JP2004277907A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧縮強度および吸湿高温下での曲げ強度に優れた繊維強化複合材料および、かかる繊維強化複合材料の特性を発現しうる炭素繊維を提供する。
【解決手段】X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、かつ蛍光X線測定による珪素由来のX線強度が60〜120cpsである炭素繊維および 、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気下1100〜1350℃で炭化する炭素繊維の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、かつ蛍光X線測定による珪素由来のX線強度が60〜120cpsである炭素繊維および 、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気下1100〜1350℃で炭化する炭素繊維の製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途などに好ましく使用できる炭素繊維強化複合材料に関するものである。また、かかる炭素繊維強化複合材料に好適に用いられる炭素繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維はその優れた比強度、比弾性率を利用して、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途、プロペラシャフトやエンジンフード、スポイラーなど自動車部材、天然ガス、燃料電池用水素貯蔵用などの圧力容器、航空機用構造材などの用途として幅広く使用されている。
【0003】
近年、航空機の一次構造材料や宇宙構造材用途などで、よりいっそうの軽量化を図るために従来の複合材料よりも遙かに優れた特性、特に優れた圧縮強度特性を有する複合材料の出現が要望されている。
【0004】
また、このような航空宇宙用途では高温多湿下や低温下などの過酷な条件下での強度保持率の高い材料に対する要望も強い。そのためには過酷な条件下で使用した際の繊維強化複合材料の強度低下を押さえることが必要となる。
【0005】
引張強度、圧縮強度等の優れた特性を有する炭素繊維を得るためには単繊維間接着に起因する表面欠陥を減少させる必要がある。そのために前駆体繊維紡糸時に油剤を付与する。油剤の中でもシリコーン系油剤は単繊維間接着防止効果が高く、好んで用いられる。ところがシリコーン系油剤は空気中200〜300℃の耐炎化処理、引き続いて行われる不活性処理最高温度1000〜2000℃での炭素化処理において、大部分は分解飛散するが、一部は二酸化珪素などの物質に変化し、繊維に付着した状態となる。この付着した二酸化珪素は繊維強化複合材料を作製する場合に、マトリックス樹脂との接着に影響を及ぼし、特に、吸湿高温下おける接着特性が大きく低下し、非繊維方向の強度が低下する問題がある。
【0006】
炭素繊維に付着しているシリコーンが少ない炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度がSi/Cが0.001〜0.03であることを特徴とする炭素繊維の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる方法は、表面のある程度の珪素量はコントロールできるものの、珪素の付着量によってはその効果が十分でない場合があった。また、フッ化水素と硝酸を用いSiOx(0.5≦x≦2.5)を抽出後灰化、アルカリ溶融し、脱イオン水で溶解した水溶液をICP発光分析により測定した珪素分量が0.001〜0.5%である炭素繊維が提案されている(例えば、特許文献2参照)。ところが、かかる方法では、炭素繊維表面の珪素除去方法がフッ化水素を用いるため工業的に実施する場合、作業者への暴露など作業安全性の確保に困難が伴う場合があった。また、元素分析法で想定される炭素繊維全体の平均窒素量が0.5〜4.5%重量%であり、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度がSi/Cが0〜0.02である炭素繊維が提案されているが、かかる炭素繊維では、繊維方向の特性、特に圧縮強度特性が十分でないという問題があった(特許文献3)。
【0007】
すなわち、上記従来の方法では、繊維方向特性を向上し、かつ、珪素量の減少を両立させることは困難であり、その結果、圧縮強度と吸湿高温下における非繊維方向の機械特性の両方に優れた繊維強化複合材料を得ることが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−327374号公報(全頁)
【0009】
【特許文献2】特開2002−317335号公報(全頁)
【0010】
【特許文献3】特開昭62−276075号公報(全頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決し、圧縮強度特性に優れ、90°曲げ強度など、非繊維方向強度、特に吸湿高温下での機械特性に優れる炭素繊維強化複合材料およびそれを実現する炭素繊維を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記した課題について、鋭意検討し、X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、かつ蛍光X線測定による珪素由来の強度が60〜120cpsである炭素繊維とすることにより、上記課題を一挙に解決するものである。
【0013】
また、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気下1100〜1350℃で炭化し、得られた炭素繊維を陽極として、アルカリ性水溶液中、20〜200c/gの電気量で電解酸化処理を行った後、80〜100℃、pH8〜12のアルカリ性水溶液中で洗浄する炭素繊維の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明の炭素繊維は、X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームの範囲にある。結晶サイズが10オングストローム未満になると結晶化していない炭素の割合が増えるため、十分な引張強度や引張弾性率が発現しない。一方、20オングストロームを超えると圧縮強度が低下する。好ましくは12〜18オングストロームである。ここでいう結晶サイズLcとは、X線源としてCuKα(Niフィルター使用)を用いた結晶構造解析法により求められるものである。結晶サイズLcは面指数(002)回折線のピークの半値幅から、次のScherrerの式を用いて計算して求められる。
【0015】
Lc(hkl)=Kλ/β0cosθB
但し、
Lc(hkl):微結晶(hkl)面に垂直な方向の平均の大きさ
K:1.0
λ:0.15418nm(X線の波長)
β0:(βE 2−β1 2)1/2
βE:見かけの半値幅(測定値)
β1:1.046×10−2rad
θB:Braggの回析角
本発明の炭素繊維束の蛍光X線測定による珪素由来のX線強度は60〜120cpsである。かかる数値は、炭素繊維中に存在する珪素量の指標であり、120cpsを超えると珪素珪素化合物が、樹脂との接着性を阻害し、繊維強化複合材料とした際に、90°曲げ強度、90°引張強度などの非繊維方向の機械強度が低下することがある。また、高温多湿下における複合材料特性、特に90°方向の曲げ強度特性が低下する。この機構はあきらかではないが、繊維表面に存在する珪素化合物が水分により膨潤し、炭素繊維表面もしくは樹脂との界面でクラックなどが発生しやすいためと筆者らは推定している。60cps未満になると複合材料特性は向上するものの繊維の集束性が不十分となり炭素繊維の取り扱い性が低下する。より好ましくは65〜110cps、更に好ましくは70〜90である。
【0016】
ここで珪素由来のX線強度というのは、一次X線を照射した際に発生する珪素由来の蛍光X線の強度を単位時間あたりの光子数(counts per second)で表したものであり、例えば下記条件で測定することができる。
X線管ターゲット:Sc(200W)
電圧:50KV
電流:4mA
測定時間:25sec
かかる蛍光X線測定装置としては、例えば日本フィリップス社製VENUS200を用いることができる。
【0017】
尚、測定に供する炭素繊維は、測定前に、サイジング剤などの付着物を取り除くために、炭素繊維1重量部に対して100重量部の洗浄浴液(イオン交換水、50℃)中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30Lの水槽に6L/分給水しながら約1分間洗い流す。その後、熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させたものを測定用試料として用いる。超音波洗浄装置としては、例えばエスエヌディ(株)社製USK−4などを、熱風オーブンとしては例えばADVANTEC(株)社製FS−32Dなどを使用できる。
【0018】
本発明の炭素繊維は、ストランド引張強度が4.5GPa以上の束状の炭素繊維であることが好ましい。4.5GPa以上とすることで、繊維強化複合材料の0°方向の引張強度が良好となり、航空機構造材等にも好適に用いることができる。好ましくは4.8GPa以上である。ストランド引張強度の上限は特にないが8GPa程度である。また、本発明の炭素繊維は、ストランド引張弾性率は特に限定されないが、用途に応じて200〜400GPa程度の束状の炭素繊維とすることができる。200〜350GPaがより好ましく、200〜300GPaが更に好ましい。200GPa未満であると、得られる繊維強化複合材料の剛性が不足する場合がある。また、400GPaを超えると繊維内の結晶成長やボイド増加により圧縮強度が低下する傾向がある。かかるストランド引張弾性率をより好ましくは220〜280GPa、特に好ましくは240〜260GPaとすることにより、剛性と圧縮強度のバランスが特に向上し、航空機構造材等に用いられる繊維強化複合材料用の炭素繊維として好適である。
【0019】
本発明の炭素繊維の単繊維の原子間力顕微鏡により測定される表面積比、すなわち平滑性は1.00〜1.05が好ましい。表面積比1.03を越える、すなわち表面凹凸が大きいと繊維強化複合材料となした場合に強度向上効果が十分に発揮されない場合がある。より好ましくは1.00〜1.03である。
【0020】
さらに本発明の炭素繊維は、光電子分光法によって求められる表面の酸素濃度O/Cが0.1〜0.3であることが好ましい。0.1より低い場合は炭素繊維に存在する官能基が少なすぎるためマトリックス樹脂の接着特性が低下し複合材料の層間剪断強度(ILSS)などの特性が低下する。0.3以上になると炭素繊維に存在する官能基量が多すぎ、かえってマトリックス樹脂の接着特性が低下する。好ましくは0.15〜0.30である。
【0021】
ここで、本発明でいう炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cは次の手法にて、X線光電子分光法により得ることができる。
【0022】
