JP2001248025A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維の製造方法

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JP2001248025A
JP2001248025A JP2000252139A JP2000252139A JP2001248025A JP 2001248025 A JP2001248025 A JP 2001248025A JP 2000252139 A JP2000252139 A JP 2000252139A JP 2000252139 A JP2000252139 A JP 2000252139A JP 2001248025 A JP2001248025 A JP 2001248025A
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carbon fiber
acrylic
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Michinori Higuchi
徹憲 樋口
Isao Nakayama
功 中山
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アクリル系繊維が、多数の繊維束が集束した高
密度な糸条であっても、安定かつ高効率に耐炎化処理す
ることができ、高度の強度特性を有する炭素繊維及び黒
鉛繊維を提供すること。 【解決手段】アクリル系繊維を、有機化合物の蒸気蒸気
を含む雰囲気中、180〜300℃で耐炎化処理し、次
に不活性雰囲気中、800〜2、000℃で炭化処理す
る炭素繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクリル系炭素繊
維の製造方法に関する。さらに詳しくは、アクリル系前
駆体繊維が、多数の単繊維が集束した高密度な糸条であ
っても、安定かつ高効率で、高度の強度物性を有する炭
素繊維が得られるアクリル系炭素繊維の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】アクリル系炭素繊維は比強度、比弾性率
等の力学特性に優れることから、広く工業的に利用され
ている。
【0003】アクリル系炭素繊維は、アクリル系繊維を
空気等の酸化性雰囲気中で加熱する耐炎化処理と、さら
に高温で、窒素等の不活性ガス雰囲気中で加熱する炭化
処理を経て製造される。
【0004】耐炎化反応は、アクリル系繊維の高分子鎖
を酸化すると共に高分子鎖に結合したニトリル基を環化
することにより、続く炭化工程での高温での熱処理に耐
えうる、安定な構造を備えた繊維に転換させるために行
う。
【0005】かかる耐炎化反応は高分子鎖の酸化反応に
よる多量の発熱を伴う発熱反応であり、耐炎化処理の速
度を高めるべく加熱温度を高くしたり、生産性を高める
べく、多量のアクリル系繊維を耐炎化工程に供給する
と、繊維内の発熱量が過大となり蓄熱現象により反応が
暴走する問題があった。さらに、加熱温度を高くし過ぎ
ると、単繊維同士が相互に融着し、得られる炭素繊維の
強度特性が低下することがあり、一方、耐炎化処理の加
熱温度を低くし過ぎると、耐炎化処理に長時間を要し、
炭素繊維の生産性が著しく低下する問題があった。
【0006】これら問題に対処するため、発熱量が小さ
い不活性雰囲気中のみでアクリル系繊維を耐炎化処理す
ることが考えられる。しかし、かかる処理のみでは、環
化反応の速度が遅延化し、得られる耐炎化繊維の強度が
低下したり、得られる炭素繊維の強度特性が劣ったもの
となったり、また炭化収率が低くなるといった問題が生
じる懸念がある。
【0007】耐炎化処理の高効率化のため、特公昭53
−22576号公報、特公昭58−214535号公
報、特開昭58−174630号公報に、空気中での熱
処理の後、さらに酸素濃度を調節した不活性雰囲気中で
熱処理することによって耐炎化処理し、それを炭化処理
する技術が開示されている。
【0008】しかし、かかる手法によれば、空気中での
耐炎化反応を伴うことから、初期の発生熱が大きく、太
糸条や多量の糸条を高効率で処理することが事実上不可
能であった。
【0009】また、特開平7−292526号公報に
は、アクリル系繊維を酸素濃度0.01〜3容量%の不
活性雰囲気中で熱処理し、次いで酸化性雰囲気中で熱処
理後、炭化処理する炭素繊維の製造方法が開示されてい
るが、かかる手法によれば、環化速度が遅くなることか
ら、耐炎化処理の効率が大きく低下していた。
【0010】さらに、特開平2−300324号公報、
特開平2−300325号公報には常圧又は減圧下で、
繊維を耐炎化処理又は不融化処理の後、さらに加圧下で
耐炎化処理又は不融化処理する技術が開示されている
