JP2020143226A - 炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビニルエステル樹脂をマトリクス樹脂とした炭素繊維複合材料においてマトリクス樹脂の特性に合わせた炭素繊維束の表面処理を施し、サイジング剤を塗布することで高い接着強度を発現する炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物を得る。【解決手段】X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束にサイジング剤を塗布し熱処理されてなるサイジング剤付着炭素繊維束、および、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂を含んでなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物であって、サイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6g2/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。(i)引張強度≧78MPa(ii)引張伸度≧3.2%(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)【選択図】なし

Description

本発明は、ビニルエステル樹脂と炭素繊維束を用いてなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物において、良好な接着強度を発現する炭素繊維強化ビニルエステル組成物とその製造方法に関するものである。
炭素繊維は軽量でありながら強度および弾性率に優れていることから、マトリクス樹脂と組み合わせた炭素繊維複合材料として、航空・宇宙機材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。
炭素繊維複合材料のマトリクス樹脂として用いられるビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と同等の強度をもち、耐薬品性、耐水性、靭性などに優れている。また、多くの場合エポキシ樹脂に比べて低粘度で速硬化、低温硬化が可能なため、作業時の取り扱い性も優れ加工コストが低い特徴を持つ。近年では、重量軽減を目的とした船舶用途にも使用されており、特に強度特性を活かした高速船やクルーザーやヨットなどの高級船に用いられている。
炭素繊維複合材料において炭素繊維の優れた特性を活かすためには、炭素繊維束とマトリクス樹脂との接着性を高めることが重要である。炭素繊維束は表面処理を行わない場合、マトリクス樹脂との相互作用が十分とならず、複合材料にした際に接着強度が低下する。そのため、炭素繊維束とマトリクス樹脂との界面接着強度を向上させる方法として、通常は炭素繊維束に気相酸化や液相酸化などの酸化処理を行い、炭素繊維束表面に酸素含有官能基の導入が行われている。
例えば、特許文献1では炭素繊維束に電解処理とサイジング剤を施すことにより、界面接着強度の指標である層間剪断強度を向上させる方法が提案されている。特に、マトリクス樹脂がビニルエステル樹脂の場合、エポキシ樹脂サイジング剤を用いた炭素繊維束とのなじみが、マトリクス樹脂をエポキシ樹脂とした場合と比較して悪く、接着強度が低いことから実用化できない場合があった。そこで、炭素繊維束とビニルエステル樹脂のなじみを良くして接着性を高める技術が開示されている。
特許文献2にはサイジング剤にウレタン構造と末端不飽和基を含んだものを使用することでウレタン構造と炭素繊維束表面の親和性を高め、かつ末端不飽基が不飽和マトリクス樹脂と反応して強固な結合を形成することで炭素繊維束とマトリクス樹脂との接着強度を向上させる方法が開示されている。特許文献3には脂肪族エポキシ化合物および一分子内に末端不飽和基と極性基を有する化合物を含むサイジング剤に炭素繊維束と不飽和マトリクス樹脂の両方とカップリングする役割を持たせることで炭素繊維束とマトリクス樹脂との接着強度を向上させる方法が開示されている。また、特許文献4では炭素繊維束に施す表面処理量を増加させ炭素繊維の表面官能基量を増やし、その上でマトリクス樹脂と反応する官能基を含む化合物をサイジング剤として塗布することで曲げ特性、圧縮特性に優れた炭素繊維複合材料を得る方法が開示されている。また、特許文献5では、炭素繊維束とマトリクス樹脂の濡れ性に着目し、炭素繊維表層のグラファイト結晶を微細化することで樹脂との接着に優れた炭素繊維束を得る方法が開示されている。
特開平4−361619号公報 特開2015−7300号公報 特開平11−200252号公報 特開2001−164471号公報 特開2003−247128号公報
前述の特許文献1から4に記載の方法では、いずれも炭素繊維束の表面処理と炭素繊維とマトリクス樹脂双方と接着力のあるサイジング剤の設計により接着強度は改善させているものの、マトリクス樹脂の機械物性に合わせた炭素繊維束の表面処理、およびサイジング剤を設計する思想が無かった。また、特許文献5記載の方法では、炭素繊維表層のグラファイト結晶微細化により炭素繊維の濡れ性を向上させることで、接着性を改善させているものの、サイジング剤が塗布されている炭素繊維束とマトリクス樹脂の濡れ性に着目して接着性を向上させる思想が無かった。このように、従来技術ではマトリクス樹脂の機械物性に合わせてコンポジットの機械物性を最大まで引き出すことは困難であった。
本発明の目的は、高強度かつ高伸度のビニルエステル樹脂と、表面官能基量が多くサイジング剤との相互作用が高く、かつ、濡れ性が優れるサイジング剤塗布炭素繊維束を組み合わせることにより、ビニルエステル樹脂と炭素繊維束間で高い接着強度を発現できる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記の課題を解決する本発明の構成は以下の通りである。
