JP3941893B2 - 燻蒸剤組成物及び燻蒸方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燻蒸用薬剤を燻蒸するための燻蒸剤組成物及び燻蒸方法に関し、特に燻蒸用薬剤の揮散率が高い燻蒸剤組成物及び燻蒸方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、殺虫剤や殺菌剤などの薬剤を大気中に短時間に揮散させて害虫を駆除したり殺菌する方法としては、古くは該殺虫剤や殺菌剤(以下単に「殺虫剤」と略記する)を燃焼剤と混合して、燃焼剤の燃焼熱及び発生したガスにより前記殺虫剤を大気中に発散させる方式があり、この方式においては燃焼に伴ってガスとともにかなりの煙も発生するために、それに用いる薬剤は燻煙剤とか、或いは燻蒸剤と呼ばれていて、このいわゆる燻煙剤或いは燻蒸剤を用いる方式が一般的であった。しかし、この方式では、多量の殺虫剤を大気中に短時間に速やかに蒸散させるためには、毒性の強い煙の発生を伴うような燃焼剤を用いることが不可欠の要件となっている。このため、燻煙剤或いは燻蒸剤を燻蒸させる場合には、発煙による人体に対する危険や火災発生の危険を伴うものであった。例えば、殺虫剤に有機発泡剤を混合した燻煙剤が特公平1−21802号公報に記載されており、この燻煙剤では、燃焼剤としてニトロセルロースなどが用いられ、燻煙の噴出速度を1.2m/秒以上に設定することにより自己消炎性の性質を与え、それによって火災の発生の危険性を無くそうとしている。
【0003】
また、燻蒸剤を燻蒸させるための加熱方式では、点火加熱する形態としては例えばジェット剤、ロッド剤等とするのがあり、間接的に加熱する形態としては化学反応方式や電熱式加熱方式などがある。
前記化学反応方式としては、例えば加水発熱タイプ、空気酸化発熱タイプなどの方式があるが、これらのうち加水発熱タイプの加熱方式は間接的に燻蒸用薬剤を加熱する方式であり、人体に対する危険や火災発生の危険がなく安全な加熱方式である。
この間接的加熱により燻蒸用薬剤を加熱燻蒸させる場合として、特公58−28842号公報および特公59−49201号公報に、燻蒸用薬剤に蒸散助剤としての有機発泡剤を混合してなる燻蒸剤を間接加熱する害虫駆除方法、あるいは害虫駆除材料が記載されている。さらに、前記間接加熱方式による燻蒸方法において、燻蒸用薬剤にニトロセルロース、無機質粉と糖類を混合させた燻蒸剤が知られており(特公63−41881号公報)、そのニトロセルロースは間接的な加熱により分解し、その熱分解反応での生成ガスにより、混合物中の燻蒸用薬剤が強制放散される。
【0004】
これに対して、直接加熱するタイプの前記特公平1−21802号公報に記載の方式では、燃焼剤としてニトロセルロースを使用し、その燃焼による熱で有機発泡剤を分解させて多量のガスを発生させることにより、殺虫剤等を拡散させる燻煙方式(前記点火加熱する方式)を取っているが、この方式による場合は、殺虫剤を含む燻煙剤の中で燃焼を行わせているため、燃焼熱による前記殺虫剤の熱分解、それによる殺虫剤の有効揮散率の低下があった。
また、一方の前記燻蒸用薬剤(以下「薬剤」ということがある)と有機発泡剤とを混合し、かつ間接的に加熱する前記特公58−28842号公報及び特公59−49201号公報に記載されている燻蒸剤を間接加熱する方式に属する害虫駆除方法は、燻蒸剤中の薬剤量が増加すると有効成分(薬剤)の揮散率が低下することがあり、高濃度に薬剤を含んだ燻蒸剤を製品化することが困難であった。
【0005】
さらに、間接加熱方式において、蒸散助剤としてニトロセルロース、無機質粉と糖類を含有する特公63−41881号公報に記載の方式によるときは、間接加熱であるためにニトロセルロースの熱分解速度が遅く、有効成分(薬剤)の揮散率が低かった。
また、間接加熱方式において、生石灰(酸化カルシウム)と水との反応熱による加水加熱方式は、燃焼を伴わないために安全性が高く、かつ簡便であるためによく採用されるが、この方式による場合には、保存中の生石灰の吸湿による発熱量の減少に伴い有効成分の揮散率が低下することがあった。
そして、燻煙剤中の薬剤の含有量を高くすると、薬剤の揮散率が低下するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、間接加熱方式において、高濃度に薬剤を含んだ燻蒸剤においても薬剤の揮散率が低下することがなく、気中に高濃度に薬剤を蒸散し得る燻蒸剤組成物及び燻蒸方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、発煙による人体に対する危険や火災発生の危険のない燻蒸方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、従来技術における欠点を解決し、優れた燻蒸剤組成物及び燻蒸方法を見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の課題は下記の燻蒸剤組成物によって達成される。
