムを、中和工程で処理した。開環してカルボキシル基を形成し、強アルカリ化したポリイミド樹脂フィルムを、酸溶液中に浸漬して中和操作を行ったのである。ここで中和に用いた溶液は、塩酸溶液であって、当該塩酸溶液の濃度は6.0mol/l、溶液温度は25℃、処理時間1分の条件を採用した。そして、中和が終了すると水洗処理を行った。
【0065】
この中和が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1647cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認できた。また1579cm−1、1371cm−1及び1344cm−1に見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが1711cm−1、1319cm−1、1296cm−1付近にシフトしていた。
【0066】
中和工程が終了すると、銅イオン吸着工程で、ポリイミド樹脂フィルムの中和したカルボキシル基と含銅溶液とを接触させ、カルボキシル基に銅イオンを吸着させポリイミド樹脂フィルムの両面にカルボキシル銅塩を形成した。ここで用いた含銅溶液は、銅濃度が0.05mol/l、溶液温度は25℃の硫酸銅溶液であり、この溶液中に1分間浸漬した。そして、水洗して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に残留した硫酸銅溶液を除いた。
【0067】
続いて、銅薄膜形成工程で、銅イオン吸着工程でポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル銅塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に銅薄膜を形成した。本実施形態における還元は、濃度が0.01mol/l、溶液温度25℃の水素化ホウ素ナトリウム溶液中にカルボキシル銅塩を形成したポリイミド樹脂フィルムを5分間浸漬して、還元剤と接触させることにより行った。そして、水洗して表面から付着した還元剤を除去した。
【0068】
本実施形態では、銅イオン吸着工程と銅薄膜形成工程とをループ的に複数回繰り返し行った。その結果、最終的な銅イオン吸着工程が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルム上に吸着させたトータルの銅イオン量は、2200mg/mであり、最終的な銅薄膜形成工程で還元が終了した段階の、ポリイミド樹脂フィルム上には、1540mg/mの重量厚さの銅薄膜層が形成できていた。
【0069】
そして、回路用銅層形成工程で、銅薄膜形成工程で銅薄膜が形成されたポリイミド樹脂フィルムの表面に、電解法を用いて銅成分を電着させ、銅薄膜を9μm厚の銅層となるまでメッキアップした。ここで電解に用いた溶液は、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃の硫酸銅溶液を用い、対極に不溶性陽極であるDSE板を配し、電流密度3A/dmの平滑メッキ条件で16分間電解した。メッキアップが終了すると、十分に水洗して付着した硫酸銅溶液の除去を行った。
【0070】
以上のダイレクトメタライゼーション法により、銅層とポリイミド樹脂層とが直接張り付けられた状態で、且つ銅層を両面に備えた2層基板を得たのである。そして、この2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光、現像し、エッチングすることで、上述した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション性測定試料となる回路を形成するエッチング工程を行った。
【0071】
回路エッチングを行った後に、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1650cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1547cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認でき、1707cm−1と1308cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが再出現していた。
【0072】
回路エッチングの終了した基板は、次に残留金属成分除去工程において、酸洗処理することで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル銅塩から銅成分を除去して、カルボキシル基に変換した。ここで行った酸洗処理には、濃度は2.0mol/lの塩酸溶液を用い、溶液温度は室温とし、この溶液に回路エッチングの終了した基板を5分間浸漬することにより行った。その後、水洗処理して、付着している塩酸成分の除去を行った。
【0073】
この回路エッチングにより製造した抵抗測定用試料は、上述した通りであり、ここでの説明は重複したものとなるため省略する。一方の、耐マイグレーション試験用試料は、回路幅が50μm、回路間ギャップが70μmの櫛形パターンであり、回路本数100本を持つものであり、配列した回路が交互に正極と負極との導通が出来るような形状のものとした。
【0074】
