JP3906580B2 - 金属石鹸微粒子及びその製造方法とその用途 - Google Patents

金属石鹸微粒子及びその製造方法とその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属石鹸微粒子に関し、さらに詳しくは、著しく微細かつ粒径分布が狭い金属石鹸微細粒子であり、さらに、前記の金属石鹸微細粒子を簡易かつ効率よく製造する方法及びトナー組成物、及び画像記録装置用、特に電子写真複写機用クリーニング助剤として上記金属石鹸微粒子の利用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属石鹸は、電子印刷分野、粉末冶金分野、化粧品分野、塗料分野、及び樹脂加工分野など、多くの分野において幅広く用いられている。近年これらの分野において、数多くの高機能化が進行しており、これらの要求を達成するために、金属石鹸の微細化が要求されるようになった。
現在行われている代表的な金属石鹸の製造方法として、脂肪酸のアルカリ金属塩の溶液に、無機金属化合物の溶液を滴下して反応する方法(複分解法)、あるいは、脂肪酸と無機金属化合物を高温下で混錬して反応する方法(溶融法)が挙げられる。しかしながら、これらの方法により得られた金属石鹸は、平均粒径が7μmよりも大きく、かつ10μm以上の粒径を有する金属石鹸の全体に対する含有量が20重量%よりも大きい。したがって、これらの方法は、いずれも効率よく、平均粒径4μm以下の金属石鹸微粒子を得る事ができない。また、平均粒径5〜10μmの金属石鹸微粒子を得ることのできる連続的製造方法が開示(特開平1−299247号公報)されている。しかしながら、この方法は平均粒径4μm以下の金属石鹸微粒子を効率よく得る方法としては、必ずしも充分に満足しうるものではなかった。そこで、該金属石鹸を、さらに粉砕分級し、より微細な金属石鹸を得る方法が試みられている。しかし、平均粒径4μm以下の金属石鹸粒子を分級によって得る事は、現在の技術では非常に困難である。さらにこの方法を用いた場合、収率が10%以下と著しく低下し、また粒子径が10μm以下の粒子のみを選択的に得ることは困難である。さらに、粉砕分級を繰り返し行うことで、金属石鹸粒子表面が破砕される。その結果、金属石鹸粒子の表面の平滑性が低下し、金属石鹸粒子間の摩擦係数が増加するため、金属石鹸の粉体流動性などが低下する。
【0003】
ところで、このような金属石鹸粒子を利用する該応用分野としては、例えば電子写真複写機用トナー粒子及びクリーニング助剤が挙げられる。
従来、電子写真複写法としては、例えば、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報等に記載されているが如く、多くの方法が知られている。一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により像担持体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じてこの画像を紙やポリマーシートなどの記録媒体に転写し定着し、画像を得るものである。さらに、転写後の像担持体は、表面の残留トナーを除去した後、像担持体を反復使用される。また、トナーを用いて現像する方法あるいはトナー画像を定着する方法、及び像担持体に残留したトナーをクリーニングする方法としては、従来各種の方法が提案され、それぞれの画像形成プロセスに適した方法が採用されている。
【0004】
従来より、これらの目的に用いるトナーは、例えば特開平4−276764号公報などに記載されているが如く、一般的に熱可塑性樹脂に染料や顔料からなる着色剤を溶融混合したものを用い、これらを均一に分散した後、微粉砕装置及び分級機を用いて所望の粒径を有するトナー微粒子を製造する方法や、特公昭36−10231号公報、特公昭43−10799号公報及び特公昭51−14895号公報などに記載されているが如く、重合単量体、着色剤及び重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤又は電荷制御剤などを、均一に溶解又は分散せしめて、単量体組成物とした後、懸濁重合法を用いてトナー微粒子を製造する方法が提案されている。
これらの製法により作成されたトナーは、一般的に電子複写装置や静電プリンターなどに用いられている。さらに近年の印刷の高密度化やカラー化により、トナー粒子の保存安定性の向上、トナーの像担持体に対する可視像形成の速度と精度の向上、像担持体から記録媒体への可視像の転写及び定着の速度と精度の向上、及び像担持体に残存するトナーのクリーニングの速度と精度の向上などが求められるようになった。そのため、電子複写機に使用されるトナー及びクリーニング助剤に使用する添加剤についても、従来以上に高度な特性が要求されるようになった。
【0005】
従来より、ステアリン酸亜鉛あるいはステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸を、トナー又はクリーニング助剤に添加することで、トナーの耐ブロッキング性、トナーの流動性及びトナーの像担持体からの脱離性又はクリーニング性が向上することが知られている。例えば、特開昭57−111576号公報、特開昭60−225870号公報、特開平2−106780号公報及び特開平3−269478号公報では、金属石鹸をクリーニング助剤としてトナーに添加することで像担持体のクリーニング性能を改良している。また、特開昭57−73774号公報などに記載されているが如く、従来より使用されているファーブラシあるいはブレードなどを用いた像担持体のクリーニング方法において、飽和脂肪酸金属石鹸や不飽和脂肪族石鹸をクリーニング助剤として像担持体表面に塗布する方法が知られている。この方法を用いた場合、ファーブラシあるいはブレードなどによる像担持体の摩耗を軽減し、かつ像担持体の固着異物の脱離性を容易にすることが可能である。
【0006】
しかし、該トナー微粒子に対して大粒径粒子を含有する金属石鹸を内部添加又は外部添加した際、金属石鹸がトナー粒子に対して十分に分散しない。また、大粒径の金属石鹸の影響によりトナーの流動性の再現性が低下し、可視像形成の精度が十分でない。さらに、像担持体にトナーの可視像を形成する際に、金属石鹸の大粒径の粒子が像担持体を摩耗あるいは擦傷することで像担持体の寿命が短縮される。また、像担持体に従来用いられる金属石鹸をクリーニング助剤として塗布した場合、金属石鹸粒子に含有する大粒径の金属石鹸粒子が像担持体を摩耗あるいは擦傷し、像担持体の寿命が短縮される。そのため、長期のランニングに対して十分な画像濃度が得る事ができず、鮮明な画質を長期にわたって得ることがより困難となる。
また、該金属石鹸粒子を利用する分野としては電子印刷分野のほかに、粉末冶金分野、化粧品分野、塗料分野及び樹脂加工分野などが挙げられる。
金属石鹸は粉末冶金分野における金属粉末用の流動性向上剤として一般的に使用されている。近年この分野において金属粉末の小粒径化、及び焼成用型の微細化が進行している。しかしながら、これらの用途に従来の金属石鹸を利用した場合、金属粉末に対して金属石鹸の粒径が大きく、かつ粒子径が10μmよりも大きな金属石鹸粒子の含有率が多いため、金属石鹸が充分均一に金属粉末に分散しない。その結果、金型に対する金属粉末の流動性が十分でなくなったり、特にフィラメントなどのように微細な金属加工を要求される際、フィラメントの強度低下や生産効率が低下するなどの問題が生じる。
また、金属石鹸は塗料分野における顔料分散剤として一般的に使用されている。この分野においては、近年より塗膜の薄膜化にともなう、膜表面の平滑性の向上や塗膜表面の滑性や撥水性が望まれている。しかしながら、従来より用いられている金属石鹸を塗料に添加した場合、塗料に対する分散性が十分でないため、均一な金属石鹸分散塗膜を得る事が困難である。また、塗膜に対して金属石鹸が付与する滑性や撥水性が十分でなく、さらに、厚さ10μm以下の塗膜を形成する際に、大粒径の金属石鹸の影響により、表面の平滑性を損ねるなどの障害が生じる。
また、金属石鹸は樹脂加工分野における安定剤及び加工助剤として一般的に使用されている。しかしながら、従来より用いられている金属石鹸を樹脂加工時に添加した場合、樹脂粉体などに対し十分に分散する事が出来ないため樹脂加工時間が長くなるという問題があり、また加工品内において金属石鹸が十分に分散せず、樹脂強度の低下・樹脂の白濁あるいは歩留まりの低下などが生じるなどの問題点が指摘されている。
【0007】
このように、従来より用いられている金属石鹸を、該応用分野に応用することは大変困難といわざるを得ない。そのため、従来より用いられている金属石鹸よりも著しく平均粒径が低く、かつ大粒径の粒子の含有率を大幅に減らした金属石鹸が、上記分野において望まれている。具体的には、平均粒径が4μm以下であり、粒子径10μm以上の粒子の含有量の低い、極めて微細な金属石鹸微粒子が上記分野において求められている。しかしながら、従来一般に用いられる金属石鹸の製造方法、粉砕方法あるいは分級方法を用いて、より微細な金属石鹸粒子を効率よく得る事は極めて困難であり、実用的な方法の開発が望まれているのが実情である。そのため、上記用途に用いる粒径が非常に微細な金属石鹸を製造するには、粉砕工程をなるべく用いず、合成終了時に、粒子径4μm以下に微細化された金属石鹸粒子を多く含有している製造方法を用いる事が理想的である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような状況下で、従来の金属石鹸微粒子よりも著しく粒子径が微細であり、かつ粒径分布が狭く、かつ大粒径粒子の含有率が非常に低い金属石鹸微細粒子を提供することである。また本発明の他の目的は、これらの金属石鹸微粒子を簡易にかつ効率よく製造する方法を提供することであり、さらに本発明の他の目的は上記に述べた各応用分野にて生じている問題点を改善することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、平均粒径が4μm以下であり、かつ粒系分布が狭い金属石鹸を見出した。さらに、所定濃度の脂肪酸塩水溶液と所定濃度の無機金属塩水溶液水溶液又は分散液とを、特定の温度で混合して得られた金属石鹸スラリーを、特定の温度で乾燥する事により、前記金属石鹸微粒子を簡易にかつ効率よく製造する方法をも見出した。
さらに、本発明にて製造された金属石鹸微粒子を使用する事で、各分野にて問題であった諸事項について改善出来る事を見出した。
例えば、本発明の金属石鹸をトナー組成物に含有させることにより、電子写真複写機内の像担持体表面を損なわず、トナー組成物の耐ブロッキング性、トナー組成物の流動性及びトナー組成物の像担持体からの脱離性を向上させ、かつ像担持体に対して十分な可視像を形成し、像担持体に付着したトナー組成物のクリーニング性能を向上できることを見出した。さらに、本発明の金属石鹸を含有するクリーニング助剤を像担持体表面に塗布することにより、電子写真複写機内の像担持体表面を損なわず、トナー組成物の像担持体からの脱離性を向上させ、かつ像担持体表面から記録媒体にトナー組成物を転写した後に像担持体表面に残存するトナー組成物のクリーニング性能を向上できる事を発見した。
