JPH10102380A - シリコーン油剤、炭素繊維用プリカーサーおよびその製造方法 - Google Patents

シリコーン油剤、炭素繊維用プリカーサーおよびその製造方法

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JPH10102380A
JPH10102380A JP19395997A JP19395997A JPH10102380A JP H10102380 A JPH10102380 A JP H10102380A JP 19395997 A JP19395997 A JP 19395997A JP 19395997 A JP19395997 A JP 19395997A JP H10102380 A JPH10102380 A JP H10102380A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】引張強度の高い炭素繊維を得ることのできる炭
素繊維用プリカーサー、および該プリカーサーを生産性
よく製造するためのシリコーン油剤、および炭素繊維用
プリカーサーの製造方法を提供する。 【解決手段】炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリ
コーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分Cを
含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜
4.0であることを特徴とするシリコーン油剤。 成分A:アミノ変性シリコーン 成分B:エポキシ変性シリコーン 成分C:ゴム化促進成分

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張強度の優れた
炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサー、
および該プリカーサーを生産性よく製造するためのシリ
コーン油剤、および炭素繊維用プリカーサーの製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は他の繊維に比べて優れた比強
度および比弾性率を有するため、その優れた機械的特性
を利用して樹脂との複合材料用の補強繊維として工業的
に広く利用されている。近年、炭素繊維複合材料の優位
性はますます高まり、特にスポーツ、航空宇宙用途にお
いてはこの炭素繊維複合材料に対する高性能化要求が強
い。複合材料としての特性は炭素繊維そのものの特性に
起因するところが大きく、この要求はとりもなおさず炭
素繊維自身への高性能化要求である。
【0003】このような高性能炭素繊維を製造するため
には、特に破断の開始点となるような欠陥の生成を抑制
することが必要である。特に、炭素繊維の破断は大部分
表面から開始しており、単糸間接着やローラーとの接触
などにより生成する表面欠陥の寄与が大きいことがわか
る。
【0004】それに対して従来、炭素繊維に気相処理、
液相処理、電解処理など種々の後処理をほどこすことに
より、表層をエッチングして表面欠陥を除去する技術等
が提案された(たとえば、特開昭58−214527号
公報、特開昭61−225330号公報)。
【0005】しかし、上記技術によれば強度は向上する
ものの、操作、工程が煩雑になり、かつコストが上昇す
るという問題点を有していた。炭素繊維への高性能化要
求は強いが、同時にコスト意識も強く、コストパフォー
マンスの高い炭素繊維でないと市場に受け入れられない
というのが現状である。
【0006】また、特開昭63−165585号公報
や、特開昭63−203878号公報には、異なる変性
基を有するシリコーン油剤を組合せて付与することによ
り、油剤の樹脂化を促進して熱処理時の単糸間接着を抑
制するという技術が開示されている。しかし、これらの
技術によれば炭素繊維の強度は向上するものの、製糸工
程の乾燥ドラム等への樹脂化した油剤の付着、堆積、す
なわちガムアップの増加、それに伴う延伸性の低下等の
問題が発生し、プロセス性、生産性の低下を余儀なくさ
れるため、あるレベル以上に油剤の樹脂化を進行させる
ことができない。また、これらの問題により、プリカー
サーの品位が低下する等かえって炭素繊維の強度を低下
させてしまうことすらある。
【0007】油剤の乾燥ドラム等へのガムアップ抑制に
関しては、樹脂化を遅延または阻害する物質を付与する
技術が特開平2−291224号公報、特開平2−29
1225号公報、特開平2−291226号公報に開示
されている。しかし、油剤の樹脂化を遅延または阻害す
ることは、本来の油剤付与の目的、すなわち、熱処理時
の単糸間接着を抑制するという観点からは好ましくな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、引張
強度の高い炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリ
カーサー、および該プリカーサーを生産性よく製造する
ためのシリコーン油剤、および炭素繊維用プリカーサー
の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のシリコーン油剤
は、上記課題を達成するため次の構成を有する。すなわ
ち、炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリコーン油
剤であって、下記の成分A、成分B、成分Cを含み、か
つ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜4.0で
あることを特徴とする。
【0010】成分A:アミノ変性シリコーン 成分B:エポキシ変性シリコーン 成分C:ゴム化促進成分 また、本発明のシリコーン油剤は、炭素繊維用プリカー
サー製造に用いるシリコーン油剤であって、下記の成分
A、成分B、成分C、成分Dを含み、かつ成分Aと成分
Bの重量比A/Bが0.25〜4.0であることを特徴
とする。
【0011】成分A:アミノ変性シリコーン 成分B:エポキシ変性シリコーン 成分C:ゴム化促進成分 成分D:有機高分子またはシリコーン化合物からなる1
種類または複数種類の微粒子 また、本発明の炭素繊維用プリカーサーは、上記したシ
リコーン油剤を繊維表層に有することを特徴とする。
【0012】また、本発明の炭素繊維用プリカーサーの
製造方法は、上記したシリコーン油剤を糸条に付与する
ことを特徴とする。
【0013】また、本発明の炭素繊維の製造方法は、上
記した製造方法によって得られた炭素繊維用プリカーサ
ーを焼成することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、シリコーン油剤のゴム
化を促進する成分を含有するシリコーン油剤を用いるこ
とにより、従来、問題となっていたガムアップによるプ
ロセス性、生産性の低下を解決した上で、引張強度の高
い炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリカーサー
を製造できる点に特徴がある。また、微粒子を含有した
シリコーン油剤を用いると、強度向上効果は微粒子の効
果と相まってより大きい。以下、本発明をさらに詳細に
