JP3851568B2 - 樹脂組成物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール(以下、AA化PVAと略記する)を主成分とする樹脂組成物に関し、更に詳しくは安定性に優れた水溶液が得られ、また、該水溶液から得られる皮膜は耐水性に優れ、感熱記録用媒体やインクジェット記録用媒体に有用な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリビニルアルコール系樹脂は、分散剤、接着剤、糊剤、フィルム、紙加工剤等に利用されており、かかるポリビニルアルコール系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入したAA化PVAも接着剤や紙加工剤用途等において多用されている。
そして、かかるAA化PVAは、通常は架橋剤と併用されて、その架橋反応により耐水性等の特性を発揮しているのが現状であり、感熱記録用媒体の保護層等としても有効活用されている。
例えば、特開昭59−106995号公報には、AA化PVAを保護層とした感熱記録体が記載され、硬化剤としてアルコキシチタンが例示されており、また、特開平7−257014号公報にもポリビニルアルコールと特定のアルコキシチタンを用いたインクジェット記録媒体が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が上記の特開昭59−106995号公報に開示のアルコキシチタンについて、詳細に検討を行ったところ、AA化PVAと共に水溶液を調製する際に、該アルコキシチタンを添加すると急激なゲル化が進んで、流動性のある水溶液が得られないことが判明し、また、特開平7−257014号公報に開示のアルコキシチタンをAA化PVAと共に用いて水溶液を調製した場合、良好な水溶液は得られるものの、この水溶液から得られた皮膜は十分な耐水性が得られないことが判明した。
【0004】
そこで、本発明者は、かかる事情に鑑みて鋭意検討した結果、AA化PVA(A)および下記一般式(1)または(2)で示されるチタン化合物(B)および酸を含有し、10%水溶液としたときのpHが6.0以下(20℃)以下である樹脂組成物が、安定性に優れた水溶液を得ることができ、かつこの水溶液から得た皮膜は十分な耐水性を有することを見出して本発明を完成するに至った。
【0005】
また、本発明においては、かかるチタン化合物(B)がイソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートであるとき、本発明の作用効果を顕著に得ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いるAA化PVA(A)は、後述するようにポリビニルアルコールにジケテンを反応させたり、ポリビニルアルコールとアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換したりして、ポリビニルアルコールにアセト酢酸エステル基を導入させたもので、かかるポリビニルアルコールとしては、一般的にはポリ酢酸ビニルの低級アルコール溶液をアルカリや酸などのケン化触媒によってケン化したケン化物又はその誘導体が用いられ、更には酢酸ビニルと共重合性を有する単量体と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物等を用いることもできる。
【0007】
かかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、ビニレンカーボネート類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0008】
かかるAA化PVA(A)の原料となるポリビニルアルコールは、特に限定されないが、ケン化度は70モル%以上(さらには75モル%以上、特には80モル%以上)が好ましく、かかるケン化度が70モル%未満では、水溶性に乏しくて好ましくない。
また、該ポリビニルアルコールの平均重合度(JIS K6726に準拠)も特に限定されないが、100〜5000(さらには200〜4500、特には300〜4000)が好ましく、かかる平均重合度が100未満では、得られる皮膜の耐水性が十分ではなく、逆に5000を越えると水溶液にしたときの粘度が高くなりすぎて作業性等が低下して好ましくない。
【0009】
AA化PVA(A)を得るには、上記の如きポリビニルアルコールとジケテンを反応させる方法、ポリビニルアルコールとアセト酢酸エステルを反応させエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルを共重合させる方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVAが得られる点から、ポリビニルアルコール(粉末)とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましい。ポリビニルアルコールとジケテンを反応させる方法としては、ポリビニルアルコールとガス状或いは液状のジケテンを直接反応させても良いし、有機酸をポリビニルアルコールに予め吸着吸蔵せしめた後、不活性ガス雰囲気下で液状またはガス状のジケテンを噴霧、反応するか、またはポリビニルアルコールに有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応する等の方法が用いられる。
【0010】
上記の反応を実施する際の反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置であれば十分である。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置を用いることができる
【0011】
かくして得られたAA化PVA(A)中のアセト酢酸エステル基の含有量は特に限定はされないが、0.1〜40モル%(さらには0.3〜30モル%、特には0.5〜20モル%)が好ましく、かかる含有量が0.1モル%未満では、得られる皮膜の耐水性が低下したり、逆に40モル%を越えると水溶性が乏しくなったり、水溶液の安定性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0012】
本発明に用いられるチタン化合物(B)は、下記一般式(1)または(2)で示されるものである。
(R−O)nTi(O−X−NH−Y−Z)4-n ・・・(1)
(R−O)nTi〔O−X−N−(Y−Z)2〕4-n ・・・(2)