測定する炭素繊維にサイジング剤等の後処理剤が付着している場合は、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールなどの溶媒で洗浄し、蒸留水で洗い流し、必要に応じて超音波洗浄するなどしてサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、下記条件にて測定できるものである。
【0023】
・X線源:AlKα1,2あるいはMgKα1,2
尚、測定時の帯電に伴うピークの補正は、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせることで実施できる。
【0024】
次いで、C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積[O1s]は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
【0025】
表面酸素/炭素比(O/C)は、上記O1sピーク面積[O1s]、C1sピーク面積[C1s]の比、及び装置固有の感度補正値より、次式により求めることができる。
【0026】
O/C=([O1s]/[C1s])/(感度補正値)
上記した炭素繊維の製造方法の好ましい態様を以下に説明する。すなわち、本発明の炭素繊維の製造方法は、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気化1100〜1350℃で炭化することが好ましい。
【0027】
前駆体繊維としてはレーヨン系、ピッチ系、ポリアクリロニトリル系のいずれを問わないが、優れた引張強度や圧縮強度特性を得るためにはポリアクリロニトリル系繊維が好ましい。
【0028】
ここで油剤組成物としては、蛍光X線測定による珪素由来のX線強度が上記特定範囲となるように、最終的に得られる前駆体繊維が0.01〜5重量%の珪素を付着する状態になるように適宜シリコーン化合物の濃度を決めることができる。珪素の付着量は好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%とするのがよい。
【0029】
ここで、シリコーン系化合物とは具体的にはジメチルシロキサンを用いることが好ましい。ジメチルシロキサンとしてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーンなどの変性シリコーン、またはそれらの混合物を用いるのが好ましい。なかでもアミノ変性シリコンを含むのが好ましく、アミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンを含むのが好ましい。ジメチルシロキサンの混合比率(重量比)としては、アミノ変性シリコーンが40%以上含有していることが好ましい。アミノ変性シリコーンの変性量としては末端アミノ基を−NH2に換算した比率が、0.05〜10重量%であることが好ましく、好ましくは0.1〜5重量%のものがよい。エポキシ変性シリコーンの変性量としてはエポキシ基−CHCH2Oの比率が0.05〜10重量%であることが好ましく、好ましくは0.1〜5重量%のものがよい。アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリコーンは、いずれもその25℃における粘度が200〜40000cstのものを用いるのが好ましい。
【0030】
また、シリコーン系化合物としては、水溶性のシリコーンや乳化剤を用い、水分散させたエマルジョンを用いてもよい。乳化剤を用いる場合にはアニオン系、カチオン系、ノニオン系の乳化剤を用いることができるが、分散安定性の点からノニオン系を好ましく用いられる。ノニオン系乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0031】
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維に油剤を付与する方法はいずれを問わないが、口金よりポリマーの溶剤と水などの凝固剤を混合した凝固浴に吐出された繊維に水洗、浴中延伸等の処理を施したのち、乾燥緻密化したものに付与することができる。
【0032】
前駆体繊維を耐炎化する方法は空気中、200℃〜300℃の温度範囲が好ましい。耐炎化時の延伸比は得られる炭素繊維の引張強度を向上させる観点から、毛羽が発生しない範囲で高くすることが好ましく、0.7〜1.2が好ましい。延伸比が0.7未満となると炭素繊維の引張強度が低下することがあり、1.2を超えると引張強度は向上するが、毛羽が発生し、取り扱い性が低下することがある。より好ましくは0.8〜1.1である。
【0033】
耐炎化は得られる炭素繊維の引張強度と炭化工程のプロセス性、炭素化収率を向上させる観点から耐炎化繊維の比重が1.25〜1.50の範囲となるまで継続して耐炎化するのが好ましく、より好ましくは1.28〜1.45、さらに好ましくは1.30〜1.40である。
【0034】
耐炎化時間は、好ましい耐炎化度が得られるように適宜決めることができるが、得られる炭素繊維の性能及び生産性を高める観点から10〜100分が良く、好ましくは20〜60分が好ましい。ここで耐炎化時間とは繊維束が耐炎化炉内に滞留している全時間を言う。耐炎化時間が10分未満であると単繊維表層部と単繊維中央部の構造差が生じ、得られた炭素繊維のストランド引張強度、ストランド引張弾性率が低下する場合がある。一方、100分を越えると生産性が低下する。
【0035】
本発明の炭素繊維の製造方法は、こうして得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気中で1100〜1350℃での熱処理を行うことが好ましい。1100℃未満であると得られる炭素繊維の水分率が高くなり、繊維強化複合材料を成形する際に、マトリックス樹脂の硬化が不十分となり、繊維強化複合材料の引張強度が十分発現しない場合がある。1350℃を越えると炭素繊維の結晶サイズが20オングストロームを超え、繊維方向の強度、とりわけ繊維強化複合材料とした場合の圧縮強度が向上効果が不十分な場合がある。より好ましくは1200℃〜1300℃以下である。炭化工程における延伸比は得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率を向上させる意味から、毛羽を発生しない範囲で画することが好ましく、0.8〜1.1が好ましい。延伸比が0.8未満となると炭素繊維の引張強度が4.5GPaを下回る、もしくは引張弾性率が200GPaを下回る場合があり、1.1を越えると繊維が切断したり、一部が破断し毛羽となり取り扱い性が低下する場合がある。より好ましくは0.9〜1.0である。
【0036】
上記炭化工程の前に、不活性雰囲気中で温度500〜1000℃で熱処理を行う、いわゆる前炭化工程を経ることが好ましい。かかる前炭化工程の熱処理温度が500℃以下であると次工程の炭化工程における繊維の分解・劣化が激しく炭素繊維しての特性が低下する場合がある。1000℃を超えると前炭化工程での十分な張力を保つことが困難になり、ストランド引張弾性率が200GPaを下回る場合がある。より好ましくは600〜900℃である。
【0037】
前炭化工程における延伸比は得られる炭素繊維の引張強度を向上させる観点から、毛羽が発生しない範囲で高くすることが好ましく、0.8〜1.3が好ましい。延伸比が0.8未満となると炭素繊維の引張強度が4.5GPaを下回る場合があり、1.3を超えると引張強度は向上するが、毛羽が発生し、取り扱い性が低下する場合がある。好ましくは0.9〜1.2である。
【0038】
本発明の炭素繊維の製造方法において、炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来の強度範囲を60〜120cpsとするための方法の一例として、上記の炭素繊維を用い表面を改質する方法を挙げることができる。表面改質方法としてはアルカリ性水溶液による電解処理、洗浄、乾燥を組み合わせることが好ましい。
【0039】
電解処理に用いる電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の無機塩類、水酸化テトラアルキルアンモニウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機塩類、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩、または他の金属塩、およびアンモニウム塩、またはヒドラジンなどの有機化合物が好ましく使用されるが、樹脂の効果に対する障害をなくす観点から、アルカリ金属を含有しないもの、つまり炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムがより好ましい。
【0040】
かかる電解処理において、通電する炭素繊維1g当たりの電気量は20〜200c/gが好ましい。20c/gより少ないと炭素繊維に残存する珪素化合物の量が多くなり、珪素由来の蛍光X線強度が120cpsを超える場合がある。また電気量が200c/gを越えると炭素繊維に残存する珪素化合物量は低下するが炭素繊維の表層構造が破壊され結果として、マトリックス樹脂との接着特性がかえって低下し、繊維強化複合材料とした場合に、非繊維方向の強度、例えば90°引張強度、90°曲げ強度、層間剪断強度(ILSS)が低めになる場合がある。より好ましくは30〜160c/g、更に好ましくは50〜120c/gである。
【0041】
電解処理を行った炭素繊維はその後洗浄することが好ましい。洗浄方法はいずれを問わないが、80〜100℃、pH8〜12のアルカリ性水溶液中で洗浄することが好ましい。かかる洗浄液としては上記電解処理で用いたものと同じ水溶液を使用しても良い。洗浄水溶液の温度は処理効率化の観点から80〜100℃が好ましい。80℃未満になると炭素繊維から珪素化合物を除去する能力が低下する傾向にあり効率面から80℃を超えることが好ましい。かかる洗浄の目的においては100℃程度あれば十分である。また、沸騰した洗浄液は作業性が低下するため、95℃以下がより好ましい。さらに好ましくは80〜95℃である。処理時間は3秒以上とすることが珪素化合物の除去の観点から好ましく、上限はいずれを問わないが、設備費、生産性から60秒程度あれば十分である。ここでいう処理時間とは、炭素繊維が洗浄液中に滞留している時間を表す。
【0042】
また、上記洗浄の後に、更に水で洗い流すと乾燥工程で発生する塩基性気体が減少し、作業性が向上するのでより好ましい。この場合の洗浄水は温度5〜40℃の水を好ましく用いられる。洗浄水はpH6〜8の水で、金属イオンの含有量が少ないイオン交換水、精製水などが好ましい。
【0043】
かかる電解処理、より好ましくは水洗処理の後、糸条を乾燥するのがよい。乾燥温度は、空気雰囲気中200〜400℃が好ましい。乾燥温度が200℃より低くなると炭素繊維表面に存在する水酸基、カルボキシル基などの官能基が多すぎる、すなわち酸素濃度比O/Cが0.3を超える場合があり、ストランド引張強度が低下する場合がある。また400℃より高くなると官能基が熱分解し、O/Cが0.1未満となりマトリックス樹脂との接着性が低下する場合があり、ひいては繊維強化複合材料の非繊維方向の機械強度が十分に発揮されない場合がある。好ましくは250〜370℃、より好ましくは280〜350℃である。
【0044】
