JP3848775B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、操縦安定性を十分に確保しながら、高速耐久性及び生産性を向上することを可能にする空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気入りラジアルタイヤでは、図5に示すように、カーカス層6が一方のビード部からトレッド部3及びサイド部4を経て他方のビード部にわたって装架されており、ビード部においてカーカス層6の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。トレッド部3におけるカーカス層6の外側には、スチールコード等の補強コードからなる2層構造のベルト層7がタイヤ1周にわたって環状に配置されている。ベルト層7において、補強コードはタイヤ周方向EE’に対して傾斜し、かつ層間で互いに交差するようになっている。
【0003】
上述のような空気入りラジアルタイヤのベルト層を形成する場合は、予め引き揃えられた複数本のスチールコードをカレンダー工程に掛けて未加硫ゴムをゴム引きして帯状のシート材にし、このゴム引きシート材をタイヤ周方向に対するコード角度が10°〜40°になるようにベルト相当幅にバイアスに切断した後、それら裁断片をタイヤサイズに応じて複数枚をタイヤ周方向に必要な周長になるように継ぎ合わせている。
【0004】
しかるに、このようにして形成されるベルト層のタイヤ幅方向両端にはスチールコードの切断端面が存在し、タイヤ走行時にその切断端面に応力が集中してゴムと補強コードとの間にセパレーションが生ずることが避けられなかった。しかも、このセパレーションは走行速度が上がるほど顕著に顕れるため、切断端面の存在によって高速耐久性が劣るといった問題があった。また、ベルト層を形成するには、上述のようにカレンダー工程を経てシート材をバイアスに切断し、その裁断片を継ぎ合わせるなど多数の工程を必要とするため、これが生産性を低下させる要因になっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、操縦安定性を十分に確保しながら、高速耐久性及び生産性を向上することを可能にする空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外側にベルト層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、複数本の補強線材を長手方向に対して螺旋状に折り返してゴム中に埋設したストリップ材を、前記カーカス層の外周に連続的に複数回巻き付けてベルト層を形成し、該ベルト層のタイヤ幅方向の少なくとも一部の領域で前記ストリップ材を上下に積層すると共に、上層側のストリップ材をその下層側のストリップ材に沿うように延長させつつ、これらストリップ材を層間で互いにタイヤ幅方向にずらした配置にしたことを特徴とするものである。
【0007】
このように複数本の補強線材を長手方向に対して螺旋状に折り返してゴム中に埋設したストリップ材をカーカス層の外側にタイヤ周方向に連続的に複数回巻き付けてベルト層を形成したことにより、ベルト層のタイヤ幅方向両端部にスチールコードの切断端面が存在しないので、その両端部でゴムとコードとの間にセパレーションを生じにくくなって高速耐久性が向上する。また、従来のようにカレンダー工程や切断工程等の複雑かつ多数の工程を経てベルト層を形成する必要はなく、上記ストリップ材を連続的に巻き付けることによりベルト層が形成されるので、タイヤの生産性を高めることが可能である。
【0008】
しかも、上述のようにストリップ材の巻回によってベルト層を形成するとき、ベルト層のタイヤ幅方向の一部又は全幅においてストリップ材を上下に積層すると共に、層間で互いにタイヤ幅方向にずらした配置にすることにより、タイヤ断面において個々には細いストリップ材からなっていても面状に連続する部分をもつベルト層が形成されて横剛性を向上するので、コーナリングフォースを高めて操縦安定性を十分に確保することができる。このようにタイヤ幅方向に上下のストリップ材がオフセットした積層構造において、下層側のストリップ材の幅W0 に対する上層側のストリップ材の重複幅Wの比W/W0 で定義される重複率Pが0.2〜0.8となる部分が、ベルト層のタイヤ幅方向の60%以上の領域を占めるようにすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを例示するものである。図において、カーカス層6が一方のビード部からトレッド部3及びサイド部4を経て他方のビード部にわたって装架されており、ビード部においてカーカス層6の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。トレッド部3におけるカーカス層6の外側には、横断面偏平形状のストリップ材1からなるベルト層7が配置されている。
