JP3760970B2 - 電子写真トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真の現像に用いられるトナーの製造方法に関し、更に詳しくは、残留重合性単量体が少なく、環境安全性に優れた電子写真用トナーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電子写真用トナーは、結着樹脂を着色剤、帯電制御剤、離型剤などと混練、粉砕、分級して得られる粉砕法トナーと、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、離型剤等の混合物を懸濁重合、乳化重合、分散重合などの方法で重合した微粒子として得られる重合法トナーに大別される。何れの手法でも重合工程で完全に重合性単量体を反応させることは困難であり、僅少の未反応重合性単量体がトナー中に残留してしまう。重合性単量体の残留したトナーを静電画像形成装置で使用すると、画像定着時の加熱等により残留重合性単量体がトナー中から揮発して作業環境を悪化させたり、不快な臭気を発生させる。また、残留重合性単量体の多い電子写真用トナーは、保存中にブロッキングが発生しやすい、画像定着時にオフセットしやすい、静電画像現像装置の部材上にフィルミングしやすいなどの問題がある。
粉砕法トナーの場合は、結着樹脂の製造段階で残留重合性単量体を除去するため、着色剤、帯電制御剤、離型剤などの影響を受けることがなく、残留重合性単量体低減は比較的容易である。一方、重合法トナーでは、着色剤、帯電制御剤、離型剤などを含んだ樹脂から残留重合性単量体を除去しなければならないが、重合性単量体はこれらの成分に吸着され易く、結着樹脂のみからの場合に比較して、残留重合性単量体の低減が困難である。
特に近年の高まっている低温での定着が可能な重合法トナーにおいて、凝集を防止しつつ残留重合性単量体を低減することは著しく困難である。
【0003】
重合法トナーの重合反応工程後の一般的な工程には、洗浄工程、脱水工程及び乾燥工程がある。重合法トナーの残留重合性単量体を減らすために、こうした重合反応工程後の工程で残留重合性単量体除去処理をすることが多く検討されている。
例えば、(1)乾燥工程後の重合法トナーを処理をする方法、(2)脱水工程後、乾燥工程前の重合法トナーを処理する方法、(3)脱水工程前の分散液中にある重合法トナーを処理する方法が知られている。
【0004】
(1)の方法として、減圧加熱処理する方法(特開平7−92736号公報)がある。しかし、乾燥したトナーを加熱処理すると、トナーが熱により凝集する傾向にあり、特に連続高速印字に適していると言われる低い温度で定着できるトナー(低温定着トナー)においてはこの傾向が大きな問題となる。これは低温での定着を実現させるため、一般に結着樹脂成分をはじめとするトナー成分のTgや融点の低いものを用いてトナーを製造するため、製造工程での熱によってこれらの成分が柔らかくなり、凝集することに起因している。従って、この方法は低温定着トナーにおいては実用的ではない。
【0005】
(2)の方法として、気体を注入しながら真空乾燥を行う方法が提案されている(特開平10−207122号公報)が、当該公報の実施例によれば、この方法でも残留重合性単量体は、着色剤などに吸着され、約100ppmまでしか除去されていない。また、脱水後の処理であるため、前述した(1)の場合と同様、低温定着トナーの製造に際しては、トナー粒子の凝集が懸念される。
【0006】
(3)の方法としては、分散液に飽和蒸気を吹き込むこと(特開平5−100485号公報)が提案され、この方法によれば残留重合性単量体量は70ppm程度まで低減される(実施例)と記載されている。しかし、この方法では、飽和蒸気がトナー粒子と接触した際のせん断力によって粒子が凝集しやすく、スケールや凝集塊が増大する傾向にある。このため、必ずしも高い流動性のトナーを得ることができなかった。特にトナー粒径が小さくなるほど粒径が下がる傾向にあり、トナーの凝集は流動性にとって重大な問題となる。
【0007】
このように、従来から重合法トナーにおいて、重合後の処理による残留重合性単量体の低減手法が種々検討されているものの、昨今の残留重合性単量体100ppm未満という厳しい環境安全性に対する要求に応えることは困難であり、特に低温定着トナーにおいてはそれが一層難しいものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環境安全性及び流動性がともに優れた電子写真用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、重合体粒子分散液を減圧ストリッピング法で処理することによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見によって、本発明を完成するに到った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、懸濁重合後に得られる着色剤と結着樹脂成分を含有する重合体粒子の分散液を減圧ストリッピング処理した後、脱水、洗浄、乾燥して、乾燥重合体粒子を得る電子写真用トナーの製造方法であって、減圧ストリッピング処理において、蒸発タンクから抜き出して外部熱交換器により加熱した重合体粒子の分散液を該蒸発タンク内に戻して循環させ、その際、加熱した重合体粒子の分散液を該蒸発タンク上部から減圧にした該蒸発タンク内に噴出させることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
(1)電子写真用トナー
