JP3785253B2 - トレッド部材の製造方法及び空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はトレッド部材の製造方法及び空気入りタイヤの製造方法に係り、空気入りタイヤに用いるトレッド部材の製造方法及び空気入りタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、氷上及び雪上の性能を高めたタイヤとしてスタッドレスタイヤが使用されている。
【0003】
この種のスタッドレスタイヤのトレッドには、雪上性能を高めるために複数のブロックからなるブロックパターンが形成されている。
【0004】
氷上性能を高めるために、この種のスタッドレスタイヤのトレッドには、氷路面との摩擦力を得るために通常のタイヤと比較して柔軟なゴム材を使用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
氷上性能をより高めるために、トレッドのゴム材をより柔らかくすることも考えられるが、ブロック剛性の低下、耐摩耗性の低下等の問題が生じるので限度がある。また、サイプを多用することも考えられるが、偏摩耗やブロック剛性の低下につながるため、サイプの多用にも限界がある。
【0006】
他方、トレッド表面に比較的浅い細溝を多数形成した空気入りタイヤが提案されているが、摩耗によりこの細溝は消滅するため、細溝によるウエット性能及び氷上性能の向上は走行の初期段階にしか得られない。
【0007】
そこで、トレッドを性質の異なる層の積層構造、例えば、耐摩耗性の異なるゴム層をタイヤ幅方向に沿って積層した構造、またはゴム層と不織布をタイヤ幅方向に沿って積層した構造とすると、走行によって、耐摩耗性の低いゴム層を耐摩耗性の高いゴム層よりも低く、または不織布の層をゴム層よも低くして、トレッド表面に浅い細溝を形成、維持してウエット性能及び氷上性能を向上させることが考えられる。
【0008】
しかし、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドを形成するために、性質の異なる層を1層づつ積層することが考えられるが、極めて効率的でなく、製造コストが高く付く問題がある。また、空気入りタイヤのコストも当然高くなる問題がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドに用いるトレッド部材を効率的に製造することのできるトレッド部材の製造方法及び空気入りタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のトレッド部材の製造方法は、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材をドラム外周面で互いに貼り合わせながらドラム外周面に巻き付けてドラム軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を形成すること、を特徴としている。
【0011】
次に、請求項1に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項1に記載のトレッド部材の製造方法では、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材をドラム外周面で互いに貼り合わせながらドラム外周面に巻き付けてドラム軸方向に積層する。これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を効率的に製造することができる。
【0012】
請求項2に記載のトレッド部材の製造方法は、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成し、前記帯状積層シート部材をドラム外周面に巻き付けながらドラム軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を形成すること、を特徴としている。
【0013】
次に、請求項2に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項2に記載のトレッド部材の製造方法では、先ず、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成する。次に、帯状積層シート部材をドラム外周面に巻き付けながらドラム軸方向に積層する。これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を効率的に製造することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法において、前記ドラム外周面に半径方向外側に突出する外周方向に沿って延びる環状ガイドを設け、前記帯状シート部材の巻き始め端を前記環状ガイドの側面に貼り付けてから積層すること、を特徴としている。
【0015】
次に、請求項3に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項3に記載のトレッド部材の製造方法では、帯状シート部材の巻き始め端を環状ガイドの側面に貼り付けてから積層する。このため、柔軟な帯状シート部材であっても巻き始めから整然と積層することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のトレッド部材の製造方法において、前記環状ガイドの側面を前記ドラムの半径方向に対して傾斜させ、前記帯状シート部材を傾斜した前記側面と平行に積層すること、を特徴としている。
【0017】
