JP3898292B2 - シリコーン油剤、炭素繊維用プリカーサーおよびその製造方法 - Google Patents

シリコーン油剤、炭素繊維用プリカーサーおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、引張強度の優れた炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサー、および該プリカーサーを生産性よく製造するためのシリコーン油剤、および炭素繊維用プリカーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は他の繊維に比べて優れた比強度および比弾性率を有するため、その優れた機械的特性を利用して樹脂との複合材料用の補強繊維として工業的に広く利用されている。近年、炭素繊維複合材料の優位性はますます高まり、特にスポーツ、航空宇宙用途においてはこの炭素繊維複合材料に対する高性能化要求が強い。複合材料としての特性は炭素繊維そのものの特性に起因するところが大きく、この要求はとりもなおさず炭素繊維自身への高性能化要求である。
【0003】
このような高性能炭素繊維を製造するためには、特に破断の開始点となるような欠陥の生成を抑制することが必要である。特に、炭素繊維の破断は大部分表面から開始しており、単糸間接着やローラーとの接触などにより生成する表面欠陥の寄与が大きいことがわかる。
【0004】
それに対して従来、炭素繊維に気相処理、液相処理、電解処理など種々の後処理をほどこすことにより、表層をエッチングして表面欠陥を除去する技術等が提案された(たとえば、特開昭58−214527号公報、特開昭61−225330号公報)。
【0005】
しかし、上記技術によれば強度は向上するものの、操作、工程が煩雑になり、かつコストが上昇するという問題点を有していた。炭素繊維への高性能化要求は強いが、同時にコスト意識も強く、コストパフォーマンスの高い炭素繊維でないと市場に受け入れられないというのが現状である。
【0006】
また、特開昭63−165585号公報や、特開昭63−203878号公報には、異なる変性基を有するシリコーン油剤を組合せて付与することにより、油剤の樹脂化を促進して熱処理時の単糸間接着を抑制するという技術が開示されている。しかし、これらの技術によれば炭素繊維の強度は向上するものの、製糸工程の乾燥ドラム等への樹脂化した油剤の付着、堆積、すなわちガムアップの増加、それに伴う延伸性の低下等の問題が発生し、プロセス性、生産性の低下を余儀なくされるため、あるレベル以上に油剤の樹脂化を進行させることができない。また、これらの問題により、プリカーサーの品位が低下する等かえって炭素繊維の強度を低下させてしまうことすらある。
【0007】
油剤の乾燥ドラム等へのガムアップ抑制に関しては、樹脂化を遅延または阻害する物質を付与する技術が特開平2−291224号公報、特開平2−291225号公報、特開平2−291226号公報に開示されている。しかし、油剤の樹脂化を遅延または阻害することは、本来の油剤付与の目的、すなわち、熱処理時の単糸間接着を抑制するという観点からは好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、引張強度の高い炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサー、および該プリカーサーを生産性よく製造するためのシリコーン油剤、および炭素繊維用プリカーサーの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のシリコーン油剤は、上記課題を達成するため次の構成を有する。すなわち、
炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリコーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分Cを含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であることを特徴とする。
【0010】
成分A:アミノ変性シリコーン
成分B:エポキシ変性シリコーン
成分C:多塩基酸、多塩基酸に由来する塩、アミン類、塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩からなる群より選ばれる1成分または複数成分のゴム化促進成分
また、本発明のシリコーン油剤は、炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリコーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分C、成分Dを含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であることを特徴とする。
【0011】
成分A:アミノ変性シリコーン
成分B:エポキシ変性シリコーン
成分C:多塩基酸、多塩基酸に由来する塩、アミン類、塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩からなる群より選ばれる1成分または複数成分のゴム化促進成分
成分D:有機高分子またはシリコーン化合物からなる1種類または複数種類の微粒子
また、本発明の炭素繊維用プリカーサーは、上記したシリコーン油剤を繊維表層に有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の炭素繊維用プリカーサーの製造方法は、上記したシリコーン油剤を糸条に付与することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の炭素繊維の製造方法は、上記した製造方法によって得られた炭素繊維用プリカーサーを焼成することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、シリコーン油剤のゴム化を促進する成分を含有するシリコーン油剤を用いることにより、従来、問題となっていたガムアップによるプロセス性、生産性の低下を解決した上で、引張強度の高い炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサーを製造できる点に特徴がある。また、微粒子を含有したシリコーン油剤を用いると、強度向上効果は微粒子の効果と相まってより大きい。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明のシリコーン油剤は、2種以上のシリコーンを主成分とし、ゴム化促進成分、微粒子などから構成されたものであるが、乳化剤、酸化防止剤など他の成分を含んでもよい。
【0016】
また、形態としてはオイル状、溶液、エマルジョンなど、どの状態でもよいが、シリコーン油剤のプリカーサーへの均一付与という観点からは、エマルジョンが好ましく、中でも水分散とすることが取り扱い性の点からより好ましい。
【0017】
本発明におけるシリコーンは、基本骨格にシロキサン結合(−SiO−)を有するものであり、このケイ素原子に結合する基は、水素原子および/または炭素数1〜3のアルキル基やフェニル基、またはこれらのアルコキシ基などが挙げられる。これらの中で特にジメチルシロキサンが基本骨格として好ましい。
【0018】
また、たとえば幹部分がアクリル系ポリマーで枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマー(アクリル−シリコーン共重合体)のように、その一部のシリコーン部分が前記した要件を満たしているものであってもよい。また、上記基本骨格をもち、側鎖の一部が変性されたものであってもよい。
