JP7338176B2 - 炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)。
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)。
炭素繊維束とマトリクス樹脂からなる複合材料の破壊は、主に応力集中箇所に生じるクラックから開始する。複合材料に応力をかけた際、応力集中箇所にかかるエネルギーは樹脂に分配され、その際に樹脂によってなされる仕事量は樹脂強度と樹脂伸度の積(MPa・%)に比例する。本発明者らは、このパラメータの積が所定値以上であれば、複合材料が層間剪断破壊を生じにくいことを見いだした。樹脂の力学物性のうち樹脂強度のみが高い場合は一旦応力集中箇所に破壊の起点となるクラックが入ると、樹脂弾性率が高いことによりひずみが小さい領域で脆性的に樹脂破壊する。樹脂強度78MPa未満では、炭素繊維束とサイジング剤間の接着強度よりも低いことから、サイジング剤と樹脂間の接着を十分に発現できず樹脂破壊が先行する。特に、樹脂強度が大きいほど、クラック周囲の樹脂が降伏に至るまでの許容応力の範囲が広く、樹脂強度が78MPa以上であると本発明の効果が発現し、85MPa以上が好ましい。樹脂伸度のみが高い場合は、応力をかけると応力集中部の樹脂弾性率が低いことにより、ひずみが大きい領域まで樹脂が伸長するが伸長後に樹脂が破壊する。樹脂伸度3.2%未満では、樹脂がエネルギーを十分に吸収できないため、サイジング剤と樹脂間の接着を十分に発現できず樹脂破壊が先行する。樹脂伸度が大きいほどクラック周囲の樹脂が破壊に至るまでの許容範囲が広く、樹脂伸度が3.2%以上であると本発明の効果が発現し、4.0%以上が好ましい。
特に、不飽和ポリウレタン化合物の末端不飽和基がアクリレート基およびメタクリレート基である化合物が好ましく、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネート化合物、フェニルグリシジルエーテルトリアクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネート化合物、グリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールトリトリレンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、トリアリルイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
されるものではない。なお、以下では実施例2を参考例2と読み替えるものとする。
本実施例において、炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cは次の手順に従って、X線光電子分光法によって測定したされる。まず、溶剤で炭素繊維束表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー内を1×10-8Torrに保ち、光電子脱出角度を45°としてX線光電子分光測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値として、C1Sの主ピークの結合エネルギー値を、285eVに合わせた。C1Sピーク面積を、結合エネルギー値として275から290eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積を、結合エネルギーとして525から540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA-1600を用いた。
2.0±0.5gのサイジング塗布炭素繊維束を秤量W1(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1-W2によりサイジング剤付着量を求めた。このサイジング剤付着量を炭素繊維束100質量部に対する質量部に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の付着量(質量部)とした。測定を行い、その平均値をサイジング剤の付着量とした。
スミチューブ(住友電工社製熱収縮チューブ)15cmに炭素繊維束を15cm挿入し、炭素繊維束を張った状態で固定して125℃で5分間加熱した。加熱後の収縮したチューブの内径は0.8mmであった。炭素繊維束が挿入されたスミチューブを5cmにカットし自動表面張力計に装着した。その後、測定荷重感度0.0005gとしてスミチューブを水(精製水)に対して移動速度6mm/秒で前進させ荷重m[g]を測定した。まず、測定値を横軸を時間t[min]、縦軸を荷重にして曲線を表示した。測定時間あたりの荷重を2乗した値の変化が大きい吸収領域と変化が小さい飽和領域の2つに分け、このうち吸収領域で測定値が直線となっている箇所から2点を選び、その直線の傾きを初期含浸速度(m2-t)[g2/min]として算出した。測定にはKruss社製自動表面張力計K100SFを用いた。
ILSSサンプルはビニルエステル樹脂、硬化促進剤、硬化剤から構成されるものを使用した。炭素繊維束を一方向に樹脂を含浸させながら金枠に巻き付け金枠を金型にセットし、ビニルエステル樹脂100部、ナフテン酸コバルト0.5部、t-ブチルペルオキシベンゾエート1.0部を金型に注入し真空脱泡後、プレス成形(室温×18時間)した。引き続き120℃、2時間で後硬化して、繊維含有率55~65体積%のビニルエステル樹脂と炭素繊維束の複合材料を得た。
金型により作製した長サンプルを、厚さ2.5mm×幅6mm×長さ19mmとなるようにカットし試験片を得た。通常の3点曲げ試験治具(圧子10mmφ、支点4mmφ)を用いて支持スパンを14mmに設定し、歪速度2.0mm/分として試験することにより求めた。ILSS(τ)を破壊の力Pi(N)、試験片の幅b(mm)、試験片の厚さ(mm)を用いた次式で算出した。
本発明において、下記の樹脂、炭素繊維束上の表面酸素濃度O/Cが異なる条件においてILSS値の好ましい範囲を3段階で評価し、80.0MPa以上を合格とした。
◎:ILSS値が84.0MPa以上
○:ILSS値が80.0MPa以上84.0MPa未満
△:ILSS値が76.0MPa以上80.0MPa未満
×:ILSS値が76.0MPa未満
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は下記の通りである。
A ビニルエステル樹脂
<樹脂引張強度(MPa)、樹脂引張伸度(%)試験方法>
引張強度(MPa)及び引張伸度(%)はASTM D-638に準拠して測定された。
(Reichhold社製、ウレタン変性ビニルエステル樹脂
引張強度:90MPa、引張伸度;3.2%、引張強度×引張伸度:288MPa・%)
A-2:Dion9102
(Reichhold社製、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂
引張強度:79MPa、引張伸度;4.5%、引張強度×引張伸度:356MPa・%)
A-3:Dion9500
(Reichhold社製、ウレタン変性ビニルエステル樹脂
引張強度:70MPa、引張伸度;9.0%、引張強度×引張伸度:630MPa・%)
A-4:R-806
(昭和電工社製、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂
引張強度:80MPa、引張伸度;3.2%、引張強度×引張伸度:256MPa・%)
B 硬化促進剤
コバルトN (昭和電工社製)
C 硬化剤
パーキュアVS (日油社製)。
本実施例は、次の第1~3の工程からなる。
アクリロニトリル共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、ストランド引張強度5.1GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維束を得た。次いで、その炭素繊維束を、炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維束1g当たり80クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維束を続いて水洗し、加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維束を得た。
グリセリンジメタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物(共栄化学社製UA101H)90質量部に、乳化剤10質量部を混合した水分散エマルジョンに水を加えて均一に溶解し約1.7質量%の水溶液を調製した。なお、乳化剤としてポリオキシエチレン(70mol)スチレン化(5mol)クミフェノールを用いた。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維束に塗布した後、予備乾燥工程としてホットローラーで120℃の温度で15秒熱処理をし、続いて、第2乾燥工程として210℃の温度の加熱空気中で90秒間熱処理をして、炭素繊維束上でサイジング剤成分を高分子量化させサイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤成分からなる重合体の付着量は、表面処理されたサイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.6質量部となるように調整した。
前工程で得られたサイジング剤付着炭素繊維束と、ビニルエステル樹脂A-1と硬化促進剤、硬化剤を用いて、層間剪断強度測定法に基づいたサンプル作製方法で、層間剪断強度測定用試験片を作製した。
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-2に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第1の工程における表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第1の工程における表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第2工程におけるサイジング剤付着量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-3に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性は良いが、接着強度が低かった。
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-4に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性は良いが、接着強度が低かった。
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
第1の工程における電解表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて、試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて、試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
第1の工程における電解液と表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-2に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
第1の工程における表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-3に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
第1の工程における表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA-4に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
Claims (8)
- X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束にサイジング剤を塗布し熱処理されてなるサイジング剤付着炭素繊維束、および、硬化物が下記(i)~(iii)を満たすビニルエステル樹脂を含んでなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物であって、サイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸とポリイソシアネート化合物を前駆体とする不飽和ポリウレタン化合物からなり、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10-6g2/min以上であり、前記ビニルエステル樹脂がウレタン変性ビニルエステル樹脂であり、前記不飽和ポリウレタン化合物が炭素繊維束表面上で高分子量化している炭素繊維束である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
(i)引張強度≧78MPa
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%) - X線光電子分光法により測定される炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cが0.21以上0.25以下である請求項1記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
- サイジング剤付着炭素繊維束に対するサイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.3~0.7質量%である請求項1または2記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
- X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束に、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸とポリイソシアネート化合物を前駆体とする不飽和ポリウレタン化合物を用いるサイジング剤を塗布し、熱処理してサイジング剤付着炭素繊維束を得た後、硬化物が下記(i)~(iii)を満たすビニルエステル樹脂と混合する炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法であって、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10-6g2/min以上であり、前記ビニルエステル樹脂がウレタン変性ビニルエステル樹脂である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
(i)引張強度≧78MPa
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%) - X線光電子分光法により測定される炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cが0.21以上0.25以下である請求項4記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
- サイジング剤付着炭素繊維束に対するサイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.3~0.7質量%である請求項4または5記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
- 炭素繊維束にサイジング剤を塗布した後に、180℃以上240℃以下で30~180秒で熱処理する請求項4から6のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
- 電解質にアルカリを用いて40C/g以上150C/g以下の電解処理量で電解処理して得られた炭素繊維束を用いる請求項4から7のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
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