[但し、Rは炭素数が1〜6のアルキル基、X,Yは炭素数が1〜6のアルキレン基、Zは水酸基またはアミノ基、nは0または1をそれぞれ表す]
【0013】
上記のチタン化合物(B)としては、具体的にテトラキス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラキス(ビス(N−アミノエチル)−アミノエチル)チタネート、チタンテトラキス(N−ヒドロキシエチル−アミノエチル)チタネート、チタンテトラキス(ビス(N−ヒドロキシエチル)−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ビス(N−アミノエチル)−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(N−ヒドロキシエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ビス(N−ヒドロキシエチル)−アミノエチル)チタネート、n−ブチルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、n−ブチルイソプロピルトリス(ビス(N−アミノエチル)−アミノエチル)チタネート、n−ブチルイソプロピルトリス(N−ヒドロキシエチル−アミノエチル)チタネート、n−ブチルイソプロピルトリス(ビス(N−ヒドロキシエチル)−アミノエチル)チタネート等を挙げることができ、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートが好適に用いられる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上記の如きAA化PVA(A)およびチタン化合物(B)を含有してなるもので、その含有割合は特に限定されないが、AA化PVA(A)とチタン化合物(B)の含有割合(A/B)が、100/0.1〜100/30(さらには100/0.3〜100/25、特は100/0.5〜100/20)(重量比)であることが好ましく、かかる含有割合の範囲を外れるときは、得られる皮膜の耐水性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0015】
かくして、AA化PVA(A)およびチタン化合物(B)を含有する本発明の樹脂組成物が得られるのであるが、かかる樹脂組成物は、得られる水溶液が安定性に優れ、また、該水溶液から得られた皮膜は耐水性に優れるもので、分散剤、接着剤、糊剤、乳化剤、フィルム、繊維、紙加工剤、各種コーティング用途等に有用であり、特に感熱記録用媒体の感熱発色層や保護層、あるいはインクジェット記録用媒体のインク受理層や保護層に含有させることが好ましく、かかる用途について、さらに説明する。
【0016】
感熱記録用媒体については、上記の本発明の樹脂組成物を含有した組成物層が、基材に直接或いは他の層を介して積層されて感熱記録用媒体となるのであるが、かかる組成物層としては、▲1▼感熱発色層や▲2▼保護層等を挙げることができ、さらには、該組成物層を▲1▼及び▲2▼に同時に適用することも可能である。
【0017】
以下、これらの各層について詳細に説明する。
▲1▼感熱発色層の場合は、上記のAA化PVA(A)およびチタン化合物(B)にさらに発色性物質と顕色剤を配合した水溶液を得た後、該水溶液を基材に塗工すればよい。このときのAA化PVA(A)の配合量は、発色性物質及び顕色剤の総量に対して10〜200重量%が適当である。該水溶液の固形分濃度は作業性を考慮して10〜40重量%の範囲から選ばれる。
【0018】
上記の発色性物質の例としては、3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド[クリスタルバイオレットラクトン]、3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、 3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、3−ジメチルアミノ−6−メトキシフルオラン、7−アセトアミノ−3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3 −ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3,6−ビス−β−メトキシエトキシフルオラン、3,6−ビス−β−シアノエトキシフルオラン等のトリフェニルメタン系染料のロイコ体が挙げられる。
【0019】
また、顕色剤としては、前記発色性物質と加熱時反応して発色せしめるもので常温以上好ましくは70℃以上で液化もしくは気化するもの、例えばフェノール、P−メチルフェノール、P−ターシャリーブチルフェノール、P−フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール[ビスフェノールA]、4,4’−セカンダリーブチリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−(1−メチル−n−ヘキシリデン)ジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジカテコール、4,4’−ペンジリデンジフェノール、4,4−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、フェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、サリチル酸、3−フェニルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、1−オキシ−2−ナフトエ酸、m−オキシ安息香酸、4−オキシフタル酸、没食子酸などが挙げられるが、発色性物質、顕色剤ともにこれらに限定されるわけではない。
【0020】
水溶液を基材に塗工するにあたっては、ロールコーター法、エヤードクター法、ブレードコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、ゲートロール法等公知の任意の方法が採用される。該水溶液の塗工量は、乾燥重量で0.1〜20g/m2(さらには0.5〜15g/m2、特には1〜10g/m2)程度なるようにするのが好ましい。
【0021】
次に、▲2▼保護層について説明する。