説明する。
【0015】本発明のシリコーン油剤は、2種以上のシ
リコーンを主成分とし、ゴム化促進成分、微粒子などか
ら構成されたものであるが、乳化剤、酸化防止剤など他
の成分を含んでもよい。
【0016】また、形態としてはオイル状、溶液、エマ
ルジョンなど、どの状態でもよいが、シリコーン油剤の
プリカーサーへの均一付与という観点からは、エマルジ
ョンが好ましく、中でも水分散とすることが取り扱い性
の点からより好ましい。
【0017】本発明におけるシリコーンは、基本骨格に
シロキサン結合(−SiO−)を有するものであり、こ
のケイ素原子に結合する基は、水素原子および/または
炭素数1〜3のアルキル基やフェニル基、またはこれら
のアルコキシ基などが挙げられる。これらの中で特にジ
メチルシロキサンが基本骨格として好ましい。
【0018】また、たとえば幹部分がアクリル系ポリマ
ーで枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリ
マー(アクリル−シリコーン共重合体)のように、その
一部のシリコーン部分が前記した要件を満たしているも
のであってもよい。また、上記基本骨格をもち、側鎖の
一部が変性されたものであってもよい。
【0019】本発明におけるシリコーン油剤は、シリコ
ーン成分に対してアミノ変性シリコーン(成分A)およ
びエポキシ変性シリコーン(成分B)をそれぞれ5%以
上含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25
〜4.0であり、その重量比が0.33〜3.0である
ことが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ま
しい。
【0020】また、シリコーン油剤の樹脂化による炭素
繊維の強度向上という観点からは、シリコーン成分に対
するアミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコー
ンの合計含有率は30〜95%が好ましく、40〜80
%がより好ましく、50〜75%がさらに好ましい。
【0021】本発明において、シリコーン成分に対する
ある成分Eの含有率は次の式で定義される。
【0022】 (成分Eの重量/シリコーン成分の重量)×100 また、アミノ変性シリコーンの重量およびエポキシ変性
シリコーンの重量は、シリコーンのみの重量であり、乳
化剤の重量は含まれない。
【0023】本発明におけるシリコーン成分は、シリコ
ーン油剤を構成するもののうち、溶媒を除いた成分のこ
とである。すなわち、オイル状の場合にはオイル中に含
まれるすべての成分であり、溶液の場合には溶媒を除い
たすべての成分であり、エマルジョンの場合には分散媒
を除いたすべての成分である。ここで分散媒とは、シリ
コーン、微粒子を分散させている媒質のことであり、乳
化剤は含まない。
【0024】本発明のシリコーン油剤に用いるアミノ変
性シリコーンとしては、モノアミン型でもポリアミン型
でもよい。末端アミノ基を−NH2 と換算した変性量は
0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜
5重量%がより好ましい。変性量が少ないとプリカーサ
ーへの親和性が不足してくるし、多くなると耐熱性が低
下してくる。また、25℃における動粘性率は250〜
10000×10-62 /sであることが好ましく、5
00〜8000×10-62 /sがより好ましい。動粘
性率が小さいと耐熱性が不足してくるし、大きくなると
水中に分散させることが困難になってくる。
【0025】本発明におけるエポキシ変性シリコーンと
しては、プリカーサーへの親和性から1、2−エポキシ
シクロヘキシル基や1、2−エポキシシクロペンチル基
のような脂環式エポキシ変性が好ましい。エポキシ基を
−CHCH2 Oと換算した変性量は0.05〜10重量
%であることが好ましく、0.1〜5重量%がより好ま
しい。変性量が少ないとプリカーサーへの親和性が不足
してくるし、多くなると耐熱性が低下してくる。
【0026】また、25℃における動粘性率は1000
〜15000×10-62 /sであることが好ましく、
2000〜12000×10-62 /sがより好まし
い。動粘性率が小さいと耐熱性が不足してくると、大き
くなると水中に分散させるのが困難になってくる。
【0027】本発明のシリコーン油剤に用いる他のシリ
コーンとしては、変性されているものでも、全く変性さ
れていないものでもよい。変性されているシリコーンを
用いる場合、変性の種類はアルキレンオキサイド変性、
カルボキシル変性、アルコール変性、メルカプト変性な
どいずれでもよいが、アルキレンオキサイド変性が好ま
しい。アルキレンオキサイド変性シリコーンの場合、エ
チレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性、あ
るいは両者で変性されているものが好ましい。これらの
アルキレンオキサイドで変性することによって、シリコ
ーン自身に親水性を付与し、自己乳化性を付与して界面
活性剤のように働かせることができる。このため、水中
での安定性や繊維表面への均一付着性などの好ましい特
性が生じると考えられる。本発明のシリコーン油剤に、
アルキレンオキサイド変性シリコーンを用いる場合、そ
の含有量は、シリコーン成分に対して1〜50%が好ま
しく、3〜40%がより好ましく、5〜30%がさらに
好ましい。
【0028】アルキレンオキサイドのユニットとしては
重合度が5〜25のものが好ましい。重合度が大きいと
耐熱性が低下してくる。アルキレンオキサイド変性量は
10〜80重量%であることが好ましく、20〜70重
量%がより好ましい。変性量が小さいと先述の自己乳化
性が不足してくるし、また、多くなると耐熱性が低下し
てくる。また、25℃における動粘性率は50〜300
0×10-62 /sであることが好ましく、75〜20
00×10-62 /sであることがより好ましい。動粘
性率が小さいと耐熱性、自己乳化性が低下してくるし、
また、大きいと親水性が不足してくる。
【0029】変性されていないシリコーンとしては、ジ
メチルシリコーン、ジフェニルシリコーンなどが挙げら
れる。
【0030】本発明におけるシリコーン油剤は、ゴム化
を促進する成分を含む。本発明においてゴム化とは、シ
リコーン油剤の100〜300℃における架橋反応を指
す。シリコーン油剤のゴム化の度合いであるゴム化率
は、以下のようにして測定することができる。
【0031】シリコーン成分が約3グラム含まれるよう
に、シリコーン油剤を秤量し、予め秤量した重量W1
(g)、直径約60mm、深さ約20mmの円形のアル
ミ皿に入れる。これを、オーブンで空気中105℃×2
時間熱処理し、続いて空気中130℃×2時間の熱処理
をする。得られたゲル状物質をアルミ皿ごとオーブンか
ら出し、デシケーター中で室温まで冷却したのち精秤
し、得られた該ゲル状物質のアルミ皿こみの重量をW2
(g)とする。続いて該ゲル状物質を、ブフナーロート
上においた濾紙に全量移し、クロロホルムを用いて濾過
し、溶解部分と非溶解部分とに分離する。300mlの
クロロホルムを少なくとも3回に分けて濾過を行い、濾
過終了後、濾紙ごとオーブンで空気中60℃×1時間乾
燥する。乾燥後、デシケーター中で室温まで冷却したの
