JP3886904B2 - 横編機 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、前後針床間の歯口間隙の広さが調整可能な針床を備えた横編機に関する。
背景技術
横編機では少なくとも前後一対の針床が歯口間隙を挟んでそれぞれの頭部を互いに近接して配設されている。各針床上には多数の針とシンカーが並設されている。前後に対峙する針床の尖端部やシンカー間に形成される間隙(以下、歯口間隙という)の寸法は、編機のゲージやフックサイズにより決まっており、一部の横編機には、この歯口寸法が調整可能なものがある。この尖端部はピアノ線で形成されたり、針床基板それ自身で形成されている。例えば針床の両端に歯口寸法調整用のノックピンを挿入するためのノック穴が複数穿設されていて、針床に装着される針のフックサイズ(L,M,S)に応じて本体ベッドに穿設したノック穴に対するノックピンの位置を変えることで、針床の本体ベッドに対する取付位置を変更できる。これによりシンカーおよび針床尖端部の位置が変更され歯口間隙の寸法を広げたり狭めたりすることができ、これは例えば7ゲージの編機で6ゲージや8ゲージ風合いの編地を得ることを可能にする。
また編地編成中に針床を通常の編成(ニットや目移し)を行う進出位置から後方へ退避させた状態にし、この間に所要の編成操作を行い、その後で退避状態にある針床を元の進出位置に復帰させる針床の退避装置を備えた横編機がある。
このようなものとして経糸挿入機構を有する横編機がある。これは緯糸を使って編地が編成される間は前後針床が進出位置にセットされており、レースバーと呼ばれる経糸挿入用の給糸装置を使って編地編成を行う際にレースバーの下位にある針床がレースバーの揺動を伴うラッピング動作の際にレースバーと干渉しないように下方へ退避される。これは例えば特公昭51−42225号公報の第1図に示されている。
また他の例として編まれたボーダー等の編地を針床の針から針床の下位に配設した目移しバー上のポイント針へ目移しするトッピング編機と呼ばれる編機の場合にも針床下方から歯口に対して進退昇降する目移し部材と針床との干渉を防ぐために針床の退避機構が設けられる。これは例えば特開昭46−973号公報の第14図、第15図に示されている。
しかし、上記いずれのものも重量の大きな針床全体を歯口に対して進退方向に動かせることで歯口間隙の広さを変更するものであるためその調整には大きなパワーが必要であり、特公昭51−42225号や特開昭46−973号公報では大がかりな駆動機構が編機に備えられている。針床に装着される針のフックサイズ(L,M,S)に応じて本体ベッドに穿設したノック穴に対するノックピンの位置を変えるものは手作業で行うものであり、特に上記のような駆動機構は必要とされないが、作業者にとってその変更作業は多大な労力を要するものであった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので針床間の歯口間隙の広さを調整するのに従来のような大きなパワーを必要としない横編機を提供することを目的とする。
また編地編成中に針床間の歯口間隙の広さを調整できる横編機を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明では、針床上に形成した針溝に進退動自在に配列された多数の針と、各針間に配設され編目形成に対して働くシンカーと針床尖端部を備えた針床の少なくとも一対を、歯口間隙を挟んで対向配設した横編機において、前記シンカーと針床尖端部の双方を、針床に対して針の進退方向に移動自在に支持するとともに、これらシンカーと針床尖端部の双方を進退操作して前後針床間の歯口間隙の広さを調節できるようにした。
また操作手段はシンカーと、針床尖端部、の双方を、同時に一括して進退操作する。
これによれば針床の先端部に設けられ編目形成の際に働くシンカーやシンカーと共に前後針床間の歯口間隙に面する針床尖端部がともに針床上で歯口間隙を広げたり、狭めたりできるように進退動可能に支持されているので必要に応じてシンカーや針床尖端部の位置を針床上で移動することで所望の歯口寸法を得ることができる。