▲2▼保護層とは、発色性物質、顕色剤、バインダー(例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類、ラテックス類等)より構成された感熱発色層の上に形成(塗工)される層のことで、本発明の薄膜状層を形成させればよい。
【0022】
該塗工に際しては、上記で説明したAA化PVA(A)およびチタン化合物(B)を含有し、かつpH調整された水溶液を用いればよく、このときの塗工量は、AA化PVA(A)の乾燥重量で0.5〜5g/m2程度になるようにすることが好ましい。塗工後は風乾あるいは軽度の加熱処理を行なうことによって目的とする塗工層が形成される。
該塗工に当たってはロールコーター法、エヤードクター法、ブレードコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、ゲートロール法等任意の手段で実施可能である。
【0023】
また、該塗工層には各種の公知の助剤を混合したり、あるいは該塗工液の塗工前後にかかる助剤を塗工する等、任意の補助的操作が可能で、かかる助剤としては、高級脂肪酸アミドなどの熱可塑性物質や炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの填料、分散剤等公知の添加剤を使用することも任意である。
【0024】
なお、上記の感熱記録用媒体に用いられる基材としては特に制限はなく、紙(マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、上・中・下級紙、新聞用紙、剥離紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、グラシン紙など)やプラスチックフィルム(ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム及びこれらの積層体等)などを使用することができる。
【0025】
また、得られる感熱記録用媒体としては、基材/アンダーコート層/感熱発色層/保護層、基材/アンダーコート層/感熱発色層、基材/感熱発色層/保護層或いは基材/感熱発色層等の層構成とすることが可能である。
【0026】
次に、インクジェット記録用媒体について説明する。
インクジェット記録用媒体に本発明の樹脂組成物を適用するにあたっては、インクジェット用記録媒体の基材中または基材表面に本発明の樹脂組成物を含有する層を形成すればよく、以下に具体的に説明する。
【0027】
まず、基材としては、例えばポリエステル,ポリアミド,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリメチルメタクリレート,酢酸セルロース,ポリカーボネート,ポリイミド,セロファン,セルロイド等の樹脂のフィルム、シート、上質紙,中質紙,(セミ)グラシン紙,光沢紙,(樹脂)コート紙,合成紙等の紙類を挙げることができ、さらには、布、金属、木材等のフィルム、シートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の樹脂組成物を含有する層を形成させるにあたっては、上記の感熱記録用媒体の▲2▼保護層と同様の要領で基材表面に該樹脂組成物を含有する水溶液を塗工することにより、基材の表面あるいは基材に浸透して基材中に目的とする層を形成させることができる。このときの塗工量は、AA化PVA(A)の乾燥重量で、0.1〜20g/m2(さらには0.5〜15g/m2、特には1〜10g/m2)程度になるようにすることが好ましい。
【0029】
以上、感熱記録用媒体およびインクジェット記録用媒体への適用について説明したが、本発明の樹脂組成物は、これら以外にも、食品、飲料、薬品、医薬、電機部品、機械部品等の包装用途あるいは容器用途、また、暖房用パイプ用途、壁紙等の建築用内装材などにも有用で、さらには、塩ビレザー等に積層(コーティング)して家具や自動車用内装材等として利用することもできる。
【0030】
なお、本発明の樹脂組成物の10%水溶液はpHを6.0以下(さらには5.5以下、特には5.0以下)(20℃)に調整する。かかるpHが6.0を超えるときには、得られる皮膜に十分な耐水性が得られない傾向にあり好ましくない。
かかるpHを調整するにあたっては、特に制限はないが、通常は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸等の酸を添加して、pH6.0以下(20℃)にする。
【0031】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
なお、例中「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0032】
ケン化度99.2モル%、平均重合度1200、アセト酢酸エステル基5モル%含有AA化PVA(A)100部とイソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート〔味の素社製『プレンアクトKR−44』〕(B)5部を混合して樹脂組成物を得た。
【0033】
得られた樹脂組成物の耐水性を調べるために、該樹脂組成物の10%水溶液を調製して(塩酸でpHを4.0に調整)、PETフィルム上に流して、23℃、50%RHの条件下で48時間放置後、110℃で5分間加熱処理を行って樹脂組成物のフィルムを作製し、かかるフィルムを80℃の熱水に1時間浸漬させてフィルムの溶出率(%)を測定した。なお、溶出率(%)の算出にあたっては、熱水浸漬前後のフィルムの重量(いずれもg)を求めて、{(浸漬前のフィルム重量−浸漬後のフィルム重量)/浸漬前のフィルム重量}×100により算出した。
【0034】
また、水溶液の安定性を調べるために、以下の評価を行った。
該樹脂組成物の10%水溶液を調製して(塩酸でpHを4.0に調整)、これを40℃の恒温器内に静置して、ゲル化して流動性がなくなるまでの日数を目視観察で調べた。
【0035】
また、下記の要領で感熱記録用媒体を作製して、その評価も行った。
まず、下記の水溶液(A〜C液)を用意した。
【0036】
【0037】
【0038】
上記のA液、B液を別々にサンドグラインダーで平均粒子径2μ程度になるまで粉砕し、その後A液、B液、炭酸カルシウム50部及びA液で使ったものと同一のポリビニルアルコール系樹脂の15%水溶液250部を混合して発色液を得た。
次いで、該発色液を坪量50g/m2の上質紙(基材)の上に乾燥後の塗工量が8g/m2になる様にして塗工し、乾燥させて発色層を形成した後、該層の上にディクソンコーターを用いてC液を乾燥後の塗工量が5g/m2になる様に塗工し、60℃で乾燥して感熱記録紙を得た。