本発明は、上記の全項目にかかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、微粒子製造時において平均粒径が4μm以下であり、かつ、10μmよりも大きな粒径の粒子の全体に対する含有量が4重量%以下である事を特徴とする金属石鹸微粒子を提供する。この金属石鹸微粒子の好ましいものは、30%粒径RA と、70%粒径RC との差RC −RA が3μm以下であること、及び/又は50%粒径RB と、95%粒径RD との差RD −RB が6μm以下である事を特徴とする金属石鹸微粒子である。さらに、これらの金属石鹸微粒子を簡易にかつ効率よく製造するのに際し、(a)炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩0.001〜20重量%を含有する水溶液と、(b)無機金属塩0.001〜20重量%を含有する水溶液又は分散液とを、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で混合して金属石鹸スラリーを調製し、次いでこのスラリーを金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で乾燥処理する事を特徴とする金属石鹸微粒子の製造方法を提供するものである。
さらに、上記金属石鹸微粒子の応用例として、上記金属石鹸微粒子、特に脂肪酸金属塩微粒子を含有する電子写真複写機用トナー組成物、及び上記金属石鹸微粒子、特に脂肪酸金属塩微粒子を含有する画像記録装置用、特に電子写真複写機用クリーニング助剤を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の金属石鹸は、平均粒径は4μm以下であり、かつ、10μmよりも大きい粒径を有する金属石鹸微粒子の全体に対する含有率が4重量%以下であるを特徴とする。このような条件を満たしている金属石鹸微粒子であれば、粒径分布曲線の形状はどのようなものでもよい。例えば、二項分布曲線、正常分布曲線あるいはピアソン系度数分布曲線などの統計曲線に従う粒径分布曲線の形状、又はこれらから選ばれる統計曲線の2つ以上を複合した粒径分布曲線の形状などが挙げられる。
本発明にて作成される金属石鹸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、リシノレイン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸及びエルカ酸などの単体脂肪酸、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、やし油脂肪酸及びパーム油脂肪酸などの動植物油脂由来の脂肪酸に代表される炭素数4以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と、カルシウム、バリウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、亜鉛、銅、マンガン、カドミウム、水銀、ジルコニウム、鉛、鉄、アルミニウム、コバルト、ニッケル又は銀など金属により構成され、特に炭素数10〜24、好ましくは12〜22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のCa塩、Zn塩又はBa塩などが好ましい。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。電子複写機用トナー組成物に該金属石鹸を用いる場合、特に炭素数14〜22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のCa塩、Zn塩又はBa塩などが好ましい。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。炭素数3以下の脂肪酸を用いた金属石鹸を用いた場合、金属石鹸の潤滑性が充分でなく、トナー組成物の耐ブロッキング性、該トナー組成物粉体の流動性、及びクリーニング時における像担持体からの残存トナーの脱離性が充分でない事がある。また、電子複写機用クリーニング助剤に該金属石鹸を用いる場合、特に炭素数14〜22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のCa塩、Zn塩又はBa塩などが好ましい。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。炭素数3以下の脂肪酸を用いた金属石鹸の場合、像担持体表面からのトナー組成物の脱離性が十分でなく、すなわち、像担持体のクリーニング性能が十分でないことがある。その他の該応用分野においても、例えば、塗料の溶剤組成やポリマー成分、樹脂加工に用いる樹脂成分の種類や重合度、金属粉末の加工時に用いる金属の種類や粒子形状や粒度分布、化粧品に用いる内容成分や製造条件などにより、1種類又は2種類以上の該金属石鹸を適宜使用する事で目的とする効果を得る事が出来る。
【0012】
本発明にて記載される金属石鹸微粒子の粒度とは、金属石鹸微粒子の平均的な代表長さをもって定義される。平均的な代表長さとしては、一般的に知られている定義を用いる事ができ、例えば、2軸平均径、3軸平均径(算術平均径)、調和平均径、表面積平均径、立体積平均径、外接長方形相当径(ブライニゲル径)、正方形相当径(グッドマン径、ベロット/ケニー径)、円形相当径(ヘイウッド径)、直方体相当径(幾何平均径)、円筒体相当径(浅野径)、立方体相当径(アンドレアゼン径)、球体相当径(ワンデル径)、定方向径(グリーン径、フェレット径)、定方等分径(ゲーベライン径)、ナッセンシュタイン径及びストークス径などが挙げられる。また、本発明において、これらで定義される粒度を測定する方法として、一般的な粒度分布測定法を用いる。測定方法としては、例えば、ストークスの法則に基づく沈降法(気相沈降法、液相沈降法、光透過法)、顕微鏡法、光走査法及びレーザー回折散乱法などが挙げられる。その中でも、本発明にて記載される微粒子の測定法においては、より微細な粒子に対して精度よく測定が可能である光走査法及びレーザー回折散乱法などが好適に使用される。
本発明の金属石鹸微粒子の平均粒径は4μm以下であり、好ましくは平均粒径3μm以下であり、さらに好ましくは、0 .5〜2 .5μm、特に好ましくは2μm以下の平均粒径を有する金属石鹸が、前記に示した用途にて使用する上で好都合である。平均粒径が4μmよりも大きい金属石鹸を用いた場合、例えば、微細化された金属粉末に対して金属石鹸の粒径が大きく、金属石鹸が充分に均一に金属粉末に分散しないため、金属粉体の流動性が不十分であったり、金属加工品の歩留まりが低下する事がある。さらに、該金属石鹸微粒子を樹脂加工時の添加剤として用いた場合、樹脂加工時間が十分に短縮されなかったり、樹脂成形品の白濁が生じたりする事がある。また、塗料に添加した場合、厚さ3μm以下の塗膜を形成する際、表面の平滑性を損ねるなどの障害が生じる事がある。さらに、平均粒径が4μmよりも大きい金属石鹸を小径化及び球形化されたトナーに加えた場合、電子写真複写機内の像担持体表面を損なうため、電子写真複写機の長期ランニングテストにおいて、印刷物の地肌が汚れたり、充分な画像濃度が得られなくなる事がある。また、トナー粒子表面への金属石鹸の付着性が充分でないため、トナー組成物の耐ブロッキング性、該トナー組成物粉体の流動性、及びクリーニング時における像担持体からの残存トナー組成物の脱離性が充分でない事がある。さらに、平均粒径が4μmよりも大きい金属石鹸を、特に小径化及び球形化されたトナーを使用する電子複写機内におけるクリーニング助剤として用いた場合、電子複写機内の像担持体表面を損なうことがあり、像担持体表面からのトナー組成物のクリーニング性能を向上させることができない事がある。
【0013】
本発明の金属石鹸は、10μmよりも大きい粒径を有する金属石鹸微粒子の全体に対する含有率が4重量%以下である。特に10μm より大きい粒径のものを、実質上含まない事が好ましい。前記に示した応用用途にて使用する上でこれらの条件を満たしている金属石鹸微粒子を使用する事が好ましい。
とりわけ、平均粒径が0.5〜2.5μm であり、かつ6μmよりも大きい粒径の粒子全体に対する含有量が5重量%以下であり、しかも10μmよりも大きい粒径の粒子が実質的に存在しない金属石鹸微粒子が好適である。
ここで微粒子の平均粒径や粒径とは、金属石鹸微粒子が製造された時点で測定されたものを意味する。換言すれば、様々な方法で得られた金属石鹸そのままあるいは必要に応じて乾燥したものを、粉砕や分級することなく測定したときの平均粒径や粒子や粒径を指称する。したがって、本発明の金属石鹸微粒子は、粉砕による破断面を有しないという特徴をも有する。
10μmよりも大きい粒径を有する金属石鹸微粒子の全体に対する含有率が4重量%よりも高い金属石鹸を用いた場合、例えば、3〜5μm以下の粒径を有する電子印刷用トナーに前記金属石鹸を添加する際は、好ましくは、10μmよりも大きい粒径を有する金属石鹸微粒子を実質上含まない事が好ましい。10μmよりも大きい粒径を有する粒子が全体に対して4重量%よりも多く含有する金属石鹸を、小径化及び球形化されたトナーに加えた場合、電子写真複写機内の像担持体表面を損なうため、電子写真複写機の長期ランニングテストにおいて、印刷物の地肌が汚れたり、充分な画像濃度が得られなくなる事がある。また、トナー粒子表面への金属石鹸の付着性が充分でないため、トナー組成物の耐ブロッキング性、該トナー組成物粉体の流動性、あるいはクリーニング時における像担持体からの残存トナー組成物の脱離性が充分でない事がある。
【0014】
さらに、該金属石鹸微粒子を電子複写機用クリーニング助剤に用いる場合、好ましくは、10μmよりも大きい粒径を有する金属石鹸微粒子を実質上含まない事が好ましい。10μmよりも大きい粒径を有する粒子が全体に対して4重量%よりも多く含有する金属石鹸を、特に小径化及び球形化されたトナーを使用する電子複写機内におけるクリーニング助剤として用いた場合、電子複写機内の像担持体表面を損なうことがあり、像担持体表面からのトナー組成物のクリーニング性能を向上させることができない事がある。また、塗料に前記金属石鹸を添加し、厚さ5μm以下の塗膜を形成する際、表面の平滑性を損ねるなどの障害が生じたり、金属粉体の流動性が不十分であったり、金属加工品の歩留まりが低下したり、樹脂加工時間が十分に短縮されなかったり、あるいは樹脂成形品の白濁が生じたりする事がある。
本発明の金属石鹸は、RC −RA が3μm以下であること、及び/又はRD −RB が6μm以下であることが望ましい。