【0019】
本発明におけるシリコーン油剤は、シリコーン成分に対してアミノ変性シリコーン(成分A)およびエポキシ変性シリコーン(成分B)をそれぞれ5%以上含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であり、その重量比が0.33〜3.0であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましい。
【0020】
また、シリコーン油剤の樹脂化による炭素繊維の強度向上という観点からは、シリコーン成分に対するアミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンの合計含有率は30〜95%が好ましく、40〜80%がより好ましく、50〜75%がさらに好ましい。
【0021】
本発明において、シリコーン成分に対するある成分Eの含有率は次の式で定義される。
【0022】
(成分Eの重量/シリコーン成分の重量)×100
また、アミノ変性シリコーンの重量およびエポキシ変性シリコーンの重量は、シリコーンのみの重量であり、乳化剤の重量は含まれない。
【0023】
本発明におけるシリコーン成分は、シリコーン油剤を構成するもののうち、溶媒を除いた成分のことである。すなわち、オイル状の場合にはオイル中に含まれるすべての成分であり、溶液の場合には溶媒を除いたすべての成分であり、エマルジョンの場合には分散媒を除いたすべての成分である。ここで分散媒とは、シリコーン、微粒子を分散させている媒質のことであり、乳化剤は含まない。
【0024】
本発明のシリコーン油剤に用いるアミノ変性シリコーンとしては、モノアミン型でもポリアミン型でもよい。末端アミノ基を−NH2 と換算した変性量は0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。変性量が少ないとプリカーサーへの親和性が不足してくるし、多くなると耐熱性が低下してくる。また、25℃における動粘性率は250〜10000×10-62 /sであることが好ましく、500〜8000×10-62 /sがより好ましい。動粘性率が小さいと耐熱性が不足してくるし、大きくなると水中に分散させることが困難になってくる。
【0025】
本発明におけるエポキシ変性シリコーンとしては、プリカーサーへの親和性から1、2−エポキシシクロヘキシル基や1、2−エポキシシクロペンチル基のような脂環式エポキシ変性が好ましい。エポキシ基を−CHCH2 Oと換算した変性量は0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。変性量が少ないとプリカーサーへの親和性が不足してくるし、多くなると耐熱性が低下してくる。
【0026】
また、25℃における動粘性率は1000〜15000×10-62 /sであることが好ましく、2000〜12000×10-62 /sがより好ましい。動粘性率が小さいと耐熱性が不足してくると、大きくなると水中に分散させるのが困難になってくる。
【0027】
本発明のシリコーン油剤に用いる他のシリコーンとしては、変性されているものでも、全く変性されていないものでもよい。変性されているシリコーンを用いる場合、変性の種類はアルキレンオキサイド変性、カルボキシル変性、アルコール変性、メルカプト変性などいずれでもよいが、アルキレンオキサイド変性が好ましい。アルキレンオキサイド変性シリコーンの場合、エチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、あるいは両者で変性されているものが好ましい。これらのアルキレンオキサイドで変性することによって、シリコーン自身に親水性を付与し、自己乳化性を付与して界面活性剤のように働かせることができる。このため、水中での安定性や繊維表面への均一付着性などの好ましい特性が生じると考えられる。本発明のシリコーン油剤に、アルキレンオキサイド変性シリコーンを用いる場合、その含有量は、シリコーン成分に対して1〜50%が好ましく、3〜40%がより好ましく、5〜30%がさらに好ましい。
【0028】
アルキレンオキサイドのユニットとしては重合度が5〜25のものが好ましい。重合度が大きいと耐熱性が低下してくる。アルキレンオキサイド変性量は10〜80重量%であることが好ましく、20〜70重量%がより好ましい。変性量が小さいと先述の自己乳化性が不足してくるし、また、多くなると耐熱性が低下してくる。また、25℃における動粘性率は50〜3000×10-62 /sであることが好ましく、75〜2000×10-62 /sであることがより好ましい。動粘性率が小さいと耐熱性、自己乳化性が低下してくるし、また、大きいと親水性が不足してくる。
【0029】
変性されていないシリコーンとしては、ジメチルシリコーン、ジフェニルシリコーンなどが挙げられる。
【0030】
本発明におけるシリコーン油剤は、ゴム化を促進する成分を含む。本発明においてゴム化とは、シリコーン油剤の100〜300℃における架橋反応を指す。シリコーン油剤のゴム化の度合いであるゴム化率は、以下のようにして測定することができる。
【0031】
シリコーン成分が約3グラム含まれるように、シリコーン油剤を秤量し、予め秤量した重量W1 (g)、直径約60mm、深さ約20mmの円形のアルミ皿に入れる。これを、オーブンで空気中105℃×2時間熱処理し、続いて空気中130℃×2時間の熱処理をする。得られたゲル状物質をアルミ皿ごとオーブンから出し、デシケーター中で室温まで冷却したのち精秤し、得られた該ゲル状物質のアルミ皿こみの重量をW2 (g)とする。続いて該ゲル状物質を、ブフナーロート上においた濾紙に全量移し、クロロホルムを用いて濾過し、溶解部分と非溶解部分とに分離する。300mlのクロロホルムを少なくとも3回に分けて濾過を行い、濾過終了後、濾紙ごとオーブンで空気中60℃×1時間乾燥する。乾燥後、デシケーター中で室温まで冷却したのち精秤し、得られた非溶解部分の濾紙こみの重量をW3 (g)とする。使用する濾紙は、予めオーブンで空気中60℃×1hr乾燥後、デシケーター中で室温まで冷却したのち秤量しておく。濾紙の乾燥後の重量をW4 (g)とすると、ゴム化率は以下の式で表せる。
【0032】
ゴム化率(%)={(W2 −W1 )/(W3 −W4 )}×100
濾紙は、直径約110mmの円形で、JIS P 3801に規定される5種Aに相当する物を使用する。シリコーン油剤中のシリコーン成分の含有率が低い場合、100℃を超えない温度で熱処理し、濃縮してから上記測定に供するのが好ましい。
【0033】
本発明においてゴム化促進成分とは、上記ゴム化率を向上させうる成分のことであり、その向上幅が大きいほど、本発明における効果が大きくなるが、本発明におけるシリコーン油剤のゴム化率としては、10〜80%が好ましく、15〜70%がより好ましく、20〜60%がさらに好ましい。ゴム化率が10%を下回ると本発明の効果が得にくくなり、80%を超えるとプロセス性に悪影響を及ぼし、かえって強度を低下させることがある。
【0034】
本発明に適用できるゴム化促進成分としては、常温で固体または液体であり、水に可溶で、人体への著しい危険のないものであるものが好ましい。
【0035】
ゴム化促進成分は、多塩基酸、多塩基酸に由来する塩、アミン類、または塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩であり、これらを単独で用いても、複数種類用いてもよく、中でも多塩基酸単独またはアンモニウム塩単独で用いた場合が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