次に、請求項4に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項4に記載のトレッド部材の製造方法では、帯状シート部材を、環状ガイドの傾斜した側面と平行に積層する。このため、帯状シート部材を垂直(帯状シート部材の幅方向がドラム半径方向)にして積層して得られたトレッド部材よりも薄いトレッド部材、即ち、帯状シート部材の幅寸法よりも小さな厚さ寸法とされたトレッド部材を得ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法において、前記複数種類の帯状シート部材をドラム外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回してガイド部を形成し、その後、前記ガイド部の側面から前記複数種類の帯状シート部材をドラム軸方向に積層すること、を特徴としている。
【0019】
次に、請求項5に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項5に記載のトレッド部材の製造方法では、複数種類の帯状シート部材をドラム外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回し、ある高さ(例えば、トレッドゲージと同じ寸法)のガイド部を形成する。その後、ガイド部の側面から複数種類の帯状シート部材をドラム軸方向に積層する。このため、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法において、巻き始めはドラム径方向に積層し、その後、積層方向を除々にドラム軸方向に変更すること、を特徴としている。
【0021】
次に、請求項6に記載のトレッド部材の製造方法の作用を説明する。
請求項6に記載のトレッド部材の製造方法では、巻き始めはドラム径方向に積層し、その後、積層方向を除々にドラム軸方向に変更することによりトレッド部材が形成される。このため、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法は、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面で互いに貼り合わせながら生タイヤケース外周面に巻き付けて生タイヤケース軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉の生トレッド部材を形成し、その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤを製造すること、を特徴としている。
【0023】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法では、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面で互いに貼り合わせながら生タイヤケース外周面に巻き付けて生タイヤケース軸方向に積層する。これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を効率的に形成することができる。その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤが得られる。
【0024】
請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法は、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成し、前記帯状積層シート部材を生タイヤケース外周面に巻き付けながら生タイヤケース軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉の生トレッド部材を形成し、その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤを製造すること、を特徴としている。
【0025】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法では、先ず、互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成する。次に、帯状積層シート部材を生タイヤケース外周面に巻き付けながら生タイヤケース軸方向に積層する。これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を効率的に形成することができる。その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤが得られる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記生タイヤケース外周面に半径方向外側に突出する外周方向に沿って延びる未加硫ゴム部材からなる環状ガイドを設け、前記帯状シート部材の巻き始め端を前記環状ガイドの側面に貼り付けてから積層すること、を特徴としている。
【0027】
次に、請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法では、帯状シート部材の巻き始め端を環状ガイドの側面に貼り付けてから積層する。このため、柔軟な帯状シート部材であっても巻き始めから整然と積層することが可能となる。また、環状ガイドは未加硫ゴム部材からなっているので、加硫を行うことによってトレッドゴムの一部となる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記環状ガイドの側面を前記生タイヤケースの半径方向に対して傾斜させ、前記帯状シート部材を傾斜した前記側面と平行に積層すること、を特徴としている。
【0029】
