JP3915697B2 - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体集積デバイスを形成するために、そのデバイス中の絶縁膜としては、SiO2 、PSG(Phospho Silicate Glass)、P(プラズマ)−SiO、P(プラズマ)−SiN、SOG(Spin On Glass)、Si3 N4 (シリコン窒化膜)等が用いられる。
半導体ウエハの表面に上述したようなシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を形成するには、成膜ガスとしてモノシラン(SiH4 )やジクロルシラン(SiH2 Cl2 )やヘキサクロロジシラン(Si2 Cl6 )、ビス ターシャル ブチルアミノシラン(BTBAS)等のシラン系ガスを用いて熱CVD(Chemical VaporDeposition)により成膜する方法が知られている。
具体的には、例えばシリコン酸化膜を堆積する場合には、SiH4 +N2 O、SiH2 Cl2 +N2 O、或いはTEOS(テトラエチルオルソシリケート)+O2 等のガスの組み合わせで熱CVD(Chemical Vapor Deposition)によりシリコン酸化膜を形成している。また、シリコン窒化膜を堆積する場合には、SiH2 Cl2 +NH3 或いはSi2 Cl6 +NH3 等のガスの組み合わせで熱CVDによりシリコン窒化膜を形成している。
【0003】
ところで、半導体集積回路の配線等の更なる高微細化及び高集積化に伴って、上述したような絶縁膜もより薄膜化されており、しかも、熱CVDの成膜処理時の温度に関しても、下層にすでに形成されている各種の膜の電気的特性を維持する必要から、より低温化が進んでいる。
この点に関して、膜種にもよるが、例えばシリコン窒化膜を熱CVDにより堆積する場合、従来にあっては760℃程度の高温でこのシリコン窒化膜の堆積を行っていたが、最近にあっては600℃程度まで温度を下げて熱CVDにより堆積する場合もある。そして、周知のように、半導体集積回路を形成する場合、導電層や上述したような絶縁層を相互に積層しつつ、しかもパターンエッチングを行いながら多層構造とする。
【0004】
ところで、上述したような絶縁層を形成した後に、この上に別の薄膜を形成する場合には、上記絶縁層の表面が有機物やパーティクル等の汚染物が付着している可能性があるので、この汚染物を除去する目的で、上記半導体ウエハを希フッ酸等のクリーニング液に浸漬させて上記絶縁膜の表面をエッチングすることによりこの表面を非常に薄く削り取り、これにより上記汚染物を除去するクリーニング処理が行われる場合がある。
しかしながら、この場合、上記絶縁膜を例えば760℃程度の高温で成膜した場合には、このような高温の熱CVDで形成した絶縁膜のクリーニング時のエッチングレートはかなり小さいので、クリーニング時にこの絶縁膜が過度に削り取られることがなく、膜厚の制御性が良い状態でクリーニング処理を行うことができる。
【0005】
これに対して、上記絶縁膜を例えば600℃程度の低い温度で成膜した場合には、このような低温の熱CVDで形成した絶縁膜のクリーニング時のエッチングレートはかなり大きいので、クリーニング時にこの絶縁膜が過度に削り取られる場合が発生し、クリーニング処理時の膜厚の制御性が劣ってしまう、といった問題があった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、比較的低温で成膜してもクリーニング時のエッチングレートを比較的小さくでき、もってクリーニング時の膜厚の制御性を向上させることができる成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、絶縁膜のクリーニング時のエッチングレートについて鋭意研究した結果、絶縁膜中に炭素成分を積極的に含有させることにより、クリーニング時のエッチングレートを小さく抑制することができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内に処理ガスを供給して被処理体の表面にシリコン含有膜を形成する成膜方法において、前記処理ガスとしては、シリコン系材料ガスとしてヘキサクロロジシランとヘキサエチルアミノジシランとジクロルシランとビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)よりなる群から選択された1つのガスを用いると共に、前記処理容器内に炭化水素ガスとしてエチレンを供給するようにし、前記エチレンの流量は前記シリコン系材料ガスの流量の10倍〜100倍の範囲内であるようにしたことを特徴とする成膜方法である。