多塩基酸としては、塩基度が2以上の酸であれば、無機酸または有機酸のいずれを用いることもできるが、金属イオンを含まないものが好ましい。金属イオンが含まれていると、炭素繊維の強度を低下させることがある。中でも、塩基度が2または3の酸が好ましく、弱酸性を示すものがより好ましい。具体的には、イタコン酸、ほう酸、リン酸、炭酸などが挙げられ、中でも、イタコン酸、ほう酸、リン酸が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、多塩基酸は塩の形態で用いても、本発明の効果を得ることができ、この場合、塩基度が3以上の多塩基酸に由来する塩が好ましい。本発明において、多塩基酸に由来する塩とは、多塩基酸と塩基から生成する塩のことであり、正塩、酸性塩のいずれでも良い。本発明に用いる塩としては、金属イオンを含まないという点でアンモニウム塩がより好ましい。具体的には、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムなどが挙げられる。
【0037】
アミン類としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、1級、2級、3級いずれのアミン類を用いることもできるが、脂肪族アミンであり、かつ1分子を構成する炭素数が3〜8であるものが好ましく、1分子を構成する炭素数が3〜6であるものがより好ましく、1級または2級アミンであるのがより好ましい。
【0038】
具体的にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、アシルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられ、中でもジエタノールアミン、アシルアミン、ジエチルアミンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
アンモニウム塩としては、NH4 + を含むものであればすべて用いることができるが、金属イオンを含まないものが好ましい。金属イオンが含まれていると、炭素繊維の強度を低下させることがある。具体的には、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、ぎ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウムなどが挙げられ、中でも塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩がより好ましく、具体的には炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
シリコーン成分に対するゴム化促進成分の含有率は、ゴム化促進効果が得られれば特に制限はないが、0.01%を下回ると本発明における効果が得にくく、60%を超えると油剤の安定性に悪影響を及ぼすことがある。
【0041】
ゴム化促進成分として多塩基酸または多塩基酸に由来する塩を用いる場合には、シリコーン成分に対する含有量が10〜60%であることが好ましく、15〜55%であることがより好ましく、20〜50%であることがさらに好ましい。また、ゴム化促進成分としてアミン類または塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩を用いる場合には、0.1%〜5%であることが好ましく、0.5%〜2%であることがより好ましい。少なすぎると本発明の効果を得にくくなり、多すぎると本発明の効果が得にくくなるだけでなく、シリコーン油剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0042】
単糸間接着を抑制するという観点からは、上記ゴム化促進成分を含むシリコーン油剤にさらに微粒子を含むことがより好ましい。すなわち、微粒子を含むことにより、微粒子がシリコーンとともに単糸間に入って単糸同士の直接接触を抑制するため、高強度の炭素繊維を得ることができるのである。微粒子の含有率としては、少なすぎると強度向上の効果が乏しく、多すぎると、油剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れが生じるので、シリコーン成分に対する含有率が1〜20%であることが好ましく、5〜15%であるのがより好ましい。
【0043】
本発明に用いる微粒子としては、シリカ、アルミナ、金属のような無機粒子は一般的に硬いためプリカーサーを傷つけやすく、かつ金属は炭化物を形成して欠陥を形成するため、有機化合物およびシリコーン化合物からなる群より選ばれる1種以上の微粒子が好ましい。
【0044】
また、耐炎化温度において粒子形状を保つことが単糸間接着抑制の観点から好ましいため、熱硬化性樹脂あるいは溶融温度が300℃以上の熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
【0045】
具体例としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、シリコーンゴム、シリコーンレジン、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フェノール樹脂、メラミン樹脂、架橋ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等を挙げることができるが、強度向上効果、安全性という観点からは架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、シリコーンゴム、シリコーンレジンが好ましく、中でも架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレンがより好ましい。
【0046】
また、該微粒子の炭化残存率が高すぎると、焼成中のローラー上で糸条がスリップを起こして毛羽が発生したり、あるいは延伸比が上げられないために、高物性の炭素繊維が得られにくいなどの問題点が発生してくる。よって、本発明における微粒子の炭化残存率は70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。下限としては1%以上が好ましい。
【0047】
なお、炭化残存率は次のように測定する。
【0048】
理学電機製TAS−300高温型差動TG−DTAを用い、一旦真空引きして窒素で復圧した後、30ml/分の窒素気流下、500℃/分の昇温速度で800℃まで炭化減量を測定する。この時、室温でのサンプル重量w1と700℃におけるサンプル重量w2との比から次のように炭化残存率を定義する。
【0049】
炭化残存率(%)=(w2/w1)×100
また、本発明における微粒子は、硬すぎるとプリカーサーを傷つける可能性があり、また、柔らかすぎると工程中の張力などで変形して単糸間接着抑制効果が減少することがあるため、適度な硬度を有することが好ましい。
【0050】
また、本発明における微粒子は、金属を含有していると炭化時にプリカーサーと反応して炭化物を形成し、強度を低下させる可能性があるため、金属を含有しないことが好ましい。総金属含有量としては1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、理想的には含有しないことが好ましい。
【0051】
