JP4023226B2 - 炭素繊維束の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マトリックス樹脂との接着性およびコンポジット特性の優れた炭素繊維を提供するための、炭素繊維束の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、その比強度、非弾性率が高い特徴を生かして、多くの用途に使用されてきている。特に、アクリル系共重合体を出発原料とした炭素繊維は、比強度が高く加工性も優れているために、特に広く利用されている。
【0003】
炭素繊維は、一般的に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料として使用される。かかる複合材料において、炭素繊維の強度や弾性率を有効に利用するためには、炭素繊維束とマトリックス樹脂とが強固に接着する必要がある。そのために、炭素繊維束の製造工程の仕上げとして表面電解処理を施して炭素繊維表面に官能基を付与することが行なわれている。
【0004】
しかしながら、その製造工程においては、操業性の面から炭素繊維束の糸条張力が高く設定されているため、炭素繊維束内部の単繊維一本一本が均一な表面電解処理を受けているかどうかの課題がある。すなわち、炭素繊維束の糸条張力が高いために表面電解処理工程において、電解液が炭素繊維束内部まで浸透しにくく、炭素繊維束内部の繊維は外部の繊維と比較して表面電解処理を受けにくくなっていると推定される。このような炭素繊維束内部での単繊維の処理ムラは、コンポジットにしたとき、表面電解処理を受けにくい単繊維がマトリックス樹脂との結合が弱く剥離しやすい状態となるため、優れたコンポジット特性を得ることができない。
【0005】
また、これまでにもマトリックス樹脂との接着性を高めるために、炭素繊維束に、より強い表面電解処理を施す等の検討がなされてきたが、上記のような現象から処理ムラを助長させるだけでなく、炭素繊維束外部の単繊維は内部と比べて強く表面電解処理を受けるために逆に欠陥を呼応させ、コンポジット特性を低下させかねないという課題があった。
【0006】
また、近年、ラージトウ等の太物炭素繊維束が低コスト化の点から求められてきたため、上記のような問題が大きく関わってくるようになった。このような観点から、表面電解処理工程での炭素繊維束の処理ムラを解消させることが、コンポジット特性の向上に繋がる課題であると認識された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、ラージトウ等の太物炭素繊維束であっても、表面電解処理工程での炭素繊維束内部の単繊維の処理ムラを解消することにより、優れたコンポジット特性を発揮する炭素繊維束とし得る炭素繊維束の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を採用する。即ち、本発明の炭素繊維束の製造方法は、トータル繊度12000〜70000dtexの前駆体繊維束を耐炎化及び炭化して得た炭素繊維に、陽極槽と陰極槽の繰り返しからなる表面電解処理槽を用いて表面電解処理する炭素繊維束の製造方法であって、表面電解処理槽の前に電解液の浸漬槽を設け、該浸漬槽において複数本のローラーにより炭素繊維束をジグザグに走行させて、炭素繊維束にあらかじめ電解液を浸漬させ、その後表面電解処理を施すことを特徴とする炭素繊維束の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記観点から鋭意検討を重ねた結果、本発明では、表面電解処理槽の前に電解液の浸漬槽を設け、該浸漬槽において複数本のローラーにより炭素繊維束をジグザグに走行させて、炭素繊維束をあらかじめ電解液に浸漬させ、炭素繊維束内部まで電解液で置換し、その後、陽極槽と陰極槽の繰り返しからなる表面電解処理槽を用いて表面電解処理をおこなうことにより、トータル繊度12000〜70000dtexの前駆体繊維束を耐炎化及び炭化して得たラージトウ等の太物炭素繊維束であっても、その後の表面電解処理工程において炭素繊維束の繊維一本一本に均一な表面電解処理を施すことが可能となり、この結果、マトリックス樹脂との接着性が良好で、且つ優れたコンポジット特性を発揮する炭素繊維束を提供することが可能となった。ここで炭素繊維束内部まで電解液で置換するとは、電解液で炭素繊維束内を浸すことをいい、例えば前工程で水等で洗浄を行った場合は炭素繊維束は水等の洗浄液を含んでいたり、乾燥せしめた場合であっても空気を含んでいるのでこれらを電解液で置換することをいう。
【0011】