ここで記載されているRA 、RB 、RC 及びRD は、それぞれ、30%粒径、50%粒径、70%粒径及び95%粒径である。ここで30%粒径RA とは、金属石鹸の全量中の30重量%がその粒径以下であることを示し、図1は本発明の金属石鹸(ジクンステアレート)の粒度分布及び粒度累積を示すグラフであり、図2は従来の金属石鹸(ジクンステアレート)の粒度分布及び粒度累積を示すグラフである。ここにおいて、例えば図2の従来の金属石鹸(ジンクステアレート)の粒度累積グラフ中の累積(%)における、30重量%での粒径(μm)をRA と定義する。RB 、RC 及びRD もRA と同様に定義される。なお、図2におけるRA 、RB 、RC 及びRD は、それぞれ3.2μm、5.3μm、8.3μm及び19.6μmである。従ってRC −RA 及びRD −RB は、それぞれ5.1μm及び14.3μmとなる。RC −RA 及び/又はRD −RB の各々の値が小さいほど、金属石鹸の粒度分布の範囲が狭い。本発明の好ましい金属石鹸は、RC −RA が3μm以下、かつ、RD −RB が6μm以下である。なお、該応用分野に用いる場合、RC −RA が2μm以下、特に0.3から2μm、かつ、RD −RB が6μm以下特に1.5から6μm 、とりわけ3μm以下の金属石鹸がより好適である。
C −RA が3μmよりも大きい場合、又はRD −RB が6μmよりも大きい金属石鹸を該応用分野に用いた場合、例えば、電子複写機用トナー組成物に該金属石鹸を使用する場合、RC −RA が3μmよりも大きく、また、RD −RB が6μmよりも大きい金属石鹸を、小径化及び球形化されたトナーに加えると、該金属石鹸の粒径分布が広く、かつ大粒径の粒子量が増加するため、電子写真複写機内の像担持体表面を損ない、電子写真複写機の長期ランニングテストにおいて、印刷物の地肌が汚れたり、充分な画像濃度が得られなくなる事がある。また、トナー粒子表面への金属石鹸の付着が均一にならないため、トナー組成物の耐ブロッキング性、該トナー組成物粉体の流動性、あるいはクリーニング時における像担持体からの残存トナー組成物の脱離性が充分でない事がある。また、電子複写機用クリーニング助剤に該金属石鹸を使用する場合、RC −RA が3μmよりも大きく、また、RD −RB が6μmよりも大きい金属石鹸を、特に小径化及び球形化されたトナーを使用する電子複写機内におけるクリーニング助剤として用いると、該金属石鹸の粒径分布が広く、かつ大粒径の粒子量が増加するため、電子複写機内の像担持体表面を損なうことがあり、像担持体表面からのトナー組成物のクリーニング性能を向上させることができない事がある。さらに、他の応用分野においても、RC −RA が3μmよりも大きく、また、RD −RB が6μmよりも大きい金属石鹸を用いた場合、例えば塗料に該金属石鹸を添加し、厚さ5μm以下の塗膜を形成する際、表面の平滑性を損ねるなどの障害が生じたり、金属粉体の流動性が不十分であったり、金属加工品の歩留まりが低下したり、樹脂加工時間が十分に短縮されなかったり、樹脂成形品の白濁が生じたりする事がある。
【0015】
次に、本発明の金属石鹸微粒子の好適な製造方法について、詳細に説明する。
本発明の方法においては、原料成分として、(a)脂肪酸塩水溶液と(b)無機金属塩の水溶液又は分散液が用いられる。
上記(a)成分の脂肪酸塩水溶液の調製に用いられる脂肪酸塩としては、炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。該脂肪酸は飽和又は不飽和のいずれであってもよく、また、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。このような脂肪酸塩の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、リシノレイン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸及びエルカ酸などの単体脂肪酸のナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、あるいは、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、やし油脂肪酸及びパーム油脂肪酸などの動植物油脂由来の脂肪酸のナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。これらの中で、炭素数10〜24、特に炭素数12〜22を有する脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が好ましい。これらの脂肪酸塩は、単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。炭素数3以下の脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を用いた場合、選られる金属石鹸の水に対する溶解度が高いので、収率が低下する。一方、炭素数31以上の脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を用いた場合、水に対する溶解度が低すぎて、水溶液濃度が低くなり、生産効率が低下する。
本発明においては、(a)成分である脂肪酸塩水溶液中の上記脂肪酸のアルカリ金属塩又は アンモニウム塩の含有量は0.001〜20重量%の範囲で選定される。この含有量が0.001重量%未満では、得られる金属石鹸量が反応液量に対して著しく低くなるため、生産効率が悪く、現実的ではない。また、20重量%を超えると、得られる金属石鹸粒子の平均粒径が大きくなるおそれがある。得られる金属石鹸の量及びその粒径などを考慮すると、水溶液中の上記脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の好ましい含有量は、0.5〜15重量%の範囲である。
【0016】
本発明の(b)成分の無機金属塩の水溶液又は分散液の調製に用いられる無機金属塩の例としては、カルシウム、バリウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩あるいは燐酸塩など、あるいは、チタン、亜鉛、銅、マンガン、カドミウム、水銀、ジルコニウム、鉛、鉄、アルミニウム、コバルト、ニッケル及び銀などの金属の塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩あるいは燐酸塩などを挙げる事ができる。これらの物質は単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(b)成分である無機金属塩の水溶液又は分散液中の上記無機金属塩の含有量は0.001〜20重量%の範囲で選定される。この含有量が0.001重量%未満では、得られる金属石鹸量が反応液量に対して著しく低くなるため、生産効率が悪く、実用的ではない。また、20重量%を超えると、得られる金属石鹸粒子の平均粒径が大きくなるおそれがある。得られる金属石鹸の量及びその粒径などを考慮すると、水溶液又は分散液中の上記無機金属塩の好ましい含有量は、0.01〜10重量%の範囲である。
【0017】
前記(a)成分及び(b)成分の調製に用いられる水としては特に制限はなく、一般的に使用されるものを用いても良いが、イオン交換水、精製水、又は蒸留水などのように、金属イオンなどの不純物の少ないものが好ましい。
本発明においては、前記(a)成分と(b)成分との混合割合は、特に制限はなく、状況に応 じて適宜選定すればよいが、通常は(b)成分中の無機金属塩に対する、(a)成分中の脂肪酸塩の当量比が0.9〜1.1の範囲になるように選ぶのが有利である。その当量比が上記範囲を逸脱すると未反応原料が多く残存し、その除去工程が必要となる場合がある。残存不純物を少なくするためには、該当量比は0.95〜1.05の範囲が好ましい。
【0018】
本発明の方法における製造装置としては、(a)成分及び(b)成分を別々に混合機内に供給し混合できるものが好ましく、特に(a)成分と(b)成分とを別々にできる限り高速に混合機内に供給し混合できることが好適である。例えば、各原料溶液(あるいは分散液)をそれぞれ別方向から混合層に注入して各溶液(あるいは分散液)を混合するのと同時に、混合槽から混合物を系外に排出するのが有利であり、この操作における装置としては、より効率よく(a)成分及び(b)成分を均一に混合できるものがよい。これらの装置としては、フロージェットミキサー、ラインホモジナイザー及びサンドミルのようなラインミル等を用いるのが好ましい。また、(a)成分と(b)成分の反応後において、未反応の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が残存する場合は、混合槽から(a)成分と(b)成分が排出された後に、0.001〜15重量%の無機金属塩を含有する水溶液又は分散液を混合する事で完全に未反応の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を金属石鹸に反応させる事が出来る。
本発明においては、(a)成分と(b)成分は、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下、好ましくは該結晶転移開始温度より5℃以上低い温度で混合する事が必要である。ここで、結晶転移開始温度とは、金属石鹸の結晶構造が変化し始める温度のことであり、例えば図3のジンクステアレートの示差熱分析による熱吸収グラフにおいて、吸熱開始前の勾配の延長線Aと、吸熱開始後の勾配の延長線Bとの交点Cを結晶転移開始温度とする。ジンクステアレートの結晶転移開始温度は100℃である。図4のカルシウムステアレートでは94℃、図5のマグネシウムステアレートでは73℃である。実際の混合時の温度は、得られる金属石鹸の脂肪酸鎖及び金属の種類により異なるが、例えばカルシウムステアレートの製造の場合70℃〜94℃が好ましい。70℃未満の温度で反応を行うと、(a)成分内の原料の溶解度が低下し、目標物質は得られるが、最終的に得られる金属石鹸量が反応溶液量に対して低く生産効率が悪い。94℃を超える温度で反応を行うと、金属石鹸の微細粒子同士の凝集が起こり、平均粒子径が大きくなることがある。
【0019】
本発明においては、このようにして得られた金属石鹸スラリーは、一般的に用いられる濾過装置を使用して金属石鹸ケーキと濾液に分離する。この金属石鹸ケーキは、不純物量を低下させるために、温水などで充分に洗浄した後、乾燥処理する事により、金属石鹸微粒子が得られる。
この金属石鹸ケーキの乾燥処理は、得られる金属石鹸微粒子の結晶転移開始温度以下好ましくは該結晶転移開始温度より5℃以上低い温度で行う。具体的な乾燥温度は、得られる金属石鹸の種類により異なるが、例えばジンクステアレートの場合100℃以下である。金属石鹸の結晶転移開始温度よりも高い温度で乾燥処理すると、微細粒子同士の凝集が起こり、平均粒子径が大きくなるおそれがある。