残留金属成分除去工程が終了した段階で、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1649cm−1に開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1541cm−1付近に開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認でき、1714cm−1と1298cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが表れていた。そして、金属成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、2種類の方法で分析したが、銅成分及びその他の金属成分は検出できず、酸洗による除去が確実に行われていると確認できた。
【0075】
そして、残留金属成分除去工程の終了した基板に対して、再閉環工程で閉環操作を行ったのである。この再閉環工程では、残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃の高温雰囲気下で60分間の加熱処理を施すものとし、回路パターンが存在せず露出したポリイミド樹脂フィルムの表面に開環状態で存在するカルボキシル基を閉環させたのである。
【0076】
閉環したことの確認として、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析してみると、開環しているポリイミド樹脂フィルムに見られた1649cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1541cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトル、1714cm−1、1371cm−1及び1344cm−1に見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルのいずれもが確認出来なくなっており、イミド環に特徴的な1778cm−1、1724cm−1及び1379cm−1に吸収スペクトルが観察されるようになった。従って、閉環操作が良好に行われていることを裏付けるものとなっていた。
【0077】
以上の製造方法で得られた抵抗測定用試料を用いて、抵抗測定を行った。この結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が4.8×1015Ω・cmであった。また、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は6.8×1014Ω/□、体積抵抗率は1.4×1015Ω・cmであった。更に、耐マイグレーション試験は、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内で、前記耐マイグレーション試験用試料を用いて、60Vの電圧を印可して、リーク電流が発生するまでの時間を測定した。この結果、リーク電流が発生するまでの時間は、1000時間以上であった。但し、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0078】
第2実施形態: 本実施形態では、第1実施形態と同様にして、50μm厚のポリイミド樹脂フィルムを用いて、いわゆるダイレクトメタライゼーション法を用いて銅層とポリイミド樹脂層とからなる2層基板を製造し、この2層基板を用いてフレキシブルプリント配線板の製造を行った結果について示す。但し、ここでは、2層基板の製造が終了し、回路エッチングを行う前に予備加熱工程を設けた点が異なるのみである。従って、製造工程の殆どが第1実施形態と重複するため、その重複部分の説明記載は省略し、予備加熱工程に関してのみ説明する。
【0079】
第1実施形態と同様のダイレクトメタライゼーション法により、銅層とポリイミド樹脂層とが直接張り付けられた状態で、且つ銅層を両面に備えた2層基板を得たのである。そして、この2層基板は、乾燥させた状態で、加熱炉内に入れ、予備加熱処理した。このときの雰囲気温度は、室温から昇温速度10℃/minで120℃になるまで加熱して、その雰囲気中で60分間保持した後、除冷した。
【0080】
そして、この予備加熱工程が終了した2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光、現像し、エッチングすることで、上述した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション性測定試料となる回路を形成するエッチング工程を行った。以降の工程及びFT−IR分析結果も第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
第1実施形態と同様の抵抗測定用試料を用いて、抵抗測定を行った。この結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が4.9×1015Ω・cmであった。また、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は6.7×1014Ω/□、体積抵抗率は1.4×1015Ω・cmであった。更に、耐マイグレーション試験は、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内で、前記耐マイグレーション試験用試料を用いて、60Vの電圧を印可して、リーク電流が発生するまでの時間を測定した。この結果、リーク電流が発生するまでの時間は、1000時間以上であった。また、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に5分間晒しても、回路剥離は全く観察され無かった。従って、第1実施形態と比較しても、非常に良好なものとなっている。