またシンカーを、針床先端から針床裏面側に形成したシンカー溝内で歯口に対して進退自在に支持し、針床尖端部を、シンカー前縁近傍の、針の進退軌跡の下方に、針の進退方向と直交する向きに穿設した挿通孔に貫挿させた編糸係止線材で構成し、シンカーの針床裏面に延びる部分に設けた被操作部を操作手段で進退操作することでシンカーおよび編糸係止線材を進退操作して針床間の歯口間隙寸法を調整する。
また各シンカーの被操作部の全部に対して同時に係合可能な操作部を設けた針床幅方向に延びるスライド部材によって各シンカーを進退操作する。
また前記シンカーに設けた被操作部は、針床裏面から突出する進退制御用のバットで構成し、スライド部材に設けたカム溝でカム係合させてシンカーを進退操作させるようにした。
これによれば針床の編目に係止する尖端部が線材で構成され、これをシンカーに設けた挿通孔に貫挿して支持される。そしてシンカーの針床裏面に延びる後方部分にシンカーを進退操作する操作手段と係合する被操作部を設けてあるので、この被操作部が操作手段によって進退動されるとシンカーだけでなく同時に線材も進退して歯口間隙の広さが調整されることになる。また針床の裏面側に被操作部を配置させ、これを操作手段で操作するようにしているので針床上面側に配置させた場合に比べ配置スペースを確保しやすい。
また並設された全てのシンカーの各被操作部がは各シンカーの被操作部の全部に対して同時に係合可能な操作部を設けた針床幅方向に延びるスライド部材に設けた操作部に係合されるためスライド部材を進退操作することで歯口間隙の寸法を調整できる。
シンカーのバットはスライド部材が進退動することでカム溝によってカム係合されて進退操作される。
また前記針床は、針床本体部と、該針床本体部の前方で針床本体部に対して針の進退方向に移動自在に構成された針床先端部、とで分割して構成され、針床先端部にシンカーおよび針床尖端部を設けるとともに針床先端部が操作手段によって進退操作されて針床間の歯口間隙寸法が調整される。
また針床先端部は、針床本体部上に進退動可能に支持されている。
これによるとシンカーおよび針床尖端部を形成する針床の先端部分が別体に形成されていて、針床上で針の進退方向に移動できるように支持されているそして針床先端部が操作手段によって進退操作されて針床間の歯口間隙寸法が調整される。
また前記針床間の歯口間隙寸法を調整するための機構が前後の針床にそれぞれ設けられる。
これによると前後針床においてシンカーと針床尖端部をそれぞれ進退操作できるので歯口間隙寸法の調整幅をより大きくすることができる。また前後針床の進退量を揃えることができるのでL,M,Sのようなフックサイズの変更だけでなく、例えば編み素材や編み組織などの編成条件に応じて歯口間隙の寸法を微妙に変えて編地編成を行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の横編機について好適な実施例を、以下図面とともに説明する。
<実施例1>
本実施例の横編機1は、多数の針とシンカーを並設してなる前後針床を逆V字状に対向配置してなる。図1は、横編機の針床部分の概略を示した側面図を示す。図2は後針床の断面図(後述の操作手段を省略)を示し、図3は図2に示す針床の先頭側部分を拡大した図を示す。図4は針床を構成する主要パーツを示した図である。本明細書では、前後針床間の歯口間隙に向かう移動を進出、その反対の移動を後退と表現する。また横編機の各部を説明する際に歯口に面する部位を前、その反対の部位を後として表現する。
前針床5と後針床6は本体ベッド3上に載置支持される。本実施例では、前後針床間の歯口間隙17の寸法を調整する調整機構が後針床6側にのみ配設されており、前針床5は従来構造のものが用いられるので以下は後針床6について説明することとする。後針床6は、針床基板7の上面に等間隔で刻設した複数のニードルプレート溝9,9にニードルプレート11を嵌挿し、隣接するニードルプレート11,11間に針溝13を形成し、この針溝13内で針15を歯口間隙17側に向かって進退動自在に支持する。ニードルプレート11はその先端側に形成した凹部19を針床基板7の凹部8に各溝9に直交して貫挿したワイヤ21により溝内で位置決めされるとともに後端側をカシメるなどして針床基板7に固定する。針溝13には先端にフック16を有し、ラッチ18の回動によりフック16の開閉を行うラッチニードル15が収容されるが、スライダーによりフックの開閉を行う複合針など他の形式の針であってもよい。針15はニードルプレート11上面に針溝13に直交する向きに形成した溝14に貫挿された押さえ板12によって針溝13内に支持される。
