JP3783426B2 - ポリカーボネート化合物を含有するポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents

ポリカーボネート化合物を含有するポリ乳酸系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート化合物を含有するポリ乳酸系樹脂組成物に関する。とりわけ本発明は、新規なポリカーボネート化合物を改質剤として含有するポリ乳酸系樹脂組成物に関する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、実用上十分な強度と柔軟性および透明性を有し、包装材料や各種成形体などに利用される。
本明細書において、ポリ乳酸とは、乳酸単独重合体及び乳酸共重合体の双方を含む意味で用いる。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境保護の見地から、自然環境中で分解する生分解性樹脂及びその成型品が求められ、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂の研究開発が活発に行われている。特に、乳酸系ポリマーは融点が170〜180℃と十分に高く、しかも透明性に優れるため、包装材料や透明性を生かした成型品等の材料として大いに期待されている。しかし、ポリ乳酸はその剛直な分子構造のために、耐衝撃性が劣り脆いという欠点があり、これら乳酸系ポリマーの改良が望まれている。
【0003】
ところで、一般的にビスフェノールAを原料としたポリカーボネート樹脂は透明で、耐衝撃性や引張強度などの機械特性に優れ、工業用材料への利用を中心に汎用製品材料としても利用が増加している。しかし、他のプラスチック製品と同様に自然環境下で分解せず、焼却処理の燃焼熱も大きいことから、環境破壊要因として社会問題になっている。
【0004】
一方、特開平8−187090号公報には、脂肪族ポリエステルカーボネートがシュードモナス族による細菌によって生分解可能な樹脂として開示されている。さらに、特開平7−53693号公報、特開平7−53695号公報には、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及びジアリルカーボネートから得られる高分子量の脂肪族ポリエステルカーボネートが、包装材料や成形体に利用可能として記載されている。しかし、これら脂肪族ポリエステルカーボネートは生分解性が確認されているものの、融点は90〜110℃と低い。また、一般的に脂肪族ポリエステルカーボネートは、引張強度など機械強度が低く、特開平8−134198号公報によると、最も引張強度の高いものでも40.9MPaでしかなく、それを単独で包装材料や成型品に利用する場合には、用途が非常に限られたものになってしまう。
【0005】
特開平8−27362号公報には、微生物分解性のポリ−β−ヒドロキシ酪酸(PHB)を高分子量ポリエステルカーボネートと溶融混合することで、PHBの剛性を利用し、ポリエステルカーボネートを改質した例が記載されている。しかし、最も剛性が改善されたものでも引張強度が32MPaで、強度が要求される成形体としては不十分である。また、PHBが不透明な樹脂であるので、得られた成形体も不透明となることが十分に予想される。
【0006】
さらに、特開平7−82369号公報には、ビスフェノールA型ポリカーボネートとラクチドとの共重合体の製造方法が記載されている。同号公報によれば、得られた樹脂は融点は124〜176℃と高く、自然環境中での崩壊性が確認されている。しかし、得られた樹脂は、いずれも白化した不透明なものであり、包装材料としてはその用途が限定されたものになってしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、生分解性、機械的強度、熱安定性、さらに透明性に優れるというポリ乳酸の特徴を維持しつつ、ポリ乳酸の脆さが改善されたポリ乳酸系樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、このポリ乳酸系樹脂組成物からなる包装材料や各種成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリカーボネート化合物を改質剤として用いることにより、透明性を維持しつつポリ乳酸の脆さを改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
特に、架橋ポリカーボネート化合物を改質剤として用いると、機械的強度、透明性に優れ、脆さが非常に改善された生分解性のポリ乳酸系樹脂組成物が得られる。
【0009】
すなわち、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを含み、前記ポリ乳酸(A)は、重量平均分子量100,000〜1000,000であり、ポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含む乳酸共重合体であるものである。
本発明において、ポリカーボネート(B)は、重量平均分子量2,000以上の架橋ポリカーボネート(C)であることが好ましい。
【0010】
さらに、架橋ポリカーボネート(C)は、ジオール(D)と、
3価以上の多価アルコールであって、任意の2つの水酸基のいずれもが互いに1,2−二置換又は1,3−二置換の位置関係にはない3価以上の多価アルコール(E)と、
炭酸ジエステル、ホスゲン及びこれらの等価体からなる群から選ばれるカルボニル成分(カルボニル基含有化合物)(F)とを重縮合させることにより得られる新規な架橋ポリカーボネート(C’)であることが好ましい。
【0011】
ここで、等価体とは、クロロ炭酸エステル、カーボジイミダゾールなど、多価アルコールと反応することによってポリカーボネートを与える化合物を示す。
【0012】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法は、重量平均分子量100,000〜1000,000であり、ポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含む乳酸共重合体であるポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを溶融混合する方法である。