【0082】
第3実施形態: 本実施形態では、第1実施形態と同様の50μm厚のポリイミド樹脂フィルムを用いて、いわゆるダイレクトメタライゼーション法を用いて銅層とポリイミド樹脂層とからなる2層基板を製造し、この2層基板を用いてフレキシブルプリント配線板の製造を行った結果について示す。但し、本実施形態では、2層基板の製造にあたり、前述の銅イオン吸着工程の代わりに、コバルトイオン吸着工程として、当該ポリイミド樹脂フィルムの両面に銅層を備えた両面張り2層基板を製造した。そして、更に、マイグレーション試験を行った結果を示すものとする。以下、各工程を順を追って説明するが、第1実施形態と重複説明となる部分に関しての説明は省略する。
【0083】
最初に行う開環工程並びに中和工程、及び開環後並びに中和後のFT−IR分析結果に関しては第1実施形態と同様である。
【0084】
中和工程が終了すると、コバルトイオン吸着工程で、ポリイミド樹脂フィルムの中和したカルボキシル基と含コバルトイオン溶液とを接触させ、カルボキシル基に銅を吸着させポリイミド樹脂フィルムの両面にカルボキシルコバルト塩を形成した。ここで用いた含コバルトイオン溶液は、コバルト濃度が0.05mol/l、溶液温度は25℃の硫酸コバルト溶液であり、この溶液中に15分間浸漬した。そして、水洗して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に残留した溶液を除いた。
【0085】
続いて、コバルト薄膜形成工程で、コバルトイオン吸着工程でポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシルコバルト塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面にコバルト薄膜を形成した。本実施形態における還元は、濃度が0.01mol/l、溶液温度25℃の水素化ホウ素ナトリウム溶液中にカルボキシルコバルト塩を形成したポリイミド樹脂フィルムを5分間浸漬して、還元剤と接触させることにより行った。そして、水洗して表面から付着した還元剤を除去した。本実施形態では、コバルトイオン吸着工程とコバルト薄膜形成工程とをループ的に複数回繰り返し行った。その結果、最終的なコバルト吸着工程が終了した段階での、ポリイミド樹脂フィルム上に吸着させたトータルのコバルトイオン量は、2034mg/mであり、最終的なコバルト薄膜形成工程で還元が終了した段階の、ポリイミド樹脂フィルム上には、1424mg/mの重量厚さのコバルト薄膜層が形成できていた。
【0086】
そして、回路用銅層形成工程で、コバルト薄膜形成工程でコバルト薄膜が形成されたポリイミド樹脂フィルムの表面に、電解法を用いて銅成分を電着させ、銅薄膜を9μm厚の銅層となるまでメッキアップした。ここで電解に用いた溶液及び電解条件は、ピロ燐酸銅85g/l〜90g/l、ピロ燐酸カリウム330g/l、アンモニア水4ml/l、P比(P/Cu)=6.5〜6.8、pH=8.6〜8.9、液温55℃の範囲に調整した溶液を用いて、エアー攪拌しつつ、電流密度3A/dmを採用したのである。メッキアップが終了すると、十分に水洗して付着したピロ燐酸銅溶液の除去を行った。
【0087】
以上のダイレクトメタライゼーション法により、コバルト薄膜層を介して銅層とポリイミド樹脂層とが直接張り付けられた状態で、且つ銅層を両面に備えた2層基板を得たのである。そして、この2層基板は、乾燥させた状態で、加熱炉内に入れ、予備加熱処理した。このときの雰囲気温度は、室温から昇温速度10℃/minで150℃になるまで加熱して、その雰囲気中で60分間保持した後、除冷した。
【0088】
予備加熱処理の終了した2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光、現像し、エッチングすることで、上述した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション性測定試料となる回路を形成するエッチング工程を行った。回路エッチング後のFT−IR分析結果に関しては、第1実施形態と同様である。
【0089】
回路エッチングの終了した基板は、残留金属成分除去工程において、第1実施形態と同様の方法で酸洗処理し、水洗処理して、付着している塩酸成分の除去を行った。また、回路エッチングにより製造した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション試験用試料は、第1実施形態と同様であり、ここでの説明は重複したものとなるため省略する。
【0090】
残留金属成分除去工程が終了した段階での、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムのFT−IR分析結果、X線回折法及びEPMA分析の結果も、第1実施形態と同様であり、コバルト成分及びその他の金属成分は検出できず、酸洗による除去が確実に行われていると確認できた。そして、残留金属成分除去工程の終了した基板に対して、再閉環工程で閉環操作を行ったのである。この再閉環工程は、第1実施形態と同様の方法を採用し、回路パターンが存在せず、露出したポリイミド樹脂フィルムの表面に開環状態で存在するカルボキシル基を閉環させたのである。また、閉環したことの確認として行ったFT−IR分析の結果も第1実施形態と同様である。
【0091】