針15はその後方部に形成した凹部23にジャック25先端の凸部27を嵌合することでジャック25と一体となる。ジャック25は進退制御用のバット28,29を針床表面から突設し、キャリッジ31上に設けたカム32と係合して進退操作されることで針15は歯口間隙17に対して進退動する。ジャック25は針溝底部に延びる弾性脚部33が形成され、バット28,29を針溝外に突出する方向に付勢した状態で針床の長手方向に挿通したワイヤ35により針溝内に保持される。
針床基板7の歯口間隙17に面する先頭側には前記ニードルプレート装着用の溝9に連通するとともに針床基板の下面後方へ延びるニードルプレート溝と同じ溝幅のシンカー溝37が同一ピッチで形成され、このシンカー溝37内にシンカー41が収容される。針床基板7の先端部分を一部切除して針15の進退方向に直交して形成した溝34を設け、この溝内にワイヤ51を横架する。このワイヤ51については後述する。
シンカー41は、概略L字形状をしたプレート部材で形成され、前縁には編目形成の際に編目のシンカーループを係止する編目形成縁43が形成される。編目形成縁43のすぐ後方にはピアノ線などの編糸係止用の金属製線材を挿通するための挿通孔44が形成される。この挿通孔44は針の進退軌跡の直下に穿設されており、列設する各シンカー41の挿通孔44にピアノ線53を架渡する。ピアノ線53の歯口間隙に面する前面部分は、針床尖端部となり、編目形成の際に尖端部の縁でオールドループを針からノックオーバーさせる。この針床の尖端部は俗称”天歯”(Verge)と呼ばれる。
このシンカー41には2つの挿通孔44a,44bが形成されており、ピアノ線を挿通する孔を適宜切り替えてオールドループのノックオーバーのタイミングを微妙に調整できるようなっている。前記挿通孔44より更に後方側には、シンカーを進退自在に針床基板上に支持するために設けた前記したワイヤ51を挿通する長孔45が形成される。
シンカー41のプレート部材の厚みは、先端部46が薄く形成され、針床先端側で針の側面を支持する長孔形成部周辺47はニードルプレート11と同じ厚みに形成される。長孔形成部周辺47からシンカーのL字屈曲部48にかけての箇所42は一側面が削がれた薄肉状に形成され、L字屈曲部48から後方に延びる後方部49は長孔形成部周辺47と同じ厚みとなっている。箇所42に形成される空間部は飛散した繊維塵等がシンカー溝内に堆積するのを防いで針床下方に払い落とすためのものである。
シンカー41の後方部49には被操作部として針床基板7の下面から下向きに突出する制御バット50が形成される。シンカー41は前方側において長孔45にワイヤ51を貫挿されるとともに後方側において針床基板7の下面でシンカー溝37に直交する向きに形成した溝55に貫挿された押さえ板57によって針床基板7から脱落しないように支持される。これらワイヤ51と押さえ板57によりシンカー41は針床上で歯口17に対して進退動自在に支持される。
図5は針床先端側の平面図、図6は針床先端側を針床下方から見た図を示し、シンカー41とピアノ線53は後述する操作手段によって一括して進退操作されるが、図では進退状態をわかりやすくする目的で半分が歯口間隙を狭めた状態、残る半分が歯口間隙を広げた状態をそれぞれ示すとともに操作手段を取り外した状態の図とした。
次にシンカー41とピアノ線53を進退操作する操作手段60について説明する。図7は後針床6を下面から見た図を示す。針床裏面には、並設したシンカー溝37の列に直交して針床幅方向に延び、歯口間隙17に対して進退自在な第1スライドバー61と、この第1スライドバー61と針床6間に配設され、左右方向に移動可能な第2スライドバー71が取付部材81,82,83,84によって針床裏面に摺動自在に取付けられる。