(1)燻蒸用害虫防除薬剤を燻蒸するために、燻蒸用害虫防除薬剤に蒸散助剤として有機発泡剤を混合したものからなり、前記混合物を水の添加によって発熱反応を起こす発熱剤により間接的に加熱して使用する燻蒸剤組成物において、燻蒸用害虫防除薬剤が10〜20%、有機発泡剤とニトロセルロースと混合物が90〜80%で、かつ前記有機発泡剤が85〜60%でニトロセルロースが5〜20%であり、前記発熱剤が酸化カルシウムであることを特徴とする燻蒸剤組成物。
(2)前記有機発泡剤がアゾジカルボンアミドであることを特徴とする前記(1)に記載の燻蒸剤組成物。
(3)前記燻蒸用害虫防除薬剤がペルメトリンであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の燻蒸剤組成物。
以下において、燻蒸用薬剤、蒸散助剤、その他の助剤を合わせたものを燻蒸剤あるいは燻蒸剤組成物といい、それを顆粒状に成形したものを顆粒剤といい、間接的に加熱するために使用するものを発熱剤といっているが、前記した成形体は顆粒剤の形態に限るものではない。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の燻蒸用薬剤を揮散させるために、燻蒸剤を燻蒸するための間接加熱の方法としては、前記の通り加水発熱タイプの他、空気酸化発熱タイプや通電による発熱を利用するタイプ等が挙げられるが、それらのうち加水発熱タイプが発煙による人体に対する危険や火災発生の危険がないので望ましい。
顆粒剤において、その1成分である蒸散助剤として、特公昭63−41881号公報のようにニトロセルロースのみを使用し、燻蒸剤中におけるニトロセルロースの含有量を1/2以上とすると、燻蒸剤中のニトロセルロースの濃度が高くなり過ぎ、燻蒸剤を加熱した際にニトロセルロースが急速に分解し、発火することがある。また、このようにニトロセルロースの濃度が高い燻蒸剤は保存中にも自然発火することもあり得る。従ってニトロセルロースを蒸散助剤とする場合には、前記特公63−41881号公報に記載されているように緩衝剤として例えば無機質粉と糖類を添加して燻蒸剤中のニトロセルロースの濃度を下げ、多くても40%として使用するように調整しなければならない。
【0009】
本発明者等は、優れた蒸散助剤を開発するべく鋭意検討した結果、有機発泡剤とニトロセルロースの両者からなる蒸散助剤では、有機発泡剤が緩衝剤として作用するためニトロセルロースの自然発火が起こらない上に、有機発泡剤とニトロセルロースの相互作用によって、低い加熱温度(例えば、生石灰と水との反応熱による加水加熱方式の場合、生石灰の吸湿により反応熱が低下した場合のように、)でも有効成分(薬剤)の揮散率が低下しないということを見出し、優れた性能を示す蒸散助剤を開発できたものである。
【0010】
本発明における燻蒸剤組成物に含有させる薬剤(有効成分)としては、従来より用いられている殺虫剤、殺菌剤、忌避剤の各種薬剤が使用できる。
代表的な薬剤(有効成分)としては、以下のものが例示できる。
(1)ピレスロイド系殺虫剤
・3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名アレスリン:商品名ピナミン:住友化学工業株式会社製)
・3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・d−3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(商品名エキスリン:住友化学工業株式会社製)
・3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(一般名バイオアレスリン)
・N−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミド)−メチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フタルスリン:商品名ネオピナミン:住友化学工業株式会社製)
【0011】
・5−ベンジル−3−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名レスメトリン:商品名クリスロンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・5−(2−プロパルギル)−3−フリルメチル クリサンテマート(一般名フラメトリン)
・3−フェノキシベンジル 2,2−ジメチル−3−(2′,2′−ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレート(一般名ペルメトリン:商品名エクスミン:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フェノトリン:商品名スミスリン:住友化学工業株式会社製)