以上の製造方法で得られた抵抗測定用試料を用いて、抵抗測定を行った。この結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が5.0×1015Ω・cmであった。また、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は6.5×1014Ω/□、体積抵抗率は1.4×1015Ω・cmであった。更に、耐マイグレーション試験は、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内で、前記耐マイグレーション試験用試料を用いて、60Vの電圧を印可して、リーク電流が発生するまでの時間を測定した。この結果、リーク電流が発生するまでの時間は、1000時間以上であった。また、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に5分間晒しても、回路剥離は全く観察され無かった。従って、第1実施形態と比較しても、非常に良好なものとなっている。更に、測定試料数を増やして対比すれば、第2実施形態と比較しても、より安定した回路の引き剥がし強度を示し、高温回路剥離能力に優れるものとなる。
【0092】
第4実施形態: 本実施形態では、第1実施形態で採用した方法を、基本的な製造フローとして採用し、回路エッチング工程の直後にスズメッキ工程を設けている。従って、第1実施形態の製造フローに付加したメッキ処理工程に関してのみ詳細に説明し、その他の重複した記載となる部分に関しては省略する。
【0093】
第1実施形態と同様に、開環工程、中和工程、銅イオン吸着工程、銅薄膜形成工程、回路用銅層形成工程を経たダイレクトメタライゼーション法により、銅層とポリイミド樹脂層とが直接張り付けられた状態で、且つ銅層を両面に備えた2層基板を得たのである。そして、この2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光、現像し、エッチングすることで、上述した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション性測定試料となる回路を形成するエッチング工程を行った。
【0094】
そして、回路エッチングを行った後に、スズメッキ処理工程を設け、試験的に回路上にスズメッキを行った。スズメッキには、スズメッキ液としてシプレー・ファーイースト株式会社製のLT−34を用い、溶液温度75℃で約1μm相当をメッキした。
【0095】
このスズメッキ層の形成後に、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1650cm−1の開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1547cm−1付近に現れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認でき、1707cm−1と1308cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが再出現しており、第1実施形態の回路エッチング直後のFT−IR分析結果と対比すると、スズメッキを行わない場合と同様であることが分かるのである。
【0096】
スズメッキ処理工程の終了した基板は、次に残留金属成分除去工程において、酸洗処理することで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシルスズ塩からスズ成分を除去して、カルボキシル基に変換した。ここで行った酸洗処理には、濃度は0.01mol/lの塩酸溶液を用い、溶液温度は室温とし、この溶液に回路エッチングの終了した基板を5分間浸漬することにより行った。その後、水洗処理して、付着している塩酸成分の除去を行った。このようにして製造した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション試験用試料は、第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0097】
残留金属成分除去工程が終了した段階で、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、第1実施形態と同様であり、1649cm−1に開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1541cm−1付近に開環アミド(N−H)吸収スペクトルが確認でき、1714cm−1と1298cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが表れていた。そして、金属成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、2種類の方法で分析したが、スズ成分及びその他の金属成分は検出できず、酸洗による除去が確実に行われていると確認できた。
【0098】
そして、残留金属成分除去工程の終了した基板に対して、再閉環工程で閉環操作を行ったのである。この再閉環工程及び閉環したことの確認として行ったFT−IR分析の結果も、第1実施形態と同様であるため重複した記載を避けるため詳細に説明することは避けるが、閉環操作が良好に行われていることを裏付けるものとなっていた。
【0099】