が、かかる手法によれば、生産性が高まり単糸間接着は
減少するものの、耐炎化処理の効率が不充分であり、ま
た、装置が大型化する問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アク
リル系繊維が、多数の繊維束が集束した高密度な糸条で
あっても、安定かつ高効率に耐炎化処理することがで
き、高度の強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維を提
供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を達
成するために次の構成を有する。即ち、アクリル系繊維
を、有機化合物の蒸発蒸気を含む雰囲気中、180〜3
00℃で耐炎化処理し、次に不活性雰囲気中、800〜
2、000℃で炭化処理する炭素繊維の製造方法であ
る。
【0013】また、本発明は、上記課題を達成するため
に次の構成を有する。即ち、前記製造方法により得られ
た炭素繊維を、不活性雰囲気中、2、000〜3、00
0℃で黒鉛化処理する黒鉛繊維の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者等は、アクリル系繊維
を、特定温度範囲で耐炎化処理し、さらに不活性雰囲気
中、炭化処理する炭素繊維の製造方法について鋭意検討
した結果、有機化合物の蒸発蒸気を含む雰囲気中で耐炎
化処理することにより、アクリル系繊維が、多数の繊維
束が集束した高密度な糸条であっても、高効率に耐炎化
が進み、その結果、高度の強度特性を有する炭素繊維及
び黒鉛繊維が安定に得られることを見いだすに至り、本
発明に到達した。
【0015】本発明において、炭素繊維等の原料となる
前駆体繊維は、アクリル系共重合体をからなるものが良
く、かかるアクリル系共重合体は、85モル%以上、好
ましくは90モル%以上、より好ましくは94モル%以
上のアクリロニトリルと、いわゆる耐炎化促進成分が共
重合された共重合体からなるものが良い。かかる共重合
体を重合する方法としては、従来公知の溶液重合法、懸
濁重合法、乳化重合法等が適用できる。
【0016】耐炎化促進成分としては、ビニル基を含有
する化合物(以下、ビニル系モノマーと略記)が好まし
い。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン
酸等、より好ましくは、これらの一部又は全量を、アン
モニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタ
コン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられ
る。
【0017】アクリル系共重合体を紡糸する際に、有
機、無機の従来公知の溶媒が使用できるが、有機溶媒を
使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキ
シド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等
が挙げられる。なお、無機溶媒のうち、硝酸、ロダンソ
ーダ水溶液、塩化亜鉛水溶液等の無機塩の濃厚水溶液を
使用すると、所望する表面粗さを有する炭素繊維が得ら
れないときがあり好ましくない。
【0018】上述したような、アクリル系共重合体と溶
媒からなる紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾
式紡糸法、又は溶融紡糸法、好ましくは湿式紡糸法又は
乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して
繊維を凝固せしめる。
【0019】湿式紡糸法や乾湿式紡糸法では、凝固速
度、延伸方法等を適宜制御することにより、前駆体繊維
表面の表面粗さを制御することができる。例えば、凝固
速度を遅くすると、繊維表面に形成されるスキン層が薄
くかつ繊維を構成するフィブリル単位が大きい凝固糸が
得られるようになり、かかる凝固糸を後述するような方
法で延伸すると、表面の粗い前駆体繊維が得られるよう
になる。但し、凝固速度を遅くし過ぎると、紡糸速度を
増すことが不可能となるなどの不都合が生じることがあ
る。一方、凝固速度を速くすると、凝固糸の内部構造が
粗くなり、高い強度を有する炭素繊維が得られないこと
がある。
【0020】本発明において、前記凝固浴には、いわゆ
る凝固促進成分を含ませることができるが、凝固浴の温
度が低く、凝固促進成分の量が少ない程、凝固速度は遅
くなる傾向がある。凝固促進成分としては、前記アクリ
ル系共重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と
相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用
するのが好ましい。