これによれば、シリコン含有膜の成膜時に炭化水素ガスを併せて供給することにより、シリコン含有膜中に炭素成分を含ませることができ、これにより、比較的低温で成膜を行ってもクリーニング時のエッチングレートを比較的小さくでき、もってクリーニング時の膜厚の制御性を向上させることが可能となる。
【0007】
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記エチレンは、予備加熱なしで前記処理容器内へ供給される。この場合、例えば予備加熱が不要なので、装置が簡単化できる。
また、例えば本発明の関連技術によれば、前記炭化水素ガスは、前記処理容器内へ供給される直前に所定の温度まで予備加熱される。
これによれば、供給される炭化水素ガスを予備加熱することにより活性化されて、シリコン含有膜中により多くの炭素成分を含ませることができ、従って、クリーニング時のエッチングレートをより小さくでき、もってクリーニング時の膜厚の制御性を更に向上させることが可能となる。
【0008】
また、例えば請求項3に規定するように、前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜、或いはシリコン窒化膜である。
また、例えば請求項4に規定するように、前記処理ガスとして、窒化ガスが含まれる。
また例えば請求項5に規定するように、前記成膜時のプロセス温度は450〜600℃の範囲内である。
【0009】
請求項6に係る発明は、上記方法発明を実施するための装置発明であり、すなわち、被処理体に対してシリコン含有膜を堆積させるために、真空引き可能になされた処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を保持する被処理体保持手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内に必要な処理ガスとして、シリコン系材料ガスとしてヘキサクロロジシランとヘキサエチルアミノジシランとジクロルシランとビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)よりなる群から選択された1つのガスを少なくとも供給するガス供給手段と、を備えた成膜装置において、前記ガス供給手段は、前記処理容器内に炭化水素ガスとしてエチレンを供給すると共に、前記エチレンの流量は前記シリコン系材料ガスの流量の10倍〜100倍の範囲内に設定する炭化水素ガス供給系を有することを特徴とする成膜装置である。
この場合、例えば請求項7に規定するように、前記処理ガスとして、窒化ガスが含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る成膜方法及び成膜装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
<第1実施例>
図1は本発明方法の第1実施例を実施するための成膜装置を示す構成図である。
この成膜装置2は、処理ガスとして例えばシリコン系材料ガスであるSi2 Cl6 とNH3 ガスとを用いてシリコン含有膜としてシリコン窒化膜を堆積する際に炭化水素ガスを供給して膜中に炭素成分を含有させるものである。そのために、まず、この成膜装置2は、筒体状の石英製の内筒4とその外側に所定の間隙10を介して同心円状に配置した石英製の外筒6とよりなる2重管構造の処理容器8を有しており、その外側は、加熱ヒータ等の加熱手段12と断熱材14を備えた加熱炉16により覆われている。上記加熱手段12は断熱材14の内面に全面に亘って設けられている。
【0011】
この処理容器8の下端は、例えばステンレススチール製の筒体状のマニホールド18によって支持されており、内筒4の下端は、マニホールド18の内壁より内側へ突出させたリング状の支持板18Aにより支持され、このマニホールド18の下方より多数枚の被処理体としての半導体ウエハWを多段に載置した被処理体保持手段としての石英製のウエハボート20が昇降可能に挿脱自在になされている。本実施例の場合において、このウエハボート20には、例えば150枚程度の直径が200mmの製品ウエハと13枚程度のダミーウエハとを略等ピッチで多段に支持できるようになっている。すなわち、ウエハボート20には全体で163枚程度のウエハを収容できる。