次に、請求項10に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項10に記載の空気入りタイヤの製造方法では、帯状シート部材を、環状ガイドの傾斜した側面と平行に積層する。このため、帯状シート部材を垂直(帯状シート部材の幅方向が空気入りタイヤ半径方向)にして積層して得られたトレッド部材よりも薄いトレッド部材、即ち、帯状シート部材の幅寸法よりも小さな厚さ寸法とされたトレッド部材を形成することができ、薄いトレッドを形成することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回してガイド部を形成し、その後、前記ガイド部の側面から前記複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース軸方向に積層すること、を特徴としている。
【0031】
次に、請求項11に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項11に記載の空気入りタイヤの製造方法では、複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回し、ある高さ(例えば、トレッドゲージと同じ寸法)のガイド部を形成する。その後、ガイド部の側面から複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース軸方向に積層する。このため、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法において、巻き始めは生タイヤケース径方向に積層し、その後、積層方向を除々に生タイヤケース軸方向に変更すること、を特徴としている。
【0033】
次に、請求項12に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
請求項12に記載の空気入りタイヤの製造方法では、巻き始めは生タイヤケース径方向に積層し、その後、積層方向を除々に生タイヤケース軸方向に変更することにより生タイヤケースにトレッド部材が形成される。このため、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる。
【0034】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図1乃至図5にしたがって説明する。
【0035】
本実施形態の空気入りタイヤ10は、一対のビードコア間にトロイド状をなして跨がるカーカスのクラウン部外周に補強層としてのベルトとトレッドとを順次配置したラジアル構造の空気入りタイヤである。なお、トレッド以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
【0036】
図1に示すように、トレッド12には、複数本の周方向溝14及びこの周方向溝14と交差する複数本の横溝16とによって複数のブロック18が形成されている。
【0037】
トレッド12は、直接路面に接地する上層のキャップ部12Aと、このキャップ部12Aのタイヤ内方に隣接して配置される下層のベース部12Bとから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造とされている。
【0038】
図2に示すように、キャップ部12Aは、耐摩耗性の低いゴム層20と耐摩耗性の高いゴム層22とがタイヤ幅方向(矢印W方向)に交互に積層されている。
【0039】
次に、図3にしたがってトレッド製造装置23を説明する。
図3に示すように、トレッド製造装置23は、加硫することにより高耐摩耗性ゴムとなる第1の未加硫ゴム組成物からなる第1の帯状シート部材24をロール状に巻いた軸25と、加硫することにより高耐摩耗性ゴムよりも耐摩耗性の低い低耐摩耗性ゴムとなる第2の未加硫ゴム組成物からなる第2の帯状シート部材26をロール状に巻いた軸27とを備えたベース28を備えている。
【0040】
ベース28は、平行に配置された一対のガイドシャフト30にスライド自在に支持されている。ベース28には、モータ32で回転する送りねじ34が螺合しており、送りねじ34を回転させることによりベース28を移動することができる。
【0041】
ベース28の側面からは、矢印A方向側に支持板36が突出しており、この支持板36には、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを貼り合わせる一対の挟持ローラ38が回転自在に配設されている。
【0042】
トレッド製造装置23の矢印A方向側には、タイヤ成形ドラム40が配置されている。
【0043】
次に、後にキャップ部12Aとなるトレッド部材の製造手順を説明する。
先ず、タイヤ成形ドラム40に形成された生タイヤケース42の外周面の所定位置(後にタイヤのショルダー部となる付近)に、図3及び図4に示すように、生タイヤケース42の外周面に断面三角形状の未加硫ゴム部材を巻き付け、外周面に対して90度とされた側面44Aを有した環状ガイド44を形成しておく。
【0044】
次に、トレッド製造装置23の軸25及び軸27から第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26と引き出して挟持ローラ38の間を通過させ、両者を貼り合わせて帯状積層シート部材46とする。
【0045】
次に、タイヤ成形ドラム40を矢印B方向に回転させ、帯状積層シート部材46の先端を環状ガイド44の側面44Aにローラ等を用いて押しつけながら生タイヤケース42の外周面に1周巻き付け、以後、トレッド製造装置23のベース28を矢印R方向に移動させながら帯状積層シート部材46を矢印R方向に向かって生タイヤケース42の外周面に積層してゆく。これによって、一定厚さの厚肉のトレッド部材48が生タイヤケース42の外周面に整然と形成される。
【0046】
その後、トレッド部材48の形成された生タイヤケース42を、従来通りモールドに装填して加硫することにより空気入りタイヤが形成される。
【0047】
これにより、加硫された空気入りタイヤのトレッド12に、図2に示すような耐摩耗性の低いゴム層20と耐摩耗性の高いゴム層22とがタイヤ幅方向に交互に積層されたキャップ部12Aが得られる。