【0021】凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた
後、水洗、延伸、乾燥及び油剤付与等を経て、アクリル
系繊維が得られる。また、油剤付与後、さらにスチーム
で延伸することもできる。
【0022】ここで、凝固後の糸条は、水洗せずに直接
延伸浴中で延伸しても良いし、溶媒を水洗除去後に浴中
で延伸しても良い。
【0023】かかる浴中延伸は、通常、30〜98℃に
温調された単一又は複数の延伸浴中で行われ、これら水
洗浴や延伸浴においては、前述した紡糸原液に用いる溶
媒の水溶液中の含有率は、凝固浴における溶媒の含有率
を上限とするのが良い。
【0024】浴延伸の後、糸条にシリコーン等からなる
油剤を付与するのが好ましい。かかるシリコーン油剤
は、変性シリコーンで、かつ、耐熱性の高いアミノ変性
シリコーンを含有するものが好ましい。
【0025】糸条の高密度化による製造コスト低減のた
め、アクリル系繊維のフィラメント数は、1、000〜
3、000、000、好ましくは12、000〜3、0
00、000、より好ましくは24、000〜2、50
0、000、さらに好ましくは36、000〜2、00
0、000であるのが良く、アクリル系繊維の単糸繊度
は、0.56〜2.2dtex、好ましくは0.8〜
1.7dtex、より好ましくは1〜1.7dtexで
あるのが良い。
【0026】本発明においては、有機化合物の蒸発蒸気
を含む雰囲気中でアクリル系繊維を耐炎化処理する。こ
の際の雰囲気温度は、180〜300℃、好ましくは2
00〜300℃、より好ましくは220〜300℃であ
るのが良い。雰囲気温度が、上記範囲から外れると、有
機化合物の繊維内部への浸透が阻害され、耐炎化処理の
効率が低下することがある。ここで「有機化合物の蒸発
蒸気」とは、有機化合物が加熱され、気化して微粒子化
した状態を意味し、その一部が凝集したいわゆる湿り蒸
気状態であっても良い。また、「有機化合物の蒸発蒸気
を含む雰囲気」とは、有機化合物の蒸発蒸気が繊維の耐
炎化に実質的に関与する状態で、雰囲気中に存在する状
態をいい、具体的には、全圧1000〜1300hPaで耐炎化処
理する場合、有機化合物の蒸発蒸気の分圧が50〜1300hP
a、好ましくは160〜1300hPa、より好ましくは400〜1300
hPaの範囲の状態であるのが良い。
【0027】ここで蒸発蒸気の分圧は、使用する有機化
合物について、各温度における蒸気圧をU字管圧力計を
用いて実測して温度−蒸気圧曲線を作成しておき、得ら
れた曲線より、耐炎化処理の雰囲気温度を対照させて求
めた。例えば、有機化合物が沸騰状態であると、大気圧
1013hPa下で耐炎化処理する場合は、共存する空気の分
圧が0hPaに接近し、系内の有機化合物の蒸発蒸気の分
圧が実質的に大気圧1013hPaと等しくなる。
【0028】本発明においては、有機化合物の蒸発蒸気
を含む雰囲気、即ち気体中のみで耐炎化処理するのが好
ましいが、有機化合物が一部液体の状態であっても良い
し、蒸発蒸気を含む雰囲気中での耐炎化処理と、有機化
合物の液体中での耐炎化処理を適宜組み合わせて処理し
ても良い。
【0029】本発明において、耐炎化処理に要する時間
は、耐炎化処理の反応速度に応じて決定することがで
き、0.01〜240分、好ましくは10〜100分、
より好ましくは20〜50分の範囲で適宜設定できる。
また、耐炎化処理の雰囲気圧力は、密閉が困難なため通
常、大気圧とするのが好ましいが、加圧雰囲気で処理す
ることにより耐炎化処理に要する時間を短縮することが
できる。
【0030】本発明において、耐炎化処理は、実質的に
酸素が存在しない環境、即ち、酸素による酸化反応が生
じない程度まで酸素量を減少させた環境で行うことも可
能である。
【0031】また、耐炎化処理はいわゆるバッチ処理、
連続処理のいずれの方法によっても良いが、生産性の観
点から連続処理が好ましい。
【0032】本発明で用いる有機化合物の具体例として
は、多置換アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナ
フタレン、ビフェニル、アルキルビフェニル、水素化ト
リフェニル等の芳香族炭化水素、ホルムアミド、アセト
アミド、プロピオアミド等のアミド、フェニルメチルケ
トン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケト
ン、ジフェニルケトン等のケトン、フェニルメチルアル
コール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピル
アルコール等のモノアルコール、エチレングリコール、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のア
ルキレングリコール、グリセリン等のトリグリコール、
