JP2009242971A - 圧縮強度に優れる炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents

圧縮強度に優れる炭素繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い圧縮強度を示す炭素繊維及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素化処理温度1300℃以上で焼成した炭素繊維を、ガス吸着測定装置により測定される比表面積が0.6〜1.2m/g、AFM装置により測定される表面粗さが20nm以下、サイクリックボルタンメトリー法により測定されるIpaが0.05〜0.15、Ipaのバラツキが8%以下となるまで電解酸化表面処理することにより得られる炭素繊維、及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素化処理を高温で行った後、比表面積、表面粗さ等の値が所定範囲になるまで電解処理することにより得られる炭素繊維であって、圧縮強度に優れる炭素繊維、及びその製造方法に関する。
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を炭素繊維で補強した炭素繊維複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、耐熱性、疲労特性に優れるなどの特長を有しており、スポーツ・レジャー、航空・宇宙等の分野で幅広く用いられている。
炭素繊維は、アクリル繊維等の原料繊維を空気中で200〜300℃に加熱することにより耐炎繊維とした後、不活性ガス雰囲気中1000℃以上で焼成することにより製造される。
炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性により大きな影響を受ける。そのため、耐炎化工程、炭素化工程を経た後、マトリックス樹脂との親和性を高めることを目的として炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入する酸化処理が一般に行われる。
炭素繊維表面の酸化処理としては、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法が知られている。これら表面処理のうち、生産性が高く、処理が均一に行える等の理由により、液相における電解酸化処理が広く採用されている。液相電解酸化処理は、電解質水溶液中で炭素繊維と、電極との間に電圧を印加することにより、炭素繊維を電解酸化する処理方法である。
表面の酸化処理状態は、炭素繊維のコンポジット物性に影響することが知られている。表面の酸化処理が均一でない炭素繊維をマトリックス樹脂に配合した場合には、炭素繊維の表面の官能基が少ない部分とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、高いコンポジット物性を示す複合材料が得られない。樹脂との接着性向上のため、様々な電解処理方法が従来試みられている(特許文献1〜5)。
特開2004−244258号公報 特開2004−217485号公報 特開2004−277192号公報 特開2002−38368号公報 特開2006−183173号公報
本発明の目的は、マトリックス樹脂に配合して複合材料としたときに、高いコンポジット物性を示す炭素繊維及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、炭素化工程において所定温度以上の高温で炭素化処理を行った炭素繊維を電解酸化処理して、繊維表面の物性が所定範囲内となるまで行うことにより、高いコンポジット物性を発現することを見出した。その理由は定かではないが、炭素化後の繊維表層にはグラファイト化度合いの高い部分が存在し、引張または圧縮の荷重が繊維に加わった際に、その部分が破断の起点になりうる可能性が考えられる。このような脆い表層を脆弱層と表記するが、この脆弱層が存在する炭素繊維の表面処理を比表面積等の所定のパラメータの値が所定範囲内になるまで電解酸化処理を行うことにより、炭素繊維表面の脆弱層が適度に除去され、炭素繊維の複合材料は高い圧縮強度を発現するようになると考えられる。
なお、上述した特許文献1〜5においては、電解酸化処理は、マトリックス樹脂との接着性を改善することを目的として行われているのに対し、本発明は、繊維表面の脆弱層を除去することを目的としている。そのため、本発明においては、従来行われている電解酸化処理より炭素繊維の電解酸化処理の度合いが高くなっている。
