JP3859038B2 - エアバッグ用織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用安全装置の一つであるエアバッグ用織物に関するものであり、更に詳しくは、必要な機械的特性を保持しつつ、コンパクト化、低通気度化が可能で、かつ経済的に優れソフトな風合いをもったエアバッグ用織物を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車安全部品の一つとしてのエアバッグは乗員の安全意識の向上に伴い、急速に装着率が向上している。エアバッグは自動車の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し、インフレーターから高温、高圧のガスを発生させ、このガスによってエアバッグを急激に展開させ、乗員保護に役立つものである。
【0003】
従来、エアバッグにはクロロプレン、クロルスルフォン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムが塗布された基布が、耐熱性、空気遮断性(通気度)、難燃性の目的から使用されていた。
【0004】
しかしながら、これらのコーティング基布は基布重量の増加、柔軟性の低下、製造コストの増加、リサイクル不可のため、エアバッグ用基布に使用するには不具合な点が多かった。現在でも一部で使用されているシリコーンコーティング基布は上記不具合点がかなり改善されてはきたが、まだ満足できるものではない。
【0005】
そこで、最近はコーティングを施さないノンコートエアバッグ用基布が主流になっており、軽量化、良好な収納性、低通気度化のために様々な提案がなされている。例えば、特許第2538934号公報にあるように、8.5g/d以上、3dpf以下の原糸を用いて、収納性に優れた方法(▲1▼)、特開平1−122752号公報にあるように、高密度織物を製織した後に収縮加工やカレンダー加工を施すことで軽量、低通気度基布を得ようとする方法(▲2▼)、特開平4−2835号公報にあるように、両面カレンダー加工することで軽量かつ124Pa 差圧で0.5cc/cm2/s 以下の低通気度基布を得ることができる方法(▲3▼)、特開平6−41844号公報にあるように、織物に化学収縮処理を施すことによって、布を構成する糸条を膨潤させて低通気度基布を得ようとする方法(▲4▼)、特開平8−325888号公報にあるように、単糸繊度が1.5d〜7.0dの熱可塑性合成繊維Aと、0.2d〜1.5dの熱可塑性合成繊維Bとを混合する方法(▲5▼)等がある。
【0006】
上記▲1▼〜▲5▼までの従来の方法では解決できていない柔軟性、良効な収納性、低通気度で、経済的に優れたエアバッグ用織物を製造するためには、上記従来例▲1▼の場合、収納性には優れているが、その他の点で問題があり、また単糸繊度が小さくなると、製織時のフィラメント切れを起こしやすくなり基布品位上、また製織稼動上問題が多く、織機回転数も上げにくくなり、製織製造コストは高くなってしまう。また従来例▲2▼の場合カレンダー加工することで製造工程が一工程増加により製造がコストアップし、また柔軟性が損なわれる問題点を有する。
また、従来例▲3▼の場合は、軽量、低通気度化は得られるが、カレンダー加工することで製造工程が一工程増加により製造コストアップし、また柔軟性が損なわれる問題点を有する。また、従来例▲3▼の場合は、化学処理するため製造コスト のアップと、化学薬品による原糸強度低下すなわち基布強度低下を引き起こし、エアバッグとして使用するには信頼性に問題がある。従来例▲4▼の場合は、別々に作製した単糸繊度の異なる2種類の糸条を合糸しており、一工程増加することによる製造コストアップが問題となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の方法では達成できなかった問題点を解決し、エアバッグ用織物として、必要な機械特性を保持しつつ、コンパクト化、低通気度化が可能で、かつ経済的に優れ、ソフトな風合をもったエアバッグ用織物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち本発明の第1は、ポリアミド繊維よりなる織物であり、該織物が沸水収縮率の異なる少なくとも2種以上のヤーン経糸および/又は緯糸に用いて規則的に配置織成され、前記2種以上のヤーンの沸水収縮率の最大のものと最小のものとの差が2〜10%であり、前記最小のヤーンの沸水収縮率が5%以上であり、該織物が熱処理されていることを特徴とするエアバッグ用織物であり、その第2は、織物の構成において、組織が平織である第1記載のエアバッグ用織物であり、その第3は、織物の構成において、ヤーンが実質的に無撚あるいは甘撚である第1記載のエアバッグ用織物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
ここで本発明のエアバッグ用織物の特徴を詳細に説明すると、沸水収縮率の異なる少なくとも2種以上の熱可塑性繊維を経糸および/あるいは緯糸に使用している布帛を熱処理することにより得られる織物である。通常経糸及び緯糸の繊維はそれぞれ1種類の繊維で構成されており、エアバッグ用の場合には経、緯糸に同一種類の繊維を使用することが多い。本発明品は経糸および/あるいは緯糸に沸水収縮率の異なる少なくとも2種類の熱可塑性繊維を製織し、製織後熱処理し収縮させることにより低通気度化が容易にできるようになる。また、乾熱収縮率の異なる繊維を用いることにより収縮後の繊維長にばらつきを持たせることによりソフトな風合いを兼ね備えた織物を得ることができる。
【0010】
本発明に用いられる熱可塑性繊維の沸水収縮率の差は、2〜10%で有ることが必要である。沸水収縮率の差が2%より少ないとソフトな風合いを与える効果が少なく、10%より大きいと収縮後の繊維糸長差により織物の厚さが厚くなりコンパクト性を損ねることとなり良くない。沸収縮率の値は、規定するものではないが0〜15%程度の物を用いるのが好ましい。本発明における加熱処理温度は特に規定するものではなく、通常100〜200℃で実施する。処理は、ヒートセッター、沸水バス等特に規定はしない。
【0011】
製織の仕方としては特に限定するものではないが、基布物性の均一性や基布外観上の点を勘案すると規則的に配置するのが良く、交互に使用するのが好ましい。経糸の場合には準備工程で経糸を交互になるようにし、緯糸の場合には緯糸2色選択用織機で交互に打ち込むようにすればよい。
【0012】