本発明において、使用する電解液としては、硫酸、塩酸あるいは硝酸等の酸性水溶液や、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムあるいはEAH等のアルカリ性水溶液等が挙げられる。
【0012】
本発明における炭素繊維束への電解液浸漬時間は特に制限はないが、2〜10秒程度の処理で本発明の効果を奏するには十分である。
【0013】
次に、本発明による炭素繊維束の製造方法の一例について説明する。
【0014】
本発明において、炭素繊維束の原料として好適なアクリル系共重合体としては、アクリロニトリル(以下、ANと略記)90重量%、好ましくは95重量%以上からなるアクリル系共重合体を使用することができる。ANと共重合するコモノマーとしては、アクリル酸、イタコン酸等の有機酸、若しくはそれらの有機酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、またはアリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の有機酸、若しくはそれら有機酸の金属塩等が挙げられる。
【0015】
アクリル共重合体は、乳化重合、塊状重合あるいは溶液重合等の公知の方法によって重合することができ、紡糸原液は、ジメチルアセチアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸あるいはロダンソーダー水溶液等により調製することができる。なお、紡糸原液中のAN共重合体の濃度は、好ましくは13〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%である。AN共重合体の濃度が13重量%未満の場合は、乾湿式紡糸法により得られる繊維の表面に、フィブリルに起因する凹凸の発生が顕在化し、得られる炭素繊維の強度特性が低下することがある。
【0016】
次に、この紡糸原液を口金から一旦空気中に押し出し、溶媒と水から成る凝固浴中に紡出する乾湿式紡糸法により紡糸後、水洗、浴延伸する。ここで構成単繊維間での接着を有効に抑止するために、例えば、アミノ変性シリコーンを必須成分としたシリコーン系油剤等を付与することが好ましい。その後、乾燥緻密化し必要に応じて加圧スチーム等の熱媒中で延伸することによりアクリル系前駆体繊維束を得る。本発明が対象とするラージトウの前駆体繊維束のトータル繊度は、12000〜70000dtexである。
【0017】
かかる前駆体繊維をそのまま耐炎化処理しても良いし、目的に応じて複数本の前駆体繊維束を合糸して耐炎化処理しても良い。
【0019】
このようにして得られたアクリル系前駆体繊維を、好適には200〜300℃の空気雰囲気中、必要に応じて延伸しながら耐炎化することにより耐炎化糸束を得る。
【0020】
次に、耐炎化糸束を、最高温度が好適には600〜1000℃の窒素雰囲気中、必要に応じて延伸しながら炭化することによって前炭化糸束を得る。次いで、この前炭化糸束を、最高温度が好適には1200〜1900℃の窒素雰囲気中で、必要に応じて延伸しながら炭化することにより炭素繊維束を得る。
【0021】
本発明では、このようして得られた炭素繊維束に、電解液を浸漬させ、その後、表面電解処理を施す。ここで、電解液を浸漬せしめる工程と表面電解処理工程は連続であっても不連続であってもよいが、浸漬工程と表面電解処理工程を連続で行うことが効率上好ましい。また、本発明では、電解液の浸漬槽は表面電解処理槽の前に設ける。かかる浸漬槽及び電解処理槽は一組でも良いし、複数組設置しても良い。また、浸漬槽を連続して多段とすることもできるし、電解処理槽を連続して多段とすることもできる。更には、これらを適宜組み合わせることも可能である。浸漬槽を多段にすることは、電解液を炭素繊維束内部に均一に浸透させる点でより好ましい。
【0022】
浸漬槽の電解液は、電解液を独立して浸漬槽に供給しても良いし、電解液調製タンクから直接供給しても良いし、表面電解処理槽から供給しても良い。表面電解処理槽から供給するとは、表面電解処理槽の循環ピットから供給することも含む。ここで循環ピットとは電解表面処理層からオーバーフローした電解液を一旦貯液し、かかる電解液を電解表面処理槽へ送るための機構を有した貯槽である。貯槽から電解処理層へ電解液を送る機構としてはポンプ等を用いることができる。電解液を効率良く使用できるという点で表面電解処理槽から浸漬槽に電解液を供給することが好ましい。又、かかる浸漬槽から電解液をオーバーフローさせ、オーバーフローさせた電解液を他の浸漬槽に供給するのが好ましい。例えば、水を多量に含んだ炭素繊維束に電解液をより均一に置換し浸漬させるためには、電解液の浸漬槽を多段槽とすることが好ましく、電解液をそれぞれの浸漬槽に独立して供給しても良いし、あるいは炭素繊維束の進行方向に対して最後尾の浸漬槽に供給した電解液を繊維束の進行方向に対して逆方向に順次オーバーフローさせて、各浸漬槽に電解液を供給する方法が好ましい。