上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 ガス吸着測定装置により測定される比表面積が0.6〜1.2m/g、AFM(原子間力顕微鏡)装置により測定される表面粗さRaが20nm以下、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)法により測定されるIpaが0.05〜0.15、Ipaのバラツキが8%以下であることを特徴とする炭素繊維。
〔2〕 JIS R 7608に規定の方法により測定したストランド引張弾性率が200〜400GPaである〔1〕に記載の炭素繊維。
〔3〕 炭素化処理温度1300℃以上で焼成した炭素繊維を電解酸化表面処理することにより、ガス吸着測定装置により測定される比表面積を0.6〜1.2m/g、AFM装置により測定される表面粗さRaを20nm以下、サイクリックボルタンメトリー法により測定されるIpaを0.05〜0.15、Ipaのバラツキを8%以下とする炭素繊維の製造方法。
〔4〕 電解酸化表面処理が、上端から電解液をオーバーフローさせる内槽と、所定間隔離間して一列に並べられた6以上の前記内槽を内部に備えるとともに、各内槽からオーバーフローされた電解液を受け入れる外槽とからなる電解槽と;前記内槽内にそれぞれ挿入された電極であって、内槽の配列に従って電極が交互に陽極又は陰極として作用する電圧が印加される電極と;一列に並べられた各内槽から外槽へオーバーフローする電解液に、一方の内槽から他方の内槽に向けて走行する炭素繊維を浸漬させるガイドローラーと;を有する表面処理装置を用いて連続的に行われる〔3〕に記載の炭素繊維の製造方法。
本発明の炭素繊維は、耐炎化繊維を1300℃以上の高温で炭素化処理した後、所定のパラメータの値が所定範囲内になるまで電解酸化処理を行う。これにより、炭素繊維の表面の欠陥が改善され、炭素繊維表面は高いコンポジット物性を示す状態に電解酸化処理される。本発明の炭素繊維は高い圧縮強度を有しており、マトリックス樹脂に配合して複合材料としたときに高い機械的特性を示す。
本発明の炭素繊維は、以下の製造方法により製造する。
〔前駆体繊維製造工程〕
本発明の炭素繊維の原料には、ポリアクリロニトリルを使用する。ポリアクリロニトリルには、10%質量以下の共重合体が含まれていてもよい。共重合単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エステル類、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、イタコン酸、塩化ビニル、塩化ビニデン、酢酸ビニル、2−ビニルピリジン、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、パラスチレンスルホン酸等を挙げることができる。
ポリアクリロニトリルを紡糸する方法としては、公知の方法を用いることができるが、湿式法又は乾湿式法が好ましく、特に湿式法が好ましい。
ポリアクリロニトリルを溶解させる溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒や、硝酸、塩化亜鉛水溶液、ロダン塩水溶液等の無機溶媒を挙げることができる。ポリアクリロニトリルをこれらの溶媒に溶解させ、ポリマー溶液を調製する。
湿式紡糸は、上記ポリマー溶液を低温に冷却した凝固液(ポリアクリロニトリルを溶解させた溶媒又は前記溶媒と水の混合液)を入れた凝固浴中に直接紡出することにより行う。また、ポリマー溶液を空気中にまず吐出させた後、3〜5mm程度の空間を有して凝固浴に投入し凝固させる乾湿式紡糸法でもよい。
紡出糸は、濃度勾配をかけた凝固浴で徐々に凝固させ、同時に溶媒を除去しながら、水洗して直接浴中延伸する。浴中延伸では、数種の水洗〜熱水浴中で、延伸比2〜6倍に紡出糸を延伸していく。熱水浴中の温度は60〜100℃であることが好ましい。
乾燥は、温度勾配をかけた幾層にも連なる部屋を有する熱風乾燥機で空気乾燥することが好ましい。熱風乾燥機で空気乾燥を行うことにより糸は乾燥され、緻密化する。乾燥温度については、より緻密性が向上するように、70〜150℃の範囲内で適宜調節して行うことが好ましく、80〜140℃で行うことが更に好ましい。乾燥時間については、1〜10分間が好ましい。
乾燥に引き続き、高温での湿熱延伸を行うことにより、得られる炭素繊維用前駆体繊維の繊度や分子配向を整えることができる。特に加圧スチーム中での湿熱延伸は延伸性の観点から好ましい。
湿熱延伸を行う際の温度は100〜130℃とすることが好ましい。また、湿熱延伸の延伸比は、3.0〜6.0倍とすることが好ましい。
この熱延伸の条件は、炭素繊維用前駆体繊維の緻密性に大きな影響を与える。高強度の炭素繊維を得る為には、緻密性の高い炭素繊維用前駆体繊維を作製することが好ましい。
前駆体繊維の比重は1.12〜1.18であるが、より好ましい値は1.14〜1.17、更に好ましい値は1.15〜1.17である。