【0013】
また、本発明は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなる、フィルム、シート、容器、又は部品である。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
まず、ポリ乳酸(A)について説明する。本発明において、ポリ乳酸(A)とは、重量平均分子量100,000〜1000,000であり、ポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含む乳酸共重合体である。
ポリ乳酸は従来公知の方法で合成することができる。すなわち、乳酸モノマーからの直接重合方法(例えば、特開昭59−96123号公報、特開平7−33861号公報等に記載)によっても、または乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合法(例えば、米国特許4057537号明細書、Polymer Bulletin, 14, 491-495 (1985)等に記載)によっても合成することができる。
【0015】
乳酸モノマーからの直接重合方法を行なう場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いても良い。また、開環重合法を行なう場合においても、L−乳酸2分子からなるL−ラクチド、D−乳酸2分子からなるD−ラクチド、L−乳酸とD−乳酸とからなるメソ−ラクチド、又はこれらの混合物のいずれのラクチドを用いても良い。特に、光学異性体を10%程度以上含む場合には、ポリ乳酸の結晶性が低減され、結果として得られるポリ乳酸系樹脂組成物はより柔軟になる。このようなポリ乳酸系樹脂組成物は、柔軟性が要求される成形体を得るのに利用される。
【0023】
本発明において、乳酸モノマー又はラクチドとの共重合成分として各種ポリカーボネートを用いて、乳酸共重合体はポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含むことにより、ポリカーボネート(B)とのブレンド体においてポリ乳酸の特徴である透明性を維持したまま、機械特性を損なうことなく強靱性が付与できる。乳酸共重合体中のポリカーボネート成分が0.01重量%より少ない場合には、乳酸単独重合体とさほど変わらない。一方、ポリカーボネート成分が5重量%より多い場合には、透明性は維持できるが乳酸共重合体の分子量低下が避けられず、脆くなってしまい、結果として得られるポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを含むポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性の改善効果が得られにくくなる。好ましい乳酸共重合体中におけるポリカーボネート成分の量は0.1〜3重量%である。
【0024】
また、これら乳酸共重合体は、共重合成分がポリ乳酸鎖にランダムに導入されたランダム共重合体であっても良いし、ポリ乳酸鎖にブロック状に導入されたブロック共重合体であっても良い。
【0025】
本発明においてポリ乳酸(A)の重量平均分子量は一般に50,000〜1000,000であるが、100,000〜500,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると、脆くなってしまい、結果として得られるポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを含むポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性の改善効果が得られにくくなる。
【0026】
次に、ポリカーボネート(B)について説明する。
ポリカーボネート(B)は、直鎖状ポリカーボネートであっても良いが、ポリ乳酸(A)の改質効果の点から重量平均分子量2,000〜100,000の架橋ポリカーボネート(C)であることが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の機械的強度や耐衝撃性が低下する場合がある。重量平均分子量が100,000より大きいと、ポリ乳酸(A)との均一なブレンドが困難になる場合がある。より好ましいポリカーボネート(B)の重量平均分子量は、3,000〜80,000である。
【0027】
直鎖状ポリカーボネートとしては、例えば、直鎖状ジオールから得られるポリカーボネートが挙げられ、具体的には、1,4−ブタンジオール ポリカーボネート、1,4−シクロヘキサンジオール ポリカーボネート、1,4−シクロヘキサンジメタノール ポリカーボネート、1,6−ヘキサンジオール ポリカーボネート、ビスフェノールA ポリカーボネート、1,5−ペンタンジオール
ポリカーボネート、1,3−プロパンジオール ポリカーボネート、ネオペンチルグリコール ポリカーボネート等が挙げられる。もちろん、これらのみに限定されるものではない。
【0028】
架橋ポリカーボネート(C)としては、ジオール(D)と、
3価以上の多価アルコールであって、任意の2つの水酸基のいずれもが互いに1,2−二置換又は1,3−二置換の位置関係にはない3価以上の多価アルコール(E)と、
炭酸ジエステル、ホスゲン及びこれらの等価体からなる群から選ばれるカルボニル成分(F)とを重縮合させることにより得られる新規な架橋ポリカーボネート(C’)であることが好ましい。
【0029】
本発明において、ジオール(D)としては、従来よりポリカーボネートの合成原料として用いられているジオールを用いることができ、特に限定されるものではないが、次の一般式(I)で表されるジオールであることが好ましい。
【0030】
HO−R−OH (I)
式中、Rは炭素数4〜20のアルキレン基であり、フェニレン基及び/又はエーテル結合を含んでいても良く、また環構造を形成していても良い。Rが表すアルキレン基の炭素数が3以下では、得られるポリ乳酸系樹脂組成物の耐衝撃性の改善効果が得られにくくなる。一方、炭素数が21以上となると、ポリ乳酸(A)との相溶性が低下し、ポリ乳酸系樹脂組成物の透明性が失われる場合がある。
【0031】