本発明の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束にサイジング剤を塗布し熱処理されてなるサイジング剤付着炭素繊維束、および、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂を含んでなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物であって、サイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物、である。
(i)引張強度≧78MPa
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)。
また、本発明の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束に、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有するサイジング剤を塗布し、熱処理してサイジング剤付着炭素繊維束を得た後、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂と混合する炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法であって、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法、である。
(i)引張強度≧78MPa
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)
本発明によれば、ビニルエステル樹脂をマトリクス樹脂とした炭素繊維強化複合材料において、マトリクス樹脂の特性に合わせて炭素繊維束に表面処理を施しサイジング剤を塗布することで高い接着強度を発現する炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物を得ることが出来る。
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束にサイジング剤を塗布し熱処理されてなるサイジング剤付着炭素繊維束、および、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂を含んでなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物であって、サイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物、である。
(i)引張強度≧78MPa
(ii)引張伸度≧3.2%
(iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)。
本発明者らの検討により、高強度かつ高伸度特性を持つビニルエステル樹脂と、一定以上の表面酸素濃度O/Cでサイジング剤付着後に優れた濡れ性を持つ炭素繊維束を組み合わせることにより、ビニルエステル樹脂と炭素繊維間で高い接着強度を発現可能であることを見出した。
本発明を構成するビニルエステル樹脂は、硬化後の引張強度が78MPa以上かつ、樹脂伸度が3.2%以上で、樹脂引張強度×樹脂伸度が275MPa・%を超える必要がある。
炭素繊維束とマトリクス樹脂からなる複合材料の破壊は、主に応力集中箇所に生じるクラックから開始する。複合材料に応力をかけた際、応力集中箇所にかかるエネルギーは樹脂に分配され、その際に樹脂によってなされる仕事量は樹脂強度と樹脂伸度の積(MPa・%)に比例する。本発明者らは、このパラメータの積が所定値以上であれば、複合材料が層間剪断破壊を生じにくいことを見いだした。樹脂の力学物性のうち樹脂強度のみが高い場合は一旦応力集中箇所に破壊の起点となるクラックが入ると、樹脂弾性率が高いことによりひずみが小さい領域で脆性的に樹脂破壊する。樹脂強度78MPa未満では、炭素繊維束とサイジング剤間の接着強度よりも低いことから、サイジング剤と樹脂間の接着を十分に発現できず樹脂破壊が先行する。特に、樹脂強度が大きいほど、クラック周囲の樹脂が降伏に至るまでの許容応力の範囲が広く、樹脂強度が78MPa以上であると本発明の効果が発現し、85MPa以上が好ましい。樹脂伸度のみが高い場合は、応力をかけると応力集中部の樹脂弾性率が低いことにより、ひずみが大きい領域まで樹脂が伸長するが伸長後に樹脂が破壊する。樹脂伸度3.2%未満では、樹脂がエネルギーを十分に吸収できないため、サイジング剤と樹脂間の接着を十分に発現できず樹脂破壊が先行する。樹脂伸度が大きいほどクラック周囲の樹脂が破壊に至るまでの許容範囲が広く、樹脂伸度が3.2%以上であると本発明の効果が発現し、4.0%以上が好ましい。
本発明の効果が発現する高強度・高伸度樹脂を用いた場合において、より高伸度な樹脂を用いるよりも、より高強度な樹脂を用いた方が、樹脂破壊が先行しにくくサイジング剤と樹脂の接着を活かした複合材料の作製が可能となることから、本発明の効果が発現する伸度を持つ樹脂のなかで、より樹脂強度に優れた樹脂を用いることが好ましい。
本発明における炭素繊維束は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である必要がある。
炭素繊維表面に官能基を有することにより、サイジング剤およびビニルエステル樹脂の官能基との間で親和性が生じ、高い接着力を発現することが出来る。O/Cが0.15未満の場合には、サイジング剤およびビニルエステル樹脂との親和性が低くなり接着強度が低くなる。さらに、O/Cが0.21以上0.25以下であるとより好ましい。O/Cが0.25を超えるとサイジング剤及びビニルエステルと反応できる官能基は増えるものの表層が剥がれやすくなるため、接着強度が低下する。
本発明を構成する炭素繊維束に塗布するサイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基から選ばれた末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合から選ばれた極性基を共に有する必要がある。