本発明においては、炭素繊維用前駆体繊維の単繊維繊度は0.62〜1.20dtexとすることが好ましく、0.62〜1.08dtexとすることがより好ましく、0.62〜0.73dtexとすることが更に好ましい。
得られた炭素繊維用前駆体繊維は、繊維内部の熱収縮応力が大きいため分子配向の緩和が生じやすい状態にある。そこで、分子配向の緩和が生じ難いように、前駆体繊維に水分を付与し、その水分率を、25〜50質量%、好ましくは35〜45質量%に保つ必要がある。炭素繊維用前駆体繊維の水分率が低くなりすぎると、分子配向性の低下に加えて、繊維の集束性が低下するため取扱性が悪くなる。水分率が高すぎると水の表面張力により、耐炎化工程中のローラーに巻き付きやすくなりトラブルの原因になる。
〔耐炎化工程〕
次いで、上記工程で製造した炭素繊維用前駆体繊維を、耐炎化工程で耐炎化処理する。この耐炎化処理は、加熱空気中2室以上に分かれた炉で、多段ローラー群を介して、1室目では温度250〜260℃、延伸比1.01〜1.10倍の条件で、2室目以降では1室目の温度以上280℃未満、延伸比0.95〜1.00倍の条件で、耐炎化工程でのトータル延伸比が1.01〜1.08倍となるように行う。
耐炎化工程で各ローラー間の糸把持(テンション)が高くなりすぎると工程糸をキズ付けてしまい、後の炭素繊維の強度低下や品位の低下を招く傾向がある。耐炎化工程でのテンションは、炭素繊維の単糸1本当たり0.290g以下とすることが好ましい。
耐炎化繊維の比重の好ましい値は1.30〜1.42、より好ましい値は1.34〜1.40、更に好ましい値は1.35〜1.39である。
〔炭素化工程〕
上記耐炎化繊維は、窒素等の不活性雰囲気下、3室以上に分けた焼成炉(第一炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけて300〜800℃まで昇温し、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の炭素化(予備炭素化)をする。
予備炭素化処理後の繊維の比重の好ましい値は1.50〜1.60、より好ましい値は1.52〜1.57である。
予備炭素化を行った後、より繊維の炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下で更に焼成を行う。焼成は、2室以上に分けた焼成炉(第二炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけて昇温し、糸(予備炭素化繊維)の張力を制御して弛緩条件で行う。弛緩条件は、好ましくは延伸比が0.9〜1.0倍の範囲である。
第二炭素化炉での焼成温度は、300℃から昇温させ、最高温度を1300℃以上とする。本発明においては、第二炭素化炉における最高温度を1300℃以上とすることを必須とするが、好ましい最高温度は、1300〜2000℃であり、より好ましくは1300〜1800℃である。
〔表面処理工程〕
得られた炭素繊維は、電解酸化処理装置の電解槽中で電解酸化処理して表面処理を行う。
本発明で使用する表面処理装置の一例の概略構成図を図1に示す。
図1中、100は表面処理装置で、1は電解槽である。電解槽1は複数(図1においては6つ)の内槽3と、外槽5とからなる。内槽3は、本図においては一方の内槽3aから他方の内槽3fにかけて一列に並べられている。各内槽3には、それぞれその内部の底壁近くに平板状に形成された電極7が水平に挿入されている。
図1に示すように、炭素繊維9は前記一列に並べられた一方の内槽3aから他方の内槽3fに向けて走行している。多数の内槽3内に備えられた電極7は、不図示の外部電源に接続され、隣り合う内槽3の間で交互に陽極と陰極として作用するように外部電源から電圧が印加されている。なお、図1においては、一方の内槽3aに陽極を設けているが、内槽3aに陰極を設け、以後順次他方の内槽3fに向かうに従って陰極と陽極とを交互に設けても良い。
図1中、11はガイドローラーである。連続的に走行する炭素繊維9は、ガイドローラーを通過することにより、多数の内槽3の上方近傍かつオーバーフローする電解液中を通過する。
内槽3内には不図示のポンプにより電解液13が常時供給されている。電解液13は、内槽の上端から外槽内に常にオーバーフローしている。
炭素繊維9は、内槽3上で内槽から外槽5へオーバーフローする電解液13中を通過することにより電解液に浸漬される。炭素繊維9は導電性が高いので、隣り合う内槽3の間で交互に陽極又は陰極として作用する電極7に電圧を印可することにより電解液13中で炭素繊維の表面が電解酸化される。電解酸化により、炭素繊維表面には、カルボキシル基、水酸基等の含酸素官能基が導入される。また電解酸化処理により繊維表面の一部がエッチングされるのが一般的である。炭素繊維9は、電解槽1上を通過することにより、内槽3から外槽5内にオーバーフローする電解液13に繰り返し浸漬され、表面が繰り返し電解酸化処理される。炭素繊維9は、電解槽通過終了とともに電解酸化処理が終了する。その後、必要により、水洗、サイズ剤付与、乾燥等の後工程に送られる。