本発明の製造方法により得られる電子写真用トナーは、残留重合性単量体が70ppm未満、好ましくは60ppm以下、流動性が55%以上、好ましくは60%以上の実質的に球形のトナーである。また、本発明の実質的に球形のトナーは、体積平均粒径(dv)が3〜15μm、好ましくは5〜10μmであり、体積平均粒径と個数平均粒径(dn)の比(dv/dn)が1〜1.4であり、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)を粒子の実質投影面積(Sr)で割った値(Sc/Sr)が1〜1.3の範囲であり、かつBET比表面積(A)[m2/g]、個数平均粒径(dn)[μm]および真比重(D)の積(A×dn×D)が5〜10の範囲のものであるのが望ましい。
本発明の好ましい電子写真用トナーは、120℃での溶融粘度が10万ポイズ以下、好ましくは0.1〜10万ポイズ、より好ましくは1〜8万ポイズである。粘度測定はフローテスターを用いて測定すればよい。このような溶融粘度を持つトナーによれば高速での印刷によっても高画質が実現する。
【0011】
さらに本発明においては、電子写真用トナー中の残留金属(イオン)量を制限するのが望ましい。特にマグネシウムやカルシウムなどの金属(イオン)がトナー中に残留していると、高湿条件下では吸湿を起こしトナーの流動性を低下させたり画質に悪影響を及ぼすことがある。こうしたトナー中に残留したマグネシウムやカルシウム(以下、単に残留金属という)のトナー中の含有量の少ないものは、高温高湿条件下でも、1分間に10枚以上を印刷できる高速機で高い印字濃度、カブリのない良好な画質を与えることができる。残留金属量は、好ましくは170ppm以下、より好ましくは150ppm以下、特に好ましくは120ppm以下である。残留金属を低減させるには、例えば後述するトナー製造工程の脱水段階で、連続式ベルトフィルターやサイホンピーラー型セントリヒュージなどの洗浄脱水機などを用いて脱水、洗浄すればよい。
ここで残留重合性単量体の量、流動性、粒径、及び残留金属量は、後述する実施例の方法により測定される値である。
【0012】
このようなトナーは、例えば後述する方法により得られるトナー粒子を含むものである。また、コア物質と、これを被覆するコア物質より高いガラス転移点を持つシェル物質とからなる層構造を有するカプセルトナーは保存性の点で好ましい。
また当該トナー粒子に対して、必要に応じて分級、外添処理を行なうことができる。この外添処理では、着色剤含有重合体粒子の表面に添加剤(以下、外添剤という)を付着、埋設等させることによって、粒子の帯電性、流動性、保存安定性などを調整することができる。
外添剤としては、無機粒子、有機樹脂粒子、好ましくはシリカ粒子、酸化チタン粒子、特に好ましくは疎水化処理されたシリカ粒子が挙げられる。外添剤を前記重合体粒子に付着させるには、通常、外添剤と重合体の乾燥粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合器に仕込み、撹拌して行う。
【0013】
(2)電子写真用トナーの製造方法
上述した残留重合性単量体の少ないトナーを得る方法として、例えば以下に詳述する本発明の方法が挙げられる。
この方法によれば、大量の分散媒が単量体を伴って残留重合性単量体が減圧留去されるため、重合体粒子から重合性単量体の除去が可能である。また、トナー粒子はコロイド(分散剤)によって保護されているので、結着樹脂のTg以上の温度をかけてもトナー粒子の凝集を防ぐことができる、といった利点がある。
【0014】
<懸濁重合>
本発明において、懸濁重合は公知の方法を採用すればよい。例えば、重合性単量体、着色剤、マクロモノマー、分子量調整剤、帯電制御剤、離型剤などの添加剤を含む混合物を、水系分散媒体中に投入、攪拌して液滴粒子を造粒し、必要に応じて重合開始剤存在下、攪拌、昇温して重合するなどの方法によることができる。水系分散媒体中には分散安定剤を含んでいてもよい。こうして得られた重合体粒子の分散液が本発明でいう重合体粒子分散液である。トナー製造に際しては、この後、分散媒体を除去するために脱水、乾燥工程を経る。
【0015】
重合する方法に際しては、重合性単量体の重合を一段で行なってもよいし、二段階に分けて行なってもよい。例えば、二段階に分けて重合する方法では、(1)一段目に重合する単量体(コア用重合性単量体)と二段目に重合する単量体(シェル用重合性単量体)の組成を変えて、一段目の重合で低Tgのコアを形成させ、二段目の重合で高Tgの層(シェル)を形成させる方法、(2)一段目に単量体を重合させ粒子を形成させた後、任意の重合体成分を添加して当該粒子に重合体成分を吸着または固着させる方法などによって、コア・シェル型重合体粒子を製造し、低温定着性と高温保存性のバランスの良好な、いわゆるカプセルトナーを得ることもできる。
【0016】
本発明に用いる重合性単量体の主成分としてモノビニル系単量体を挙げることができる。この重合性単量体が懸濁重合され、重合体粒子中の結着樹脂成分となる。
モノビニル系単量体の具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの不飽和カルボン酸エステル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;
【0017】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル単量体;等のモノビニル系単量体が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらのモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸の誘導体などが好ましく、特にスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステルが好適に用いられる。
【0018】