このようなジオール(D)としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
これらジオール(D)のうち、原料入手、得られるポリマー物性等の点から、より好ましいものとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0033】
3価以上の多価アルコール(E)は、多価アルコール(E)中に含まれる任意の2つの水酸基のいずれもが互いに1,2−二置換又は1,3−二置換の位置関係にはない3価以上の多価アルコールである。
例えば、特に限定されないが、n価以上の多価アルコール(nは、3以上の整数である)が有するn個の水酸基それぞれに1分子以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させた多価アルコール(E)が挙げられる。
【0034】
このような3価以上の多価アルコール(E)として、より具体的には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン及びソルビトールからなる群から選ばれる多価アルコールが有する水酸基それぞれに1分子以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させた多価アルコール(E)が挙げられる。
【0035】
付加されたエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの分子数としては、このような多価アルコール中の水酸基それぞれに1分子〜5分子であることが好ましい。付加されたエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが1つの水酸基に対して6分子以上となると、ポリ乳酸(A)との相溶性が低下する傾向がある。また、この付加反応は、常法により容易に行うことができる。これらの多価アルコール(E)を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
これら多価アルコール(E)のうち、原料入手、得られるポリマー物性等の点から、より好ましいものとしては、 ▲1▼トリメチロールプロパン1モルに対し3モルのエチレンオキシドが付加したアルコール、 ▲2▼ペンタエリスリトール1モルに対し4モルのエチレンオキシドが付加したアルコール等が挙げられる。
【0037】
このようなアルコール▲1▼としては、例えば、次の化合物(化1)が挙げられる。また、アルコール▲2▼としては、例えば、次の化合物(化2)が挙げられる。
【0038】
【化1】
Figure 0003783426
【化2】
Figure 0003783426
【0039】
3価以上の多価アルコール(E)は、多価アルコール(E)中に含まれる任意の2つの水酸基のいずれもが互いに1,2−二置換又は1,3−二置換の位置関係にはないので、ポリカーボネート合成の重縮合の過程において、環化などの副反応が抑制される。
【0040】
本発明において、カルボニル成分(F)は、炭酸ジエステル、ホスゲン又はこれらの等価体からなる群から選ばれる。このようなカルボニル成分(F)としては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル; クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのクロロギ酸エステル; ホスゲン等が挙げられる。
【0041】
これらカルボニル成分(F)のうち、原料入手、反応性、ハンドリングの容易さ等の点からより好ましいものとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。
【0042】
また、架橋ポリカーボネート(C’)は、ポリマー中におけるジオール(D)と多価アルコール(E)との構成モル比が、(D):(E)=40:60〜99:1の範囲であることが好ましい。多価アルコール(E)のモル比が60を超えると、架橋度が大きすぎポリマーの溶解性が小さくなりやすい。一方、多価アルコール(E)のモル比が1未満であると、架橋度が小さく改質剤としての性能が不十分となる場合がある。より好ましい構成モル比は、(D):(E)=70:30〜98:2の範囲である。
【0043】
この架橋ポリカーボネート(C’)の分子量は、GPCのポリスチレン換算重量平均分子量2,000〜100,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、改質剤としての十分な性能を有しない場合がある。一方、重量平均分子量が100,000を超えると、ポリ乳酸との相溶性が低下する場合がある。より好ましい重量平均分子量は、3,000〜80,000の範囲である。
【0044】
この架橋ポリカーボネート(C’)は、ジオール(D)と3価以上の多価アルコール(E)とカルボニル成分(F)とを、周知の方法により重縮合させることにより合成することができる。すなわち、これら3種のモノマーを、例えば、反応温度50〜200℃程度、圧力5〜2,000mmHg程度で反応させることにより、重縮合させて架橋ポリカーボネート(C’)を得ることができる。
【0045】
ジオール(D)と3価以上の多価アルコール(E)との仕込みモル比は、(D):(E)=50:50〜99:1の範囲であることが、ポリマーの溶解性および改質剤としての性能の点から好ましい。より好ましい仕込みモル比は、(D):(E)=60:40〜98:2の範囲である。このようなジオール(D)と3価以上の多価アルコール(E)との仕込みモル比で重縮合を行うことにより、ポリマー中におけるジオール(D)と多価アルコール(E)との構成モル比が、(D):(E)=40:60〜99:1の範囲となる架橋ポリカーボネート(C’)を得ることができる。
【0046】
また、カルボニル成分(F)の仕込み量は、ジオール(D)及び3価以上の多価アルコール(E)が有する水酸基の合計に対して0.2〜5当量であることが得られるポリカーボネートの分子量の点から好ましい。カルボニル成分(F)の仕込み量が0.2当量未満であると、未反応アルコール成分が過剰となって除去しにくくなり好ましくない。一方、カルボニル成分(F)の仕込み量が5当量を超えると、未反応カルボニル成分が除去しにくくなり好ましくない。より好ましいカルボニル成分(F)の仕込み量は、ジオール(D)及び3価以上の多価アルコール(E)が有する水酸基の合計に対して0.5〜4当量である。