ち精秤し、得られた非溶解部分の濾紙こみの重量をW3
(g)とする。使用する濾紙は、予めオーブンで空気中
60℃×1hr乾燥後、デシケーター中で室温まで冷却
したのち秤量しておく。濾紙の乾燥後の重量をW4
(g)とすると、ゴム化率は以下の式で表せる。
【0032】ゴム化率(%)={(W2 −W1 )/(W
3 −W4 )}×100 濾紙は、直径約110mmの円形で、JIS P 38
01に規定される5種Aに相当する物を使用する。シリ
コーン油剤中のシリコーン成分の含有率が低い場合、1
00℃を超えない温度で熱処理し、濃縮してから上記測
定に供するのが好ましい。
【0033】本発明においてゴム化促進成分とは、上記
ゴム化率を向上させうる成分のことであり、その向上幅
が大きいほど、本発明における効果が大きくなるが、本
発明におけるシリコーン油剤のゴム化率としては、10
〜80%が好ましく、15〜70%がより好ましく、2
0〜60%がさらに好ましい。ゴム化率が10%を下回
ると本発明の効果が得にくくなり、80%を超えるとプ
ロセス性に悪影響を及ぼし、かえって強度を低下させる
ことがある。
【0034】本発明に適用できるゴム化促進成分として
は、常温で固体または液体であり、水に可溶で、人体へ
の著しい危険のないものであるものが好ましい。
【0035】ゴム化促進成分としては、多塩基酸、また
はアミン類、またはアンモニウム塩などが好ましく、こ
れらを単独で用いても、複数種類用いてもよく、中でも
多塩基酸単独またはアンモニウム塩単独で用いた場合が
好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0036】多塩基酸としては、塩基度が2以上の酸で
あれば、無機酸または有機酸のいずれを用いることもで
きるが、金属イオンを含まないものが好ましい。金属イ
オンが含まれていると、炭素繊維の強度を低下させるこ
とがある。中でも、塩基度が2または3の酸が好まし
く、弱酸性を示すものがより好ましい。具体的には、イ
タコン酸、ほう酸、リン酸、炭酸などが挙げられ、中で
も、イタコン酸、ほう酸、リン酸が好ましいが、これら
に限定されるものではない。また、多塩基酸は塩の形態
で用いても、本発明の効果を得ることができ、この場
合、塩基度が3以上の多塩基酸に由来する塩が好まし
い。本発明において、多塩基酸に由来する塩とは、多塩
基酸と塩基から生成する塩のことであり、正塩、酸性塩
のいずれでも良い。本発明に用いる塩としては、金属イ
オンを含まないという点でアンモニウム塩がより好まし
い。具体的には、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニ
ウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモ
ニウムなどが挙げられる。
【0037】アミン類としては、脂肪族アミン、芳香族
アミン、1級、2級、3級いずれのアミン類を用いるこ
ともできるが、脂肪族アミンであり、かつ1分子を構成
する炭素数が3〜8であるものが好ましく、1分子を構
成する炭素数が3〜6であるものがより好ましく、1級
または2級アミンであるのがより好ましい。
【0038】具体的にはモノエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン、ブチルアミン、アシルアミン、ヘキシル
アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチ
ルアミンなどが挙げられ、中でもジエタノールアミン、
アシルアミン、ジエチルアミンが好ましいが、これらに
限定されるものではない。
【0039】アンモニウム塩としては、NH4 + を含む
ものであればすべて用いることができるが、金属イオン
を含まないものが好ましい。金属イオンが含まれている
と、炭素繊維の強度を低下させることがある。具体的に
は、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ア
ンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫
酸水素アンモニウム、ぎ酸アンモニウム、乳酸アンモニ
ウム、クエン酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウ
ムなどが挙げられ、中でも塩基度が2以下の酸に由来す
るアンモニウム塩がより好ましく、具体的には炭酸アン
モニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムが好ましいが、こ
れらに限定されるものではない。
【0040】シリコーン成分に対するゴム化促進成分の
含有率は、ゴム化促進効果が得られれば特に制限はない
が、0.01%を下回ると本発明における効果が得にく
く、60%を超えると油剤の安定性に悪影響を及ぼすこ
とがある。
【0041】ゴム化促進成分として多塩基酸または多塩
基酸に由来する塩を用いる場合には、シリコーン成分に
対する含有量が10〜60%であることが好ましく、1
5〜55%であることがより好ましく、20〜50%で
あることがさらに好ましい。また、ゴム化促進成分とし
てアミン類または塩基度が2以下の酸に由来するアンモ
ニウム塩を用いる場合には、0.1%〜5%であること
が好ましく、0.5%〜2%であることがより好まし
い。少なすぎると本発明の効果を得にくくなり、多すぎ
ると本発明の効果が得にくくなるだけでなく、シリコー
ン油剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0042】単糸間接着を抑制するという観点からは、
上記ゴム化促進成分を含むシリコーン油剤にさらに微粒
子を含むことがより好ましい。すなわち、微粒子を含む
ことにより、微粒子がシリコーンとともに単糸間に入っ
て単糸同士の直接接触を抑制するため、高強度の炭素繊
維を得ることができるのである。微粒子の含有率として
は、少なすぎると強度向上の効果が乏しく、多すぎる
と、油剤の安定性に悪影響を及ぼす恐れが生じるので、
シリコーン成分に対する含有率が1〜20%であること
が好ましく、5〜15%であるのがより好ましい。
【0043】本発明に用いる微粒子としては、シリカ、
アルミナ、金属のような無機粒子は一般的に硬いためプ
リカーサーを傷つけやすく、かつ金属は炭化物を形成し
て欠陥を形成するため、有機化合物およびシリコーン化
合物からなる群より選ばれる1種以上の微粒子が好まし
い。
【0044】また、耐炎化温度において粒子形状を保つ
ことが単糸間接着抑制の観点から好ましいため、熱硬化
性樹脂あるいは溶融温度が300℃以上の熱可塑性樹脂
であることがより好ましい。
【0045】具体例としては、架橋ポリメタクリル酸メ
チル、架橋ポリスチレン、シリコーンゴム、シリコーン
レジン、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン−6
フッ化プロピレン共重合体、フェノール樹脂、メラミン
樹脂、架橋ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等を挙
げることができるが、強度向上効果、安全性という観点