これらのモノビニル系単量体とともに任意の架橋性モノマーを用いると、定着性、特にオフセット性が向上する。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能エチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、架橋性モノマーを、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
【0019】
黒色着色剤として、カーボンブラック、ニグロシンベースの染顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。カーボンブラックを用いる場合、一次粒径が20〜40nmであるものを用いると良好な画質が得られ、またトナーの環境への安全性も高まるので好ましい。
カラートナー用着色剤としては、ネフトールイエロS、ハンザイエロG、C.I.ピグメントイエロ、C.I.バットイエロ、エオシンレーキ、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.バットレッド、フタロシアニンブルー、C.I.ピグメントブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー等が挙げられる。
これら着色剤は、ビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
【0020】
また、本発明では、マクロモノマーをモノビニル系単量体とともに重合性単量体として使用することができる。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。
マクロモノマー分子鎖の末端に有するビニル重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができ、共重合のしやすさの観点からメタクリロイル基が好適である。
マクロモノマーの量は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。この範囲であれば保存性と定着性との良好なバランスが得られる。
【0021】
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類;を例示することができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で反応系に添加することができる。上記分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部用いる。
【0022】
帯電制御剤として、各種の正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることが可能である。例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン等が挙げられる。より具体的には、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンN−01(オリエント化学社製 )、コピーブルー−PR(ヘキスト社製)等の帯電制御剤および/または4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、スルホン酸(塩)基含有共重合体等の帯電制御樹脂を用いることができる。上記帯電制御剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部(更には0.03〜8重量部)用いることが好ましい。
【0023】
本発明に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。このうち、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
【0024】
本発明で必要に応じて使用される離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類や分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレンおよびこれらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレンおよびこれらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの多官能エステル化合物など1種あるいは2種以上が例示される。
【0025】
これらのうち、合成ワックス(特にフィッシャートロプシュワックス)、合成ポリオレフィン、低分子量ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが好ましい。なかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜200℃、好ましくは50〜180℃、60〜160℃の範囲にあるものが、トナーとしての定着−剥離性バランスの面で特に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部(更には1〜10重量部)用いることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる分散剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。特に架橋性モノマーを共重合させなかった場合には、難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤が、減圧ストリッピング中の重合体粒子の分散安定性ならびに、トナーの定着性と保存性とを改善するために好適である。