金属石鹸ケーキの乾燥処理は、常圧で行ってもよいが、効率的に乾燥するために、場合により、減圧乾燥や真空乾燥を行ってもよく、あるいは低沸点溶剤などで金属石鹸ケーキを洗浄処理した後、得られた金属石鹸ケーキを乾燥してもよい。この際用いられる低沸点溶剤としては、金属石鹸から水を効率よく除去しうるものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、アセトン及び塩化メチレンなどが挙げられる。
【0020】
このようにして、平均粒径が4μm以下であり、かつ、10μmよりも大きな粒径の粒子の全体に対する含有量が4重量%以下である事を特徴とする金属石鹸微粒子であり、さらに、RC −RA が3μm以下、及び/又はRD −RB が6μm以下の金属石鹸微粒子を容易に製造する事ができる。本発明により得られる金属石鹸は、板状、鱗片状、棒状、針状、塊状あるいは球状などの粒子形状を有し、さらにそれらの層状あるいは樹枝状の2次凝集物、又は無定型の2次凝集物として得られる。
なおここで得られる金属石鹸微粒子の平均粒径や粒径は、乾燥処理後に測定したものであり、粉砕や分級を行っていないものである。
【0021】
次に、該金属石鹸を電子写真複写機用トナー組成物(現像剤)に使用する場合について詳細に説明する。
本発明の金属石鹸微粒子をトナー組成物に含有させて本発明のトナー組成物を調製するにあたって、特にそ の方法は限定しないが、通常トナー組成物の製造において用いられている添加剤の含有方法を適用して良い。例えば、トナー粒子作成前又は作成中に金属石鹸を添加するか、又はトナー粒子を作成した後に、金属石鹸をブレンドするなどの方法を用いることが出来る。
本発明においてトナーに金属石鹸を添加して使用する際、トナーに対する添加量は特に規定しないが、一般的に使用される金属石鹸の添加量の範囲で選定すればよい。具体的にはトナー用樹脂に対する添加率として0.05〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%、最も好ましくは2〜30重量%である。2種類以上の金属石鹸を併用して使用する場合は、2種類以上の金属石鹸が全体で上述の範囲となるようにする。
【0022】
トナーの現像方法は、乾式及び湿式のいずれでも良い。さらに乾式現像方式の場合は、所請2成分系現像剤を用いる方式、磁性1成分系現像剤を用いる方式、非磁性1成分系現像剤を用いる方式など、既知の任意の乾式現像方式で良い。
トナー用樹脂は、特に限定されないが、一般的に150℃〜200℃程度の軟化点を有するものが用いられ、具体的には、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及びポリエステル樹脂などの単体樹脂、及びそれらの混合樹脂などが挙げられる。
【0023】
トナー用樹脂に添加される金属石鹸以外の添加剤としては、一般的に用いられるものが使用できる。例えばパラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等に代表される石油系などの長鎖炭化水素類、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール及びベヘニルアルコール等に代表される高級アルコール類、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸及びセラコレイン酸等に代表される脂肪酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸などの二塩基酸の亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カドミウム塩あるいはバリウム塩、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、メチレンビスステアロアミド及びエチレンビスステアロアミド等に代表される高級脂肪酸アミド類、カルナバワックス、ミツワックス、モンタンワックス、ライスワックス及びキャンデリアワックスなど植物、動物及び鉱物ロウに代表される長鎖脂肪酸とアルコールとのエステルからなる天然ロウ類、流動又は固形のポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスや、シリコーンワニス、固形シリコンワックス、アミドワックスなどのワックス、グリセリンステアレート、グリセリンリシノレート、グリセリンベヘネート、ソルビタンステアレート、プロピレングリコールステアレート、ペンタエリスリトールステアレート、及びジペンタエリスリトールステアレート等に代表される多価アルコールエステル、マレイン酸エチルエステル、マレイン酸ブチルエステル、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、パルミチン酸セチルエステル、モンタン酸エチレングリコールエステル、ミリスチン酸ミリスチルエステル、ステアリン酸ステアリルエステル及びベヘニン酸ベヘニルエステル等に代表される脂肪酸エステル、モンタン酸エステルのカルシウム部分ケン化物等に代表される部分ケン化脂肪酸エステル、脂肪族フロロカーボン、含フッ素系界面活性剤、四フッ化エチレン樹脂、酸化セリウム及び炭化ケイ素などの研磨剤、コロイダルシリカ、酸化アルミニウムなどの流動性付与剤、ケーキング防止剤、カーボンブラック及び酸化錫などの導電性付与剤などが挙げられる。
【0024】
本発明においてトナーに金属石鹸を添加して使用する際、使用するトナーはモノクロトナー又ははカラートナーのいずれでもよく、トナーの使用用途に応じて着色剤を使用してよい。トナーに用いられる着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料のすべてが適用される。
例えば黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト及びマグネタイトなどが挙げられる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロ一、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエロ一GR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエロ一NCG及びタートラジンレーキなどが挙げられる。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジRK及びインダンスレンブリリアントオレンジGKなどが拳げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB及びアリザリンレーキなどが拳げられる。青色顔料としては、紺青、コバルトブル一、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー一部分塩素化合物、ファーストスカイブルー及びインダンスレンブルーBCなどが挙げられる。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB及びメチルバイオレットレーキなどが挙げられる。緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ及びファイナルイエローグリーンGなどが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白及び硫化亜鉛などが挙げられる。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク及びアルミナホワイトなどが挙げられる。
また、染料としては、塩基性、酸性、分散及び直接染料などの各種染料、例えばニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー及びウルトラマリンブルーなどが挙げられる。
【0025】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。これらの着色剤は、色相環、彩度、明度、耐侯性、OHP透明性、及びトナ一組成物中への分散性の点から選択される。これらの着色剤の添加量は、トナー用樹脂100重量部に対して通常は1〜20重量の範囲で選定される。黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なりトナー用樹脂100重量部に対し通常は30〜150重量部の範囲で添加される。また、本発明の電子写真複写機用トナー組成物を透光性カラートナー組成物として用いる場合の着色剤としては、以下に示すような、各種,各色の顔料及び染料も使用できる。
例えば黄色顔科としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザイエロー10G)、C.I.11660(ハンザイエロー5G)、C.I.11670(ハンザイエロ一3G)、C.I.11680(ハンザイエローG)、C.I.11730(ハンザイエローGR)、C.I.11735(ハンザイエローA)、C.I.117408(ハンザイエローRN)、C.I.12710(ハンザイエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンイエロ一)、C.I.21095(ベンジジンイエローG)、C.I.21100(ベンジジンイエローGR)、C.I.20040(パーマネントイエローNCG)、C.l.21220(バルカンファストイエロー5)及びC.I.21135(バルカンファストイエローR)などが挙げられる。赤色顔料としては、C.1.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザイエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.1.12315(ブリリアントファストスカーレッド)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)及びC.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などが挙げられる。青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)及びC.I.74180(ファーストスカイブルー)などが挙げられる。
【0026】
さらに、本発明のトナー組成物において、2成分系現像剤として用いる場合には、キャリア粉と混合して用いることが出来る。この場合、キャリアとしては公知のものがすべて使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉及びニッケル粉のような磁性を有する粉体、ガラスビーズなど、及びこれらの表面を樹脂などで処理したものが挙げられる。