ペンタエリトリット等のテトラグリコール以上のポリグ
リコール、エチレングリコールのモノメチル、モノエチ
ル、モノプロピル、モノブチル等のモノアルキルエーテ
ル又は、エチレングリコールのモノフェニル、モノトル
イル等のモノアリールエーテル、ジフェニルエーテル、
アルキルフェニルエーテル、アルキルアリールエーテル
等のエーテル等が挙げられる。
【0033】また、有機化合物として、コハク酸のジメ
チル、ジエチル、ジプロピル等の脂肪族カルボン酸エス
テル、安息香酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル等
のエステル化合物、テレフタル酸のジメチル、ジエチ
ル、ジプロピル等の芳香族カルボン酸ジエステルも使用
できる。
【0034】さらに、有機化合物として、アミン系化合
物、チオール系化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トル
エンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホ
キシド等のスルホン化合物、スルフィン化合物、アミン
オキシド系化合物、トリフェニルメチルカチオン系化合
物、ニトロキシド化合物、ジクロロ−ジシアノベンゾキ
ノン、ナフトキノン、アントラキノン、キノン、ニトロ
ベンゼン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、
p−ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロナフタレ
ン等のニトロ化合物も使用できる。
【0035】本発明においては、有機化合物に、フッ素
系化合物やシリコーン系化合物が含まれるものとする。
具体的には、フッ素系化合物として、ヘキサフロロエー
テル等のパーフルオロポリエーテル系化合物が挙げら
れ、また、シリコーン系化合物としてジメチルシリコー
ン、ジメチルフェニルシリコーン等のポリシロキサン系
化合物等が挙げられる。
【0036】なお、本発明においては、上記したような
有機化合物を2種以上混合して用いても良い。中でも、
蒸発蒸気の耐熱性の観点から、芳香族炭化水素及び/又
は芳香族エーテルを用いるのが好ましい。
【0037】また、有機化合物は、その一部又は全部が
いわゆる酸化性化合物であると、耐炎化処理の効率が高
まり好ましい。ここで、酸化性化合物とは、例えば、ス
ルホン化合物、スルフィン化合物、キノン、ニトロ化合
物等の、水素受容性或いは酸素放出性のある有機化合物
をいい、具体的には、「実験化学講座23、有機合成
4、酸化反応」(出版社:丸善)の第6章(299頁)
に記載されている、ジメチルスルホキシド、テトラクロ
ロー1,2−ベンゾキノン、ニトロベンゼン等が該当す
る。
【0038】これら化合物と、アクリル系繊維のポリマ
ー成分との親和性が強すぎることにより、繊維の溶解や
糸切れが生じる場合には、アクリル系繊維のポリマー骨
格に一部にエチレンジメタクリレートのような3次元架
橋成分を導入したり、酸化処理、紫外線処理、電子線処
理等を利用してポリマー成分の一部又は全部を架橋する
こともできる。
【0039】本発明では、耐炎化処理後に繊維に付着し
ている有機化合物や反応生成物は、乾燥することにより
除去することができ、また、例えばメチルアルコール、
エチルアルコール、アセトン等の溶媒で洗浄除去するこ
ともできる。また、溶媒で洗浄除去する前に2以上のロ
ーラー間に千鳥状に耐炎化繊維を通過させて耐炎化繊維
に付着している液状物を繊維表面に浮き上がらせること
もできる。
【0040】耐炎化処理途上の繊維は、ニトリル基が閉
環した環化構造を有するが、本発明では、この際、環化
に関与しないニトリル基の残存率が0〜40%、好まし
くは0〜20%、より好ましくは0〜10%となるよう
に耐炎化処理するのが良い。
【0041】ここでニトリル基の残存率とは、耐炎化処
理途上の繊維から、赤外分光分析法により、後述する方
法で求めることができるものであり、環化率が高いほど
耐熱性が高いことになる。
【0042】本発明では本発明において、耐炎化処理の
進行度は、被処理繊維の密度を指標とすることができ
る。即ち密度が高い程、耐炎化処理の進行度が高いこと
になる。本発明では、被処理繊維の密度は、耐炎化処理
途上において、1.18〜1.35g/cm3、好ましくは
1.2〜1.3g/cm3であるのが良く、また、耐炎化完
了後の耐炎化繊維の密度は、1.35〜1.50g/cm3
であるのが良い。なお、耐炎化が完全に終了していな
い、密度が1.35g/cm3未満の繊維であっても、防火
服、断熱剤、ブレーキパッド等の用途に用いることもで
きる。
【0043】本発明においては、繊維を上述した方法で
耐炎化処理後、さらに不活性雰囲気中、800〜2、0
00℃、好ましくは1、000〜1、800℃、より好
ましくは1、200〜1、800℃で炭化処理すること