【0027】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸物のコロイドを用いることが好ましい。
【0028】
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0029】
分散剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の割合で使用する。この割合が少ないと充分な重合安定性や減圧ストリッピング中の分散安定性を得ることが困難であり、凝集物が生成し易くなる。逆に、この割合が多いとトナー粒径が細かくなりすぎるので好ましくない。
【0030】
<減圧ストリッピング処理>
上述の方法により懸濁重合後に得られる重合体粒子分散液を減圧条件下でストリッピング処理することで、重合体粒子中の分散媒や残留重合性単量体などの揮発性物質を低減できる。本発明の減圧ストリッピング処理は、通常減圧された蒸発タンク内で行う。また本発明における減圧ストリッピング処理では、揮発性物質は気体となるため、通常蒸発タンクから外部へ気体が排出されることになる。
減圧ストリッピング処理される重合体粒子分散液は、重合時に使用した分散剤を洗浄分離した後のものでも良いが、減圧ストリッピング処理中の分散安定性を維持するためには、分散剤が存在することが好ましく、減圧ストリッピングのためにさらに、分散剤を追加してもよい。
減圧ストリッピング処理時間は、通常0.5〜50時間、好ましくは1〜30時間、より好ましくは3〜20時間である。
【0031】
減圧ストリッピング処理に際しては、重合体粒子分散液を蒸発タンク上部より下部に向けて、重合体粒子分散液の一部を噴出させる操作(以下、フラッシングという)を繰り返し行うのが、揮発性物質の蒸発が効率的に行われる点で好ましい。フラッシングを行う場合、最初に重合体粒子分散液を外部装置に直接取り込み、この外部装置から重合タンク内に分散液をフラッシングにより戻す操作を繰り返すこともできるが、最初に重合体粒子分散液を蒸発タンク内に入れた後、当該分散液の一部を外部装置に取り込み、この外部装置から重合タンク内に分散液をフラッシングにより戻す操作を繰り返す方が好ましい。これは、タンク下部に重合体粒子分散液が存在していると、フラッシングによる液面での泡立ちを抑制することができるからである。
【0032】
減圧ストリッピング処理では分散媒やその他揮発性物質の蒸発、回収によって、系内の重合体分散液の濃縮が同時に行われる。処理中、重合体分散液の濃度上昇によって分散液の安定性が低下する場合は、系の温度や圧力のバランスを不安定化させない範囲で系内に適宜分散媒を添加しながら減圧ストリッピング処理することができる。ここで後から添加される分散媒は、懸濁重合時に用いた水系分散媒と同一でも異なったものであっても良い。
【0033】
減圧ストリッピングに際して、重合体粒子分散液を加熱すると、水分や重合性単量体などの揮発性物質の揮発、回収効率が高くなる。
重合体粒子分散液の加熱は、熱媒循環用ジャケットを設けた蒸発タンクを用いること、熱交換器を内部に設けた蒸発タンクを用いること、外部熱交換器を接続した蒸発タンクを用いること、蒸発タンク内に加熱気体を吹込むこと等によって行うこともできる。これらの加熱方法のうち、外部熱交換器を接続した蒸発タンクを用いる方法が好ましい。
外部熱交換機を接続した蒸発タンクを用いる場合、当該タンク内の重合体粒子分散液はポンプ等で外部熱交換器に送液され、減圧にした蒸発タンクにフラッシングされる。
【0034】
外部熱交換器を使用する際、加熱後の重合体分散液温度は、蒸発タンク内の重合体分散液温度に比較して高く設定するのがよく、温度差は5℃以上50℃以下、好ましくは10℃以上20℃以下である。温度差が小さ過ぎる場合、蒸発タンク内噴出時の揮発性物質の蒸発が十分でないため残留重合性単量体の除去効率が著しく低下する。また、外部熱交換器の形式は特に限定されるものではないが、重合体分散液の加熱や循環時の不安定化による凝集等を抑制するためには、加熱時の接触面積が大きく、熱媒温度が低くても効率的に加熱可能なプレート型熱交換器が好適である。
【0035】
重合体粒子分散液の温度(℃)は、分散液温度Ts(℃)と当該重合体粒子のガラス転移温度Tg(℃)の関係がTg≦Ts<100℃、好ましくはTg≦Ts≦90℃、より好ましくはTg+5℃≦Ts≦85℃でほぼ一定となるようにするのが望ましい。TsがTgよりも低いと蒸発が少なくなる上、重合体粒子中での残留重合性単量体の移動が極端に遅くなるため、残留重合性単量体の除去速度が著しく低下する。この観点からTsはTgより5℃以上高く設定するのが望ましい。また、Tsが100℃より高いと熱により重合体粒子の分散安定性が低下して処理中に凝集物、タンク缶壁や攪拌機へのスケール付着が増大する。もちろん外部熱交換機を使用する場合、フラッシングを繰り返す中で重合体粒子分散液を徐々に加熱されて前述の温度に達してもよいし、あらかじめ重合体粒子分散液の温度を前述の温度にしてからフラッシングさせてもよい。
なお、重合性単量体の重合によって生成する結着樹脂のTgが2点以上ある場合、一番低いTgを基準とする。ここでTgは、示差走査熱量計(DSC)によって測定される値である。
【0036】
蒸発タンク内の圧力は処理温度と分散媒(通常は水)の蒸気圧の関係で決定されるが、本発明においては50〜500torrの範囲が好適である。高過ぎる圧力では重合体分散液をかなり高温に加熱することになるため、熱交換器部分での重合体分粒子散液の分散安定性が低下し、処理中に凝集物や器壁へのスケール付着が増大する。また、低過ぎる圧力では処理温度における分散媒の蒸気圧に対して圧力が低くなるので気液平衡が一気に気体側に移行して、蒸発タンク中の重合体分散液内部から分散媒やその他の揮発成分の沸騰が始まり、発泡が著しくなる等、安定な処理が困難になる。