【0012】
このウエハボート20は、石英製の保温筒22を介して回転テーブル24上に載置されており、この回転テーブル24は、マニホールド18の下端開口部を開閉する蓋部26を貫通する回転軸28上に支持される。
そして、この回転軸28の貫通部には、例えば磁性流体シール30が介設され、この回転軸28を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部26の周辺部とマニホールド18の下端部には、例えばOリング等よりなるシール部材32が介設されており、容器内のシール性を保持している。
【0013】
上記した回転軸28は、例えばボートエレベータ等の昇降機構34に支持されたアーム36の先端に取り付けられており、ウエハボート20及び蓋部26等を一体的に昇降できるようになされている。また、上記マニホールド18の側部には、内筒4と外筒6の間隙10の底部から容器内の雰囲気を排出する排気口38が設けられており、この排気口38には、図示しない真空ポンプ等を介設した真空排気系が接続されている。
上記マニホールド18の側部には、内筒4内に所定の処理ガスを供給するためのガス供給手段40が設けられる。具体的には、このガス供給手段40は、成膜ガス供給系42と酸化もしくは窒化ガス供給系44と、本発明の特徴とする炭化水素ガス供給系46とよりなり、各ガス供給系42、44、46は、マニホールド18の側壁を貫通して設けられた直線状の成膜ガスノズル48、酸化もしくは窒化ガスノズル50及び炭化水素ガス供給ノズル52をそれぞれ有している。
【0014】
そして、各ガスノズル48、50、52にはマスフローコントローラのような流量制御器54、56、58をそれぞれ介設した成膜用ガス流路60、酸化もしくは窒化用ガス流路62及び炭化水素用ガス流路64がそれぞれ接続されており、成膜ガス、酸化もしくは窒化ガス及び炭化水素ガスをそれぞれ流量制御しつつ供給できるようになっている。ここでは、例えば成膜ガスとしてSi2 Cl6 が用いられ、窒化ガスとしてはNH3 ガスが用いられ、そして、炭化水素ガスとしてはC2 H6 (エタン)ガスが用いられる。尚、酸化ガスとしてはN2 OガスやO2 ガス等が用いられる場合もある。そして、上記炭化水素用ガス流路64には、予備加熱部66が介設されている。この予備加熱部66は、例えば外部に加熱ヒータ等を巻回してなる石英容器内に石英粒を充填して構成されており、これに流れる炭化水素ガスであるエタンガスを予備加熱してこれを活性化し得るようになっている。これにより、上記予備加熱部66内に流れるエタンガスを所定の温度に加熱し得るようになっている。
ここで、本実施例では処理容器8の内筒4の内径は240mm程度、高さは1300mm程度の大きさであり、処理容器8の容積は略110リットル程度である。
【0015】
次に、以上のように構成された装置を用いて行なわれる本発明の成膜方法について説明する。
まず、ウエハがアンロード状態で成膜装置が待機状態の時には、処理容器8内はプロセス温度、例えば500℃程度に維持されており、常温の多数枚、例えば150枚の製品ウエハWと20枚のダミーウエハ等が載置された状態のウエハボート20を処理容器8内にその下方より上昇させてロードし、蓋部26でマニホールド18の下端開口部を閉じることにより容器内を密閉する。
そして、処理容器8内を真空引きして所定のプロセス圧力、例えば27Pa程度に維持すると共に、ウエハ温度を上昇させて成膜用のプロセス温度、例えば600℃程度に安定するまで待機し、その後、所定の成膜ガスであるSi2 Cl6 ガスと窒化ガスであるNH3 ガスと炭化水素ガスであるC2 H6 ガスを、それぞれ流量制御しつつガス供給手段40の各ノズル48、50、52から供給する。ここで本発明の特徴として、C2 H6 ガスはノズル52の直前の炭化水素用ガス流路64に介設した予備加熱部66により、供給直前に所定の温度、例えば500〜1000℃の範囲内で加熱して活性化してもよいし、或いは加熱しなくてもよい。このように予備加熱されず、或いは予備加熱されて活性化されたC2 H6 ガスは処理容器8の下部に供給されてSi2 Cl6 ガス及びNH3 ガスと混合して、処理空間Sを上昇しつつ反応して、ウエハWの表面にシリコン窒化膜の薄膜を堆積することになる。
【0016】