【0047】
得られる架橋ポリカーボネートの分子末端の調整は、カルボニル成分(F)のジオール(D)及び多価アルコール(E)が有する水酸基の合計量に対する仕込み量によって容易に行うことができる。すなわち、カルボニル成分(F)の仕込み量が大きくなると、末端はカーボネート基となり、カルボニル成分(F)の仕込み量が小さくなると、末端はヒドロキシル基となる。
【0048】
また、架橋ポリカーボネートの分子末端の調整は、重合終了後にアルコール成分の添加あるいはジアルキルカーボネート、クロロ炭酸エステルを添加することにより、行うことができる。
【0049】
このように分子末端を調整した架橋ポリカーボネート(C’)を用いることで、その存在下にポリ乳酸(A)の重合を行うことができる。以上のようにして架橋ポリカーボネート(C’)を製造することができる。
【0050】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物においては、ポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを、重量比で(A):(B)=60:40〜95:5の配合割合で含むことが好ましい。ポリ乳酸(A)の配合割合が60未満であると、機械的強度、熱安定性、透明性に優れるというポリ乳酸の特徴が薄れてしまう。一方、ポリカーボネート(B)の配合割合が5未満であると、ポリ乳酸の脆さの改善効果が弱い。より好ましい配合割合は、重量比で(A):(B)=50:50〜90:10である。
【0051】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを溶融混合することにより、容易に製造することができる。その混合方法は特に限定されることはなく、従来公知の方法により混合することができる。例えば、1軸又は複数軸の攪拌機が設置された縦型反応装置または横型反応装置、1軸又は複数軸の掻き取り羽が設置された横型反応装置、又は1軸又は複数軸のニーダーや押出機などの反応装置を単独または複数機を接続して用いることができる。
【0052】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリカーボネート(B)存在下に、ポリ乳酸(A)の重合を行うことによっても、製造することができる。すなわち、乳酸又はラクチドの溶融状態で、スズ化合物などの公知のポリ乳酸重合用触媒及びポリカーボネート(B)を混合し、例えば特開昭59−96123号公報、特開平7−33861号公報等に記載の方法に従った公知の方法でポリ乳酸重合を行い、ポリカーボネート(B)成分を含むポリ乳酸(A)組成物を得ることができる。この方法では、ポリカーボネート(B)をポリ乳酸(A)中にミクロに分散させることができ、ポリカーボネート(B)の改質剤としての効果をより有効に得ることができる。
【0053】
上述の方法で得られた本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の成形加工は、一般のプラスチックと同様に射出成形、押し出し成形、真空成形、圧空成形などの方法を用いて行うことができ、フィルム、シート、繊維、各種容器、各種部品、及びその他の成型品など、各種形状のものを得ることができる。
【0054】
例えば、押し出し成形をする場合は、押し出し機のシリンダー温度を140〜210℃に設定して押し出し機先端に特定の金型を取り付けることにより、インフレ成形、シート成形、パイプ成形等を行うことができる。射出成形、ブロー成形を行う場合は、通常の成形機にてシリンダー温度を140〜210℃に設定して行うことができる。
【0055】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、副次的添加剤を加えて、種々の改質を行うことができる。副次的添加剤の例としては、紫外線吸収剤、顔料・染料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、安定剤、香料、抗菌剤、核形成剤等、その他の類似のものが挙げられる。
【0056】
本発明で得られるポリ乳酸系樹脂からなる成形品は、生分解性も良好であり、使用後や製造工程上からの廃棄物処理に伴う環境悪化の低減に大きく貢献することができる。特に、コンポスト中での分解性に優れており、数カ月でほほ完全に分解できる。
【0057】
本発明によれば、ポリ乳酸の改質剤としてポリカーボネート化合物を用いるので、包装材料や各種成形体等に利用可能な、機械的強度、弾性率に優れ、透明性を有する生分解性のポリ乳酸系樹脂組成物が提供される。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、島津製作所製HPLCを用いてポリスチレン換算値を求めた。動的粘弾性の測定は、島津製作所製DVA−300を用いて、動的粘弾性の温度依存性に関する試験(JIS K 7198)に準じて行った。ガラス転移温度、融点の測定は、島津製作所製走査型示差熱量計DSC−50を用いて行った。透明性に関しては、目視観察にて判断した。
【0059】
また、引張試験は、JIS K 7113に準じて、島津製作所製オートグラフAG−100kNを用いて測定した。アイゾット衝撃試験は、JIS K 7110に準じて測定した(ノッチ付き)。
【0060】
(合成例1:架橋ポリカーボネートAの合成)
攪拌機、温度計及び精留塔等を装備したガラス反応容器に、トリメチロールプロパン−EO付加体(トリメチロールプロパン1モルに酸化エチレン3モルを付加させた化合物、日本乳化剤社製)66.6g(0.25モル)、1,4−ブタンジオール202.8g(2.25モル)、炭酸ジメチル225.2g(2.5モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.95g(0.005モル)を混合し、常圧下95℃で2時間保持し、その後5時間かけて150℃まで昇温し、さらに150℃で4時間加熱することにより、反応で生成するメタノールを留去した。
【0061】