【0023】
本発明では、炭素繊維束に、複数本のローラーを介し、炭素繊維束をジグザグに走行させて電解液を浸漬する。ここで複数本のローラーとは、炭素繊維束が最初の浸漬槽に入ってから、最後の浸漬槽を出るまでに炭素繊維束の進行方向を変化させるローラーをいう。この方法により、炭素繊維束中に、より均一に電解液を浸漬することができる。
【0024】
ローラーの材質は特に限定されないが、PTFE樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニールなどのプラスチック類を用いることができ、中でも塩化ビニールは安価で耐薬品性が優れているという点で好ましい。ローラーの表面は鏡面であっても梨地であってもよいが、炭素繊維束の損傷を防ぐという点で鏡面が好ましい。ローラーの外径は50〜300mmが好ましく、100〜200mmがより好ましい。
【0025】
浸漬時間は全浸漬時間の合計を2秒以上とすることが好ましく、より好ましくは4秒以上とする。かかる時間は長ければ長いほど、炭素繊維束内に電解液が染みわたるので好ましいが、生産効率を考えると10秒あれば十分である。また、1回の浸漬時間を長くするよりも、複数の電解槽を介して繰り返し浸漬することがより好ましい。
【0026】
電解液には、好適には酸性またはアルカリ性の水溶液が用いられる。これらの電解液の濃度は、電気伝導度が10〜30msであることが好ましく、さらには18〜22msとなるように調整することが好ましい。電気伝導度が10ms未満だと炭素繊維に与える表面電解処理量が小さいため、自ずと電気量を高く設定しなければならないため、高コストになる場合がある。また、電気伝導度が30msを超える電解液では、炭素繊維束中の水分等で水溶液中の電解質濃度が低下してくるため、電気伝導度を一定になるよう電解質濃度を高く保つには多量の電解質の補給が必要となり高コストとなったり、電解質が十分に電解処理に利用されず、電解質のロスが大きくなる場合がある。
【0027】
また、電解液のpHは特に限定されるものではないが、酸性水溶液ならば3.0〜5.0、アルカリ性水溶液では8.0〜10.0のpHであることが好ましい。
【0028】
ここで表面電解処理について詳しく述べると、酸、アルカリ等の電解質を溶解した水溶液に直流電流を通じたときに、陽極側で起こる酸化反応を利用し、炭素繊維表面に官能基を付与することを目的としたものである。
【0029】
炭素繊維は、炭化あるいは黒鉛化処理温度が高くなるほどグラファイト結晶構造が発達し酸化されにくくなる。このため表面電解処理によって官能基を付与する際に電解電気量を大きくする必要がある。この際、陽極槽と陰極槽の繰り返し単位が少ないと、1段当たりの電気量が過大になり、繊維の損傷による強度の低下や、不均一な表面電解処理となりコンポジット特性が低下する傾向にある。このことは特に処理される炭素繊維束のフィラメント数が増すほど顕著に現れる。一方、グラファイト結晶構造が未発達な炭素繊維は僅かな電解電気量で酸化を受けやすく、不均一な処理となりやすい。従って、いずれにしても均一で平均した表面電解処理のためには多段電解処理が好ましい。具体的には、陽極槽と陰極槽の繰り返しは2回以上が好ましく、3回以上がより好ましく、4回以上がさらに好ましい。かかる陽極槽と陰極槽の繰り返し単位は多いほど好ましいが、電解電気量にもよるが12回あれば本発明の目的として十分である。
【0030】
電解処理時の電解電気量の総量は3〜250c/g(g:炭素繊維束重量)であることが好ましい。電解電気量の総量が3c/g未満であると、炭素繊維表面に十分に官能基を付与できない場合があり、250c/gを超えると繊維が損傷する場合がある。
【0031】
また、陽極槽と陰極槽の繰り返し単位の1単位あたりの電解電気量(以下、1段あたりの電解電気量とする)は1〜40c/gが好ましく、3〜20c/gがより好ましい。1段あたりの電解電気量が1c/g未満であると電解槽の繰り返し単位を多く設ける必要がありコストがかかりすぎる場合があり、40c/gを超えると前記の通り、繊維の損傷による強度の低下や、不均一な表面電解処理となりコンポジット特性が低下する場合がある。
【0032】
本発明においては、炭素繊維束に電解表面処理を施した後、必要に応じて水洗工程を経て100〜400℃に温調された乾燥機で水分を蒸発させ、必要に応じてサイジング剤を付与して、更に乾燥して炭素繊維束を得る。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、各実施例において各物性値は、次に示す方法で測定したものである。