第1スライドバー61には、針床裏面に対峙する前方側には幅方向に延びるカム溝63が形成されていて、並設されるシンカー41のそれぞれの制御バット50がこのカム溝63内に突出する。第1スライドバー61の上記カム溝63の後方側には第2スライドバー71を収容する収容部65が形成されており、この収容部65にカムフォロワ66a,66bが針床側に向けて突設される。
第2スライドバー71には、前記第1スライドバー61のカムフォロワ66a,66bを受け入れて上記第1スライドバー61を歯口に対して進退操作させるための溝カム73a,73bが前記カムフォロワ66a,66bに対応する位置に形成される。第2スライドバー71の一方の端部にはラック75が刻設されており、駆動モータ85のモータ軸86に軸支されたピニオン87が螺合する。駆動モータ85は不図示の取付部材を介して本体ベッド3の適宜箇所に固定される。
駆動モータ85が正転または逆転駆動することで第2スライドバー71が右または左方向に移動して溝カム73a,73b内でカムフォロワ66a,66bが傾斜部67a,67bを越えて上下の平坦部68,69にわたって移動でき、その結果第1スライドバー61が進出あるいは後退される。第1スライドバー61が進退動することでカム溝63内にあるシンカー41の制御バット50が一括して進退動されので編目に作用するシンカーの編目係止縁43およびピアノ線53が同時に進退動される。図8の図8aは図7の線VIII−VIIIにおけるシンカー操作手段と、シンカーの状態を示した断面図で針床は省略して示した図で、シンカー41を進出させた状態を示す。図8bは図8aに対応する図でシンカー後退時の状態を示す。なお後針床をラッキング駆動可能な針床として構成する場合には、その振り幅を見込んだ範囲まで第1スライドバー61のシンカー41の制御バット50と係合するカム溝63を形成することで後針床がラッキングした状態でもラッキングに影響を受けることなくシンカー41を進退操作することができる。
次の本実施例の横編機1の後針床の作動について説明する。
この横編機1ではシンカー41およびピアノ線53を進出させた状態でニットや目移しなどの通常の編成を行うことで編地の編成を行う。そしてシンカー41およびピアノ線53を上記進出位置から後退させるときには、図7においてシンカー駆動手段60の駆動モータ85が右回転され、ラックピニオンにより第2スライドバー71が右方向に移動される。これによりカムフォロワ66a,66bが溝カム73a,73b内の上の平坦部69a,69bから下の平坦部68a,68bへと案内されて第1スライドバー61を後退させる。その結果、シンカー41とピアノ線53が歯口から後退するので歯口間隙17の広さは通常編成のときに比べて広くなる。
そしてシンカー41とピアノ線53が後退位置を保持している間に、所要の編成動作が行われる。このときに行われる編成動作は先にも説明したように編機の種類に応じて異なり、トッピング編機の針床退避状態と見立てるならこの間に編まれたボーダーを針床の針から針床の下位に配設した目移しバー上のポイント針へ目移しするために針床下方から目移し部材が歯口間隙に対して進出して編目を受け取った後、目移し部材が下降する操作が行われるなどの所要の編成動作が行われた後、駆動モータ85が左回転方向に駆動されて第2スライドバー71を右に移動させることで第1スライドバー61を進出させて針床間の歯口間隙を元の状態に戻して編地編成を続行する。
このように従来の横編機のように針床全体を進退動させるのではなく、歯口付近に設けられる少なくともシンカーや針床尖塔部などの針床を構成する一部の構成要素だけを歯口に対して移動させるようにして歯口間隙の広さを調整するようにしているので比較的小さな駆動力でよく操作手段を小型化できる。本実施例では、後針床のシンカーとピアノ線を進退操作して歯口間隙の広さを調整するようにしたが、前針床を後針床と同じ構成にしてそれぞれの針床でシンカーとピアノ線を進退操作させるようにしてもよい。また駆動モータのモータ軸の回転量を無段階に調整して歯口間隙の寸法を微妙に調整することもできる。
<実施例2>
上記実施例の横編機の針床は、針床尖塔部を形成するピアノ線を貫挿させた各シンカーを針床の先端にそれぞれ進退動自在に支持させたものであるのに対し、実施例2による針床101は、図9に示す断面図からわかるように針床基板103が本体部105と先端部107に分割して形成される。図10は針床基板103を構成する本体部105と先端部107を分離させた状態を示す。