次いで、2mmHgの減圧下で、150〜155℃に保ち、重合反応に伴って生成する1,4−ブタンジオール 42g(0.47モル)を留去した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルム250mlと活性白土10gを添加し、55℃で1時間攪拌した。これを室温まで冷却後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮、乾燥することにより架橋ポリカーボネートA 233gを白色固体として得た。
【0062】
このポリカーボネートAの融点は36℃で、GPCの重量平均分子量は13,900であった。また、プロトンNMR分析の結果、4.1〜4.3(δ値、溶媒:CDCl3 )に−CH2 OCOO−のプロトンに対応するピークが観測され、ポリカーボネートであることが確認された。また、−OCOOCH3 のプロトンに対応するピークは観測されず、ポリマーの分子末端はOH基であることが確認された。
【0063】
(合成例1−2:架橋ポリカーボネートA−IIの合成)
上記合成例1において、2mmHgの減圧下で、150〜155℃に保ち、重合反応に伴って生成する1,4−ブタンジオール46g(0.51モル)を留去した以外は、同様の操作で架橋ポリカーボネートA−II 229gを得た。この架橋ポリカーボネートA−IIのGPCによる重量平均分子量は20,300であった。
【0064】
(合成例2:架橋ポリカーボネートBの合成)
トリメチロールプロパン−EO付加体(日本乳化剤社製)33.3g(0.125モル)、1,4−ブタンジオール214.1g(2.375モル)、炭酸ジメチル225.2g(2.5モル)を用いて、合成例1と同様にして合成、精製を行い、白色固体の架橋ポリカーボネートB 122gを得た。
このポリカーボネートBの融点は44.5℃で、GPCの重量平均分子量は19,600であった。
【0065】
(合成例3:架橋ポリカーボネートCの合成)
合成例1において、1,4−ブタンジオールの代わりにジエチレングリコール238.8g(2.25モル)を用いた以外は、合成例1と同様の操作で粘調な液体の架橋ポリカーボネートC 209.5gを得た。GPCの重量平均分子量は11,750であった。
【0066】
(合成例4:架橋ポリカーボネートDの合成)
攪拌機、温度計及び精留塔等を装備したガラス反応容器に、トリメチロールプロパン−EO付加体(トリメチロールプロパン1モルに酸化エチレン3モルを付加させた化合物、日本乳化剤社製)26.6g(0.1モル)、1,4−シクロヘキサンジメタノール129.8g(0.9モル)、炭酸ジメチル94.6g(1.05モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.38g(0.002モル)を混合し、常圧下105℃で2時間保持し、その後6時間かけて160℃まで昇温し、さらに160℃で4時間加熱することにより、反応で生成するメタノールを留去した。
【0067】
次いで、1mmHgの減圧下で、160〜170℃に保ち、重合反応に伴って生成する1,4−シクロヘキサンジメタノール 25.5g(0.18モル)を留去した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルム200mlと活性白土4gを添加し、55℃で1時間攪拌した。これを室温まで冷却後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮、乾燥することにより架橋ポリカーボネートD 143.2gを白色固体として得た。
【0068】
このポリカーボネートDの融点は86℃で、GPCの重量平均分子量は7,900であった。また、プロトンNMR分析の結果、3.9〜4.3(δ値、溶媒:CDCl3 )に−CH2 OCOO−のプロトンに対応するピークが観測され、ポリカーボネートであることが確認された。また、−OCOOCH3 のプロトンに対応するピークは観測されず、ポリマーの分子末端はOH基であることが確認された。
【0069】
(合成例5:架橋ポリカーボネートEの合成)
合成例4において、炭酸ジメチルの仕込み量を135.1g(1.5モル)とした以外は、合成例4と同様に仕込んだ。常圧下105℃で2時間保持し、その後6時間かけて160℃まで昇温し、さらに160℃で4時間加熱することにより、反応で生成するメタノールを留去した。
【0070】
次いで、50mmHgの減圧下で、160℃に保ち、重合反応に伴って生成する炭酸ジメチルを留去した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルム200mlと活性白土4gを添加し、55℃で1時間攪拌した。これを室温まで冷却後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮、乾燥することにより架橋ポリカーボネートE
153gを白色固体として得た。
【0071】
このポリカーボネートEの融点は80℃で、GPCの重量平均分子量は9,800であった。また、プロトンNMR分析の結果、3.9〜4.3(δ値、溶媒:CDCl3 )に−CH2 OCOO−のプロトンに対応するピークが観測され、ポリカーボネートであることが確認された。また、−OCOOCH3 のプロトンに対応するピークが3.78に観測され、メチルカーボネート末端であることが分かった。
【0072】
(合成例6:架橋ポリカーボネートFの合成)
合成例1において、トリメチロールプロパン−EO付加体の代わりにペンタエリスリトール−EO付加体(ペンタエリスリトール1モルに酸化エチレン4モルを付加させた化合物、日本乳化剤社製)78.1g(0.25モル)を用いた以外は、合成例1と同様の操作で架橋ポリカーボネートF 241.5gを得た。(重合反応に伴って生成する1,4−ブタンジオール44.3g(0.49モル)を留去した。)
このもののは液体で、GPCの重量平均分子量は22,800であった。
【0073】
(合成例7:架橋ポリカーボネートGの合成)
攪拌機、温度計及び精留塔等を装備したガラス反応容器に、トリメチロールプロパン−EO付加体(日本乳化剤社製)39.9g(0.15モル)、ネオペンチルグリコール140.6g(1.35モル)、炭酸ジメチル212.8g(2.36モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.5g(0.008モル)を混合し、常圧下95℃で2時間保持し、その後5時間かけて150℃まで昇温し、さらに150℃で4時間加熱することにより、反応で生成するメタノールを留去した。