また、本発明のトナー組成物には、磁性材料を含有させた磁性トナーも使用できる。磁性トナー中に含有される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト及びフェライトなどの酸化鉄、コバルト、ニッケル及び鉄のような金属あるいはこれら金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン及びバナジウムのような金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
【0027】
次に、該金属石鹸を電子複写機等の画像記録装置用クリーニング助剤に使用する場合について詳細に説明する。
本発明におけるクリーニング助剤は、すくなくとも前記金属石鹸を含有している。すなわち、前記金属石鹸のみをクリーニング助剤として使用してもよいし、前記金属石鹸と他の一般的に使用されるクリーニング助剤と併用して使用してもよい。例えば、テフロン、メチルメタアクリレート、シリカ、四フッ化ポリエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、硫化モリブテン、黒鉛、窒化ホウ素、酸化セリウム、酸化第2鉄又はアルミナ等の粉末と、前記金属石鹸とを併用して用いることができる。他の一般的に使用されるクリーニング助剤と、前記金属石鹸とを併用して用いる場合、金属石鹸のクリーニング助剤の全体量に対する添加率は特に規定しないが、一般的に使用される金属石鹸の添加量を用いて良い。具体的には、クリーニング助剤全体に対して金属石鹸を1〜80重量%の割合で選定すればよい
本発明におけるクリーニング助剤を像担持体表面に塗布する場合、像担持体表面に塗布する装置を設ける場所は、特に限定されない。例えば図6に示す画像形成装置の概略例において、帯電装置2と現像装置3の間 a、現像装置3と転写装置4の間 b、転写装置4とクリーニング装置5の間 c、及びクリーニング装置5と帯電装置2の間 dのいずれでもよく、また、帯電装置2、現像装置3、転写装置4あるいはクリーニング装置5に、クリーニング助剤を像担持体1の表面に塗布する機能を付与してもよい。例えば帯電装置2の帯電ローラー8の表面に固体状のクリーニング助剤をコーティングして像担持体1を帯電ローラー8で摺擦する方法、現像装置3の現像ローラー9に固体状のクリーニング助剤をコーティングして像担持体1を現像ローラー9で摺擦する方法、クリーニング装置5のファーブラシ11又はブレード12に粉体状又は分散体状のクリーニング助剤をコーティングして像担持体1をファーブラシ11又はブレード12で摺擦する方法、あるいはブレード12の像担持体1表面を摺擦する部分にブロック状のクリーニング助剤を設置し、像担持体1を前記ブレード12にて摺擦する方法などが挙げられる。これらの中で特にクリーニング装置5と現像装置3との間に本発明のクリーニング助剤を塗布する装置を設置することが好ましい。また、像担持体表面を帯電ブラシなどで摺擦する帯電方法を用いている場合は、前記帯電ブラシの下流と現像装置3との間にクリーニング助剤を塗布する装置を設けることが好ましい。また、像担持体表面に塗布する装置を複数の場所に設けてもよい。
【0028】
本発明において用いることの出来る装置及び現像剤は、特に制限はなく、乾式あるいは湿式の、2成分系現像剤、磁性1成分系現像剤、あるいは非磁性1成分系現像剤などの既知の現像剤を用いた、モノクロ画像形成装置及びカラー画像形成装置のいずれでもよく、例えば特開昭60−165680号公報、特開昭60−225870号公報、特開昭61−160761号公報、特開昭64−13558号公報、特開平3−269478号公報、特開平4−276764号公報、特開平5−119676号公報、特開平5−35155号公報、特開平7−160165号公報、特開平7−56390号公報、特開平7−180860号公報、特開平7−271262号公報、特開平8−137354号公報及び特開平8−297376号公報などに記載される、装置概念図及び実施例に使用される画像形成装置、及び現像剤を併用して用いることが出来る。
本発明におけるクリーニング助剤を像担持体表面に塗布する場合、クリーニング助剤の形状は特に限定しないが、例えば、固体状、ワックス状又は粉体を固めたブロック状、粉体、あるいは溶剤分散体などが挙げられる。クリーニング助剤の形状が固体状あるいはブロック状である場合、薄片状、板状あるいはロール状などに成形し、複写機本体に固定された支持部材により支持して、先端が像支持体を摺擦するように配置される。また、クリーニング助剤の形状が粉体又は溶剤分散体である場合、複写機本体に固定された支持部材により支持された塗布装置により像担持体表面に均一に塗布する。塗布装置としては特に限定しないが、例えば、スポンジロール、パッド、ロール状ブラシ、刷毛ブラシ及びゴムロールなどの装置などが挙げられる。
本発明において使用されるクリーニング手段は、特に限定しないが、一般的に使用されている ブレード、ファーブラシ、磁気ブラシあるいはウェブ等により像担持体を摺擦して残留トナー組成物を清掃する方法を用いることが出来る。像担持体摺擦の方向は、像担持体表面の移動方向と平行的であっても良いし、上記移動方向と交わる方向でも良い。
【0029】
像担持体表面へのトナー像形成手段としては、特に限定しないが、例えばカスケード現像法、磁気ブラシ現像法、交番電圧印加下に現像する非接触現像法、及び粉霧現像法などが挙げられる。
トナー組成物より像担持体に作成された可視像を、像担持体上から記録媒体上に転写したのち、その記録媒体にトナー組成物を定着する方法としては、従来公知の加熱定着方法を用いることが出来る。例えば、オープン式の定着方法、フラッシュ式の定着方法、フラッシュ定着のような非接触式の加熱定着方法又は弾性体や剛体の接触ローラーのような加熱及び加圧定着方式、また、これらを組み合わせたような定着方式である。加熱温度は、定着スピードや紙質に応じて選択されるが、本発明組成物を用いた場合、従来のトナー組成物に比べて低いエネルギーで定着が可能であり、かつ、接触式の定着装置を用いた場合も非オフセット性が良好であり、かつ接触式の定着装置を形成する材質の選択性も広い。
本発明において像担持体に使用される像感光体は、一般的に用いられるものが充当できる。例えば、酸化亜鉛又は硫化カドミウムのバインダータイプ感光体、セレン系感光体、アモルファスシリコン系感光体、有機感光体などの光導電性半導体を用いた感光体又は該感光体上に絶縁層を設けたPIP方式感光体などがある。
【0030】
また、本発明のクリーニング助剤は、像担持体が誘電体からなり、文字電極又は針電極などにより像様帯電される形式の静電記録装置及び像支持体として磁性体粉を結着剤樹脂中に分散した感磁性体を用い、該感磁性体に磁気信号を付与して磁気潜像を形成し、該潜像を磁性現像剤により現像する形式の磁気記録装置にも適用される。
本発明のクリーニング助剤は、該電子複写機用トナー組成物6と併用して用いる事が出来る。特にその含有方法は限定しないが、通常用いられている添加剤の含有方法を適用して良い。例えば、トナー粒子作成前又は作成中にクリーニング助剤を添加するか、又はトナー粒子を作成した後に、クリーニング助剤をブレンドするなどの方法を用いることが出来る。上記トナー組成物は本発明に用いられる他のクリーニング助剤塗布装置と併用して用いることが出来る。本発明に使用されるクリーニング助剤をトナーに添加して使用する際、トナーに対する添加量は特に規定しないが、一般的に使用されるクリーニング助剤の添加量を用いて良い。具体的にはトナー用樹脂に対する添加率として2〜50重量%である。
トナー像の現像方法は、乾式、湿式のいずれでも良い。さらに乾式現像方式の場合は、所請2成分系現像剤を用いる方式、磁性1成分系現像剤を用いる方式、非磁性1成分系現像剤を用いる方式など、既知の任意の乾式現像方式で良い。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
実施例1〜11及び比較例1〜3
第1表に示す原料1及び原料2をそれぞれ水に溶解し、(a)成分及び(b)成分を調製した。(a)成分及び(b)成分における原料1及び原料2の濃度を第2表に示す。さらに、金属石鹸スラリー量が500gとなるように、上記(a)成分及び(b)成分を、下記の混合方法A又は混合方法Bにより混合した。この混合時の温度、混合方法及び(b)成分中の無機金属塩に対する(a)成分中の脂肪酸塩の当量比(a/b)を第2表に示す。
<混合方法A>
直径6センチのタービン羽根を有する攪拌装置付きの2リットルの受け容器を用意し、タービン羽根を350rpmで回転させた。この受け容器に、第2表に示す液温に調整した(a)成分及び(b)成分を、別方向から同時に投入した。なお、全量仕込み終了時間は10秒以内とした。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結させた。
次に、このようにして得られた金属石鹸スラリーを濾過し、得られた金属石鹸ケーキを2回水洗し、続いて第2表に示す溶媒を用いて洗浄した。得られた洗浄後の金属石鹸ケーキを、第2表に示す乾燥条件にて乾燥し、金属石鹸微粒子を得た。さらに金属石鹸微粒子の結晶転移開始温度を第2表に示す。
<混合方法B>
定量ポンプにて(a)成分及び(b)成分を別々に供給混合可能なパイプラインホモミクサー、及び直径6cmのタービン羽根を有する攪拌装置付きの2リットルの受け容器を用意し、タービン羽根を350rpmで回転させた。第2表に示す液温に調整した(a)成分及び(b)成分をパイプラインホモミクサー内に別々に供給し、パイプラインホモミクサーから排出された混合溶液を受け容器に投入した。各溶液の流量は各溶液が同時に送液終了するように定量ポンプにて調整した。全量混合終了時間は10分以内とした。全量仕込み終了後、反応時の温度に保持したまま10分間熟成して反応を終結させた。
次に、このようにして得られた金属石鹸スラリーを濾過し、得られた金属石鹸ケーキを2回水洗し、続いて第2表に示す溶媒を用いて洗浄した。得られた洗浄後の金属石鹸ケーキを、第2表に示す乾燥条件にて乾燥し、金属石鹸微粒子を得た。さらに金属石鹸微粒子の結晶転移開始温度を第2表に示す。
【0032】
比較例4〜5
第1表に示す原料1及び原料2を用いて、(a)成分及び(b)成分を調製した。(a)成分及び(b)成分における原料1及び原料2の濃度を第2表に示す。さらに、上記(a)成分及び(b)成分を用いて、下記の複分解法及び溶融法により金属石鹸微粒子を得た。この混合時の温度、混合方法及び(b)成分中の無機金属塩に対する( a) 成分中の脂肪酸塩の当量比(a/b)を第2表に示す。
<比較例4:複分解法>
直径6センチのタービン羽根を有する攪拌装置付きの2リットルの受け容器を用意し、タービン羽根を350rpmで回転させた。この受け容器に第2表に示す(a)成分を投入し、第2表に示す液温に調整した。次に、この受け容器に第2表に示す(b)成分を、30分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結させた。