本発明における微粒子の形状としては特に限定されないが、鋭い角を有しているとプリカーサーに傷を生成して強度が低下することがあるため、鋭い角を有さない微粒子であることが好ましい。
【0052】
本発明における粒子の平均径は小さすぎると単糸間の隙間が小さくなり、逆に大きすぎると単糸間に入りにくくて強度向上効果が小さくなるため、0.01〜50μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.07〜2μmがさらに好ましい。
【0053】
本発明において高強度の炭素繊維を得るためにはシリコーン油剤の耐熱性が重要であり、耐熱残存率rが20%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。上限としては80%以下が好ましい。耐熱残存率とは、シリコーン油剤を240℃の空気中で60分間熱処理した後、引き続いて450℃の窒素中で30秒間した後の残存率のことを言う。詳しくは次の手順により測定する。
【0054】
付与するシリコーンがエマルジョンや溶液の場合には、直径が約60mm、高さが約20mmのアルミ製の容器にエマルジョンまたは溶液約1gを採取し、オーブンにおいて105℃で5時間乾燥し、得られたシリコーンを次の条件でTG(熱天秤)により耐熱残存率を測定する。
【0055】
・サンプルパン:アルミニウム製直径5mm、高さ5mm
・サンプル量:15〜20mg
・空気中熱処理
空気流量:30ml/分
昇温速度:10℃/分
240℃熱処理時間:60分
・雰囲気変更
240℃のまま空気から窒素へ変更して5分間保持
・窒素中熱処理
窒素流量:30ml/分
昇温速度:10℃/分
450℃熱処理時間:30秒
上記熱処理におけるトータルの重量保持率を耐熱残存率とする。
【0056】
本発明において、シリコーン油剤のゴム化を促進する成分を含むことにより、ガムアップの問題なく高強度の炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサーを製造できる詳細な理由は不明であるが、アミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンの両方を含有して初めてその効果を得ることができるのである。
【0057】
本発明者らの検討では、ガムアップはゴム化したシリコーン油剤が脱落するのではなく、ゴム化の進んでいないシリコーン油剤が脱落し、ローラー上でゴム化したものであることを見い出した。すなわち、アミノ基とエポキシ基は一般に架橋反応を生じるが、この反応を促進し、短時間で高いゴム化を達成することにより、ローラー等への脱落、すなわちガムアップが抑制され、かつ単糸上ではゴム化が進んでいるため、単糸間接着抑制効果も大きく、高強度の炭素繊維が得られるのではないかと推定できる。微粒子を含有した場合も同様であり、シリコーン油剤のゴム化の程度が高いほど、微粒子のローラーへの脱落を低減することができるのである。
【0058】
本発明のシリコーン油剤は、たとえば、公知の方法で製造したシリコーンに、公知の方法で製造できるゴム化促進成分、または微粒子を均一に混合することで得られる。その方法に特に制限はなく、機械的に撹拌する方法などを選択することができる。糸条への均一付与という観点からは、水系のエマルジョンとすることが最も好ましいが、この場合にはあらかじめシリコーンおよび微粒子を乳化剤により均一に分散しておき、これらとともにゴム化促進成分を混合するのが好ましい。乳化剤としては特にノニオン系の界面活性剤が好ましい。また、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、防腐剤なども混合することができる。
【0059】
本発明の炭素繊維用プリカーサーは、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などのいずれでもよく、該繊維表層に本発明のシリコーン油剤を有していることを特徴とする。シリコーン油剤の付着量は、繊維重量に対するシリコーン成分の割合で0.01〜5%とするのが好ましく、0.1〜2%とするのがより好ましい。付着量が少ないと本発明の効果が得られにくくなり、多いとかえって強度の低下を招く恐れがある。
【0060】
本発明のシリコーン油剤は、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などいずれの炭素繊維用プリカーサー製造にも適用することができるが、以下、アクリル系のプリカーサーの製法例について説明する。
【0061】
アクリル系炭素繊維のプリカーサーを構成するポリアクリロニトリルとしては、アクリロニトリル85重量%以上、アクリロニトリルと共重合可能な重合性不飽和単量体を15重量%以下含む重合体であることが好ましい。
【0062】
重合性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアルキルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類等をあげることができる。また、不飽和カルボン酸等、耐炎化反応を促進する重合性不飽和単量体を共重合することが好ましい。その共重合量は0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜3重量%であることがさらに好ましい。
【0063】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等をあげることができる。また、高強度の炭素繊維を得るためには、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、酢酸ビニルから選ばれた1種以上を共重合することが好ましい。その共重合量は0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜3重量%であることがさらに好ましい。不飽和カルボン酸のアルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸セカンダリーブチル等を挙げることができるが、その中でもアクリル酸、メタクリル酸のプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチルエステルが好ましい。。
【0064】
重合方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合など従来公知の方法を採用することができる。重合度としては、極限粘度([η])で好ましくは1.0以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.5以上である。なお、[η]は5.0以下にするのが紡糸安定性の点から好ましい。
【0065】
溶液紡糸の場合の溶媒は、有機、無機の公知の溶媒を使用することができ、具体的にはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、硝酸、ロダンソーダ水溶液および塩化亜鉛水溶液などを溶媒とするポリマー溶液を紡糸原液とする。
【0066】
重合体は公知の方法によってプリカーサーとすることができる。紡糸は、直接凝固浴中へ紡出する湿式紡糸法や、一旦空気中へ紡出した後に浴中凝固させる乾湿式紡糸法、あるいは乾式紡糸法、溶融紡糸によってもよいが、高強度の炭素繊維を得るためには乾湿式紡糸が好ましい。
【0067】