本発明の繊維強化複合材料は上記炭素繊維およびマトリックス樹脂から構成される。マトリックス樹脂の種類はいずれを問わないが、航空宇宙用途、一般産業用途において十分な機械的特質を得るためにはエポキシ樹脂組成物が好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂化合物とは分子内に複数のエポキシ基を有する化合物を指し、エポキシ樹脂組成物中にはエポキシ樹脂化合物の他に硬化剤や添加剤を含んでいても良い。エポキシ樹脂化合物としては、例えばビスフェノールA形エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレンジアミンなどのグリシジルアミン型のエポキシなどあるいはこれらの組み合わせが好ましく使用される。
【0046】
かかるエポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤としてはエポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればいずれを問わないが、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が好ましく使用される。具体的にはジシンジアミド、ジアミノジフェニルスルフォンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が好ましく使用される。
【0047】
かかるエポキシ樹脂組成物に、上記のエポキシ樹脂、硬化剤の他、高分子化合物、無機または有機粒子など他の成分を適宜その目的に応じて配合することができる。
【0048】
また、本発明の繊維強化複合材料において繊維含有率が40〜90重量%であることが好ましい。炭素繊維含有率が40%未満であると必要な機械特性を得るための強化複合材料量が増大し、軽量化の効果が低くなる。炭素繊維含有率が90重量%を越えると炭素繊維対するマトリックス樹脂組成物の量が少なくなるために繊維強化複合材料中にボイド(空隙)が生じやすくその結果繊維強化複合材料の機械特性が低下することがある。かかる繊維強化複合材料の炭素繊維含有率(重量%)は例えば還元炎により樹脂硬化物を焼き飛ばし炭素繊維の重量を求める燃焼法などが用いられる。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料を得る方法としては、例えば、本発明の炭素繊維を予め樹脂に含浸させる、いわゆるプリプレグという形態を経由する方法であってもよいし、エポキシ樹脂組成物を直接、本発明の強化繊維に含浸させた後加熱硬化する方法、即ち、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法等が使用できる。機械特性がより発現するという点において、炭素繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグを作製し、これを積層して、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱し硬化させて繊維強化複合材料を製造する方法がより好ましい。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の通りとした。
(1)ストランド引張強度およびストランド引張弾性率の測定
束状の炭素繊維に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃35分間硬化させた後、JIS R7601の方法に従って引張試験を行った。
【0051】
*樹脂組成物
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイド社製)100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ株式会社製) 3重量部
・アセトン(和光純薬工業株式会社製) 4重量部
(2)X線結晶解析
試料として長さ4cm程度の炭素繊維を用意し、金型とコロジオン・アルコール溶液を用い固め、角柱形状として結晶サイズ測定用試料とした。測定試料を次の構成、条件で測定した。本実施例では、測定装置として(株)理学電気社製、4036A型(管球型)を使用した。
(構成)
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
出力: 40kV、20mA
ゴニオメーター (株)理学電気社製
スリット:2mmφ−1°−1°
検出器:シンチレーションカウンター
計数記録装置:(株)理学電気社製 RAD−C型
(測定条件)
2θ/θ :ステップスキャン(赤道線方向、子午線方向)
測定範囲 :2θ=5〜90°
サンプリング:0.05°
積算時間:2秒
なお、赤道線方向は繊維径方向、子午線方向は繊維軸方向に相当する。
(結晶サイズLcの測定)
上述の方法により、得られた(002)面のピーク半値幅から、次のSCherrerの式により求めた値をLcとした。
【0052】
Lc(hkl)=Kλ/β0cosθB
但し、
Lc(hkl):微結晶(hkl)面に垂直な方向の平均の大きさ
K:1.0
λ:0.15418nm(X線の波長)
β0:(βE 2−β1 2)1/2
βE:見かけの半値幅(測定値)
β1:1.046×10−2rad
θB:Braggの回析角
(3)蛍光X線測定
X線を照射した際に珪素に由来して発せられる蛍光X線の単位時間あたりの光子数を珪素由来のX線強度として測定した。尚、本実施例では
日本フィリップス社製蛍光X線装置VENUS200を用いた。一次X線源はScを用い、測定時の条件としては、減圧気圧4〜8Paの条件で、温度37℃、25秒間の測定時間とした。測定試料である炭素繊維は1mサンプリングし、次に述べる洗浄をした後に、長さ50mm、幅50mm、厚さ2mmの板(実施例ではテフロン(登録商標)製の板)に巻き付け測定に供した。
<洗浄>
測定前にサイジング剤などの付着物を取り除くために炭素繊維1重量部に対して100重量部のイオン交換水中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30Lの水槽に6L/分給水しながら1分間洗い流した。その後、熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させた。本実施例では超音波洗浄機としてエスエヌディ(株)社製、USK−4を用い、熱風オーブンとしては、ADVANTEC(株)社製FS−32Dを用いた。
(4)表面積比
炭素繊維表面の表面積比は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて以下の方法により求めた。
【0053】
測定試料としては炭素繊維を長さ5mm程度にカットしたものを使用した。かかる試料を銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、下記条件にて単繊維の中央部において、3次元の表面形状の像を得た。尚、原子間力顕微鏡としてはDigital Instruments社製NanoscopeIIIa、3000ステージシステムを使用した。
【0054】
走査モード:タッピングモード
探針:オリンパス工業製Siカンチレバー一体型探針OMCL−AC12OTS
走査範囲:2.5μm×2.5μm
走査速度:0.4Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温・大気中
各試料について、単繊維1本から一カ所ずつ観察して得られた投影像について、一次Flattenフィルター、lowpassフィルター、3次planefit フィルターを用いてフィルタリングし、得られた像全体を対象として、凹凸を含む実表面積を算出した。かかるデータ処理には前記装置に付属のソフトウエア(Nanoscope IIIバージョン4.22R2)を使用した。
【0055】
表面積比は凹凸を含む実表面積と投影像面積の比として求めた。ここで各試料について、任意に選んだ単繊維5本について上記の測定を行い、最大値、最小値を除いた3本についての相加平均値を最終的な表面積比とした。
(5)表面酸素濃度比O/C
表面酸素濃度比O/Cは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた。試料となる炭素繊維は適当な長さにカットしてを銅製の試料支持台に広げて並べた。光電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中を1.3×10−6Pa(1×10−8Torr)の真空度にに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、C1Sの主ピークの運動エネルギー値B.E.を284.6eVにあわせた。C1Sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1Sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
ここで表面酸素濃度比(O/C)は、前記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより原子数比として算出した。なお本実施例ではX線光電子分光測定装置として島津製作所のESCA−750を用い、かかる装置固有の感度補正値は2.85であった。尚、サイジング剤が付着した炭素繊維はアセトンなどの有機溶媒でアセトンを除去したのち測定した。
(6)繊維強化複合材料の機械特性
本実施例では、繊維強化複合材料の0℃圧縮強度および吸湿高温下の90°曲げ強度について、以下の方法により測定した。
<プリプレグの作製>
A.次に示す原料樹脂を混合し、30分攪拌して樹脂組成物を得た。
【0056】
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(エピコート(登録商標)1001、ジャパン エポキシ レジン(株)製)、30重量%
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(エピコ−ト828、ジャパンエポキシ レジン(株)製)、30重量%
・フェノールノボラックポリグリシジルエーテル樹脂(エピクロン(登録商標)−N740、大日本インキ化学工業(株)製)、27重量%
・ポリビニルホルマール樹脂(ビニレック(登録商標)K、チッソ(株)製、登録商標)、5重量%
・ジシアンジアミド(DICY7、ジャパン エポキシ レジン(株)製)、4重量%
・3,4ジクロロフェノール−1ジメチルウレア(DCMU−99、保土ヶ谷化学(株)製、硬化剤)、4重量%
B.次に、前記樹脂組成物をシリコーンを塗布した離型紙にコーティングして得られた樹脂フィルムを、円周約2.7mの60〜70℃に温調した鋼製ドラムに巻き付けた。
【0057】
この上に束状の炭素繊維をクリールから巻きだし、トラバースを介して配列した。更にその上から、前記樹脂フィルムで再度覆い、ロールで回転しながら、加圧し樹脂を繊維束内に含浸せしめ、幅300mm、長さ2.7mの一方向プリプレグを作製した。ここで、プリプレグの繊維目付はドラムの回転数とトラバースの送り速度を変化させ、190g/m2とした。またプリプレグの樹脂含有率は約35重量%とした。
<繊維強化複合材料の作製>