次に、このようにして得られた金属石鹸スラリーを濾過し、得られた金属石鹸ケーキを2回水洗し、続いて第2表に示す溶媒を用いて洗浄した。得られた洗浄後の金属石鹸ケーキを、第2表に示す乾燥条件にて乾燥し、金属石鹸微粒子を得た。さらに金属石鹸微粒子の結晶転移開始温度を第2表に示す。
<比較例5:溶融法>
高粘性物質を混錬可能な攪拌装置が付いた1リットルの密閉可能な反応容器を用意し、第2表に示す(a)成分を500gを反応容器に投入した。続いて攪拌装置を50rpmで回転させ、第2表に示す液温に調整した。次に、この反応容器に第2表に示す(b)成分を68g、及び(a)成分に対して2重量%の水を投入し、反応容器を密閉した。攪拌装置を回転させながら180分間反応を行い反応を終結させた。
次に、このようにして得られた金属石鹸粉体をミキサーにて十分に粉砕し、得られた金属石鹸粉体を予備寸法45μmのJIS標準ふるいを用いて分級を行い、金属石鹸微粒子を得た。
【0033】
【表1】
Figure 0003906580
【0034】
【表2】
Figure 0003906580
【0035】
【表3】
Figure 0003906580
【0036】
<電子顕微鏡を用いた粒子形状の測定>
このようにして得られた金属石鹸微粒子の粒子状態を視覚的に確認するため、各金属石鹸微粒子の電子顕微鏡写真を撮影した。電子顕微鏡として、日立製Scanning Electron Microscope(SEM)S−2100Aを用いた。実施例3にて作成した金属石鹸微粒子の2000倍、5000倍及び15000倍拡大時の撮影結果をそれぞれ、図7、図8及び図9に示す。また、比較例4にて作成した金属石鹸微粒子の2000倍拡大時の撮影結果を図10に示す。
<粒径分布の測定>
このようにして得られた金属石鹸微粒子0.5gに10mlのエタノールを加え、日本精機株 式会社製の超音波分散器を用いて5分間超音波分散を行った。次に、測定溶媒としてエタノールを循環している、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置(SPA型)に、得られた金属石鹸分散液を、DV値が0.6〜0.8になるまで添加し、この状態における各サンプルの粒度分布を測定した。
第3表−1に本実施例及び比較例により作成された各スラリー中の金属石鹸含有率、収集サンプルの収量(g)及び収率(%)を示す。第3表−2に各収集サンプルの平均粒径(μm)、RA (μm)、RB (μm)、RC (μm)、RD (μm)、RC −RA (μm)、RD −RB (μm)、及び10μmよりも大きな粒径を有する粒子の全体に対する含有率(%)を示す。第3表−3に各収集サンプルの0.34μm、0.66μm、1.01μm、3.73μm、5.27μm及び10.54μmにおける各粒子量の累積(%)を示す。
【0037】
【表4】
Figure 0003906580
【0038】
【表5】
Figure 0003906580
【0039】
【表6】
Figure 0003906580
【0040】
粒度分布測定の結果から、実施例1〜10は、比較例1〜5と比較して明らかに収率が高い上、平均粒径が低く、かつ粒径分布が狭いことが確認できる。また、電子顕微鏡の撮影結果から明らかなように、従来の金属石鹸(図10)と比較して、本発明の金属石鹸(図7、図8及び図9)は明らかに大粒径粒子が存在せず、粒子が非常に微細であり、かつ粒径分布が均一であることがわかる。
次に、該金属石鹸微粒子を電子複写機用トナーに使用する場合の実施例を示す。本発明の実施例、及び比較例に使用されるトナーの製造例を以下に挙げる。
<製造例1>
ポリエステル樹脂(軟化点85℃)95重量部、カルナウバワックス5重量部及びカーボンブラック8部にグロシン染料3重量部を溶融混錬し、冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、つづいてエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉砕品を分級して、平均粒径9μmとした。本粒子100重量部に対して、酸化チタン微粉末(平均粒径0.02μm)1重量部を添加混合して1成分系磁性トナー粒子を得た。
<製造例2>
温度計、攪拌機を備えたオートクレーブ中に、ジメチルテレフタレート94重量部、ジメチルイソフタレート95重量部、エチレングリコール89重量部、ネオペンチルグリコール80重量部及び酢酸亜鉛0.1重量部を仕込み、120℃〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応を行った。次いで5- ナトリウムスルホイソフタル酸8.4重量部を加え、220〜230℃で60分間反応を続け、更に250℃まで昇温した後、系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を続けた結果、共重合ポリエステル乳化分散液を得た。
上記乳化ポリエステル分散液1リットルにホホバワックスのエマルジョン(固形分30%)を30ml加えたものを40℃に加熱したMgSO4 (0.2%)水溶液2リットルに十分撹件しながら約30分間で滴下し造粒操作を行った。さらに30分間この温度で保温し、常温まで冷却した。得られた離型剤内包ポリエステル樹脂粒子の水系分散体を100g、C.I.ディスパーズ・イエロー64を3g、各々ステンレススチール製ポットに仕込み、常温から3℃/分の昇温速度にて130℃まで昇温し、130℃にて60分間保持した後、常温まで冷却した。得られた染色粒子を濾過、洗浄し、スプレードライヤーにて乾燥し、イエローに染着された樹脂粒子を得た。以下、それぞれマゼンタとしてC.I.ディスパーズ・レッド92、シアンとしてC.I.ディスパーズ・ブルー60を用いて同様にそれぞれマゼンタ、シアンに染着された樹脂粒子を得た。得られた染色樹脂粒子100gに対し、シリカを1g混合し、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーを得た。得られたイエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー各5gに、シリコーンコートしたフェライトビーズ100gを混合し、2成分系トナーとした。
【0041】
実施例12〜16及び比較例6〜13
製造例1及び製造例2をおいて作成したトナーに、本発明の金属石鹸を添加し、ミキサーにて均一に混合した。これらのトナー組成物を複写機内に充填して画像出しを行い、画像出力時の印刷物の状態について評価した。次に、複写機内にランニングテスト時の印刷安定性、及びランニングテスト終了時の印刷物の状態、複写機内の像担持体表面の摺擦状態、像担持体のクリーニング状態について評価した。さらに、評価に用いた各トナー組成物における高温保存時のブロッキング性について評価した。
実施例12
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が1.3μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が1.51μm、及びRD −RB が2.21μmであるジンクステアレートを1重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。さらに、20000枚のランニング後においても、像担持体表面が損なわれておらず、かつ良好なクリーニング状態が維持された。また、前記トナー組成物を50℃条件にて2ヶ月間放置したところ、トナー組成物のブロッキングは確認されなかった。その後このトナー組成物の画像出しを行ったところ、放置前と同様の、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。
実施例13
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が1.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が1.73μm、及びRD −RB が2.38μmであるカルシウムミリステート/カルシウムステアレート(1:1)混合品を7重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。さらに、20000枚のランニング後においても、像担持体表面が損なわれておらず、かつ良好なクリーニング状態が維持された。また、前記トナー組成物を55℃条件にて1ヶ月間放置したところ、トナー組成物のブロッキングは確認されなかった。その後このトナー組成物の画像出しを行ったところ、放置前と同様の、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。
【0042】
実施例14
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が2.0μmであり、粒径10μm以上の粒子の含有率が1%の、RC −RA が1.50μm、及びRD −RB が2.18μmであるバリウムステアレート/ジンクステアレート(3:1)混合品を0.5重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。さらに、20000枚のランニング後においても、像担持体表面が損なわれておらず、かつ良好なクリーニング状態が維持された。前記トナー組成物を60℃条件にて1ヶ月間放置したところ、トナーのブロッキングは確認されなかった。その後このトナー組成物の画像出しを行ったところ、放置前と同様の、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。
実施例15
製造例2において作成した各カラートナー100重量部に、平均粒径が0.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が0.45μm、及びRD −RB が2.51μmであるマグネシウムステアレート/カルシウムベヘネート(2:1)混合品を1重量部添加した。市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に前記トナー組成物を装着し、画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。さらに、20000枚のランニング後においても、像担持体表面が損なわれておらず、かつ良好なクリーニング状態が維持された。前記トナー組成物を50℃条件にて1ヶ月間放置したところ、トナー組成物のブロッキングは確認されなかった。その後このトナー組成物の画像出しを行ったところ、放置前と同様の、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。
【0043】
実施例16