本発明における極性基、末端不飽和基を有するサイジング剤としては、不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸とイソシアネート化合物を前駆体とする不飽和ポリウレタン化合物からなり、その末端不飽和基のアクリレート基およびメタクリレート基の重合により炭素繊維束表面上で高分子量化していることが好ましい。
不飽和アルコールとしては、例えばアリルアルコール、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸等、イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジシソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の公知の不飽和ポリウレタン化合物が挙げられる。
特に、不飽和ポリウレタン化合物の末端不飽和基がアクリレート基およびメタクリレート基である化合物が好ましく、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネート化合物、フェニルグリシジルエーテルトリアクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネート化合物、グリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールトリトリレンジイソシアネート化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネート化合物、トリアリルイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
アミド結合と末端不飽和基を有する化合物としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。スルホ基と末端不飽和基を有する化合物としてはビスフェノールS型ジグリシジルジアクリレート、ビスフェノールS型ジグリシジルジメタクリレート等が挙げられる。
本発明を構成する炭素繊維束に塗布されるサイジング剤は、ウレタン構造が高い極性を持つことから炭素繊維表面に存在するカルボキシル基や水酸基等の官能基との親和性が高く、炭素繊維束とサイジング剤間の接着を高められる。また、サイジング剤中の不飽和結合はマトリクス樹脂と反応してサイジング剤とビニルエステル樹脂間に強固な結合を形成することが出来る。従って、炭素繊維束とビニルエステル樹脂の双方に相互作用を有することから、炭素繊維束とビニルエステル樹脂との接着を高く発現することができる。また、不飽和ポリウレタン化合物が炭素繊維束表面上で高分子量化することで、ビニルエステル樹脂と組み合わせた際に、サイジング剤成分がビニルエステル樹脂中へ拡散するのを抑制でき炭素繊維束とビニルエステル樹脂との接着を十分に発現することが出来る。
本発明を構成するサイジング剤付着炭素繊維束には、サイジング剤成分からなる重合体が、サイジング剤付着炭素繊維束に対して0.3〜0.7質量%付着していることが好ましい。サイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.3質量%以上である場合は、炭素繊維束表面全体を覆っていると考えられることから、炭素繊維束とビニルエステル樹脂との強固な接着を保つことができると考えられる。炭素繊維束への付着量が0.3質量%未満であると、サイジング剤成分からなる重合体が炭素繊維束全体を覆い切れておらずビニルエステル樹脂との接着が十分に得られず、接着強度の低下につながる。サイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.7質量%を超えると、糸束が拡がりにくくなることによりビニルエステル樹脂が含浸しにくくなる。
本発明を構成するサイジング剤が付着した炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である必要がある。初期含浸速度が7.0×10−6/min以上の場合、濡れ性が優れマトリクス樹脂がサイジング剤塗布炭素繊維束上でムラなく含浸でき、成形体内部にボイドが生じにくくボイドによる物性の低下を抑制することが出来る。8.0×10−6/min以上が好ましく、8.5×10−6/min以上がさらに好ましい。
次に、本発明の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物を得るための方法について説明する。炭素繊維束の表面処理およびサイジング剤塗布処理については次に記載する通りであるが、炭素繊維束の重合、製糸、焼成条件については限定されるものではない。
本発明の方法に記載の炭素繊維束としては、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の公知の炭素繊維束を適用できる。高強度の炭素長繊維が得られやすいアクリル系炭素繊維束が特に好ましい。アクリル系炭素繊維束を例にとって以下に詳細を記載する。紡糸方法としては、湿式、乾式、湿乾式等を採用することが出来るが、高強度の炭素長繊維束が得られやすい湿式、あるいは乾湿式が好ましい。紡糸原液にはポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合成分の溶液あるいは懸濁液等を用いることが出来る。凝固、水洗、延伸、油剤付与して前駆体原糸とし、さらに耐炎化、炭化、さらに必要に応じて黒鉛化処理を行う。炭化あるいは黒鉛化の条件として、本発明に用いる炭素繊維束を得るためには不活性雰囲気中最高温度は1100℃以上が好ましく、1300℃以上が好ましく、1400℃以上がさらに好ましい。得られた炭素繊維束はさらに表面処理および、サイジング剤の塗布がなされて炭素繊維束となる。
本発明における炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物は、炭素繊維束とビニルエステル樹脂から構成され、炭素繊維束間にビニルエステル樹脂が均一に含浸している状態であることが好ましい。