以上の製造方法で得られた抵抗測定用試料を用いて、抵抗測定を行った。この結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が4.7×1015Ω・cmであった。また、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は6.6×1014Ω/□、体積抵抗率は1.4×1015Ω・cmであった。更に、耐マイグレーション試験は、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内で、前記耐マイグレーション試験用試料を用いて、60Vの電圧を印可して、リーク電流が発生するまでの時間を測定した。この結果、リーク電流が発生するまでの時間は、1000時間以上であった。但し、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0100】
第5実施形態: 本実施形態では、第1実施形態で採用した方法を、基本的な製造フローとして採用し、再閉環処理工程の後にスズメッキ工程を設けている。従って、第1実施形態の製造フローに付加したメッキ処理工程に関してのみ詳細に説明し、その他の重複した記載となる部分に関しては省略する。
【0101】
第1実施形態と同様に、開環工程、中和工程、銅イオン吸着工程、銅薄膜形成工程、回路用銅層形成工程を経たダイレクトメタライゼーション法により、銅層とポリイミド樹脂層とが直接張り付けられた状態で、且つ銅層を両面に備えた2層基板を得たのである。そして、この2層基板の銅層の表面にエッチングレジスト層を形成し、露光、現像し、エッチングすることで、上述した抵抗測定用試料及び耐マイグレーション性測定試料となる回路を形成するエッチング工程を行った。そして、更に、残留金属除去工程、再閉環工程を第1実施形態と同様に行った。
【0102】
そして、再閉環工程を行った後に、スズメッキ処理工程を設け、試験的に回路上にスズメッキを行った。スズメッキには、スズメッキ液としてシプレー・ファーイースト株式会社製のLT−34を用い、溶液温度75℃で約1μm相当の厚さとした。
【0103】
このスズメッキ層の形成後に、露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、スズメッキを行っていない第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様であるため重複した記載を避けるため詳細に説明することは避けるが、閉環操作が良好に行われていることを裏付けるものとなっていた。また、スズメッキ液成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、2種類の方法で分析したが、特にスズ成分及びその他の金属成分は検出できず、存在したとしても検出限界以下と考えられる。
【0104】
以上の製造方法で得られた抵抗測定用試料を用いて、抵抗測定を行った。この結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が5.2×1015Ω・cmであった。また、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率及び体積抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は5.9×1014Ω/□、体積抵抗率は1.3×1015Ω・cmであった。更に、耐マイグレーション試験は、温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽内で、前記耐マイグレーション試験用試料を用いて、60Vの電圧を印可して、リーク電流が発生するまでの時間を測定した。この結果、リーク電流が発生するまでの時間は、約600〜700時間であった。但し、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0105】
比較例1: ここでは第1実施形態のエッチング工程が終了して以降の、残留金属成分除去工程及び再閉環工程を行わず、代わりに再閉環工程と同様の熱処理のみを行って、抵抗測定用試料と耐マイグレーション試験用試料とを作製した。従って、エッチングにより露出した部位のポリイミド樹脂フィルムの表面には、金属成分が残留したままの状態である。
【0106】
加熱が終了した後の露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトル、及び1371cm−1付近に見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが消失していた。しかしながら、1316cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルと思われるピークが見られた。この結果から判断するに、加熱により一定の閉環現象が起こっているものと考えられるが、完全な閉環が出来ているわけではないと判断できるのである。
【0107】
また、加熱が終了した後の露出した部位のポリイミド樹脂フィルムの表面に、金属成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、2種類の方法で分析した。その結果、銅成分が残留していることが確認できた。
【0108】
そして、実施形態と同様の手法を用いて、抵抗測定及び耐マイグレーション性試験を行った。その結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が2.6×1015Ω・cmであり、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率が3.9×1014Ω/□、体積抵抗率が1.0×1015Ω・cmであり、上述の実施形態で得られた値より低い値になっている。また、耐マイグレーション試験の結果、リーク電流が発生するまでの時間は約420時間であった。また、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0109】