【0037】
更に本発明においては、分散液中の重合体粒子と分散媒の界面更新を促進して残留重合性単量体の蒸発を促すため、系の温度や圧力のバランスを不安定化させない範囲で、蒸発タンク内の液相に気体を吹込みながら減圧ストリッピング処理することができる。吹込む気体は特に限定されるものではなく、水蒸気、乾燥空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、不燃性気体であることが好ましい。また、上記気体を吹込む際、重合体粒子の凝集防止の意味から、気体の温度は100℃未満の温度が好ましい。
【0038】
本発明においては、減圧ストリッピング処理の後、通常の脱水、洗浄、乾燥処理を行なって重合体の乾燥粒子(トナー)を得る。得られた粒子の残留重合性単量体は70ppm未満、好ましくは60ppm以下である。
【0039】
【実施例】
本発明の製造方法を実施例を示しながらさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0040】
本実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(吸熱ピーク温度)
ASTM D3418−82に準拠して測定した。DSC曲線は、温度速度10℃/分で昇温させたとき得られる曲線のピークトップを吸熱ピークとして測定した。
使用した示差走査熱量計は、セイコー電子工業社製「SSC5200」である。
【0041】
(粒径)
重合体粒子(トナー粒子)の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と平均粒径(dp)との比(dv/dp)はマルチサイザー(コールター社製)によりを測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:50000個の条件で行った。
【0042】
(残留重合性単量体の量)
ガスクロマトグラフィーにより、下記条件で下記方法により測定した。
カラム:TC−WAX、0.25mm×30m)
カラム温度:80℃
インジェクション温度:200℃
FID検出側温度:200℃
【0043】
脱水処理後乾燥前の湿潤した重合体粒子または乾燥後のトナー0.7gを1mg単位まで精秤し、メタノールを加えて超音波で分散した後、メタノールで10mlに定容し、室温で24時間静置して抽出した。次いで、遠心分離にて不溶分を沈澱させた後、上澄み液2μlをガスクロマトグラフに注入して重合性単量体の残留を確認した。定量用標準試料は、各単量体のメタノール溶液とした。
脱水後乾燥前の重合体粒子中の残留重合性単量体量は、湿潤した試料中の純固形分に対する比率として算出した。なお、純固形分は、▲1▼上記試料調整作業のために湿潤した重合体粒子を分取するのと同時に、1gを1mg単位まで精秤し、▲2▼これを赤外ランプで約200℃、30分間加熱して得た固形分重量を精秤し、▲3▼乾燥前後の重量差から純固形分割合を算出し、▲4▼この割合を、残留重合性単量体量測定のために用いた湿潤した重合体粒子重量に乗じて求めた。
乾燥後のトナー粒子中の残留重合性単量体量は、当該トナー重量に対する比率として算出した。
【0044】
(流動性)
目開きが各々150μm、75μm及び45μmの3種の篩をこの順に上から重ね、一番上の篩上に測定する現像剤を4g精秤して乗せる。次いで、この重ねた3種の篩を、粉体測定機(細川ミクロン社製;商品名「REOSTAT」)を用いて、振動強度目盛4の条件で、15秒間振動した後、各篩上に残った現像剤の重量を測定する。各測定値を以下の式▲1▼、▲2▼及び▲3▼に入れて、流動性の値を算出する。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を求めた。
算出式:
▲1▼a=〔(150μm篩に残った現像剤重量(g))/4g〕×100
▲2▼b=〔(75μm篩に残った現像剤重量(g))/4g〕×100×0.6
▲3▼c=〔(45μm篩に残った現像剤重量(g))/4g〕×100×0.2
流動性(%)=100−(a+b+c)
【0045】
(残留金属量)
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)(セイコー電子社製)を用いて、分散安定剤として用いた金属化合物由来のマグネシウムイオンを定量分析した。
【0046】
(溶融粘度)
フローテスター(島津製作所製、CFT−500C)を用い、下記の測定条件で測定し、120℃における溶融粘度を測定した。
開始温度:35℃、昇温速度:3℃/分、予熱時間:5分、シリンダー圧力:10.0Kg・f/cm2、ダイス直径:0.5mm、ダイス長さ1.0mm、剪断応力:2.451×105Pa、試料投入量:1.0〜1.3g
【0047】
(画質の評価)
・環境依存性(H/H、L/L)
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(12枚機)の定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、35℃×80RH%(H/H)環境および10℃×20RH%(L/L)環境の各環境下で初期から連続印字を行い、反射濃度計(マクベス製)で印字濃度が1.3以上で、かつ、白色度計(日本電色製)で測定した非画像部のカブリが15%以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べた。印字後の白色度B、印字前の白色度をAとすると、カブリ(%)=((A−B)/A)×100 の計算式で算出されるカブリ値を用いた。
【0048】
(臭気の評価)
前述の画質評価において、印字紙出口付近での単量体の臭気を健康な5人で官能評価した。5人が単量体の臭気を感じない(○)、1〜2人が単量体の臭気を感じる(△)、3人以上が単量体の臭気を感じる(×)とした。