炭素繊維束は塗布するサイジング剤との接着性、マトリクス樹脂との接着性を向上させるため、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化、および液相電解酸化が用いられるが、生産性と均一処理に優れるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられるが、電解処理時に電圧低電圧で処理可能であることから安全性の観点より、アルカリ性電解液中で液相電解酸化した後サイジング剤を塗布することがより好ましい。
酸性電解液としては、水溶液中で酸性を示すものであればよく、具体的には硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。中でも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解処理液としては水溶液中でアルカリ性を示すものであればよく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよび、ヒドラジン水溶液が挙げられる。なかでも、マトリクス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウム等の無機アルカリが好ましく、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましい。
本発明における電解液の濃度としては、0.01〜5mol/lが好ましく、0.1〜1mol/lがより好ましい。電解液の濃度が0.01mol/l以上であると電解処理電圧を下げることができ、運転コスト的に有利になる。また、電解液の濃度が5mol/l以下であると安全性の観点から有利になる。
本発明における電解液の温度としては、0℃以上100℃以下が好ましい。特に10℃以上であると電解処理の効率が向上し、運転コストの点からも良いことから、有利になる。一方、電解液の温度が100℃以下であると、安全性の観点から有利になる。
電解処理は表層の結晶性を低下させて、生産性を向上させる一方で、炭素繊維基質の強度低下を防ぐ観点から、低い電気処理を、繰り返し行うことが好ましい。繰り返し電解処理を行う場合は、電解槽を複数槽並べて1度通糸しても、1槽の電解槽に必要回数通糸してもよい。具体的には電解槽1槽あたり通電処理の総電気量は、炭素繊維束1g当たり5C/g・槽以上、100C/g・槽以下が好ましい。5C/g・槽未満の場合、サイジング剤成分と反応する炭素繊維表面の官能基量が少なく、接着強度が十分に得られない。100C/g・槽を超える場合、炭素繊維基質の強度低下により、剥離しやすく接着強度が低下する。
また、炭素繊維表層の結晶性低下を適度な範囲とする観点からは通電処理の総電気量は、40C/g以上150C/g以下の範囲が好ましい。
本発明では電解酸化処理量を増加させて多くの官能基を導入するが、導入の際に炭素繊維の表面のグラファイト結晶層が粗くなる。そして、その粗さは表面酸素濃度O/Cに比例する。サイジング剤は粗くなった結晶層に入り込み、サイジング剤塗布炭素繊維束の表面粗さは一部追従して増大する。詳しい原理は分かっていないが、粗さが増えることで樹脂との濡れ性が向上し、マトリクス樹脂が炭素繊維束に均一に含浸されて接着力の発現が炭素繊維束上でムラなく可能となる。
本発明において、電解処理後に炭素繊維の水洗及び乾燥工程を有することが好ましい。
乾燥工程における乾燥温度は250℃以下が好ましい。250℃を超えると炭素繊維束最表面に存在する官能基が熱分解により消失しやすいことから250℃以下の低い温度で乾燥することが好ましく、さらに210℃以下、180℃以下で乾燥することがより好ましい。
本発明は、炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物を製造するために炭素繊維束にサイジング剤を塗布する工程と、サイジング剤が付着した炭素繊維束をビニルエステル樹脂に配合する工程を必要とする。本発明において、炭素繊維束へ塗布するサイジング剤は、溶媒に溶解、または、分散させたサイジング剤を用いる。
本発明にかかるサイジング剤は、化合物成分を溶媒に希釈して用いることが出来る。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアルデヒド、およびジメチルアセトアミドが挙げられるが、中でも取り扱いが容易であり、安全性の観点においても有利であることから、水が好ましく用いられる。
サイジング剤の炭素繊維束への塗布手段としては、例えばローラーを介してサイジング剤に炭素繊維束を浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに炭素繊維束を接する方法、サイジング液を霧状にして炭素繊維束に吹き付ける方法などがある。サイジング剤の塗布手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性が良くばらつきが小さくできる連続式が好ましく用いられる。この際、炭素繊維束に塗布される化合物を一定の範囲内において均一に付着させるためにサイジング剤含有液の濃度、製造工程における張力などをコントロールすることが好ましい。
熱処理工程は180℃以上240℃以下の温度範囲において、30秒以上180秒以下で熱処理し、サイジング剤の成分を高分子量化させることが好ましい。
熱処理温度が180℃未満であると、化合物が炭素繊維束表面上で高分子量化せずビニルエステル樹脂と組み合わせた場合、ビニルエステル樹脂中に拡散してしまい接着強度を十分に発現できないことから、サイジング剤の重合開始温度以上にすることが好ましい。また、240℃を超えると化合物成分の高分子量化がより進むことで、ビニルエステル樹脂と反応する官能基が減少してしまうため、240℃以下であることが好ましい。