比較例2: ここでは第1実施形態のエッチング工程が終了して以降の、残留金属成分除去工程のみを行い、再閉環工程を行わず、ドライヤー乾燥のみを行って、抵抗測定用試料と耐マイグレーション試験用試料とを作製した。従って、エッチングにより露出した部位のポリイミド樹脂フィルムの表面には、金属成分は残留しないものの、最終的な閉環操作を行っていないのである。
【0110】
そして、実施形態と同様の手法を用いて、抵抗測定及び耐マイグレーション性試験を行った。その結果、表面抵抗率が1.6×1011Ω/□、体積抵抗率が7.2×1013Ω・cmであり、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率が9.6×1012Ω/□、体積抵抗率が3.3×1014Ω・cmであり、上述の実施形態で得られた値より低い値になっている。また、耐マイグレーション試験の結果、リーク電流が発生するまでの時間は約350時間であった。但し、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0111】
比較例3: ここでは第1実施形態のエッチング工程が終了して以降の、残留金属成分除去工程及び再閉環工程を行わず、代わりに再閉環工程と同様の熱処理のみを行って、その後第5実施形態と同様のスズメッキ処理工程を設けて、抵抗測定用試料と耐マイグレーション試験用試料とを作製した。即ち、比較例1の最終工程として、スズメッキ工程を設けたものであり、エッチングにより露出した部位のポリイミド樹脂フィルムの表面には、金属成分が残留したままの状態である。
【0112】
従って、加熱が終了した後の露出した部位のポリイミド樹脂フィルムをFT−IRで分析すると、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1554cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトル、及び1371cm−1付近に見られるカルボキシル基(COO)吸収スペクトルが消失していた。しかしながら、1316cm−1付近にカルボキシル基(COO)吸収スペクトルと思われるピークが見られた。この結果から判断するに、加熱により一定の閉環現象が起こっているものと考えられるが、完全な閉環が出来ているわけではないと判断できるのである。
【0113】
また、加熱が終了した後の露出した部位のポリイミド樹脂フィルムの表面に、金属成分の吸着残留があるか否かをX線回折法及び波長分散型のエレクトロン プローブ マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、2種類の方法で分析した。その結果、銅成分及びメッキ液のスズ成分が残留していることが確認できた。
【0114】
そして、実施形態と同様の手法を用いて、抵抗測定及び耐マイグレーション性試験を行った。その結果、表面抵抗率が1.0×1015Ω/□、体積抵抗率が2.3×1015Ω・cmであり、恒温恒湿処理(85℃/85%RH/50時間)した後の表面抵抗率が3.0×1014Ω/□、体積抵抗率が8.9×1014Ω・cmであり、上述の実施形態で得られた値より低い値になっている。また、耐マイグレーション試験の結果、リーク電流が発生するまでの時間は約400時間であった。また、高温回路剥離防止能力に関しては、耐マイグレーション試験用試料を、350℃の温度雰囲気に20秒間晒しただけで、回路剥離が観察された。
【0115】
以上に述べてきた第1実施形態〜第3実施形態と、比較例1及び比較例2の二つの比較例とを対比することで分かるように、実施形態で示した製造方法で得られたフレキシブルプリント配線板は、比較例として用いたフレキシブルプリント配線板に比べ、極めて高い耐マイグレーション性を示すことになると言える。更に、第4実施形態及び第5実施形態と、比較例3とを対比することで、メッキ工程を設けても、従来の閉環処理を行わない場合に比べて、高い耐マイグレーション性を示すことが分かるのである。以上のことから、1.ポリイミド樹脂表面から残留金属成分除去を行い、且つ閉環処理を行うことで表面抵抗及び体積抵抗率を大きくする事、2.回路間に露出したポリイミド樹脂フィルムの表面に金属成分が残留していないこと、この2つの要因が耐マイグレーション性の向上に大きく寄与していることが分かるのである。また、高温回路剥離防止能力に関しては、予備加熱処理の有無により大きな差が生じることが分かるのである。
【0116】
【発明の効果】
本件発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を用いることで、ダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた2層基板を用いてフレキシブルプリント配線板を製造しても、エッチングにより回路パターンを形成し、銅を除去した部位の露出した樹脂の表面には、金属成分が残留することもなく、しかも、エッチング液により必然的に起こる基材樹脂の開環現象、ダイレクトメタライゼーション法で必須の工程として行われる開環処理により一旦開環した樹脂表面を閉環させることが出来ることになる。その結果、表面抵抗及び体積抵抗率の値が大きくなり、耐マイグレーション性が向上する。しかも、フレキシブルプリント配線板の製造工程内に、予備加熱工程を設けることで、高温回路剥離防止能力を、飛躍的に向上させることが可能となるのである。これらのことから、プリント配線板製品の品質信頼性が、従来には考えられないレベルに大幅に向上するのである。