【0034】
<ILSS(層間剪断強度)の測定>
炭素繊維と樹脂との接着性の指標として、下記の方法によるショートスパン3点曲げ試験によって、層間剪断強度を測定した。
1.試験片の作製
試験対象の炭素繊維を樹脂組成物に含浸させ、下記硬化条件により硬化せしめ試験片を作製した。試験片のサイズ及び繊維体積含有率、樹脂組成、処理方法は以下に示す。
(1)試験片
幅:6±0.05mm
厚さ:2.5±0.05mm
長さ:18±1mm
炭素繊維の体積含有率(Vf):60±3%
(2)樹脂組成
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:100重量部
(Ep828、エポキシ当量184〜194、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン:3部
(3)処理方法
金枠に巻き取った炭素繊維束を、凹凸かみ合わせの溝幅6mmの凹側金型に入れ、マトリックス樹脂を流し込んだ。
【0035】
硬化に先だち、樹脂中の気泡を除くために、80℃に加熱し、真空(10mmHg以下)下、4時間脱泡処理を行った。
【0036】
厚さ2.5mmのスペーサーを挟んで凹凸金型をかみ合わせ、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させた。硬化条件は下記の通りとした。
【0037】
プレス圧力:4.9MPa
硬化温度:170℃
硬化時間:1時間
更に金型から試験片を取り出した後、170℃、2時間の追熱処理を行った。
2.測定方法
下記測定条件でショートスパン3点曲げを実施し、下式により剪断強度を計算した。本実施例では、得られた値をVf60%に換算し、測定数n=6の平均を試験結果とした。
剪断強度(MPa)=3×荷重(KN)/(4×厚み(mm)×幅(mm))×1000
(1)測定条件
支点間距離:試験片の厚みの4倍
支点:3.2mmφ
上部圧子:6.35mmφ
クロスヘッド速度:1.3mm/分
測定雰囲気:24±2℃、50±10%RH
本実施例では試験機としてインストロン(登録商標)試験機を用いた。
(参考例1)AN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなる、極限粘度[η]が1.8であるAN共重合体を20重量%含むジメチルスルホキシド(DMSO)の紡糸原液を調製し、この紡糸原液のpHが8.0になるまでアンモニアガスを吹き込んだ。その後、乾湿式紡糸法により45℃に温調された紡糸原液を、孔数3000Hからなる口金から一旦空気中に押し出し、DMSO溶液を満たした凝固浴中に紡出した。次に、凝固した糸条を熱水中で水洗後、90℃の浴中で4倍に延伸し、さらに油剤浴を通じてアミノ変性シリコーンをノニルフェノールEO付加物を用いて乳化した、油剤濃度が2.0重量%のシリコーン系油剤を、炭素繊維の重量100重量%に対して0.7重量%付与した。油剤付与後の糸条を、150℃に温調した加熱ローラーを用いて乾燥緻密化後、さらに加圧スチーム中で4倍に延伸し、180°に温調した加熱ローラーで乾燥処理し、単繊維繊度1.0dtex、トータル繊度3000dtexのアクリル系前駆体繊維束を得た。
【0038】
このようにして得られた前駆体繊維束を、250〜280℃の空気雰囲気中、安定化処理して耐炎化繊維束とした。次に、窒素雰囲気中、最高温度が800℃の前炭化炉で、400〜500℃の雰囲気温度における昇温速度が100℃/分、延伸倍率を1.02として前炭化処理し、次いで、窒素雰囲気中、最高雰囲気温度が1450℃の炭化炉で1000〜1200℃の雰囲気温度における昇温速度を200℃/分、延伸倍率を0.97として炭化処理することにより、炭素繊維束とした。
【0039】
次に、この炭素繊維束を電気伝導度が21.5ms、pHが4.0に調製された硫酸水溶液にローラー(塩化ビニール製、外径100mm、溝なしフラットロール)を介しながら4秒間浸漬させた後、40c/gの電気量で表面電解処理を施した。この後、水洗工程を経て250℃に温調された乾燥機で水分を蒸発させ、サイジング工程においてエポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を、炭素繊維束に0.6重量%付与し、210℃に温調された乾燥機でサイジング剤を乾燥させた。この炭素繊維束を、前記方法により層間剪断強度(ILSS)を測定した結果、85MPaであった。