・α−シアノフェノキシベンジル イソプロピル−4−クロロフェニルアセテート(一般名フェンバレレート:商品名スミサイジン、住友化学工業株式会社製)
【0012】
・d−2−メチル−4−オキソ−3−プロパルギルシクロペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名d,d−T80−プラレトリン:商品名エトック、住友化学工業株式会社製)
・2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(2´−クロロ−3´,3´,3´−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(一般名テフルスリン)
・2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジチルシクロプロパンカルボキシレート(一般名ベンフルスリン)
・(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル (1R,シス)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
・(R,S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル (1R,1S)−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
・α−シアノ−3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル シス/トランス−クリサンテマート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル 2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパン−1−カルボキシレート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパン−1−カルボキシレート
【0013】
(2)有機リン系殺虫剤
・O,O−ジメチル O−(2,2−ジクロロ)ビニルホスフェート
・O−イソプロポキシフェニル メチルカーバメート
・O,O−ジメチル O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオノフォスフェート
・O,O−ジエチル O−2−イソプロピル−4−メチル−ピリミジル−(6)−チオフォスフェート
・O,O−ジメチル S−(1,2−ジカルボエトキシエチル)−ジチオフォスフェート
なお、上記化合物には、その異性体も含まれる。
【0014】
(3)カーバメイト系殺虫剤
プロポクルス、カルバリル、ベンフラカルブ、アラニカルブ、フェノキシカルブなど、
(4)昆虫成長調節剤
メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン、フェノキシカルブ。
(5)キチン合成阻害型昆虫成長調節剤
ジフルベンズロン、トリフルムロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルロン、シロマジン
(6)その他の殺虫剤
ヒドラメチルノン、イミダクロブリド、アドマイヤー、アバメクチン、ホウ酸、スルフルラミド、ピラゾール系化合物。
【0015】
本発明の顆粒剤においては、薬剤(有効成分)の燻蒸が妨げられないのであれば、通常用いられる効力増強剤、揮発率向上剤、消臭剤、防臭剤、香料等の各種添加剤を任意に添加することができる。
効力増強剤としては、ピペロニルブトオキサイド、N−プロピルイゾーム、MGK−プロピルイゾーム、MGK−264、サイネピリン222、サイネピリン500、リーセン384、IBTA,S−421等。
揮散率向上剤としてはフェネチルイソチオシアネート、ハイミックス酸ジメチル等が挙げられる。
【0016】
消臭剤、防臭剤としては、ラウリル酸メタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチン酸アセトフェノン、アニシックアルデヒド、ジフェニルオキサイド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フェニル酢酸エチル、サフロール、セダウッド油、セダ菜油、シトロネラ油、ペテイグレイン油、レモングラス油等。
香料としては、じゃ香、霊猫香、竜延香などの動物性香料;アビエス油、アジョクン油、アルモンド油、こしょう油、オレンジ油、セイジ油などの植物性香料を含む天然香料の他、合成又は抽出香料である人造香料も使用される。香料は一種類のみでもよいし、二種類以上を調合した調合香料でもよい。