からは架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレ
ン、シリコーンゴム、シリコーンレジンが好ましく、中
でも架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレンが
より好ましい。
【0046】また、該微粒子の炭化残存率が高すぎる
と、焼成中のローラー上で糸条がスリップを起こして毛
羽が発生したり、あるいは延伸比が上げられないため
に、高物性の炭素繊維が得られにくいなどの問題点が発
生してくる。よって、本発明における微粒子の炭化残存
率は70%以下が好ましく、50%以下がより好まし
く、30%以下がさらに好ましい。下限としては1%以
上が好ましい。
【0047】なお、炭化残存率は次のように測定する。
【0048】理学電機製TAS−300高温型差動TG
−DTAを用い、一旦真空引きして窒素で復圧した後、
30ml/分の窒素気流下、500℃/分の昇温速度で
800℃まで炭化減量を測定する。この時、室温でのサ
ンプル重量w1と700℃におけるサンプル重量w2と
の比から次のように炭化残存率を定義する。
【0049】 炭化残存率(%)=(w2/w1)×100 また、本発明における微粒子は、硬すぎるとプリカーサ
ーを傷つける可能性があり、また、柔らかすぎると工程
中の張力などで変形して単糸間接着抑制効果が減少する
ことがあるため、適度な硬度を有することが好ましい。
【0050】また、本発明における微粒子は、金属を含
有していると炭化時にプリカーサーと反応して炭化物を
形成し、強度を低下させる可能性があるため、金属を含
有しないことが好ましい。総金属含有量としては100
0ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ま
しく、10ppm以下がさらに好ましく、理想的には含
有しないことが好ましい。
【0051】本発明における微粒子の形状としては特に
限定されないが、鋭い角を有しているとプリカーサーに
傷を生成して強度が低下することがあるため、鋭い角を
有さない微粒子であることが好ましい。
【0052】本発明における粒子の平均径は小さすぎる
と単糸間の隙間が小さくなり、逆に大きすぎると単糸間
に入りにくくて強度向上効果が小さくなるため、0.0
1〜50μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ま
しく、0.07〜2μmがさらに好ましい。
【0053】本発明において高強度の炭素繊維を得るた
めにはシリコーン油剤の耐熱性が重要であり、耐熱残存
率rが20%以上であることが好ましく、30%以上が
より好ましく、40%以上がさらに好ましい。上限とし
ては80%以下が好ましい。耐熱残存率とは、シリコー
ン油剤を240℃の空気中で60分間熱処理した後、引
き続いて450℃の窒素中で30秒間した後の残存率の
ことを言う。詳しくは次の手順により測定する。
【0054】付与するシリコーンがエマルジョンや溶液
の場合には、直径が約60mm、高さが約20mmのア
ルミ製の容器にエマルジョンまたは溶液約1gを採取
し、オーブンにおいて105℃で5時間乾燥し、得られ
たシリコーンを次の条件でTG(熱天秤)により耐熱残
存率を測定する。
【0055】・サンプルパン:アルミニウム製直径5m
m、高さ5mm ・サンプル量:15〜20mg ・空気中熱処理 空気流量:30ml/分 昇温速度:10℃/分 240℃熱処理時間:60分 ・雰囲気変更 240℃のまま空気から窒素へ変更して5分間保持 ・窒素中熱処理 窒素流量:30ml/分 昇温速度:10℃/分 450℃熱処理時間:30秒 上記熱処理におけるトータルの重量保持率を耐熱残存率
とする。
【0056】本発明において、シリコーン油剤のゴム化
を促進する成分を含むことにより、ガムアップの問題な
く高強度の炭素繊維を得ることのできる炭素繊維用プリ
カーサーを製造できる詳細な理由は不明であるが、アミ
ノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンの両方
を含有して初めてその効果を得ることができるのであ
る。
【0057】本発明者らの検討では、ガムアップはゴム
化したシリコーン油剤が脱落するのではなく、ゴム化の
進んでいないシリコーン油剤が脱落し、ローラー上でゴ
ム化したものであることを見い出した。すなわち、アミ
ノ基とエポキシ基は一般に架橋反応を生じるが、この反
応を促進し、短時間で高いゴム化を達成することによ
り、ローラー等への脱落、すなわちガムアップが抑制さ
れ、かつ単糸上ではゴム化が進んでいるため、単糸間接
着抑制効果も大きく、高強度の炭素繊維が得られるので
はないかと推定できる。微粒子を含有した場合も同様で
あり、シリコーン油剤のゴム化の程度が高いほど、微粒
子のローラーへの脱落を低減することができるのであ
る。
【0058】本発明のシリコーン油剤は、たとえば、公
知の方法で製造したシリコーンに、公知の方法で製造で
きるゴム化促進成分、または微粒子を均一に混合するこ
とで得られる。その方法に特に制限はなく、機械的に撹
拌する方法などを選択することができる。糸条への均一
付与という観点からは、水系のエマルジョンとすること
が最も好ましいが、この場合にはあらかじめシリコーン
および微粒子を乳化剤により均一に分散しておき、これ
らとともにゴム化促進成分を混合するのが好ましい。乳
化剤としては特にノニオン系の界面活性剤が好ましい。
また、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、防腐剤など
も混合することができる。
【0059】本発明の炭素繊維用プリカーサーは、アク
リル系、ピッチ系、レーヨン系などのいずれでもよく、
該繊維表層に本発明のシリコーン油剤を有していること
を特徴とする。シリコーン油剤の付着量は、繊維重量に
対するシリコーン成分の割合で0.01〜5%とするの
が好ましく、0.1〜2%とするのがより好ましい。付
着量が少ないと本発明の効果が得られにくくなり、多い
とかえって強度の低下を招く恐れがある。
【0060】本発明のシリコーン油剤は、アクリル系、
ピッチ系、レーヨン系などいずれの炭素繊維用プリカー
サー製造にも適用することができるが、以下、アクリル
系のプリカーサーの製法例について説明する。
【0061】アクリル系炭素繊維のプリカーサーを構成
するポリアクリロニトリルとしては、アクリロニトリル
85重量%以上、アクリロニトリルと共重合可能な重合
性不飽和単量体を15重量%以下含む重合体であること
が好ましい。
【0062】重合性不飽和単量体としては、アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ
金属塩、アンモニウム塩およびアルキルエステル類、ア
クリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導
体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれ
らの塩類またはアルキルエステル類等をあげることがで
きる。また、不飽和カルボン酸等、耐炎化反応を促進す
る重合性不飽和単量体を共重合することが好ましい。そ
の共重合量は0.1〜10重量%であることが好まし
く、0.3〜5重量%であることがより好ましく、0.