【0049】
[実施例1]
スチレン80.5部およびn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用重合性単量体(これらの単量体を共重合して得られた共重合体のTg=55℃)、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.3部、ジビニルベンゼン0.5部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25B」)7部、帯電制御剤(保土ヶ谷化学社製、商品名「スピロンブラックTRH」)1部、離型剤(フィッシャートロプシュワックス、サゾール社製、商品名「パラフリントH1」、吸熱ピーク温度:100℃)2部を、メデヤ型湿式粉砕機を用いて湿式粉砕を行い、コア用重合性単量体組成物Aを得た。
【0050】
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液Aを調製した。生成した上記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.35μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.84μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器による測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0051】
一方、メチルメタクリレート(Tg=105℃)3部と水100部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液Aを得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、D90が1.6μmであった。
【0052】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液Aに、コア用重合性単量体組成物Aを投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこに重合開始剤:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)6部添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、単量体混合物の液滴を造粒した。この造粒した単量体混合物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、85℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達した後、前記シェル用重合性単量体の水分散液Aに水溶性開始剤(和光純薬社製、商品名「VA−086」=2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド))0.3部を溶解し、それを反応器に入れた。4時間重合を継続した後、反応を停止し、重合体粒子の水分散液を得た。
【0053】
攪拌機付き蒸発タンクに、上記により得た重合体の水分散液を蒸発タンクに投入し、分散液を攪拌ならびに系内循環しながらプレート型外部熱交換器により60℃まで加熱した。その際、熱交換器から蒸発タンクへの戻りはタンク上部から液面に向けて噴出させて分散液を循環させた。その後、蒸発タンク内を230torrまで減圧にし、更に加熱して蒸発タンク内の分散液温度を70℃、熱交換器出口の分散液温度を80℃とした。この条件を保持したまま、溜去される水に見合う量のイオン交換水を系内に連続的に添加しながら減圧ストリッピングを行ない、5時間後、減圧を解き、分散液を25℃まで冷却した。減圧ストリッピング後の重合体分散液中の凝集物量増大ならびに蒸発タンク内および熱交換器中へのスケールの付着は認められなかった。
【0054】
上記により得たコア・シェル型重合体粒子の水分散液を、撹拌しながら、硫酸により洗浄(25℃、10分間)して、系のpHを4.5以下にした。この水分散液を濾過し、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、商品名「イーグルフィルター」)を用いて脱水、洗浄し、固形分を濾過分離した。その後、乾燥機にて45℃で10時間乾燥し、コア・シェル型重合体粒子を得た。
乾燥機にて乾燥する前及び後の重合体粒子中の残留重合性単量体量を測定した。
【0055】
上記により得られた重合体粒子100部に、疎水化処理した平均粒子径14nmのシリカ(デグサ社製、商品名「RX200」)0.8部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、電子写真用トナーとした。
得られたトナーについて、評価を行った。
測定結果、評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
減圧ストリッピング処理の時間を10時間とした以外は、実施例1と同様にして電子写真用トナーを得た。
なお、減圧ストリッピング後の重合体分散液中の凝集物量増大ならびに蒸発タンク内および熱交換器中へのスケールの付着は認められなかった。