この処理空間Sを上昇した処理ガスは、処理容器8内の天井部で折り返して内筒4と外筒6との間の間隙10を流下し、排気口38から外へ排気されることになる。
ここで上述のように予備加熱部66におけるC2 H6 ガスの加熱温度に関しては、下限値は、略500℃であり、上限値は特に限定されないが、後述するようにシリコン窒化膜のエッチングレートが飽和する温度、例えば略1000℃程度である。また、C2 H6 ガスの流量の上限値は特に限定されないが、後述するようにシリコン窒化膜のエッチングレートが飽和する流量、例えば略200sccm程度である。また、Si2 Cl6 ガスの流量は略30sccm程度、NH3 ガスの流量は略900sccm程度である。
【0017】
このように、C2 H6 ガスを予備加熱しないで処理容器8内へ供給することにより、或いは予備加熱して活性化させた状態で処理容器8内へ供給することにより、ウエハ表面に形成されるシリコン窒化膜中に炭素成分が含有された状態となる。このように、シリコン窒化膜中に炭素成分が含有されると、従来の成膜温度、例えば760℃程度よりも低い温度で成膜したにもかかわらず、この表面のクリーニング処理時に用いられる希フッ酸に対するエッチングレートを小さくでき、この結果、クリーニング処理時にシリコン窒化膜が過度に削り取られることを防止して、この膜厚の制御性を向上させることが可能となる。
【0018】
特に、C2 H6 ガスを予備加熱すると、このガスが活性化されてその分だけ多量の炭素成分がシリコン窒化膜中に含有されるので、このシリコン窒化膜のエッチングレートを一層小さくすることができる。この場合、後述するように、シリコン窒化膜中の炭素成分の濃度をコントロールすることにより、所望のエッチングレートを得ることが可能となる。
ここで、C2 H6 ガスの流量、或いは予備加熱温度を種々変更して、その時のシリコン窒化膜中に含まれる炭素成分の濃度を評価したので、その評価結果について説明する。
【0019】
図2はC2 H6 ガスの流量と炭素成分濃度との関係を示すグラフ、図3はC2 H6 ガスの予備加熱温度と炭素成分濃度との関係を示すグラフである。ここでウエハ位置は、処理容器8(ウエハボート20)内を上下の方向に3つのゾーンに分割して、それぞれトップ、センタ、ボトムとして表しており、図1にも示すように例えばトップの領域にはウエハボート20の上部より1番目〜60番目のウエハが属し、センタの領域には61番目〜111番目のウエハが属し、ボトム領域には112番目〜170番目のウエハが属している。
【0020】
まず、図2に示す場合は、プロセス温度は600℃、プロセス圧力は27Pa、Si2 Cl6 ガスの流量は30sccm、NH3 の流量は900sccmである。また、供給時のC2 H6 の温度は1000℃で一定である。図2から明らかなように、ウエハ領域に関係なく、C2 H6 の流量を0〜200sccmまで増加すると、この増加に従って、シリコン窒化膜中の炭素成分濃度は略直線的に増加している。従って、C2 H6 の流量を増加する程、シリコン窒化膜中の炭素成分濃度は増加することが判明する。
また、図3に示す場合は、プロセス温度は600℃、プロセス圧力は27Pa、Si2 Cl6 ガスの流量は30sccm、NH3 の流量は900sccm、C2 H6 の流量は200sccmである。そして、C2 H6 の予備加熱温度を500〜1000℃まで変化させている。
【0021】
図3から明らかなように、C2 H6 の予備加熱温度が500〜700℃の範囲ではシリコン窒化膜中の炭素含有濃度は、一部に誤差範囲内と思われる減少傾向は見られるものの、基本的には僅かずつ増加している。そして、予備加熱温度が700〜900℃の範囲では炭素含有濃度は急激に増加している。そして、予備加熱温度が900〜1000℃の範囲内では、炭素含有濃度は僅かずつ増加しているが、略飽和状態となってきている。従って、C2 H6 の予備加熱を行って、且つその温度を高くすればする程、炭素含有濃度をより高くできることが判明する。
この場合、シリコン窒化膜中の炭素成分濃度をある程度以上に増加させるには、C2 H6 を予備加熱し、その温度を略500℃以上に設定するのがよく、また、略1000℃で炭素成分濃度は略飽和するので、その上限値は略1000℃程度であることが判明する。
【0022】
以上の結果により、シリコン窒化膜中の炭素成分濃度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を評価したので、その評価結果について説明する。