上記プリプレグを繊維方向を一方向に揃えて、所定の厚みになるように積層し、温度130℃、圧力0.3MPaで2時間硬化させた。
<0°圧縮強度の測定>
上記方法により厚さが1mmの積層板(繊維強化複合材料)を成形した。かかる積層板から被破壊部分が中心になるように、繊維方向を長さ方向として、厚さ1±0.1mm、幅12.7±0.13mm、長さ80±0.013mm、ゲージ部長さ5±0.13mmの試験片を切り出した。
【0058】
この試験片を用いて、ASTM D695に示される圧縮治具を使用し、歪み速度を1.27mm/分の条件で、測定し、繊維体積分率60%に換算して繊維強化複合材料の0°圧縮強度を得た。測定数はn=6とし、平均値を0°圧縮強度とした。
<吸湿高温下の90°曲げ強度の測定>
上記方法により厚さが2mmの積層板を成形した。かかる積層板から、繊維方向が幅方向となるように、厚さ2±0.2mm、幅15±0.28mm、長さ100±0.01mmの試験片を切り出した。
【0059】
曲げ試験の測定に先立ち、上記試験片を71℃の温水に2週間浸水し、試験片の水分率を0.7〜1.4重量%とした。このようにして吸湿高温処理を行った試験片について3点曲げ治具(圧子10mmφ、支店10mmφ)を用いて支持スパンを80mmに設定し、歪み速度1.5mm/分として試験することにより曲げ強度を求めた。測定数はn=6とし、平均値を吸湿高温下の90°曲げ強度とした。
実施例1
アクリロニトリル97重量%、アクリル酸メチル2重量%、イタコン酸0.6重量%からなり極限粘度1.5であるアクリル系重合体を、DMSO中で溶液重合した後、pHが8〜8.5になるまで攪拌しながらアンモニアガスを吹き込み、共重合体濃度が20.0重量%である紡糸原液を得た。
【0060】
この紡糸原液を、孔直径0.1mmの6000ホールを有する口金から一旦空気中に吐出して、約4mmのエアーギャップを経て凝固浴に導く乾湿式紡糸法で繊維を形成した。凝固浴はDMSO40重量%で温度は5℃とした。
【0061】
凝固浴から引き出した繊維束を緊張保持しながら30〜65℃に順次温度を上げながら多段の水洗槽によりDMSOを除去した。ついで90℃の熱水浴中で3倍に延伸して膨潤比150重量%の水膨潤繊維束を得た。この水膨潤繊維を、アミノ変性シリコーンオイル70重量部とポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル30重量部からなる油剤の水分散液に浸積した。油剤の水分散液において、繊維に対する油剤付着量が1.0重量%になるように油剤濃度を調整した。
【0062】
ついで油剤が付与された繊維を、緊張を保持しながら、表面温度が160℃のホットロールに接触させ乾燥した後、圧力0.44MPaの加圧水蒸気中で4倍に延伸して、単繊維の繊度が1.11dtexで6000フィラメントの束状の前駆体繊維を得た。
【0063】
得られた束状の前駆体繊維を265℃の加熱空気中、延伸比0.9で耐炎化処理を行い、比重1.35の束状の耐炎化繊維を得た。
【0064】
ついで最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比0.96で前炭化処理したのち、1250℃の炭素化炉で、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0065】
この束状の炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行った後、92℃に加温したpH9.0の炭酸アンモニウム水溶液中に10秒間浸積し、洗浄した後、室温のイオン交換水に15秒間浸積し、洗浄した。その束状の炭素繊維を300℃で1分間乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0066】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を、最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1400℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0067】
この炭素繊維について実施例1と同じアルカリ性水溶液による電解処理、加温したイオン交換水の洗浄、室温のイオン交換水による洗浄、乾燥、サイジング剤付与を行い、サイジング付着量0.8%の炭素繊維を得た。
【0068】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例1と同様な方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1000℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0069】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行った後、92℃のpH9.0の炭酸アンモニウム水溶液中に10秒間浸積後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を300℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.9重量%の炭素繊維を得た。
【0070】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率及び表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例3
電解処理後に、炭酸アンモニウム水溶液による洗浄を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により束状の炭素繊維を得た。
【0071】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例4
電解処理後の洗浄に際して、炭酸アンモニウム水溶液の温度を92℃から20℃に変更した以外は実施例1と同様の方法により束状の炭素繊維を得た。
【0072】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率及び表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例2
実施例1と同様の方法で得た紡糸原液を孔直径0.05mmの6000ホールを有する口金から凝固浴中で吐出させ、いわゆる湿式紡糸法で繊維を形成した。凝固浴はDMSO60重量%で温度は40℃とした。
【0073】
凝固浴から引き出した繊維束を緊張保持しながら、60〜80℃に順次温度を上げながら多段の水洗槽によりDMSOを除去した。ついで90℃の熱水浴中で5倍に延伸して膨潤比200重量%の水膨潤繊維束を得た。この水膨潤繊維を、アミノ変性シリコーンオイル70重量部とポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル30重量部からなる油剤の水分散液に浸積した。油剤の水分散液において、繊維に対する油剤付着量が1.0重量%になるように油剤濃度を調整した。
【0074】
ついで油剤が付与された繊維を、緊張を保持しながら、表面温度が160℃のホットロールに接触させ乾燥した後、圧力0.35MPaの加圧水蒸気中で2倍に延伸して、単繊維の繊度が1.11dtexで6000フィラメントの束状の前駆体繊維を得た。
【0075】
この前駆体を用いた以外は、実施例1と同様な方法で炭素化、表面処理、温水洗浄、サイジング剤付与行い束状の炭素繊維を得た。
【0076】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例3
実施例と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比0.96で処理したのち、1250℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して、束状の炭素繊維を得た。
【0077】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり30クーロンの電解処理を行い、92℃に加温したイオン交換水中に10秒間浸積させた後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を300℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0078】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例4
実施例と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1250℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して炭素繊維束を得た。
【0079】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行い、92℃に加温したイオン交換水中に10秒間浸積させた後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を400℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0080】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例5
洗浄後の乾燥処理を180℃、2分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で束状の炭素繊維を得た。
【0081】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0082】
表1から明らかなように実施例1〜4によりX線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、蛍光X線測定による珪素由来の強度が60〜120cpsである炭素繊維束を得ることができ、かかる炭素繊維を用いた繊維強化複合材料は吸湿高温下の90°曲げ強度を低下させることなく、優れた高圧縮強度特性を発現するものである。
【0083】
【表1】
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば圧縮強度特性に優れ、かつ吸湿高温下であっても曲げ強度低下が少ない優れた繊維強化複合材料を提供できるので、航空宇宙用途では主翼、尾翼フロアビームなどの一次構造材、フラップ、エルロン、カウル、フェアリング、内装材などの二次構造材、ロケットモーターケース、人工衛星構造材など、さらにまたスポーツ用途ではゴルフシャフト、釣り竿など、その他、圧力容器、自動車用構造材などに好ましく用いられる素材を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途などに好ましく使用できる炭素繊維強化複合材料に関するものである。また、かかる炭素繊維強化複合材料に好適に用いられる炭素繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維はその優れた比強度、比弾性率を利用して、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途、プロペラシャフトやエンジンフード、スポイラーなど自動車部材、天然ガス、燃料電池用水素貯蔵用などの圧力容器、航空機用構造材などの用途として幅広く使用されている。