本発明の顆粒剤には、前記のものの他安定剤を併用してもよい。そのような安定剤としては、従来加熱蒸散用薬剤に使用されている各種安定剤を挙げることができる。
【0017】
また本発明において前記薬剤、ニトロセルロースと併用される有機発泡剤としては、熱分解して、主として窒素ガスを発生する通常の各種有機発泡剤がいずれも使用できるが、好ましくは300℃以下の発泡温度を有するものが良い。代表的な有機発泡剤としては、
アゾジカルボンアミド(AC)、p−ベンゼンスルホニルヒドラジド(TSH)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(THS)、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N’−ジニトロソN,N’−ジメチルテレフタルアミド(DDTP)、トリヒドラジノトリアジン(THT)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4’−アゾビスシアノバレリックアシッド(ACVA)、t−ブチルアゾホルムアミド(BAFA)、2,4−ビス−(アゾスルホニル)トルエン(2,4−TSH)、2,4−ビス−(アゾスルホン)トルエン(2,4TSH)、2,2’−アゾビスイソブチロアミド(AZ−A)、メチル−2、2’−アゾビスイソブチレート(AZ−B)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトレル、 1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACHC)等を挙げることができる。
【0018】
前記有機発泡剤は、これらに通常添加される、例えば「Dyphos」(ナショナル リード社製造)、「Tribase」(ナショナル リード社製造)、「OF−14」(アデカア−ガス社製造)、「OF−15」(アデカア−ガス社製造)、「KV−68A−1」(共同薬品社製造)、「Mark−553」(アデカ ケミ社製造)、「Sicostab 60」及び「Sicostab 61」(シーグレ(G.Siegle&Co.)社製造)等や、Cd−ステアレート、Ca−ステアレート、Zn−ステアレート、Zn−オクテート、ZnO、Sn−マレート、Zn−CO3 、尿素、クロムエロー、カーボンブラック等の添加剤を併用して発泡温度を低下させることが可能である。
【0019】
本発明においては、前記薬剤及び前記有機発泡剤とニトロセルロースの混合物からなる蒸散助剤、さらに必要に応じ各種添加剤を混合して顆粒剤とする。顆粒剤成分中の薬剤に対する発泡剤の混合割合は、後述する発熱剤の種類や所望の殺虫効力等に応じて適宜に選択できるが、通常薬剤に対し蒸散助剤を少なくとも等重量程度以上とするのがよい。蒸散助剤の混合割合の増大に伴い次第に殺虫薬剤の有効揮散率は向上するがあまりに多くなっても効果は向上しない。通常薬剤に対して蒸散助剤を1/2〜30重量倍、好ましくは1〜20重量倍程度とするのが良い。また、蒸散助剤中の有機発泡剤とニトロセルロースとの比率は1:1から1:0.2程度とするのが好ましい。また、前記蒸散助剤は、殺虫薬剤に対して何ら悪影響を与えるものではない。
前記顆粒剤は薬剤と蒸散助剤(必要なら他の添加剤)を単に混合するのみで調製されるが、作業性及び得られる駆除剤の製造及び使用の簡便性を考慮すると、適当な顆粒状、塊状、ペレット状、ペースト状等としたり、また熱溶融性の樹脂袋等に封入するのが好ましく、これら各使用形態に応じて各種バインダー、溶剤等を使用できる。
【0020】
本発明においては、発熱剤の発熱物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等水を添加するのみで発熱反応する物質を例示できる。この発熱物質を熱源とし、上記薬剤及び蒸散助剤、更に必要に応じて適当な添加剤を混合してなる各種形態の混合物を間接的に加熱して上記混合物を燃焼させることなく該混合物中の蒸散助剤を熱分解させる。しかしながら、酸化カルシウム以外の水と接触して発熱する発熱物質は、いずれも前記温度にまで発熱温度が達し得ないか取扱い等に不利な点があり、本発明では使用し難いので酸化カルシウムを使用することが望ましい。
【0021】
本発明で好ましく使用される酸化カルシウムとしては粒度1〜20メッシュのものを用いる。酸化カルシウム及びその粒度は、これを単に水と接触させるのみで顆粒剤中の蒸散助剤を熱分解させかつ薬剤を燻蒸させ得る温度を与え得る点より選択されたものである。上記粒度範囲の酸化カルシウムは、これと水を接触させることにより、通常約150℃〜250℃の温度を発生させ得る。これに対して粒度が上記範囲を外れると発熱温度が低くなり過ぎ、所期の作用効果を奏することができなくなる。また、前記発熱剤の発熱温度は、勿論発熱剤と接触させる水量により変動するが、通常この水量は酸化カルシウムに対して0.2〜3モル程度とするのが良い。