図4はシリコン窒化膜中の炭素成分濃度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を示すグラフである。ここではシリコン窒化膜中の炭素含有濃度を1×1018〜1×1022atms/cm3 まで種々変更している。この時の成膜条件は、プロセス温度が600℃、プロセス圧力が27Pa、Si2 Cl6 の流量が30sccm、NH3 の流量が900sccm、C2 H6 の流量が200sccmである。また、エッチングレートに関しては、プロセス温度を760℃(従来の成膜温度)に設定して成膜したシリコン窒化膜のエッチングレートを基準、すなわち”1”とした時の比較値を正規化エッチングレートとして表している。
【0023】
図4から明らかなように、トップからボトムまでのウエハ位置に関係なく、シリコン窒化膜中の炭素含有濃度を1×1018〜1×1022atms/cm3 まで増加すればする程、エッチングレートは直線的に低下しており、炭素含有濃度をコントロールすれば、この正規化エッチングレートを制御できることが判明する。特に、炭素含有濃度が1×1022atms/cm3 の時には正規化エッチングレートは略”1”になっており、プロセス温度600℃という低温で成膜したにもかかわらず、760℃で成膜した従来のシリコン窒化膜と略同じエッチングレートにできることが判明する。
また、図4に示す結果を補完する目的で、C2 H6 の予備加熱温度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を評価したので、その評価結果について説明する。
【0024】
図5は、C2 H6 の予備加熱温度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を記すグラフである。ここではC2 H6 の予備加熱温度を500〜1000℃まで種々変更している。この時の成膜条件は、プロセス温度が600℃、プロセス圧力が27Pa、Si2 Cl6 の流量が30sccm、NH3 の流量が900sccm、C2 H6 の流量が200sccmである。また、エッチングレートに関しては、プロセス温度を760℃(従来の成膜温度)に設定して成膜したシリコン窒化膜のエッチングレートを基準、すなわち”1”とした時の比較値を正規化エッチングレートとして表している。
図5から明らかなように、トップからボトムまでのウエハ位置に関係なく、予備加熱温度が500〜700℃の範囲内では正規化エッチングレートは僅かずつ減少しているが、700〜900℃の範囲内では正規化エッチングレートは急激に減少している。そして、予備加熱温度が900〜1000℃の範囲内では正規化エッチングレートはまた僅かずつ減少しており、予備加熱温度が1000℃程度で正規化エッチングレートは略”1”になって飽和している。
【0025】
従って、C2 H6 の予備加熱温度を500〜1000℃の範囲内でコントロールすることにより、正規化エッチングレートを1〜8程度の範囲内で任意に選択できることが判明する。
また更に、図4に示す結果を補完する目的で、C2 H6 の流量(予備加熱有り/無し)と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を評価したので、その評価結果について説明する。
図6はC2 H6 の流量(予備加熱有り/無し)と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を示すグラフである。ここではC2 H6 の流量を0〜200sccmまで種々変更しており、その都度、C2 H6 を予備加熱しない場合(常温)と1000℃に予備加熱した場合の2種類についてシリコン窒化膜を成膜している。
【0026】
この時の成膜条件は、プロセス温度が600℃、プロセス圧力が27Pa、Si2 Cl6 の流量が30sccm、NH3 の流量が900sccmである。また、エッチングレートに関しては、プロセス温度を760℃(従来の成膜温度)に設定して成膜したシリコン窒化膜のエッチングレートを基準、すなわち”1”とした時の比較値を正規化エッチングレートとして表している。