5〜3重量%であることがさらに好ましい。
【0063】不飽和カルボン酸の具体例としては、アク
リル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シト
ラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等を
あげることができる。また、高強度の炭素繊維を得るた
めには、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、酢酸ビ
ニルから選ばれた1種以上を共重合することが好まし
い。その共重合量は0.1〜10重量%であることが好
ましく、0.3〜5重量%であることがより好ましく、
0.5〜3重量%であることがさらに好ましい。不飽和
カルボン酸のアルキルエステルの具体例としては、アク
リル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロ
ピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、
メタクリル酸セカンダリーブチル等を挙げることができ
るが、その中でもアクリル酸、メタクリル酸のプロピ
ル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチルエステル
が好ましい。。
【0064】重合方法としては、懸濁重合、溶液重合、
乳化重合など従来公知の方法を採用することができる。
重合度としては、極限粘度([η])で好ましくは1.
0以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましく
は1.5以上である。なお、[η]は5.0以下にする
のが紡糸安定性の点から好ましい。
【0065】溶液紡糸の場合の溶媒は、有機、無機の公
知の溶媒を使用することができ、具体的にはジメチルス
ルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、硝酸、ロダンソーダ水溶液および塩化亜鉛水溶液
などを溶媒とするポリマー溶液を紡糸原液とする。
【0066】重合体は公知の方法によってプリカーサー
とすることができる。紡糸は、直接凝固浴中へ紡出する
湿式紡糸法や、一旦空気中へ紡出した後に浴中凝固させ
る乾湿式紡糸法、あるいは乾式紡糸法、溶融紡糸によっ
てもよいが、高強度の炭素繊維を得るためには乾湿式紡
糸が好ましい。
【0067】溶媒、可塑剤を使用する紡糸方法による時
には、紡出糸を直接浴中延伸してもよいし、また、水洗
して溶媒、可塑剤を除去した後に浴中延伸してもよい。
浴中延伸の条件は、通常、50〜98℃の延伸浴中で約
2〜6倍に延伸する。浴中延伸後の糸条はホットドラム
などで乾燥することによって乾燥緻密化が達成される。
乾燥温度、時間などは適宜選択することができる。ま
た、必要に応じて乾燥緻密化後の糸条をより高温(たと
えば加圧スチーム中)で延伸することもおこなわれ、こ
れらによって、所定の繊度、配向度を有するプリカーサ
ーとすることができる上記紡糸工程のいずれかの工程で
糸条に本発明のシリコーン油剤を付与すればよいが、単
糸間接着の抑制という観点からは、乾燥緻密化前の水膨
潤状態の糸条に付与することが好ましい。本発明のシリ
コーン油剤を糸条に付与する方法としては、均一に付与
できれば特に制限はないが、工程油剤浴中の駆動、非駆
動ローラー、あるいは固定、非固定のガイドバーへ糸条
を掛けて糸条に付与する方法、上方へ吹き出したシリコ
ーン油剤中に糸条を走行させて付与する方法、走行して
いる糸条に上方よりシリコーン油剤を落下させる方法、
シリコーン油剤を噴霧した空間に糸条を走行させる方法
など種々考えられ、適宜選択することができる。また、
均一に付与するという観点からは、糸条の糸幅が広がっ
ているところで付与するのが好ましく、具体的には30
00フィラメントあたり3〜50mmが好ましい。
【0068】糸条に付与する各成分の比が本発明のシリ
コーン油剤の含有率比と同じであれば、各成分を別個に
付与することもできる。その場合、乾燥緻密化前までに
すべての成分を付与することが重要である。
【0069】強度の高い炭素繊維を得るためには、緻密
性の高いプリカーサーが有効である。緻密性としては、
ヨウ素吸着法による明度差ΔLの値が、好ましくは45
以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは15
以下の緻密なプリカーサーがよい。ΔLが45以下の緻
密なプリカーサーを得るための手段としては、乾湿式紡
糸、紡糸原液の高濃度化、紡糸原液および凝固浴液の低
温化および凝固時の低張力化などにより凝固糸の膨潤度
を低くおさえ、かつ浴延伸時の延伸段数、延伸倍率およ
び延伸温度の最適化により浴延伸糸の膨潤度を低くおさ
えることが有効である。
【0070】なお、ΔLは以下の方法により求めた値で
ある。
【0071】繊維長5〜7cmの乾燥試料を約0.5g
精秤し、200mlの共栓付三角フラスコに採り、これ
にヨウ素溶液(I2 :51g、2、4−ジクロロフェノ
ール10g、酢酸90gおよびヨウ化カリウム100g
を精秤し、1lのメスフラスコに移して水で溶かして定
容とする)100mlを加えて、60℃で50分間振盪
しながら吸着処理をおこなう。ヨウ素を吸着した試料を
流水中で30分間水洗した後、遠心脱水(2000rp
m×1分)してすばやく風乾する。この試料を開繊した
後、ハンター型色差計で明度(L値)を測定する(L1
)。一方、ヨウ素の吸着処理をおこなわない対応の試
料を開繊し、同様に前記ハンター型色差計で、明度(L
0 )を測定し、L0 −L1 により明度差ΔLを求める。
【0072】本発明において、プリカーサーの単繊維繊
度としては、強度向上の観点から引き続く耐炎化工程お
いて焼成ムラを起こさないよう細い方が好ましく、好ま
しくは1.5d以下、より好ましくは1.0d以下、さ
らに好ましくは0.1〜0.8dである。
【0073】かかるプリカーサーを焼成することにより
高性能な炭素繊維とすることができる。耐炎化条件とし
ては、従来公知の方法を採用することができ、酸化性雰
囲気中200〜300℃の範囲で、緊張、あるいは延伸
条件下が好ましく使用され、密度が好ましくは1.25
g/cm3 以上、より好ましくは1.30g/cm3
上に達するまで加熱処理される。この密度は、1.60
g/cm3 以下にとどめるのが一般的であり、これ以上
にすると、物性が低下することがある。
【0074】一般に雰囲気については、公知の空気、酸
素、二酸化窒素、塩化水素などの酸化性雰囲気を使用で
きるが、経済性の面から空気が好ましい。
【0075】耐炎化を完了した糸条は、従来公知の方法
で不活性雰囲気中炭化処理をおこなう。炭化温度として
は、得られる炭素繊維の物性から1000℃以上が好ま
しく、さらに必要に応じて2000℃以上の温度で黒鉛
化することができる。また、350〜500℃および1
000〜1200℃における昇温速度は好ましくは50
0℃/分以下であり、より好ましくは300℃/分以
下、さらに好ましくは150℃/分以下である。これに
より、ボイドなど内部欠陥の少ない緻密な炭素繊維を得
ることができる。なお、この昇温速度が10℃/分以下
では生産性が低くなりすぎる。また、350〜500℃
あるいは2300℃以上において好ましくは1%以上、
より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上
の延伸をおこなうことが緻密性向上の上で重要である。
なお、40%をこえる延伸は毛羽が発生しやすくなるた
め好ましくない。
【0076】そして、このようにして得られた炭素繊維
は、酸またはアルカリ水溶液からなる電解槽中で電解酸
化処理を施したり、気相または液相での酸化処理を施す
ことにより、複合材料における炭素繊維とマトリックス
樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
【0077】特に、短時間で酸化処理でき、酸化程度の
コントロールが容易であることから電解酸化が好まし
い。電解処理の電解液としては酸性、アルカリ性いずれ
も採用できる。酸性電解質としては水溶液中で酸性を示
すものであればよく、具体的には硫酸、硝酸、塩酸、リ
ン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ
酸、アクリル酸、マレイン酸などの有機酸、硫酸アンモ
ニウム、硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。好
ましくは強酸性を示す硫酸、硝酸がよい。アルカリ性電
解液としては水溶液中でアルカリ性を示すものであれば
よく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化バリウムなどの水酸化物、アンモニア、炭酸ナト
リウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩類、酢酸ナト
リウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩類、さらにこれ
らのカリウム塩、バリウム塩あるいは他の金属塩、およ
びアンモニウム塩、水酸化テトラエチルアンモニウムま
たはヒドラジン等の有機化合物が挙げられるが、好まし
くは樹脂の硬化障害をおこすアルカリ金属を含まない炭
酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラ
アルキルアンモニウム類などが好ましい。
【0078】電気量は被処理炭素繊維の炭化度に合わせ
て最適化することが好ましく、高弾性率糸はより大きな
電気量が必要である。表層の結晶性の低下を進ませ、生
産性を向上する一方、炭素繊維基質の強度低下を防ぐ観
点から、電解処理は小さい電気量で複数回処理を繰り返
すのが好ましい。具体的には、電解槽1槽あたりの通電
電気量は5クーロン/g・槽(炭素繊維1g、1槽あた
りの電気量)以上、100クーロン/g・槽以下が好ま
しく、より好ましくは10クーロン/g・槽以上、80
クーロン/g・槽以下、さらに好ましくは20クーロン
/g・槽以上、60クーロン/g・槽以下がよい。ま
た、表層の結晶性の低下を適度な範囲とする観点からは
通電処理の総電気量は5〜1000クーロン/g、さら
には10〜500クーロン/gの範囲とするのが好まし
い。
【0079】電解処理または洗浄処理をおこなった後、
水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温
度が高すぎると炭素繊維の再表面に存在する官能基が熱
分解によって消失しやすいため、できる限り低い温度で
乾燥することが望ましいが、あまりに低すぎると乾燥に
時間がかかりすぎたり、乾燥機の機長が大きくなりすぎ
たりする。かかる観点から、具体的には乾燥温度を好ま
しくは80〜250℃、より好ましくは100〜210
℃、さらに好ましくは120〜210℃として乾燥する
のがよい。
【0080】さらに、必要に応じて従来公知の技術によ
りサイジング付与などをおこなうことができる。
【0081】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。
【0082】なお、本発明における引張強度は樹脂含浸
ストランド法により求めた。
【0083】[引張強度]“ベークライト”ERL−4
221(登録商標、ユニオン・カーバイド(株)製)/
三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3 ・MEA)/
アセトン=100/3/4部を炭素繊維に含浸し、得ら
れた樹脂含浸ストランドを130℃で30分間加熱して
硬化させ、JIS−R−7601に規定する樹脂含浸ス
トランド試験法に従って測定した。
【0084】また、ガムアップ量は以下のようにして測
定した。