熱処理時間は、熱処理温度にもよるが30秒未満である場合、炭素繊維束表面上で十分に高分子量化せず、マトリクスビニルエステル樹脂と組み合わせた際に、マトリクスビニルエステル樹脂中に拡散してしまい接着を十分に発現できないことから、30秒以上が好ましい。180秒を超えると、炭素繊維束上での化合物の高分子量化が進みすぎることにより、炭素繊維束が固くなり、拡がりにくいことからビニルエステル樹脂が含浸しにくくなる。
水系でサイジング剤が塗布された工程後に、炭素繊維束内へサイジング剤を均一に付着させるため熱処理前に、加熱ローラーを用いることで炭素繊維束を開繊しながら予備乾燥し、熱固定することが好ましい。この場合、加熱ローラーの温度は炭素繊維束開繊により生じる毛羽発生や糸切れを防止するために、熱処理工程の乾燥温度より低い100℃以上200℃以下であることが好ましい。乾燥温度が100℃未満の場合、サイジング剤中の水が蒸発せず炭素繊維束中に含まれたままとなり、熱処理工程で急激に水が蒸発する際に炭素繊維束が収縮し、巻き上げ時の炭素繊維束形状が安定しない。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<炭素繊維束表面の官能基量測定方法>
本実施例において、炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cは次の手順に従って、X線光電子分光法によって測定したされる。まず、溶剤で炭素繊維束表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrに保ち、光電子脱出角度を45°としてX線光電子分光測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値として、C1Sの主ピークの結合エネルギー値を、285eVに合わせた。C1Sピーク面積を、結合エネルギー値として275から290eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積を、結合エネルギーとして525から540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用いた。
<サイジング剤付着量の測定方法>
2.0±0.5gのサイジング塗布炭素繊維束を秤量W(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させた。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W)(少数第4位まで読み取り)して、W−Wによりサイジング剤付着量を求めた。このサイジング剤付着量を炭素繊維束100質量部に対する質量部に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の付着量(質量部)とした。測定を行い、その平均値をサイジング剤の付着量とした。
<動的測定による水の初期含浸速度>
スミチューブ(住友電工社製熱収縮チューブ)15cmに炭素繊維束を15cm挿入し、炭素繊維束を張った状態で固定して125℃で5分間加熱した。加熱後の収縮したチューブの内径は0.8mmであった。炭素繊維束が挿入されたスミチューブを5cmにカットし自動表面張力計に装着した。その後、測定荷重感度0.0005gとしてスミチューブを水(精製水)に対して移動速度6mm/秒で前進させ荷重m[g]を測定した。まず、測定値を横軸を時間t[min]、縦軸を荷重にして曲線を表示した。測定時間あたりの荷重を2乗した値の変化が大きい吸収領域と変化が小さい飽和領域の2つに分け、このうち吸収領域で測定値が直線となっている箇所から2点を選び、その直線の傾きを初期含浸速度(m−t)[g/min]として算出した。測定にはKruss社製自動表面張力計K100SFを用いた。
<層間剪断強度(ILSS)測定サンプル作製方法>
ILSSサンプルはビニルエステル樹脂、硬化促進剤、硬化剤から構成されるものを使用した。炭素繊維束を一方向に樹脂を含浸させながら金枠に巻き付け金枠を金型にセットし、ビニルエステル樹脂100部、ナフテン酸コバルト0.5部、t−ブチルペルオキシベンゾエート1.0部を金型に注入し真空脱泡後、プレス成形(室温×18時間)した。引き続き120℃、2時間で後硬化して、繊維含有率55〜65体積%のビニルエステル樹脂と炭素繊維束の複合材料を得た。
<層間剪断強度(ILSS)>
金型により作製した長サンプルを、厚さ2.5mm×幅6mm×長さ19mmとなるようにカットし試験片を得た。通常の3点曲げ試験治具(圧子10mmφ、支点4mmφ)を用いて支持スパンを14mmに設定し、歪速度2.0mm/分として試験することにより求めた。ILSS(τ)を破壊の力Pi(N)、試験片の幅b(mm)、試験片の厚さ(mm)を用いた次式で算出した。
ILSS(MPa)=3×Pi/(4×b×h)
本発明において、下記の樹脂、炭素繊維束上の表面酸素濃度O/Cが異なる条件においてILSS値の好ましい範囲を3段階で評価し、80.0MPa以上を合格とした。
・判定
◎:ILSS値が84.0MPa以上
○:ILSS値が80.0MPa以上84.0MPa未満
△:ILSS値が76.0MPa以上80.0MPa未満
×:ILSS値が76.0MPa未満
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は下記の通りである。
A ビニルエステル樹脂
<樹脂引張強度(MPa)、樹脂引張伸度(%)試験方法>
引張強度(MPa)及び引張伸度(%)はASTM D−638に準拠して測定された。
A−1:Dion9800
(Reichhold社製、ウレタン変性ビニルエステル樹脂
引張強度:90MPa、引張伸度;3.2%、引張強度×引張伸度:288MPa・%)
A−2:Dion9102
(Reichhold社製、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂
引張強度:79MPa、引張伸度;4.5%、引張強度×引張伸度:356MPa・%)
A−3:Dion9500
(Reichhold社製、ウレタン変性ビニルエステル樹脂
引張強度:70MPa、引張伸度;9.0%、引張強度×引張伸度:630MPa・%)