なお、図1においては外槽5内に配設される内槽3の数が6つの場合を示したが、外槽内に配設する内槽の数は6以上であれば特に制限されない。好ましくは6〜18、より好ましくは6〜12である。
電解液13の電解質としては、硝酸、硫酸等の強酸が使用できる。
内槽3出側の電解液の平均流速は、4〜30mm/secとすることが好ましい。4mm/sec未満では、電解液のオーバーフロー高さが不十分となり、30mm/secを超えると流量均一化が難しく、オーバーフロー高さを均一に保つことが困難となる。内槽出側の平均流速は、内槽3に供給する電解液の流量を調整することにより前記範囲内とすることが可能である。
炭素繊維9の内槽1槽あたりの処理時間は、1.0〜5.0秒とすることが好ましく、1.5〜3.0秒とすることがより好ましい。なお、炭素繊維の走行速度は、通常50〜600m/h程度である。
炭素繊維9に通電する電気量は、電解液7に使用する電解質の種類等の条件に応じて後述する電解酸化処理の指標(a)〜(d)が所定の範囲内になるように適宜決定すればよい。
電解酸化する際の電気量は、炭素繊維外層部のグラファイト化の度合い等に応じて、後述する指標(a)〜(d)が全て所定範囲内になるように調整するが、炭素繊維1g当り10〜500Cとすることが好ましく、50〜300Cとすることがより好ましい。電気量が多すぎると炭素繊維表面の小規模欠陥を取り除く以上に表面が酸化され、欠陥を新たに生じさせる場合があるので、多くとも500C程度までとすることが好ましい。
炭素繊維9の電解酸化処理温度は10〜80℃の範囲とするが、20〜50℃とすることが好ましい。
炭素繊維9の表面処理を行う際の指標としては、下記(a)比表面積、(b)表面粗さRa、(c)Ipa、(d)Ipaのバラツキの4つを使用する。本発明においては、炭素繊維についてのこれらの4つの指標がそれぞれ以下の範囲内になるまで酸化電解処理を行う。
(a)ガス吸着測定装置によって測定される比表面積が0.6〜1.2m/g
本発明においては電解酸化処理により炭素繊維の比表面積を0.6〜1.2m/gとするが、0.6〜1.0m/gとすることが好ましく、0.6〜0.8m/gとすることがより好ましい。比表面積が0.6m/g未満では、複合材料における繊維表面のアンカー効果が小さくなり樹脂と炭素繊維の接着性が悪く、1.2m/gを超えると炭素繊維表面の欠陥が多くなり、炭素繊維自体の強度低下を生じる。
(b)AFM装置によって測定される表面粗さRaが20nm以下
酸化電解処理により、炭素繊維の表面粗さRaの値を20nm以下とするが、15nm以下とすることが好ましい。表面粗さRaの値が小さいほど得られる複合材料の圧縮強度が高くなるので、下限値は特に限定されないが、実際に製造可能な炭素繊維のRaの下限値は、1nm程度である。
(c)サイクリックボルタンメトリー法により測定されるIpaが0.05〜0.15
電解酸化処理により、炭素繊維のIpaの値を0.05〜0.15とするが、より好ましい値は、0.06〜0.12である。Ipaの値が0.05未満では、官能基量が少なく樹脂との良好な接着性が得られない、0.15を超えると官能器量が多くなりすぎて繊維の表層が弱くなるため好ましくない。
(d)サイクリックボルタンメトリー法により測定されるIpaのバラツキが8%以下
酸化電解処理により、Ipaのバラツキは8%以下とするが、6%以下とすることが好ましく、4%以下とすることがより好ましい。表面処理度合いのバラツキは小さいほど複合材料の物性が向上するので、好ましい範囲に下限値はないが、実際に製造できる炭素繊維のIpaのバラツキは、2%以上である。
上述した本発明の製造方法により得られる炭素繊維は、(a)比表面積、(b)表面粗さRa、(c)Ipa、(d)Ipaのバラツキが上述した範囲内のものである。これら(a)〜(d)の値は、電解液の電解質として硫酸又は硝酸を選択し、繰り返し炭素繊維に通電して適切な電気量で酸化電解処理することにより、上記範囲内にすることができる。
炭素繊維9は、通常、直径4〜12μmのフィラメントが1000〜80000本程度集合した束状(ストランド状)に製造される。
本発明の炭素繊維からなる炭素繊維ストランドは、後述する実施例記載の方法により測定されるストランド引張弾性率が200〜400GPaである。
電解酸化による表面処理を施した後は、電解液やその副生成物等が炭素繊維に付着しているので、よく水洗し、乾燥する必要がある。
さらに、炭素繊維の後加工をしやすくし、取扱性を向上させる目的で、炭素繊維のサイジング処理を行ってもよい。サイジング処理は、公知のサイジング剤を公知の方法により繊維に均一に付与後、乾燥することにより行う。サイジング剤の付着量は、サイジング剤付与後の炭素繊維全質量に対し、0.1〜3.0質量%とすることが好ましい。