によって、各種強度特性に優れた炭素繊維を得ることが
できる。
【0044】また、かかる炭素繊維を、さらに不活性雰
囲気中、2、000〜3、000℃で加熱することによ
って、より優れた強度特性を備えた黒鉛繊維とすること
もできる。
【0045】得られた炭素繊維、黒鉛繊維はその表面改
質のため、電解処理することができる。電解処理に用い
る電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニ
ウムヒドロキシドといったアルカリ又はそれらの塩を水
溶液として使用することができる。ここで、電解処理に
要する電気量は、適用する炭素繊維、黒鉛繊維により適
宜選択することができる。
【0046】かかる電解処理により、得られる複合材料
において炭素繊維、黒鉛繊維とマトリックスとの接着性
が適正化でき、接着が強すぎることによる複合材料のブ
リトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題
や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との
接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しな
いといった問題が解消され、得られる複合材料におい
て、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた
強度特性が発現されるようになる。
【0047】この後、得られる炭素繊維に集束性を付与
するため、サイジング処理をすることもできる。サイジ
ング剤には、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を、使
用する樹脂の種類応じて適宜選択することができる。
【0048】本発明においては、得られる炭素繊維や黒
鉛繊維等の物性を高めるため、炭化処理前に、空気等の
酸化性雰囲気中、40〜400℃、好ましくは100〜
350℃、より好ましくは180〜300℃で、繊維を
酸化処理することもできる。酸化処理の所要時間は、被
処理繊維の搬送速度を調整し、0.01〜20分の間と
するのが良い。かかる範囲から外れると工程通過性が低
下し、収率や得られる繊維の品位が低下することがあ
る。
【0049】ここにいう酸化処理とは、例えば、加熱空
気処理のことをいい、処理する箇所としては、耐炎化処
理前、前炭化処理前、炭化処理前等が挙げられるが、中
でも、前炭化処理での工程通過性を向上させる観点か
ら、耐炎化出において酸化処理するのが好ましい。
【0050】本発明において、後述する実施例では、各
物性値は以下の方法により測定した。 <炭素繊維の引張強度及び引張弾性率>JIS R76
01「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。
【0051】ここで、測定する炭素繊維の樹脂含浸スト
ランドは、ユニオンカーバイド(株)製、”BAKEL
ITE(登録商標)”ERL4221(100重量部)
/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセ
トン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、
30分で硬化させて作製した。また、ストランドの測定
本数は6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維
の引張強度、引張弾性率とした。
【0052】なお、耐炎化繊維、黒鉛繊維の引張強度等
もこれに準じて測定した。 <耐炎化繊維中のニトリル基の残存率>赤外分光法によ
り測定した。測定手順を以下に示す。 1.赤外分光法用錠剤の作成 測定するアクリル系共重合体を液体窒素により凍結後、
粉砕して粉末試料Aを、KBr1g、フェロシアン化カ
リ10mgを混合して粉末試料Bをそれぞれ調整した。
【0053】粉末試料A2mg、粉末試料B10mg、
及びKBr300mgとを乳鉢ですりつぶしながら混合
して混合粉末とし、さらにプレスを用いて赤外分光法用
錠剤を作製した。 2.ニトリル基残存率の測定 ここでは、赤外分光器として、Perkin Elmer社製、Para
gon1000型を用い、フェロシアン化カリの2050cm-1 バン
ドと、ニトリル基の2250cm-1バンドの吸光度比D2250/
D2050を測定した。
【0054】熱処理する前後の試料から、吸光度比の平
均値(n=3)をとり、次式よりニトリル基の残存率を
求めた。
【0055】ニトリル基残存率=熱処理後試料の吸光度
比/熱処理前試料の吸光度比×100%
【0056】
【実施例】以下、実施例を用いて、本発明をより具体的
に説明する。なお、これら実施例、比較例の内容は表1
〜4にも示した。[実施例1]アクリロニトリル99.