Claims (5)

  1. ポリイミド樹脂フィルムを基材に用いたフレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、
    以下に述べる工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
    (a)当該フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。
    (b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。
    (c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。
  2. (1)〜(5)の工程を備えるダイレクトメタライゼーション法、
    (1)ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し表面にカルボキシル基を形成する開環工程。
    (2)開環して形成したカルボキシル基を酸溶液を用いて中和する中和工程。
    (3)中和したカルボキシル基と金属イオン含有溶液とを接触させ金属成分を吸着させることでカルボキシル金属塩をポリイミド樹脂フィルム表面に形成する金属イオン吸着工程。
    (4)ポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル金属塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程。
    (5)ポリイミド樹脂フィルムの表面に形成した金属薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を形成する回路用銅層形成工程。
    を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、
    以下に示す(a)〜(c)の各工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
    (a)当該2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。
    (b)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。
    (c)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。
  3. (1)〜(5)の工程を備えるダイレクトメタライゼーション法、
    (1)ポリイミド樹脂フィルムをアルカリ処理してイミド環を開環処理し表面にカルボキシル基を形成する開環工程。
    (2)開環して形成したカルボキシル基を酸溶液を用いて中和する中和工程。
    (3)中和したカルボキシル基と金属イオン含有溶液とを接触させ金属成分を吸着させることでカルボキシル金属塩をポリイミド樹脂フィルム表面に形成する金属イオン吸着工程。
    (4)ポリイミド樹脂フィルム表面に形成したカルボキシル金属塩を還元して、ポリイミド樹脂フィルムの表面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程。
    (5)ポリイミド樹脂フィルムの表面に形成した金属薄膜上に、電気化学的手法を用いて回路を形成するための銅層を形成する回路用銅層形成工程。
    を用いて得られた導体層とポリイミド樹脂層とからなる2層フレキシブル銅張積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する方法であって、以下に示す(a)〜(d)の各工程を備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
    (a)当該ダイレクトメタライゼーション法を用いて得られた2層フレキシブル銅張積層板を予め加熱処理する予備加熱工程。
    (b)予備加熱した2層フレキシブル銅張積層板をエッチングすることで配線回路を形成する回路エッチング工程。
    (c)回路エッチング工程の終了した基板に形成された回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルム表面に残留したカルボキシル金属塩から金属成分を除去しカルボキシル基に変換することができる酸洗処理を行う残留金属成分除去工程。
    (d)残留金属成分除去工程の終了した基板を180℃〜200℃の高温雰囲気下で10分〜80分の加熱処理を施すことで、基板に形成した回路間ギャップに露出するポリイミド樹脂フィルムの表面を閉環処理する再閉環工程。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法を基本としたメッキ層を備えたフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
    回路エッチング工程以降の任意の段階にメッキ処理工程を設けたものであるメッキ層を備えたフレキシブルプリント配線板の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法で得られたフレキシブルプリント配線板。
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