【0010】
図2に示すように、ストリップ材1は複数本の補強線材2を互いに平行にゴム中に埋設してなるテープを連続的に螺旋状に巻回して筒状体とし、この筒状体をその長手方向に沿って押し潰して偏平筒形の横断面にすることにより形成することができる。また、チューバー(押出装置)からゴムチューブを押し出しながら、その外周に複数本の補強線材2を螺旋状に巻き付け、このチューブをローラー等で押し潰すことによりストリップ材1を形成することも可能である。
【0011】
ベルト層7は、ストリップ材1をカーカス層6の外側にその偏平面を沿わせるようにベルト層幅に相当する幅にわたってタイヤ周方向EE’に向けて螺旋状に連続的に複数回巻き付けることにより形成されている。また、ベルト層7の中央部ではストリップ材1が1層になっているが、両端部ではストリップ材1が上下2層に積層されており、かつストリップ材1が層間で互いにタイヤ幅方向にずれるように配置されている。ストリップ材1はベルト層7の少なくとも一部で積層させるようにすればよく、必要であればベルト層7の全幅にわたって積層するようにしてもよい。また、ストリップ材1は3層以上に積層してもよい。
【0012】
図3に示すように、ベルト層7において下層側のストリップ材1の幅W0 に対する上層側のストリップ材1の重複幅Wの比W/W0 を重複率P(P=W/W0 )とすると、この重複率Pが0.2〜0.8の範囲となるようにストリップ材1を層間で互いにずした配置になっている。この重複率Pはベルト層7の全幅Tにわたって上記範囲を満足するようにしてもよいが、ベルト層7の全幅Tに対して60%以上の領域で上記範囲を満足することにより十分な操縦安定性を確保することが可能になる。
【0013】
図4において、ベルト層7の両端部において重複率Pを0.2〜0.8の範囲にした領域T1 ,T2 の総幅Fはベルト層7の全幅Tに対して60%以上になっている。即ち、F=T1 +T2 ≧0.6Tを満足している。また、重複率Pを0.2〜0.8の範囲にした領域T1 〜Tn をタイヤ幅方向に点在させることも可能であり、この場合は点在する領域T1 〜Tn の総幅Fをベルト層7の全幅Tに対して60%以上にする。即ち、F=ΣTi (i=1〜n)≧0.6Tを満足させる。
【0014】
但し、ストリップ材1はカーカス層6の外側に巻き付けられているため、重複率Pがタイヤ周方向に変化する場合がある。このため、上述のように0.2≦P≦0.8となる領域もタイヤ周方向で増減する場合がある。従って、上記ΣTi ≧0.6Tの関係を求める場合は、重複率Pをタイヤ周方向の少なくとも4箇所の断面において測定するようにし、各断面におけるΣTi の平均値を用いるようにする。
【0015】
上述のように複数本の補強線材2を長手方向に対して螺旋状に折り返してゴム中に埋設したストリップ材1をカーカス層6の外側にタイヤ周方向に連続的に複数回巻き付けてベルト層7を形成したことにより、ベルト層7はタイヤ幅方向両端にコードの切断端面を持たないので、その両端部でセパレーションを生じにくくなって高速耐久性が向上する。
【0016】
また、ベルト層7はストリップ材1を連続的に巻き付けることにより形成されており、従来のようにカレンダー工程や切断工程等の複雑かつ多数の工程を経てベルト層を形成する必要はないので、タイヤの生産性を高めることが可能である。なお、上記ストリップ材1の巻き付け構造によれば、タイヤ周方向にベルト層7のスプライス部は存在せず、連続的に巻き付けられたストリップ材1の始端と終端との切断端が存在するだけであるので、タイヤ周方向の剛性に大きな段差を生じることがないから、タイヤのユニフォミティーが高まり、乗心地性を向上することも可能である。
【0017】
また、上述のようにストリップ材1の巻回によってベルト層7を形成するに当たって、ベルト層7のタイヤ幅方向の一部又は全幅においてストリップ材1を上下に積層し、かつストリップ材1を層間で互いにタイヤ幅方向にずらした配置にすることにより、たとえ帯状のストリップ材1を使用しても面状に連続する部分をもつベルト層7が形成されて横剛性を向上するので、コーナリングフォースを高めて操縦安定性を十分に確保することができる。