前記酸化カルシウムによる発熱量を調節するため、例えば珪藻土、酸性白土、ゼオライト等の粘土鉱物を酸化カルシウムにさらに添加して発熱剤とすることも可能である。
【0022】
加水発熱タイプの燻蒸剤の場合についてその基本構造を図1に示し、その蒸散機構を図1に基づいて説明する。
すなわち、燻蒸剤は顆粒剤1の形態をしており、燻蒸剤を加熱するための加熱手段は発熱剤2と水4の部分で構成されている。内部に内缶3を入れ、孔を有する底板上に吸水プレート6を設けた外缶5を外容器7の中に入れることにより燻蒸装置が構成されている。内缶3の内部に顆粒剤1を収容し、また内缶3と外缶5との間に発熱剤2が入っている。
外缶5の天シール9を取り外して、前記の外容器7と外缶5との間に水を注入するか、或いは外缶5等を外に取り出した状態で外容器7の中に水を注入してから外缶5等を中に入れて水に浸漬すると、外缶5の底板の孔を経て吸水プレート6を通して水4が発熱剤2(酸化カルシウム)の充填してある外缶5の内部へ浸透し、水4が発熱剤2(酸化カルシウム)と反応する。この反応は極めて早く、数十秒後には外缶5内の温度は約300℃に達する。そしてこの熱は金属製内缶3の壁を通して顆粒剤1に伝達される。熱を賦与された顆粒剤1は発泡溶融し、有効成分は数ミクロンの微細な粒子となって勢い良く噴出される。
ここで重要なことは、顆粒剤1と発熱剤3とは分離して格納されていることと顆粒剤1が顆粒状の有効成分に発泡成分(有機発泡剤とニトロセルロース)を主として配合して製剤されていることである。
【0023】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
a.供試燻蒸剤の試験
顆粒剤と発熱剤とを隔離して収納してなる加水発熱タイプの害虫防除用燻蒸剤を調製した。有効成分(薬剤)としてペルメトリン、有機発泡剤としてアゾジカルボンアミドからなり、発熱剤は生石灰76g(20.6kcal)を使用する。この燻蒸剤においてペルメトリンの含量を高くして、ペルメトリンの揮散率を測定した。結果を第1表に示す。
第1表に示すごとく、ペルメトリンの含量を高くするにつれて、ペルメトリンの揮散率が低下することが確認された。
【0024】
【表1】
【0025】
(実施例1)
第1表に示したペルメトリンの含量が20%の供試顆粒剤について、ニトロセルロースを添加することによるペルメトリンの揮散率を測定した。結果を第2表に示す。
第2表に示すごとく、ニトロセルロースを添加することによりペルメトリンの揮散率が上昇することが確認された。
【0026】
【表2】
【0027】
(実施例2)
生石灰が吸湿等により劣化した場合のペルメトリンの揮散率を測定した。
顆粒剤と発熱剤とを隔離して収納してなる加水発熱タイプの燻蒸剤において、顆粒剤は、燻蒸用薬剤としてペルメトリンを10%、有機発泡剤としてアゾジカルボンアミドからなり、発熱剤は生石灰65g(17.6kcal)を使用する。この燻蒸剤において、生石灰に吸湿させ、生石灰を劣化させた場合のペルメトリンの揮散率を測定した。結果を第3表に示す。
第3表に示すごとく、ニトロセルロースを添加することにより、吸湿による生石灰が劣化した場合のペルメトリンの揮散率の低下を抑制できることが確認された。
【0028】
【表3】
【0029】
【発明の効果】
燻蒸剤の顆粒剤中の薬剤の含有量が高くなっても薬剤の揮散率が低下することがなく、薬剤濃度の高い燻蒸が可能な燻蒸剤を提供することができる。また、燻蒸剤の発熱剤中の生石灰が吸湿等により劣化しても、薬剤の揮散率の低下を抑えることができ、燻蒸剤の品質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燻蒸剤の代表的な包装例を示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
1 顆粒剤
2 発熱剤
3 内缶
4 水
5 外缶
6 吸水プレート
7 外容器
8 蓋
9 天シール
Claims (3)
- 燻蒸用害虫防除薬剤を燻蒸するために、燻蒸用害虫防除薬剤に蒸散助剤として有機発泡剤を混合したものからなり、前記混合物を水の添加によって発熱反応を起こす発熱剤により間接的に加熱して使用する燻蒸剤組成物において、燻蒸用害虫防除薬剤が10〜20%、有機発泡剤とニトロセルロースと混合物が90〜80%で、かつ前記有機発泡剤が85〜60%でニトロセルロースが5〜20%であり、前記発熱剤が酸化カルシウムであることを特徴とする燻蒸剤組成物。
- 前記有機発泡剤がアゾジカルボンアミドであることを特徴とする請求項1に記載の燻蒸剤組成物。
- 前記燻蒸用害虫防除薬剤がペルメトリンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燻蒸剤組成物。
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