図6から明らかなように、トップからボトムまでウエハ位置に関係なく、C2 H6 を予備加熱しないで常温で供給した場合には、C2 H6 の流量を0〜200sccmまで増加しても、その正規化エッチングレートは6〜7.5より5.5〜7.0まで僅かしか低下しておらず、エッチングレート低下の効果は見られるが、その低下の程度は非常に少ないことが判明する。
【0027】
これに対して、C2 H6 を1000℃に予備加熱してその流量を0〜200sccmの範囲で変化させた場合には、トップからボトムまでのウエハ位置に関係なく、C2 H6 の流量が0〜100sccmの範囲内では正規化エッチングレートは”6〜8”から”2”程度まで急激に低下しており、そして、流量が100〜200sccmの範囲では正規化エッチングレートは僅かずつ低下していることが判明する。そして、流量が200sccmでエッチングレートの低下は略”1”になって飽和していることが判明する。
従って、C2 H6 の予備加熱温度を1000℃に維持したまま、この流量を0〜200sccmの範囲内でコントロールすることにより、正規化エッチングレートを1〜8程度の範囲内で任意に選択できることが判明する。
【0028】
尚、以上の実施例では3種類のガスをそれぞれ別系統で独立して処理容器8内へ供給したが、炭化水素ガスをSi2 Cl6 ガス、或いはNH3 ガスへ混合させた状態で供給するようにしてもよい。
また、以上の実施例では、シリコン含有膜としてシリコン系材料ガスであるSi2 Cl6 とNH3 を用いてシリコン窒化膜を形成する際に、これと同時に炭化水素ガスを供給する場合を例にとって説明したが、他のガス種を用いてシリコン窒化膜を形成する場合、例えばSiH2 Cl2 +NH3 或いはSiCl4 +NH3 等のガスの組み合わせで熱CVDによりシリコン窒化膜を形成する場合、或いはシリコン窒化膜に限らず、例えばSiH4 +N2 O、SiH2 Cl2 +N2 O、或いはTEOS(テトラエチルオルソシリケート)+O2 等のガスの組み合わせで熱CVD(ChemicalVapor Deposition)によりシリコン酸化膜を形成する場合にも、炭化水素ガスを併せて供給するという本発明を適用することができる。この場合、上記N2 OガスやO2 ガスは酸化ガスとして用いられている。またシリコン系材料ガスとして例えばビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)を用いてもよい。
また、ここでは炭化水素ガスとしてパラフィン炭化水素のエタン(C2 H6 )を用いたが、これに限定されず、メタン、プロパン、ブタン等の他のパラフィン系炭化水素を用いてもよいし、更にはパラフィン系炭化水素に限定されず、アセチレン、エチレン等のアセチレン系炭化水素等を用いてもよい。
【0029】
<第2実施例>
以上の第1実施例では、炭化水素ガスとしてエタン(C2 H6 )を用いた場合を例にとって説明したが、これに代えてエチレン(C2 H4 )を用いた場合を第2実施例として説明する。
この炭化水素ガスとしてエチレンを用いるメリットは、このエチレンを予備加熱してもよいが、予備加熱なしで処理容器8内へ供給しても十分にエッチングレートの小さいシリコン含有膜を形成できる、という前述したと同様な効果が得られる点である。
図7は上記したような本発明方法の第2実施例を実施するための成膜装置を示す構成図である。尚、図1に示す構成部分と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図7に示すように、ここではエタン(C2 H6 )に代えてエチレン(C2 H4 )を用いており、図1に示す成膜装置では予備加熱部66を設けたが、ここではこの予備加熱部66を設けないで、例えば略室温の状態でこのエチレンガスを処理容器8内へ導入するようにしている。
またここでは、シラン系ガスとして同じくヘキサクロロジシラン(Si2 Cl6 )を用いている。尚、ここでもNH3 ガスを共に用いるのは勿論である。
上述したガスを用いてシリコン窒化膜を形成した場合にも、エチレンを予備加熱しないにもかかわらず、シリコン窒化膜中に炭素成分を十分に含ませることができ、これにより、比較的低温で成膜を行ってもクリーニング時のエッチングレートを比較的小さくでき、もってクリーニング時の膜厚の制御性を向上させることができる。このように、炭化水素ガスとしてエチレンガスを用いた場合には予備加熱なしで使用できる理由は、エチレンガスのうち”C=C”の二重結合の一つの結合解離エネルギー(約63kcal/mol)がエタンの”C−C”の結合解離エネルギー(約83kcal/mol)よりも小さいため、エチレンの方が反応性が高いたもと考えられる。