【0048】
走行によりトレッド12の表面が摩耗すると、耐摩耗性の低いゴム層20が耐摩耗性の高いゴム層22よりも摩耗が進展するので、図5に示すように、耐摩耗性の高いゴム層22部分に比較して耐摩耗性の低いゴム層20部分が低くなり、トレッド12表面に比較的深さが浅く細い溝58が多数出現する。このようにして出現する溝58はタイヤ周方向に沿って延びた形状となり、複数出現した溝58により排水性が得られ、ウエット性能及び氷上性能が向上する。
【0049】
なお、摩耗初期のみならず、摩耗が進行してもこの状態を維持することが可能であるため、ウエット性能及び氷上性能の向上を継続的に図ることができる。
【0050】
また、横方向の摩擦係数が向上するため、コーナリング時の横滑り効果も得られる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を図6にしたがって説明する。
【0051】
前記第1の実施形態では、帯状積層シート部材46を生タイヤケース42の外周面に対して立てた状態(帯状積層シート部材46の幅方向を生タイヤケース42の半径方向と平行にした状態)で積層したが、図6に示すように、生タイヤケース42の外周面に傾斜した側面60Aを有する環状ガイド60を設け、この傾斜した側面60Aに帯状積層シート部材46を押しつけながら生タイヤケース42の外周面に積層しても良い。これによって、同じ幅の帯状積層シート部材46を用いても、立てた状態で積層するよりも薄いトレッド部材48を形成することができる。
【0052】
なお、図7に示すように、環状ガイド60の両方の側面60Aから各々生タイヤケース42の外周面両端部に向けて帯状積層シート部材46を積層しても良い。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を図8にしたがって説明する。
【0053】
前記第1及び第2の実施形態では、帯状積層シート部材46を生タイヤケース42の外周面に直接巻き付けることによってトレッド部材48を形成したが、本実施形態では、帯状積層シート部材46を金属ドラム等の円筒部材の外周面に巻き付けてトレッド部材48を形成する。
【0054】
その後、トレッド部材48の一部に切り込みを入れてトレッド部材48を金属ドラム等から剥がし、図8に示すように生タイヤケース42の外周面に巻き付ける。
【0055】
なお、前記実施形態では、軸25に第1の帯状シート部材24をセットし、軸27に第2の帯状シート部材26をセットし、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを一枚ずつ貼り合わせて帯状積層シート部材46を形成し、これを生タイヤケース42または金属ドラムの外周面に巻き付けたが、帯状積層シート部材46を軸25及び軸27にセットし、図9に示すように、2枚の帯状積層シート部材46を貼り合わせながら生タイヤケース42または金属ドラムの外周にトレッド部材48を形成しても良い。これにより、トレッド部材48の生産性が向上する。なお、帯状積層シート部材46をセットする軸の数を更に増やせば、さらにトレッド部材48の生産性を向上することができる。
【0056】
また、前記実施形態では、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを貼り合わせて帯状積層シート部材46を形成し、この帯状積層シート部材46を生タイヤケース42または金属ドラムの外周面に巻き付けてトレッド部材48を形成したが、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを生タイヤケース42または金属ドラムの外周面に巻き付ける際に貼り合わすようにしても良い。
【0057】
なお、加硫することによって通常の発泡していないゴムとなる第1の未加硫ゴム組成物からなる第1の帯状シート部材24と、加硫することにより発泡ゴムとなる第2の未加硫ゴム組成物からなる第2の帯状シート部材26と、を用いてトレッド部材48を形成しても良い。この第2の未加硫ゴム組成物は、通常のゴム組成物の他に周知のように発泡剤(及び発泡助剤)が含まれており、加硫を行うと、ゴム中にガスが発生して無数の独立気泡を有した発泡ゴムとなる。このトレッド部材48が加硫されると、通常の発泡していないゴムからなるゴム層と、発泡ゴムからなる発泡ゴム層とが交互に積層された構造のトレッド部材48が得られる。発泡ゴムは、発泡していないゴムと比較して耐摩耗性が低いため、走行によりトレッドが摩耗すると、発泡ゴム層が発泡していないゴム層よりも低くなり、溝が形成される。
【0058】
また、上記実施形態では、加硫することにより高耐摩耗性ゴムとなる第1の未加硫ゴム組成物からなる第1の帯状シート部材24と、加硫することにより高耐摩耗性ゴムよりも耐摩耗性の低い低耐摩耗性ゴムとなる第2の未加硫ゴム組成物からなる第2の帯状シート部材26とを貼り合わせた積層シート部材46を用いてトレッド部材48を形成したが、本発明はこれに限らず、ゴム以外の材料からなり耐摩耗性の高いゴム層22よりも耐摩耗性の低い第3の帯状シート部材と、第1の帯状シート部材24とを互いに張り合わせた積層シート部材46を用いてトレッド部材48形成しても良い。
【0059】
また、積層シート部材46は、場合によっては耐摩耗性の異なる層を3層以上積層したものでも良い。
【0060】
さらに、未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム帯状シート部材と、この未加硫ゴム組成物を加硫して得られた加硫済みゴム組成物よりも強度の低い低強度帯状シート部材と、を用いてトレッド部材48を形成しても良い。このトレッド部材48からなるトレッドを備えた空気入りタイヤを走行させると(または、表面を適度に荒らした回転ドラムに押し当てて回転させても良い。)、トレッドが繰り返し変形する。トレッドが繰り返し変形すると、低強度帯状シート部材からなる層が破壊されて踏面側から剥離し、低強度帯状シート部材からなる層がゴム層よりも低くなり、溝が形成される。