【0085】[ガムアップ量]約10時間連続して糸条
を走行させた後、乾燥緻密化工程以降のローラーに付着
した固形物をはぎとりその重量を測定した。
【0086】また、シリコーンとしては基本骨格がジメ
チルシロキサンである、下記のようなものを用いた。
【0087】・アミノ変性シリコーン−25℃における
動粘性率が2500×10-62 /s、変性量が1%で
あるもの ・エポキシ変性シリコーン−25℃における動粘性率が
10000×10-62/s、変性量が1%であるもの ・エチレンオキサイド変性シリコーン−25℃における
動粘性率が500×10-62 /s、変性量が50%で
あるもの 実施例1 ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、
アクリロニトリル98重量%、イタコン酸1重量%とイ
ソブチルメタクリレート1重量%とからなる[η]が
1.70、重合体濃度20%の紡糸原液を得た。これを
3000フィラメント用の口金を通じて一旦空気中に吐
出して約3mmの空間部分を走行させた後、10℃のジ
メチルスルホキシド30%水溶液中で凝固させ、凝固糸
条を水洗後、4倍まで浴延伸した。続いて以下の構成を
有するシリコーン油剤、すなわち、シリコーン油剤に対
するシリコーン成分の含有率が2.5%である水系のエ
マルジョンであり、アミノ変性シリコーンのシリコーン
成分に対する含有率が30%、エポキシ変性シリコーン
のシリコーン成分に対する含有率が30%、エチレンオ
キサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有
率が15%、炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対す
る含有率が0.01%であるシリコーン油剤を付与した
後乾燥緻密化した。
【0088】さらに、加圧スチーム中で2.5倍まで延
伸して単糸繊度0.8d、トータル繊度2400Dのプ
リカーサーを得た。
【0089】得られたプリカーサーを240〜280℃
の空気中で、延伸比1.05で加熱して密度1.37g
/cm3 の耐炎化糸を得た。ついで、窒素雰囲気中35
0〜500℃の温度領域での昇温速度を200℃/分と
し、2%の延伸をおこなった後、さらに1400℃まで
焼成した。
【0090】続いて濃度0.1モル/lの硫酸水溶液を
電解液として、10クーロン/gで電解処理、水洗し、
150℃の加熱空気中で乾燥した。このようにして得ら
れた炭素繊維の物性をおよび製糸工程におけるガムアッ
プ量およびシリコーン油剤のゴム化率を表1に示す。
【0091】実施例2 炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が
0.2%である以外は、実施例1と同様に処理して炭素
繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、
ゴム化率を表1に示す。
【0092】実施例3 炭酸アンモニウムのシリコーン成分に対する含有率が
1.0%である以外は、実施例1と同様に処理して炭素
繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、
ゴム化率を表1に示す。
【0093】実施例4 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
29%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が14%、炭酸アンモニウムのシ
リコーン成分に対する含有率が5.0%であるシリコー
ン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して炭
素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ
量、ゴム化率を表1に示す。
【0094】実施例5 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が13%、炭酸アンモニウムのシ
リコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコ
ーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様に処理して
炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ
量、ゴム化率を表1に示す。
【0095】実施例6 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が13%、炭酸アンモニウムのシ
リコーン成分に対する含有率が1%、架橋ポリメタクリ
ル酸メチルからなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシ
リコーン成分に対する含有率が10.0%であるシリコ
ーン油剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして炭素
繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、
ゴム化率を表1に示す。
【0096】実施例7 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が37%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
13%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が25%、ゴム化促進成分として
酢酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する
含有率が2.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以
外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊
維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0097】実施例8 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が12%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
36%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が24%、ゴム化促進成分として
酢酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する
含有率が2.0%、架橋ポリスチレンからなる平均粒子
径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率
が3.0%、であるシリコーン油剤を用いたこと以外は
実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の
物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0098】実施例9 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が12%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
48%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分として
炭酸水素アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対
する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこ
と以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭
素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0099】実施例10 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が45%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
12%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が14%、ゴム化促進成分として
炭酸水素アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対
する含有率が1.0%、ポリ4フッ化エチレンからなる
平均粒子径0.3μmの微粒子のシリコーン成分に対す
る含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと
以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0100】実施例11 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が46%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
24%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として塩
化アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する含
有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外
は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維
の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0101】実施例12 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が17%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
34%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が13%、ゴム化促進成分として
硫酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対する
含有率が0.3%、シリコーンゴムからなる平均粒子径
0.5μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が
15.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実
施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示す。
【0102】実施例13 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が30%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
30%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分とし
て、ジエタノールアミンを用い、そのシリコーン成分に
対する含有率が1.0%であるシリコーン油剤を用いた
こと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた
炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示
す。