針床101の基板本体部105の先端部分には、基板先端部107の後端面に形成した凹欠部113内に嵌合され、基板先端部107を基板本体部105上に支持する支持部111が形成される。基板本体部105と基板先端部107のそれぞれの上面には、ニードルプレート115を挿入するための溝117,118が同一ピッチで削設されており、挿入されたニードルプレート115,115間に針溝119を形成する。基板先端部107はニードルプレート115を装着した状態で基板本体部105に対して左右方向に移動するのが規制される。ニードルプレート115は基板先端部107が歯口に対して進退動する際のガイドとしても働く。
基板先端部107は、それ自身の尖端部分121を編目と係合する天歯とするとともにシンカー123を装着するためのシンカー溝125が形成されている。シンカー123は、全体が均一な厚みの薄いプレート部材で形成され、シンカー溝125はニードルプレート装着用の溝117よりも溝幅は小さい。シンカー123は基板先端部107の尖端部分121の後方へ延びる脚127と基板下面に延びる弾性脚128を有する。シンカー123は各脚127,128の先端に設けた係合部131,132を基板先端部107に設けた係止部133,135にそれぞれ係止させることで基板先端部107に固定される。天歯(尖端部)を先の実施例のようにピアノ線により形成してもよく、あるいは天歯とシンカーの両方を基板先端部と一体に削設するようにしてもよい。基板先端部107の上面130は針を支持する摺動面となる。上記に説明されない他の部分については先の実施例と同じとする。
図11は歯口間隙の広さを調整するための操作手段の概略の構成がわかるように針床を簡略化して示した平面図である。基板先端部107の両端には基板先端部107を基板本体部105に対して進退動させるために操作手段151と連結するための係合片133,134が幅方向に張り出し形成される。基板本体部105の針が装着されない両端部137,138上面には溝139,141が形成され、この溝内に操作レバー143,144が収容され取付板147,148で固定される。各操作レバー143,144は先端に嵌合部143a,144aが形成されており、基板先端部107の前記係合片133,134と嵌合し、後端側に設けた係合部143b,144bが後述の駆動モータ153の回転駆動により進退操作される駆動レバー155に設けた嵌合溝157,158に嵌合する。159は駆動モータ153の回転駆動を往復動に変換するラックで、先端部が駆動レバー155に固着されている。駆動レバー155の各嵌合溝157,158は幅方向に延びて形成されており、針床がラッキングした状態でも操作レバーを進退操作ができるようになっていて基板先端部107を基板本体部105に対して相対変位させることでシンカーおよび天歯を歯口間隙へ進出あるいは退去させるようにして歯口間隙の寸法を調整する。
上記では、針床の上面側から駆動する例を示したが、先の実施例のように針床裏面側から駆動させようにしてもよいなど駆動機構は適宜変更可能である。ラックピニオンに代えてリンク機構あるいは他の機構により実現することも当然可能である。
以上のように構成された横編機は、歯口間隙に近傍にあって歯口間隙の寸法を規定するシンカーやピアノ線などを必要に応じて任意の位置にセットすることができるので例えばフックサイズの変更など編成条件に応じて歯口寸法を調整することができる。また経糸挿入機構を有する横編機の針床退避機構に適用してレースバーと針床の衝突を回避させることや目移し部材を針床下方から歯口に進出させる形式のトッピング編機の針床退避機構としても適用することができる。
上記各実施例とも歯口間隙近傍に配設される部材だけを可動にしたので従来の針床全体を移動させるものに比べてより小さな駆動力で操作ができる。特に上記実施例1では操作手段により進退操作される部材がシンカーやピアノ線という僅かで比較的軽量なものだけで構成されているので更に駆動力を小いさなもので実現できるメリットがある。