【0061】
ゴム層のゴムよりも強度の低い低強度帯状シート部材としては、例えば、不織布が好ましい。
【0062】
不織布は、引張、圧縮、剪断等に対して異方性が小さいことが好ましい。
不織布を構成するフィラメント繊維の材質としては、綿、レーヨン、セルロースなどの天然高分子繊維、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、芳香族ポリアミドなどの合成高分子繊維、及びカーボン繊維、ガラス繊維、スチールワイヤのうちから選択した一種又は複数種の繊維を混合することが出来るが他の材質の繊維であっても良い。
【0063】
不織布に適用する繊維の直径又は最大径は、0.1〜100μmの範囲が好ましく、断面形状は円状のもの、又は円と異なる断面形状のもの、中空部を有するものを用いることが出来る。さらに、異なる材質を内層と外層に配置した芯鞘構造、或いは米字形、花弁形、層状形等の複合繊維も用いることができる。
【0064】
また、不織布に使用する繊維の長さは、8mm以上が好ましい。
トレッドが不織布の層を有する場合、ゴム層と不織布の層とが交互に積層されている部分の不織布の層の厚さは、0.05mm〜2.0mmが好ましい。したがって、積層シート部材に用いる不織布の厚さは0.025〜1.0mmの範囲が好ましく(不織布の厚さは20g/cm2 の加圧下で測定した)、目付(1m2 当たりの重量)は、5〜150gの範囲にあるのが好ましい。
【0065】
また、繊維自身は、内層、外層を異なる素材とする2層構造の繊維も不織布の材料として使用することができる。
【0066】
不織布の製法としては、カーディング法、抄紙法、エアレイ法、メルトブロー、スパンボンド法などがあり、これらの製法によってウェブを作製する。メルトブロー、スパンボンド法以外のウェブでの繊維の結合方法として、熱融着、バインダによる方法、水流または針の力で繊維を交絡させる水流絡合法、ニードルパンチ法を好適に利用することができる。とりわけ、水流または針で繊維を交絡させる水流絡合法、ニードルパンチ法およびメルトブロー、スパンボンド法により得られた不織布が好適である。
【0067】
低強度帯状シート部材は不織布以外であっても良く、具体例としては、紙(ボール紙等も含む)、等を上げることができるが、これら以外であっても良い。
【0068】
また、未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム帯状シート部材と、液体によって溶解する材料からなる溶解性帯状シート部材と、を用いてトレッド部材48を形成しても良い。このトレッド部材48を用いて形成されたトレッドは、ゴム層と、溶解性帯状シート部材からなる層(以後、溶解層という)と、が交互に積層された部分を有する。
【0069】
溶解層に液体を付与すると、付与された液体によって溶解層が溶解し、ゴム層とゴム層との間に溝が形成される。なお、本発明によれば溶解層を完全に除去することができる。
【0070】
なお、溶解層が、水によって溶解する材質からなる溶解性帯状シート部材で形成すると、路面の水によって溶解層が溶けるので、ウエット路面や氷路面を走行したときに水によって溝を形成することができ。
【0071】
液体は、溶解層を溶かすことのできるものであれば水以外であっても良く、溶解層も水以外の液体で溶けるような材質であっても良い。
【0072】
なお、水溶性の繊維からなる溶解性帯状シート部材を用いても良い。溶解層が水溶性の繊維からなる繊維層になると、水分を吸収し易く、素早く溶ける。
【0073】
溶解性帯状シート部材の具体例としては、水溶性繊維からなる不織布を用いることができる。
【0074】
水溶性繊維としては、ビニルアルコールユニットが50モル%以上、平均重合度が100〜3000のケン化度80%未満のポリビニルアルコール系ポリマーを原料とし、紡出後の繊維に対してホルマール化・アセタール化等の耐水性を付与する処理を行っていない繊維を用いることができる。
【0075】
ビニルアルコールユニット及び酢酸ビニルユニット以外のユニットとしては、エチレン、アリルアルコール、イタコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のポリビニルアルコールの結晶性を阻害するユニットが好ましい。
【0076】
次に、水溶性繊維の製造方法を簡単に説明する。
先ず、ビニルアルコールユニットが75モル%、酢酸ビニルユニットが25モル%からなる平均重合度が500のケン化度75モル%のポリビニルアルコール系ポリマーとジメチルスルフォキド(DMSO)を混合し、窒素置換後減圧下にて十分に脱泡を行い、45%のジメチルスルフォキド(DMSO)溶液を作製する。
【0077】
次に、この紡糸原液を孔径φ0.15mmの単孔ノズルより、2°Cのアセトン/DMSO(重量比:85/15)の混合溶液に湿式紡糸する。
【0078】
その後、アセトン/DMSO(重量比:95/5)の混合溶液中で4.5倍の延伸を行った後、アセトン中で十分にDMSOを除去し、80°Cで乾燥を行うことでポリビニルアルコール系繊維が得られる。なお、このポリビニルアルコール系繊維は、10°Cの水で溶解するものである。
【0079】
なお、溶解性帯状シート部材としては、水溶性繊維からなる不織布以外であっても良く、例えば、水溶性繊維の材質をフィルム状に形成したもの、オブラート等を上げることができるが、これら以外であっても良い。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を図10にしたがって説明する。
【0080】