【0074】
次いで、150℃に保ったまま、常圧から50mmHgまで減圧し、重合反応に伴って生成する炭酸ジメチルを留去した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルム300mlと活性白土15gを添加し、55℃で1時間攪拌した。これを室温まで冷却後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮、乾燥することにより架橋ポリカーボネートG 183gを白色固体として得た。
このポリカーボネートGの融点は76.2℃で、GPCの重量平均分子量は19,800であった。
【0075】
(合成例8:ポリ乳酸−架橋ポリカーボネート共重合体Hの合成)
ラクチド99gと合成例1で得られた架橋ポリカーボネートA 1gとを窒素ガス雰囲気下で溶融し、重合触媒としてオクチル酸スズ0.2gを添加し、2軸混練機で攪拌しながら、190℃で20分間重合して共重合体を得た。
この共重合体を120℃、圧力1.5kg/cm2 の窒素中で12時間処理し、未反応のラクチドを留去(脱揮)し、共重合体H 80gを得た。
この共重合体Hの融点は172℃で、GPCの重量平均分子量は261,000であり、残存ラクチド含量は0.1重量%未満であった。
【0076】
(合成例9:直鎖状ポリカーボネートIの合成)
攪拌機、温度計及び精留塔等を装備したガラス反応容器に、1,4−ブタンジオール45.1g(0.5モル)、炭酸ジメチル45.0g(0.5モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.95g(0.005モル)を混合し、常圧下95℃で2時間保持し、その後5時間かけて150℃まで昇温し、さらに150℃で4時間加熱することにより、反応で生成するメタノールを留去した。
【0077】
次いで、1mmHgの減圧下で、150℃に保ち、重合反応に伴って生成する1,4−ブタンジオールを留去した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルム100mlと活性白土5gを添加し、55℃で1時間攪拌した。これを室温まで冷却後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮、乾燥することにより直鎖状ポリカーボネートI 38.1gを白色固体として得た。
このポリカーボネートIの融点は62.8℃で、GPCの重量平均分子量は9,600であった。
【0078】
(合成例10:直鎖状ポリカーボネートJの合成)
合成例9で用いた1,4−ブタンジオールの代わりに1,4−シクロヘキサンジオール58.1g(0.5モル)を用いた以外は、合成例9と同様にして、白色固体のポリカーボネートJを得た。このポリカーボネートJの融点は147.7℃で、GPCの重量平均分子量は2,800であった。
【0079】
(合成例11:直鎖状ポリカーボネートKの合成)
合成例9で用いた1,4−ブタンジオール45.1gの代わりに、1,4−ブタンジオール22.5g(0.25モル)と4,4' −イソプロピリデンジシクロヘキサノール60.1g(0.25モル)の混合物を用いた以外は、合成例9と同様にして、白色固体のポリカーボネートKを得た。このポリカーボネートKの融点は84.4℃で、GPCの重量平均分子量は6,700であった。
【0080】
[実施例1](参考例)
島津製作所製ポリ乳酸(商品名 ラクティ:融点175℃、重量平均分子量200,000)140gと、合成例1で得られた架橋ポリカーボネートA 60gとを190℃に制御された2軸混練機(栗本製作所製)に仕込み、10分間溶融混練を行い、取り出したストランドを水冷し、カットしてペレットを得た。DSC測定の結果、融点は171℃であった。
【0081】
このペレットをホットプレス(185℃、150kgf/cm2 、3分間)にかけ、厚さ0.3mmの透明なシートを得た。このシートから、幅5mm、長さ3cmの短冊状のサンプルを切り出し、動的粘弾性測定(周波数10Hz、昇温速度5℃/min)を行った。その結果、図1に示すように、−45℃付近に損失正接tanδのピーク(8×10-2)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0082】
図1の説明を行う:図1は、実施例1の動的粘弾性測定の結果を示すグラフであり、横軸は温度(℃)を示す。縦軸は、左側が弾性率E(Pa)を示し、貯蔵弾性率Er及び損失弾性率Eiをこの軸で見る。一方、右側の縦軸は、損失正接tanδ(=Er/Ei)を示す。以下の図2、図3、図4、図5のグラフも同様である。
【0083】
[実施例2](参考例)
ブレンド量を、ラクティ160g、合成例1の架橋ポリカーボネートA 40gに変更した以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−45℃付近にtanδのピーク(4×10-2)が現れ、実施例1の30%ポリカーボネートブレンドの場合より若干ピークは小さいが、常温での使用時に十分な耐衝撃性が優れることが示された。
【0084】
[実施例3]
合成例8で得られたポリ乳酸−架橋ポリカーボネート共重合体H 140gと合成例1の架橋ポリカーボネートA 60gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、185℃で溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−45℃付近にtanδのピーク(1×10-1)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0085】
[実施例4](参考例)
合成例2で得られた架橋ポリカーボネートBを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は171℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−45℃付近にtanδのピーク(4×10-2)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0086】