5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体を
ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重
合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで
吹き込み、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基を
アクリル系共重合体に導入し、共重合成分の含有率が2
2%の紡糸原液を得た。
【0057】この紡糸原液を、40℃で、直径0.15
mm、孔数6、000の紡糸口金を用い、一旦空気中に
吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコント
ロールした35%ジメチルスルホキシドの水溶液からな
る凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とし
た。
【0058】この凝固糸条を、常法により水洗した後、
温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコー
ン系シリコーン油剤を付与して延伸糸を得た。
【0059】この延伸糸を、180℃の加熱ローラーを
用いて、乾燥緻密化処理を行い、3kg/cm2−Gの
加圧スチーム中で、延伸することにより、製糸全延伸倍
率が13倍、単糸繊度0.9dtex、単繊維本数1
2、000本のアクリル系繊維を得た。
【0060】アクリル系繊維を、無撚状態で0.9倍に
延伸しつつ、雰囲気の全圧が大気圧1013hPa、ニト
ロベンゼンの蒸発蒸気を含む雰囲気中、210℃で60
分耐炎化処理してニトリル基の残存率が35%の耐炎化
繊維を得た。表2に示すとおり、得られた耐炎化繊維の
引張強度は、良好であった。
【0061】この耐炎化繊維を、300℃で5分間乾燥
処理し、次に不活性雰囲気中、1.04倍に延伸しつつ
300〜800℃で予備炭化し、次いで不活性雰囲気
中、1、400℃で炭化処理した。
【0062】この後、硫酸水溶液中で、10クーロン/
g−CFの陽極酸化処理を行った。この結果、表2に示
すとおり、非常に良好な強度特性を有する炭素繊維が得
られた。
【0063】得られた炭素繊維を、さらに不活性雰囲気
中、2、000℃で黒鉛化処理した後、硫酸水溶液中
で、10クーロン/g−CFの陽極酸化処理を行った。
この結果、表1に示すとおり、非常に良好な強度特性を
有する黒鉛繊維が得られた。 [実施例2〜6]耐炎化処理に使用する有機化合物の種
類を、表1に示すように種種変えた以外は実施例1と同
様にして炭素繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0064】この結果、表2に示すとおり、非常に良好
な強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維が得られた。 [実施例7〜9]被処理繊維のフィラメント数を、表1
に示すように種種変えた以外は実施例6と同様にして炭
素繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0065】この結果、表2に示すとおり、非常に良好
な強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維が得られた。 [実施例10]耐炎化処理について、有機化合物の蒸発
蒸気を含む雰囲気中で20分、有機化合物の液体中で4
0分、それぞれ処理した以外は実施例6と同様にして炭
素繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0066】この結果、表2に示すとおり、非常に良好
な強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維が得られた。 [実施例11、12]耐炎化処理について、実施例11
ではヘキサフロロポリエーテル、実施例12ではジメチ
ルシリコーンの蒸発蒸気中で40分処理した以外は実施
例6と同様にして炭素繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0067】この結果、表2に示すとおり、非常に良好
な強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維が得られた。 [比較例1]実施例1で得られたアクリル系繊維を、無
撚状態で0.9倍に延伸しつつ、大気圧1013hPaの
空気中、260℃で耐炎化処理して、耐炎化繊維を得
た。表2に示すとおり、得られた耐炎化繊維の引張強度
は、やや低いものであった。
【0068】耐炎化処理後、不活性雰囲気中、1.04
倍に延伸しながら、300〜800℃で予備炭化し、さ
らに温度1、400℃で炭化処理した。