溶媒、可塑剤を使用する紡糸方法による時には、紡出糸を直接浴中延伸してもよいし、また、水洗して溶媒、可塑剤を除去した後に浴中延伸してもよい。浴中延伸の条件は、通常、50〜98℃の延伸浴中で約2〜6倍に延伸する。浴中延伸後の糸条はホットドラムなどで乾燥することによって乾燥緻密化が達成される。乾燥温度、時間などは適宜選択することができる。また、必要に応じて乾燥緻密化後の糸条をより高温(たとえば加圧スチーム中)で延伸することもおこなわれ、これらによって、所定の繊度、配向度を有するプリカーサーとすることができる
上記紡糸工程のいずれかの工程で糸条に本発明のシリコーン油剤を付与すればよいが、単糸間接着の抑制という観点からは、乾燥緻密化前の水膨潤状態の糸条に付与することが好ましい。本発明のシリコーン油剤を糸条に付与する方法としては、均一に付与できれば特に制限はないが、工程油剤浴中の駆動、非駆動ローラー、あるいは固定、非固定のガイドバーへ糸条を掛けて糸条に付与する方法、上方へ吹き出したシリコーン油剤中に糸条を走行させて付与する方法、走行している糸条に上方よりシリコーン油剤を落下させる方法、シリコーン油剤を噴霧した空間に糸条を走行させる方法など種々考えられ、適宜選択することができる。また、均一に付与するという観点からは、糸条の糸幅が広がっているところで付与するのが好ましく、具体的には3000フィラメントあたり3〜50mmが好ましい。
【0068】
糸条に付与する各成分の比が本発明のシリコーン油剤の含有率比と同じであれば、各成分を別個に付与することもできる。その場合、乾燥緻密化前までにすべての成分を付与することが重要である。
【0069】
強度の高い炭素繊維を得るためには、緻密性の高いプリカーサーが有効である。緻密性としては、ヨウ素吸着法による明度差ΔLの値が、好ましくは45以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは15以下の緻密なプリカーサーがよい。ΔLが45以下の緻密なプリカーサーを得るための手段としては、乾湿式紡糸、紡糸原液の高濃度化、紡糸原液および凝固浴液の低温化および凝固時の低張力化などにより凝固糸の膨潤度を低くおさえ、かつ浴延伸時の延伸段数、延伸倍率および延伸温度の最適化により浴延伸糸の膨潤度を低くおさえることが有効である。
【0070】
なお、ΔLは以下の方法により求めた値である。
【0071】
繊維長5〜7cmの乾燥試料を約0.5g精秤し、200mlの共栓付三角フラスコに採り、これにヨウ素溶液(I2 :51g、2、4−ジクロロフェノール10g、酢酸90gおよびヨウ化カリウム100gを精秤し、1lのメスフラスコに移して水で溶かして定容とする)100mlを加えて、60℃で50分間振盪しながら吸着処理をおこなう。ヨウ素を吸着した試料を流水中で30分間水洗した後、遠心脱水(2000rpm×1分)してすばやく風乾する。この試料を開繊した後、ハンター型色差計で明度(L値)を測定する(L1 )。一方、ヨウ素の吸着処理をおこなわない対応の試料を開繊し、同様に前記ハンター型色差計で、明度(L0 )を測定し、L0 −L1 により明度差ΔLを求める。
【0072】
本発明において、プリカーサーの単繊維繊度としては、強度向上の観点から引き続く耐炎化工程おいて焼成ムラを起こさないよう細い方が好ましく、好ましくは1.5d以下、より好ましくは1.0d以下、さらに好ましくは0.1〜0.8dである。
【0073】
かかるプリカーサーを焼成することにより高性能な炭素繊維とすることができる。耐炎化条件としては、従来公知の方法を採用することができ、酸化性雰囲気中200〜300℃の範囲で、緊張、あるいは延伸条件下が好ましく使用され、密度が好ましくは1.25g/cm3 以上、より好ましくは1.30g/cm3 以上に達するまで加熱処理される。この密度は、1.60g/cm3 以下にとどめるのが一般的であり、これ以上にすると、物性が低下することがある。
【0074】
一般に雰囲気については、公知の空気、酸素、二酸化窒素、塩化水素などの酸化性雰囲気を使用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
【0075】
耐炎化を完了した糸条は、従来公知の方法で不活性雰囲気中炭化処理をおこなう。炭化温度としては、得られる炭素繊維の物性から1000℃以上が好ましく、さらに必要に応じて2000℃以上の温度で黒鉛化することができる。また、350〜500℃および1000〜1200℃における昇温速度は好ましくは500℃/分以下であり、より好ましくは300℃/分以下、さらに好ましくは150℃/分以下である。これにより、ボイドなど内部欠陥の少ない緻密な炭素繊維を得ることができる。なお、この昇温速度が10℃/分以下では生産性が低くなりすぎる。また、350〜500℃あるいは2300℃以上において好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上の延伸をおこなうことが緻密性向上の上で重要である。なお、40%をこえる延伸は毛羽が発生しやすくなるため好ましくない。
【0076】
そして、このようにして得られた炭素繊維は、酸またはアルカリ水溶液からなる電解槽中で電解酸化処理を施したり、気相または液相での酸化処理を施すことにより、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
【0077】
特に、短時間で酸化処理でき、酸化程度のコントロールが容易であることから電解酸化が好ましい。電解処理の電解液としては酸性、アルカリ性いずれも採用できる。酸性電解質としては水溶液中で酸性を示すものであればよく、具体的には硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、マレイン酸などの有機酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。好ましくは強酸性を示す硫酸、硝酸がよい。アルカリ性電解液としては水溶液中でアルカリ性を示すものであればよく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウムなどの水酸化物、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩類、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩類、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩あるいは他の金属塩、およびアンモニウム塩、水酸化テトラエチルアンモニウムまたはヒドラジン等の有機化合物が挙げられるが、好ましくは樹脂の硬化障害をおこすアルカリ金属を含まない炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム類などが好ましい。
【0078】
電気量は被処理炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率糸はより大きな電気量が必要である。表層の結晶性の低下を進ませ、生産性を向上する一方、炭素繊維基質の強度低下を防ぐ観点から、電解処理は小さい電気量で複数回処理を繰り返すのが好ましい。具体的には、電解槽1槽あたりの通電電気量は5クーロン/g・槽(炭素繊維1g、1槽あたりの電気量)以上、100クーロン/g・槽以下が好ましく、より好ましくは10クーロン/g・槽以上、80クーロン/g・槽以下、さらに好ましくは20クーロン/g・槽以上、60クーロン/g・槽以下がよい。また、表層の結晶性の低下を適度な範囲とする観点からは通電処理の総電気量は5〜1000クーロン/g、さらには10〜500クーロン/gの範囲とするのが好ましい。