【0018】
本発明において、下層側のストリップ材1の幅W0 に対する上層側のストリップ材1の重複幅Wの比W/W0 で定義される重複率Pが0.2〜0.8となる部分が、ベルト層7の全幅Tに対して60%以上の領域を占めるようにすることが好ましい。重複率Pが0.2〜0.8の範囲を外れるとストリップ材1の層間でのずれ量が不十分になる。そのため、重複率Pが0.2〜0.8となる部分がベルト層7の全幅Tに対して60%未満になると、コーナリングフォースが低下してしまう。
【0019】
ストリップ材1の幅W0 は、3〜60mm、更に好ましくは5〜30mmにするとよい。このストリップ材1の幅W0 が3mm未満では幅が狭すぎてタイヤの生産性が低下することになり、逆に60mmを超えるとストリップ材1の端末部の幅が長くなりすぎるのでタイヤユニフォミティーや高速耐久性が低下してしまう。また、ストリップ材1の長手方向に対する補強線材2の傾斜角度αは、5°〜45°にすることが好ましい。この補強線材2の傾斜角度αが5°未満であると操縦安定性が低下し、逆に45°を超えると高速耐久性が低下してしまう。
【0020】
ストリップ材1の補強線材2としては、有機繊維コードのほか、スチールコードやスチールフィラメントを使用することが可能である。有機繊維コードとしては、例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン2,6−ナフタレート繊維、ナイロン繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を撚り合わせた撚りコードを使用することができる。
【0021】
スチール製の補強線材2としては、単一のスチールフィラメントであってもよく、或いは複数本のスチールフィラメントが撚り合わされたスチールコードであってもよい。これらフィラメントとしては、素線径が0.10〜0.40mmのものを使用することが好ましい。
補強線材2にスチールフィラメントを使用する場合、ストリップ材1の横断面に存在するスチールフィラメントの本数を12〜1000本にすることが好ましく、より好ましくは15〜500本、さらに好ましくは20〜100本にするのがよい。このようにスチールフィラメントの本数を12本以上に多くすることにより、補強線材としての強度を保ちながら上記機能を備えたストリップ材1を形成することが可能になる。スチールフィラメントの本数の上限値は、ストリップ材1の幅W0 とフィラメントの太さによって決まるものである。
【0022】
一方、補強線材2にスチールコードを使用する場合、ストリップ材1の横断面に存在するスチールコードの本数を10〜200本にすることが好ましく、かつ各撚りコードにおけるスチールフィラメントの本数を2〜6本にすることが好ましい。このように撚りコードの本数を10本以上にすることにより、補強線材としての強度を保ちながら上記機能を備えたストリップ材1を形成することが可能になる。スチールコードの本数の上限値は、ストリップ材1の幅W0 とスチールコードの太さによって決まるものである。なお、各スチールコードにおけるコード構造は特に限定されることはないが、好ましくは1×nの撚り構造にするのがよい。
【0026】
【実施例】
タイヤサイズを195/60R14とし、ベルト層以外の他のタイヤ構造及び寸法を共通にし、ベルト構造だけを下記のように異ならせた従来タイヤ、比較タイヤ1,2及び本発明タイヤ1〜3を製作した。
従来タイヤ
ベルト構造:補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で互いに交差するように2枚のベルト層を配置することにより、両端部にコードの切断破面を有する2プライ構造にした。
【0027】
補強コード:芳香族ポリアミド繊維コード(1500d/2)
エンド数:51本/5cm、コード角度:25°
比較タイヤ1,2及び本発明タイヤ1〜3
ベルト構造:補強コードが螺旋状に折り返すように横断面偏平筒形のゴム中に埋設したストリップ材を、カーカス層の外周に連続的に複数回巻き付けて2層のベルト層を形成した。ストリップ材の層間の重複率Pを0.2〜0.8の範囲にした領域の総幅Fをベルト総幅Tに対して表1のように変化させた。
【0028】
補強コード:芳香族ポリアミド繊維コード(1500d/2)