製造例2において作成した各カラートナー100重量部に、平均粒径が1.7μmであり、粒径10μm以上の粒子の含有率が1重量%の、RC −RA が1.66μm、及びRD −RB が1.87μmであるジンクベヘネートを10重量部添加した。市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に前記トナー組成物を装着し、画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。さらに、20000枚のランニング後においても、像担持体表面が損なわれておらず、かつ良好なクリーニング状態が維持された。前記トナー組成物を50℃条件にて1ヶ月間放置したところ、トナー組成物のブロッキングは確認されなかった。その後このトナー組成物の画像出しを行ったところ、放置前と同様の、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。
比較例6
製造例1において作成したトナーを市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、1000枚ごろからフィルミングが生じ、5000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
【0044】
比較例7
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が4.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を10重量%含有する、RC −RA が3.17μm、及びRD −RB が12.99μmであるジンクステアレートを1重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、15000枚ごろから地肌汚れが生じ、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例8
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が5.1μmであり、粒径10μm以上の粒子を12重量%含有する、RC −RA が3.67μm、及びRD −RB が13.83μmであるカルシウムミリステート/ジンクベヘネート(1:1)混合品を3重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、12000枚ごろから地肌汚れが生じ、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
【0045】
比較例9
製造例1において作成したトナー100重量部に、平均粒径が13.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を61重量%含有する、RC −RA が9.93μm、及びRD −RB が24.35μmであるカルシウムステアレートを15重量部添加した。市販のモノクロ複写機(キャノン製LBP404G)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、6000枚ごろから地肌汚れが生じ、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例10
製造例2において作成したトナーを市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、1000枚ごろからフィルミングが生じ、6000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好なクリーニング状態が維持されていなかった。また前記トナー組成物を60℃条件にて2週間放置したところ、トナー組成物の一部にブロッキングが生じた。
比較例11
製造例2において作成した各カラートナー100重量部に、平均粒径が7.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を21重量%含有する、RC −RA が5.52μm、及びRD −RB が15.36μmであるジンクステアレートを5重量部添加した。市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、8000枚ごろからフィルミングが生じ、11000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。また前記トナー組成物を60℃条件にて2週間放置したところ、トナー組成物の一部にブロッキングが生じた。
【0046】
比較例12
製造例2において作成した各カラートナー100重量部に、平均粒径が5.3μmであり、粒径10μm以上の粒子を11重量%含有する、RC −RA が3.51μm、及びRD −RB が13.01μmであるニッケルステアレート/ジンクオレート(2:1)混合品を1重量部添加した。市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、7500枚ごろからフィルミングが生じ、9500枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。また前記トナー組成物を60℃条件にて2週間放置したところ、トナー組成物の一部にブロッキングが生じた。
比較例13
製造例2において作成した各カラートナー100重量部に、平均粒径が8.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を27重量%含有する、RC −RA が6.12μm、及びRD −RB が18.41μmであるバリウムステアレート/カルシウムベヘネート(4:1)混合品を0.5重量部添加した。市販のカラー複写機(HITACH HT−4551−11)に前記トナー組成物を装着し、20000枚のランニングテストを行ったところ、5000枚ごろからフィルミングが生じ、2000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。また前記トナー組成物を60℃条件にて2週間放置したところ、トナー組成物の一部にブロッキングが生じた。
【0047】
実施例17〜22及び比較例14〜21
次に、該金属石鹸微粒子を電子複写機用クリーニング助剤に使用する場合の実施例を示す。また、実施例に用いる装置としては、特開平7−160165に記載される、図5に示した概念図に基づく画像形成装置を採用した。
実施例17
平均粒径が1.3μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が1.51μm、及びRD −RB が2.21μmであるジンクステアレートの粉体を、ロール状ブラシを用いて、領域aから、回転させた像担持体の表面に塗布しながら、特開平4−127177に記載される非磁性一成分系現像剤(以下トナーA)を用いて画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
実施例18
平均粒径が1.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が1.73μm、及びRD −RB が2.38μmであるカルシウムミリステートとカルシウムステアレートの重量比1:1混合物を、加圧圧縮により板状に加工したものを、領域dから、回転させた像担持体1表面を摺擦するように固定し、トナーAを用いて画像出しを行った。その結果、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
【0048】
実施例19
平均粒径が2.1μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が1.52μm、及びRD −RB が2.19μmであるカルシウムオクタノレートとカルシウムステアレートの重量比1:10混合物を、加圧圧縮によりロール状に加工した後、領域dから、回転させた像担持体1表面を摺擦するように固定し、トナーAを用いて画像出しを行った。その結果、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
実施例20
平均粒径が0.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を含有しない、RC −RA が0.45μm、及びRD −RB が2.51μmであるバリウムラウレートとジンクステアレートの重量比1:5混合物を、帯電ロール8表面に200μm厚でコーティングし、帯電ロール8から回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、トナーAを用いて画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
【0049】
実施例21
平均粒径が1.7μmであり、粒径10μm以上の粒子を1%含有する、RC −RA が1.66μm、及びRD −RB が1.87μmであるマグネシウムパルミテートとカルシウムベヘネートの重量比1:3混合物、四フッ化ポリエチレン樹脂、アルミナをそれぞれ重量比6:2:1で混合し、クリーニング助剤を作成した。このクリーニング助剤をクリーニングブレード12に表面に300μm厚でコーティングし、クリーニングブレード12から回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、特開平4−137372で提示されている平均粒径6μmの分散重合法現像剤(以下トナーB)を用いて画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
実施例22
平均粒径が2.3μmであり、粒径10μm以上の粒子を1%含有する、RC −RA が1.80μm、及びRD −RB が2.31μmであるジンクベヘネート、、シリカ、テフロンとを重量比3:1:1で混合しクリーニング助剤を作成した。このクリーニング助剤を、スポンジロールを用いて、領域aから、回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、トナーBを用いて画像出しを行ったところ、高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像がえられた。また、20000枚のランニングテストを行ったところ、20000枚目の印刷物においても高画像濃度で地肌汚れのない、鮮明な画像が得られた。また、ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、良好な像担持体表面を維持しており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていた。
【0050】
比較例14
本発明に使用されるクリーニング助剤を使用せずに、図6に示す画像形成装置、及び、トナーAを使用して、20000枚のランニングテストを行ったところ、1000枚ごろからフィルミングが生じ、2000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例15