【0079】
電解処理または洗浄処理をおこなった後、水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の再表面に存在する官能基が熱分解によって消失しやすいため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましいが、あまりに低すぎると乾燥に時間がかかりすぎたり、乾燥機の機長が大きくなりすぎたりする。かかる観点から、具体的には乾燥温度を好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜210℃、さらに好ましくは120〜210℃として乾燥するのがよい。
【0080】
さらに、必要に応じて従来公知の技術によりサイジング付与などをおこなうことができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0082】
なお、本発明における引張強度は樹脂含浸ストランド法により求めた。
【0083】
[引張強度]
“ベークライト”ERL−4221(登録商標、ユニオン・カーバイド(株)製)/三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3 ・MEA)/アセトン=100/3/4部を炭素繊維に含浸し、得られた樹脂含浸ストランドを130℃で30分間加熱して硬化させ、JIS−R−7601に規定する樹脂含浸ストランド試験法に従って測定した。
【0084】
また、ガムアップ量は以下のようにして測定した。
【0085】
[ガムアップ量]
約10時間連続して糸条を走行させた後、乾燥緻密化工程以降のローラーに付着した固形物をはぎとりその重量を測定した。
【0086】
また、シリコーンとしては基本骨格がジメチルシロキサンである、下記のようなものを用いた。
【0087】
・アミノ変性シリコーン−25℃における動粘性率が2500×10-62 /s、変性量が1%であるもの
・エポキシ変性シリコーン−25℃における動粘性率が10000×10-62 /s、変性量が1%であるもの
・エチレンオキサイド変性シリコーン−25℃における動粘性率が500×10-62 /s、変性量が50%であるもの
実施例1
ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル98重量%、イタコン酸1重量%とイソブチルメタクリレート1重量%とからなる[η]が1.70、重合体濃度20%の紡糸原液を得た。これを3000フィラメント用の口金を通じて一旦空気中に吐出して約3mmの空間部分を走行させた後、10℃のジメチルスルホキシド30%水溶液中で凝固させ、凝固糸条を水洗後、4倍まで浴延伸した。続いて以下の構成を有するシリコーン油剤、すなわち、シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が15%、炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が0.01%であるシリコーン油剤を付与した後乾燥緻密化した。
【0088】
さらに、加圧スチーム中で2.5倍まで延伸して単糸繊度0.8d、トータル繊度2400Dのプリカーサーを得た。
【0089】
得られたプリカーサーを240〜280℃の空気中で、延伸比1.05で加熱して密度1.37g/cm3 の耐炎化糸を得た。ついで、窒素雰囲気中350〜500℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし、2%の延伸をおこなった後、さらに1400℃まで焼成した。
【0090】
続いて濃度0.1モル/lの硫酸水溶液を電解液として、10クーロン/gで電解処理、水洗し、150℃の加熱空気中で乾燥した。このようにして得られた炭素繊維の物性をおよび製糸工程におけるガムアップ量およびシリコーン油剤のゴム化率を表1に示す。
【0091】
実施例2
炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が0.2%である以外は、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0092】
実施例3
炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が1.0%である以外は、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0093】
実施例4
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が14%、炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0094】
実施例5
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が13%、炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0095】
実施例6
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が13%、炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が1%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0096】
実施例7
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が37%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が13%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が25%、ゴム化促進成分として酢酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が2.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0097】
実施例8
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が12%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が36%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が24%、ゴム化促進成分として酢酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が2.0%、架橋ポリスチレンからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が3.0%、であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0098】
実施例9
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が12%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が48%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分として炭酸水素アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0099】