【0103】実施例14 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が27%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
27%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が13%、ゴム化促進成分とし
て、ジエタノールアミンを用い、そのシリコーン成分に
対する含有率が1.0%、架橋ポリメタクリル酸メチル
からなる平均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成
分に対する含有率が10.0%であるシリコーン油剤を
用いたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得
た。得られた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率
を表2に示す。
【0104】実施例15 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
30%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が5%、ゴム化促進成分として、
アシルアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有
率が0.5%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は
実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の
物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0105】実施例16 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が19%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
28%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が24%、ゴム化促進成分とし
て、ジエチルアミンを用い、そのシリコーン成分に対す
る含有率が1.0%、フェノール樹脂からなる平均粒子
径0.5μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率
が5.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実
施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0106】実施例17 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
20%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が15%、ゴム化促進成分とし
て、トリエチルアミンを用い、そのシリコーン成分に対
する含有率が2.0%であるシリコーン油剤を用いたこ
と以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭
素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0107】実施例18 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が33%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
33%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が3.0%、ゴム化促進成分とし
て、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含
有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以
外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊
維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0108】実施例19 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が36%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
18%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が2.0%、ゴム化促進成分とし
て、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含
有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以
外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊
維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0109】実施例20 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
26%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が2.5%、ゴム化促進成分とし
て、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率
が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は
実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の
物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0110】実施例21 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が22%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
22%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が2.0%、ゴム化促進成分とし
て、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率
が30.0%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平
均粒子径0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する
含有率が10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと
以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0111】実施例22 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が17%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
17%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が1.5%、ゴム化促進成分とし
て、リン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率
が55.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は
実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の
物性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0112】実施例23 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が11%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
11%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が1.0%、ゴム化促進成分とし
て、炭酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率が
30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実
施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表2に示す。
【0113】実施例24 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が26%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
26%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が1.0%、ゴム化促進成分とし
てホウ酸アンモニウムを用い、そのシリコーン成分に対
する含有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いた
こと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた
炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表1に示
す。 比較例1 ゴム化促進成分を含まないシリコーン油剤を用いたこと
以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0114】比較例2 ゴム化促進成分を含まないシリコーン油剤を用いたこと
以外は実施例6と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素
繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0115】比較例3 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が29%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
29%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコー
ン成分に対する含有率が14%、ポリ4フッ化エチレン
からなる平均粒子径0.3μmの微粒子のシリコーン成
分に対する含有率が5.0%であるシリコーン油剤を用
いたこと以外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得ら
れた炭素繊維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に
示す。
【0116】比較例4 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が70%、エチ
レンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対す
る含有率が5%、ゴム化促進成分として、炭酸アンモニ
ウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.