(参考例2)実施例1と同様の製造方法で得られた炭素繊維束を、電気伝導度が19.1ms、pHが9.1に調製された重炭酸アンモニウム水溶液に、実施例1と同様のローラーを介しながら4秒間浸漬させた後、40c/gの電気量で表面電解処理を施した。この後の工程は実施例1と同様の処理を行ない、前記方法によりILSSを測定した結果、94MPaであった。
(参考例3)実施例1と同様の製造方法で得られた炭素繊維束を、電気伝導度が18.9ms、pHが9.2に調製された重炭酸アンモニウム水溶液に、実施例1と同様のローラーを介しながら2秒間浸漬させた後、80c/gの電気量で表面電解処理を施した。この後の工程は実施例1と同様の処理を行ない、前記方法によりILSSを測定した結果、96MPaであった。
(実施例1)実施例1のトータル繊度3000dtexの前駆体繊維を8本合糸して、240〜260℃の空気雰囲気中で安定化処理して耐炎化繊維とした以外は実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。前記方法によりILSSを測定した結果、85MPaであった。
(実施例2)表面電解処理を4段として、1段当たりの電解電気量を10c/gとした以外は実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。前記方法によりILSSを測定した結果、88MPaと高い値であった。
(参考例4)炭化処理までは参考例1と同様の製造方法で得られた炭素繊維束を、浸漬処理を施すことなく電気伝導度が20.5ms、pHが3.8に調製された硫酸水溶液中、40c/gの電気量で表面電解処理を施した。この後の工程は参考例1と同様の処理を行なった。前記方法によりILSSを測定した結果、79MPaで参考例1と比較すると低い結果であった。
(参考例5)炭化処理までは参考例1と同様の製造方法から得られた炭素繊維束を、浸漬処理を施すことなく電気伝導度が21.8ms、pHが8.5に調製された重炭酸アンモニウム水溶液中、40c/gの電気量で表面電解処理を施し、この後の工程は参考例1と同様の処理を行なった。前記方法によりILSSを測定した結果、86MPaで参考例2と比較すると低い結果であった。
(参考例6)炭化処理までは実施例1と同様の製造方法から得られた炭素繊維束を浸漬処理を施すことなく電気伝導度が21.7ms、pHが8.7に調製された重炭酸アンモニウム水溶液中、80c/gの電気量で表面電解処理を施し、この後の工程は参考例1と同様の処理を行なった。前記方法によりILSSを測定した結果、85MPaで参考例3と比較すると低い結果であった。
(比較例1)表面電解処理前の電解液の浸漬処理を行わず、表面電解処理を1段で40c/gとした以外は実施例2と同様にして炭素繊維束を得た。前記方法によりILSSを測定した結果、76MPaと低い値であった。
【0040】
結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明により、表面電解処理工程において、電解液の浸漬槽を表面電解処理槽の前に設け、複数本のローラーにより炭素繊維束をジグザグに走行させて、炭素繊維束にあらかじめ電解液を浸積することにより、ラージトウ等の太物炭素繊維においても、処理ムラが解消し、マトリックス樹脂との間に高い接着性を発現することができ、優れたコンポジット特性を得ることができる炭素繊維束を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭素繊維束の処理方法の一例を示すフロー図
【図2】従来の炭素繊維束の処理方法の一例を示すフロー図
【符号の説明】
1:炭素繊維束
1’:炭素繊維束の進行方向
2:浸漬槽
3:浸漬液
4:陽極槽
5:陰極槽
6:陽極
7:陰極
8:電解液
9:循環ピット(貯槽)
10:循環ピット(送液ポンプ)
11:ローラー
12:電解液及び浸漬液の循環方向
Claims (2)
- トータル繊度12000〜70000dtexの前駆体繊維束を耐炎化及び炭化して得た炭素繊維に、陽極槽と陰極槽の繰り返しからなる表面電解処理槽を用いて表面電解処理する炭素繊維束の製造方法であって、表面電解処理槽の前に電解液の浸漬槽を設け、該浸漬槽において複数本のローラーにより炭素繊維束をジグザグに走行させて、炭素繊維束にあらかじめ電解液を浸漬させ、その後表面電解処理を施すことを特徴とする炭素繊維束の製造方法。
- 繊維走行方向から陽極槽と陰極槽を繰り返し単位として2回以上通過させ、電解電気量の総量を3〜250c/gとして表面電解処理する請求項1記載の炭素繊維束の製造方法。
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