A−4:R−806
(昭和電工社製、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂
引張強度:80MPa、引張伸度;3.2%、引張強度×引張伸度:256MPa・%)
B 硬化促進剤
コバルトN (昭和電工社製)
C 硬化剤
パーキュアVS (日油社製)。
(実施例1)
本実施例は、次の第1〜3の工程からなる。
・第1の工程:原料となる炭素繊維束を製造する工程
アクリロニトリル共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、ストランド引張強度5.1GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維束を得た。次いで、その炭素繊維束を、炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維束1g当たり80クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維束を続いて水洗し、加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維束を得た。
・第2の工程:サイジング剤を炭素繊維束に付着させる工程
グリセリンジメタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート化合物(共栄化学社製UA101H)90質量部に、乳化剤10質量部を混合した水分散エマルジョンに水を加えて均一に溶解し約1.7質量%の水溶液を調製した。なお、乳化剤としてポリオキシエチレン(70mol)スチレン化(5mol)クミフェノールを用いた。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維束に塗布した後、予備乾燥工程としてホットローラーで120℃の温度で15秒熱処理をし、続いて、第2乾燥工程として210℃の温度の加熱空気中で90秒間熱処理をして、炭素繊維束上でサイジング剤成分を高分子量化させサイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤成分からなる重合体の付着量は、表面処理されたサイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.6質量部となるように調整した。
第1工程で得られた炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cと、第2工程で得られたサイジング剤が付着した炭素繊維束の動的測定における水の初期含浸速度を測定した。
水の初期含浸速度が8.6×10−6/minであり、濡れ性が良いことが分かった。
・第3の工程:ILSS用試験片の作製および評価
前工程で得られたサイジング剤付着炭素繊維束と、ビニルエステル樹脂A−1と硬化促進剤、硬化剤を用いて、層間剪断強度測定法に基づいたサンプル作製方法で、層間剪断強度測定用試験片を作製した。
続いて、得られた試験片を用いて、層間剪断強度を測定した。層間剪断強度が89MPaであり、接着強度が高いことが分かった。
以上の結果を表1にまとめた。
Figure 2020143226
(実施例2)
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−2に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
(実施例3)
第1の工程における表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
(実施例4)
第1の工程における表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
(実施例5)
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
(実施例6)
第2工程におけるサイジング剤付着量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が良く、接着強度も十分に高かった。
第2の工程における熱処理温度を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、炭素繊維束の表面上で付着化合物が高分子量化していなかったが、濡れ性が良く、接着性も十分に高かった。
(比較例1)
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−3に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性は良いが、接着強度が低かった。
Figure 2020143226
(比較例2)
第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−4に変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性は良いが、接着強度が低かった。
(比較例3)
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
(比較例4)
第1の工程における電解表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて、試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
(比較例5)
第1の工程における電解液と表面処理量を変更した以外は、実施例1と同様にして、サイジング剤塗布炭素繊維束とビニルエステル樹脂を用いて、試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
(比較例6)
第1の工程における電解液と表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−2に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