【0003】
近年、航空機の一次構造材料や宇宙構造材用途などで、よりいっそうの軽量化を図るために従来の複合材料よりも遙かに優れた特性、特に優れた圧縮強度特性を有する複合材料の出現が要望されている。
【0004】
また、このような航空宇宙用途では高温多湿下や低温下などの過酷な条件下での強度保持率の高い材料に対する要望も強い。そのためには過酷な条件下で使用した際の繊維強化複合材料の強度低下を押さえることが必要となる。
【0005】
引張強度、圧縮強度等の優れた特性を有する炭素繊維を得るためには単繊維間接着に起因する表面欠陥を減少させる必要がある。そのために前駆体繊維紡糸時に油剤を付与する。油剤の中でもシリコーン系油剤は単繊維間接着防止効果が高く、好んで用いられる。ところがシリコーン系油剤は空気中200〜300℃の耐炎化処理、引き続いて行われる不活性処理最高温度1000〜2000℃での炭素化処理において、大部分は分解飛散するが、一部は二酸化珪素などの物質に変化し、繊維に付着した状態となる。この付着した二酸化珪素は繊維強化複合材料を作製する場合に、マトリックス樹脂との接着に影響を及ぼし、特に、吸湿高温下おける接着特性が大きく低下し、非繊維方向の強度が低下する問題がある。
【0006】
炭素繊維に付着しているシリコーンが少ない炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度がSi/Cが0.001〜0.03であることを特徴とする炭素繊維の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる方法は、表面のある程度の珪素量はコントロールできるものの、珪素の付着量によってはその効果が十分でない場合があった。また、フッ化水素と硝酸を用いSiOx(0.5≦x≦2.5)を抽出後灰化、アルカリ溶融し、脱イオン水で溶解した水溶液をICP発光分析により測定した珪素分量が0.001〜0.5%である炭素繊維が提案されている(例えば、特許文献2参照)。ところが、かかる方法では、炭素繊維表面の珪素除去方法がフッ化水素を用いるため工業的に実施する場合、作業者への暴露など作業安全性の確保に困難が伴う場合があった。また、元素分析法で想定される炭素繊維全体の平均窒素量が0.5〜4.5%重量%であり、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度がSi/Cが0〜0.02である炭素繊維が提案されているが、かかる炭素繊維では、繊維方向の特性、特に圧縮強度特性が十分でないという問題があった(特許文献3)。
【0007】
すなわち、上記従来の方法では、繊維方向特性を向上し、かつ、珪素量の減少を両立させることは困難であり、その結果、圧縮強度と吸湿高温下における非繊維方向の機械特性の両方に優れた繊維強化複合材料を得ることが困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開2002−327374号公報(全頁)
【0009】
【特許文献2】特開2002−317335号公報(全頁)
【0010】
【特許文献3】特開昭62−276075号公報(全頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決し、圧縮強度特性に優れ、90°曲げ強度など、非繊維方向強度、特に吸湿高温下での機械特性に優れる炭素繊維強化複合材料およびそれを実現する炭素繊維を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記した課題について、鋭意検討し、X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、かつ蛍光X線測定による珪素由来の強度が60〜120cpsである炭素繊維とすることにより、上記課題を一挙に解決するものである。
【0013】
また、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気下1100〜1350℃で炭化し、得られた炭素繊維を陽極として、アルカリ性水溶液中、20〜200c/gの電気量で電解酸化処理を行った後、80〜100℃、pH8〜12のアルカリ性水溶液中で洗浄する炭素繊維の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明の炭素繊維は、X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームの範囲にある。結晶サイズが10オングストローム未満になると結晶化していない炭素の割合が増えるため、十分な引張強度や引張弾性率が発現しない。一方、20オングストロームを超えると圧縮強度が低下する。好ましくは12〜18オングストロームである。ここでいう結晶サイズLcとは、X線源としてCuKα(Niフィルター使用)を用いた結晶構造解析法により求められるものである。結晶サイズLcは面指数(002)回折線のピークの半値幅から、次のScherrerの式を用いて計算して求められる。
【0015】
Lc(hkl)=Kλ/β0cosθB
但し、
Lc(hkl):微結晶(hkl)面に垂直な方向の平均の大きさ
K:1.0
λ:0.15418nm(X線の波長)
β0:(βE 2−β1 2)1/2
βE:見かけの半値幅(測定値)
β1:1.046×10−2rad
θB:Braggの回析角
本発明の炭素繊維束の蛍光X線測定による珪素由来のX線強度は60〜120cpsである。かかる数値は、炭素繊維中に存在する珪素量の指標であり、120cpsを超えると珪素珪素化合物が、樹脂との接着性を阻害し、繊維強化複合材料とした際に、90°曲げ強度、90°引張強度などの非繊維方向の機械強度が低下することがある。また、高温多湿下における複合材料特性、特に90°方向の曲げ強度特性が低下する。この機構はあきらかではないが、繊維表面に存在する珪素化合物が水分により膨潤し、炭素繊維表面もしくは樹脂との界面でクラックなどが発生しやすいためと筆者らは推定している。60cps未満になると複合材料特性は向上するものの繊維の集束性が不十分となり炭素繊維の取り扱い性が低下する。より好ましくは65〜110cps、更に好ましくは70〜90である。
【0016】
ここで珪素由来のX線強度というのは、一次X線を照射した際に発生する珪素由来の蛍光X線の強度を単位時間あたりの光子数(counts per second)で表したものであり、例えば下記条件で測定することができる。
X線管ターゲット:Sc(200W)
電圧:50KV
電流:4mA
測定時間:25sec
かかる蛍光X線測定装置としては、例えば日本フィリップス社製VENUS200を用いることができる。
【0017】
尚、測定に供する炭素繊維は、測定前に、サイジング剤などの付着物を取り除くために、炭素繊維1重量部に対して100重量部の洗浄浴液(イオン交換水、50℃)中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30Lの水槽に6L/分給水しながら約1分間洗い流す。その後、熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させたものを測定用試料として用いる。超音波洗浄装置としては、例えばエスエヌディ(株)社製USK−4などを、熱風オーブンとしては例えばADVANTEC(株)社製FS−32Dなどを使用できる。
【0018】
本発明の炭素繊維は、ストランド引張強度が4.5GPa以上の束状の炭素繊維であることが好ましい。4.5GPa以上とすることで、繊維強化複合材料の0°方向の引張強度が良好となり、航空機構造材等にも好適に用いることができる。好ましくは4.8GPa以上である。ストランド引張強度の上限は特にないが8GPa程度である。また、本発明の炭素繊維は、ストランド引張弾性率は特に限定されないが、用途に応じて200〜400GPa程度の束状の炭素繊維とすることができる。200〜350GPaがより好ましく、200〜300GPaが更に好ましい。200GPa未満であると、得られる繊維強化複合材料の剛性が不足する場合がある。また、400GPaを超えると繊維内の結晶成長やボイド増加により圧縮強度が低下する傾向がある。かかるストランド引張弾性率をより好ましくは220〜280GPa、特に好ましくは240〜260GPaとすることにより、剛性と圧縮強度のバランスが特に向上し、航空機構造材等に用いられる繊維強化複合材料用の炭素繊維として好適である。
【0019】
本発明の炭素繊維の単繊維の原子間力顕微鏡により測定される表面積比、すなわち平滑性は1.00〜1.05が好ましい。表面積比1.03を越える、すなわち表面凹凸が大きいと繊維強化複合材料となした場合に強度向上効果が十分に発揮されない場合がある。より好ましくは1.00〜1.03である。
【0020】
さらに本発明の炭素繊維は、光電子分光法によって求められる表面の酸素濃度O/Cが0.1〜0.3であることが好ましい。0.1より低い場合は炭素繊維に存在する官能基が少なすぎるためマトリックス樹脂の接着特性が低下し複合材料の層間剪断強度(ILSS)などの特性が低下する。0.3以上になると炭素繊維に存在する官能基量が多すぎ、かえってマトリックス樹脂の接着特性が低下する。好ましくは0.15〜0.30である。
【0021】
ここで、本発明でいう炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cは次の手法にて、X線光電子分光法により得ることができる。
【0022】
測定する炭素繊維にサイジング剤等の後処理剤が付着している場合は、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールなどの溶媒で洗浄し、蒸留水で洗い流し、必要に応じて超音波洗浄するなどしてサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、下記条件にて測定できるものである。
【0023】
・X線源:AlKα1,2あるいはMgKα1,2
尚、測定時の帯電に伴うピークの補正は、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせることで実施できる。
【0024】
次いで、C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積[O1s]は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
【0025】
表面酸素/炭素比(O/C)は、上記O1sピーク面積[O1s]、C1sピーク面積[C1s]の比、及び装置固有の感度補正値より、次式により求めることができる。
【0026】
O/C=([O1s]/[C1s])/(感度補正値)
上記した炭素繊維の製造方法の好ましい態様を以下に説明する。すなわち、本発明の炭素繊維の製造方法は、シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気化1100〜1350℃で炭化することが好ましい。
【0027】