【0069】炭化処理後、硫酸水溶液中で、10クーロ
ン/g−CFの陽極酸化処理を行った。
【0070】この結果、得られた炭素繊維の強度特性
は、表2に示すとおり、やや低いものであった。 [比較例2]フィラメント数を変えた以外は比較例1と
同様にして炭素繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0071】表2に示すとおり、フィラメント数が増す
につれ、耐炎化繊維の強度は低くなり、耐炎化処理時の
内部蓄熱のため、炭化処理及び黒鉛化処理において糸切
れが生じた。 [比較例3]耐炎化処理に使用する有機化合物をO−キ
シレンとし、表1に示すように耐炎化処理の温度を変え
た以外は実施例1と同様にして耐炎化処理した。
【0072】表2に示すとおり、得られた耐炎化繊維の
引張強度は高めであったものの、耐炎化が十分に進行し
ていず、炭化処理及び黒鉛化処理において糸切れが生じ
た。 [比較例4]耐炎化処理に使用する有機化合物を水素化
トリフェニルとし、表1に示すように耐炎化処理の温度
を変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化処理した。
本例では、耐炎化途中で糸切れが生じた。 [実施例13〜24]アクリル系繊維を、表3に示すよ
うに耐炎化処理に使用する化合物の種類を種種変え、耐
炎化処理した。表2に示すとおり、得られた耐炎化繊維
の引張強度は、良好であった。
【0073】この後、炭化処理前、280℃で5分間、
空気中で酸化処理した以外は実施例1と同様にして炭素
繊維及び黒鉛繊維を得た。
【0074】この結果、表4に示すとおり、非常に良好
な強度特性を有する炭素繊維及び黒鉛繊維が得られた。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【発明の効果】本発明によれば、有機化合物の蒸発蒸気
を含む雰囲気中で耐炎化処理することから、特に多数の
単繊維が集束してなる高密度の糸条において蓄熱され易
い環化や酸化時に発生する反応熱を液体の伝熱により効
率的に除熱でき、その結果、非常に高効率に耐炎化が進
行し、これにより優れた強度特性を有する炭素繊維や黒
鉛繊維を安定に製造することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アクリル系繊維を、有機化合物の蒸発蒸気
    を含む雰囲気中、180〜300℃で耐炎化処理し、次
    に不活性雰囲気中、800〜2、000℃で炭化処理す
    る炭素繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】前記アクリル系繊維のフィラメント数が
    1、000〜3、000、000である請求項1記載の
    炭素繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】前記有機化合物が、芳香族炭化水素、アミ
    ド、ケトン、モノアルコール、アルキレングリコール、
    トリグリコール、テトラグリコール以上のポリグリコー
    ル、モノアルキルエーテル、モノアリールエーテル、エ
    ーテル、脂肪族カルボン酸エステル、エステル化合物、
    芳香族カルボン酸ジエステル、スルホン、スルフィン、
    アミンオキシド、トリフェニルメチルカチオン、ニトロ
    キシド、キノン、ニトロ化合物、パーフルオロポリエー
    テル系化合物、及びポリシロキサン系化合物からなる群
    から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載
    の炭素繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】前記蒸発蒸気を含む雰囲気が、実質的に酸
    素を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維
    の製造方法。
  5. 【請求項5】炭化処理する前に、酸化性雰囲気中、40
    〜400℃で酸化処理する請求項1〜4のいずれかに記
    載の炭素繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法
    で得られた炭素繊維を、不活性雰囲気中、2、000〜
    3、000℃で黒鉛化処理する黒鉛繊維の製造方法。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009041135A (ja) * 2007-08-08 2009-02-26 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物
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