本発明におけるエアバッグを構成する熱可塑性繊維としては、特に素材を限定するものではないが、特にナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステルが使用される。他には全芳香族ポリエステル、超高分子量ポリエチレン繊維、PPS繊維、ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。ただし、経済性や耐衝撃性を勘案するとナイロン66、ナイロン46、ナイロン6が特に好ましい。また、これらの合成繊維には原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有していても何ら問題はない。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等である。
【0013】
また、使用する原糸の総繊度および単糸繊度は総繊度が50〜700d、単糸繊度が8d以下が好ましい。更に好ましくは総繊度140 〜420d、単糸繊度6d以下である。すなわち、総繊度が50d 未満場合にはその部分での引張強力及び引裂強力が不足し、700dを超える場合には織物の柔軟性が損なわれ、収納性にとって不利になる。単糸繊度が8dを超える場合には、これも織物の柔軟性が損なわれ、収納性にとって不利になる。
【0014】
また、原糸は実質的に無撚あるいは甘撚が好ましく、更に好ましくは無撚が使用される。これは低単糸繊度糸を使用して低通気度織物を得ようとした場合、撚りを加えると単糸の拡がりを阻害し、低通気度化が困難になるためである。
【0015】
【実施例】
次に実施例により、本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例中の物性は下記の方法で測定した。
目付:JIS L1096 6.4.2
厚さ:JIS L1096 6.5
織密度:JIS L1096 6.6
通気度:JIS L1096 6.27.1.A法
剛軟度:JIS L1096 6.19.1.A法(45°カンチレバー法)
沸水収縮率:JIS L1013 熱水収縮率B 法 100℃
【0016】
実施例1
経糸に無撚の420d/72f (単糸繊度5.8d)、沸水収縮率=6%と315d/72f (単糸繊度5.8d)、沸水収縮率=9.5%を交互に使用し、緯糸には無撚の420d/72f (単糸繊度5.8d)、沸水収縮率=9.5%の1種類を平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ、生機をタテヨコ各6%収縮セットし経密度55本/in、緯密度55本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
実施例2
経糸に無撚の420d/72f (単糸繊度5.8d)沸水収縮率=5%、緯糸は無撚の420d/72f 、沸水収縮率=5%と420d/72f (単糸繊度5.8d)沸水収縮率=12%の2種類を緯糸2色打ち込み用織機を用いて交互に平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ、生機をタテに3%、ヨコに7%収縮し経密度53本/in、緯密度53本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0019】
実施例3
経糸に無撚の315d/72f (単糸繊度4.4d)沸水収縮率=10.5%1種類、緯糸は無撚の315d/72f (単糸繊度4.4d)、沸水収縮率=10.5%と315d/72f (単糸繊度4.4d)、沸水収縮率=6.0%を緯糸2色打ち込み用織機を用い交互に打ち込み、平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ、生機をタテヨコ各9%収縮し経密度62本/in、緯密度64本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0020】
比較例1
経糸に無撚の420d/72f (単糸繊度5.8d)沸水収縮率=6%1種類、緯糸に無撚の420d/72f 、沸水収縮率=6%の1種類を織機を用いて平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ生機をタテヨコ各4%収縮し経密度55本/in、緯密度55本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0021】
比較例2
経糸に無撚り315d/72f (単糸繊度4.4d)沸水収縮率=10.5%を使用し、緯糸に無撚り315d/72f 、沸水収縮率=10.5を用い平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ、生機をタテヨコ各9%収縮し経密度62本/in、緯密度64本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0022】
比較例3
経糸に無撚り315d/72f (単糸繊度4.4d)沸水収縮率=9.5%を使用し、緯糸に無撚の420d/72f 、沸水収縮率=9.5%を用い平織にて製織後、通常の精練、乾燥、セット工程にて仕上げ、生機をタテヨコ各7%収縮し経密度55本/in、緯密度55本/inのノンコートエアバッグ織物を得た。このエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の織物が低通気度織物であり剛軟度が小さく柔軟性に優れていることが判る。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、エアバッグ用織物として必要な機械的特性を保持しつつ、柔軟かつ低通気度化が可能で、かつ経済的に優れたエアバッグ用織物を提供することができる。
Claims (3)
- ポリアミド繊維よりなる織物であり、該織物が沸水収縮率の異なる少なくとも2種以上のヤーンを経糸および/又は緯糸に用いて規則的に配置織成され、前記2種以上のヤーンの沸水収縮率の最大のものと最小のものとの差が2〜10%であり、前記最小のヤーンの沸水収縮率が5%以上であり、該織物が熱処理されていることを特徴とするエアバッグ用織物。
- 織物の構成において、組織が平織である請求項1記載のエアバッグ用織物。
- 織物の構成において、ヤーンが実質的に無撚あるいは甘撚である請求項1記載のエアバッグ用織物。
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- 1998-04-01 JP JP08874698A patent/JP3859038B2/ja not_active Expired - Lifetime
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