前駆体繊維としてはレーヨン系、ピッチ系、ポリアクリロニトリル系のいずれを問わないが、優れた引張強度や圧縮強度特性を得るためにはポリアクリロニトリル系繊維が好ましい。
【0028】
ここで油剤組成物としては、蛍光X線測定による珪素由来のX線強度が上記特定範囲となるように、最終的に得られる前駆体繊維が0.01〜5重量%の珪素を付着する状態になるように適宜シリコーン化合物の濃度を決めることができる。珪素の付着量は好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%とするのがよい。
【0029】
ここで、シリコーン系化合物とは具体的にはジメチルシロキサンを用いることが好ましい。ジメチルシロキサンとしてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーンなどの変性シリコーン、またはそれらの混合物を用いるのが好ましい。なかでもアミノ変性シリコンを含むのが好ましく、アミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンを含むのが好ましい。ジメチルシロキサンの混合比率(重量比)としては、アミノ変性シリコーンが40%以上含有していることが好ましい。アミノ変性シリコーンの変性量としては末端アミノ基を−NH2に換算した比率が、0.05〜10重量%であることが好ましく、好ましくは0.1〜5重量%のものがよい。エポキシ変性シリコーンの変性量としてはエポキシ基−CHCH2Oの比率が0.05〜10重量%であることが好ましく、好ましくは0.1〜5重量%のものがよい。アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリコーンは、いずれもその25℃における粘度が200〜40000cstのものを用いるのが好ましい。
【0030】
また、シリコーン系化合物としては、水溶性のシリコーンや乳化剤を用い、水分散させたエマルジョンを用いてもよい。乳化剤を用いる場合にはアニオン系、カチオン系、ノニオン系の乳化剤を用いることができるが、分散安定性の点からノニオン系を好ましく用いられる。ノニオン系乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0031】
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維に油剤を付与する方法はいずれを問わないが、口金よりポリマーの溶剤と水などの凝固剤を混合した凝固浴に吐出された繊維に水洗、浴中延伸等の処理を施したのち、乾燥緻密化したものに付与することができる。
【0032】
前駆体繊維を耐炎化する方法は空気中、200℃〜300℃の温度範囲が好ましい。耐炎化時の延伸比は得られる炭素繊維の引張強度を向上させる観点から、毛羽が発生しない範囲で高くすることが好ましく、0.7〜1.2が好ましい。延伸比が0.7未満となると炭素繊維の引張強度が低下することがあり、1.2を超えると引張強度は向上するが、毛羽が発生し、取り扱い性が低下することがある。より好ましくは0.8〜1.1である。
【0033】
耐炎化は得られる炭素繊維の引張強度と炭化工程のプロセス性、炭素化収率を向上させる観点から耐炎化繊維の比重が1.25〜1.50の範囲となるまで継続して耐炎化するのが好ましく、より好ましくは1.28〜1.45、さらに好ましくは1.30〜1.40である。
【0034】
耐炎化時間は、好ましい耐炎化度が得られるように適宜決めることができるが、得られる炭素繊維の性能及び生産性を高める観点から10〜100分が良く、好ましくは20〜60分が好ましい。ここで耐炎化時間とは繊維束が耐炎化炉内に滞留している全時間を言う。耐炎化時間が10分未満であると単繊維表層部と単繊維中央部の構造差が生じ、得られた炭素繊維のストランド引張強度、ストランド引張弾性率が低下する場合がある。一方、100分を越えると生産性が低下する。
【0035】
本発明の炭素繊維の製造方法は、こうして得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気中で1100〜1350℃での熱処理を行うことが好ましい。1100℃未満であると得られる炭素繊維の水分率が高くなり、繊維強化複合材料を成形する際に、マトリックス樹脂の硬化が不十分となり、繊維強化複合材料の引張強度が十分発現しない場合がある。1350℃を越えると炭素繊維の結晶サイズが20オングストロームを超え、繊維方向の強度、とりわけ繊維強化複合材料とした場合の圧縮強度が向上効果が不十分な場合がある。より好ましくは1200℃〜1300℃以下である。炭化工程における延伸比は得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率を向上させる意味から、毛羽を発生しない範囲で画することが好ましく、0.8〜1.1が好ましい。延伸比が0.8未満となると炭素繊維の引張強度が4.5GPaを下回る、もしくは引張弾性率が200GPaを下回る場合があり、1.1を越えると繊維が切断したり、一部が破断し毛羽となり取り扱い性が低下する場合がある。より好ましくは0.9〜1.0である。
【0036】
上記炭化工程の前に、不活性雰囲気中で温度500〜1000℃で熱処理を行う、いわゆる前炭化工程を経ることが好ましい。かかる前炭化工程の熱処理温度が500℃以下であると次工程の炭化工程における繊維の分解・劣化が激しく炭素繊維しての特性が低下する場合がある。1000℃を超えると前炭化工程での十分な張力を保つことが困難になり、ストランド引張弾性率が200GPaを下回る場合がある。より好ましくは600〜900℃である。
【0037】
前炭化工程における延伸比は得られる炭素繊維の引張強度を向上させる観点から、毛羽が発生しない範囲で高くすることが好ましく、0.8〜1.3が好ましい。延伸比が0.8未満となると炭素繊維の引張強度が4.5GPaを下回る場合があり、1.3を超えると引張強度は向上するが、毛羽が発生し、取り扱い性が低下する場合がある。好ましくは0.9〜1.2である。
【0038】
本発明の炭素繊維の製造方法において、炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来の強度範囲を60〜120cpsとするための方法の一例として、上記の炭素繊維を用い表面を改質する方法を挙げることができる。表面改質方法としてはアルカリ性水溶液による電解処理、洗浄、乾燥を組み合わせることが好ましい。
【0039】
電解処理に用いる電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の無機塩類、水酸化テトラアルキルアンモニウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機塩類、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩、または他の金属塩、およびアンモニウム塩、またはヒドラジンなどの有機化合物が好ましく使用されるが、樹脂の効果に対する障害をなくす観点から、アルカリ金属を含有しないもの、つまり炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムがより好ましい。
【0040】
かかる電解処理において、通電する炭素繊維1g当たりの電気量は20〜200c/gが好ましい。20c/gより少ないと炭素繊維に残存する珪素化合物の量が多くなり、珪素由来の蛍光X線強度が120cpsを超える場合がある。また電気量が200c/gを越えると炭素繊維に残存する珪素化合物量は低下するが炭素繊維の表層構造が破壊され結果として、マトリックス樹脂との接着特性がかえって低下し、繊維強化複合材料とした場合に、非繊維方向の強度、例えば90°引張強度、90°曲げ強度、層間剪断強度(ILSS)が低めになる場合がある。より好ましくは30〜160c/g、更に好ましくは50〜120c/gである。
【0041】
電解処理を行った炭素繊維はその後洗浄することが好ましい。洗浄方法はいずれを問わないが、80〜100℃、pH8〜12のアルカリ性水溶液中で洗浄することが好ましい。かかる洗浄液としては上記電解処理で用いたものと同じ水溶液を使用しても良い。洗浄水溶液の温度は処理効率化の観点から80〜100℃が好ましい。80℃未満になると炭素繊維から珪素化合物を除去する能力が低下する傾向にあり効率面から80℃を超えることが好ましい。かかる洗浄の目的においては100℃程度あれば十分である。また、沸騰した洗浄液は作業性が低下するため、95℃以下がより好ましい。さらに好ましくは80〜95℃である。処理時間は3秒以上とすることが珪素化合物の除去の観点から好ましく、上限はいずれを問わないが、設備費、生産性から60秒程度あれば十分である。ここでいう処理時間とは、炭素繊維が洗浄液中に滞留している時間を表す。
【0042】
また、上記洗浄の後に、更に水で洗い流すと乾燥工程で発生する塩基性気体が減少し、作業性が向上するのでより好ましい。この場合の洗浄水は温度5〜40℃の水を好ましく用いられる。洗浄水はpH6〜8の水で、金属イオンの含有量が少ないイオン交換水、精製水などが好ましい。
【0043】
かかる電解処理、より好ましくは水洗処理の後、糸条を乾燥するのがよい。乾燥温度は、空気雰囲気中200〜400℃が好ましい。乾燥温度が200℃より低くなると炭素繊維表面に存在する水酸基、カルボキシル基などの官能基が多すぎる、すなわち酸素濃度比O/Cが0.3を超える場合があり、ストランド引張強度が低下する場合がある。また400℃より高くなると官能基が熱分解し、O/Cが0.1未満となりマトリックス樹脂との接着性が低下する場合があり、ひいては繊維強化複合材料の非繊維方向の機械強度が十分に発揮されない場合がある。好ましくは250〜370℃、より好ましくは280〜350℃である。
【0044】
本発明の繊維強化複合材料は上記炭素繊維およびマトリックス樹脂から構成される。マトリックス樹脂の種類はいずれを問わないが、航空宇宙用途、一般産業用途において十分な機械的特質を得るためにはエポキシ樹脂組成物が好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂化合物とは分子内に複数のエポキシ基を有する化合物を指し、エポキシ樹脂組成物中にはエポキシ樹脂化合物の他に硬化剤や添加剤を含んでいても良い。エポキシ樹脂化合物としては、例えばビスフェノールA形エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレンジアミンなどのグリシジルアミン型のエポキシなどあるいはこれらの組み合わせが好ましく使用される。
【0046】
かかるエポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤としてはエポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればいずれを問わないが、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が好ましく使用される。具体的にはジシンジアミド、ジアミノジフェニルスルフォンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が好ましく使用される。
【0047】