平均粒径が4.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を10重量%含有する、RC −RA が3.17μm、及びRD −RB が12.99μmであるジンクステアレートの粉体を、ロール状ブラシを用いて、領域aから、回転させた像担持体の表面に塗布しながら、トナーAを使用して、20000枚のランニングテストを行ったところ、15000枚ごろからフィルミングが生じ、17000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例16
平均粒径5.1μmであり、粒径10μm以上の粒子を12重量%含有する、RC −RA が3.67μm、及びRD −RB が13.83μmであるカルシウムミリステートとジンクベヘネートの重量比1:1混合物を、加圧圧縮により板状に加工したものを、領域dから、回転させた像担持体1表面を摺擦するように固定し、トナーAを使用して20000枚のランニングテストを行ったところ、12000枚ごろからフィルミングが生じ、15000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
【0051】
比較例17
平均粒径が13.8μmであり、粒径10μm以上の粒子を61重量%含有する、RC −RA が9.93μm、及びRD −RB が24.35μmであるカルシウムステアレートとジンクオレートの重量比3:1混合物を、加圧圧縮によりにロール状に加工したものを、領域dから、回転させた像担持体1表面を摺擦するように固定し、トナーAを使用して20000枚のランニングテストを行ったところ、15000枚ごろからフィルミングが生じ、17000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例18
平均粒径が7.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を21重量%含有する、RC −RA が5.52μm、及びRD −RB が15.36μmであるカルシウムブタレートとジンクオレートの重量比1:6混合物を、帯電ロール8表面に300μm厚でコーティングし、帯電ロール8から回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、トナーB を用いて20000枚のランニングテストを行ったところ、10000枚ごろからフィルミングが生じ、12000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例19
平均粒径が5.3μmであり、粒径10μm以上の粒子を11重量%含有する、RC −RA が3.51μm、及びRD −RB が13.01μmであるカルシウムステアレート、及びアルミナを重量比6:1で混合し、クリーニング助剤を作成した。このクリーニング助剤をクリーニングブレード12に表面に100μm厚でコーティングし、クリーニングブレード12から回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、トナーBを用いて20000枚のランニングテストを行ったところ、7000枚ごろからフィルミングが生じ、10000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
【0052】
比較例20
平均粒径が8.5μmであり、粒径10μm以上の粒子を27重量%含有する、RC −RA が6.12μm、及びRD −RB が18.41μmであるジンクステアレート、及びテフロンを重量比3:1で混合し、クリーニング助剤を作成した。このクリーニング助剤を、スポンジロールを用いて、領域aから、回転させた像担持体の表面へクリーニング助剤を塗布しながら、トナーBを用いて20000枚のランニングテストを行ったところ、7000枚ごろからフィルミングが生じ、9000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
比較例21
平均粒径が4.9μmであり、粒径10μm以上の粒子を12重量%含有する、RC −RA が3.31μm、及びRD −RB が13.51μmであるニッケルステアレートとジンクオレートの重量比2:1混合物を作成し、トナーBに0.7重量部外部添加し、トナーと共に現像装置3から回転させた像担持体の表面に塗布しながら20000枚のランニングテストを行ったところ、6500枚ごろからフィルミングが生じ、9000枚後には地肌汚れを起こし、画像濃度の薄い実用に適さない画像であった。ランニングテスト終了後において像担持体表面の状態を確認したところ、像担持体表面が損なわれており、かつ良好なクリーニング状態が維持されていなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明の著しく微細でかつ粒径分布の狭い金属石鹸微粒子は、例えば鋳物形状の複雑化に伴う金属粉末の流動性向上、コピー機などの電子印刷機の高解像度化に伴う現像用トナー粒子の微細化、塗装膜の極薄化に伴う塗料用添加剤の微細化、化粧品の延展性向上に伴う化粧品固形成分の微細化、及び塗装膜の極薄化に伴う塗料用添加剤の微細化などに極めて有用である。
本発明の製造方法により、著しく微細でかつ粒径分布の狭い金属石鹸微粒子を簡易に、効率よく製造する事ができる。
さらに、該金属石鹸を含有する電子複写機用トナーは、電子写真複写機内の像担持体表面を損なわず、トナーの耐ブロッキング性、トナーの流動性、トナーの像担持体からの脱離性を向上させ、かつ像担持体に対して十分な可視像を形成し、像担持体に付着したトナーのクリーニング性能を向上させることが出来る。
また、該金属石鹸を含有する電子複写機等の画像記録装置用クリーニング助剤を用いれば、特定の粒径を有する金属石鹸を像担持体に直接塗布するなどの方法を採用することにより、電子写真複写機内の像担持体表面を損なわず、かつトナーの像担持体からの脱離性を向上させ、像担持体に付着した残存トナーのクリーニング性能を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属石鹸(ジンクステアレート)の粒度分布及び粒度累積を示すグラフである。
【図2】 従来の金属石鹸ジンクステアレート)の粒度分布及び粒度累積を示すグラフである。
【図3】 ジンクステアレートの結晶転移開始温度を求めるための示差熱分析による熱吸収グラフである。
【図4】 カルシウムステアレートの結晶転移開始温度を求めるための示差熱分析による熱吸収グラフである。
【図5】 マグネシウムステアレートの結晶転移開始温度を求めるための示差熱分析による熱吸収グラフである。
【図6】 本発明のクリーニング助剤が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】 実施例3で作成した金属石鹸微粒子の2000倍のSEM写真である。
【図8】 実施例3で作成した金属石鹸微粒子の5000倍のSEM写真である。
【図9】 実施例3で作成した金属石鹸微粒子の15000倍のSEM写真である。
【図10】 比較例4で作成した金属石鹸微粒子の2000倍のSEM写真である。

Claims (13)

  1. 微粒子製造時において又は後処理することなく乾燥した後の平均粒径が4μm以下であり、かつ、10μmよりも大きな粒径の粒子の全体に対する含有量が4重量%以下であって、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で乾燥して製造されたことを特徴とする金属石鹸微粒子。
  2. 平均粒径が0.5μm〜2.5μmであり、かつ、6μmよりも大きな粒径の粒子の全体に対する含有量が5重量%以下であり、10μmよりも大きな粒径の粒子が実質上存在しないことを特徴とする請求項1記載の金属石鹸微粒子。
  3. 30%粒径RA と、70%粒径RC との差RC −RA が3μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属石鹸微粒子。
  4. 30%粒径RA と、70%粒径RC との差RC −RA が0.3μm〜2μmであることを特徴とする請求項3記載の金属石鹸微粒子。
  5. 50%粒径RB と、95%粒径RD との差RD −RB が6μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属石鹸微粒子。
  6. 50%粒径RB と、95%粒径RD との差RD −RB が1.5μm〜6μmであることを特徴とする請求項5記載の金属石鹸微粒子。
  7. 粒子が、(a)炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩0.001〜20重量%を含有する水溶液と、(b)無機金属塩0.001〜20重量%を含有する水溶液又は分散液とを、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で混合して製造されたものである請求項1記載の金属石鹸微粒子。
  8. 粒子が、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度より5℃以上低い温度において製造されたものである請求項記載の金属石鹸微粒子。
  9. (a)炭素数4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩0.001〜20重量%を含有する水溶液と、(b)無機金属塩0.001〜20重量%を含有する水溶液又は分散液とを、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で混合して金属石鹸スラリーを調製し、次いでこのスラリーを金属石鹸の結晶転移開始温度以下の温度で乾燥処理して請求項1〜8のいずれかに記載の金属石鹸微粒子を製造することを特徴とする金属石鹸微粒子の製造方法。
  10. (a)炭素数12〜22の脂肪酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩0.5〜15重量%を含有する水溶液と、(b)無機金属塩0.01〜10重量%を含有する水溶液又は分散液とを、生成する金属石鹸の結晶転移開始温度より5℃以上低い温度で混合して金属石鹸スラリーを調製し、次いでこのスラリーを金属石鹸の結晶転移開始温度より5℃以上低い温度で乾燥処理することにより得られる請求項9記載の製造方法。
  11. トナー及び請求項1〜8のいずれかに記載の金属石鹸微粒子を含有する電子写真複写機用トナー組成物。
  12. 金属石鹸微粒子の含有量がトナー用樹脂に対して0.05〜50重量%であることを特徴とする請求項11記載のトナー組成物。
  13. 請求項1〜6いずれかに記載の金属石鹸微粒子を含有する電子写真複写機用クリーニング助剤。
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