【0031】
ここで上記第2実施例の評価実験を行ったので、その結果について説明する。図8はガス流量と正規化エッチングレートとの関係を示すグラフである。このグラフ中には、比較のために予備加熱なしでエタンを用いた時の結果も併記されている。このプロセス条件は、温度が600℃、圧力が27Pa、ガス流量はHCDが30sccm、NH3 が900sccmである。尚、ウエハの処理枚数は170枚(製品ウエハ150+ダミーウエハ等20枚)程度である。また、正規化エッチングレートに関しては、成膜ガスとしてジクロルシランを用いて温度760℃で成膜したシリコン窒化膜のエッチングレートを基準として正規化している。
図8に示すように、炭化水素ガスとしてエタンを使用した場合には、予備加熱を行っていないためにガス流量を増加させても、正規化エッチングレートは、TOP(トップ)、CTR(センタ)、BTM(ボトム)間において若干の差はあるが略6〜8の範囲内で略一定か、或いは僅かに低下するだけである。
【0032】
これに対して、炭化水素ガスとしてエチレンを使用した場合には、予備加熱を行っていなくても、ガス流量を最大150sccmまで増加させるとTOP〜BTMの全ての範囲において正規化エッチングレートは5〜6程度より3.2〜4程度の範囲まで確実に低下しており、良好な特性を示していることが判明した。
ここで、正規化エッチングレートのエチレンガス流量に対する依存性を評価するために、エチレンガス流量を更に増加させる実験を行った。この結果を図9に示す。図9はエチレンガス流量と正規化エッチングレートとの関係を示すグラフである。尚、プロセス条件は、図8において説明した場合と同じである。また、ここではウエハ位置のTOP〜BTMまでの平均値でエッチングレートを表している。
この図9において明らかなように、エチレンガス流量を900sccmまで増加するに従って正規化エッチングレートは6.45〜1.80程度まで次第に低下しており、900sccm近傍で略低下の度合いが飽和していることが判明した。
またSi2 Cl6 の流量を30sccmとした場合、C2 H4 の流量の下限値は300sccmが適当である。すなわちそれ以上の流量の場合にはエッチングレートが大きくなって窒化膜の下地膜である酸化膜が大きく削られるからである。さらに上限値を検討した結果、C2 H4 は3000sccmが適当である。それ以上の流量の場合は成長速度が大幅に低下して実用に供しないからである。
【0033】
このように、予備加熱を行わなくてもエチレンガス流量をある程度まで増加させる程、正規化エッチングレートを低下させることができることが判明した。尚、図8及び図9に示す実験で用いた成膜装置は図7に示したと同様な成膜装置を用いた。
また、上記第2実施例ではプロセス温度は600℃であったが、同様なプロセス条件のもとで、プロセス温度を450℃に設定し、エチレンガスを300sccmの流量で予備加熱なしで供給して評価を行ったところ、エチレンガスを入れない場合に比べ約半分のエッチングレートに低下することが判明した。
【0034】
尚、この第2実施例では、シラン系材料ガスとしてヘキサクロロジシラン(HCD)を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、ヘキサエチルアミノジシラン(HEAD)、ジクロルシラン(DCS)、ビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)等も用いることができる。
また、以上の各実施例では成膜装置として縦型のバッチ式の成膜装置を例にとって説明したが、これに限らず、横型のバッチ式の成膜装置、或いは被処理体を1枚ずつ処理する枚葉式の成膜装置にも、本発明を適用することができる。
また、被処理体としては、半導体ウエハに限定されず、ガラス基板やLCD基板等にも、本発明を適用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の成膜方法及び成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
本発明によれば、シリコン含有膜の成膜時に炭化水素ガスを併せて供給することにより、シリコン含有膜中に炭素成分を含ませることができ、これにより、比較的低温で成膜を行ってもクリーニング時のエッチングレートを比較的小さくでき、もってクリーニング時の膜厚の制御性を向上させることができる。