かかるエポキシ樹脂組成物に、上記のエポキシ樹脂、硬化剤の他、高分子化合物、無機または有機粒子など他の成分を適宜その目的に応じて配合することができる。
【0048】
また、本発明の繊維強化複合材料において繊維含有率が40〜90重量%であることが好ましい。炭素繊維含有率が40%未満であると必要な機械特性を得るための強化複合材料量が増大し、軽量化の効果が低くなる。炭素繊維含有率が90重量%を越えると炭素繊維対するマトリックス樹脂組成物の量が少なくなるために繊維強化複合材料中にボイド(空隙)が生じやすくその結果繊維強化複合材料の機械特性が低下することがある。かかる繊維強化複合材料の炭素繊維含有率(重量%)は例えば還元炎により樹脂硬化物を焼き飛ばし炭素繊維の重量を求める燃焼法などが用いられる。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料を得る方法としては、例えば、本発明の炭素繊維を予め樹脂に含浸させる、いわゆるプリプレグという形態を経由する方法であってもよいし、エポキシ樹脂組成物を直接、本発明の強化繊維に含浸させた後加熱硬化する方法、即ち、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法等が使用できる。機械特性がより発現するという点において、炭素繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグを作製し、これを積層して、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱し硬化させて繊維強化複合材料を製造する方法がより好ましい。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の通りとした。
(1)ストランド引張強度およびストランド引張弾性率の測定
束状の炭素繊維に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃35分間硬化させた後、JIS R7601の方法に従って引張試験を行った。
【0051】
*樹脂組成物
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイド社製)100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ株式会社製) 3重量部
・アセトン(和光純薬工業株式会社製) 4重量部
(2)X線結晶解析
試料として長さ4cm程度の炭素繊維を用意し、金型とコロジオン・アルコール溶液を用い固め、角柱形状として結晶サイズ測定用試料とした。測定試料を次の構成、条件で測定した。本実施例では、測定装置として(株)理学電気社製、4036A型(管球型)を使用した。
(構成)
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
出力: 40kV、20mA
ゴニオメーター (株)理学電気社製
スリット:2mmφ−1°−1°
検出器:シンチレーションカウンター
計数記録装置:(株)理学電気社製 RAD−C型
(測定条件)
2θ/θ :ステップスキャン(赤道線方向、子午線方向)
測定範囲 :2θ=5〜90°
サンプリング:0.05°
積算時間:2秒
なお、赤道線方向は繊維径方向、子午線方向は繊維軸方向に相当する。
(結晶サイズLcの測定)
上述の方法により、得られた(002)面のピーク半値幅から、次のSCherrerの式により求めた値をLcとした。
【0052】
Lc(hkl)=Kλ/β0cosθB
但し、
Lc(hkl):微結晶(hkl)面に垂直な方向の平均の大きさ
K:1.0
λ:0.15418nm(X線の波長)
β0:(βE 2−β1 2)1/2
βE:見かけの半値幅(測定値)
β1:1.046×10−2rad
θB:Braggの回析角
(3)蛍光X線測定
X線を照射した際に珪素に由来して発せられる蛍光X線の単位時間あたりの光子数を珪素由来のX線強度として測定した。尚、本実施例では
日本フィリップス社製蛍光X線装置VENUS200を用いた。一次X線源はScを用い、測定時の条件としては、減圧気圧4〜8Paの条件で、温度37℃、25秒間の測定時間とした。測定試料である炭素繊維は1mサンプリングし、次に述べる洗浄をした後に、長さ50mm、幅50mm、厚さ2mmの板(実施例ではテフロン(登録商標)製の板)に巻き付け測定に供した。
<洗浄>
測定前にサイジング剤などの付着物を取り除くために炭素繊維1重量部に対して100重量部のイオン交換水中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30Lの水槽に6L/分給水しながら1分間洗い流した。その後、熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させた。本実施例では超音波洗浄機としてエスエヌディ(株)社製、USK−4を用い、熱風オーブンとしては、ADVANTEC(株)社製FS−32Dを用いた。
(4)表面積比
炭素繊維表面の表面積比は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて以下の方法により求めた。
【0053】
測定試料としては炭素繊維を長さ5mm程度にカットしたものを使用した。かかる試料を銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、下記条件にて単繊維の中央部において、3次元の表面形状の像を得た。尚、原子間力顕微鏡としてはDigital Instruments社製NanoscopeIIIa、3000ステージシステムを使用した。
【0054】
走査モード:タッピングモード
探針:オリンパス工業製Siカンチレバー一体型探針OMCL−AC12OTS
走査範囲:2.5μm×2.5μm
走査速度:0.4Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温・大気中
各試料について、単繊維1本から一カ所ずつ観察して得られた投影像について、一次Flattenフィルター、lowpassフィルター、3次planefit フィルターを用いてフィルタリングし、得られた像全体を対象として、凹凸を含む実表面積を算出した。かかるデータ処理には前記装置に付属のソフトウエア(Nanoscope IIIバージョン4.22R2)を使用した。
【0055】
表面積比は凹凸を含む実表面積と投影像面積の比として求めた。ここで各試料について、任意に選んだ単繊維5本について上記の測定を行い、最大値、最小値を除いた3本についての相加平均値を最終的な表面積比とした。
(5)表面酸素濃度比O/C
表面酸素濃度比O/Cは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた。試料となる炭素繊維は適当な長さにカットしてを銅製の試料支持台に広げて並べた。光電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中を1.3×10−6Pa(1×10−8Torr)の真空度にに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、C1Sの主ピークの運動エネルギー値B.E.を284.6eVにあわせた。C1Sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1Sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
ここで表面酸素濃度比(O/C)は、前記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比を装置固有の感度補正値で割ることにより原子数比として算出した。なお本実施例ではX線光電子分光測定装置として島津製作所のESCA−750を用い、かかる装置固有の感度補正値は2.85であった。尚、サイジング剤が付着した炭素繊維はアセトンなどの有機溶媒でアセトンを除去したのち測定した。
(6)繊維強化複合材料の機械特性
本実施例では、繊維強化複合材料の0℃圧縮強度および吸湿高温下の90°曲げ強度について、以下の方法により測定した。
<プリプレグの作製>
A.次に示す原料樹脂を混合し、30分攪拌して樹脂組成物を得た。
【0056】
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(エピコート(登録商標)1001、ジャパン エポキシ レジン(株)製)、30重量%
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂(エピコ−ト828、ジャパンエポキシ レジン(株)製)、30重量%
・フェノールノボラックポリグリシジルエーテル樹脂(エピクロン(登録商標)−N740、大日本インキ化学工業(株)製)、27重量%
・ポリビニルホルマール樹脂(ビニレック(登録商標)K、チッソ(株)製、登録商標)、5重量%
・ジシアンジアミド(DICY7、ジャパン エポキシ レジン(株)製)、4重量%
・3,4ジクロロフェノール−1ジメチルウレア(DCMU−99、保土ヶ谷化学(株)製、硬化剤)、4重量%
B.次に、前記樹脂組成物をシリコーンを塗布した離型紙にコーティングして得られた樹脂フィルムを、円周約2.7mの60〜70℃に温調した鋼製ドラムに巻き付けた。
【0057】
この上に束状の炭素繊維をクリールから巻きだし、トラバースを介して配列した。更にその上から、前記樹脂フィルムで再度覆い、ロールで回転しながら、加圧し樹脂を繊維束内に含浸せしめ、幅300mm、長さ2.7mの一方向プリプレグを作製した。ここで、プリプレグの繊維目付はドラムの回転数とトラバースの送り速度を変化させ、190g/m2とした。またプリプレグの樹脂含有率は約35重量%とした。
<繊維強化複合材料の作製>
上記プリプレグを繊維方向を一方向に揃えて、所定の厚みになるように積層し、温度130℃、圧力0.3MPaで2時間硬化させた。
<0°圧縮強度の測定>
上記方法により厚さが1mmの積層板(繊維強化複合材料)を成形した。かかる積層板から被破壊部分が中心になるように、繊維方向を長さ方向として、厚さ1±0.1mm、幅12.7±0.13mm、長さ80±0.013mm、ゲージ部長さ5±0.13mmの試験片を切り出した。
【0058】
この試験片を用いて、ASTM D695に示される圧縮治具を使用し、歪み速度を1.27mm/分の条件で、測定し、繊維体積分率60%に換算して繊維強化複合材料の0°圧縮強度を得た。測定数はn=6とし、平均値を0°圧縮強度とした。
<吸湿高温下の90°曲げ強度の測定>
上記方法により厚さが2mmの積層板を成形した。かかる積層板から、繊維方向が幅方向となるように、厚さ2±0.2mm、幅15±0.28mm、長さ100±0.01mmの試験片を切り出した。
【0059】
曲げ試験の測定に先立ち、上記試験片を71℃の温水に2週間浸水し、試験片の水分率を0.7〜1.4重量%とした。このようにして吸湿高温処理を行った試験片について3点曲げ治具(圧子10mmφ、支店10mmφ)を用いて支持スパンを80mmに設定し、歪み速度1.5mm/分として試験することにより曲げ強度を求めた。測定数はn=6とし、平均値を吸湿高温下の90°曲げ強度とした。
実施例1