ストリップ材の幅W0 :5mm
エンド数:51本/5cm、コード角度:25°
これら試験タイヤについて、下記の試験方法により、高速耐久性、コーナリングフォース、生産性を評価し、その結果を表1に示した。
【0029】
高速耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ14×51/2JJのリムに組み付け、空気圧280kPaとしてドラム径1707mmのドラム上でJATMA高速耐久性試験を行い、試験終了後に10km/hr毎に加速してタイヤが破壊したときの速度を求めた。評価結果は、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど高速耐久性が優れている。
【0030】
コーナリングフォース(CF):
各試験タイヤをリムサイズ14×51/2JJのリムに組み付け、空気圧200kPa、荷重2.94kN、速度10km/hの条件にてドラム径1707mmのドラム上で走行させ、スリップ角度を±1°としたときのコーナリングフォースを測定した。評価結果は、従来タイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほどコーナリングフォースが大きく、操縦安定性が優れている。
【0031】
生産性:
各試験タイヤについて、単位時間当たりに生産されるタイヤの本数を求め、従来タイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほど生産性が高いことを示す。
【0032】
【表1】
【0033】
この表1から明らかなように、本発明タイヤ1〜3は、いずれも操縦安定性を十分に確保しながら、従来タイヤに比べて高速耐久性及び生産性が共に優れていた。一方、比較タイヤ1,2は、従来タイヤに比べて操縦安定性が損なわれていた。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレッド部におけるカーカス層の外側にベルト層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、複数本の補強線材を長手方向に対して螺旋状に折り返してゴム中に埋設したストリップ材を、カーカス層の外周に連続的に複数回巻き付けてベルト層を形成し、該ベルト層のタイヤ幅方向の少なくとも一部の領域でストリップ材を上下に積層すると共に、上層側のストリップ材をその下層側のストリップ材に沿うように延長させつつ、これらストリップ材を層間で互いにタイヤ幅方向にずらした配置にしたことにより、操縦安定性を十分に確保しながら、高速耐久性及び生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを例示する一部切り欠き斜視断面図である。
【図2】 本発明においてベルト層を形成するストリップ材を例示する斜視図である。
【図3】 本発明におけるストリップ材の重複率を示す断面図である。
【図4】 本発明におけるストリップ材の重複状態を示す断面図である。
【図5】 従来の空気入りラジアルタイヤを例示する一部切り欠き斜視断面図である。
【符号の説明】
1 ストリップ材
2 補強線材
3 トレッド部
6 カーカス層
7 ベルト層
Claims (2)
- トレッド部におけるカーカス層の外側にベルト層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、複数本の補強線材を長手方向に対して螺旋状に折り返してゴム中に埋設したストリップ材を、前記カーカス層の外周に連続的に複数回巻き付けてベルト層を形成し、該ベルト層のタイヤ幅方向の少なくとも一部の領域で前記ストリップ材を上下に積層すると共に、上層側のストリップ材をその下層側のストリップ材に沿うように延長させつつ、これらストリップ材を層間で互いにタイヤ幅方向にずらした配置にした空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層のタイヤ幅方向の60%以上の領域で、下層側のストリップ材の幅W0 に対して上層側のストリップ材が重複する幅Wの比W/W0 で定義される重複率Pを0.2〜0.8の範囲にした請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
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