[実施例5](参考例)
合成例3で得られた架橋ポリカーボネートCを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は171℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、図2に示すように、−35〜−40℃付近にtanδのピーク(1×10-1)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0087】
[実施例6](参考例)
合成例4で得られた架橋ポリカーボネートDを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、図3に示すように、−25〜−30℃付近にtanδのピーク(1×10-1)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0088】
[実施例7](参考例)
合成例6で得られた架橋ポリカーボネートFを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は166.6℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−35〜−40℃付近にtanδのピーク(8×10-2)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0089】
[実施例8](参考例)
合成例7で得られた架橋ポリカーボネートGを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170.1℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−30℃付近にtanδのピーク(1×10-1)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0090】
[実施例9](参考例)
合成例5で得られた架橋ポリカーボネートEを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170.7℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、図4に示すように、−28℃付近にtanδのピーク(1×10-1)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0091】
さらに、上記ペレットを用いて射出成形を行い、引張試験片とアイゾット衝撃試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張弾性率は3.45GPaであり、強靱性が確認された。また、破断点伸度は22.9%で、アイゾット衝撃試験を行った結果、耐衝撃性は4.0kgf・cm/cm2 と、ポリ乳酸(単独重合体)の2.7kgf・cm/cm2 に比べて大幅に改善されていることが確認された。
【0092】
[実施例10](参考例)
合成例1−2で得られた架橋ポリカーボネートA−IIを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は172.0℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、図5に示すように、−28℃付近にtanδのピーク(9×10-2)が現れ、常温での使用時に耐衝撃性が優れることが示された。
【0093】
さらに、上記ペレットを用いて射出成形を行い、引張試験片とアイゾット衝撃試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張弾性率は2.66GPaであり、強靱性が確認された。また、破断点伸度は9.2%で、アイゾット衝撃試験を行った結果、耐衝撃性は9.6kgf・cm/cm2 と、ポリ乳酸(単独重合体)の2.7kgf・cm/cm2 に比べて大幅に改善されていることが確認された。
【0094】
[実施例11](参考例)
合成例9で得られたポリカーボネートIを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は60℃と176℃に2点得られた。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、−35℃付近にtanδのピークがわずかに現れており、ポリ乳酸単独よりは耐衝撃性は改善されているが、その改善効果は実施例1〜10に比べて小さいことが示された。
【0095】
[実施例12](参考例)
合成例11で得られたポリカーボネートKを用いた以外は、実施例1と同様にして、溶融混練を行いペレットを得た。DSC測定の結果、融点は170℃であった。
このペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスによって透明なシートを得て、このシートからサンプルを切り出し、動的粘弾性測定を行った。その結果、低温領域にtanδのピークはほとんど現れず、ポリ乳酸単独よりは耐衝撃性は改善されているが、その改善効果は実施例1〜10に比べて小さいことが示された。
【0096】
[比較例1〜4]
ラクチド90gと、合成例1の架橋ポリカーボネートA(比較例1)、合成例9のポリカーボネートI(比較例2)、合成例10のポリカーボネートJ(比較例3)、及びミテックス社製1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネート(商品名 RAVECARB 106:重量平均分子量9,800)(比較例4)の各10gとを用いて、合成例8と同様にして、ポリ乳酸−ポリカーボネート共重合体をそれぞれ合成し、各共重合体ペレットを作製した。それぞれのペレットから実施例1と同様にして、ホットプレスシートを得た。
【0097】
このようにして得られた各共重合体の重量平均分子量、融点及び評価を表1にまとめて示す。尚、比較例3では、ポリカーボネートJはラクチドと溶融混合できず、共重合体を得ることができなかった。比較例1、2、4では、透明な共重合体が得られたが、いずれも分子量が低く、非常に脆いものであった。