炭素繊維ストランドを炭素繊維複合材料とする方法は、公知の方法を用いることができるが、例えばドラムワインド法、ホットメルト法で作られるプリプレグを積層する方法、FW成形する方法を挙げることができる。
複合材料に使用するマトリックス樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が例示される。
実施例1〜4及び比較例1〜4に記載の方法により、炭素繊維ストランドを製造した。得られた炭素繊維ストランドの比表面積、表面粗さ、Ipa値とそのばらつき、強度、引張弾性率、圧縮強度を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔比表面積〕
炭素繊維の比表面積は、BET法により次のようにして測定した。
試料として炭素繊維を長さ15cm程度(0.3g程度)に切り出したもの使用した。試料を秤量後、サンプル管に封入し、窒素ガスを吸着させた。窒素ガスの吸着量から比表面積を測定した。ガス吸着には、ユアサアイオニクス(株)社製全自動ガス吸着量装置「AUTOSORB-1」を使用し、下記条件により測定した。比表面積は、相対圧(P/Po)が1.0となる箇所で得た値である。
吸着ガス:窒素
死容積:He
吸着温度:293K
測定範囲:相対圧(P/Po) = 0〜1.0
P:測定圧
Po:吸着ガスの飽和蒸気圧
〔表面粗さ〕
表面粗さはAFM(原子間力顕微鏡)を用い次の手順に従って求めた。
測定に供する炭素繊維を試料台に固定し、原子間力顕微鏡としてDigitalInstruments社製NanoScopeIIIを用い、Tapping Modeにて測定を行った。プローブとして、NCH(Si製、カンチレバー長 125μm)を使用した。測定は炭素繊維の軸方向がスキャン方向となるように行い、0.5μm角の範囲について測定を実施した。
〔サイクリックボルタンメトリー法によるIpaの測定方法〕
燐酸を用いて電気伝導度90mS/cmの燐酸水溶液を作製した。参照電極としてAg/AgCl電極、対極として十分な表面積を有する白金電極、作動電極として炭素繊維束を使用した。
電位操作範囲は−0.2V〜0.8Vとし、電位操作速度は、5mV/secとした。3回以上掃引させ、電位―電流曲線を描いた。電位―電流曲線が安定した段階で、Ag/AgCl電極に対して、+0.4Vでの電位を標準にとって電流値を読み取った。
次式に従い、炭素繊維表面特性Ipaを算出した。
Ipa[μA/cm2]=電流値[μA]/試料長[cm]×{4π・目付[g/m]・フィラメント数/密度[g/cm3]}1/2
〔Ipaのバラツキ〕
本発明における炭素繊維表面処理度合いのバラツキIpaを求めるために、炭素繊維束を2本以上に分繊し、それぞれについてIpaを測定した。分繊した各炭素繊維束のIpa測定値から、Ipaのバラツキとして、その標準偏差の平均値に対する割合、即ちC.V.値を求めた。
〔炭素繊維のストランド強度〕
炭素繊維の樹脂含浸ストランド強度は、JIS R 7608に規定された方法により測定した。
〔炭素繊維のストランド引張弾性率〕
炭素繊維のストランド引張弾性率は、JIS R 7608に規定された方法により測定した。
〔炭素繊維の圧縮強度〕
炭素繊維の圧縮強度は、単糸のトランスバース方向の圧縮強度であり、炭素繊維の単糸の繊維方向に直角方向での圧縮強度(n=5で測定)を意味する。測定に際しては、スライドグラス上に炭素繊維の単糸を固定したサンプルを作成し、島津製作所製微小圧縮試験機「MCTM-200」を用いて、平面50μm圧子を使用し、負荷速度7.25mgf/secにて測定を行った。
実施例1
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を、1つの紡糸口金に24000の孔を有する紡糸口金(24000フィラメント用の紡糸口金)を通して、塩化亜鉛水溶液中に吐出して凝固させ、凝固糸を得た。
この凝固糸を、水洗・乾燥・スチーム延伸処理し、スチーム延伸処理後の繊維を得た。水洗・乾燥・スチーム延伸処理を通してのトータル延伸倍率は14倍であり、得られたスチーム延伸処理後の繊維の繊度は0.72dtexであった。
この前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉の最高温度域を230〜250℃に設定した加熱空気中、延伸倍率を0.9〜1.1の範囲内で制御して耐炎化処理し、密度1.36g/cm3の耐炎化繊維を得た。
この耐炎化繊維を、第一炭素化炉の不活性雰囲気中、最大温度800℃の温度領域を通過させて第一炭素化処理を施した。
この第一炭素化処理繊維を、第二炭素化炉の不活性雰囲気中、最大温度1650℃の温度域を通過させて第二炭素化処理を施した。