図1に示すように針の制御ジャックはキャリッジのカムに係合させて進退制御されるため側面視においてキャリッジのカムと針床表面の凹凸部分が噛み合った状態にあっても針床を退避させる際に従来の針床退避機構のようにキャリッジを一旦針床外に退避させて噛み合いを解いてからでないと行えないという問題もなくなり、編地編成を行っている最中でも歯口の間隙の広さを調整することができる。
なお上記実施例では針溝は列設したニードルプレート間に形成したが、針床基板に直接針溝を形成するようにしてもよい。また駆動モータ等を設けて編地編成の途中においても歯口間隙の広さを調整できる例を示したが、例えばLMSのようにフックサイズを交換した際に一度だけ、あるいは柄替えの際に一度だけ歯口間隙の寸法を調整すればよいような編機の場合には特別な駆動機構を設けずに手作業によって調整できるようにしてもよいなど本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施例1に係る横編機の針床部分の概略を示した側面図、図2は一方の針床の断面図、図3は図2に示す針床の先頭側部分を拡大した図、図4は針床を構成する主要パーツを示した図、図5は針床先端側の平面図、図6は針床先端側を針床下方から見た図、図7は針床裏面側からから見たシンカーを進退操作するシンカー操作手段を示した図、図8の図8aは図7の線VIII−VIIIにおけるシンカー操作手段とシンカーの状態を示した断面図で針床は省略して示した図で、シンカー41を進出させた状態を示し、図8bは図8aに対応する図でシンカー後退時の状態を示した図、図9は本発明の実施例2に係る横編機の針床の断面図を示した図、図10は 針床基板を構成する本体部と先端部を分離させた状態を示した図、図11は歯口間隙の広さを調整するための操作手段の概略構成がわかるように針床を簡略化して示した平面図、をそれぞれ示す。

Claims (8)

  1. 針床上に形成した針溝に進退動自在に配列された多数の針と、各針間に配設され編目形成に対して働くシンカーと、針床尖端部を備えた針床、の少なくとも一対を、歯口間隙を挟んで対向配設した横編機において、前記シンカーと針床尖端部の双方を、針床に対して針の進退方向に移動自在に支持するとともに、操作手段を設けてこれらシンカーと針床尖端部の双方を進退操作して前後針床間の歯口間隙の広さを調節できるようにした横編機。
  2. 操作手段はシンカーと、針床尖端部、の双方を、同時に一括して進退操作することを特徴とする請求項1に記載の横編機。
  3. シンカーを、針床先端から針床裏面側に形成したシンカー溝内で歯口に対して進退自在に支持し、針床尖端部を、シンカー前縁近傍の、針の進退軌跡の下方に、針の進退方向と直交する向きに穿設した挿通孔に貫挿させた編糸係止線材で構成し、シンカーの針床裏面に延びる部分に設けた被操作部を操作手段で進退操作することでシンカーおよび編糸係止線材を進退操作して針床間の歯口間隙寸法を調整するようにした請求項2に記載の横編機。
  4. 各シンカーの被操作部の全部に対して同時に係合可能な操作部を設けた針床幅方向に延びるスライド部材によって各シンカーを進退操作することを特徴とする請求項2に記載の横編機。
  5. 前記シンカーに設けた被操作部は、針床裏面から突出する進退制御用のバットで構成し、スライド部材に設けたカム溝でカム係合させてシンカーを進退操作させることを特徴とする請求項3に記載の横編機。
  6. 前記針床は、針床本体部と、該針床本体部の前方で針床本体部に対して針の進退方向に移動自在に構成された針床先端部、とで分割して構成され、針床先端部にシンカーおよび針床尖端部を設けるとともに針床先端部が操作手段によって進退操作されて針床間の歯口間隙寸法が調整されることを特徴とする請求項1に記載の横編機。
  7. 針床先端部は、針床本体部上に進退動可能に支持されていることを特徴とする請求項6に記載の横編機。
  8. 前記針床間の歯口間隙寸法を調整するための機構が前後の針床にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の横編機。
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