本実施形態では、図10に示すように、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを生タイヤケース42の外周面の所定位置にて複数周巻回して貼り合わせ、例えば、トレッドゲージと同じ寸法のガイド部62を形成する。その後、ガイド部62の側面から第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを貼り合わせながら生タイヤケース軸方向(矢印R方向)に積層することにより生タイヤケース42にトレッド部材48が形成される。
【0081】
なお、同様に、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを金属ドラム等の円筒部材の外周面に巻き付けてトレッド部材48を形成し、これを剥がして生タイヤケース42の外周面に巻き付けても良い。
【0082】
また、本実施形態においても、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを貼り合わせて帯状積層シート部材46を形成し、その帯状積層シート部材46を生タイヤケース42または金属ドラムの外周面に積層しても良い。[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態を図11にしたがって説明する。
【0083】
本実施形態では、図11に示すように、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26との巻き始め(矢印L方向側)は生タイヤケース径方向に積層し、積層方向を除々に生タイヤケース軸方向(矢印R方向)に変更することにより生タイヤケース42にトレッド部材48が形成される。
【0084】
なお、同様に、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを金属ドラム等の円筒部材の外周面に巻き付けてトレッド部材48を形成し、これを剥がして生タイヤケース42の外周面に巻き付けても良い。
【0085】
また、本実施形態においても、第1の帯状シート部材24と第2の帯状シート部材26とを貼り合わせて帯状積層シート部材46を形成し、その帯状積層シート部材46を生タイヤケース42または金属ドラムの外周面に積層しても良い。
【0086】
なお、第4の実施形態及び第5の実施形態のように積層方向を変更する場合、(1)トレッド製造装置23のベース28の送り速度(モータ32の回転速度)を制御する、(2)生タイヤケース42の形状を考慮しながらトレッド製造装置23のベース28の送り速度を制御する、(3)挟持ローラ38の配設された支持板36をベース28に対して回転可能に設けたり、タイヤ成形ドラム40を回転(図3の矢印B方向とは異なる方向)できるように設け、支持板36とタイヤ成形ドラム40(生タイヤケース42)との相対角度を考慮しながらベース28の送り速度を制御する、等により積層方向を変更することができる。また、挟持ローラ38の他に、帯状積層シート部材46を捩じって向きを変える挟持ローラを別途設けても良い。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載のトレッド部材の製造方法によれば、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドに用いるトレッド部材を効率的に製造できる、という優れた効果を有する。
【0088】
請求項2に記載のトレッド部材の製造方法によれば、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドに用いるトレッド部材を効率的に製造できる、という優れた効果を有する。
【0089】
請求項3に記載のトレッド部材の製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても巻き始めから整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0090】
請求項4に記載のトレッド部材の製造方法によれば、帯状シート部材の幅寸法よりも小さな厚さ寸法とされたトレッド部材を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0091】
請求項5に記載のトレッド部材の製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0092】
請求項6に記載のトレッド部材の製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0093】
請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法によれば、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドを備えた空気入りタイヤを効率的に製造できる、という優れた効果を有する。
【0094】
請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法によれば、性質の異なる層の積層構造とされたトレッドを備えた空気入りタイヤを効率的に製造できる、という優れた効果を有する。
【0095】
請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても巻き始めから整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0096】
請求項10に記載の空気入りタイヤの製造方法によれば、帯状シート部材の幅寸法よりも小さな厚さ寸法とされたトレッド部材を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0097】
請求項11に記載のトレッド部材の製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0098】