(比較例7)
第1の工程における表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−3に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。
(比較例8)
第1の工程における表面処理量、第3の工程における試験片作製に使用した樹脂をA−4に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製と評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、炭素繊維束の濡れ性が悪く、接着強度も低かった。

Claims (12)

  1. X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束にサイジング剤を塗布し熱処理されてなるサイジング剤付着炭素繊維束、および、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂を含んでなる炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物であって、サイジング剤は、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有し、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
    (i)引張強度≧78MPa
    (ii)引張伸度≧3.2%
    (iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)
  2. ビニルエステル樹脂がウレタン変性ビニルエステル樹脂である請求項1記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
  3. 炭素繊維束に塗布するサイジング剤は、不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸とポリイソシアネート化合物を前駆体とする不飽和ポリウレタン化合物からなり、不飽和ポリウレタン化合物が炭素繊維束表面上で高分子量化している炭素繊維束を用いた請求項1または2記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
  4. X線光電子分光法により測定される炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cが0.21以上0.25以下である請求項1から3のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
  5. サイジング剤付着炭素繊維束に対するサイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.3〜0.7質量%である請求項1から4のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物。
  6. X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度O/Cが0.15以上0.25以下である炭素繊維束に、ビニル基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの末端不飽和基とアミド結合、イミド結合、ウレタン結合、およびウレア結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を共に有するサイジング剤を塗布し、熱処理してサイジング剤付着炭素繊維束を得た後、硬化物が下記(i)〜(iii)を満たすビニルエステル樹脂と混合する炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法であって、サイジング剤付着炭素繊維束は、動的測定における水の初期含浸速度が7.0×10−6/min以上である炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
    (i)引張強度≧78MPa
    (ii)引張伸度≧3.2%
    (iii)引張強度×引張伸度>275(MPa・%)
  7. ビニルエステル樹脂として、ウレタン変性ビニルエステル樹脂を用いる請求項6記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
  8. サイジング剤として、不飽和アルコールまたは不飽和カルボン酸とポリイソシアネート化合物を前駆体とする不飽和ポリウレタン化合物を用いる請求項6または7記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
  9. X線光電子分光法により測定される炭素繊維束の表面酸素濃度O/Cが0.21以上0.25以下である請求項6から8のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
  10. サイジング剤付着炭素繊維束に対するサイジング剤成分からなる重合体の付着量が0.3〜0.7質量%である請求項6から9のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
  11. 炭素繊維束にサイジング剤を塗布した後に、180℃以上240℃以下で30〜180秒で熱処理する請求項6から10のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
  12. 電解質にアルカリを用いて40C/g以上150C/g以下の電解処理量で電解処理して得られた炭素繊維束を用いる請求項6から11のいずれか記載の炭素繊維強化ビニルエステル樹脂組成物の製造方法。
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