アクリロニトリル97重量%、アクリル酸メチル2重量%、イタコン酸0.6重量%からなり極限粘度1.5であるアクリル系重合体を、DMSO中で溶液重合した後、pHが8〜8.5になるまで攪拌しながらアンモニアガスを吹き込み、共重合体濃度が20.0重量%である紡糸原液を得た。
【0060】
この紡糸原液を、孔直径0.1mmの6000ホールを有する口金から一旦空気中に吐出して、約4mmのエアーギャップを経て凝固浴に導く乾湿式紡糸法で繊維を形成した。凝固浴はDMSO40重量%で温度は5℃とした。
【0061】
凝固浴から引き出した繊維束を緊張保持しながら30〜65℃に順次温度を上げながら多段の水洗槽によりDMSOを除去した。ついで90℃の熱水浴中で3倍に延伸して膨潤比150重量%の水膨潤繊維束を得た。この水膨潤繊維を、アミノ変性シリコーンオイル70重量部とポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル30重量部からなる油剤の水分散液に浸積した。油剤の水分散液において、繊維に対する油剤付着量が1.0重量%になるように油剤濃度を調整した。
【0062】
ついで油剤が付与された繊維を、緊張を保持しながら、表面温度が160℃のホットロールに接触させ乾燥した後、圧力0.44MPaの加圧水蒸気中で4倍に延伸して、単繊維の繊度が1.11dtexで6000フィラメントの束状の前駆体繊維を得た。
【0063】
得られた束状の前駆体繊維を265℃の加熱空気中、延伸比0.9で耐炎化処理を行い、比重1.35の束状の耐炎化繊維を得た。
【0064】
ついで最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比0.96で前炭化処理したのち、1250℃の炭素化炉で、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0065】
この束状の炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行った後、92℃に加温したpH9.0の炭酸アンモニウム水溶液中に10秒間浸積し、洗浄した後、室温のイオン交換水に15秒間浸積し、洗浄した。その束状の炭素繊維を300℃で1分間乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0066】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を、最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1400℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0067】
この炭素繊維について実施例1と同じアルカリ性水溶液による電解処理、加温したイオン交換水の洗浄、室温のイオン交換水による洗浄、乾燥、サイジング剤付与を行い、サイジング付着量0.8%の炭素繊維を得た。
【0068】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例1と同様な方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1000℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して束状の炭素繊維を得た。
【0069】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行った後、92℃のpH9.0の炭酸アンモニウム水溶液中に10秒間浸積後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を300℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.9重量%の炭素繊維を得た。
【0070】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率及び表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例3
電解処理後に、炭酸アンモニウム水溶液による洗浄を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により束状の炭素繊維を得た。
【0071】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
比較例4
電解処理後の洗浄に際して、炭酸アンモニウム水溶液の温度を92℃から20℃に変更した以外は実施例1と同様の方法により束状の炭素繊維を得た。
【0072】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率及び表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例2
実施例1と同様の方法で得た紡糸原液を孔直径0.05mmの6000ホールを有する口金から凝固浴中で吐出させ、いわゆる湿式紡糸法で繊維を形成した。凝固浴はDMSO60重量%で温度は40℃とした。
【0073】
凝固浴から引き出した繊維束を緊張保持しながら、60〜80℃に順次温度を上げながら多段の水洗槽によりDMSOを除去した。ついで90℃の熱水浴中で5倍に延伸して膨潤比200重量%の水膨潤繊維束を得た。この水膨潤繊維を、アミノ変性シリコーンオイル70重量部とポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル30重量部からなる油剤の水分散液に浸積した。油剤の水分散液において、繊維に対する油剤付着量が1.0重量%になるように油剤濃度を調整した。
【0074】
ついで油剤が付与された繊維を、緊張を保持しながら、表面温度が160℃のホットロールに接触させ乾燥した後、圧力0.35MPaの加圧水蒸気中で2倍に延伸して、単繊維の繊度が1.11dtexで6000フィラメントの束状の前駆体繊維を得た。
【0075】
この前駆体を用いた以外は、実施例1と同様な方法で炭素化、表面処理、温水洗浄、サイジング剤付与行い束状の炭素繊維を得た。
【0076】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例3
実施例と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比0.96で処理したのち、1250℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して、束状の炭素繊維を得た。
【0077】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり30クーロンの電解処理を行い、92℃に加温したイオン交換水中に10秒間浸積させた後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を300℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分としたサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0078】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例4
実施例と同様の方法で作製した比重1.35の耐炎化繊維を最高温度800℃の前炭素化炉で、窒素雰囲気中、延伸比が0.96で処理したのち、1250℃の炭素化炉で、窒素雰囲気中、張力を0.1Nとして炭素化して炭素繊維束を得た。
【0079】
この炭素繊維を2重量%の炭酸アンモニウム水溶液中で1グラム当たり100クーロンの電解処理を行い、92℃に加温したイオン交換水中に10秒間浸積させた後、室温のイオン交換水に15秒間浸積させた。その束状の炭素繊維を400℃で1分間、乾燥処理し、エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8重量%の炭素繊維を得た。
【0080】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
実施例5
洗浄後の乾燥処理を180℃、2分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で束状の炭素繊維を得た。
【0081】
得られた炭素繊維に関して、前記方法により蛍光X線による珪素由来のX線強度、結晶サイズLc、X線光電子分光法による表面酸素濃度比、ストランド引張強度、引張弾性率および表面積比を測定した。また、かかる炭素繊維を用いて前記方法に従って、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、繊維強化複合材料の0°圧縮強度、吸湿高温下の90°曲げ強度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0082】
表1から明らかなように実施例1〜4によりX線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、蛍光X線測定による珪素由来の強度が60〜120cpsである炭素繊維束を得ることができ、かかる炭素繊維を用いた繊維強化複合材料は吸湿高温下の90°曲げ強度を低下させることなく、優れた高圧縮強度特性を発現するものである。
【0083】
【表1】
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば圧縮強度特性に優れ、かつ吸湿高温下であっても曲げ強度低下が少ない優れた繊維強化複合材料を提供できるので、航空宇宙用途では主翼、尾翼フロアビームなどの一次構造材、フラップ、エルロン、カウル、フェアリング、内装材などの二次構造材、ロケットモーターケース、人工衛星構造材など、さらにまたスポーツ用途ではゴルフシャフト、釣り竿など、その他、圧力容器、自動車用構造材などに好ましく用いられる素材を提供することができる。
Claims (7)
- X線結晶回折測定により求められる結晶サイズLcが10〜20オングストロームで、かつ蛍光X線測定による珪素由来のX線強度が60〜120cpsである炭素繊維。
- ストランド引張強度が4.5GPa以上で、かつストランド引張弾性率が200〜400GPaである束状の請求項1記載の炭素繊維。
- 原糸間力顕微鏡により測定される表面積比が 1.00〜1.05である請求項1または2に記載の炭素繊維繊維。
- 光電子分光法による酸素濃度がO/Cが0.1〜0.3である請求項3に記載の炭素繊維。
- シリコーン化合物を含んでなる油剤組成物が付着した前駆体繊維束を空気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気下1100〜1350℃で炭化し、得られた炭素繊維を陽極として、アルカリ性水溶液中、20〜200c/gの電気量で電解酸化処理を行った後、80〜100℃、pH8〜12のアルカリ性水溶液中で洗浄する炭素繊維の製造方法。
- 前記洗浄の後に、200〜400℃の温度で乾燥させる請求項5に記載の炭素繊維の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維を含む炭素繊維強化複合材料。
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