実施例10
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が45%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が12%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が14%、ゴム化促進成分として炭酸水素アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、ポリ4フッ化エチレンからなる平均粒子径0.3μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0100】
実施例11
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が46%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が24%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として塩化アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0101】
実施例12
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が17%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が34%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が13%、ゴム化促進成分として硫酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が0.3%、シリコーンゴムからなる平均粒子径0.5μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が15.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0102】
実施例13
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分として、ジエタノールアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0103】
実施例14
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が13%、ゴム化促進成分として、ジエタノールアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0104】
実施例15
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として、アシルアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が0.5%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0105】
実施例16
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が19%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が28%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が24%、ゴム化促進成分として、ジエチルアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、フェノール樹脂からなる平均粒子径0.5μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0106】
実施例17
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が20%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分として、トリエチルアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が2.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0107】
実施例18
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が33%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が33%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が3.0%、ゴム化促進成分として、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0108】
実施例19
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が36%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が18%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が2.0%、ゴム化促進成分として、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0109】
実施例20
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が2.5%、ゴム化促進成分として、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0110】
実施例21
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が22%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が22%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が2.0%、ゴム化促進成分として、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0111】
実施例22
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が17%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が17%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が1.5%、ゴム化促進成分として、リン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が55.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0112】
実施例23
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が11%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が11%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、ゴム化促進成分として、炭酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0113】