請求項12に記載のトレッド部材の製造方法によれば、柔軟な帯状シート部材であっても整然と積層することが可能となる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】トレッドの断面図である。
【図2】図1に示すトレッドのタイヤ幅方向に沿った拡大断面図である。
【図3】トレッド製造装置の斜視図である。
【図4】生タイヤケース上に形成されたトレッド部材の断面図である。
【図5】摩耗後のトレッドの拡大断面図である。
【図6】帯状積層シート部材を斜めに積層して得られたトレッド部材の断面図である。
【図7】帯状積層シート部材を両方向に積層して得られたトレッド部材の断面図である。
【図8】予め金属ドラム等で形成したトレッド部材を生タイヤケースに貼り付ける所を示した説明図である。
【図9】2枚の帯状積層シート部材を貼り合わせる所を示した説明図である。
【図10】他の方法によって形成されたトレッド部材の断面図である。
【図11】更に他の方法によって形成されたトレッド部材の断面図である。
【符号の説明】
12 トレッド
24 第1の帯状シート部材
26 第2の帯状シート部材
42 生タイヤケース
44 環状ガイド
44A 側面
46 帯状積層シート部材
48 トレッド部材
60 環状ガイド
60A 側面
62 ガイド部
Claims (12)
- 互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材をドラム外周面で互いに貼り合わせながらドラム外周面に巻き付けてドラム軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を形成すること、を特徴とするトレッド部材の製造方法。
- 互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成し、前記帯状積層シート部材をドラム外周面に巻き付けながらドラム軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉のトレッド部材を形成すること、を特徴とするトレッド部材の製造方法。
- 前記ドラム外周面に半径方向外側に突出する外周方向に沿って延びる環状ガイドを設け、前記帯状シート部材の巻き始め端を前記環状ガイドの側面に貼り付けてから積層すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法。
- 前記環状ガイドの側面を前記ドラムの半径方向に対して傾斜させ、前記帯状シート部材を傾斜した前記側面と平行に積層すること、を特徴とする請求項3に記載のトレッド部材の製造方法。
- 前記複数種類の帯状シート部材をドラム外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回してガイド部を形成し、その後、前記ガイド部の側面から前記複数種類の帯状シート部材をドラム軸方向に積層すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法。
- 巻き始めはドラム径方向に積層し、その後、積層方向を除々にドラム軸方向に変更すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッド部材の製造方法。
- 互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面で互いに貼り合わせながら生タイヤケース外周面に巻き付けて生タイヤケース軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉の生トレッド部材を形成し、その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤを製造すること、を特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
- 互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材を互いに重ね合わせて帯状積層シート部材を形成し、前記帯状積層シート部材を生タイヤケース外周面に巻き付けながら生タイヤケース軸方向に積層し、これによって互いに性質の異なる複数種類の帯状シート部材の積層構造とされた厚肉の生トレッド部材を形成し、その後、生トレッド部材の形成された生タイヤケースをモールドで加硫することによって空気入りタイヤを製造すること、を特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
- 前記生タイヤケース外周面に半径方向外側に突出する外周方向に沿って延びる未加硫ゴム部材からなる環状ガイドを設け、前記帯状シート部材の巻き始め端を前記環状ガイドの側面に貼り付けてから積層すること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記環状ガイドの側面を前記生タイヤケースの半径方向に対して傾斜させ、前記帯状シート部材を傾斜した前記側面と平行に積層すること、を特徴とする請求項9に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース外周面の所定位置にて少なくとも1周以上巻回してガイド部を形成し、その後、前記ガイド部の側面から前記複数種類の帯状シート部材を生タイヤケース軸方向に積層すること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 巻き始めは生タイヤケース径方向に積層し、その後、積層方向を除々に生タイヤケース軸方向に変更すること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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