得られた炭素繊維を図1に示す電解酸化処理装置を用いて電解処理を行った。電解槽には、陽極と陰極を交互に繊維の通過方向に対して平行に3組配置した。電解液には1Nの硝酸水溶液を使用した。平行に並べた複数本の炭素繊維ストランドを処理装置に供給し、各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り150Cになるように表1に示す条件で電解酸化を行った。炭素繊維の電解液への浸漬時間は、22秒であった。
引き続きサイジング剤(ジャパンエポキシレジン(株)製 Ep828)を施し、乾燥して表1に示す強度、弾性率、伸度の炭素繊維を得た。なお、サイジング剤の付着量は、炭素繊維全質量の1.0質量%であった。
実施例2
各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り180Cになるよう処理した以外は、実施例1と同様の方法で、炭素繊維を得た。
実施例3
各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り200Cになるよう処理した以外は、実施例1と同様の方法で、炭素繊維を得た。
実施例4
第二炭素化時の最大温度域を1550℃にした以外は、実施例3と同様の方法で、炭素繊維を得た。
比較例1
陽極と陰極の組み合わせを1組とした以外は、実施例1と同じ方法で、炭素繊維を得た。
比較例2
各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り200Cになるように処理した以外は、比較例1と同じ方法で、炭素繊維を得た。
比較例3
各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り550Cになるように処理した以外は、実施例4と同じ方法で、炭素繊維を得た。
比較例4
各電解槽で電解処理後の合計表面処理電気量が1g当り10Cになるように処理した以外は、実施例1と同じ方法で、炭素繊維を得た。
Figure 2009242971
本発明において使用する表面処理装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 電解槽
3 内槽
5 外槽
7 電極
9 炭素繊維
11 ガイドローラー
13 電解液
100 表面処理装置

Claims (4)

  1. ガス吸着測定装置により測定される比表面積が0.6〜1.2m/g、AFM(原子間力顕微鏡)装置により測定される表面粗さRaが20nm以下、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)法により測定されるIpaが0.05〜0.15μA/cm、Ipaのバラツキが8%以下であることを特徴とする炭素繊維。
  2. JIS R 7608に規定の方法により測定したストランド引張弾性率が200〜400GPaである請求項1に記載の炭素繊維。
  3. 炭素化処理温度1300℃以上で焼成した炭素繊維を電解酸化表面処理することにより、ガス吸着測定装置により測定される比表面積を0.6〜1.2m/g、AFM装置により測定される表面粗さRaを20nm以下、サイクリックボルタンメトリー法により測定されるIpaを0.05〜0.15、Ipaのバラツキを8%以下とする炭素繊維の製造方法。
  4. 電解酸化表面処理が、上端から電解液をオーバーフローさせる内槽と、所定間隔離間して一列に並べられた6以上の前記内槽を内部に備えるとともに、各内槽からオーバーフローされた電解液を受け入れる外槽とからなる電解槽と;前記内槽内にそれぞれ挿入された電極であって、内槽の配列に従って電極が交互に陽極又は陰極として作用する電圧が印加される電極と;一列に並べられた各内槽から外槽へオーバーフローする電解液に、一方の内槽から他方の内槽に向けて走行する炭素繊維を浸漬させるガイドローラーと;を有する表面処理装置を用いて連続的に行われる請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011202297A (ja) * 2010-03-25 2011-10-13 Toho Tenax Co Ltd 炭素繊維の表面処理方法、及び同処理方法により製造する炭素繊維
JP2012102439A (ja) * 2010-11-12 2012-05-31 Toho Tenax Co Ltd 炭素繊維の表面処理方法
JP2014074255A (ja) * 2012-09-14 2014-04-24 Toray Ind Inc サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料

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