0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実施例1
と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性、ガ
ムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0117】比較例5 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が70%、エチ
レンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対す
る含有率が5%、ゴム化促進成分として、炭酸アンモニ
ウムを用い、そのシリコーン成分に対する含有率が1.
0%、架橋ポリメタクリル酸メチルからなる平均粒子径
0.1μmの微粒子のシリコーン成分に対する含有率が
10.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実
施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0118】比較例6 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、エポキシ変性シ
リコーンのシリコーン成分に対する含有率が60%、エ
チレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン成分に対
する含有率が15%、ゴム化促進成分として、ジエタノ
ールアミンを用い、そのシリコーン成分に対する含有率
が1.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は実
施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物
性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0119】比較例7 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が40%、エポ
キシ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が
8%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン
成分に対する含有率が4.5%、ゴム化促進成分とし
て、イタコン酸を用い、そのシリコーン成分に対する含
有率が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以
外は実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊
維の物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0120】比較例8 シリコーン油剤に対するシリコーン成分の含有率が2.
5%である水系のエマルジョンであり、アミノ変性シリ
コーンのシリコーン成分に対する含有率が4%、エポキ
シ変性シリコーンのシリコーン成分に対する含有率が4
0%、エチレンオキサイド変性シリコーンのシリコーン
成分に対する含有率が8.5%、ゴム化促進成分とし
て、ホウ酸を用い、そのシリコーン成分に対する含有率
が30.0%であるシリコーン油剤を用いたこと以外は
実施例1と同様に炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の
物性、ガムアップ量、ゴム化率を表3に示す。
【0121】
【表1】
【表2】
【表3】
【0122】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のシリコー
ン油剤により、高強度の炭素繊維を得ることのできる炭
素繊維用プリカーサーを生産性よく製造することができ
る。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリ
    コーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分Cを
    含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが0.25〜
    4.0であることを特徴とするシリコーン油剤。 成分A:アミノ変性シリコーン、 成分B:エポキシ変性シリコーン、 成分C:ゴム化促進成分
  2. 【請求項2】炭素繊維用プリカーサー製造に用いるシリ
    コーン油剤であって、下記の成分A、成分B、成分C、
    成分Dを含み、かつ成分Aと成分Bの重量比A/Bが
    0.25〜4.0であることを特徴とするシリコーン油
    剤。 成分A:アミノ変性シリコーン 成分B:エポキシ変性シリコーン 成分C:ゴム化促進成分 成分D:有機高分子またはシリコーン化合物からなる1
    種類または複数種類の微粒子
  3. 【請求項3】ゴム化率が、10〜80%であることを特
    徴とする請求項1または2のいずれかに記載のシリコー
    ン油剤。
  4. 【請求項4】成分Cが、多塩基酸、多塩基酸に由来する
    塩、アミン類、塩基度が2以下の酸に由来するアンモニ
    ウム塩からなる群より選ばれる1成分または複数成分で
    あることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    シリコーン油剤。
  5. 【請求項5】成分Cのアミン類が、脂肪族であり、かつ
    1分子を構成する炭素数が3〜8であることを特徴とす
    る請求項4に記載のシリコーン油剤。
  6. 【請求項6】シリコーン成分に対する成分Aおよび成分
    Bの合計含有率が、30〜95%であることを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  7. 【請求項7】成分Cの多塩基酸又は多塩基酸に由来する
    塩が、シリコーン成分に対して10〜60%含まれてい
    ることを特徴とする請求項4または6のいずれかに記載
    のシリコーン油剤。
  8. 【請求項8】成分Cのアミン類または塩基度が2以下の
    酸に由来するアンモニウム塩が、シリコーン成分に対し
    て0.1〜5%含まれていることを特徴とする請求項4
    〜6のいずれかに記載のシリコーン油剤。
  9. 【請求項9】シリコーン成分に対する成分Dの含有率
    が、1〜20%であることを特徴とする請求項2〜8の
    いずれかに記載のシリコーン油剤。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載のシリコ
    ーン油剤を繊維表層に有することを特徴とする炭素繊維
    用プリカーサー。
  11. 【請求項11】請求項1〜9のいずれかに記載のシリコ
    ーン油剤を糸条に付与することを特徴とする炭素繊維用
    プリカーサーの製造方法。
  12. 【請求項12】請求項11に記載の製造方法によって得
    られた炭素繊維用プリカーサーを焼成することを特徴と
    する炭素繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006070706A1 (ja) * 2004-12-27 2006-07-06 Toray Industries, Inc. 炭素繊維前駆体繊維用油剤、炭素繊維および炭素繊維の製造方法
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CN114213689A (zh) * 2021-12-28 2022-03-22 湖南东映碳材料科技有限公司 一种准各向同性高导热碳纤维预浸料及其制备方法与应用

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