実施例24
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、ゴム化促進成分としてホウ酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
比較例1
ゴム化促進成分を含まないシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0114】
比較例2
ゴム化促進成分を含まないシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例6と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0115】
比較例3
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が14%、ポリ4フッ化エチレンからなる平均粒子径0.3μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0116】
比較例4
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が70%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として、炭酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0117】
比較例5
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が70%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として、炭酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0118】
比較例6
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が60%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分として、ジエタノールアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0119】
比較例7
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が8%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が4.5%、ゴム化促進成分として、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0120】
比較例8
シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が4%、エポキシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が8.5%、ゴム化促進成分として、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0121】
【表1】
Figure 0003898292
【表2】
Figure 0003898292
【表3】
Figure 0003898292
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリコーン油剤により、高強度の炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサーを生産性よく製造することができる。

Claims (11)

  1. 炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリコーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分Cを含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であることを特徴とするシリコーン油剤。
    成分A:アミノ変性シリコーン、
    成分B:エポキシ変性シリコーン、
    成分C:多塩基酸、多塩基酸に由来する塩、アミン類、塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩からなる群より選ばれる1成分または複数成分のゴム化促進成分
  2. 炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリコーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分C、成分Dを含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であることを特徴とするシリコーン油剤。
    成分A:アミノ変性シリコーン
    成分B:エポキシ変性シリコーン
    成分C:多塩基酸、多塩基酸に由来する塩、アミン類、塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩からなる群より選ばれる1成分または複数成分のゴム化促進成分
    成分D:有機高分子またはシリコーン化合物からなる1種類または複数種類の微粒子
  3. ゴム化率が、10〜80%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  4. 成分Cのアミン類が、脂肪族であり、かつ1分子を構成する炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  5. シリコーン成分に対する成分Aおよび成分Bの合計含有率が、30〜95%であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  6. 成分Cの多塩基酸又は多塩基酸に由来する塩が、シリコーン成分に対して10〜60%含まれていることを特徴とする請求項1〜3またはのいずれかに記載のシリコーン油剤。
  7. 成分Cのアミン類または塩基度が2以下の酸に由来するアンモニウム塩が、シリコーン成分に対して0.1〜5%含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  8. シリコーン成分に対する成分Dの含有率が、1〜20%であることを特徴とする請求項2〜のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のシリコーン油剤を繊維表層に有することを特徴とする炭素繊維用プリカーサー。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のシリコーン油剤を糸条に付与することを特徴とする炭素繊維用プリカーサーの製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法によって得られた炭素繊維用プリカーサーを焼成することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
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