得られた感熱記録紙の印字発色濃度、耐可塑剤性及び耐水性を以下の要領で評価した。
【0039】
(印字発色濃度)
熱傾斜試験機(東洋精機社製)によって120℃、2kg/cm2、5秒の条件下に印字発色させ、印字発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、RD−100R型、アンバーフィルター使用)にて測定。
【0040】
(耐可塑剤性)
バーコードを記録した感熱記録紙を軟質塩ビシートにはさみ300g/cm2の加重を加え40℃で24時間放置し、その後、バーコードスキャナーを用いて、その読みとり率(%)を測定した。
【0041】
(耐水性)
バーコードを記録した感熱記録紙を20℃の水道水に24時間浸漬し、その後、付着水をふき取って、バーコードスキャナーを用いて、その読みとり率(%)を測定した。
【0042】
また、下記の要領でインクジェット記録用媒体を作製して、その評価を行った。
まず、下記の水溶液(D液)を用意した。
【0043】
上記のD液をホモナイザーにて、5000rpmで5分間攪拌して塗工液を調製した。
次いで、該塗工液を坪量75g/m2の上質紙(基材)の上に乾燥後の塗工量が10g/m2になる様にして塗工し、乾燥させてインクジェット用記録シートを得た。
得られたインクジェット用記録シートの耐水性を以下の要領で評価した。
【0044】
(耐水性)
得られたインクジェット用記録シートにインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製『PM−770C』)で、印字後に、記録シートを20℃、65%RH雰囲気中で5分間放置後、印字面に水滴を垂らし、その上を指で擦った場合の印字部の状況を目視観察して、以下のように評価した。
○・・・印字面の壊れや剥がれ等が認められない
△・・・剥がれが若干認められるが、画像は保持されている
×・・・印字面が壊れ、基材から剥離してしまう
【0045】
実施例2
実施例1において、AA化PVA(A)として、ケン化度95.0モル%、平均重合度1700、アセト酢酸エステル基3モル%含有AA化PVAを用いた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0046】
実施例3
実施例1において、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(B)の混合量を3部に変えた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0047】
実施例4
実施例1において、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(B)に変えてイソプロピルトリス(ビス(N−ヒドロキシエチル)−アミノエチル)チタネート(B)を用いた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0048】
比較例1
実施例1において、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(B)に変えてビスイソプロピルビス(ビス(N−ヒドロキシエチル)アミノエチル)チタネート〔松本製薬社製『オクガチックスTC−400』〕を用いた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0049】
比較例2
実施例1において、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(B)に変えて、乳酸チタン〔松本製薬社製『オクガチックスTC−310』〕を用いた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に評価を行った。
【0050】
比較例3
実施例1において、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート(B)に変えて、チタンアセチルアセトナート〔松本製薬社製『オクガチックスTC−100』〕を用いた以外は同様に樹脂組成物を得て、同様に水溶液の調製を行ったが、水溶液がゲル化したため、以降の評価は行わなかった。
【0051】
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、耐水性に優れ、かつ水溶液の粘度安定性にも優れるため、食品、飲料、薬品、医薬、電機部品、機械部品等の包装用途あるいは容器用途、また、暖房用パイプ用途、壁紙等の建築用内装材などにも有用で、さらには、塩ビレザー等に積層(コーティング)して家具や自動車用内装材等として利用することができ、特に感熱用記録媒体の発色層や保護層、インクジェット記録用媒体のインク受理層や保護層に有用である。
Claims (5)
- アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール(A)および下記一般式(1)または(2)で示されるチタン化合物(B)および酸を含有し、10%水溶液としたときのpHが6.0以下(20℃)であることを特徴とする樹脂組成物。
(R−O)nTi(O−X−NH−Y−Z)4-n ・・・(1)
(R−O)nTi〔O−X−N−(Y−Z)2〕4-n ・・・(2)
[但し、Rは炭素数が1〜6のアルキル基、X,Yは炭素数が1〜6のアルキレン基、Zは水酸基またはアミノ基、nは0または1をそれぞれ表す] - アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール(A)と上記一般式(1)または(2)で示されるチタン化合物(B)の含有割合(A/B)が100/0.1〜100/30(重量比)であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 上記一般式(1)または(2)で示されるチタン化合物(B)がイソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 感熱発色層および/または保護層に請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物が含有されてなることを特徴とする感熱記録用媒体。
- インク受容層及び/または保護層に請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物が含有されてなることを特徴とするインクジェット記録用媒体。
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