特に、炭化水素ガスとしてエチレンを用いた場合には、予備加熱なしでもエッチングレートの低いシリコン含有膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の第1実施例を実施するための成膜装置を示す構成図である。
【図2】C2 H6 ガスの流量と炭素成分濃度との関係を示すグラフである。
【図3】C2 H6 ガスの予備加熱温度と炭素成分濃度との関係を示すグラフである。
【図4】シリコン窒化膜中の炭素成分濃度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を示すグラフである。
【図5】C2 H6 の予備加熱温度と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を記すグラフである。
【図6】C2 H6 の流量(予備加熱有り/無し)と希フッ酸(49%HF:H2 O=1:100)に対するエッチングレートの関係を示すグラフである。
【図7】本発明方法の第2実施例を実施するための成膜装置を示す構成図である。
【図8】ガス流量と正規化エッチングレートとの関係を示すグラフである。
【図9】エチレンガス流量と正規化エッチングレートとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 成膜装置
8 処理容器
12 加熱手段
20 ウエハボート(被処理体支持手段)
40 ガス供給手段
42 成膜ガス供給系
44 酸化もしくは窒化ガス供給系
46 炭化水素ガス供給系
60 成膜用ガス流路
62 酸化もしくは窒化用ガス流路
64 炭化水素用ガス流路
66 予備加熱手段
W 半導体ウエハ(被処理体)
Claims (7)
- 真空引き可能になされた処理容器内に処理ガスを供給して被処理体の表面にシリコン含有膜を形成する成膜方法において、
前記処理ガスとしては、シリコン系材料ガスとしてヘキサクロロジシランとヘキサエチルアミノジシランとジクロルシランとビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)よりなる群から選択された1つのガスを用いると共に、前記処理容器内に炭化水素ガスとしてエチレンを供給するようにし、前記エチレンの流量は前記シリコン系材料ガスの流量の10倍〜100倍の範囲内であるようにしたことを特徴とする成膜方法。 - 前記エチレンは、予備加熱なしで前記処理容器内へ供給されることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
- 前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜、或いはシリコン窒化膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
- 前記処理ガスとして、窒化ガスが含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜方法。
- 前記成膜時のプロセス温度は450〜600℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜方法。
- 被処理体に対してシリコン含有膜を堆積させるために、
真空引き可能になされた処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を保持する被処理体保持手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内に必要な処理ガスとして、シリコン系材料ガスとしてヘキサクロロジシランとヘキサエチルアミノジシランとジクロルシランとビス ターシャル ブチル アミノシラン(BTBAS)よりなる群から選択された1つのガスを少なくとも供給するガス供給手段と、
を備えた成膜装置において、
前記ガス供給手段は、前記処理容器内に炭化水素ガスとしてエチレンを供給すると共に、前記エチレンの流量は前記シリコン系材料ガスの流量の10倍〜100倍の範囲内に設定する炭化水素ガス供給系を有することを特徴とする成膜装置。 - 前記処理ガスとして、窒化ガスが含まれることを特徴とする請求項6記載の成膜装置。
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