【0098】
【表1】
Figure 0003783426
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸の改質剤としてポリカーボネート化合物が配合されているので、耐衝撃性に優れた生分解性のポリ乳酸系樹脂組成物が提供される。特に、ポリ乳酸の改質剤として架橋ポリカーボネート(C’)を用いた場合には、耐衝撃性に非常に優れたポリ乳酸系樹脂組成物が提供される。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から、従来公知の生分解性樹脂では実現困難であった、実用上十分な機械的強度を有する包装材料や各種成形体などを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【図2】 実施例5の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【図3】 実施例6の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【図4】 実施例9の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【図5】 実施例10の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
E:弾性率(Pa)
Er:貯蔵弾性率(Pa)
Ei:損失弾性率(Pa)
tanδ:損失正接(=Er/Ei)

Claims (13)

  1. ポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを含むポリ乳酸系樹脂組成物であって、
    前記ポリ乳酸(A)は、重量平均分子量100,000〜1000,000であり、ポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含む乳酸共重合体である、ポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 前記ポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを、重量比で(A):(B)=60:40〜95:5の配合割合で含む、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. ポリカーボネート(B)が、重量平均分子量2,000〜100,000の架橋ポリカーボネート(C)である、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 架橋ポリカーボネート(C)が、ジオール(D)と、
    3価以上の多価アルコールであって、任意の2つの水酸基のいずれもが互いに1,2−二置換又は1,3−二置換の位置関係にはない3価以上の多価アルコール(E)と、
    炭酸ジエステル、ホスゲン及びこれらの等価体からなる群から選ばれるカルボニル成分(F)とを重縮合させることにより得られる架橋ポリカーボネート(C’)である、請求項3に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  5. 3価以上の多価アルコール(E)が、n価以上の多価アルコール(nは、3以上の整数である)が有するn個の水酸基それぞれに1分子以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させた多価アルコール(E)である、請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  6. 3価以上の多価アルコール(E)が、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン及びソルビトールからなる群から選ばれる多価アルコールが有する水酸基それぞれに1分子以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させた多価アルコール(E)である、請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  7. ジオール(D)が、一般式(I)で表されるジオールである、請求項4〜6のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物:
    HO−R−OH (I)
    (式中、Rは炭素数4〜20のアルキレン基であり、フェニレン基及び/又はエーテル結合を含んでいても良く、また環構造を形成していても良い。)。
  8. 架橋ポリカーボネート(C’)中におけるジオール(D)と3価以上の多価アルコール(E)との構成モル比が、(D):(E)=40:60〜99:1の範囲である、請求項4〜7のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  9. 重量平均分子量100,000〜1000,000であり、ポリカーボネート成分を0.01〜5重量%含む乳酸共重合体であるポリ乳酸(A)とポリカーボネート(B)とを溶融混合する、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物又は請求項に記載の方法により得られたポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルム。
  11. 請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物又は請求項に記載の方法により得られたポリ乳酸系樹脂組成物からなるシート。
  12. 請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物又は請求項に記載の方法により得られたポリ乳酸系樹脂組成物からなる容器。
  13. 請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物又は請求項に記載の方法により得られたポリ乳酸系樹脂組成物からなる部品。
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