測定結果、評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1と同じコア用重合性単量体(これらの単量体を共重合して得られた共重合体のTg=48℃)と、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25」)7部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸含有共重合体(Mw=21,000、スチレン比率87%、n−ブチルアクリレート比率10%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸比率3%)1部、ジビニルベンゼン0.3部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」、Tg=94℃)0.5部を、通常の撹拌装置で撹拌、混合した後、メディア型分散機により、均一分散した。上記分散液に、ペンタエリスリトール=テトラミリステート10部を添加、混合、溶解して、コア用重合性単量体組成物Bを得た。
【0057】
水酸化マグネシウムコロイドBの調製は、塩化マグネシウムの量を9.5部に、水酸化ナトリウムの量を5.8部にしたこと以外は、実施例1と同様にして行い、実施例1と同様に粒径分布を測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.36μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.80μmであった。
一方、メチルメタクリレート3部と水30部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液Bを得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、D90が1.6μmであった。
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液Bに、上記コア用重合性単量体組成物Bを投入したこと、シェル用重合性単量体の水分散液として、シェル用重合性単量体の水分散液Bに、水溶性開始剤として過硫酸アンモニウム0.3部を蒸留水65部に溶解したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、重合体の水分散液を得た。
【0058】
前記実施例1における減圧ストリッピング処理条件で、蒸発タンク内の減圧を160torrに、蒸発タンク内の分散液温度を60℃に、熱交換器出口の分散液温度を70℃として、その他は実施例1と同様に実施した。
酸洗浄時の系のpHを4以下にし、乾燥を一昼夜にしたこと以外は実施例1と同様にして、コア・シェル型重合体粒子を得た。
上記により得られたコア・シェル型重合体粒子100部に、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名「RX200」、日本アエロジル社製)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して電子写真用トナーとした。
なお、減圧ストリッピング後の重合体分散液中の凝集物量増大ならびに蒸発タンク内および熱交換器中へのスケールの付着は認められなかった。
測定結果、評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
減圧ストリッピング処理の時間を10時間とした以外は、実施例3と同様にして電子写真用トナーを得た。
なお、減圧ストリッピング後の重合体分散液中の凝集物量増大ならびに蒸発タンク内および熱交換器中へのスケールの付着は認められなかった。
測定結果、評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
減圧ストリッピング処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真用懸濁重合トナーを得た。得られたトナーのガラス転移温度は55℃、体積平均粒径は7.2μmで粒径分布が狭かったが、残留スチレン量は360ppm、残留n−ブチルアクリレート量は102ppm、残留メチルメタクリレート量は56ppmであり、臭気評価は×、画質評価は○であった。結果を表1に示す。
[比較例2]
減圧ストリッピング処理を行なわなかった以外は、実施例3と同様にして電子写真用懸濁重合トナーを得た。得られたトナーの体積平均粒径は7.1μmで粒径分布が狭く、残留スチレン量は205ppm、残留n−ブチルアクリレート量は78ppm、残留メチルメタクリレート量は42ppmであり、臭気評価は△、画質評価は○であった。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
以上の結果から、減圧ストリッピングにより重合性単量体は効率よく除去することができ、しかも粒子の凝集もない流動性に優れた重合法トナーが得られることを確認した。
【0063】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナーを用いることにより、臭気などの環境への影響が少ない状態での連続高速印刷が実現される。
Claims (2)
- 懸濁重合後に得られる着色剤と結着樹脂成分を含有する重合体粒子の分散液を減圧ストリッピング処理した後、脱水、洗浄、乾燥して、乾燥重合体粒子を得る電子写真用トナーの製造方法であって、減圧ストリッピング処理において、蒸発タンクから抜き出して外部熱交換器により加熱した重合体粒子の分散液を該蒸発タンク内に戻して循環させ、その際、加熱した重合体粒子の分散液を該蒸発タンク上部から減圧にした該蒸発タンク内に噴出させることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- 重合体粒子の分散液の温度Ts(℃)と結着樹脂成分のガラス転移温度Tg(℃)の関係がTg≦Ts<100(℃)の範囲で減圧ストリッピング処理を行う請求項1記載の電子写真用トナーの製造方法。
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